IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021152
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20240208BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20240208BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240208BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08L67/03
C08K5/09
C08K5/07
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123786
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 麻由美
(72)【発明者】
【氏名】原田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】灘波 朋也
(72)【発明者】
【氏名】坂本 純
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK42A
4F100AT00
4F100BA01
4F100EJ383
4F100EJ38A
4F100GB41
4F100JL16
4J002CF001
4J002CF051
4J002DE236
4J002EE019
4J002EF098
4J002EF117
4J002FD016
4J002GB00
4J002GC00
4J002GF00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明は、リサイクル樹脂を適用し、フィルム表面の異物の少ないポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】ポリエステルを解重合するケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とポリエステルを再溶融するマテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含み、テレフタル酸含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として50ppm以下であるポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルを解重合するケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とポリエステルを再溶融するマテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含み、テレフタル酸含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として50ppm以下であるポリエステルフィルム。
【請求項2】
モノヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下およびビスヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下である請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
アセトアルデヒド含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として20ppm以下である請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
2層以上積層されていることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
いずれかの片表層にケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含んでいる請求項4記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムである請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムが積層セラミックコンデンサー製造用離型フィルム、ドライフィルムレジスト用フィルム、偏光板離型用フィルム、光学離型用フィルムから選択されるいずれかである請求項6記載のポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルリサイクルおよびマテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含むポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。ポリエステルの中でも、特にポリエチレンテレフタレート(以降PETと記す)は、透明性や加工性に優れていることから、光学用フィルムや離型用フィルムなど高品位性が求められる用途に幅広く使われているが、離型用フィルムのような工程用フィルムでは使用後廃棄となることから、近年環境負荷低減が求められている。
環境負荷の低減として、廃棄となるポリエステル樹脂を燃焼させ熱エネルギーを得るサーマルリサイクルがあるが、サーマルリサイクルを行うと、二酸化炭素の発生があること、またポリエステル原料が損失することから、ポリエステルを再生産するためには新たに石油原料を使用する必要がある。
これらの課題に対して、特許文献1では、ペットボトルから回収されたフィルムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-7175号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ペットボトルからリサイクルされたポリエステル樹脂を用いた積層フィルムが開示されている。しかしながら、ポリエステル樹脂を再溶融するマテリアルリサイクルを繰り返すことで、ポリエステル樹脂は熱分解・加水分解・酸化分解が進行し、着色や異物の発生、分子量の低下による機械強度の低下といった品位の低下が課題となる。
本発明の目的は、リサイクル樹脂を適用し、フィルム表面の異物が少ないポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、リサイクル樹脂を適用し、フィルム表面の異物が少ないポリエステルフィルムに到達した。
本発明の目的は以下の手段によって達成される。
【0006】
(1)ポリエステルを解重合するケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とポリエステルを再溶融するマテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含み、テレフタル酸含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として50ppm以下であるポリエステルフィルム。
【0007】
(2)モノヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下およびビスヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下である(1)記載のポリエステルフィルム。
【0008】
(3)アセトアルデヒド含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として20ppm以下である(1)記載のポリエステルフィルム。
【0009】
(4)2層以上積層されていることを特徴とする(1)記載のポリエステルフィルム。
【0010】
(5)いずれかの片表層にケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含んでいる(4)記載のポリエステルフィルム。
【0011】
(6)工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムである(1)に記載のポリエステルフィルム。
