(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021137
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240208BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240208BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240208BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240208BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240208BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L29/78 658J
H01L29/78 652P
H01L29/06 301M
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 657D
H01L29/91 F
H01L29/91 C
H01L29/91 L
H01L29/91 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123752
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
(72)【発明者】
【氏名】林 真吾
(57)【要約】
【課題】電子と正孔の再結合で発生する光による封止樹脂の劣化を抑制できる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置10は、活性領域1から終端領域2にわたって半導体基板40の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域12と、活性領域1において第1主面と第1半導体領域12との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、第1半導体領域12と第2半導体領域との第1のpn接合を含み、第1のpn接合を通過する電流が流れる素子構造と、活性領域1において第1主面と第1半導体領域12との間に設けられ、素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域25であって、第1半導体領域12との第2のpn接合を含む形成する活性領域1の外周部1bを備える。第1主面の表面に選択的に、第1および第2のpn接合に順方向電流が流れることで発生する光を遮蔽する第1保護膜35が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなり、第1主面と第2主面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた活性領域と、
前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、
前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との第1のpn接合を含み、前記第1のpn接合を通過する電流が流れる素子構造と、
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられ、前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域であって、前記第1半導体領域と第2のpn接合を形成する前記活性領域の外周部と、
前記終端領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた耐圧構造と、
前記第1主面に設けられ、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極と、
前記第2主面に設けられ、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極と、
を備え、
前記第1主面の表面に選択的に、前記第1および第2のpn接合に順方向電流が流れることで発生する光を遮蔽する第1保護膜が設けられていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1保護膜は、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた有機膜であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1保護膜は、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた第1の無機膜であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1の無機膜は、ノンドープのポリシリコン膜またはアモルファスシリコン膜であることを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1主面において、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた第2保護膜をさらに備え、
前記第1保護膜は、前記第2保護膜上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第1保護膜は、前記素子構造の上部にも設けられることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第1保護膜は、前記活性領域の前記素子構造において前記第1主面の表面上に設けられた第2の無機膜であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第2の無機膜は、ポリシリコン膜またはアモルファスシリコン膜であることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第2の無機膜は、前記第1電極と前記第2半導体領域とが接している領域を除いて、前記第1電極の全面に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
炭化珪素からなり、第1主面と第2主面とを有する半導体基板と、
前記半導体基板に設けられた活性領域と、
前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に第1導電型の第1半導体領域を形成する工程と、
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に第2導電型の第2半導体領域を形成する工程と、
前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との第1のpn接合を含み、前記第1のpn接合を通過する電流が流れる素子構造を形成する工程と、
前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域を形成し、前記第2導電型外周領域と前記第1半導体領域との第2のpn接合を含む前記活性領域の外周部を形成する工程と、
前記終端領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に耐圧構造を形成する工程と、
前記第1主面に、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極を形成する工程と、
前記第2主面に、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極を形成する工程と、
前記第1主面の表面に選択的に、前記第1および第2のpn接合に順方向電流が流れることで発生する光を遮蔽する第1保護膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1保護膜を形成する工程は、ポリイミド塗布中に酸素を注入することによりポリイミド膜を形成することを特徴とする請求項10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1保護膜を形成する工程は、ポリイミド膜を膜厚15μm以上に形成することを特徴とする請求項10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1保護膜を形成する工程は、ポリシリコン膜を形成することを特徴とする請求項10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0005】
