(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021172
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】シリンダ装置およびバルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20240208BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20240208BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/19
F16F9/32 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123825
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 幹郎
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069EE05
3J069EE28
3J069EE29
(57)【要約】
【課題】より詳細に減衰力を調整することが可能となるシリンダ装置およびバルブ装置を提供する。
【解決手段】内周側または外周側が支持され、非支持側にケース部材100との間または軸部28との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスク105と、環状ディスク105の軸方向一側の移動を規制する第1移動規制部材102,103と、環状ディスク105の軸方向他側の移動を規制する第2移動規制部材107,108と、環状ディスク105と第1移動規制部材103との間に設けられ、環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整手段104と、環状ディスク105と第2移動規制部材107との間に設けられ、環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整手段106と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2つの室に区画するピストンと、
一端側が前記ピストンに連結されると共に他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路と、
前記第1通路と直列または並列に設けられる第2通路と、
前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
内部に前記第2通路の少なくとも一部が形成される筒状のケース部材と、
前記ケース部材内に配置される軸部と、
前記軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスクと、
前記環状ディスクの軸方向一側の移動を規制する第1移動規制部材と、
前記環状ディスクの軸方向他側の移動を規制する第2移動規制部材と、
前記環状ディスクと前記第1移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整手段と、
前記環状ディスクと前記第2移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整手段と、
を有するシリンダ装置。
【請求項2】
前記第1移動距離調整手段と前記第2移動距離調整手段とは、軸方向の厚みを異ならせる請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記第1移動規制部材と前記第2移動規制部材とには、前記環状ディスクに向けて突出する突出部がそれぞれ設けられる請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
内部に通路が形成される筒状のケース部材と、
前記ケース部材内に配置される軸部と、
前記軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスクと、
前記環状ディスクの軸方向一側の移動を規制する第1移動規制部材と、
前記環状ディスクの軸方向他側の移動を規制する第2移動規制部材と、
前記環状ディスクと前記第1移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整手段と、
前記環状ディスクと前記第2移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整手段と、
を有するバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置およびバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸方向両側への撓みが可能なリーフバルブと、リーフバルブの自由端との間に隙間をあけて設けられる環状の対向部とを有するバルブがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなバルブが設けられたシリンダ装置において、バルブによって発生する減衰力を、より詳細に調整することが求められている。
【0005】
したがって、本発明は、より詳細に減衰力を調整することが可能となるシリンダ装置およびバルブ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のシリンダ装置の一態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2つの室に区画するピストンと、一端側が前記ピストンに連結されると共に他端側が前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の一方の室から作動流体が流れ出す第1通路と、前記第1通路と直列または並列に設けられる第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、内部に前記第2通路の少なくとも一部が形成される筒状のケース部材と、前記ケース部材内に配置される軸部と、前記軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスクと、前記環状ディスクの軸方向一側の移動を規制する第1移動規制部材と、前記環状ディスクの軸方向他側の移動を規制する第2移動規制部材と、前記環状ディスクと前記第1移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整手段と、前記環状ディスクと前記第2移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整手段と、を有する、構成とした。
【0007】
本発明のバルブ装置の一態様は、内部に通路が形成される筒状のケース部材と、前記ケース部材内に配置される軸部と、前記軸部を貫通させて前記ケース部材内に配置され、内周側または外周側が支持され、非支持側に前記ケース部材との間または前記軸部との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスクと、前記環状ディスクの軸方向一側の移動を規制する第1移動規制部材と、前記環状ディスクの軸方向他側の移動を規制する第2移動規制部材と、前記環状ディスクと前記第1移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整手段と、前記環状ディスクと前記第2移動規制部材との間に設けられ、前記環状ディスクの軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整手段と、を有する、構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より詳細に減衰力を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置を示す要部の断面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置に設けられたバルブ装置の要部を示す部分断面図である。
【
図4】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置に設けられたバルブ装置の縮み行程での状態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置に設けられたバルブ装置の伸び行程での状態を示す部分断面図である。
【
図6】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置に設けられたバルブ装置の環状ディスクの差圧に対する開口面積の関係を示す特性線図である。
【
図7】本発明に係る一実施形態のシリンダ装置に設けられたバルブ装置のピストン速度が極微低速領域でのピストン速度に対する減衰力の関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、
図1~
図5における上側を「上」とし、
図1~
図5における下側を「下」として説明する。
【0011】
本実施形態のシリンダ装置1は、
図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液Lが封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4とを有している。内筒3と外筒4との間はリザーバ室6となっている。
【0012】
外筒4は、円筒状の胴部材11と、胴部材11の下部側に嵌合され溶接により固定されて胴部材11の下部を閉塞する底部材12とからなっている。底部材12には、軸方向の胴部材11とは反対の外側位置に取付アイ13が溶接により固定されている。
【0013】
