(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021150
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B28B11/24
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123783
(22)【出願日】2022-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正好
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 千秋
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 博
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の削減効果及びコンクリートの緻密化の効果の高いCO2ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法を提供する。
【解決手段】二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法において、コンクリートを製造する際の練り水に直径1μm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水を用いてコンクリートを製造する。また、二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを練り水として用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、
コンクリートを製造する際の練り水に直径1μm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水を用いてコンクリートを製造すること
を特徴とする二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記練り水に、前記二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを用いること
を特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートの養生水に水酸化カルシウム溶液を用いること
を特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素ナノバブル水(CO2ナノバブル水)を用いたコンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の要因と考えられている二酸化炭素を削減することが地球規模で叫ばれており、日本でも急速に二酸化炭素の削減に取り組まなければならない状況となっている。また、一方でコンクリート構造物の性能規定化の世界的な流れの中で構造物の長寿命化(高耐久化)に対する関心が高まっており、そのような状況下でコンクリートの要求性能の一つとして緻密化が求められている。このため、二酸化炭素を炭酸カルシウムとしてコンクリート中に固定化してコンクリートを緻密化・高品質化することが研究されている。
【0003】
そこで、本願発明者らは、微細気泡装置にCO2を封入することで、CO2ナノバブル水(NBW)を製造することが可能であることから、CO2ナノバブル水を用いてコンクリート構造物を製造することにより、二酸化炭素の削減とコンクリート構造物の緻密化の問題を両方解決できるのではないかと考えるに至った。
【0004】
例えば、特許文献1には、炭酸バブル水を準備する工程と炭酸バブル水を、セメント硬化体を有する物質に導入する第1の炭酸バブル水導入工程とを有し、セメント硬化体を高品質化する方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0019]~[0038]等参照)。
【0005】
また、特許文献2には、貯水可能な貯水域11を有し、貯水域11の内壁面がセメント系硬化体で構成されているコンクリート製貯水構造体1の炭酸化養生方法において、貯水域11を閉空間として空間内を減圧する減圧工程と、貯水域11に、二酸化炭素溶解水2Aを注水する注水工程と、を行うコンクリート製貯水構造体の炭酸化養生方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0025]~[0034]等参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載のセメント硬化体を高品質化する方法や特許文献2に記載のコンクリート製貯水構造体の炭酸化養生方法は、いずれも既に硬化したセメント硬化体やコンクリート製貯水構造体に炭酸バブル水を養生水として用いるものであった。このため、既に水和反応が進行した後に炭酸水を供給するため緻密化できるとされているものの充分ではないだけでなく、二酸化炭素の削減効果も十分ではなかった。なお、後述のように、本願の発明者の実験によれば、養生水に二酸化炭酸ナノバブル水(NBW)を用いてもコンクリートの顕著な緻密化の効果は確認することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-214030号公報
【特許文献2】特開2015-54806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、二酸化炭素の削減効果及びコンクリートの緻密化の効果の高いCO2ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、コンクリートを製造する際の練り水に直径1μm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水を用いてコンクリートを製造することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、請求項1に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法において、前記練り水に、前記二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを用いることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、請求項1又は2に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法において、前記コンクリートの養生水に水酸化カルシウム溶液を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1~3に係る発明によれば、コンクリートの緻密化及び高品質化することができるとともに、二酸化炭素の排出を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、W/C=65%透水試験の練り水に機能水を用いた材齢7日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図2】