図6は、従来の炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図7は、従来の炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図6および
図7に示す従来の炭化珪素半導体装置110は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)140のエッジ終端領域102に、耐圧構造130を備えたトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。
【0006】
半導体基板140は、炭化珪素からなるn+型出発基板141のおもて面上にn-型ドリフト領域112となるn-型炭化珪素層142をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板140は、n-型炭化珪素層142側の主面をおもて面とし、n+型出発基板141側の主面を裏面とする。半導体基板140のおもて面は全域にわたって平坦面であり、活性領域101とエッジ終端領域102との間に段差は生じていない。半導体基板140のおもて面は、エッジ終端領域102の全域が層間絶縁膜119で覆われている。
【0007】
半導体基板140の裏面(n+型出発基板141の裏面)の全域に、ドレイン電極145が設けられている。n+型出発基板141は、n+型ドレイン領域111である。活性領域101は、半導体基板140の中央(チップ中央)に配置される。活性領域101と半導体基板140の端部(チップ端部)との間がエッジ終端領域102である。
【0008】
活性領域101の中央部101a(
図6)には、MOSFETの同一構造(トレンチゲート構造)の複数の単位セルが隣接して設けられている。活性領域101の中央部101aでは、n
-型ドリフト領域112のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対の表面側は、n型電流拡散領域120が設けられている。n型電流拡散領域120の表面層には、トレンチ116間に、p
+型領域の下部123およびp
+型領域の上部124から構成されるp
+型領域122が選択的に設けられている。また、n型電流拡散領域120内には、トレンチ116の底部と深さ方向に対向する位置にp
+型領域121が選択的に設けられている。
【0009】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型ベース領域113、n+型ソース領域114、p++型コンタクト領域115、トレンチ116、ゲート絶縁膜117およびゲート電極118で構成される。
【0010】
また、ゲート電極118上に層間絶縁膜119が設けられ、層間絶縁膜119の開口部に、n+型ソース領域114およびp++型コンタクト領域115と接するオーミック電極143が設けられる。オーミック電極143および層間絶縁膜119上に、ゲート電極118側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル138が設けられている。バリアメタル138上にソース電極144が設けられる。
【0011】
また、半導体素子内部へのイオンの拡散を防止し、半導体素子を絶縁保護するため、エッジ終端領域102では層間絶縁膜119上に、活性領域101ではソース電極144上に保護膜134が成膜されている。保護膜134に開口部(不図示)が設けられ、ソース電極144の、保護膜134の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。従来、保護膜として、SiN(窒化シリコン)膜、酸化膜等の無機材料が使用されているが、有機材料であるポリイミド膜が多く使用されている。炭化珪素半導体装置は、半導体チップを絶縁保護するため、エポキシなどの硬質樹脂やゲル等の封止樹脂137がケース(不図示)内充填されている。
【0012】
活性領域101の外周部101bにおいて半導体基板140のおもて面とn-型ドリフト領域112との間の全域に、半導体基板140のおもて面側から順に深さ方向に隣接して、p++型コンタクト領域115、p型ベース領域113、p+型領域122およびp+型領域の下部123が設けられている。
【0013】
p++型コンタクト領域115、p型ベース領域113、p+型領域122およびp+型領域の下部123は、それぞれ活性領域101の同じ深さおよび同じ不純物濃度のp型領域と同時に形成された領域であり、活性領域101の中央部の周囲を囲む。
【0014】
エッジ終端領域102は、活性領域101の周囲を囲む。エッジ終端領域102には、耐圧構造130が設けられている。耐圧構造130は、例えばJTE構造の改良構造である空間変調JTE構造であり、半導体基板140のおもて面とn-型ドリフト領域112との間に選択的に設けられた複数のp型領域131および複数のp-型領域132で構成される。これらすべてのp型領域131およびp-型領域132は、半導体基板140のおもて面に露出され、半導体基板140のおもて面上の層間絶縁膜119に接する。また、半導体基板140のおもて面とn-型ドリフト領域112との間において、耐圧構造130よりも外側に、n+型チャネルストッパ領域133が選択的に設けられている。
【0015】
また、ワイドバンドギャップ半導体チップのpn接合で発生する光による封止樹脂の劣化を抑制するため、半導体チップと封止樹脂の間に、封止樹脂を劣化させる特定の波長を有する光が、封止樹脂に到達することを抑制する機能領域を備える半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第6892997号公報
【特許文献2】国際公開第2020/136759号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
MOSFETでは、通常、ゲート電極118をオン/オフすることによりスイッチングを行うが、MOSFETは、n-型ドリフト領域112等のn型領域、p型ベース領域113等のp型領域からなるpn接合による内蔵ダイオード161を有している。MOSFETをFWDやダイオードとして使用し、内蔵ダイオード161がオンになるとSiCは直接遷移の半導体であるため、電導度変調により電子と正孔が再結合することによりpn接合から青色光160が発生する。また、SiC-IGBTは、バイポーラ動作であるため、MOSFETと異なり通常のオン時に電子と正孔が再結合することにより青色光160を発生しながらスイッチングを行う。
【0018】
ここで、ポリイミド膜等の保護膜134は半透明であるため、発生した青色光160は、保護膜134を透過して、封止樹脂137にまで達する(
図6、
図7参照)。この場合、青色光160が封止樹脂137の樹脂、ゲルの劣化を引き起こし、封止樹脂137と保護膜134との密着性または封止樹脂137の寿命が悪化する。この結果、下層に形成される層間絶縁膜119等の膜質に影響を与えて、リーク電流の増加やオン電圧の変動等が発生し、炭化珪素半導体装置の信頼性が悪化するという課題がある。
【0019】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、半導体内で電子と正孔が再結合することにより発生する光による封止樹脂の劣化を抑制することができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。炭化珪素からなり、第1主面と第2主面とを有する半導体基板に活性領域が設けられる。前記半導体基板に、前記活性領域の周囲を囲む終端領域が設けられる。前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との第1のpn接合を含み、前記第1のpn接合を通過する電流が流れる素子構造が設けられる。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられ、前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域であって、前記第1半導体領域と第2のpn接合を形成する前記活性領域の外周部が設けられる。前記終端領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に耐圧構造が設けられる。前記第1主面に、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極が設けられる。前記第2主面に、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極が設けられる。前記第1主面の表面に選択的に、前記第1および第2のpn接合に順方向電流が流れることで発生する光を遮蔽する第1保護膜が設けられている。