(7)工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムが積層セラミックコンデンサー製造用離型フィルム、ドライフィルムレジスト用フィルム、偏光板離型用フィルム、光学離型用フィルムから選択されるいずれかである(6)のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、リサイクル樹脂を適用し、フィルム表面の異物の少ないポリエステルフィルムを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムとは、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合して得られるポリエステル樹脂組成物を用いてなるフィルムである。ジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、鎖状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸など種々のジカルボン酸成分を用いることができる。その中でも、ポリエステル樹脂組成物の機械的特性、耐熱性、耐加水分解性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそのエステル形成誘導体成分であることが好ましい。特には、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びこれらのエステル形成誘導体成分が重合性、機械的特性から好ましく、テレフタル酸であることが最も好ましい。
【0014】
ジオール成分としては、各種ジオールを用いることができる。例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環式ジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールS,スチレングリコール、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどの芳香環式ジオールが例示できる。この中で、機械的特性の観点からエチレングリコールが特に好ましい。
【0015】
また、本発明の効果を損ねない範囲で、前記ジカルボン酸成分やジオール成分、さらにはヒドロキシカルボン酸などを複数種類もちいて共重合されたものでも構わない。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムは、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物と、マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とを含んでいることが必要である。
【0017】
ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とは、ペットボトルやポリエステルフィルム、衣服、容器など使用済みのポリエステル製品や、成形加工工程において発生した屑を用い、これらを解重合し、精製処理等して再重合を行ったポリエステル樹脂組成物である。ポリエステルフィルムをリサイクルの元原料とする場合は、工程離型用二軸延伸ポリエステルを用いることが好ましい。
【0018】
ポリエステル樹脂組成物の解重合の手法は、エチレングリコールにて解重合を行い、ビスヒドロキシエチルテレフタレートやその数量体を得、再重合する手法、エチレングリコールにて解重合を行った後、メタノール分解を行い、ジメチルテレフタレートを得、再重合する手法、加水分解を行いテレフタル酸を得、再重合する手法があるが、これらに限定されない。ケミカルリサイクルでは、ビスヒドロキシエチルテレフタレートやその数量体、ジメチルテレフタレート、テレフタル酸といったモノマーやオリゴマーへと解重合し、精製を行い、これらを原料として再重合するので、リサイクルを実施していないバージンポリエステル樹脂組成物と同等の物性を得ることが可能となる。バージンポリエステル樹脂組成物とは、石油由来原料もしくはバイオ由来原料を用いて製造された、未使用のポリエステル樹脂組成物である。なお、必要に応じて、ケミカルリサイクルで解重合された低重合体に対し、新たなジカルボン酸成分やグリコール成分を混入させても構わない。
【0019】
マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とは、ペットボトルやポリエステルフィルム、衣服、容器など使用済みのポリエステルや、成形加工工程において発生した屑を回収し、これらを必要に応じて粉砕、洗浄、異物除去等を行い、フレーク状や溶融成形してペレット状へと成形したポリエステル樹脂組成物を溶融してフィルムなどにする際の、当該ポリエステル樹脂組成物である。ポリエステルフィルムをリサイクルの元原料とする場合は、工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることが好ましい。
【0020】
マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物は、複数回の熱成形や成形品としての使用履歴があるため、ポリエステル樹脂自体の劣化が進んでおり、バージンポリエステル樹脂組成物よりも品位は低くなる。
【0021】
本発明のポリエステルフィルムは、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物と、マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含んでいることが必要であり、他の成分として、リサイクルを実施していないバージンポリエステル樹脂組成物などを含んでいても構わない。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムにおいて、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物は、全体の7重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上である。また上限としては、環境負荷やコストの点から、80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下である。また、マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物は、全体の20重量%以上であることが好ましく、より好ましくは40重量%以上である。上限としては、フィルム品位の点から、90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは80重量%以下である。マテリアルリサイクルは、環境負荷やコストの点で好ましいリサイクル手法であるが、溶融成形や、ペレット化など、繰り返しポリエステル樹脂組成物には熱履歴がかかる。この熱履歴によって、熱分解や加水分解、酸化分解が進行し、フィルム品位の低下を招く。熱分解や加水分解、酸化分解が進行することで、ポリエステルは分子鎖が切断され、テレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタレート、ビスヒドロキシエチルテレフタレート等のポリエステルのオリゴマーやモノマーが発生する。ポリエステルのオリゴマーやモノマーは、昇華性があるため、その含有量が多い場合、ポリエステルフィルム成形時に昇華し、工程汚れやフィルムの表面欠点を引き起こす。本発明では、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物と、マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を共に使用することで、リサイクルフィルムとして環境負荷低減を図りつつ、高いフィルム品位を実現することが可能である。
【0023】