図2は、同上の透水試験の練り水に機能水を用いた材齢28日供試体による6日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図3】
図3は、同上の透水試験の練り水に機能水を用いて水道水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図4】
図4は、同上の透水試験の練り水に純水を用いて材齢7日まで純水で養生し、材齢7日から機能水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図5】
図5は、W/C=35%透水試験の練り水に機能水を用いて水道水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図6】
図6は、同上の透水試験の練り水に純水を用いて材齢7日まで水道水で養生し、材齢7日から機能水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図7】
図7は、W/C=35%透水試験の練り水に機能水を用いて純水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図8】
図8は、同上の透水試験の練り水に純水を用いて機能水で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図9】
図9は、同上の透水試験の練り水に機能水を用いて水酸化カルシウムCa(OH)
2飽和上澄み液で養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【
図10】
図10は、同上の透水試験の練り水に機能水を用いて材齢7日まで純水で養生し、材齢7日から機能水を噴霧して養生した材齢28日供試体による7日間の累積透水量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法の一実施形態について説明する。
【0015】
<二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法>
本発明の実施形態に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法(以下、単に本コンクリートの製造方法ともいう。)では、先ず、コンクリートの用途に応じて、所定の単位水量(W)、所定の水・セメント比(W/C)、所定の細骨材率(S/A)、所定の空気量(a)となるように配合を決定し、必要な各材料の量を算出する。
【0016】
そして、本コンクリートの製造方法では、決定した配合に応じた量のセメント、粗骨材、細骨材、各種混和材及び混和剤に、練り水として、所定の単位水量(W)となる二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)を用いてコンクリートを製造する。
【0017】
ここで、二酸化炭素ナノバブル水とは、ナノオーダー(1μm以下)の直径の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する水のことを指しており、ナノオーダーの二酸化炭素ガスの微細気泡に加え、マイクロオーダー(1~100μm)の微細二酸化炭素ガスを含有するマクロナノバブル水を含む概念である。
【0018】
また、二酸化炭素ナノバブルの生成方法としては、二酸化炭素気体と水を混合し、高速で旋回させることで二酸化炭素の気泡を作る「旋回流方式」、二酸化炭素気体に圧力をかけ、水中に溶け込ませて、一気に開放することで二酸化炭素の気泡を作る「加圧溶解方式」、オリフィス等の微細孔へ二酸化炭素気体に圧力をかけて通すことで二酸化炭素の気泡を作る「微細孔方式」、超音波でキャビテーションを起こし水中の二酸化炭素気体を膨張させて二酸化炭素の気泡を作る「超音波方式」など、が例示される。しかし、二酸化炭素ナノバブル水の生成方法は、特に限定されるものではなく、マイクロオーダー(1~100μm)の微細二酸化炭素ガスを含有するマクロナノバブル水を生成できる方法であればよい。
【0019】
但し、本コンクリートの製造方法では、ダン・タクマ社製の製造装置を用いて、前記「加圧溶解方式」の1pass方式又は2分間のloop方式で二酸化炭素ナノバブル水を生成する。安価で容易に短時間で二酸化炭素ナノバブル水を大量に生成することができるからである。
【0020】
なお、二酸化炭素ナノバブル水は製造装置から製造後に少なくとも5分以上経過したものを使うことで所定の効果を発揮する。その間、オープンな状態で放置しておいてもよく、また容器に入れて長期間保管してもよい。練り水として、もしくは水酸化カルシウム飽和溶液との混合用の水としての利用は、製造から数か月経過したものであっても効果は変わらない。
【0021】
本発明に係る二酸化炭素ナノバブルは直径が200nmよりも微小であり、長期に安定化したものである。100nmよりも小さなものが大量に含まれるため、その計測は難しいが、二酸化炭素ナノバブルに含まれる二酸化炭素の分量は水溶液の体積に対して0.03%以下である。これは超音波を利用した方法であり、二酸化炭素ナノバブル水に超音波を放射して溶液中から浮上してきた気泡をルシャテリエ瓶などにトラップし、得られた気体の容量と二酸化炭素濃度を測定することにより求められる。
【0022】
但し、本発明に係る二酸化炭素バブルは製造から数か月たった状況でも分かる通り、溶存二酸化炭素とは無関係なものである。水溶液に超音波を放射すると溶解している二酸化炭素も一部が気泡としてガス化するため、二酸化炭素ナノバブル自体の容積を正確に測ることは出来ない。方法として二酸化炭素ナノバブル水に塩酸などの強酸を加えてpHを4程度にまで低下した後に、窒素ガスなどの二酸化炭素を含まない気体で3時間程度バブリングを行う。これにより大部分の溶解二酸化炭素を空気中に放出できる。その後に水酸化ナトリウムなどの塩基を加えてpHを7程度の中性領域に戻した後で超音波を照射する。これにより本技術に係る二酸化炭素ナノバブルに含まれる気泡量(二酸化炭素量)が水溶液の体積の0.03%以下であることが分かる。なお、ナノバブルは真球に近い気泡であり、表面張力の効果により加圧された状態で存在している。大部分のナノバブルは100nmよりも小さく、気泡内部の圧力は30気圧よりも高い。そのため、正確な二酸化炭素ナノバブルの体積(トータル量)は大気圧環境下で求めた二酸化炭素量の1/30以下の値である。