シリンダ装置1は、シリンダ2の内筒3の内部に摺動可能に設けられるピストン18を備えている。このピストン18は、内筒3内に、一方のシリンダ内室である上室19と、他方のシリンダ内室である下室20との2つの室を画成している。言い換えれば、ピストン18は、シリンダ2内に摺動可能に嵌装されてシリンダ2内を一側の上室19と他側の下室20とに区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液Lが封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液LとガスGとが封入されている。
【0014】
シリンダ装置1は、棒状のピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、軸方向の一端側がシリンダ2の内筒3の内部に配置されてピストン18に連結されると共に他端側がシリンダ2の外部に延出されている。ピストンロッド21は、上室19内を貫通しており、下室20は貫通していない。よって、上室19は、ピストンロッド21が貫通するロッド側室であり、下室20はシリンダ2の底側のボトム側室である。
【0015】
ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やすシリンダ装置1の伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになる。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らすシリンダ装置1の縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
【0016】
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されている。外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が嵌合されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも円環状をなしている。ピストンロッド21は、これらロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。
【0017】
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接する。これにより、シール部材23は、内筒3内の油液Lと、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスGおよび油液Lとが外部に漏洩するのを防止する。
【0018】
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしている。ロッドガイド22は、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し、大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合している。外筒4の底部材12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されている。このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められて係止部26となっている。この係止部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。
【0019】
ピストンロッド21は、主軸部27と、主軸部27よりも小径の取付軸部28と、取付軸部28の主軸部27とは反対側のネジ軸部31とを有している。ピストンロッド21は、主軸部27が、ロッドガイド22およびシール部材23に摺動可能に嵌合されている。ピストンロッド21は、取付軸部28およびネジ軸部31がシリンダ2内に配置されている。取付軸部28にピストン18等が連結されている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。取付軸部28は、外周面が円筒面となっている。ネジ軸部31は、ピストンロッド21におけるシリンダ2内側の先端位置に設けられており、外周部にオネジ32が形成されている。
【0020】
シリンダ装置1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。
【0021】
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に連結される金属製のピストン本体33と、ピストン本体33の外周面に一体に装着される円環状の合成樹脂製の摺動部材34とによって構成されている。ピストン18は、その外周部を構成する摺動部材34が内筒3内を摺動する。
【0022】
ピストン本体33は、軸方向の中間位置に有孔円板状の本体部36を有している。本体部36には、軸方向に貫通する複数の通路穴37と、軸方向に貫通する複数の通路穴39とが形成されている。
【0023】
複数の通路穴37は、ピストン本体33の軸方向に沿って直線状に延びる形状であり、ピストン本体33の円周方向に等ピッチで形成されている。ピストン本体33には、軸方向の上室19とは反対側に、複数の通路穴37を連通させる円環状の環状溝40が形成されている。環状溝40の上室19とは反対側には、環状溝40内および複数の通路穴37内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41(減衰力発生機構)が設けられている。
【0024】
第1減衰力発生機構41が上室19とは反対側に配置されることで、複数の通路穴37内および環状溝40内の通路は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液Lが流れ出す伸び側の通路となる。これら複数の通路穴37内および環状溝40内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の複数の通路穴37内および環状溝40内の通路から下室20への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
【0025】
複数の通路穴39は、ピストン本体33の軸方向に沿って直線状に延びる形状であって、ピストン本体33の円周方向に所定のピッチで形成されている。すべての通路穴39は、すべての通路穴37よりもピストン本体33の径方向における外側に形成されている。複数の通路穴39の上室19側には、複数の通路穴39内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42(減衰力発生機構)が設けられている。
【0026】
第1減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39内の通路は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液Lが流れ出す縮み側の通路となる。これら複数の通路穴39内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の複数の通路穴39内の通路から上室19への油液Lの流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
【0027】
ピストン本体33は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、ピストンロッド21の取付軸部28およびネジ軸部31が挿入される挿入穴44が軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44は、ストレート形状であり、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。これにより、ピストン本体33はピストンロッド21に対し径方向に位置決めされる。
【0028】
ピストン本体33の軸方向の上室19とは反対側の部分には、環状溝40の上室19とは反対側の開口よりも、ピストン本体33の径方向における内側に環状の内側シート部46が形成されている。ピストン本体33の軸方向の上室19とは反対側の部分には、環状溝40の上室19とは反対側の開口よりも、ピストン本体33の径方向における外側に第1減衰力発生機構41の一部を構成する円環状のバルブシート部47が形成されている。内側シート部46およびバルブシート部47は、本体部36よりも軸方向の上室19とは反対側に突出している。内側シート部46およびバルブシート部47の間が環状溝40となっている。バルブシート部47には、これを径方向に貫通する通路溝48が形成されている。
【0029】
ピストン本体33の軸方向の上室19側の端部には、複数の通路穴37の上室19側の開口よりもピストン本体33の径方向における内側に環状の内側シート部49が形成されている。また、ピストン本体33の軸方向の上室19側の端部には、複数の通路穴39の一つまたは複数の上室19側の開口を囲むように、環状で異形のバルブシート部50が形成されている。内側シート部49およびバルブシート部50は、本体部36よりも軸方向の上室19側に突出している。ピストン本体33には、周方向に間隔をあけて複数の同形状のバルブシート部50が設けられている。バルブシート部50には、ピストン本体33の周方向における外側の部分に、この部分を径方向に貫通する通路溝51が形成されている。複数の通路穴37は、それぞれが周方向に隣り合うバルブシート部50とバルブシート部50との間の隙間を介して上室19に常時連通している。
【0030】
縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン本体33のバルブシート部50を含んでおり、軸方向のピストン本体33側から順に、同形状の複数枚(具体的には四枚)のディスク63と、同形状の複数枚(具体的には二枚)のディスク64とを有している。ディスク64のディスク63とは反対側には、ディスク64側から順に、一枚のディスク65と、一枚のディスク66と、一枚の環状部材67とが設けられている。環状部材67が、ピストンロッド21の軸段部29に当接している。ディスク63~66および環状部材67は、いずれも金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる有孔円形平板状である。
