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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021169
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】培地シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/44 20180101AFI20240208BHJP
   A01G 24/48 20180101ALI20240208BHJP
   A01G 24/30 20180101ALI20240208BHJP
   A01G 24/18 20180101ALI20240208BHJP
【FI】
A01G24/44
A01G24/48
A01G24/30
A01G24/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123821
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022BA06
2B022BA12
2B022BA22
2B022BA23
2B022BB02
(57)【要約】
【課題】各領域における苗の成長のバラツキを抑制することが可能な培地シートを提供する。
【解決手段】切り取り線L1,L2によって格子状に区画された複数の領域10を備え、複数の領域10のそれぞれには、播種するための3つの孔21,22,23が三角形状に並べて設けられ、複数の領域10のうちの互いに隣り合う第1領域11と第2領域12との間に位置する切り取り線L2aの中間点C2を中心にして、第1領域11を仮想的に180°回転させた場合に、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とが、それぞれ互いに重なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り取り線によって格子状に区画された複数の領域を備え、
前記複数の領域のそれぞれには、播種するための3つの孔が三角形状に並べて設けられ、
前記複数の領域のうちの互いに隣り合う第1領域と第2領域との間に位置する前記切り取り線の中間点を中心にして、前記第1領域を仮想的に180°回転させた場合に、前記第1領域に設けられた前記3つの孔と、前記第2領域に設けられた前記3つの孔とが、それぞれ互いに重なる、培地シート。
【請求項2】
前記第1領域と前記第2領域との間に位置する前記切り取り線に対して、前記第1領域に設けられた前記3つの孔と、前記第2領域に設けられた前記3つの孔とが、線対称に配置されていない、請求項1に記載の培地シート。
【請求項3】
前記切り取り線の前記中間点を中心にして、前記第1領域を仮想的に180°回転させた場合に、前記第1領域に設けられた前記3つの孔と前記第2領域に設けられた前記3つの孔とがそれぞれ一致する、請求項1に記載の培地シート。
【請求項4】
切り取り線によって第1方向と前記第1方向と直交する第2方向とのそれぞれにおいて格子状に区画された複数の領域を備え、
前記複数の領域のそれぞれには、播種するための3つの孔が三角形状に並べて設けられ、
前記複数の領域は、前記第1方向において互いに隣り合う第1領域と第2領域とを有し、
前記第2領域に設けられた前記3つの孔の配置パターンと、前記第1領域に設けられた前記3つの孔の配置パターンを仮想的に180°回転させて前記第1方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる、培地シート。
【請求項5】
前記複数の領域は、前記第2方向において互いに隣り合う前記第1領域と第3領域とを有し、
前記第3領域に設けられた前記3つの孔の配置パターンと、前記第1領域に設けられた前記3つの孔の配置パターンを仮想的に前記第2方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる、請求項4に記載の培地シート。
【請求項6】
前記3つの孔がなす仮想的な三角形の一辺が、前記切り取り線と平行である、請求項4に記載の培地シート。
【請求項7】
前記三角形状は、二等辺三角形状又は正三角形状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の培地シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培用の培地シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の培地シートとして、切り取り線によって格子状に区画された複数の領域を備え、1つの領域に対して、播種するための孔が1つずつ設けられた培地シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。複数の領域は、定植の時点で、切り取り線によって複数のシート片に断片化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-175511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような培地シートにおいて、生産性を向上させる(換言すると、栽培数を増やす)目的で、複数の領域の各々に播種用の孔を複数設けることが考えられる。