【0021】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1保護膜は、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた有機膜であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1保護膜は、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた第1の無機膜であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1の無機膜は、ノンドープのポリシリコン膜またはアモルファスシリコン膜であることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1主面において、前記終端領域および前記活性領域の外周部に設けられた第2保護膜をさらに備え、前記第1保護膜は、前記第2保護膜上に設けられることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1保護膜は、前記素子構造の上部にも設けられることを特徴とする。
【0026】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1保護膜は、前記活性領域の前記素子構造において前記第1主面の表面上に設けられた第2の無機膜であることを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2の無機膜は、ポリシリコン膜またはアモルファスシリコン膜であることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2の無機膜は、前記第1電極と前記第2半導体領域とが接している領域を除いて、前記第1電極の全面に設けられていることを特徴とする。
【0029】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。炭化珪素からなり、第1主面と第2主面とを有する半導体基板と、前記半導体基板に設けられた活性領域と、前記半導体基板に設けられ、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法である。前記活性領域から前記終端領域にわたって前記半導体基板の内部に第1導電型の第1半導体領域を形成する工程を行う。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に第2導電型の第2半導体領域を形成する工程を行う。前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との第1のpn接合を含み、前記第1のpn接合を通過する電流が流れる素子構造を形成する工程を行う。前記活性領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に前記素子構造の周囲を囲む第2導電型外周領域を形成し、前記第2導電型外周領域と前記第1半導体領域との第2のpn接合を含む前記活性領域の外周部を形成する工程を行う。前記終端領域において前記第1主面と前記第1半導体領域との間に耐圧構造を形成する工程を行う。前記第1主面に、前記第2半導体領域および前記第2導電型外周領域に電気的に接続された第1電極を形成する工程を行う。前記第2主面に、前記第1半導体領域に電気的に接続された第2電極を形成する工程を行う。前記第1主面の表面に選択的に、前記第1および第2のpn接合に順方向電流が流れることで発生する光を遮蔽する第1保護膜を形成する工程を行う。
【0030】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1保護膜を形成する工程は、ポリイミド塗布中に酸素を注入することによりポリイミド膜を形成することを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1保護膜を形成する工程は、ポリイミド膜を膜厚15μm以上に形成することを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第1保護膜を形成する工程は、ポリシリコン膜を形成することを特徴とすることを特徴とする。
【0033】
上述した発明によれば、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、第1保護膜が設けられている。これにより、内蔵ダイオードに順方向電流が流れることで、電子と正孔が再結合してpn接合から発生する青色光が、第1保護膜で遮蔽される。このため、青色光が封止樹脂に達することがなくなり、封止樹脂の樹脂、ゲルの劣化を抑制でき、封止樹脂と第1保護膜との密着性は良好となり、層間絶縁膜等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性が高くなる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置によれば、半導体内で電子と正孔が再結合することにより発生する光による封止樹脂の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
【
図3】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
【
図4】実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【
図5】実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【
図6】従来の炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
【
図7】従来の炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0037】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図1に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40のエッジ終端領域2に、耐圧構造30を備えたトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。
【0038】
半導体基板40には、活性領域1の中央部1a(
図4参照)に、MOSFETの同一構造(素子構造)の複数の単位セル(素子の機能単位)が隣接して配置されている。活性領域1は、MOSFETのオン時に主電流(ドリフト電流)が流れる領域である。活性領域1は、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板40の略中央(チップ中央)に配置される。活性領域1は、後述するp
++型コンタクト延在部15aの外側(半導体基板40の端部(チップ端部)側)の端部から内側(チップ中央側)の部分である。実施の形態1では、活性領域1の中央部1aの構造は、従来構造と同じであるため、記載を省略する(
図6参照)。
【0039】
エッジ終端領域2は、活性領域1とチップ端部との間の領域であり、活性領域1の周囲を略矩形状に囲む。エッジ終端領域2には、耐圧構造30が設けられている。耐圧構造30は、活性領域1とエッジ終端領域2との境界付近の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧構造30の構成については後述する。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏が起きたことでドレイン・ソース間電流が増加してもそれ以上ドレイン・ソース間電圧が増加しない限界の電圧である。
