(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021148
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】形材の接合構造及び建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/96 20060101AFI20240208BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E06B3/96 B
E06B1/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123781
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠山 真啓
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
【テーマコード(参考)】
2E035
【Fターム(参考)】
2E035AA02
2E035BA01
2E035CA02
2E035CB03
2E035DA01
(57)【要約】
【課題】第1形材の見込み面に加工部分や継ぎ目部分が設けられている場合にも第2形材との接合部の止水性を確保すること。
【解決手段】加工部分24A,25A,34Aまたは継ぎ目部分11bを有した縦枠11の見込み面11aにシール部材2を介在させた状態で下枠13の小口端面13aを接合する形材の接合構造であって、縦枠11の見込み面11aとシール部材2との間において少なくとも加工部分24A,25A,34Aまたは継ぎ目部分11bを含む領域に膨潤性を有した高吸水性樹脂3を配設している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工部分または継ぎ目部分を有した第1形材の見込み面にシール部材を介在させた状態で第2形材の小口端面を接合する形材の接合構造であって、
前記第1形材の見込み面と前記シール部材との間において少なくとも前記加工部分または前記継ぎ目部分を含む領域に膨潤性を有した高吸水性樹脂を配設することを特徴とする形材の接合構造。
【請求項2】
前記シール部材は、シート状を成す基材の一方の表面に前記高吸水性樹脂が混練された接着層を有したものであり、前記接着層を介して前記第1形材の見込み面に接着されることを特徴とする請求項1に記載の形材の接合構造。
【請求項3】
前記シール部材は、前記第1形材との接着面に粉状を成す前記高吸水性樹脂が分布されたものであり、前記接着面を介して前記第1形材の見込み面に当接されることを特徴とする請求項1に記載の形材の接合構造。
【請求項4】
前記第1形材の見込み面に前記高吸水性樹脂が混練された塗装用樹脂を塗布し、前記塗装用樹脂に前記シール部材が接着されることを特徴とする請求項1に記載の形材の接合構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一つに記載した形材の接合構造を適用して縦枠の内周側となる見込み面に横枠の小口端面を接合させたことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形材の接合構造及び建具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の枠材(形材)を接合して構成される枠体には、止水性を考慮して、例えば縦枠の内周側となる見込み面と、横枠の小口端面との間にシート状のシール部材を配設するようにしたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、縦枠の見込み面には、薄板状のヒレ部が突出するように設けられている場合が多い。このため、縦枠の見込み面に横枠の小口端面を接合する場合には、小口端面が接合する部分のヒレ部を予め切除するようにしている。ヒレ部が完全に切除されていれば、縦枠の見込み面が平坦となるため横枠との接合に問題は生じない。しかしながら、加工誤差等によってヒレ部が完全に切除されていなかった場合には、縦枠の見込み面に凸状部分が残存する状態となる。このため、シール部材を介して縦枠の見込み面に横枠の小口端面を接合した際にも接合部に隙間が生じ、止水性が損なわれる事態が招来される懸念がある。逆に、切除する加工が過剰となった場合には、縦枠の見込み面に凹所が構成されることになり、シール部材を介して横枠の小口端面を接合した際にも接合部に隙間が残る原因となる。