【0023】
また、本コンクリートの製造方法では、二酸化炭素ナノバブル水に加え、練り水に、水酸化カルシウム飽和溶液を二酸化炭素ナノバブル水に対して重量%で25%~50%置換して混合したものを用いることが好ましい。水酸化カルシウムのイオン化したCa2+やOH-がコンクリートの毛細管空隙内に侵入してコンクリートの緻密化することができるからである。
【0024】
そして、本コンクリートの製造方法では、コンクリートの養生水として、水酸化カルシウムの飽和上澄み水(水酸化カルシウム飽和溶液)を用いて所定の強度が発現するまで養生する。練り水と同様に、養生水として供給される水酸化カルシウムのイオン化したCa2+やOH-がコンクリートの毛細管空隙内に侵入してコンクリートの緻密化することができるだけでなく、コンクリートの微細な初期の亀裂に入り込み、コンクリートのひび割れを抑制することができるからである。
【0025】
以上説明した本発明の実施形態に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法によれば、コンクリートの緻密化することができ、高品質化・高耐久性化することができる。また、コンクリートの重量に対しては微量ではあるが、二酸化炭素を産業として大量に使用されるコンクリート内に固定化して、二酸化炭素の排出を抑制することができる。
【0026】
また、本実施形態に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法によれば、練り水や養生水として水酸化カルシウム溶液を使用するので、イオン化したCa2+やOH-がコンクリートの毛細管空隙内に侵入してコンクリートの緻密化することができるだけでなく、コンクリートのひび割れを抑制することができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0028】
特に、コンクリートとして、結合材としてセメントを用いて骨材を結合するものを例示して説明したが、本発明に係るコンクリートは、広義の意味でのコンクリートを指し、セメントを用いて骨材を結合するものに限られず、石灰、石膏、アスファルト、プラスチックなどの結合材で粗骨材や細骨材からなる骨材を固めた複合材料を含むものである。練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用いた場合は、二酸化炭素を炭酸カルシウムとしてコンクリート中の微細空間に固定化することができると考えられるからである。
【0029】
<W/C=65%透水試験>
次に、本発明に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法の効果を検証するために行った透水試験について説明する。本透水試験は、供試体として複数種類のコンクリート版を作成し、透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測した。
【0030】
供試体のコンクリートの基本配合は、(1)単位水量(W)=175(kg/m3)(2)水・セメント比(W/C)=65%(3)細骨材率(S/A)=50%(4)空気量(a)=4.5%となるように配合した。より具体的には、次の表1となるように配合した。
【0031】
【0032】
(練り水に機能水(CO2NBW))
また、供試体のコンクリートの製造には、前述の本発明の実施形態に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法と同様に、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を含有する機能水(以下、単に機能水ともいう。)を用いた。供試体のコンクリートの製造に用いた機能水は、製造条件が異なるA,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)を用いた。A,B,Cの3種類のタイプは、次の表2に示すように、製造条件として塩化ナトリウム(NaCl)と、塩化カリウム(KCl)と、硫酸カルシウム2水和水(CaSO4・2H2O)と、硝酸マグネシウム6水和水(Mg(NO3)・6H2O)の成分、及び二酸化炭素ナノバブル水の製造方式が異なるものである。
【0033】
【0034】
また、供試体としては、比較のために、純水、水酸化カルシウムCa(OH)2溶液を練り水に使用したものも製造した。その上、機能水として、3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水に、練り混ぜる直前に二酸化炭素ナノバブル水に対して水酸化カルシウム飽和溶液を重量%で25~50%置換して加えたものも使用し、計8種類の練り水で製造したコンクリートからなる供試体を作成し、透水試験を行った。
【0035】
なお、表2に示す二酸化炭素ナノバブル水の製造方式の1pass(方式)とは、単純に一方向に加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成することを指し、2分間loop(方式)とは、濃度を高くなるように2分間循環させて繰り返し加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成することを指している。
【0036】
以上の計8種類の異なる水を練り水に用いて製造したコンクリート版の供試体を材齢7日の翌日から7日間透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図1に示し、材齢28日から6日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図2に示す。
【0037】
図1のグラフに示すように、純水を練り水に用いた供試体と比べて全ての場合で累積透水量が減少しており、練り水に前述の機能水を用いた場合は、コンクリートを緻密化して高品質化すする効果があることが分かる。つまり、コンクリートの練り水に、二酸化炭素ナノバブル水を用いるとコンクリートを緻密化に寄与することが分かった。
【0038】
また、材齢7日のコンクリート効果の初期には、水酸化カルシウム溶液を練り水に使用した場合でもコンクリートの緻密化に寄与することが分かった。それに加え、練り水に、二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム飽和溶液を25%~50%置換して混合したものを用いると、さらにコンクリートの緻密化に寄与することが分かった。