【0040】
半導体基板40は、炭化珪素からなるn+型出発基板41のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1半導体領域)12となるn-型炭化珪素層42をエピタキシャル成長させてなる。半導体基板40は、n-型炭化珪素層42側の主面をおもて面(第1主面)とし、n+型出発基板41側の主面を裏面(第2主面)とする。半導体基板40のおもて面は全域にわたって略平坦面であり、活性領域1とエッジ終端領域2との間に段差は生じていない。略平坦とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で水平面であることを意味する。
【0041】
n+型出発基板41はn+型ドレイン領域11である。半導体基板40は、活性領域1の各部を形成する際に、n-型ドリフト領域12となるn-型炭化珪素層42を順に多段にエピタキシャル成長されてなる。n-型ドリフト領域12は、n-型炭化珪素層42の、イオン注入による拡散領域が形成されずにエピタキシャル成長時の不純物濃度のまま残る部分である。n-型ドリフト領域12は、n+型出発基板41に接し、活性領域1からチップ端部にわたって設けられている。
【0042】
活性領域1の外周部1bは、活性領域1の中央部1aの周囲を略矩形状に囲む。後述するトレンチ16の長手方向において、活性領域1の外周部1bとは、後述するn+型ソース領域14の最も外側の端部から、活性領域1とエッジ終端領域2との境界までの部分である。トレンチ16の短手方向において、活性領域1の外周部1bとは、最も外側のトレンチ16の外側の側壁から、活性領域1とエッジ終端領域2との境界までの部分である。活性領域1の外周部1bには、MOSFETの単位セルは設けられていない。
【0043】
活性領域1の外周部1bには、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に、半導体基板40のおもて面側から順に深さ方向に隣接して、p++型コンタクト延在部15a、p型ベース延在部13aおよびp+型延在部の下部23a、p+型延在部の上部24aが設けられている。これらの領域は、後述する活性領域1の中央部1aのp++型コンタクト領域15、p型ベース領域13およびp+型領域の下部23、p+型領域の上部24を活性領域1の外周部1bに延在させた領域である。これらの領域(複数の延在部)で、活性領域1の外周部1bにおいて半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に1つのp型外周領域(第2導電型外周領域)25が構成されている。このため、活性領域1の外周部1bは、p型外周領域25とn-型ドリフト領域12とのpn接合(第2のpn接合)を含む内蔵ダイオード61を含む。
【0044】
活性領域1の外周部1bのp型外周領域25は、活性領域1の中央部1aの周囲を同心状に囲む。p型外周領域25は、MOSFET(炭化珪素半導体装置10)のオフ時にエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12で発生して活性領域1へ向かって流れるホール(正孔)電流を後述するソース電極44へ引き抜くための領域であり、ソース電極44に電気的に接続されている。MOSFETのオフ時にエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域12で発生したホール電流がp型外周領域25を介してソース電極44へ引き抜かれることで、エッジ終端領域2でのアバランシェ降伏時の正孔電流集中が抑制される。
【0045】
エッジ終端領域2の耐圧構造30は、例えばJTE構造を空間変調構造とした空間変調JTE構造であり、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間に選択的に設けられた複数のp型領域31および複数のp-型領域32で構成される。複数のp型領域31および複数のp-型領域32はn-型炭化珪素層42の表面領域にイオン注入により形成された拡散領域である。
【0046】
複数のp型領域31は、活性領域1の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。外側に配置されたp型領域31ほど、幅(内側から外側へ向かう法線方向の幅)が狭く、かつ内側に隣り合うp型領域31との間隔が広い。最も内側のp型領域31は、p++型コンタクト延在部15aの外側に、p++型コンタクト延在部15aに隣接して配置されている。
【0047】
複数のp-型領域32は、活性領域1の周囲を囲む同心状に互いに離れて配置されている。外側に配置されたp-型領域32ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に互いに隣り合うp-型領域32との間隔が広い。最も外側のp-型領域32の幅は、内側に隣り合うp-型領域32の幅よりも広くてもよい。最も内側のp-型領域32は、互いに隣り合うすべてのp型領域31間に配置され、法線方向に両側のp型領域31に隣接して、すべてのp型領域31の底部のコーナー部を囲む。
【0048】
最も内側のp-型領域32の内側端部は、最も内側のp型領域31の内側端部と同じ位置か、または最も内側のp型領域31の内側端部よりも外側で終端している。最も内側のp-型領域32は、最も外側のp型領域31よりも外側へ延在している。最も内側のp-型領域32以外のp-型領域32は、p型領域31よりも外側に配置される。n-型ドリフト領域12は、互いに隣り合うすべてのp-型領域32間に延在して半導体基板40のおもて面に達し、法線方向に両側のp-型領域32に隣接する。
【0049】
また、半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間において、耐圧構造30よりも外側に、n+型チャネルストッパ領域33が選択的に設けられている。n+型チャネルストッパ領域33は、n-型炭化珪素層42の表面領域にイオン注入により形成された拡散領域である。n+型チャネルストッパ領域33は、耐圧構造30よりも外側に、法線方向に耐圧構造30と離れて設けられ、耐圧構造30の周囲を囲む。n+型チャネルストッパ領域33は、半導体基板40のおもて面上の層間絶縁膜19に接する。
【0050】
n+型チャネルストッパ領域33は、チップ端部に露出されている。n+型チャネルストッパ領域33と耐圧構造30(最も外側のp-型領域32)との間はn-型ドリフト領域12である。n+型チャネルストッパ領域33は、フローティング(浮遊)電位を有する。エッジ終端領域2における半導体基板40のおもて面に、フィールドプレート(FP:Field Plate)やチャネルストッパ電極は設けられていない。n+型チャネルストッパ領域33に代えて、p+型チャネルストッパ領域が設けられてもよい。
【0051】
活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2では、半導体基板40のおもて面は、全域が層間絶縁膜19(第2の保護膜)で覆われている。また、層間絶縁膜19の全域は、半導体素子内部へのイオンの拡散を防止し、半導体素子を絶縁するため、層間絶縁膜19上に半透明の保護膜34(第2の保護膜)としてポリイミド膜が成膜されている。ここで、半透明とは、少なくとも、青色光60を完全に遮蔽せず、青色光60のすべてまたは一部を透過することである。
【0052】
実施の形態1の炭化珪素半導体装置10では、n
-型ドリフト領域12等のn型領域、p型ベース領域13等のp型領域からなるpn接合による内蔵ダイオード61を有している。内蔵ダイオード61は、
図1に示すように、エッジ終端領域2と活性領域1の外周部1b間にも存在している。このため、内蔵ダイオード61に順方向電流が流れることで、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2で、電子と正孔が再結合して青色光60(青色より波長が短い紫外光も含む)がpn接合から発生する。この青色光60を遮蔽するため、実施の形態1では、半透明の保護膜34上の全域を不透明の保護膜35(第1の保護膜)が覆っている。ここで、不透明とは、青色光60に対して透明でない、つまり、青色光60を遮蔽し、透過しないことである。例えば、不透明の保護膜35は、黒い保護膜であり、有機膜の黒いポリイミド膜である。黒いとは、上記青色光を含む可視光に対して透明でないことである。