【0005】
一方、断熱性を考慮した建具では、枠体を構成する縦枠や横枠として、室内側の金属部分と室外側の金属部分との間に樹脂製のブリッジ材を介在させたものを適用するものがある。この種の枠体では、金属部分とブリッジ材との継ぎ目部分が見込み面に凹溝となって現れる場合がある。この凹溝は、シール部材を介して縦枠の見込み面に横枠の小口端面を接合した際に接合部に隙間を生じる原因となる。
【0006】
なお、上述の問題は、縦枠の見込み面に横枠の小口端面を接合する場合に限らず、加工部分や継ぎ目部分を有した第1形材の見込み面に第2形材の小口端面を接合する場合に同様に生じ得る。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、第1形材の見込み面に加工部分や継ぎ目部分が設けられている場合にも第2形材との接合部の止水性を確保することのできる形材の接合構造及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る形材の接合構造は、加工部分または継ぎ目部分を有した第1形材の見込み面にシール部材を介在させた状態で第2形材の小口端面を接合する形材の接合構造であって、前記第1形材の見込み面と前記シール部材との間において少なくとも前記加工部分または前記継ぎ目部分を含む領域に膨潤性を有した高吸水性樹脂を配設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1形材の見込み面に加工部分や継ぎ目部分が設けられ、シール部材を介して第2形材の小口端面を接合した場合に接合部に隙間が生じていたとしても、高吸水性樹脂が水を含んだ際に膨潤することによってこの隙間が塞がれることになる。従って、第1形材と第2形材との間の止水性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態である接合構造を適用して構成した建具を室内側から見た姿図である。
【
図2】
図1に示した建具の要部を概念的に示すもので、(a)は縦枠と上枠及び下枠との接合部分を示す分解図、(b)は縦枠の見込み面を示す図である。
【
図3】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は縦枠の下端部と下枠とを示す分解縦断面図、(b)は縦枠の下端部に加工を施した状態の図、(c)は縦枠の下端部にシール部材を接着させた状態の図、(d)は縦枠の下端部に下枠を接合させた状態の縦断面図である。
【
図4】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は縦枠の横断面図、(b)は縦枠の内周側となる見込み面から突出するヒレ部を切除した状態を示す横断面図、(c)は縦枠の内周側となる見込み面にシール部材を接着した状態の横断面図、(d)はシール部材を介して縦枠の内周側となる見込み面に下枠の小口端面を接合した状態の横断面図である。
【
図5】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は縦枠の内周側となる見込み面にシール部材を介して下枠の小口端面を接合した直後の状態を示す要部拡大横断面図、(b)はシール部材の接着層に混練した高吸水性樹脂が水を含んで膨張した状態の要部拡大横断面図である。
【
図6】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は縦枠の内周側となる見込み面にシール部材を介して下枠の小口端面を接合した直後の状態を示す要部拡大横断面図、(b)はシール部材の接着層に混練した高吸水性樹脂が水を含んで膨張した状態の要部拡大横断面図である。
【
図7】本発明の変形例1を示すもので、(a)は縦枠の内周側となる見込み面に対して接着面に粉状の高吸水性樹脂を分布させたシール部材を接着させる以前の状態を示す要部拡大分解横断面図、(b)は縦枠の内周側となる見込み面に対してシール部材を接着させた状態の要部拡大横断面図、(c)はシール部材を介して縦枠の内周側となる見込み面に下枠の小口端面を接合した状態の横断面図である。
【
