(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021154
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20240208BHJP
B42D 25/30 20140101ALI20240208BHJP
B42D 25/337 20140101ALI20240208BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/30 100
B42D25/337
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123790
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 美博
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005JB25
2C005JB26
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113BB07
2H113BB08
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA36
2H113CA37
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA44
2H113DA04
2H113DA06
2H113DA15
2H113DA35
2H113DA43
2H113DA45
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA56
2H113DA57
2H113DA60
2H113DA62
2H113DA63
2H113EA06
2H113EA07
2H113FA56
(57)【要約】
【課題】視認する角度に依存した繊細な表現が可能な表示体を提供すること。
【解決手段】
このため、本発明の表示体は、基材の表面に、万線を有し、前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内であり、前記万線のピッチDは0.01mm以上0.12mm以下の範囲内であり、前記万線上には、前記万線と同色からなる万線上パターンを有する。
さらに、他の表示体の一つは、基材の表面に、異なる色の万線が隣接して配置された万線を有し、前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に、
万線を有し、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内であり、
前記万線のピッチは0.01mm以上0.12mm以下の範囲内であり、
前記万線上には、前記万線と同色からなる万線上パターンを有す表示体。
【請求項2】
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線を有し、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である表示体。
【請求項3】
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線群を有し、
前記万線群の間の少なくとも一部に隙間を有し、前記隙間が0.02mm以上0.050mm以下の基材が露出しており、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である表示体。
【請求項4】
前記万線上パターンの厚みは0.001mm以上0.003mm以下の範囲内である請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項5】
前記万線の厚みは0.0005mm以上0.003mm以下の範囲内であり、
前記万線上パターンの厚みは前記万線の厚みの2倍以上0.003mm以下の範囲内である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項6】
前記万線の前記線幅、ピッチまたは万線群間の隙間が前記表示体において連続的に変化していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項7】
前記万線の線幅またはピッチが前記表示体内において周期的に変化していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項8】
前記万線上パターンの前記万線に占める割合が50%を超えないことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示体。
【請求項9】
基材の表面に、
万線を有し、
前記万線上には、前記万線と同色からなる万線上パターンを有し、
前記万線は、前記万線と基材の表面の混色で視認され、
前記万線上パターンは、表示体を斜め方向から視認した際に、前記混色と異なる色で視認可能である表示体。
【請求項10】
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線を有し、
前記万線は、前記万線を構成する異なる色の混色で視認され、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、
前記万線上パターンは、表示体を斜め方向から視認した際に、前記混色と異なる色で視認可能である表示体。