【0053】
また、実施の形態1では、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2のみに、不透明の保護膜35が設けられている。活性領域1の中央部1aには、Al合金のソース電極44が設けられており、青色光60が漏れることが少なく、青色光60は主に活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2から漏れているためである。
【0054】
炭化珪素半導体装置は、半導体チップを絶縁保護するため、封止樹脂37がケース(不図示)内充填されている。実施の形態1では、封止樹脂37は、不透明の保護膜35と接している。封止樹脂37は、熱硬化性樹脂組成物から構成することができ、特には高耐熱性の熱硬化性樹脂組成物から構成することが好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂主剤を含み、任意選択的に、無機充填材、硬化剤、硬化促進剤、及び必要な添加剤を含んでいてもよい。
【0055】
このように、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に不透明の保護膜35を設けることで、内蔵ダイオード61に順方向電流が流れることで、電子と正孔が再結合してpn接合から発生する青色光60が、不透明の保護膜35で遮蔽される。これにより、青色光60が、封止樹脂37に達することがなくなり、封止樹脂37の樹脂、ゲルの劣化を抑制できる。このため、封止樹脂37と不透明の保護膜35との密着性は良好となり、層間絶縁膜19等の膜質の特性劣化はなく、炭化珪素半導体装置の信頼性が高くなる。
【0056】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。まず、従来技術による炭化珪素半導体装置の製造方法と同様に、半導体基板40上に表面構造を形成する。半導体基板40内に、活性領域1のMOS構造およびエッジ終端領域2の耐圧構造30等を形成する。次に、半導体基板40のおもて面に層間絶縁膜19を形成する。次に、活性領域1の中央部1aに、層間絶縁膜19の開口部を形成し、活性領域1に、バリアメタル38(
図4参照)およびソース電極44を形成する。
【0057】
次に、活性領域1の中央部1aではソース電極44上に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2では層間絶縁膜19上に、半透明の保護膜34を選択的にポリイミド膜で形成する。次に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に半透明の保護膜34上の全域に不透明の保護膜35を形成する。
【0058】
不透明の保護膜35は、例えば、有機膜の黒いポリイミド膜で形成する。黒いポリイミド膜は、ポリイミド塗布中に酸素(O2)を注入することにより形成できる。また、黒いポリイミド膜は、ポリイミド塗布後、キュア温度を400℃以上にすることにより作成できる。また、黒いポリイミド膜は、酸素を注入しない感光性膜については、15μm以上の厚さにすることで作成できる。
【0059】
次に、半導体基板40の裏面の全面にニッケルやチタン(Ti)を形成した後、アニールすることでドレイン電極45を形成する。次に、活性領域1の中央部1aでは、半透明の保護膜34を選択的に除去する。半透明の保護膜34の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。次に、半導体基板をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化する。
【0060】
次に、炭化珪素半導体装置を組み立てる。組み立て方法は、従来技術の組み立て方法と同様である。例えば、まず、積層基板に半導体チップを実装し、半導体チップと、絶縁基板上に設けられた電極パターンとを、はんだを介して、リードフレーム配線で電気的に接続する。次に、これらを金属基板に接合して、樹脂ケースをシリコーン系の接着剤などで接着する。次に、金属ワイヤで半導体チップと金属端子との間を接続し、樹脂ケース内にエポキシ樹脂などの硬質樹脂等の封止樹脂37を充填する。これにより、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置が完成する。
【0061】
以上、説明したように、実施の形態1の炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、不透明の保護膜が設けられている。これにより、内蔵ダイオードに順方向電流が流れることで、電子と正孔が再結合してpn接合から発生する青色光が、不透明の保護膜で遮蔽される。このため、青色光が封止樹脂に達することがなくなり、封止樹脂の樹脂、ゲルの劣化を抑制でき、封止樹脂と不透明の保護膜との密着性は良好となり、層間絶縁膜等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性が高くなる。
【0062】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図2は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図2に示す実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置10が、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10と異なる点は、層間絶縁膜19上の全域を不透明のポリシリコン膜36が覆っていることである。
【0063】
実施の形態2では、不透明のポリシリコン膜36上の全域を半透明の保護膜34が覆い、半透明の保護膜34が封止樹脂37と接している。実施の形態2でも、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2のみに、不透明のポリシリコン膜36が設けられている。実施の形態2の不透明のポリシリコン膜36は、例えば、無機膜のノンドープのポリシリコン膜である。ノンドープのポリシリコン膜は、抵抗が高ければよいので、完全にノンドープである必要はなく、正味の不純物濃度が1×1015/cm3以下であればよい。
【0064】
このように、実施の形態2でも活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に不透明のポリシリコン膜36を設けている。これにより、実施の形態1と同様に、青色光60が、不透明のポリシリコン膜36で遮蔽され、封止樹脂37に達することがなくなり、封止樹脂37の樹脂、ゲルの劣化を抑制できる。このため、封止樹脂37と不透明の保護膜35との密着性は良好となり、層間絶縁膜19等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性が高くなる。
【0065】
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。実施の形態1と同様に、半導体基板40内に、活性領域1のMOS構造およびエッジ終端領域2の耐圧構造30等を形成する。次に、半導体基板40のおもて面に層間絶縁膜19を形成する。次に、活性領域1の中央部1aに、層間絶縁膜19の開口部を形成し、活性領域1に、バリアメタル38およびソース電極44を形成する。
【0066】
次に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2の層間絶縁膜19上に、不透明のポリシリコン膜36を形成する。不透明のポリシリコン膜36は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成膜法)でノンドープのポリシリコンを400度以下の温度で成膜することにより形成することができる。
【0067】
次に、活性領域1の中央部1aではソース電極44上、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2では、不透明のポリシリコン膜36上に、半透明の保護膜34を選択的にポリイミド膜で形成する。この後、実施の形態1と同様の工程を行うことで、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0068】