図8】本発明の変形例2を示すもので、(a)は縦枠の内周側となる見込み面に対して高吸水性樹脂を混練した塗装用樹脂を塗布した状態を示す要部拡大分解横断面図、(b)は縦枠の内周側となる見込み面に対してシール部材を接着させた状態の要部拡大横断面図、(c)はシール部材を介して縦枠の内周側となる見込み面に下枠の小口端面を接合した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る形材の接合構造及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
図1~
図4は、本発明の実施の形態である形材の接合構造を適用した建具を示すものである。ここで例示する建具は、枠体10の内部に室内側の内障子1A及び室外側の外障子1Bを備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠(第1材)11の内周側となる見込み面11aにそれぞれシール部材2を介して上枠(第2形材:横枠)12の小口端面12a及び下枠(第2形材:横枠)13の小口端面13aを接合し、この状態から互いの間を連結することによって構成したものである。縦枠11と上枠12との接合構造及び縦枠11と下枠13との接合構造はほぼ共通したものである。このため、以下においては縦枠11と下枠13との接合構造について説明することとする。
【0013】
接合対象となる縦枠11は、
図4(a)に示すように、室内側となる内縦枠部11Aと、室外側となる外縦枠部11Bとの間を2つブリッジ材11Cによって連結したものである。ブリッジ材11Cは、それぞれ断熱性を有した樹脂によって成形したものである。内縦枠部11A及び外縦枠部11Bは、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。本実施の形態の内縦枠部11Aは、内縦基板部21、内縦ブリッジ連結部22、外周内縦ヒレ部23、内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25を一体に成形したものであり、外縦枠部11Bは、外縦基板部31、外縦ブリッジ連結部32、外周外縦ヒレ部33、内周外縦ヒレ部34を一体に成形したものである。
【0014】
内縦基板部21は、見込み方向に沿って延在した平板状を成すものである。内縦ブリッジ連結部22は、内縦基板部21の室外側となる縁部から外周に向けて延在したものである。外周内縦ヒレ部23は、内縦基板部21の室内側となる縁部から見付け方向に沿って外周に延在した後、室外に向けて屈曲したものである。内周内第1縦ヒレ部24は、内縦基板部21の内周側となる見込み面において室内側となる縁部から見付け方向に沿って内周に延在したものである。内周内第1縦ヒレ部24の延在縁部において室外に臨む部分には、障子1A,1Bとの間のタイト材(図示せず)を装着することが可能なポケット部24aが設けてある。内周内第2縦ヒレ部25は、内縦基板部21の内周側となる見込み面において室外側となる部分から見付け方向に沿って内周に延在したものである。
【0015】
外縦基板部31は、内縦基板部21と同様、見込み方向に沿って延在した平板状を成すものである。外縦ブリッジ連結部32は、外縦基板部31の室内側となる縁部から見付け方向に沿って外周に延在したものである。外周外縦ヒレ部33は、外縦基板部31の室外側となる縁部から外周に向けて延在した後、室内に向けて屈曲したものである。内周外縦ヒレ部34は、外縦基板部31の内周側となる見込み面において室外側となる縁部から内周に向けて延在したものである。
【0016】
上述の構成を有する内縦枠部11A及び外縦枠部11Bは、互いに対向する内縦ブリッジ連結部22及び外縦ブリッジ連結部32の間がブリッジ材11Cによって連結してある。ブリッジ材11Cによって連結した内縦枠部11A及び外縦枠部11Bは、内縦基板部21、外縦基板部31及びこれらの間を連結する内周側のブリッジ材11Cがほぼ同一の平面上に位置し、縦枠11の内周側となる見込み面11aを構成している。図からも明らかなように、この縦枠11の見込み面11aには、内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25、内周外縦ヒレ部34が内周側に向けて突出した状態にある。内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25、内周外縦ヒレ部34の突出寸法は、互いにほぼ等しい。また、縦枠11の見込み面11aには、内縦枠部11Aとブリッジ材11Cとの継ぎ目部分11b及び外縦枠部11Bとブリッジ材11Cとの継ぎ目部分11bが凹溝となって現れた状態となっている。
【0017】
一方、接合対象となる下枠13は、