【請求項11】
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線群を有し、
前記万線群の間の少なくとも一部に隙間を有し、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されている表示体において、
前記万線群と前記隙間の部分は、前記万線群を構成する色及び前記隙間に現れる基材の色の混色で視認され、
前記万線上パターンは、前記表示体を斜め方向から視認した際に、前記混色と異なる色で視認可能である表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のカラー複写機の性能向上に伴って、株券及び債券等の有価証券類や各種証明書の偽造が容易になってきている。このため、これら物品には、複製品との判別を可能とした複写防止媒体が使用されることがある。
【0003】
本開示において、複写防止媒体は、カラー複写機などによる偽造を防止又は牽制するための偽造防止技術が適用された記録媒体を意味する。複写防止媒体としては、例えば、カラー複写機を用いて得られる複製品に、原本には見られない特定の文字や絵柄などのパターンを表示させるものである。
【0004】
このような偽造防止技術の1つとして、用紙に繊維密度や厚さの分布を生じさせ、透過光を観察した場合に先の分布に対応したパターンを視認させる、所謂「透かし技術」が存在する。この透かし技術は、一定量以上の光量さえあれば、あらゆる環境下において真偽判別することが可能な技術である。加えて、知名度も高いことから、古くから存在している技術であるにも関わらず、今なお世界中の銀行券等に用いられている。
【0005】
しかしながら、上記の透かし技術は、基材となる用紙の製造段階で形成する必要があるため、用紙製造メーカでなければ容易には利用できない。また、上記の透かし技術を採用した用紙は、製造コストが高い。
【0006】
これら問題に鑑み、上記の透かし技術によって得られる視覚効果を擬似的に再現可能とする技術としては、特許文献1に示す技術が存在する。
【0007】
特許文献1には、観察角度の変化により出現する潜像画像が付与された、多層構成の偽造防止成形体を、デジタル印刷機を用いて簡易に作成する方法が開示されている。また、基材の凹凸をインキの盛りで形成するため、あらかじめ凹凸をエンボス及びすき入れ等で付与する必要がないことから、画像のデザイン、形状及び色等のすべての情報を、ユーザが自由に可変情報として作成することが可能となる。さらに、インキを基材から盛り上げて印刷することにより、基材表面に対する視認角度を変えた際に、光の干渉によって色が変化して見えることが開示されている。
また、高さの異なる複数の線で構成された印刷物において、インキの高さにバラツキを持たせることで、視認する角度による色の変化を精緻化できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1では、間隔をあけて印刷する万線に対して、視認する角度に依存した色の変化または現れるパターンの変化を実現するために、インキの盛りによって万線の高さを変化させている。しかし、間隔をあけた万線上にインキの盛りを形成し、視認する角度に依存した視認パターンの変化を作り出すためには、インキの盛りを形成するために、線幅が一定以上の万線である必要がある。このため、繊細な表現によるパターンの形成が難しいという課題があった。
【0010】
そこで、本開示では、視認する角度に依存した繊細な表現が可能な表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の代表的な表示体の一つは、
基材の表面に、万線を有し、前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内であり、前記万線のピッチDは0.01mm以上0.12mm以下の範囲内であり、前記万線上には、前記万線と同色からなる万線上パターンを有する。
【0012】
さらに、前記課題を解決するための代表的な表示体の一つは、
基材の表面に、異なる色の万線が隣接して配置された万線を有し、前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である。
【0013】
さらに、前記課題を解決するための代表的な表示体の一つは、
基材の表面に、異なる色の万線が隣接して配置された万線群を有し、
前記万線群の間の少なくとも一部に隙間を有し、前記隙間が0.02mm以上0.050mm以下の基材が露出しており、前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表示体によれば、視認する角度に依存した繊細な表現が可能な表示体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の一実施態様に係る表示体Wを備えた既印刷物Pを概略的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施態様1に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施態様2に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施態様2に係る表示体Wの断面の一例を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施態様2に係る表示体Wを視野角度a1から視認した