一方で、各領域における栽培数を増やすことで、隣り合う領域間において、互いの苗が干渉し易くなる。これにより、領域間における苗の生長にバラツキが生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、領域間における苗の生長のバラツキを抑制することが可能な培地シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明の一つの実施形態に係る培地シートは、切り取り線によって格子状に区画された複数の領域を備え、複数の領域のそれぞれには、播種するための3つの孔が三角形状に並べて設けられ、複数の領域のうちの互いに隣り合う第1領域と第2領域との間に位置する切り取り線の中間点を中心にして、第1領域を仮想的に180°回転させた場合に、第1領域に設けられた3つの孔と、第2領域に設けられた3つの孔とが、それぞれ互いに重なる。
【0007】
この培地シートによれば、隣り合う第1領域と第2領域において、切り取り線の中間点を中心にして仮想的に180°回転させた場合に互いに重なる3組の孔同士のそれぞれの間隔を好適に確保することができる。これにより、隣り合う第1領域及び第2領域の間において互いの苗が干渉し難くなり、その結果、領域間における苗の生長のバラツキを抑制することができる。
【0008】
また、第1領域と第2領域との間に位置する切り取り線に対して、第1領域に設けられた3つの孔と、第2領域に設けられた3つの孔とが、線対称に配置されなくてもよい。
この場合、第1領域における最も第2領域側の孔と、第2領域における最も第1領域側の孔との間隔をより好適に確保することができる。これにより、当該孔同士の間で互いの苗の干渉が抑制され、その結果、領域間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0009】
また、切り取り線の中間点を中心にして、第1領域を仮想的に180°回転させた場合に、第1領域に設けられた3つの孔と第2領域に設けられた3つの孔とがそれぞれ一致してもよい。この場合、隣り合う第1領域及び第2領域において、対応する3組の孔同士のそれぞれの間隔をより好適に確保することができる。その結果、領域間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0010】
本発明の一つの実施形態に係る培地シートは、切り取り線によって第1方向と第1方向と直交する第2方向とのそれぞれにおいて格子状に区画された複数の領域を備え、複数の領域のそれぞれには、播種するための3つの孔が三角形状に並べて設けられ、複数の領域は、第1方向において互いに隣り合う第1領域と第2領域とを有し、第2領域に設けられた3つの孔の配置パターンと、第1領域に設けられた3つの孔の配置パターンを仮想的に180°回転させて第1方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なることを特徴とする。
【0011】
この培地シートによれば、隣り合う第1領域と第2領域において、配置パターンの回転及び平行移動によって重ねることができる3つの孔のそれぞれの間隔を好適に確保することができる。これにより、隣り合う第1領域及び第2領域間において互いの苗が干渉し難くなり、その結果、領域間における苗の生長のバラツキを抑制することができる。
【0012】
また、複数の領域は、第2方向において互いに隣り合う第1領域と第3領域とを有し、第3領域に設けられた3つの孔の配置パターンと、第1領域に設けられた3つの孔の配置パターンを仮想的に第2方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なってもよい。
この場合、第1領域における最も第3領域側の孔と、第3領域における最も第1領域側の孔との間隔をより好適に確保することができる。これにより、当該孔同士において互いの苗の干渉が抑制され、その結果、領域間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0013】
また、3つの孔がなす仮想的な三角形の一辺が、切り取り線と平行であってもよい。
この場合、培地シートの形状は、設計及び加工しやすい形状となる。
【0014】
また、三角形状は、二等辺三角形状又は正三角形状であってもよい。
この場合、各領域において互いに隣り合う孔の間隔を好適に確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、領域間における苗の生長のバラツキを抑制することが可能な培地シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る培地シートを模式的に示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る培地シートの複数の領域のうちの一部を模式的に示した平面図である。
図3】第1変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
図4】第2変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
図5】第3変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