【0031】
ディスク63は、その外径が複数のバルブシート部50の外接円の径と略同径となっている。ディスク64は、ディスク63の外径よりも小径であってピストン本体33の内側シート部49の外径よりも大径の外径となっている。ディスク65は、ディスク64の外径よりも小径であってピストン本体33の内側シート部49の外径よりも小径の外径となっている。ディスク66は、ディスク64の外径よりも大径であってディスク63の外径よりも小径の外径となっている。環状部材67は、ディスク66の外径よりも小径であってディスク64の外径およびピストンロッド21の軸段部29の外径よりも大径の外径となっている。環状部材67は、ディスク63~66よりも厚く高剛性となっている。
【0032】
複数枚のディスク63は、内側シート部49に常時当接しており、バルブシート部50に着座してバルブシート部50を閉塞可能となっている。薄い金属板からなる複数枚のディスク63および複数枚のディスク64が、撓み可能であってバルブシート部50に離着座可能な縮み側のメインバルブ71を構成している。メインバルブ71は、バルブシート部50から離座することで、複数の通路穴39内の通路を上室19に連通させると共に、バルブシート部50との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材67は、ディスク66とによって、メインバルブ71の開方向への規定以上の変形を規制する。
【0033】
伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン本体33のバルブシート部47を含んでおり、同形状の複数枚(具体的には二枚)のディスク83を有している。ディスク83のバルブシート部47とは反対側には、同形状の複数枚(具体的には二枚)のディスク84が設けられている。ディスク83,84は、いずれも金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる有孔円形平板状である。
【0034】
複数枚のディスク83は、ピストン本体33のバルブシート部47の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部47に着座可能となっている。ディスク84は、ディスク83の外径よりも小径であってピストン本体33の内側シート部46の外径よりも小径の外径となっている。
【0035】
複数枚のディスク83は、内側シート部46に常時当接しており、バルブシート部47に着座してバルブシート部47を閉塞可能となっている。薄い金属板からなる複数枚のディスク83が、撓み可能であってバルブシート部47に離着座可能な伸び側のメインバルブ91を構成している。メインバルブ91は、バルブシート部47から離座することで、複数の通路穴37内および環状溝40内の通路を下室20に連通可能とすると共に、バルブシート部47との間の油液Lの流れを抑制して減衰力を発生する。
【0036】
ピストン本体33には、バルブシート部47よりもピストン本体33の径方向における外側に、本体部36からバルブシート部47よりも上室19とは反対側に突出する円環状の嵌合筒部95が形成されている。嵌合筒部95は内周面は、挿入穴44と同軸状の円筒面となっている。
【0037】
複数枚のディスク84の軸方向の上室19とは反対側には、バルブ装置99が設けられている。バルブ装置99は、ディスク84側から順に、一つのケース部材100と、同形状の複数枚(具体的には二枚)のディスク101と、一つの第1ストッパ部材102(第1移動規制部材)と、一枚の第1結合ディスク103(第1移動規制部材)と、一枚の第1移動距離調整部材104(第1移動距離調整手段)と、一枚の環状ディスク105と、一枚の第2移動距離調整部材106(第2移動距離調整手段)と、一枚の第2結合ディスク107(第2移動規制部材)と、一つの第2ストッパ部材108(第2移動規制部材)とを有している。
【0038】
図3に示すように、ケース部材100、ディスク101、第1ストッパ部材102、第1結合ディスク103、第1移動距離調整部材104、環状ディスク105、第2移動距離調整部材106、第2結合ディスク107および第2ストッパ部材108は、それぞれの内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させている。ケース部材100、ディスク101、第1ストッパ部材102、第1結合ディスク103、第1移動距離調整部材104、環状ディスク105、第2移動距離調整部材106、第2結合ディスク107および第2ストッパ部材108は、いずれも金属製であり、いずれも円環状である。
【0039】
ケース部材100は、有底筒状の一体成形品である。ケース部材100は、底部111と、外側筒部112と、内側筒部113と、シート部114とを有している。底部111、外側筒部112、内側筒部113およびシート部114は、いずれも円環状であり、互いに中心軸線を一致させている。この中心軸線がケース部材100の中心軸線となる。ケース部材100内にピストンロッド21の取付軸部28が配置されている。この取付軸部28もバルブ装置99を構成している。
【0040】
底部111は、有孔円板状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。底部111には、底部111を底部111の軸方向に貫通する通路穴121が形成されている。底部111には、底部111の周方向に等間隔で複数の同形状の通路穴121が設けられている。
【0041】
外側筒部112は、略円筒状であり、底部111の外周縁部から、底部111の軸方向における一側に延出している。外側筒部112は、拡径部125と、円筒状部126とを有している。
【0042】
拡径部125は、外側筒部112の軸方向における最も底部111側にあり、底部111の外周縁部から、底部111の軸方向における一側に拡径しつつ突出している。
【0043】
円筒状部126は、円筒状であり、拡径部125の軸方向における底部111とは反対側の端部から、拡径部125の軸方向において底部111から離れるように延出している。
【0044】
内側筒部113は、略円筒状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。内側筒部113は、底部111の内周縁部から、底部111の軸方向における外側筒部112と同側に延出している。内側筒部113は、底部111からの延出量が、外側筒部112の底部111からの延出量よりも小さくなっている。底部111の通路穴は、底部111の径方向における外側筒部112と内側筒部113との間に設けられている。
【0045】
シート部114は、外側筒部112の円筒状部126の内周面130から、円筒状部126の径方向における内方に突出している。シート部114は、軸方向に鏡面対称の形状となっている。
シート部114は、第1シート面131と、第1傾斜面132と、対向面133と、第2傾斜面134と、第2シート面135とを有している。
【0046】
第1シート面131は、第1シート面131、第1傾斜面132、対向面133、第2傾斜面134および第2シート面135の中で、シート部114の軸方向における最も底部111側にある。第1シート面131は、円筒状部126の内周面130から円筒状部126の径方向における内方に広がっている。第1シート面131は、円筒状部126の内周面130の全周から広がる円形状であり、ケース部材100の中心軸線に垂直に広がる平面状である。
【0047】
第1傾斜面132は、第1シート面131の径方向内側の内周縁部からシート部114の軸方向における底部111とは反対側に延出している。第1傾斜面132は、シート部114の軸方向において底部111から離れるほど小径となるテーパ面である。
【0048】
対向面133は、第1傾斜面132のシート部114の軸方向における底部111とは反対側の端縁部から、底部111から離れる方向に延出している。対向面133は、ケース部材100の中心軸線を中心軸線を中心とする円筒面である。対向面133の径は、円筒状部126の内周面130の径よりも小径である。
【0049】
第2傾斜面134は、対向面133の軸方向における底部111とは反対側の端縁部から、底部111から離れる方向に延出している。第2傾斜面134は、シート部114の軸方向において底部111から離れるほど小径となるテーパ面である。第2傾斜面134は、第1傾斜面132と鏡面対称状である。
【0050】
第2シート面135は、第1シート面131、第1傾斜面132、対向面133、第2傾斜面134および第2シート面135の中で、シート部114の軸方向における最も底部111とは反対側にある。第2シート面135は、第2傾斜面134の軸方向における底部111とは反対側の端縁部から、シート部114の径方向における外方に広がって円筒状部126の内周面130に繋がっている。第2シート面135は、円筒状部126の内周面130の全周から広がる円形状であり、ケース部材100の中心軸線に垂直に広がる平面状である。第2シート面135は、第1シート面131と鏡面対称状である。
【0051】
ケース部材100は、底部111において、ピストン18の嵌合筒部95に嵌合している。ケース部材100は、底部111の軸方向における内側筒部113とは反対側の端面においてディスク84に当接する。底部111の通路穴121は、底部111の径方向におけるディスク84よりも外側位置かつ嵌合筒部95よりも内側位置に設けられている。
【0052】
ディスク101、第1ストッパ部材102、第1結合ディスク103、第1移動距離調整部材104、環状ディスク105、第2移動距離調整部材106、第2結合ディスク107および第2ストッパ部材108は、ケース部材100の外側筒部112内に配置されている。
【0053】
ディスク101は、有孔円形平板状である。ディスク101は、その外径が、内側筒部113の軸方向における底部111とは反対側の端面の外径と同等である。ディスク101は、内側筒部113の、この端面に当接する。