場合の一例を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施態様2に係る表示体Wを視野角度a2またはa3から視認した場合の一例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施態様3に係る線幅または隙間を連続的に変化させた表示体Wの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施態様4に係る線幅または隙間を周期的に変化させた表示体Wの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施態様2に係る表示体Wを撮像する様子を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、
図9で撮像された既印刷物Pの複製品P’を概略的に示す平面図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施態様5に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施態様5に係る表示体Wを視野角度a1から視認した場合の一例を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施態様5に係る表示体Wの視野角度a2またはa3から視認した場合の一例を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施態様6に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す図である。
【
図15】
図15は、本開示に係る表示体Wを形成する印刷装置の一例を説明する図である。
【
図16】
図16は、本開示の一実施例に係る表示体Wを視認した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示に係る表示体Wの実施態様を図面に基づいて説明する。ここで、図面は模式的なものであり平面寸法との関係や各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施態様は、本開示の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本開示の技術的思想は構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに限定されるものではない。
【0017】
本開示における万線は、第1の色からなる直線または曲線等からなる複数の線分が、互いに交わることなく、線幅方向に均一な間隔で配置されたパターンをいう。ただし、直線または曲線の色は1色に限定されるものではなく、第2色以上のn色から構成されていてもよい。これらn色の直線または曲線等は原則的にn色が周期的に繰り返される。しかし、必ずしもn色が周期的に繰り返されていなくとも、互いに隣接する線分が異なる色であればよい。
【0018】
なお、本開示における万線上パターンとは、万線の上方に万線と同色で形成されたパターンを意味する。なお、万線上パターンは画像パターンを表現することができる。
【0019】
最初に
図1を参照して、本開示の表示体Wを備えた既印刷物Pの例を説明する。
図1は、本開示の一実施態様に係る既印刷物Pを概略的に示す平面図である。既印刷物Pは、商品券または商品券以外の有価証券であってもよい。或いは、身分証明書などの証明書または識別カードであってもよい。
【0020】
既印刷物Pは、表示体Wを有している。表示体Wは既印刷物Pの真偽判別に利用する真偽判別部である。
【0021】
表示体Wを表示体Wの法線方向から視認したとき(以下、「平面視したとき」という。)、肉眼では、万線に含まれる複数の色の混色として認識され、万線上パターンによる画像パターンは視認されない。しかし、表示体Wを視認する方向を変え、表示体Wの法線方向とは異なる方向から視認すると、万線上パターンによる画像パターンが視認される。
【0022】
<実施態様1>
次に、
図2を参照して、実施態様1の表示体Wの構成の詳細について説明する。
図2は、本開示の実施態様1に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す平面図である。
図2の実施態様1における表示体Wは、基材Sの表面に万線A1が形成されている。さらに、万線A1の上に万線上パターンB1が形成されている。
なお、本開示における基材Sの表面とは、基材Sの万線A1が形成される面を意味しており、基材Sと万線A1の間に何らかの層が形成されていてもよい。
例えば、基材Sの表面が白色、万線A1が青色の場合、表示体Wを平面視した場合に白と青の混色である淡い青が視認される。さらに、表示体Wの法線方向とは異なる方向から視認すると、万線上パターンB1による青色の画像パターンが視認される。
【0023】
万線A1のピッチDは、0.01mm以上0.12mm以下の範囲内であることが好ましい。万線A1のピッチDが0.12mmを超えると、肉眼で視認した場合に万線A1の間に間隙が視認され、平面視した際に間隙による線が視認される可能性がある。本開示におけるピッチDとは、例えば、万線A1の始端から隣の万線A1の始端までの距離を意味している。
【0024】
図2において万線上パターンB1は円の画像パターンを表現している。万線上パターンB1の表現する画像パターンは円に限定されるものではなく、任意の画像パターンを表現することが可能である。