図6】第4変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
図7】第5変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
図8】第6変形例に係る培地シートを示す図であって、図2に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0018】
また、本明細書において、各機器(機器中の構成部品を含む)の位置、方向及び向き等を説明する場合には、特に断る場合を除き、当該機器が利用されている状態での位置、方向及び向き等を説明することとする。例えば、以下の説明において、「上面」とは、使用状態において上側に位置する面、換言すると、上方を向く面を意味する。
【0019】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている場合が含まれ得る。
また、本明細書において、「同じ」、「同一」及び「等しい」という意味には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、又は90%以上である場合が含まれ得る。
【0020】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)に係る培地シートについて説明する。
本実施形態に係る培地シートは、栽培対象の植物を栽培する際の栽培床であり、家庭菜園のような比較的小規模な栽培、及び、農園又は植物工場等での比較的大規模な栽培に利用可能であり、水耕栽培又は土壌栽培等のいずれの栽培方式にも利用可能である。
本実施形態に係る培地シートは、播種から定植までの期間中、植物を栽培するために用いられ、定植の時点で、培地シートを断片化して2以上の培地(以下、培地片という)に分けられ、定植後は、各培地片にて植物苗を栽培する。
【0021】
[培地シート]
本実施形態に係る培地シート(以下、培地シート1)の概略構成について、図1及び2を参照しながら説明する。図1は、培地シート1を模式的に示す斜視図である。図2は、培地シート1における複数の領域のうちの一部を模式的に示した平面図である。
【0022】
培地シート1は、吸水性(吸液性)を有する多孔質材料、例えば、スポンジ、発泡材又は繊維マット等によって構成されている。培地シート1を構成する材質としては、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、及びポリスチレン等の発泡樹脂、並びに、ロックウール、ヤシがら、パーライト、ピートモス、バーミキュライト、籾殻、樹皮及びココマット等の繊維材料が挙げられる。これらのうち、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、及びロックウールが好ましく、フェノール樹脂が特に好ましい。培地シート1を構成する材質の吸水率は、50~99.9%であるのがよく、好ましくは70~99%であるのがよく、より好ましくは80~98%であるのがよい。
【0023】
培地シート1の形状は、図1に示すように平面視で略矩形であり、長辺及び短辺のそれぞれが数cm~数十cm程度の長さである。また、培地シート1は、数cm程度の厚みを有する。
【0024】
培地シート1は、切り取り線LによってX方向(第1方向)と、X方向と直交するY方向(第2方向)とのそれぞれにおいて格子状に複数の領域10に区画されている。より詳しく説明すると、図1に示すように、培地シート1には、培地シート1のX方向に延出する複数の切り取り線L1と、培地シート1のY方向に延出する複数の切り取り線L2とが形成されている。これにより、培地シート1には、平面視で方形状又は矩形状の領域10が、X方向にm個(mは2以上の自然数)、Y方向にn個(nは2以上の自然数)並んだ状態で配置されている。なお、本実施形態において、m及びnは、3以上の自然数であることとする。
【0025】
複数の領域10のそれぞれは、互いに同じサイズであり、隣り合う2つの領域10同士は、切り取り線L1,L2を挟んで互いに隣接している。また、複数の領域10のそれぞれは、切り取り線L1,L2に沿って培地シート1(厳密には、他の領域10)から切り離されることで培地片50を構成する。
【0026】
各切り取り線L1,L2は、線状に断続的に並んだスリット状の溝又は穴によって構成されている。なお、各切り取り線L1,L2の形成箇所は、培地シート1にて植物を栽培する際には切断されにくい一方で、培地シート1から培地片50を切り離す際には切れやすいことが好ましい。
【0027】
また、複数の領域10のそれぞれには、領域10の厚み方向における一端面、詳しくは、使用状態において上方を向く面(以下、上端面)には、播種するための3つの孔21,22,23が並べて設けられている。この3つの孔21,22,23は、各領域10を平面視した場合に一直線上に並んでおらず、換言すると三角形状に並べて配置されている。特に、本実施形態では、二等辺三角形状に配置され、より詳しくは正三角形状に配置されている。ここで、3つの孔21,22,23が三角形状に配置されるとは、仮想的な三角形の各頂点に孔の中心が配置されることを意味する。
【0028】
孔21,22,23の開口形状は、例えば真円をなしており、上端面から培地シート1の内部に向かって窪んだ凹状の非貫通孔となっている。ただし、孔の開口形状は特に限られず、孔21,22,23は、例えば、楕円、又は十字等、播種が可能な形状であればよい。