【0054】
第1ストッパ部材102は、有孔円板状であり、径方向外側ほど厚さが薄くなっている。第1ストッパ部材102は、軸方向一側の端面において、ディスク101の軸方向における内側筒部113とは反対側に当接する。
【0055】
第1ストッパ部材102は、軸方向における底部111とは反対側に規制面141を有している。規制面141は、第1ストッパ部材102の径方向における中間位置から外端位置まで広がっている。規制面141は、第1ストッパ部材102の径方向における外側ほど、第1ストッパ部材102の軸方向において底部111に近づくように傾斜するテーパ面である。
【0056】
第1ストッパ部材102には、規制面141から第1ストッパ部材102の軸方向に凹む通路溝142が形成されている。通路溝142は、規制面141の径方向における中間位置から、規制面141の径方向に沿って延びており、規制面141の径方向外端位置に抜けている。第1ストッパ部材102には、その周方向に等間隔で複数の同形状の通路溝142が設けられている。
【0057】
第1結合ディスク103は、有孔円形板状のディスクである。第1結合ディスク103は、本体部151と、突出部152とを有している。
本体部151は、有孔円形平板状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。本体部151には、切欠155と通路穴156とが形成されている。
【0058】
切欠155は、本体部151の外周部に形成されており、本体部151の径方向外側に抜けている。切欠155は、本体部151を本体部151の軸方向に貫通している。本体部151には、その周方向に等間隔で複数の同形状の切欠155が設けられている。
【0059】
通路穴156は、本体部151の径方向における切欠155によりも内側に形成されている。通路穴156は、本体部151を本体部151の軸方向に貫通している。通路穴156は、本体部151の周方向に延びる長穴である。本体部151には、その周方向に等間隔で複数の同形状の通路穴156が設けられている。複数の通路穴156は、本体部151の中心から等距離の位置に配置されている。
【0060】
突出部152は、有孔円形平板状であり、本体部151に同軸状に配置されて溶接により接着されて固定されている。
突出部152は、本体部151から本体部151の軸方向における一側に突出している。突出部152は、本体部151の周方向の全周にわたって形成された円環状である。突出部152は、本体部151の径方向における切欠155と通路穴156との間に配置されている。
【0061】
第1結合ディスク103は、本体部151の径方向の内側部分が、第1ストッパ部材102の軸方向におけるディスク101とは反対側の端面に当接する。その際に、第1結合ディスク103は、突出部152が、本体部151から第1結合ディスク103の軸方向における第1ストッパ部材102とは反対側に突出する向きとされる。
【0062】
第1結合ディスク103は、本体部151の外径が、ケース部材100のシート部114の第1シート面131の内径よりも大径であって、円筒状部126の内周面130の内径よりも小径である。第1結合ディスク103は、突出部152の外径がシート部114の対向面133の内径よりも小径である。第1結合ディスク103は、切欠155および通路穴156が、いずれも、第1ストッパ部材102の通路溝142に、第1結合ディスク103および第1ストッパ部材102の径方向において位置を重ね合わせている。
【0063】
第1結合ディスク103は、
図4に示すように、第1ストッパ部材102側に変形すると、本体部151が第1ストッパ部材102の規制面141に当接して変形が規制される。第1ストッパ部材102の通路溝142内の通路は、この状態でも、第1結合ディスク103の通路穴156内の通路に連通する。
【0064】
第1移動距離調整部材104は、有孔円形平板状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。第1移動距離調整部材104の外端位置は、第1結合ディスク103の径方向における通路穴156よりも内側となる。第1移動距離調整部材104は、第1結合ディスク103の本体部151の径方向における内側部分の、第1結合ディスク103の軸方向における第1ストッパ部材102とは反対側に当接する。
【0065】
環状ディスク105は、有孔円形平板状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。環状ディスク105は、その外径が、第1結合ディスク103の突出部152の外径よりも大径であって、シート部114の対向面133の内径よりも若干小径である。環状ディスク105は、その径方向における内側部分が、第1移動距離調整部材104の軸方向における第1結合ディスク103とは反対側に当接する。第1ストッパ部材102と第1結合ディスク103とは、環状ディスク105の第1ストッパ部材102側への移動すなわち変形を規制する。
【0066】
第2移動距離調整部材106は、有孔円形平板状であり、その内周部にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる。第2移動距離調整部材106は、その外径が、第1移動距離調整部材104の外径と同等である。第2移動距離調整部材106は、環状ディスク105の径方向における内側部分の、環状ディスク105の軸方向における第1移動距離調整部材104とは反対側に当接する。
【0067】
第2結合ディスク107は、第1結合ディスク103と同形状の共通部品である。第2結合ディスク107は、本体部151と同様の本体部161と、突出部152と同様の突出部162と、切欠155と同様の切欠165と、通路穴156と同様の通路穴166とを有している。
【0068】
第2結合ディスク107は、本体部161の径方向の内側部分が、第2移動距離調整部材106の軸方向における環状ディスク105とは反対側に当接する。その際に、第2結合ディスク107は、突出部162が、本体部161から第2結合ディスク107の軸方向における環状ディスク105側に突出する向きとされる。
【0069】
第2結合ディスク107は、本体部161の外径が、ケース部材100のシート部114の第2シート面135の内径よりも大径であって、円筒状部126の内周面130の内径よりも小径である。第2結合ディスク107は、突出部162の外径がシート部114の対向面133の内径よりも小径である。
【0070】
第2ストッパ部材108は、第1ストッパ部材102と同形状の共通部品である。第2ストッパ部材108は、軸方向一側の端面において、第2結合ディスク107の本体部161の径方向における内側部分の軸方向における第2移動距離調整部材106とは反対側に当接する。第2ストッパ部材108は、規制面141と同様の規制面171と、通路溝142と同様の通路溝172とを有している。第2ストッパ部材108は、第1ストッパ部材102と鏡面対称状に配置されている。よって、第2ストッパ部材108は、規制面171が第2結合ディスク107に対向する。
【0071】
第2結合ディスク107は、切欠165および通路穴166が、いずれも、第2ストッパ部材108の通路溝172に、第2結合ディスク107および第2ストッパ部材108の径方向において位置を重ね合わせる。
【0072】
第2結合ディスク107は、
図5に示すように、第2ストッパ部材108側に変形すると、本体部161が第2ストッパ部材108の規制面171に当接して変形が規制される。第2ストッパ部材108の通路溝172内の通路は、この状態でも、第2結合ディスク107の通路穴166内の通路に連通する。第2ストッパ部材108と第2結合ディスク107とは、環状ディスク105の第2ストッパ部材108側への移動すなわち変形を規制する。
【0073】
図2に示すように、ピストンロッド21は、そのネジ軸部31が、第2ストッパ部材108の軸方向における第2結合ディスク107とは反対側の突出する。ネジ軸部31にナット191が螺合される。これにより、環状部材67から第2ストッパ部材108までの部品が、少なくとも内周部において軸方向にクランプされる。
【0074】
ピストンロッド21に取り付けられた環状ディスク105は、その軸方向の両側の圧力が同等の初期状態では、平板状をなす。この状態で、環状ディスク105は、
図3に示すように、ケース部材100のシート部114の対向面133と、軸方向の位置を一致させる。その際に、環状ディスク105は、対向面133との間に、径方向の若干の隙間を有する。環状ディスク105は、軸方向一側に変形し移動することで、シート部114との間の通路を拡大し、軸方向他側に変形し移動することでも、シート部114との間の通路を拡大するスイングバルブである。
【0075】
ピストンロッド21に取り付けられた第1結合ディスク103は、その軸方向における底部111側の圧力が、底部111とは反対側の圧力以上の場合、本体部151の径方向における突出部152よりも外側の外周側が、シート部114の第1シート面131に当接する。
【0076】
ここで、ディスク101の厚さを調整、すなわち、厚さの異なる複数種類のディスク101の中から適宜の厚さのものを選択してピストンロッド21に取り付ける。これにより、第1結合ディスク103の軸方向における両側の圧力が同等である初期状態での、第1シート面131に当接する本体部151の初期撓み量を調整することができる。すなわち、ディスク101の厚さを厚くすればするほど、第1ストッパ部材102および第1結合ディスク103の本体部151の内周側が軸方向においてシート部114の対向面133に近づくことになり、その結果、外周側において第1シート面131に当接する本体部151の初期撓み量が大きくなって、第1ストッパ部材102の規制面141に近づく。第1結合ディスク103は、初期撓み量が大きければ大きいほどセット荷重が大きくなる。
【0077】
第1結合ディスク103は、初期状態にあるとき、本体部151において、シート部114の第1シート面131に当接する。その際に、本体部151の切欠155は、第1シート面131よりも径方向内方まで延出する。