【0025】
ただし、万線上パターンB1による異なる画像パターンが重ねて配置された場合、それぞれの画像パターンが干渉して、意図したとおりの画像パターンが視認できないことがある。このため、万線上パターンB1によって複数の画像パターンを視認させたい場合はそれぞれの画像パターンが重ならない位置に配置することが望ましい。
【0026】
万線A1の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内であることが好ましい。線幅が0.050mmを超えると、表示体Wを目視したとき、複数の万線A1及び基材Sの色の混色に認識されない可能性がある。また、線幅が0.005mm未満の線は印刷が困難である。
【0027】
<実施態様2>
次に、
図3を参照して、実施態様2の表示体Wの構成の詳細について説明する。
図3は、本開示の実施態様2に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す平面図である。
図3の実施態様2における表示体Wは万線A1及び万線A2の2種類の万線が互いに重ならないように、隣接して形成されている。さらに、万線A1の上に万線上パターンB1が形成され、万線A2の上には万線上パターンB2が形成されている。
図3においては、万線A1及び万線A2は完全に隣接して表記されているが、これに限定されるものではなく、間隔Eを空けて配置されていてもよい。
また、
図3においては、万線A1及び万線A2は、異なる斜線を付して表記しているが、これは、万線A1及び万線A2が異なる色で着色されていることを便宜的に表現したものであるにすぎない。
【0028】
万線A1及び万線A2の間隔Eは、0~0.02mmの範囲内であることが好ましい。間隔Eが0mmの場合は、万線A1及び万線A2が完全に隣接していることを示しており、本開示においては「隣接」とは、万線A1と万線A2との間隔Eが0.02mm以内で配置されていることを意味する。万線A1及び万線A2の間隔Eが0.02mmを超えると、肉眼で視認した場合に万線A1及び万線A2の間に間隙が視認され、万線同士が隣接していないように視認される可能性がある。
【0029】
図3において万線上パターンB1及び万線上パターンB2はともに円の画像パターンを表現している。万線上パターンB1及びB2の表現する画像パターンは円に限定されるものではなく、任意の画像パターンを表現することが可能である。
【0030】
また、
図3においては万線上パターンB1と万線上パターンB2が形成されているが、万線上パターンB1及びB2は表示体Wを構成する万線A1及びA2の少なくとも一部の上に形成されていればよい。したがって、すべての万線A1及びA2の上に万線上パターンB1及びB2が形成されていなくとも、少なくとも一部の上に形成されていれば、法線方向から角度を変えて視認した際に画像パターンを表現することができる。
【0031】
図3の表示体Wは2種類の万線A1及びA2より形成されているが、2種類に限定されるものではなく、必要に応じて種類を増やすことができる。例えば、白色の万線を追加で形成した場合、万線A1及び万線A2の混色を淡くした混色を表現できる。
【0032】
万線上パターンB1及びB2は、万線A1及びA2と同色で形成される必要がある。同色で形成されない場合は、表示体Wの平面視において画像パターンが認識される可能性があるためである。
【0033】
異なる色の万線A1及びA2が形成された場合、表示体Wの平面視においてそれぞれの万線A1及びA2の色の混色が認識される。例えば、万線A1が赤色で万線A2が青色の場合、表示体Wは肉眼で紫色に視認される。万線A2の上に万線上パターンB2が存在する場合、万線A2の一部に厚みが異なる部分が存在する。したがって、表示体Wを色々な方向から視認すると万線上パターンB2で表現される青色の画像パターンが視認される。この場合、平面視したときに紫色に視認される表示体Wを、角度を変えて視認すると、青色の画像パターンが視認されるため、肉眼で既印刷物Pと複製品P’の真偽判定を容易に行うことができる。
【0034】
各万線A1及びA2、1本に占める万線上パターンB1及びB2の割合は50%を超えないことが望ましい。50%を超えてしまうと、平面視から角度を変えて表示体Wを視認したとき、万線上パターンB1及びB2で表現された画像パターンがぼやけてしまう。
【0035】
各万線1本に占める万線上パターンの割合は以下の式を用いて各万線で計算される。
【0036】
各万線1本に占める万線上パターンの割合=万線1本に占める万線上パターンの面積/万線1本の面積
【0037】
表示体Wに含まれる万線A1及びA2と万線上パターンB1及びB2は、表示したい画像パターンの数に応じて万線A1、A2、万線上パターンB1及びB2の数を自由に選択出来る。また、万線上パターンB1及びB2は画像パターン毎で異なる位置に配置されていることが望ましい。
【0038】
次に、
図4を参照して、実施態様2の表示体Wの断面構造について説明する。
図4は本開示の実施態様2に係る表示体Wの断面の一例を拡大して概略的に示す断面図であり、
図3における断面X-X’を(a)、断面Y-Y’を(b)に示す。
図3(a)及び(b)には、万線A1及びA2の上に万線上パターンB1及びB2が形成され、万線上パターンB1及びB2は画像パターンを表現している。
【0039】