図3(a)に示すように、室内側となる内下枠部13Aと、室外側となる外下枠部13Bとの間を2つブリッジ材13Cによって連結したものである。ブリッジ材13Cは、縦枠11のものと同様、断熱性を有した樹脂によって成形したものである。内下枠部13A及び外下枠部13Bは、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材である。本実施の形態の内下枠部13Aは、内中空体41、外周内第1下ヒレ部42、外周内第2下ヒレ部43、内周内下ヒレ部44、内レール部45を一体に成形したものであり、外下枠部13Bは、外下基板部51、外下ブリッジ連結部52、外周外下ヒレ部53、外レール部54を一体に成形したものである。
【0018】
内中空体41は、見込み方向に沿った寸法が、縦枠11に設けた内周内第1縦ヒレ部24から内周内第2縦ヒレ部25までの寸法とほぼ等しく、断面がほぼ長方形の中空状を成すものである。内中空体41には、2つのビスホール41aが設けてある。ビスホール41aは、内中空体41を構成する上壁41bの下面及び内中空体41を構成する下壁41cの下面にそれぞれ設けてある。外周内第1下ヒレ部42は、内中空体41の外周側かつ室内側の隅部から見付け方向に沿って外周に延在した後、室外に向けて屈曲したものである。外周内第2下ヒレ部43は、内中空体41の外周側かつ室外側の隅部から見付け方向に沿って外周に延在した後、室内に向けて屈曲したものである。外周内第1下ヒレ部42及び外周内第2下ヒレ部43の外周側への突出寸法は互いにほぼ等しい。内周内下ヒレ部44は、内中空体41の内周側かつ室内側の隅部から見付け方向に沿って内周に延在したものである。内周内下ヒレ部44の延在縁部において室外に臨む部分には、障子1A,1Bとの間のタイト材(図示せず)を装着することが可能なポケット部44aが設けてある。内レール部45は、内中空体41の内周側かつ室外側の隅部から見付け方向に沿って外周に延在したものである。内周内下ヒレ部44及び内レール部45の突出寸法は、互いにほぼ等しい。
【0019】
外下基板部51は、見込み方向に沿い、かつ室外に向けて漸次下方となるように延在した平板状を成すものである。外下基板部51の下面には、2カ所にビスホール51aが設けてある。外下ブリッジ連結部52は、外下基板部51の室内側となる縁部から見付け方向に沿って内外周に延在したものである。外下ブリッジ連結部52の外周側に延在した部分は、延在縁部が室外に向けて屈曲している。図示の例では、外下ブリッジ連結部52の延在寸法が、内中空体41の見付け方向に沿った寸法とほぼ同じであり、外下基板部51からの内周側への延在寸法と、外周側への延在寸法とが互いにほぼ等しい。外周外下ヒレ部53は、外下基板部51の室外側となる縁部から見付け方向に沿って外周に延在した後、室内に向けて屈曲したものである。外周外下ヒレ部53の突出寸法は、外下ブリッジ連結部52の外周側への突出寸法とほぼ等しい。外レール部54は、外下基板部51の内周側となる見込み面において外下ブリッジ連結部52と外周外下ヒレ部53との間に位置する部分から見付け方向に沿って内周に延在したものである。
【0020】
上述の構成を有する内下枠部13A及び外下枠部13Bは、内中空体41の室外に臨む見付け面から外周内第2下ヒレ部43にわたる部分と、外下ブリッジ連結部52との間がブリッジ材13Cによって連結してある。ブリッジ材13Cによって連結した内下枠部13A及び外下枠部13Bは、外周内第1下ヒレ部42の外周縁、外周内第2下ヒレ部43の外周縁、外下ブリッジ連結部52の外周縁、外周外下ヒレ部53の外周縁が見込み方向に沿った同一の平面上に位置した状態となる。
【0021】
上述した縦枠11の内周側となる見込み面11aに下枠13の小口端面13aを接合する場合には、まず、
図3(b)及び
図4(b)に示すように、縦枠11の見込み面11aから突出する内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25、内周外縦ヒレ部34を切除する加工を行う。より具体的に説明すると、内周内第1縦ヒレ部24及び内周内第2縦ヒレ部25については、下枠13の内下枠部13Aが当接される範囲に位置する加工部分24A,25Aを切除し、内周外縦ヒレ部34については、外下枠部13Bが当接される範囲に位置する加工部分34Aを切除する。下枠13の小口端面13aは、長手に直交する方向に沿って切断してある。
【0022】
次いで、
図3(c)及び