【0039】
そして、
図2に示すように、コンリートにおいて所定強度が発現したと考えられる28日からの6日間の透水試験では、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用いたA,B,Cの3種類のタイプ全てにおいて大幅にコンクリートの緻密化が促進されたことが分かる。一方、水酸化カルシウム溶液を混合したものは、コンクリートの緻密化が促進されておらず、二酸化炭素ナノバブル水の効果が大きいことが分かる。
【0040】
(練り水に機能水+養生水に水道水)
次に、前述と同様に、計8種類の異なる水を練り水に用いて製造したコンクリート版の供試体に、水道水を養生水として使用して材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図3に示す。
【0041】
図3のグラフは、
図2に示した結果と略同じ結果となり、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用いたA,B,Cの3種類のタイプ全てにおいて大幅にコンクリートの緻密化が促進されたことが分かる。一方、水酸化カルシウム溶液を混合したものは、コンクリートの緻密化が促進されておらず、二酸化炭素ナノバブル水の効果が大きいことが分かる。
【0042】
(練り水に純水+養生水に機能水)
次に、コンクリートの基本配合を、前述のように、(1)単位水量(W)=175(kg/m3)(2)水・セメント比(W/C)=65%(3)細骨材率(S/A)=50%(4)空気量(a)=4.5%となるように配合(表1の配合)し、練り水に純水を使用して同一配合の8つの供試体を製造した。そして、表2に示したA,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を製造して、前述の機能水と同様に、計8種類の異なる水を養生水に用いて材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図4に示す。
【0043】
図4のグラフに示すように、A,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を養生水に使用した場合でも、純水を養生水として使用した場合より全て累積透水量が上回る結果となった。つまり、養生水に二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を使用してもコンクリートの緻密化の効果は見られなかった。
【0044】
一方、養生水に水酸化カルシウムCa(OH)2飽和上澄み液を使用した場合、コンクリートの緻密化の効果が確認できた。A,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム飽和溶液を25%~50%置換して混合したものを使用した場合でもコンクリートの緻密化の効果が確認できた。
【0045】
これは、コンクリート中の毛細管空隙の径が約100nmしかないため、二酸化炭素ナノバブルの多くが侵入できなかったものと考えられる。一方、水酸化カルシウム溶液は、イオン化したCa2+やOH-が毛細管空隙内に侵入できたためと考えられる。
【0046】
<W/C=35%透水試験>
次に、前述の供試体とは配合条件である水セメント比が大きく異なる複数種類のコンクリート版を作成し、材齢28日から7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測し、前述のW/C=65%透水試験の結果と同様になるか否かを検証した。
【0047】
本試験の供試体のコンクリートの基本配合は、(1)単位水量(W)=165(kg/m3)(2)水・セメント比(W/C)=35%(3)細骨材率(S/A)=43%(4)空気量(a)=4.5%となるように配合した。より具体的には、次の表3となるように配合した。
【0048】
【0049】
(練り水に機能水(CO2NBW))
先ず、練り水に機能水を使用した場合の効果を検証するために、供試体のコンクリート製造の際の練り水に機能水を用いた。機能水は、W/C=65%透水試験と同様に、表2に示したA,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)を用いた。
【0050】
また、W/C=65%透水試験と同様に、比較のために、純水、水酸化カルシウムCa(OH)2溶液を練り水に使用したものも製造した。その上、機能水として、3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水に、練り混ぜる直前に二酸化炭素ナノバブル水に対して重量%で25~50の水酸化カルシウム溶液を加えたものも使用し、W/C=65%透水試験と同様に、計8種類の練り水で製造したコンクリートからなる供試体を作成し、透水試験を行った。
【0051】
以上の計8種類の異なる水を練り水に用いて製造したコンクリート版の供試体を、養生水として水道水を使用して材齢28日まで養生し、材齢28日の翌日から7日間透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図5に示す。
【0052】
図5のグラフに示すように、W/C=65%透水試験と同様に、純水を練り水に用いた供試体と比べて全ての場合で累積透水量が減少しており、練り水に前述の機能水を用いた場合にコンクリートを緻密化して高品質化する効果があることが分かる。つまり、コンクリートの練り水に、二酸化炭素ナノバブル水を用いるとW/C=35%のコンクリートでもコンクリートを緻密化できることが確認できた。
【0053】
また、W/C=65%透水試験と同様に、材齢7日のコンクリート効果の初期には、水酸化カルシウム溶液を練り水に使用した場合でもコンクリートの緻密化に寄与することが確認できた。それに加え、練り水に、二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム飽和溶液を25%~50%置換して混合したものを用いると、さらにコンクリートの緻密化に寄与することが分かった。
【0054】
(練り水に純水+養生水に機能水)
次に、コンクリートの基本配合を、前述のように、(1)単位水量(W)=165(kg/m
3)(2)水・セメント比(W/C)=35%(3)細骨材率(S/A)=43%(4)空気量(a)=4.5%となるように配合し、練り水に純水を使用して同一配合の8つの供試体を製造した。そして、表2に示したA,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を製造して、前述の機能水と同様に、計8種類の異なる水を養生水に用いて材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図6に示す。