【0029】
各領域10に設けられた3つの孔21,22,23がなす仮想的な三角形(以下、仮想的な三角形)は、上述したように正三角形であり、且つ領域10間で略同一サイズである。つまり、複数の領域10のそれぞれは、栽培環境の観点から見て均一な構造をなしている。また、各領域10において、仮想的な三角形の一辺、すなわち孔間の距離は、育苗期間中における苗同士の干渉(接触)を考慮して好適な間隔に設定されているのが好ましい。
【0030】
図1に示すように、各領域10に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンとしては、配置パターンAと配置パターンBとの2種類がある。X方向を行方向とし、Y方向を列方向とした場合、k列(kは自然数)に並べられた複数の領域10には、配置パターンAにて3つの孔21,22,23がそれぞれ配置され、k+1列に並べられた複数の領域10には配置パターンBにて3つの孔21,22,23がそれぞれ配置されている。k+2列に並べられた複数の領域10には再び配置パターンAにて3つの孔21,22,23がそれぞれ配置されている。
【0031】
各領域10に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンについて、図2を参照しながら、より詳細に説明する。図2は、図1に示す各領域10のうち、任意の2行×2列の領域10(つまり、4つの領域10)を抽出して模式的に示した平面図である。図2における左上の領域10を第1領域11とし、右上の領域10を第2領域12とし、左下の領域10を第3領域13とし、右下の領域10を第4領域14とする。第1領域11と第2領域12とはX方向において互いに隣り合い、第1領域11と第3領域13とはY方向において互いに隣り合い、第1領域11と第4領域14とは互いに対角位置にある。
【0032】
図2に示すように、第1領域11には、配置パターンAにて3つの孔21,22,23が設けられている。1つの孔21は、第1領域11におけるY方向一方側(図2における上側)に配置されている。残り2つの孔22,23は、第1領域11におけるY方向他方側(図2における下側)において、X方向に沿って間隔を空けて並べて配置されている。ここで、3つの孔21,22,23のそれぞれの中心を頂点とする仮想的な三角形(図2にて一点鎖線にて図示)を想定し、孔21と対応する頂点Gから延出した中線の中点をC1とする。本実施形態では、中点C1が第1領域11の中心と一致するように配置パターンAが規定されている。第1領域11の中心とは、X方向及びY方向にそれぞれにおける第1領域11の中央位置である。また、頂点Gから延出した中線と直交する仮想的な三角形の一辺、すなわちX方向に並ぶ2つの孔22,23の中心同士を結んだ一辺Eは、図2に示すように、切り取り線L1と平行となる。
【0033】
第2領域12には、配置パターンBにて3つの孔21,22,23が設けられている。第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンBと、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAを仮想的に180°回転させてX方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる。すなわち、配置パターンAを、中点C1を中心にして180°回転させた後に第2領域12側に平行移動させると、配置パターンBに重なる。
【0034】
「配置パターンが互いに重なる」とは、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンBと、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAを仮想的に180°回転させてX方向に平行移動させた配置パターンにおいて、対応する3組の孔同士(すなわち、孔21同士、孔22同士、孔23同士)の全てが、それぞれ互いに重なっている状態を意味する。互いに重なる範囲としては、孔同士が一致する場合(完全に重なる場合)に限られず、各孔の少なくとも一部が重なっていればよい。本実施形態では、対応する3組の孔同士が全て一致する。以下の説明において、特段の断りが無い限り、「配置パターンが互いに重なる」の定義は本段落と同じ趣旨とする。
【0035】
「180°回転」とは、厳密な180°の回転に限られず、ある程度の角度のズレを許容しており、対応する3組の孔同士の全てが、互いに重なればよい。以下の説明において、特段の断りが無い限り、「180°回転」という表記は、上述の通り解釈されるものとする。
【0036】
また、第1領域11と第2領域12との間に位置する切り取り線L2aの中間点C2を中心にして、第1領域11を仮想的に180°回転させた場合に、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とが、それぞれ互いに重なる。本実施形態では、対応する3組の孔同士が全て一致するが、互いに重なる範囲としては、孔同士が一致する場合(完全に重なる場合)に限られず、各孔の少なくとも一部が重なっていればよい。
切り取り線L2aは、第1領域11と第2領域12との間に位置する切り取り線L2の一部分であり、Y方向における第1領域11の一端から他端までの範囲において延出している。
【0037】