図4(c)に示すように、下枠13の断面を覆う大きさのシール部材2を縦枠11の見込み面11aに接着し、さらにシール部材2の範囲内に小口端面13aが当接する状態で下枠13を縦枠11に接合する。シール部材2を接着する場合には、上述した縦枠11の加工部分24A,25A,34Aを覆うようにする。この状態から縦枠11を介して下枠13のビスホール41a,51aにそれぞれネジ(図示せず)を螺合すれば、縦枠11と下枠13とを連結することができる。
【0023】
ここで、上述したように、縦枠11の見込み面11aには、
図5(a)に示すように、内縦枠部11Aとブリッジ材11Cとの継ぎ目部分11b及び外縦枠部11Bとブリッジ材11Cとの継ぎ目部分11bにそれぞれ凹溝が現れた状態にある。また、
図6(a)に示すように、内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25、内周外縦ヒレ部34の少なくとも一つでも完全に切除できていなかった場合には、縦枠11の見込み面11aに突部11cが設けられた状態となる。この結果、縦枠11の見込み面11aに対して隙間無くシール部材2を接着させることが困難となり、下枠13を連結した後においても互いの間を通じた漏水を招来する懸念がある。
【0024】
このため、本実施の形態では、シール部材2として、シート状を成す基材2aの一方の表面に接着層2bを有し、かつこの接着層2bに高吸水性樹脂(SAP:Super Absorbent Polymer)3を混練させたものを適用するようにしている。高吸水性樹脂3は、水を吸収すると膨張するとともにその水を保持する機能を有したものである。高吸水性樹脂3は、シール部材2の接着層2bに対して全面に均一に混練するようにしても良いし、
図3(c)中の破線で囲んだ領域Sのように、上述の継ぎ目部分11bの凹溝に対応する部分及び内周内第1縦ヒレ部24、内周内第2縦ヒレ部25、内周外縦ヒレ部34の加工部分24A,25A,34Aに対応する部分にのみ混練しても良い。この場合、継ぎ目部分11bの凹溝や加工部分24A,25A,34Aの全長にわたる部分に高吸水性樹脂3を配置する必要はなく、継ぎ目部分11bの凹溝や加工部分24A,25A,34Aの連続を絶つ位置であって、下枠13の小口端面13aに当接する位置(中空部でない位置)に高吸水性樹脂3が配置されていれば十分である。
【0025】
上記のように、シール部材2の接着層2bに高吸水性樹脂3を混練させた場合には、枠体10を組み立てた時点において縦枠11とシール部材2との間に隙間gが生じていたとしても、この隙間gに雨水等の水が進入すると、接着層2bに混練した高吸水性樹脂3が水を吸収して膨張する。これにより、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、縦枠11と下枠13との間の隙間gが、膨張した高吸水性樹脂3によって埋められることになり、水の通過を阻止することが可能となる。
【0026】
上述した実施の形態では、高吸水性樹脂3をシール部材2の接着層2bに混練させるようにしているため、別途高吸水性樹脂3を配置する作業を要することがなく、枠体10を組み立てる際の作業が煩雑化するおそれがない。しかしながら、高吸水性樹脂3をシール部材2と縦枠11の見込み面11aとの間に配置する配置する方法としては、必ずしもシール部材2の接着層2bに混練させる必要はなく、
図7に示す変形例1や
図8に示す変形例2のように、シール部材2の接着層2bに混練させずに縦枠11の見込み面11aとシール部材2との間に高吸水性樹脂3を配置することも可能である。
【0027】
すなわち、
図7に示す変形例1では、シール部材2の接着面に粉状を成す高吸水性樹脂3を直接分布させるようにしている。この場合においても、シール部材2の接着面全面に均一となるように高吸水性樹脂3を分布しても良いし、継ぎ目部分11bの凹溝やヒレ部24,25,34の加工部分24A,25A,34Aの連続を絶つ位置にのみ高吸水性樹脂3を分布させるようにしても良い。また
図8に示す変形例2では、高吸水性樹脂3を混練した塗装用樹脂4を縦枠11の見込み面11aに塗布した後にシール部材2を介して下枠13を接合させるようにしている。これらの変形例1及び変形例2においても、実施の形態と同様、枠体10を組み立てた時点において縦枠11とシール部材2との間に継ぎ目部分11bの凹溝や隙間gが生じていたとしても、この継ぎ目部分11bの凹溝や隙間gに雨水等の水が進入すると、高吸水性樹脂3が水を吸収して膨張するため、縦枠11と下枠13との間の継ぎ目部分11bの凹溝や隙間gが、膨張した高吸水性樹脂3によって埋められることになり、水の通過を阻止することが可能となる。変形例1及び変形例2において実施の形態1と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0028】