【0055】
図6のグラフに示すように、A,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を養生水に使用した場合でも、純水を養生水として使用した場合と比べて、Bタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)だけ累積透水量が下回るもののAタイプ及びCタイプの二酸化炭素ナノバブル水は、逆に累積透水量が増加する結果となった。つまり、養生水に二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を使用しても顕著なコンクリートの緻密化の効果は見られなかった。
【0056】
一方、養生水に水酸化カルシウムCa(OH)2溶液を使用した場合、W/C=65%透水試験と同様に、コンクリートの緻密化の効果が確認できた。A,B,Cの3種類のタイプの二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム飽和溶液を25%~50%置換して混合したものを使用した場合でもコンクリートの緻密化の効果が確認できた。これもW/C=65%透水試験と同様の結果である。
【0057】
(練り水に機能水+養生水に機能水)
前述のように、W/C=65%透水試験及びW/C=35%透水試験の結果では、練り水に機能水である二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)を使用した場合の緻密化の効果が確認できたとともに、養生水に機能水を用いた場合の有用性が確認できなった。この結果を受け、練り水に機能水を使用するとともに、養生水に緻密効果が確認できた水酸化カルシウムCa(OH)2飽和上澄み液を使用した場合の有用性と、養生水の供給方法を噴霧養生に変更して機能水を供給した場合の検証を行った。
【0058】
比較するために、pattern1として、再度練り水に機能水を使用し、養生水に純水を使用して材齢0日~材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図7に示す。
【0059】
具体的には、前述のように、(1)単位水量(W)=165(kg/m3)(2)水・セメント比(W/C)=35%(3)細骨材率(S/A)=43%(4)空気量(a)=4.5%の表3の配合で、5種類の供試体を作成した。
【0060】
また、今回は、練り水に、(1)純水、(2)水酸化カルシウムCa(OH)2溶液、(3)Aタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(4)Bタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(5)Cタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)の計5種類のみを使用して供試体を作成し、透水試験を行った。
【0061】
pattern2は、練り水に純水を使用し、養生水に機能水を使用して材齢0日~材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図8に示す。
【0062】
但し、機能水の場合も、今回は、(1)純水、(2)水酸化カルシウムCa(OH)2飽和上澄み液、(3)Aタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(4)Bタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(5)Cタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)の計5種類のみを使用して供試体を作成して透水試験を行った。
【0063】
pattern3は、練り水に(1)純水、(2)水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液、(3)Aタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(4)Bタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)、(5)Cタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)の計5種類の機能水(比較のため純水含む)を使用した。但し、養生水には、水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液を使用して材齢0日~材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図9に示す。
【0064】
pattern4は、練り水に(1)純水、(2)水酸化カルシウムCa(OH)2溶液、(3)Aタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(4)Bタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)、(5)Cタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO2NBW)の計5種類の機能水(比較のため純水含む)を使用した。
【0065】
そして、養生水にも、(1)純水、(2)水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液、(3)Aタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)、(4)Bタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)、(5)Cタイプ二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)の計5種類の機能水(比較のため純水含む)を使用した。但し、養生水の供給方法は、材齢7日までは、純水で養生し、その後、供試体の表面から1日に5分間、養生水を噴霧する噴霧養生とした。このように、材齢7日までの純水の養生後、計5種類の機能水(比較のため純水含む)を使用して材齢8日~材齢28日まで養生し、その後7日間の透水試験を行ってその累積透水量(ml)を計測したものを
図10に示す。
【0066】
図7のグラフから明らかなように、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用いたA,B,Cの3種類のタイプ全てにおいて大幅にコンクリートの緻密化が促進されたことが分かる。一方、水酸化カルシウム溶液を混合した場合でも、コンクリートの緻密化の効果を確認することができる。