また、切り取り線L2aに対して、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とは、線対称に配置されていない。
ここで、「線対称に配置されていない」状態とは、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23のうちの少なくとも一つを、切り取り線L2aを境にして線対称の位置(鏡像位置)に移動させた場合に、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23のうち、対応する孔とは重なっていない状態をいう。本実施形態の培地シート1では、対応する3組の孔同士の全てが互いに重なっていないことが、「線対称に配置されていない」状態に該当する。
【0038】
第3領域13には、配置パターンAにて3つの孔21,22,23が設けられている。第3領域13に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAと、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAを仮想的にY方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる。
【0039】
第4領域14には、配置パターンBにて3つの孔21,22,23が設けられている。第4領域14に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンBと、第3領域13に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAを仮想的に180°回転させてX方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる。すなわち、配置パターンAを、中点C1を中心にして180°回転させた後に第4領域14側に平行移動させると、配置パターンBに重なる。
【0040】
上述のように構成された培地シート1を用いた栽培方法について説明すると、不図示の浅底トレーの内部に養液を溜め、浅底トレー内に培地シート1を配置して、培地シート1の下面全体を養液に浸す。かかる状態で培地シート1を保持しながら、各領域10において孔21,22,23に播種し、また、発芽後の植物を定植の直前まで生長させる。
【0041】
[本実施形態の作用及び効果]
以上までに説明したように、培地シート1によれば、隣り合う第1領域11と第2領域12とにおいて、対応する3組の孔同士(すなわち、孔21同士、孔22同士、孔23同士)のそれぞれの間隔を好適に確保することができる。これにより、隣り合う第1領域11及び第2領域12間において互いの苗が干渉し難くなり、その結果、領域10間における苗の生長のバラツキを抑制することができる。
【0042】
また、図2に示すように、第1領域11と第2領域12との間に位置する切り取り線L2aに対して、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とが、線対称に配置されていない。これにより、第1領域11における最も第2領域12側に位置する孔22と、第2領域12における最も第1領域11側に位置する孔22との間隔をより好適に確保することができる。このため、孔22同士において互いの苗の干渉が抑制され、その結果、領域10間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0043】
また、切り取り線L2aの中間点C2を中心にして、第1領域11を仮想的に180°回転させた場合に、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とがそれぞれ一致する。これにより、複数の領域10のうち、第1領域11及び第2領域12の関係にある2つの領域10において、対応する3組の孔同士のそれぞれの間隔を好適に確保することができる。
より詳細に説明すると、図1に示すように、k列に並べられた第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23と、k+1列に並べられた第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23とにおいて、対応する3組の孔同士のそれぞれの間隔が好適に確保される。同様に、k+1列に並べられた第2領域12に設けられた3つの孔21,22,23と、k+2列に並べられた第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23とにおいても、対応する3組の孔同士のそれぞれの間隔が好適に確保される。このように、培地シート1では、領域10間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0044】
また、図2に示すように、第3領域13に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAと、第1領域11に設けられた3つの孔21,22,23の配置パターンAを仮想的にY方向に平行移動させた配置パターンとは、互いに重なる。これにより、第1領域11における最も第3領域13側に位置する孔22,23と、第3領域13における最も第1領域11側に位置する孔21との間隔をより好適に確保することができる。このため、孔同士において互いの苗の干渉が抑制され、その結果、領域10間における苗の生長のバラツキを一層抑制することができる。