以上、説明したように、実施の形態2の炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、不透明のポリシリコン膜が設けられている。これにより、内蔵ダイオードに順方向電流が流れることで、電子と正孔が再結合してpn接合から発生する青色光が、不透明のポリシリコン膜で遮蔽される。このため、実施の形態2は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0069】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図3は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のエッジ終端領域の構造を示す断面図である。
図3に示す実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置10が、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置10と異なる点は、層間絶縁膜19上の全域を不透明の保護膜35のみが覆い、半透明の保護膜34が設けられていないことである。
【0070】
実施の形態3では、不透明の保護膜35が封止樹脂37と接している。実施の形態3でも、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2のみに、不透明の保護膜35が設けられている。実施の形態3の不透明の保護膜35は、例えば、実施の形態1の不透明の保護膜35と同じ、黒い保護膜であり、有機膜の黒いポリイミド膜である。
【0071】
このように、実施の形態3でも活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に不透明の保護膜35を設けている。これにより、実施の形態1と同様に、青色光60が不透明の保護膜35で遮蔽され、封止樹脂37に達することがなくなり、封止樹脂37の樹脂、ゲルの劣化を抑制できる。このため、封止樹脂37と不透明の保護膜35との密着性は良好となり、層間絶縁膜19等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性が高くなる。
【0072】
(実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。実施の形態1と同様に、半導体基板40内に、活性領域1のMOS構造およびエッジ終端領域2の耐圧構造30等を形成する。次に、半導体基板40のおもて面に層間絶縁膜19を形成する。次に、活性領域1の中央部1aに、層間絶縁膜19の開口部を形成し、活性領域1に、バリアメタル38およびソース電極44を形成する。
【0073】
次に、活性領域1の中央部1aで、ソース電極44上に、半透明の保護膜34を選択的にポリイミド膜で形成する。次に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2で、層間絶縁膜19上の全域に不透明の保護膜35を形成する。不透明の保護膜35は、実施の形態1と同じ方法で形成することができる。この後、実施の形態1と同様の工程を行うことで、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0074】
以上、説明したように、実施の形態3の炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、不透明の保護膜が設けられている。これにより、内蔵ダイオードに順方向電流が流れることで、電子と正孔が再結合してpn接合から発生する青色光が、不透明の保護膜で遮蔽される。このため、実施の形態2は、実施の形態1と同様の効果を有する。
【0075】
(実施の形態4)
実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図4は、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図4に示す実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置10は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40のエッジ終端領域2に、耐圧構造30を備えたトレンチゲート構造の縦型MOSFETである。
【0076】
図4では、実施の形態4の活性領域1の中央部1aの構造を示す。実施の形態4の活性領域の外周1bおよびエッジ終端領域2の構造は、実施の形態1と同じであるため、記載を省略する(
図1参照)。
【0077】
実施の形態4の活性領域1の中央部1aには、トレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、p型ベース領域(第2半導体領域)13、n+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15、トレンチ16、ゲート絶縁膜17およびゲート電極18で構成される。p型ベース領域13、n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、n-型炭化珪素層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。p型ベース領域13は、活性領域1の中央部1aにおいて半導体基板40のおもて面とn-型ドリフト領域12との間の全域に設けられ、外側へ延在して、活性領域1の外周部1b内で終端している。このため、活性領域1の中央部1aは、p型領域(p型ベース領域13)とn-型ドリフト領域12とのpn接合(第1のpn接合)を含む内蔵ダイオード(不図示)を含む。
【0078】
n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、半導体基板40のおもて面とp型ベース領域13との間にそれぞれ選択的に設けられ、底部(下面:半導体基板40の裏面側端部)でp型ベース領域13に接する。n+型ソース領域14は、活性領域1の中央部1aにのみ、活性領域1の中央部1aのp++型コンタクト領域15に接して設けられている。n+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15は、上面(半導体基板40のおもて面側端部)でオーミック電極43にオーミック接触する。
【0079】
n-型ドリフト領域12とp型ベース領域13との間において、トレンチ16の底面よりもn+型ドレイン領域11側(半導体基板40の裏面側)に深い位置に、n型電流拡散領域20およびp+型領域21、22がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域20およびp+型領域21、22は、n-型炭化珪素層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。n型電流拡散領域20は、p+型領域21、22よりもn+型ドレイン領域11側に深い位置に達することがよい。
【0080】
n型電流拡散領域20は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域20は、互いに隣り合うp+型領域21、22間においてこれらの領域に接し、かつ半導体基板40のおもて面に平行な方向に延在してトレンチ16まで達し、ゲート絶縁膜17に接する。n型電流拡散領域20は、上面でp型ベース領域13に接し、底部でn-型ドリフト領域12に接する。
【0081】
n型電流拡散領域20は設けられていなくてもよい。n型電流拡散領域20を設けない場合、n型電流拡散領域20に代えて、n-型ドリフト領域12がp型ベース領域13まで達してp型ベース領域13およびp+型領域21、22に接し、かつ半導体基板40のおもて面に平行な方向にトレンチ16まで達して、ゲート絶縁膜17に接する。
【0082】
p+型領域21、22は、後述するソース電極44の電位に固定されており、MOSFET(炭化珪素半導体装置10)のオフ時に空乏化して(もしくはn型電流拡散領域20を空乏化させて、またはその両方)、ゲート絶縁膜17にかかる電界を緩和させる機能を有する。p+型領域21は、p型ベース領域13と離れて設けられ、深さ方向にトレンチ16の底面に対向する。p+型領域21は、図示省略する部分でp+型領域22に部分的に連結されることで、ソース電極44に電気的に接続されている。