また、環境負荷低減のため、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物とマテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物の総和として、ポリエステルフィルム全体の80重量%以上であることが好ましく、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、テレフタル酸含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として50ppm以下である必要があり、40ppm以下であることがより好ましい。テレフタル酸は、ポリエステル樹脂のモノマー成分であり、マテリアルリサイクルによって、繰り返し再溶融されることによる熱分解・加水分解・酸化分解が起こることで、含有量が増加する。テレフタル酸は昇華性があるため、含有量が多い場合、ポリエステルフィルム成形時に昇華し、工程汚れやフィルムの表面欠点を引き起こす。上記範囲を満たすことで、工程離型用フィルム等に供しても問題のない品位とすることができる。
【0025】
また、本発明のポリエステルフィルムは、モノヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下およびビスヒドロキシエチルテレフタレート含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として100ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、双方ともに90ppm以下である。モノヒドロキシエチルテレフタレートとビスヒドロキシエチルテレフタレートは、ポリエステル樹脂のオリゴマーであり、テレフタル酸同様にマテリアルリサイクルによって、繰り返し再溶融されることによる熱分解・加水分解・酸化分解が起こることで、含有量が増加する。含有量が多い場合、ポリエステルフィルム成形時に昇華し、工程汚れやフィルムの表面欠点を引き起こす。上記範囲を満たすことで、工程離型用フィルム等に供しても問題のない品位とすることができる。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムは、アセトアルデヒド含有量がポリエステルフィルム総重量を基準として20ppm以下であることが好ましく、より好ましくは17ppm以下である。アセトアルデヒドは、ポリエステル樹脂の熱分解によって発生し、ポリエステルフィルムの黄変の要因となり、品位低下を引き起こす。上記範囲を満たすことで、工程離型用フィルム等に供しても問題のない品位とすることができる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムは、2層以上の積層フィルムであることが好ましい。その中でも、いずれかの片表層にケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂組成物を含んでいることが好ましい。ケミカルリサイクルでは、成形加工時やマテリアルリサイクルが繰り返され、熱履歴がかかったポリエステル樹脂を元原料としても、バージンポリエステル樹脂組成物と同等まで品位を再生することが可能であり、再重合時には必要に応じて粒子やその他添加物を添加することが可能であることから、特に表層に用いることで、品位の高いポリエステルフィルムとすることができる。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどいずれの延伸形態でも構わないが、機械強度の点から、二軸延伸フィルムであることが好ましい。さらに本発明のポリエステルフィルムは、工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムに好適に使用することができる。これは、該用途のフィルムは離型後に不要となり、リサイクルの元原料として活用することが好適であり、さらに該用途へリサイクルすることがサーキュラーエコノミーの観点から好ましい。このような工程用離型フィルムとしては、具体的には積層セラミックコンデンサー(MLCC)製造用離型フィルム、ドライフィルムレジスト用フィルム、偏光板離型用フィルム、光学離型用フィルムに好適に使用することができる。
以下、二軸延伸ポリエステルフィルムを得る方法を例示する。
ポリエステル樹脂を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する手法(溶融キャスト法)、ポリエステル樹脂を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
また、積層フィルムの場合は、積層する各層のポリエステル樹脂を別の押出機に投入し溶融してから合流させ、口金から冷却したキャストドラム上に共押出してシート状に加工する方法(共押出し法により溶融製膜する方法)を好ましく用いることができる。以下、本方法について詳細に説明する。
まず、各層に対応する押出機にポリエステル樹脂をそれぞれ投入し、加熱溶融押出する。合流ブロックを用いて積層し、口金から表面温度10~60℃に冷却したキャストドラム上に共押出し、静電気により密着冷却固化させ、未延伸フィルムを作成する。この時、押出機で溶融したポリエステル樹脂は、フィルターにより濾過することが好ましい。ごく小さな異物もフィルム中にて粗大な突起や欠点となるため、フィルターには5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。
次にこの未延伸フィルムを70~140℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3~4倍延伸し、20~50℃の温度のロール群で冷却する。続いて、シートの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80~240℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3~4倍に延伸する。また、延伸後に、長手及び/幅方向に0.1~5%の弛緩処理を施してもよい。なお、二軸延伸する方法としては、上述のように長手方向と幅方向の延伸を分離して行う逐次二軸延伸方法のほかに、長手方向と幅方向の延伸を同時に行う同時二軸延伸方法のどちらであっても構わない。
【実施例0029】
以下実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
【0030】
(1)ポリエステルフィルムのテレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタレート、ビスヒドロキシエチルテレフタレートのポリエステルフィルム総重量を基準とした含有量(単位:ppm)
ポリエステルフィルムを0.1g秤量し、2mLのHFIP(ヘキサフルオロ-2-プロパノール)/クロロホルム=1/1(体積)混合溶液で溶解させた後、ビーカーに移し、クロロホルム3mLを添加し、さらにメタノール40mLを徐々に加えた。その後、ペーパーフィルター(ADVANTEC製No.2)でろ過して得られた溶液を濃縮乾固させて得られた残渣にDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)0.5mLを加えて溶解・分散させ、エタノールを加えて5mLに定容した。孔径0.45μmのPTFEメンブレンフィルターでろ過した溶液を試料溶液とした。得られた試料溶液を、LC/UVで分析することにより、テレフタル酸、モノヒドロキシエチルテレフタレート、ビスヒドロキシエチレンテレフタレートの含有量を測定した。
【0031】
(2)ポリエステルフィルム総重量を基準としたアセトアルデヒド含有量(単位:ppm)
ポリエステルフィルム2gを秤量し、イオン交換水とともに耐圧容器に仕込み、120℃で1時間、水抽出後、高感度ガスクロマトグラフィーで分析することで、アセトアルデヒド含有量を測定した。
【0032】
(3)異物欠点評価
ポリエステルフィルムを1mサイズに切り取り、スポットライトを光源とし、反射光および透過光を用いて光の散乱に基づく輝点に注目し、異物欠点箇所をペンでマークしカウントした。欠点個数について下記基準に従い評価した。
〇:5個未満
△:5個以上15個未満
×:15個以上。
【0033】
(参考例)
樹脂A:ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂
樹脂B:マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂
樹脂C:バージンポリエステル樹脂
樹脂D:体積平均粒径1.1μmの炭酸カルシウム粒子を1wt%含有したケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂
なお、ケミカルリサイクル由来のポリエステル樹脂は、工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムを回収し、エチレングリコールにて解重合を行い、濾過・精製後、再重合を行ったポリエステル樹脂である。また、マテリアルリサイクル由来のポリエステル樹脂は、工程離型用二軸延伸ポリエステルフィルムを回収し裁断や洗浄をおこない、再溶融しペレット化したポリエステル樹脂である。
【0034】
(実施例1)
ポリエステルフィルムの第1層および第3層を構成する樹脂として、樹脂Aを55重量部、樹脂Dを45重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第1層用の押出機および第3層用の押出機に投入した。またポリエステルフィルムの第2層を構成する樹脂として、樹脂Aを40重量部、樹脂Bを60重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第2層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、積層用合流ブロックで合流積層し、フィルムの厚み方向に第1層、第2層、第3層の順番となる3層積層とした。その後、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、3層構成をもつ積層シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃の温度ロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って厚み30μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
【0035】
実施例1にて得られたポリエステルフィルムは、工程離型用フィルム等に好適な品位であった。
【0036】
(実施例2、3)
表1に示す通りに樹脂の配合を変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
実施例2、3にて得られたポリエステルフィルムは、実施例1に比べ異物欠点が多い結果であったが、工程離型用フィルム等に供すことができる品位であった。
(実施例4)
ポリエステルフィルムの第1層および第3層を構成する樹脂として、樹脂Aを55重量部、樹脂Dを45重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第1層用の押出機および第3層用の押出機に投入した。またポリエステルフィルムの第2層を構成する樹脂として、樹脂Aを40重量部、樹脂Bを60重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第2層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、積層用合流ブロックで合流積層し、フィルムの厚み方向に第1層、第2層、第3層の順番となる3層積層とした。その後、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、3層構成をもつ積層シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃の温度ロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って厚み30μmのポリエステルフィルムを得た。
得られたポリエステルフィルムに塗布液を厚み0.1μmとなるようにワイヤーバーを用い塗布し、120℃で30秒乾燥硬化させ、コート層付きポリエステルフィルムを得た。なお、塗布液は、付加反応型シリコーン(東レダウコーニング製DOWSIL SP7015)100重量部、シリコーンーグリコール共重合オイル(東レダウコーニング製SH3771)1重量部、白金触媒(東レダウコーニング製SRX212)1重量部をトルエン2040重量部にて希釈し作成した。
得られたコート層付きポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
【0037】
実施例4にて得られたコート層付きポリエステルフィルムは、工程離型用フィルム等に好適な品位であった。
(実施例5)
ポリエステルフィルムの第1層を構成する樹脂として、樹脂Aを55重量部、樹脂Dを45重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第1層用の押出機に投入した。またポリエステルフィルムの第2層を構成する樹脂として、樹脂Aを85重量部、樹脂Bを15重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、第2層用の押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、積層用合流ブロックで合流積層し、第1層および第2層とからなる2層積層とした。その後、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、2層構成をもつ積層シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃の温度ロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って厚み30μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
【0038】
実施例5にて得られたポリエステルフィルムは、工程離型用フィルム等に好適な品位であった。
(実施例6~9)
表1に示す通りに樹脂の配合を変更した以外は実施例5と同様にポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
実施例6~8にて得られたポリエステルフィルムは、工程離型用フィルム等に好適な品位であった。
実施例9にて得られたポリエステルフィルムは、実施例1に比べ異物欠点が多い結果であったが、工程離型用フィルム等に供すことができる品位であった。
【0039】
(実施例10)
ポリエステルフィルムを構成する樹脂として、樹脂Aを40重量部、樹脂Bを60重量部となるようにブレンドし、160℃で2時間減圧乾燥した後、押出機に投入した。押出機内でそれぞれの原料を280℃で溶融させ、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、シートを作成した。続いて、該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向(縦方向、すなわちシートの進行方向)に3.3倍延伸を行った後、25℃の温度ロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の110℃の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って厚み30μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
【0040】
実施例10にて得られたポリエステルフィルムは、工程離型用フィルム等に好適な品位であった。
【0041】
(比較例1)
表1に示す通りに樹脂の配合を変更した以外は実施例10と同様にポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの物性を表1に示す。
【0042】
比較例1にて得られたポリエステルフィルムは、異物欠点が多いものであった。
【0043】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0044】
このようにして得られたポリエステルフィルムは、光学用途、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品などの用途として有用であり、特に高い品位が求められる工程離型用フィルムに好適である。