【0045】
また、3つの孔21,22,23がなす仮想的な三角形の一辺Eが、切り取り線L1と平行となっている。これにより、培地シート1の形状は、設計及び加工しやすい形状となる。また、培地シート1から切り離して培地片50とした後の定植作業において、培地片50の縁から孔21,22,23までの間隔を測定しやすく、作業性に優れている。
【0046】
また、三角形状は、正三角形状であるので、互いに隣り合う孔21,22,23の距離をより好適に保つことができる。
【0047】
次に、本実施形態の培地シート1の有効性に関する試験(以下、実施例)の結果について説明する。
実施例では、本実施形態の培地シート1を用いて、播種から14日間かけてレタスを育苗した。培地シート1の平面サイズは、300mm×600mm、厚みは28mm、領域10の数は9個×18個とした。また、播種時点から14日間を経過した時点で、苗の総重量(培地シート1の重量を除く)は900gだった。
一方で、比較例として、配置パターンAにて3つの孔が設けられた領域のみで構成された培地シートを用いて、実施例と同一条件でレタスを育苗した。播種時点から14日間を経過した時点で、苗の総重量(培地シートの重量を除く)は800gだった。
以上の実施例及び比較例の結果を対比すると分かるように、本実施形態における培地シート1を用いることで、領域10間における苗の生長のバラツキが抑制され、結果として、培地シート1全体における苗の生長量を増やすことができた。
【0048】
以上までに、本発明の培地シートに関する一つの実施形態を説明したが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれることは勿論である。
【0049】
以下では、上述の実施形態の変形例1~6について、図3~8を参照しながら説明する。上述の実施形態に係る培地シート1と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
[第1変形例]
図3は、第1変形例に係る培地シート1Aにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態では、仮想的な三角形の一辺Eが、切り取り線L1と平行であるとしたが、これに限られず、仮想的な三角形の一辺Eは、切り取り線L1と平行でなくてもよい。例えば、図3に示すように、第1領域11における仮想的な三角形が、上述の実施形態の第1領域11における仮想的な三角形に対して、中点C1を中心に反時計回りに数度回転させた位置に配置されてもよい。
また、上述の実施形態では、中点C1は、第1領域11の中心と一致するとしたが、これに限られず、中点C1は第1領域11の中心と異なっていてもよい。
【0051】
[第2変形例]
図4は、第2変形例に係る培地シート1Bにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態では、領域10は平面視で方形状又は矩形状としたが、これに限られず、図4に示すように領域10は円形状であってもよく、あるいは六角形等の多角形状であってもよく、格子状に区画された領域であれば、各領域の外形形状については特に限定されない。
【0052】
[第3変形例]
図5は、第3変形例に係る培地シート1Cにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態では、仮想的な三角形の形状が、正三角形であったが、これに限られず、二等辺三角形であってもよく、例えば図5に示すように直角二等辺三角形であってもよい。
【0053】
[第4変形例]
図6は、第4変形例に係る培地シート1Dにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態及び第3変形例では、仮想的な三角形の形状は、正三角形を含む二等辺三角形であったが、これに限られず、図6に示すように二等辺三角形以外の三角形であってもよい。
【0054】
[第5変形例]
図7は、第5変形例に係る培地シート1Eにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態では、第3領域13には配置パターンAにて3つの孔21,22,23が設けられていたが、これに限られず、図7に示すように、第3領域13において配置パターンBにて3つの孔21,22,23が設けられてもよい。
【0055】
[第6変形例]
図8は、第6変形例に係る培地シート1Fにおいて図2に対応する平面図である。上述の実施形態では、仮想的な三角形の一辺Eが、X方向に延出する切り取り線L1と平行であるとしたが、これに限られない。図8に示す培地シート1Fのように、仮想的な三角形の一辺Eは、Y方向に延出する切り取り線L2と平行であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F 培地シート
10 領域
11,11B 第1領域
12,12B 第2領域
13,13B 第3領域
14,14B 第4領域
21,22,23 孔
50 培地片
A,B 配置パターン
C1 中点
C2 中間点
E 一辺
G 頂点
L,L1,L2,L2a 切り取り線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8