万線A1及びA2の厚みは0.0005mm以上0.003mm以下の範囲内であることが好ましい。厚みが0.003mmを超えるの場合、万線A1及びA2の厚みによる凹凸が視認される可能性が高く、偽造防止媒体が施されている部分を肉眼で判別することが可能となってしまうため、好ましくない。なお、厚みが0.0005mm未満の線は、印刷が困難である。
【0040】
万線上パターンB1及びB2の厚みは万線A1及びA2の厚みの2倍以上かつ0.003mm以下の範囲で形成されていることが好ましい。万線上パターンB1及びB2の厚みが万線A1及びA2の厚みの2倍以下の場合、印刷で形成することが困難である。また、万線上パターンB1及びB2の厚みが0.003mmを超えると万線A1及びA2の上に形成することが困難、かつ人の目で厚みによる凹凸が認識されてしまう。
【0041】
万線A1及びA2の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲であれば、固定する必要はなく、連続的にまたは周期的に変化させても良い。万線A1及びA2の線幅を大きくするまたは隙間を小さくすると、濃い色で視認され、万線A1及びA2の線幅を小さくするまたは隙間を大きくすると淡い色で視認される。本開示における隙間とは、万線A1と万線A2の間の基材Sの表面が露出している部分をいう。
【0042】
次に、
図5を参照して、実施態様2の表示体Wを法線方向(視野角度a1)から視認した場合について説明する。
図5は、本開示の表示体Wの一例を具体的に示した図である。表示体Wは、万線A1が青、万線A2が赤で形成されている。さらに、万線A1の上に万線上パターンB1が青で、万線A2の上に万線上パターンB2が赤で形成されている。
【0043】
この表示体Wを視野角度a1、つまり、表示体Wの法線方向から見た場合、
図9(a)に示すように、表示体Wは、赤と青の混色である紫として視認され、画像パターンは認識されない。
【0044】
次に、
図6を参照して、表示体Wを表示体Wの法線方向ではなく、斜め方向から視認した場合について説明する。
図6に示すように、表示体Wを視野角度a2、a3から見た場合、
図6(a)に示すように、表示体Wは、青の万線上パターンB1によって表現された画像パターンと、赤の万線上パターンB2で表現された画像パターンが認識される。
これは、万線上パターンB1及びB2が形成されていることにより、視野角度a2、a3から見た場合に光の反射具合が変化するためである。
【0045】
<実施態様3>
図7に、本開示に係る線幅または隙間を連続的に変化させた表示体Wの一例を示す。なお、簡略化のため万線上パターンB1は省略し、基材Sの表面は白色とした。X側ほど万線A1の線幅は大きく、万線A1の隙間は小さくなっている。したがって、濃い色で視認される。また、X´側ほど万線A1の線幅は小さく、万線A1の隙間は大きくなっている。したがって、淡い色で視認される。上述したように、万線A1の線幅または隙間を連続的に変化させることによってグラデーションのような効果を表現することができる。
【0046】
<実施態様4>
図8に、本開示に係る線幅または隙間を周期的に変化させた表示体Wの一例を示す。なお、簡略化のため万線上パターンB1は省略し、基材Sの表面は白色とした。
図6の濃と淡で示したように、万線A1の線幅は大きく、万線A1の隙間は小さくなると濃い色で視認される。
また、万線A1の線幅は小さく、万線A1の隙間は大きくなると淡い色で視認される。上述したように、万線A1の線幅または隙間を周期的に変化させることによって、濃淡を周期的に繰り返す縞模様のような効果を表現することができる。
【0047】
次に、
図9を参照して、複写機による画像読み取りの仕組みについて説明する。
図9は複写機などで表示体Wが表示する画像を撮像する様子を概略的に示す図である。既印刷物Pに白色光Hを照射して既印刷物P及び表示体Wからの反射光を受光部Lで受光することにより画像を撮像する。
【0048】
複写機などによる複写は、先ずスキャナ部が既印刷物Pの表示する画像を読み取る。スキャナ部の画像読み取りについて、具体的には既印刷物Pの背面に拡散反射板を設置し既印刷物Pの前面を白色光で照明して反射光を受光することにより行う。スキャナ部は読み取った画像のデータに相当するスキャンデータを処理部へ出力する。処理部はこのスキャンデータからプリントデータを生成し、これをプリンター部へ出力する。プリンター部はプリントデータに基づいて基材Sへの印刷を行う。
【0049】
しかしながら、上述した複写機による複写では、表示体Wの線の厚みの異なる部分をスキャナで読み取ることが出来ない。加えて、一般的なプリンターでは部分的にインクの厚みを変えて印刷は行えないことなどから、本開示に係る表示体Wを一般的なプリンターで復元することは困難である。
【0050】
一般的な複写機やデジタルプリンターはドット状にインクを滴下して印刷物を形成しているためエッジが明瞭な直線を再現するのは困難である。加えて、直線の幅が0.02mmの直線を再現するのは非常に困難である。また、エッジが明瞭な線の幅が0.02mm以下の曲線の線を再現するのは、さらに困難であり偽造防止効果が著しく高く、拡大観察により真偽判定が容易にかつ正確に行うことが可能である。
【0051】
図10は、
図9で撮像された既印刷物Pの複製品P’を概略的に示す平面図である。
既印刷物Pに含まれる表示体Wを受光部Lで読み取る場合、白色光Hは平行光として与えられるため万線上パターンB1及び万線上パターンB2の厚みは識別されず、万線A1及びA2が受光部Lで読み取られる。また、表示体Wの万線A1及びA2のような線と線の間隔Eが0.02mm以下のものは複写機で認識困難であり、万線A1及びA2の線の色の混色として認識される。したがって、受光部Lで認識した色調を網点Nで表現する既印刷物Pの複製品P’及び表示体Wの複製品W’が印刷される。