【0078】
第1移動距離調整部材104は、ディスク101の厚さに応じて、環状ディスク105の軸方向の位置を、上記のようにシート部114の対向面133と一致させるように厚さが調整される。すなわち、厚さの異なる複数種類の第1移動距離調整部材104の中から適宜の厚さのものを選択してピストンロッド21に取り付けて、環状ディスク105の軸方向の位置を、上記のようにシート部114の対向面133と一致させる。
【0079】
言い換えれば、上記のようにディスク101の厚さを調整する際に、環状ディスク105の軸方向の位置をシート部114の対向面133と一致させるように第1移動距離調整部材104の厚さも調整してピストンロッド21に取り付ける。これにより、第1シート面131に当接する第1結合ディスク103の本体部151の初期撓み量を調整することができる。すなわち、ディスク101の厚さを厚くすればするほど、第1移動距離調整部材104の厚さを薄くすることになり、その結果、第1ストッパ部材102および第1結合ディスク103の本体部151の内周側が軸方向においてシート部114に近づくことになって、外周側において第1シート面131に当接する本体部151の初期撓み量が大きくなる。
【0080】
ディスク101および第1移動距離調整部材104は、第1結合ディスク103の初期撓み量を調整することにより、差圧のない初期状態での第1結合ディスク103の突出部152と環状ディスク105とのクリアランスを調整する。また、ディスク101および第1移動距離調整部材104は、第1結合ディスク103の初期撓み量を調整することにより、第1結合ディスク103が、差圧のない初期状態から、第1ストッパ部材102の規制面141に当接して変形すなわち移動が規制されるまでの変形量すなわち移動量を調整する。言い換えれば、ディスク101および第1移動距離調整部材104は、第1結合ディスク103の規制面141に当接するまでの変形可能な変形量すなわち移動可能な移動量を調整する。
【0081】
具体的に、ディスク101および第1移動距離調整部材104は、第1結合ディスク103の初期撓み量を大きくすればするほど、初期状態での第1結合ディスク103の突出部152と環状ディスク105とのクリアランスを小さくすると共に、第1結合ディスク103が規制面141に当接するまでの変形可能な変形量を小さくする。ただし、ディスク101および第1移動距離調整部材104は、初期状態では、第1結合ディスク103の突出部152が環状ディスク105に当接せずクリアランスを確保するようにそれぞれの厚さが設定される。
【0082】
ピストンロッド21に取り付けられた第2結合ディスク107は、その軸方向における底部111とは反対側の圧力が、底部111側の圧力以上の場合、本体部161の径方向における突出部162よりも外側の外周側が、シート部114の第2シート面135に当接する。
【0083】
ここで、第2移動距離調整部材106の厚さを調整、すなわち、厚さの異なる複数種類の第2移動距離調整部材106の中から適宜の厚さのものを選択してピストンロッド21に取り付ける。これにより、第2結合ディスク107の、第2シート面135に当接する際の初期撓み量を調整することができる。すなわち、第2移動距離調整部材106の厚さを薄くすればするほど、第2ストッパ部材108および第2結合ディスク107の本体部161の内周側が軸方向においてシート部114の対向面133に近づくことになり、その結果、外周側において第2シート面135に当接する本体部161の初期撓み量が大きくなる。第2結合ディスク107は、初期撓み量が大きければ大きいほどセット荷重が大きくなる。
【0084】
第2結合ディスク107は、初期状態にあるとき、本体部161において、シート部114の第2シート面135に当接する。その際に、本体部161の切欠165は、第2シート面135よりも径方向内方まで延出する。
【0085】
第2移動距離調整部材106は、第2結合ディスク107の初期撓み量を調整することにより、差圧のない初期状態での第2結合ディスク107の突出部162と環状ディスク105とのクリアランスを調整する。また、第2移動距離調整部材106は、第2結合ディスク107の初期撓み量を調整することにより、第2結合ディスク107が、差圧のない初期状態から、第2ストッパ部材108の規制面171に当接して変形すなわち移動が規制されるまでの変形量すなわち移動量を調整する。言い換えれば、第2移動距離調整部材106は、第2結合ディスク107の規制面171に当接するまでの変形可能な変形量すなわち移動可能な移動量を調整する。
【0086】
具体的に、第2移動距離調整部材106は、第2結合ディスク107の初期撓み量を大きくすればするほど、初期状態での第2結合ディスク107の突出部162と環状ディスク105とのクリアランスを小さくすると共に、第2結合ディスク107の本体部161が規制面171に当接するまでの変形可能な変形量すなわち移動量を小さくする。ただし、第2移動距離調整部材106は、初期状態では、第2結合ディスク107の突出部162が環状ディスク105に当接せずクリアランスを確保するように厚さが設定される。
【0087】
本実施形態では、第2移動距離調整部材106は、第1移動距離調整部材104よりも厚さが薄くなっている。これにより、第2結合ディスク107の方が、第1結合ディスク103よりも初期撓み量が大きくなっている。
【0088】
環状ディスク105は、
図4に示すように、第1結合ディスク103側に変形し移動すると、第1結合ディスク103の突出部152に当接する。この状態で、環状ディスク105が、さらに変形すると、この第1結合ディスク103を、第1ストッパ部材102側に変形させて移動させる。環状ディスク105は、この第1結合ディスク103を第1ストッパ部材102の規制面141に当接するまで変形させると、それ以上の第1ストッパ部材102側への変形すなわち移動が規制される。
【0089】
環状ディスク105は、第1結合ディスク103の初期状態からの第1ストッパ部材102の規制面141に当接するまでの変形量に応じて、変形量すなわち移動量(移動距離)が決まる。すなわち、環状ディスク105は、第1結合ディスク103の初期状態から第1ストッパ部材102の規制面141に当接するまでの変形量が大きければ大きいほど、変形量すなわち移動量が大きくなる。
【0090】
よって、第1結合ディスク103の初期状態からの第1ストッパ部材102の規制面141に当接するまでの変形量を調整する第1移動距離調整部材104は、環状ディスク105の初期状態からの軸方向一側である第1ストッパ部材102側への変形量すなわち移動距離を調整可能となっている。
【0091】
環状ディスク105は、第2結合ディスク107側に変形して移動すると、第2結合ディスク107の突出部162に当接する。この状態で、環状ディスク105が、さらに変形すると、この第2結合ディスク107を、第2ストッパ部材108側に変形させて移動させる。環状ディスク105は、この第2結合ディスク107を、第2ストッパ部材108の規制面171に当接するまで変形させると、それ以上の第2ストッパ部材108側への変形すなわち移動が規制される。
【0092】
環状ディスク105は、第2結合ディスク107の初期状態からの第2ストッパ部材108の規制面171に当接するまでの変形量に応じて、変形量すなわち移動量(移動距離)が決まる。すなわち、環状ディスク105は、第2結合ディスク107の初期状態から第2ストッパ部材108の規制面171に当接するまでの変形量が大きければ大きいほど、変形量すなわち移動量が大きくなる。
【0093】
よって、第2結合ディスク107の初期状態からの第2ストッパ部材108の規制面171に当接するまでの変形量を調整する第2移動距離調整部材106は、環状ディスク105の初期状態からの軸方向他側である第2ストッパ部材108側への変形量すなわち移動距離を調整可能となっている。
【0094】
第1結合ディスク103、第1移動距離調整部材104、環状ディスク105、第2移動距離調整部材106および第2結合ディスク107が、サブバルブ201を構成している。サブバルブ201は、その軸方向の差圧に応じてケース部材100のシート部114との間の通路面積を増減させる。サブバルブ201とシート部114とが、伸び行程および縮み行程共通の第2減衰力発生機構202を構成している。
【0095】
以上により、
図3に示すように、バルブ装置99の環状ディスク105は、ピストンロッド21の取付軸部28を貫通させてケース部材100内に配置されている。環状ディスク105は、内周側が取付軸部28に支持され、非支持側である外周側にケース部材100のシート部114との間に隙間を有している。環状ディスク105は、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能である。
【0096】
バルブ装置99の第1ストッパ部材102は、環状ディスク105の軸方向一側の移動を、第1結合ディスク103とによって規制する。
バルブ装置99の第2ストッパ部材108は、環状ディスク105の軸方向他側の移動を、第2結合ディスク107とによって規制する。
【0097】
バルブ装置99の第1移動距離調整部材104は、環状ディスク105と第1結合ディスク103との間に設けられている。第1移動距離調整部材104は、環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を調整可能である。
バルブ装置99の第2移動距離調整手段106は、環状ディスク105と第2結合ディスク107との間に設けられている。第2移動距離調整手段106は、環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を調整可能である。
【0098】
ピストン18とケース部材100の底部と、ディスク83,84とで囲まれた部分が、バルブ室205となっている。
サブバルブ201と、ケース部材100と、ディスク101と、第1ストッパ部材102とで囲まれた部分が、ケース室206となっている。サブバルブ201と、ケース部材100と、第2ストッパ部材108とで囲まれた部分が、下室20に常時連通する連通室207となっている。