【0083】
p+型領域21は、トレンチ16の底面でゲート絶縁膜17に接してもよいし、トレンチ16の底面から離れていてもよい。p+型領域21の幅は、トレンチ16の幅と同じか、またはトレンチ16の幅よりも広い。p+型領域21の幅をトレンチ16の幅よりも広くすることで、p+型領域21は深さ方向にトレンチ16の底面コーナー部(側壁と底面との境界)にも対向する。これによって、p+型領域21によるトレンチ16の底面付近の電界緩和効果がさらに高くなる。
【0084】
p+型領域22は、互いに隣り合うトレンチ16間に、p+型領域21およびトレンチ16と離れて設けられている。p+型領域22は、上面でp型ベース領域13に接し、p型ベース領域13を介してソース電極44に電気的に接続されている。p+型領域22は、深さ方向に、n-型炭化珪素層42の内部に形成される上部(n+型ソース領域14側の部分)24と、n-型炭化珪素層42aの内部に形成される下部(n+型ドレイン領域11側の部分)23と、が隣接してなる。
【0085】
トレンチ16は、深さ方向にn+型ソース領域14およびp型ベース領域13を貫通してn型電流拡散領域20(n型電流拡散領域20を設けない場合はn-型ドリフト領域12)に達する。トレンチ16は、p+型領域21の内部で終端していてもよい。トレンチ16は、例えば、半導体基板40のおもて面に平行な方向にストライプ状に延在して、活性領域1の外周部1bに達する。トレンチ16の内部には、ゲート絶縁膜17を介してゲート電極18が設けられている。
【0086】
層間絶縁膜19は、半導体基板40のおもて面の全面に設けられ、ゲート電極18を覆う。オーミック電極(第1電極)43は、半導体基板40のおもて面の、層間絶縁膜19のコンタクトホールに露出する部分上に設けられている。オーミック電極43は、層間絶縁膜19のコンタクトホールにおいて、半導体基板40のおもて面においてn+型ソース領域14およびp++型コンタクト領域15(p++型コンタクト領域15を設けない場合はp型ベース領域13)にオーミック接触する。オーミック電極43は、例えばニッケルシリサイド(NixSiy、x,yは任意の整数)膜である。
【0087】
ソース電極(第1電極)44は、層間絶縁膜19のコンタクトホールを埋め込むように、層間絶縁膜19上に設けられている。ソース電極44は、活性領域1の中央部1aの略全域に設けられ、ソース電極44は、オーミック電極43を介してn+型ソース領域14、p++型コンタクト領域15、p型ベース領域13、およびp+型領域21、22に電気的に接続されている。
【0088】
オーミック電極43および層間絶縁膜19上に、ゲート電極18側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル38が設けられていてもよい。バリアメタル38は、例えば、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)から構成される。バリアメタル38は、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)の2層構造であってもよい。この場合、バリアメタル38上にソース電極44が設けられる。
【0089】
また、半導体素子内部へのイオンの拡散を防止し、半導体素子を絶縁保護するため、エッジ終端領域2では層間絶縁膜19上に、活性領域1ではソース電極44上に半透明の保護膜34が成膜されている。実施の形態4では、活性領域1の中央部1a、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に、半透明の保護膜34上の全域に不透明の保護膜35が設けられている。実施の形態4の不透明の保護膜35は、実施の形態1の不透明の保護膜35と同じ膜である。
【0090】
保護膜34、35に開口部(不図示)が設けられ、ソース電極44の、保護膜34、35の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。
図4は、開口部が設けられていない部分を示している。活性領域1の中央部1aには、Al合金のソース電極44が設けられているが、すべての領域にソース電極44が設けられておらず、ソース電極44が設けられていない領域もある。この領域では、青色光60が漏れることがあるため、実施の形態4では、活性領域1の中央部1aにも不透明の保護膜35を成膜している。
【0091】
活性領域1の中央部1aの不透明の保護膜35は、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2の不透明の保護膜35と同じ膜厚であってもよいし、より薄くてもよい。活性領域1の中央部1aには、ソースパッドが設けられるため、青色光60の遮蔽は少なくてもよいためである。
【0092】
このように、活性領域1の中央部1aにも不透明の保護膜35を設けることで、活性領域1の中央部1aでも青色光60が、不透明の保護膜35で遮蔽される。これにより、青色光60が封止樹脂37に達することがなくなり、封止樹脂37の樹脂、ゲルの劣化を、実施の形態1よりも抑制できる。このため、封止樹脂37と不透明の保護膜35との密着性は良好となり、層間絶縁膜19等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性がさらに高くなる。
【0093】
ドレイン電極(第2電極)45は、半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)全面に設けられて、n+型ドレイン領域11(n+型出発基板41)にオーミック接触し、n+型ドレイン領域11に電気的に接続されている。
【0094】
(実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。まず、従来技術による炭化珪素半導体装置の製造方法と同様に、半導体基板40上に表面構造を形成する。半導体基板40内に、活性領域1のMOS構造およびエッジ終端領域2の耐圧構造30等を形成する。次に、半導体基板40のおもて面に層間絶縁膜19を形成する。次に、活性領域1の中央部1aに、層間絶縁膜19の開口部を形成し、活性領域1に、バリアメタル38およびソース電極44を形成する。
【0095】
次に、活性領域1の中央部1aではソース電極44上に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2では、層間絶縁膜19上に、半透明の保護膜34を選択的にポリイミド膜で形成する。次に、活性領域1の中央部1a、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2で、半透明の保護膜34上の全域に不透明の保護膜35を形成する。不透明の保護膜35は、実施の形態1の不透明の保護膜35と同じ方法で形成できる。
【0096】
次に、半導体基板40の裏面の全面にニッケルやチタン(Ti)を形成した後、アニールすることでドレイン電極45を形成する。次に、活性領域1の中央部1aでは、半透明の保護膜34および不透明の保護膜35を選択的に除去する。保護膜34、35の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。この後、実施の形態1と同様の工程を行うことで、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0097】
以上、説明したように、実施の形態4の炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の中央部、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、不透明の保護膜が設けられている。これにより、活性領域の中央部でも青色光が、不透明の保護膜で遮蔽される。このため、青色光が封止樹脂に達することがなくなり、封止樹脂の樹脂、ゲルの劣化を実施の形態1よりも抑制でき、封止樹脂と不透明の保護膜との密着性は良好となり、層間絶縁膜等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性がさらに高くなる。