【0067】
図8のグラフでは、
図6のグラフの場合と相違して、養生水にA~Cタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を用いた場合でも、養生水に純水を用いた場合と比べて緻密化の効果は確認できる。しかし、養生水に水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液のみを使用した場合より二酸化炭素ナノバブル水を使用した場合の方が緻密化の効果が低い結果となった。よって、
図6の結果も踏まえると、二酸化炭素ナノバブル水をコンクリートの養生水として用いた場合のコンクリートの緻密化の顕著な効果は見られないが、水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液を養生水として用いた場合は、コンクリートの緻密化の顕著な効果を確認することができた。
【0068】
図9のグラフから明らかなように、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用い、養生水として水酸化カルシウムCa(OH)
2溶液を使用した場合は、大幅にコンクリートの緻密化が促進されたことが分かる。また、養生水として水酸化カルシウムの飽和溶液と二酸化炭素ナノバブル水を混合した場合でも、コンクリートの緻密化の効果を確認できる。
【0069】
図10のグラフでは、養生水にA~Cタイプの二酸化炭素ナノバブル水(CO
2NBW)を用いた場合でも、養生水に純水を用いた場合と比べて緻密化の効果は確認できる。しかし、
図7のグラフと対比すると、コンクリートの緻密化が促進されたと言えず、養生水に二酸化炭素ナノバブル水を用いた効果より、練り水に二酸化炭素ナノバブル水を用いた効果が大きいものと考えられる。よって、養生水として二酸化炭素ナノバブル水を使用した場合は、噴霧による供給でも二酸化炭素ナノバブル水の顕著なコンクリートの緻密化の効果を確認することはできなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、
コンクリートを製造する際の練り水に、一方向に加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成する1pass(方式)、又は濃度が高くなるように循環させて繰り返し加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成するloop(方式)のいずれかの方式で生成されて少なくとも5分以上経過した直径100nm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水を用いてコンクリートを製造すること
を特徴とする二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記練り水に、前記二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを用いること
を特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートの養生水に水酸化カルシウム溶液を用いること
を特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項1に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、
コンクリートを製造する際の練り水に、一方向に加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成する1pass(方式)、又は濃度が高くなるように循環させて繰り返し加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成するloop(方式)のいずれかの方式で生成されて少なくとも5分以上経過した直径100nm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水を用いてコンクリートを製造することを特徴とする。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、
コンクリートを製造する際の練り水に、一方向に加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成する1pass(方式)、又は濃度が高くなるように循環させて繰り返し加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成するloop(方式)のいずれかの方式で生成されて少なくとも5分以上経過した直径100nm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを用いてコンクリートを製造すること
を特徴とする二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記コンクリートの養生水に水酸化カルシウム溶液を用いること
を特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項1に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法であって、コンクリートを製造する際の練り水に、一方向に加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成する1pass(方式)、又は濃度が高くなるように循環させて繰り返し加圧溶解方式で二酸化炭素ナノバブルを生成するloop(方式)のいずれかの方式で生成されて少なくとも5分以上経過した直径100nm以下の二酸化炭素ガスの微細気泡を含有する二酸化炭素ナノバブル水に水酸化カルシウム溶液を混合したものを用いてコンクリートを製造することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項2に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法は、請求項1に係る二酸化炭素ナノバブル水を用いたコンクリートの製造方法において、前記コンクリートの養生水に水酸化カルシウム溶液を用いることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
請求項1及び2に係る発明によれば、コンクリートの緻密化及び高品質化することができるとともに、二酸化炭素の排出を削減することができる。