【0052】
<実施態様5>
次に、
図11、
図12、
図13を参照して、実施態様5について説明する。
なお、実施態様3は、万線が3色で形成されている。
図11は、実施態様5の表示体Wの一例を示した図である。実施態様5においては、
図11の(a)及び(b)に示すように、表示体Wは、万線A1、A2、A3がそれぞれ青、赤、黄で形成され、万線A1、A2、A3の上に万線上パターンB1、B2、B3が同色で形成されている点で実施態様1から4と異なる。
以下の説明において、上述の実施態様1から4と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0053】
まず、
図12を参照して、実施態様5の表示体Wを法線方向から視認した場合について説明する。
図12に示すように、この表示体Wを視野角度a1から見た場合、表示体Wは赤と青と黄の混色である茶色が視認され、画像パターンは認識されない。
【0054】
次に、
図13を参照して、表示体Wを表示体Wの法線方向ではなく、斜め方向から視認した場合について説明する。
図13におけるこの表示体Wは、視野角度a2、a3から見た場合、
図13(a)に模式的に示すように、表示体Wは青の万線上パターンB1によって表現された画像パターンと、赤の万線上パターンB2で表現された画像パターンと、黄の万線上パターンB3で表現された画像パターンが認識できる。この表示体Wを平面視したとき、茶色が視認され、角度を変えて視認すると赤、青、黄の画像パターンが視認される。したがって、肉眼での既印刷物Pと複製品P’との真偽判定が容易になる。
【0055】
つまり、実施態様5においても、実施態様1から4の場合と同様、本開示の表示体Wは視野角度を変えて観察した場合、視認する角度によっては、万線上パターンB1、B2またはB3で表現された画像パターンが認識できる。例えば、視野a1から見た場合、画像パターンは認識されないため基材Sに形成された万線A1、A2またはA3の色の混色が認識される。また、視野a2やa3から見た場合、画像パターンが認識され、基材Sに形成された万線A1、A2またはA3の色の混色の中に画像パターンが視認できる。
【0056】
<実施態様6>
次に、
図14を参照して、実施態様6の表示体Wの構成の詳細について説明する。
図14は、実施態様6に係る表示体Wの一例を拡大して概略的に示す平面図である。
図14の実施態様6における表示体Wは万線A1、万線A2及び基材Sからなる万線群AAが隣接して形成されている。さらに、万線A1の上に万線上パターンB1が形成され、万線A2の上には万線上パターンB2が形成されている。
なお、
図14においては、万線A1及び万線A2は完全に隣接して表記されているが、これに限定されるものではなく、間隔Eを空けて配置されていてもよい。
また、
図14においては、万線A1及び万線A2は、異なる斜線を付して表記しているが、これは、万線A1及び万線A2が異なる色で着色されていることを便宜的に表現したものであるにすぎない。
【0057】
本開示の万線群AAとは、2つ以上の万線の少なくとも一部に隙間を有していることを意味している。なお、万線と万線の隙間が0.02mm以上0.050mm以下の範囲内であるとき、基材Sが露出していることを示している。万線群AAの万線の隙間は隣接する万線の隣にあってもよく、万線の間にあってもよい。
図14においては万線A1、万線A2、基材Sの順で万線群AAが形成されているが、この順に限定されるものではない。
【0058】
例えば、実施態様6に係る表示体Wの万線A1が青、万線A2が赤、基材Sが白色の万線群で構成されている場合、この表示体Wを平面視すると万線A1、万線A2及び基材Sの色の混色である淡い紫に視認される。法線方向から角度を変えて視認すると万線上パターンB1及びB2が表現する画像パターンが視認される。
【0059】
本開示に係る表示体Wによれば、原本は視認する角度を変えることによって万線上パターンが表現する画像パターンを見ることができるのに対して、一般的な複写機で複製した複製品P’においてはこのような万線上パターンが表現する画像パターンを視認することができない。このため、肉眼で観察により容易に真偽判定が可能で且つ偽造困難な技術を提供することができる。以下に具体的な印刷方法を述べる。
【0060】
<印刷方法>
本開示の表示体Wは、既印刷物Pに公知の印刷法を用いて印刷することで得られる。印刷方法としてはスクリーン印刷、スクリーンオフセット印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷などがあげられる。
【0061】
万線A1、A2及びA3を形成するインキ材料として以下の樹脂材料などを用いる。例えば、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、エチルセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール樹脂、ケトン樹脂、マレイン酸樹脂や光硬化性樹脂等の汎用樹脂を用いることが可能である。
【0062】