【0099】
サブバルブ201内は、第1結合ディスク103と、第1移動距離調整部材104と、環状ディスク105と、シート部114とで囲まれた部分が、第1バルブ内室208となっている。第1バルブ内室208は、第1結合ディスク103の切欠155内および通路穴156内の通路を介してケース室206と連通している。
【0100】
サブバルブ201内は、第2結合ディスク107と、第2移動距離調整部材106と、環状ディスク105と、シート部114とで囲まれた部分が、第2バルブ内室209となっている。第2バルブ内室209は、第2結合ディスク107の切欠165内および通路穴166内の通路を介して連通室207と連通している。
【0101】
図2に示すピストン18が伸び側に移動すると、シリンダ2内の一方の上室19の油液Lは、上室19から、ピストン18の通路穴37内および環状溝40内の通路と、ピストン18のバルブシート部47の通路溝48内の通路あるいはバルブシート部47と開弁するメインバルブ91との間の通路とからなる伸導入側通路211(第1通路)を介してバルブ室205に流れる。言い換えれば、ピストン18の移動によりシリンダ2内の一方の上室19から油液Lが伸導入側通路211に流れ出す。
【0102】
そして、バルブ室205に流れた上室19からの油液Lは、バルブ室205と、バルブ装置99のケース部材100の通路穴121内の通路と、ケース室206と、サブバルブ201とシート部114との間の通路と、連通室207とからなる伸排出側通路212(第2通路)を介して下室20に流れ出す。
【0103】
伸導入側通路211と伸排出側通路212とは直列に設けられている。
第1減衰力発生機構41は、伸導入側通路211に設けられており、上室19からの油液Lを伸導入側通路211および伸排出側通路212を介して下室20に流す際に、減衰力を発生させる。
【0104】
サブバルブ201は、伸排出側通路212に設けられており、上室19からの油液Lを伸導入側通路211および伸排出側通路212を介して下室20に流す際に、減衰力を発生させる。
【0105】
筒状のケース部材100の内部には、伸排出側通路212の一部が形成されている。ケース部材100の内部に伸排出側通路212の全部が形成されていても良い。
【0106】
ピストン18が縮み側に移動すると、シリンダ2内の一方の下室20の油液Lは、下室20から、バルブ装置99の連通室207と、サブバルブ201とシート部114との間の通路とからなる縮導入側通路221(第2通路)を介して、ケース室206に流れる。
【0107】
そして、ケース室206に流れた油液Lは、ケース室206と、ケース部材100の通路穴121内の通路と、バルブ室205と、ピストン18の通路穴39内の通路と、ピストン18のバルブシート部50の通路溝51内の通路あるいはバルブシート部50と開弁するメインバルブ71との間の通路とからなる縮排出側通路222(第1通路)を介して上室19に流れる。言い換えれば、ピストン18の移動によりシリンダ2内の他方の下室20から油液Lが縮導入側通路221を介して縮排出側通路222から上室19に流れ出す。
【0108】
縮導入側通路221と縮排出側通路222とは直列に設けられている。
サブバルブ201は、縮導入側通路221に設けられており、下室20からの油液Lを縮導入側通路221および縮排出側通路222を介して上室19に流す際に、減衰力を発生させる。
第1減衰力発生機構42は、縮排出側通路222に設けられており、下室20からの油液Lを縮導入側通路221および縮排出側通路222を介して上室19に流す際に、減衰力を発生させる。
筒状のケース部材100の内部には、縮導入側通路221の全部が形成されている。ケース部材100の内部に縮導入側通路221の一部が形成されていても良い。
【0109】
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材251と、このベースバルブ部材251の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスクバルブ252と、ベースバルブ部材251の上側つまり下室20側に設けられるディスクバルブ253と、ベースバルブ部材251にディスクバルブ252およびディスクバルブ253を取り付ける取付ピン254とを有している。
【0110】
ベースバルブ部材251は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン254が挿通される。ベースバルブ部材251には、下室20とリザーバ室6との間で油液Lを流通可能な複数の通路穴255と、これら通路穴255よりもベースバルブ部材251の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液Lを流通可能な複数の通路穴256とが形成されている。リザーバ室6側のディスクバルブ252は、下室20から通路穴255を介するリザーバ室6への油液Lの流れを許容する一方で、リザーバ室6から下室20への通路穴255を介する油液Lの流れを抑制する。ディスクバルブ253は、リザーバ室6から通路穴256を介する下室20への油液Lの流れを許容する一方で、下室20からリザーバ室6への通路穴256を介する油液Lの流れを抑制する。
【0111】
ディスクバルブ252は、ベースバルブ部材251とによって、シリンダ装置1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液Lを流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ機構257を構成している。ディスクバルブ253は、ベースバルブ部材251とによって、シリンダ装置1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液Lを流すサクションバルブ機構258を構成している。なお、サクションバルブ機構258は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生することなく油液Lを流す機能を果たす。
【0112】
いずれも伸び側の
図2に示す第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構202のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構202のサブバルブ201よりも剛性が高く開弁圧が高い。ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構202が開弁する。また、伸び行程において、ピストン速度が、この所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構202がともに開弁することになる。言い換えれば、第1減衰力発生機構41は、伸導入側通路211に設けられ、ピストン速度が低速の領域では閉弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では開弁する。また、第2減衰力発生機構202は、伸導入側通路211と直列の伸排出側通路212に設けられ、ピストン速度が低速の領域から開弁する。サブバルブ201は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
【0113】
伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなる。ピストン速度が、第1所定値未満での伸び行程においては、上室19の油液Lが、伸導入側通路211および伸排出側通路212を介して下室20に流れることになるが、伸導入側通路211の第1減衰力発生機構41が開弁せず、第2減衰力発生機構202も開弁しない。このため、上室19の油液Lは、通路穴37内および環状溝40内の通路、バルブシート部47の通路溝48内の通路、バルブ室205、通路穴121内の通路、ケース室206、
図3に示すように軸方向の位置が重なり合う環状ディスク105とシート部114の対向面133との隙間、連通室207を順に通って下室20に流れる。これにより、減衰力が急激に立ち上がる。
【0114】
ピストン速度が、第1所定値以上第2所定値未満での伸び行程においては、伸導入側通路211の第1減衰力発生機構41が開弁せず、上室19の油液Lは、バルブシート部47の通路溝48内の通路およびバルブ室205から、伸排出側通路212を介して、伸排出側通路212にある第2減衰力発生機構202のサブバルブ201を、
図5に示すように開きつつ下室20に流れる。
【0115】
このとき、ケース室206からの油液Lは、サブバルブ201において、第1結合ディスク103の切欠155内および通路穴156内の通路から第1バルブ内室208に導入される。すると、第1バルブ内室208内の圧力が高まって、環状ディスク105を連通室207側に撓ませてシート部114から離間させるとともに、環状ディスク105を第2結合ディスク107の突出部162に当接させて、第2結合ディスク107を連通室207側に撓ませてシート部114から離間させる。これにより、伸び行程において、ピストン速度が第1所定値以上第2所定値未満の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
【0116】
このときサブバルブ201は、
図5に示すように環状ディスク105が第2結合ディスク107を第2ストッパ部材108に当接させて変形すなわち移動が規制されるまでの変形量すなわち移動量で、シート部114からの離間量すなわち最大開弁時の最大開口面積、すなわち環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が異なる。第2移動距離調整部材106が薄く、環状ディスク105が第2結合ディスク107を第2ストッパ部材108に当接させるまでの変形量すなわち移動量が小さければ、最大開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が小さくなり、発生する減衰力が高くなる。他方、第2移動距離調整部材106が厚く、環状ディスク105が第2結合ディスク107を第2ストッパ部材108に当接させるまでの変形量すなわち移動量が大きければ、最大開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が大きくなり、発生する減衰力が低くなる。