なお、上述した実施の形態では、引き違い窓を例示しているが、必ずしも引き違い窓である必要はなく、その他の建具にも適用することが可能である。形材である縦枠11及び下枠13の構成について詳述しているが、それぞれの具体的な形状は例示のためであって、必ずしもブリッジ材11C,13Cを有している必要がない等、本発明を限定するものではない。また、縦枠11の見込み面11aに上枠12の小口端面12aや下枠13の小口端面13aを接合させるようにしているが、上枠12や下枠13の見込み面に縦枠11の小口端面を接合する場合にも適用することが可能である。さらに、必ずしも枠体10を構成する形材(枠11,12,13)の接合構造に限らず、障子を構成する形材(框)の接合構造としても適用することが可能である。
【0029】
また、上述した実施の形態では、縦枠11の見込み面11aにシール部材2を接着するようにしているが、必ずしもシール部材2が接着層2bを有している必要はない。すなわち、見込み面11aが水平となるように縦枠11を配置し、この状態から見込み面11aにシール部材2を配置すれば、接着層2bを有していないシール部材2を介在させた状態で縦枠11の見込み面11aに下枠13の小口端面13aを接合させることが可能である。
【0030】
以上のように、本発明に係る形材の接合構造具は、加工部分または継ぎ目部分を有した第1形材の見込み面にシール部材を介在させた状態で第2形材の小口端面を接合する形材の接合構造であって、前記第1形材の見込み面と前記シール部材との間において少なくとも前記加工部分または前記継ぎ目部分を含む領域に膨潤性を有した高吸水性樹脂を配設することを特徴としている。
この発明によれば、第1形材の見込み面に加工部分や継ぎ目部分が設けられ、シール部材を介して第2形材の小口端面を接合した場合に接合部に隙間が生じていたとしても、高吸水性樹脂が水を含んだ際に膨潤することによってこの隙間が塞がれることになる。従って、第1形材と第2形材との間の止水性を確保することが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した形材の接合構造において、前記シール部材は、シート状を成す基材の一方の表面に前記高吸水性樹脂が混練された接着層を有したものであり、前記接着層を介して前記第1形材の見込み面に接着されることを特徴としている。
この発明によれば、シール材の接着層に高吸水性樹脂を混練しているため、高吸水性樹脂を配置する作業が不要となる。
【0032】
また本発明は、上述した形材の接合構造において、前記シール部材は、前記第1形材との接着面に粉状を成す前記高吸水性樹脂が分布されたものであり、前記接着面を介して前記第1形材の見込み面に当接されることを特徴としている。
この発明によれば、シール部材の接着面において必要となる部分にのみ高吸水性樹脂を分布させることができる。
【0033】
また本発明は、上述した形材の接合構造において、前記第1形材の見込み面に前記高吸水性樹脂が混練された塗装用樹脂を塗布し、前記塗装用樹脂に前記シール部材が接着されることを特徴としている。
この発明によれば、高吸水性樹脂を混練した塗装用樹脂を塗布するようにしているため、高吸水性樹脂を配置する作業を容易に実施することができる。
【0034】
また、本発明に係る建具は、上述した形材の接合構造を適用して縦枠の内周側となる見込み面に横枠の小口端面を接合させたことを特徴としている。
この発明によれば、第1形材の見込み面に加工部分や継ぎ目部分が設けられ、シール部材を介して第2形材の小口端面を接合した場合に接合部に隙間が生じていたとしても、高吸水性樹脂が水を含んだ際に膨潤することによってこの隙間が塞がれることになる。従って、第1形材と第2形材との間の止水性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
2 シール部材、2a 基材、2b 接着層、3 高吸水性樹脂、4 塗装用樹脂、11 縦枠、11a 見込み面、11b 継ぎ目部分、12 上枠、12a 小口端面、13 下枠、13a 小口端面、24A,25A,34A 加工部分