樹脂材料に炭化水素系溶剤(石油ナフサ、トルエン、キシレン、テトラリン、テレピン油など)やエステル系溶剤(酢酸n-ブチル、酢酸メトキシブチルなど)やケトン系溶剤(MIBK、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、イソホロンなど)や多価アルコール誘導体(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールなど)などの溶剤を適宜混合して使用することができる。
【0063】
樹脂材料に添加剤として植物油系、界面活性剤、ワックス膨潤体、消泡剤、レベリング剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、可塑剤、硬化促進剤等を適宜混合して使用することができる。
【0064】
インキの顔料としては、金属;二酸化チタン、亜鉛華、及び鉄黒に代表される酸化物;水酸化物;硫化物;セレン化物;アルミン酸コバルト;フェロシアン化物;クロム酸塩;硫酸塩;炭酸塩;ケイ酸塩;燐酸塩;及び炭素等がある。有機顔料としては、炭素化合物、ニトロソ系化合物;ニトロ系化合物;アゾ系化合物;レーキ系顔料、フタロシアニン系化合物、及び縮合多環材料等がある。
【0065】
インキ顔料に光散乱粒子を使用してもよい。例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン・アクリル共重合体若しくはその架橋体、メラミン-ホルマリン縮合物、ウレタン樹脂、ポリエステル、シリコン樹脂、フッ素粒子、エポキシ樹脂、及びこれらの共重合体である。
【0066】
光散乱粒子に使用可能な無機物は、例えば、スメクタイト、カオリナイト、及びタルク等の粘土化合物;シリカ、チタニア、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化バリウム、及び酸化ストロンチウム等の無機酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸ストロンチウム等の無機炭酸塩;塩化バリウム及び塩化ストロンチウム等の無機塩化物;硫酸バリウム及び硫酸ストロンチウム等の無機硫酸塩;硝酸バリウム及び硝酸ストロンチウム等の無機硝酸塩;水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、及び水酸化ストロンチウム等の無機水酸化物;並びにガラスである。
【実施例0067】
以下、本開示の実施例を説明する。
【0068】
本開示の一実施例を実現させるための印刷装置の一例を
図15に示す。本開示を実現させるための印刷装置としてグラビアオフセット印刷装置100を用いた。グラビアオフセット印刷装置100は凹版からなる印刷版101とインキ転写用のブランケット103と印刷版101にインキ105を充填するドクタ106と既印刷物Pを備えている。
【0069】
印刷版101は、金属製で大きさが幅100mm×長さ100mmの平版に万線となる部分を印刷パターン溝104としエッチングによって彫刻したものを使用し、万線A1となる線の幅が0.02mmと間隙が0.02mmとした印刷版101aと、万線A2となる線の幅が0.02mmと間隙が0.02mmとした印刷版101bと、万線上パターンB1となる線の幅が0.02mmと間隙が0.02mmとした印刷版101cと、万線上パターンB2となる線の幅と間隙が0.02mmと間隔Eが0.02mmとした印刷版101dを用い、既に絵柄が印刷された既印刷物Pとなる基材Sを使用した。
【0070】
ブランケット103は、回転可能なブランケット胴102の表面に固定されており、ブランケット胴102は移動可能な台車(不図示)に支持されており、台車は架台に支持されておりブランケット103は、印刷版101に押え付けながら転動することで印刷版101の凹部のインキ107をブランケット103表面に受理し受理されたインキ108を既印刷物Pに押え付けながら転動することでインキ109として転写されることで基材Sの表面に万線A1、万線A2、万線上パターンB1、万線上パターンB2を印刷形成する。
【0071】
万線A1と万線上パターンB1を形成するインキはポリエステル樹脂にアルミン酸コバルトからなる青色顔料成分を25W%含むインキ105aを使用した。万線A2と万線上パターンB2を形成するインキはポリエステル樹脂にセレン酸化物からなる赤色顔料成分を30W%含むインキ105bを使用した。印刷版101aと印刷版101cにはインキ105aを、印刷版101bと印刷版101dにはインキ105bを使用する。
【0072】
既印刷物Pは、幅150mm×長さ150mm×厚さ125μmの透明のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに既に絵柄を印刷したシート状のものを基材Sとして使用した。
【0073】
印刷用のブランケット103として、シリコンゴムを主体とする厚み0.9mm、硬度20°、幅200mm、長さ250mmのものを使用し、ブランケット胴102はSUS304製の胴幅220mm×直径300mmのものを使用した。
【0074】
本発明の一実施例について、
図3に示すような積層構造の表示体Wを得る印刷方法を
図15の印刷工程の概要図に照らし説明する。
印刷版101a上にインキ105aを0.5g/cm2で供給する。ドクタ106と印刷版101aが接する位置をドクタのゼロ点とし、ゼロ点からドクタ106を印刷版101aの方向に0.5mm近づけた位置でインキ105aを掻き取りながら印刷パターン溝104にインキ107を充填する。
【0075】