【0117】
また、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構202が開弁した状態のまま、
図3に示す第1減衰力発生機構41が開弁する。つまり、上記したように、第2減衰力発生機構202のサブバルブ201の環状ディスク105および第2結合ディスク107がシート部114から離れ、伸び側の伸排出側通路212で上室19から下室20に油液Lを流すことになるが、このとき、伸導入側通路211においてサブバルブ201よりも上流側に設けられたオリフィスとしての通路溝48内の通路で油液Lの流れが絞られることにより、メインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部47から離座して、伸び側の伸導入側通路211および伸排出側通路212で上室19から下室20に油液Lを流す。これにより、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。
【0118】
ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率は、ピストン速度が第2所定値未満の極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
【0119】
いずれも縮み側の
図2に示す第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構202のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構202のサブバルブ201よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構202が開弁し、ピストン速度が、この所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構202および第1減衰力発生機構42がともに開弁することになる。言い換えれば、第1減衰力発生機構42は、縮排出側通路222に設けられ、ピストン速度が低速の領域では閉弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では開弁する。また、第2減衰力発生機構202は、縮導入側通路221に設けられ、ピストン速度が低速の領域から開弁する。サブバルブ201は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
【0120】
縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなる。ピストン速度が、第3所定値未満での縮み行程においては、下室20の油液Lが、縮導入側通路221および縮排出側通路222を介して上室19に流れることになるが、縮導入側通路221の第2減衰力発生機構202が開弁せず、縮排出側通路222の第1減衰力発生機構42も開弁しない。このため、下室20の油液Lは、
図3に示す連通室207、縮導入側通路221の軸方向の位置が重なり合う環状ディスク105とシート部114の対向面133との隙間、ケース室206、通路穴121内の通路、バルブ室205、通路穴39内の通路、
図2に示す通路溝51内の通路を、順に通過して上室19に流れる。これにより、減衰力が急激に立ち上がる。
【0121】
ピストン速度が、第3所定値以上第4所定値未満での縮み行程においては、縮排出側通路222の第1減衰力発生機構42は開弁せず、下室20の油液Lは、
図3に示す連通室207から、縮導入側通路221にある第2減衰力発生機構202のサブバルブ201を、
図4に示すように開きつつ、縮排出側通路222の通路溝51内の通路を介して上室19に流れる。
【0122】
このとき、連通室207からの油液Lは、サブバルブ201において、第2結合ディスク107の切欠165内および通路穴166内の通路から第2バルブ内室209に導入される。すると、第2バルブ内室209内の圧力が高まって、環状ディスク105をケース室206側に撓ませてシート部114から離間させるとともに、環状ディスク105を第1結合ディスク103の突出部152に当接させて、第1結合ディスク103をケース室206側に撓ませてシート部114から離間させる。これにより、縮み行程において、ピストン速度が第3所定値以上第4所定値未満の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
【0123】
このときサブバルブ201は、環状ディスク105が第1結合ディスク103を第1ストッパ部材102に当接させて変形すなわち移動が規制されるまでの変形量すなわち移動量で、シート部114からの離間量、すなわち最大開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が異なる。第1移動距離調整部材104が厚く、環状ディスク105が第1結合ディスク103を第1ストッパ部材102に当接させるまでの変形量すなわち移動量が大きければ、最大開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が大きくなり、発生する減衰力が低くなる。他方、第1移動距離調整部材104が薄く、環状ディスク105が第1結合ディスク103を第1ストッパ部材102に当接させるまでの変形量すなわち移動量が小さければ、最大開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積が小さくなり、発生する減衰力が高くなる。
【0124】
また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構202が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、サブバルブ201の環状ディスク105および第1結合ディスク103がシート部114から離れて、縮導入側通路221で下室20からケース室206に油液Lを流すことになるが、このとき、縮排出側通路222はオリフィスである通路溝51内の通路で油液Lの流量が絞られていることから、メインバルブ71に生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、バルブ室205から縮排出側通路222を介して上室19に油液Lを流す。これにより、縮み行程においてピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。
【0125】
縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、ピストン速度が第4所定値未満の極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
【0126】
なお、縮み行程においては、減衰バルブ機構257による減衰力特性も合わせた特性となる。
【0127】
上記した特許文献1には、軸方向両側への撓みが可能なリーフバルブと、リーフバルブの自由端との間に隙間をあけて設けられる環状の対向部とを有するバルブが開示されている。ところで、このようなバルブが設けられたシリンダ装置において、バルブによって発生する減衰力を、より詳細に調整することが求められている。
【0128】
シリンダ装置1は、ピストン18の移動によりシリンダ2内の上室19および下室20のうちの一方の室から油液Lが流れ出す伸導入側通路211および縮排出側通路222と、伸導入側通路211に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構41と、縮排出側通路222に設けられて減衰力を発生させる第1減衰力発生機構42と、バルブ装置99とを有している。
【0129】
そして、バルブ装置99は、伸導入側通路211と直列に設けられる伸排出側通路212と、縮排出側通路222と直列に設けられる縮導入側通路221と、内部に伸排出側通路212の少なくとも一部および縮導入側通路221の少なくとも一部が形成される筒状のケース部材100と、ケース部材100内に配置される取付軸部28と、取付軸部28を貫通させてケース部材100内に配置され、内周側が支持され、非支持側にケース部材100との間に隙間を有し、軸方向一側と軸方向他側とに撓み可能な環状ディスク105とを有している。また、バルブ装置99は、環状ディスク105の軸方向一側の移動を規制する第1ストッパ部材102および第1結合ディスク103と、環状ディスク105の軸方向他側の移動を規制する第2結合ディスク107および第2ストッパ部材108と、環状ディスク105と第1結合ディスク103との間に設けられ、環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を調整可能な第1移動距離調整部材104と、環状ディスク105と第2結合ディスク107との間に設けられ、環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を調整可能な第2移動距離調整部材106と、を有している。
【0130】
よって、第1移動距離調整部材104によって環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を調整可能することによって、縮み行程の減衰力を調整することができる。また、第2移動距離調整部材106によって環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を調整可能することによって、伸び行程の減衰力を調整することができる。したがって、シリンダ装置1は、バルブ装置99が、減衰力を伸び行程と縮み行程とで独立して調整することが可能となるため、より詳細に減衰力を調整することが可能となる。
【0131】