【0098】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図5は、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図5に示す実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置10が、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置10と異なる点は、バリアメタル38上の全域を不透明のポリシリコン膜36(第1無機膜)が覆っていることである。
【0099】
図5では、実施の形態5の活性領域1の中央部1aの構造を示す。実施の形態5の活性領域の外周1bおよびエッジ終端領域2の構造は、実施の形態2と同じ、層間絶縁膜19上の全域を不透明のポリシリコン膜36(第2無機膜)が覆う構造であるため、記載を省略する(
図2参照)。
【0100】
実施の形態5では、ソース電極44が不透明のポリシリコン膜36上の全域に設けられ、ソース電極44を半透明の保護膜34が覆い、半透明の保護膜34が封止樹脂37と接している。実施の形態5の不透明のポリシリコン膜36は、ソース電極44上に設けられているため、低抵抗のドープしたポリシリコン膜である。また、半透明の保護膜34に開口部(不図示)が設けられ、ソース電極44の、半透明の保護膜34の開口部に露出する部分がソースパッドとなる。
図5は、開口部が設けられていない部分を示している。低抵抗のポリシリコン膜は、正味の不純物濃度が1×10
19/cm
3以上であればよい。
【0101】
実施の形態4の不透明の保護膜35は、ポリイミド等の絶縁膜であるため、ソースパッドの領域には設けられていない。一方、不透明のポリシリコン膜36は、低抵抗の導電膜であるため、ソース電極44の全面を覆い、ソースパッドの領域を含め、ソース電極44が半導体基板40とコンタクトする(接する)領域(例えば、
図5の領域S)に設けることができる。このため、実施の形態5では、ソース電極44が半導体基板40とコンタクトする領域から発生する青色光60も遮蔽することができる。
【0102】
活性領域1の中央部1aの不透明のポリシリコン膜36は、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2の不透明のポリシリコン膜36と同じ膜厚であってもよいし、より薄くてもよい。活性領域1の中央部1aには、ソースパッドが設けられるため、青色光60の遮蔽は少なくてもよいためである。ここで、n+型ソース領域14やp++型コンタクト領域15が露出する層間絶縁膜19のコンタクトホール内部には、不透明のポリシリコン膜36が設けられなくともよい。つまり、不透明のポリシリコン膜36は、層間絶縁膜19のコンタクトホール内部を除いた、ソース電極44の全面に設けてもよい。このように電流経路となる領域に不透明のポリシリコン膜36を設けないことで、不透明のポリシリコン膜36の抵抗率に関する制約がなくなり、ノンドープのポリシリコン膜をも用いることができる。
【0103】
このように、実施の形態5でも活性領域1の中央部1aに不透明のポリシリコン膜36を設けている。これにより、実施の形態4と同様に、青色光60が、不透明のポリシリコン膜36で遮蔽され、封止樹脂37に達することがなくなり、封止樹脂37の樹脂、ゲルの劣化を抑制できる。このため、封止樹脂37と不透明の保護膜35との密着性は良好となり、層間絶縁膜19等の膜質の特性劣化はなく、半導体装置の信頼性が高くなる。
【0104】
(実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。実施の形態1と同様に、半導体基板40内に、活性領域1のMOS構造およびエッジ終端領域2の耐圧構造30等を形成する。次に、半導体基板40のおもて面に層間絶縁膜19を形成する。次に、活性領域1の中央部1aに、層間絶縁膜19の開口部を形成し、活性領域1に、バリアメタル38を形成する。
【0105】
次に、活性領域1の中央部1aのバリアメタル38上に低抵抗の不透明のポリシリコン膜36を形成する。低抵抗の不透明のポリシリコン膜36は、CVDでドープのポリシリコンを400度以下の温度で成膜することにより形成することができる。次に、活性領域1の中央部1aに、不透明のポリシリコン膜36上にソース電極44を形成する。
【0106】
次に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2で、層間絶縁膜19上に、不透明のポリシリコン膜36を形成する。不透明のポリシリコン膜36は、CVDでノンドープのポリシリコンを400度以下の温度で成膜することにより形成することができる。
【0107】
次に、活性領域1の中央部1aではソース電極44上に、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2では、不透明のポリシリコン膜36上に、半透明の保護膜34を選択的にポリイミド膜で形成する。この後、実施の形態1と同様の工程を行うことで、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置を製造することができる。
【0108】
以上、説明したように、実施の形態5の炭化珪素半導体装置によれば、活性領域の中央部、活性領域の外周部およびエッジ終端領域に、不透明のポリシリコン膜が設けられている。これにより、活性領域の中央部でも青色光が、不透明のポリシリコン膜で遮蔽される。このため、実施の形態4と同様の効果を有する。
【0109】
また、図示はしていないが、実施の形態3の不透明の保護膜35の構造を活性領域1の中央部1aに設ける形態にすることも可能である。さらに、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に設ける不透明の保護膜35を、活性領域1の中央部1aに設ける不透明の保護膜35と異なる形態にすることも可能である。例えば、活性領域1の中央部1aに設ける不透明の保護膜35を有機膜の黒いポリイミド膜として、活性領域1の外周部1bおよびエッジ終端領域2に設ける不透明の保護膜35を無機膜のポリシリコン膜とすることも可能である。
【0110】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。例えば不透明の保護膜として、ポリシリコン膜だけでなく、アモルファスシリコン膜でもよい。さらには、バンドギャップが2eV以下の半導体を用いてもよい。また、上述した各実施の形態では、半導体として、炭化珪素(SiC)の他、窒化ガリウム(GaN)などの半導体にも適用可能である。また、上述した各実施の形態は、MOSFETを例に説明したが、内部にpn接合を有する半導体装置、例えば、IGBT、pnダイオード、Junction Barrier Schottky(JBS)構造を採用したショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0112】
1、101 活性領域
1a、101a 活性領域の中央部
1b、101b 活性領域の外周部
2、102 エッジ終端領域
10、110 炭化珪素半導体装置
11、111 n+型ドレイン領域
12、112 n-型ドリフト領域
13、113 p型ベース領域
13a p型ベース延在部
14、114 n+型ソース領域
15、115 p++型コンタクト領域
15a p++型コンタクト延在部
16、116 トレンチ
17、117 ゲート絶縁膜
18、118 ゲート電極
19、119 層間絶縁膜
20、120 n型電流拡散領域
21、121 トレンチ下のp+型領域
22、122 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域
23、123 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域の下部
23a p+型延在部の下部
24、124 互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域の上部
24a p+型延在部の上部
25 p型外周領域
30、130 耐圧構造
31、131 耐圧構造のp型領域
32、132 耐圧構造のp-型領域
33、133 n+型チャネルストッパ領域
34、134 半透明の保護膜
35 不透明の保護膜
36 不透明のポリシリコン膜
37、137 封止樹脂
38、138 バリアメタル
40、140 半導体基板
41、141 n+型出発基板
42、142 n-型炭化珪素層
43、143 オーミック電極
44、144 ソース電極
45、145 ドレイン電極
60、160 青色光
61、161 内蔵ダイオード