印刷版101aとブランケット103が接する位置をブランケット胴102のゼロ点とし、ゼロ点からブランケット胴102を0.5mm印刷版101aに近づけた位置を印刷版101aの充填インキ107aをブランケット103に受理する位置とし、この位置でブランケット胴102を50mm/secで転動させ印刷版101aの充填インキ107aをブランケット103に受理108aする。
【0076】
基材Sとブランケット103が接する位置をブランケット胴102のゼロ点とし、ゼロ点からブランケット胴102を0.5mm既印刷物Pに近づけた位置をブランケット103に受理したインキ108aを既印刷物Pに転写する位置とし、この位置でブランケット胴102を100mm/secで転動させブランケット103に受理されたインキ108aを基材Sに転写109aさせ印刷を完了する。
【0077】
インキ109aが印刷された既印刷物Pを一旦装置から外し、約100℃で30分間加熱しインキ109aを硬化させる。印刷版101aとインキ105aを用いて前記印刷工程を実施すると万線A1が形成される。
【0078】
次に既印刷物Pを印刷定盤111に固定し万線A2用の印刷版101bを固定し既印刷物Pに形成された万線A1の線と線の隙間部分に印刷版101bの線が印刷されるように印刷位置調整を行い印刷版101bにインキ105bを0.5g/cm2で供給し万線A1と同様の方法で印刷を行い、既印刷物Pに万線A2を形成した。
【0079】
万線A1と万線A2が印刷された既印刷物Pを一旦装置から外し、約100℃で30分間加熱しインキ109bを硬化させることで、既印刷物Pに
図3に示す万線A1と万線A2が形成される。
【0080】
万線A1と万線A2が印刷された既印刷物Pを印刷定盤111に固定し万線上パターンB1用の印刷版101cを固定し既印刷物Pに形成された万線A1の線と重なる位置に印刷版101cの線が印刷されるように印刷位置調整を行い印刷版101cにインキ105aを0.5g/cm2で供給し、既印刷物Pに
図3で示す万線上パターンB1が形成される。
【0081】
万線A1と万線A2と万線上パターンB1が印刷された既印刷物Pを一旦装置から外し約100℃で30分間加熱しインキ109aを硬化させることで、既印刷物Pに
図3で示す万線A1の上に万線上パターンB1が形成される。
【0082】
万線A1と万線A2と万線上パターンB1が印刷された既印刷物Pを印刷定盤111に固定し、万線上パターンB2用の印刷版101dを固定し、既印刷物Pに形成された万線A2の線上に印刷版101dの線が印刷されるように印刷位置調整を行い、印刷版101dにインキ105bを0.5g/cm2で供給し、既印刷物Pに
図3で示す万線上パターンB2が形成される。
【0083】
万線A1と万線A2と万線上パターンB1と万線上パターンB2が印刷された既印刷物Pを一旦装置から外し約100℃で30分間加熱しインキ109dを硬化させることで、本開示に係る表示体Wを得た。
【0084】
図16に本開示の一実施例に係る表示体Wを視認した断面図を示す。
この表示体Wを
図16の視野角度a1で視認した場合、万線A1と万線A2の色の混色である紫が視認され、画像パターンは視認できなかった。一方、
図16の視野角度a2及びa3で視認した場合、万線上パターンB1及びB2が表現する画像パターンを視認することができた。
【0085】
以上より、視認角度を変えることで画像パターンが表現可能な本実施態様にかかわる表示体Wを得た。なお、本開示の表示体Wを構成する万線A1、A2、及びA3の一部が、本開示の表示体Wが有する効果を逸脱しない範囲内で交わっていてもよく、色が変化していてもよく、あるいは途切れていてもよい。
【0086】
なお、本発明には以下の各発明も含まれる。
【0087】
(発明1)
基材の表面に、
万線を有し、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内であり、
前記万線のピッチは0.01mm以上0.12mm以下の範囲内であり、
前記万線上には、前記万線と同色からなる万線上パターンを有す表示体。
【0088】
(発明2)
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線を有し、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である表示体。
【0089】
(発明3)
基材の表面に、
異なる色の万線が隣接して配置された万線群を有し、
前記万線群の間の少なくとも一部に隙間を有し、前記隙間が0.02mm以上0.050mm以下の基材が露出しており、
前記万線の少なくとも一部の上には、前記万線と同色からなる万線上パターンが形成されており、
前記万線の線幅は0.005mm以上0.050mm以下の範囲内である表示体。
【0090】
(発明4)
前記万線上パターンの厚みは0.001mm以上0.003mm以下の範囲内である発明1から3のいずれかに記載の表示体。
【0091】
(発明5)
前記万線の厚みは0.0005mm以上0.003mm以下の範囲内であり、
前記万線上パターンの厚みは前記万線の厚みの2倍以上0.003mm以下の範囲内である、
発明1から4のいずれかに記載の表示体。
【0092】
(発明6)
前記万線の線幅、ピッチまたは万線群間の隙間が前記表示体において連続的に変化していることを特徴とする発明1から5のいずれかに記載の表示体。
【0093】
(発明7)
前記万線の線幅またはピッチが前記表示体において周期的に変化していることを特徴とする発明1から6のいずれかに記載の表示体。
【0094】
(発明8)
前記万線上パターンの前記万線に占める割合が50%を超えないことを特徴とする発明1から7のいずれかに記載の表示体。