すなわち、ディスク101の厚さを厚くし第1移動距離調整部材104の厚さを薄くすることによって、環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を小さくすれば、縮み行程での第2減衰力発生機構202の開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積を小さくすることができて、減衰力を高くすることができる。また、ディスク101の厚さを薄くし第1移動距離調整部材104の厚さを厚くすることによって、環状ディスク105の軸方向一側の移動距離を大きくすれば、縮み行程での第2減衰力発生機構202の開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積を大きくすることができて、減衰力を低くすることができる。
【0132】
また、第2移動距離調整部材106の厚さを薄くすることによって、環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を小さくすれば、伸び行程での第2減衰力発生機構202の開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積を小さくすることができて、減衰力を高くすることができる。また、第2移動距離調整部材106の厚さを厚くすることによって、環状ディスク105の軸方向他側の移動距離を大きくすれば、伸び行程での第2減衰力発生機構202の開弁時の環状ディスク105およびシート部114間の最大開口面積を大きくすることができて、減衰力を低くすることができる。
【0133】
したがって、シリンダ装置1は、伸び行程と縮み行程とで独立してバルブ装置99による極微低速領域の減衰力特性を設定することができるため、より詳細に減衰力を調整することができる。
【0134】
ここで、サブバルブ201は、初期状態では、環状ディスク105がシート部114の対向面133と軸方向の位置を合わせており、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積を最小としている。サブバルブ201は、環状ディスク105に生じる差圧が増大すると、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積を最小としている状態を所定距離分維持した後、この開口面積を拡大する。シリンダ装置1のバルブ装置99は、第1移動距離調整部材104の厚さと第2移動距離調整部材106の厚さとを調整することによって、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大を開始させる差圧を異ならせることができる。
【0135】
例えば、第1移動距離調整部材104の厚さと第2移動距離調整部材106の厚さとを同等とする第1パターンでは、
図6に破線で示すように、伸び行程(
図6の原点から右側)で環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大を開始させる環状ディスク105の差圧と、縮み行程(
図6の原点から左側)で環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大を開始させる環状ディスク105の差圧とを、正負反転した同等値にすることができる。また、第1パターンでは、環状ディスク105の差圧の増大に対する環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の関係も、正負反転した同等の特性にすることができる。
【0136】
図7に破線で示すように、極微低速領域(0.005m/s付近)での減衰力特性は、ピストン速度が遅い環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大前には、急激にピストン速度の増大に対する減衰力の増大率が大きくなり(急激に減衰力が立ち上がり)、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大開始後は、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大に伴って、ピストン速度の増大に対する減衰力の増大率が小さくなる。第1パターンでは、伸び行程および縮み行程でも、正負反転した同等の特性にすることができる。
【0137】
また、例えば、
図3~
図5に示すように、第1移動距離調整部材104の厚さを厚くし、第2移動距離調整部材106の厚さを薄くする第2パターンでは、
図6に実線で示すように、伸び行程(
図6の原点から右側)で環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大を開始させる環状ディスク105の差圧を大きくし、縮み行程(
図6の原点から左側)で環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大を開示させる環状ディスク105の差圧を小さくすることができる。
【0138】
また、第2パターンでは、開口面積の拡大開始後の、環状ディスク105の差圧の増大に対する環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の増加量の関係は、同等量開口面積を拡大するために必要な環状ディスク105の差圧の増大量が、伸び行程の方が縮み行程よりも大きくなる。
【0139】
第2パターンでは、
図7に実線で示すように、伸び行程の極微低速領域での減衰力特性は、ピストン速度が遅い環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大前には、第1パターンよりもピストン速度が速くなるまで急激に減衰力が立ち上がる特性を維持し、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大開始後は、この開口面積の拡大に伴って、ピストン速度の増大に対する減衰力の増大率が小さくなるものの、第1パターンよりも高いハードな減衰力を得ることができる。
【0140】
また、第2パターンでは、縮み行程の極微低速領域での減衰力特性は、ピストン速度が遅い環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大前には、第1パターンよりもピストン速度が遅い範囲で急激に減衰力が立ち上がる特性となり、環状ディスク105およびシート部114間の開口面積の拡大開始後は、この開口面積の拡大に伴って、ピストン速度の増大に対する減衰力の増大率が小さくなり、第1パターンよりも減衰力が低いソフトな特性になる。
【0141】
このように、第2パターンでは、バルブ装置99により発生させる極微低速領域の減衰力特性に、伸び行程と縮み行程とで大きく差をつけることができる。
【0142】
シリンダ装置1のバルブ装置99は、第1移動距離調整部材104と第2移動距離調整部材106とが、上記のように軸方向の厚みを異ならせる。バルブ装置99は、このように第1移動距離調整部材104の厚みと第2移動距離調整部材106と厚みとを調整することによって、減衰力を伸び行程と縮み行程とで独立して調整することが可能となるため、容易に減衰力を調整することが可能となる。
【0143】
シリンダ装置1のバルブ装置99は、第1結合ディスク103に、環状ディスク105に向けて突出する突出部152が設けられている。このため、環状ディスク105の第1結合ディスク103側への変形時に、環状ディスク105を早期に第1結合ディスク103に当接させて抵抗力を発生させることができる。また、第2結合ディスク107に、環状ディスク105に向けて突出する突出部162が設けられている。このため、環状ディスク105の第2結合ディスク107側への変形時に、環状ディスク105を早期に第2結合ディスク107に当接させて抵抗力を発生させることができる。
【0144】
なお、以上の実施形態においては、環状ディスク105の内周側をピストンロッド21の取付軸部28に支持させて、環状ディスク105の非支持側である外周側に、隙間を有してケース部材100を設けた。しかしながら、これとは逆に、環状ディスク105の外周側をケース部材100の外側筒部112に支持させて、環状ディスク105の非支持側である内周側に、隙間を有してピストンロッド21の取付軸部28を設けることも可能である。
【0145】
また、以上の実施形態においては、第1減衰力発生機構41が設けられる伸導入側通路211と直列に、第2減衰力発生機構202が設けられる伸排出側通路212を設け、第1減衰力発生機構42が設けられる縮排出側通路222と直列に、第2減衰力発生機構202が設けられる縮導入側通路221を設けた。しかしながら、例えば、ピストン18とケース部材100とを嵌合させず、嵌合筒部95および通路穴121をなくして、伸排出側通路212および縮導入側通路221をピストンロッド21の内部に設けられた通路を通して直接上室19に開口させることで、第1減衰力発生機構41が設けられる伸導入側通路211と並列に、第2減衰力発生機構202が設けられる伸排出側通路212を設け、第1減衰力発生機構42が設けられる縮排出側通路222と並列に、第2減衰力発生機構202が設けられる縮導入側通路221を設けることも可能である。
【符号の説明】
【0146】
1…シリンダ装置、2…シリンダ、18…ピストン、19…上室、20…下室、21…ピストンロッド、28…取付軸部(軸部)、41…第1減衰力発生機構(減衰力発生機構)、42…第1減衰力発生機構(減衰力発生機構)、99…バルブ装置、100…ケース部材、102…第1ストッパ部材(第1移動規制部材)、103…第1結合ディスク(第1移動規制部材)、104…第1移動距離調整部材(第1移動距離調整手段)、105…環状ディスク、106…第2移動距離調整部材(第2移動距離調整手段)、107…第2結合ディスク(第2移動規制部材)、108…第2ストッパ部材(第2移動規制部材)、152,162…突出部、211…伸導入側通路(第1通路)、212…伸排出側通路(第2通路)、221…縮導入側通路(第2通路)、222…縮排出側通路(第1通路)。