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特開2024-21173赤外線センサの製造方法および赤外線センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021173
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】赤外線センサの製造方法および赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01J1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123826
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 邦之
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA11
2G065BB24
2G065BE08
(57)【要約】
【課題】製造工程を簡略化できる赤外線センサの製造方法を提供する。
【解決手段】傘状の赤外線吸収部と、基板上に形成され、赤外線吸収部に接続された温度検出部と、基板上に形成され、温度検出部の温度に関する信号を処理する制御部と、を備える赤外線センサの製造方法であって、温度検出部を形成する検出部形成工程S10と、犠牲層を金属材料により成膜する犠牲層成膜工程S20と、犠牲層を成形して制御部の配線層を形成する配線形成工程S30と、犠牲層上に赤外線吸収部を形成する赤外線吸収部形成工程S40と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘状の赤外線吸収部と、
基板上に形成され、前記赤外線吸収部に接続された温度検出部と、
前記基板上に形成され、前記温度検出部の温度に関する信号を処理する制御部と、
を備える赤外線センサの製造方法であって、
前記温度検出部を形成する検出部形成工程と、
犠牲層を金属材料により成膜する犠牲層成膜工程と、
前記犠牲層を成形して前記制御部の配線を形成する配線形成工程と、
前記犠牲層上に前記赤外線吸収部を形成する赤外線吸収部形成工程と、
を備える赤外線センサの製造方法。
【請求項2】
前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、
前記配線形成工程で、前記犠牲層に前記支柱が形成されるスルーホールを形成する、
請求項1に記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項3】
前記基板には、平面視で前記温度検出部と重なるキャビティが形成され、
前記赤外線吸収部形成工程は、
膜を成膜する成膜工程と、
前記膜を成形して前記赤外線吸収部を形成するパターニング工程と、
を有し、
前記パターニング工程で、前記キャビティと外部とを連通させる貫通孔を形成する、
請求項1または請求項2に記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項4】
前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、
前記パターニング工程で、前記支柱および前記温度検出部に前記貫通孔を形成する、
請求項3に記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項5】
前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、
前記パターニング工程で、前記支柱の周囲に複数の前記貫通孔を形成する、
請求項3に記載の赤外線センサの製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成された温度検出部と、
前記温度検出部に接続された支柱と、
前記支柱を介して前記温度検出部に接続された傘状の赤外線吸収部と、
前記基板上に形成され、前記温度検出部の温度に関する信号の処理する制御部と、
を備え、
前記支柱の高さは、前記制御部に含まれる配線の膜厚に対応している、
赤外線センサ。
【請求項7】
前記支柱および前記赤外線吸収部は、一体に形成されており、前記配線よりも上層に設けられた絶縁膜と同一膜である、
請求項6に記載の赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサの製造方法および赤外線センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱型赤外線センサとして、温度検出部に傘状の赤外線吸収部が接続されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この種の赤外線センサの製造方法では、温度検出部が形成された基板上に犠牲層を形成し、犠牲層上に赤外線吸収部を形成した後、犠牲層を除去することで赤外線吸収部を傘状に形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-299596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の赤外線センサの製造方法では、赤外線吸収部を傘状に形成するために専用の犠牲層を設ける必要がある。専用の犠牲層を設けると、工程が複雑化して製造コストが増加する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、製造工程を簡略化できる赤外線センサの製造方法および赤外線センサを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る赤外線センサの製造方法は、傘状の赤外線吸収部と、基板上に形成され、前記赤外線吸収部に接続された温度検出部と、前記基板上に形成され、前記温度検出部の温度に関する信号を処理する制御部と、を備える赤外線センサの製造方法であって、前記温度検出部を形成する検出部形成工程と、犠牲層を金属材料により成膜する犠牲層成膜工程と、前記犠牲層を成形して前記制御部の配線を形成する配線形成工程と、前記犠牲層上に前記赤外線吸収部を形成する赤外線吸収部形成工程と、を備える。
【0007】
第1の態様によれば、制御部の配線を形成する膜を用いて、傘状の赤外線吸収部を形成するための犠牲層を形成できる。したがって、傘状の赤外線吸収部を形成するための犠牲層を専用に設ける場合と比較して、製造工程を簡略化できる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る赤外線センサの製造方法は、上記第1の態様に係る赤外線センサの製造方法において、前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、前記配線形成工程で、前記犠牲層に前記支柱が形成されるスルーホールを形成してもよい。
【0009】
第2の態様によれば、制御部の配線を形成するのと同時に支柱用のスルーホールを形成できるので、支柱用のスルーホールを形成する専用の工程を省略できる。したがって、製造工程が増えることを抑制できる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る赤外線センサの製造方法は、上記第1の態様または第2の態様に係る赤外線センサの製造方法において、前記基板には、平面視で前記温度検出部と重なるキャビティが形成され、前記赤外線吸収部形成工程は、膜を成膜する成膜工程と、前記膜を成形して前記赤外線吸収部を形成するパターニング工程と、を有し、前記パターニング工程で、前記キャビティと外部とを連通させる貫通孔を形成してもよい。
【0011】
第3の態様によれば、赤外線吸収部を形成するのと同時に貫通孔を形成できるので、貫通孔を形成する専用の工程を省略できる。したがって、製造工程が増加することを抑制できる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る赤外線センサの製造方法は、上記第3の態様に係る赤外線センサの製造方法において、前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、前記パターニング工程で、前記支柱および前記温度検出部に前記貫通孔を形成してもよい。
【0013】
第4の態様によれば、エッチング液またはエッチングガスを貫通孔に進入させて基板にキャビティを形成する場合に、平面視で支柱を中心に広がるようにキャビティが形成される。このため、支柱に接続した温度検出部の全体をカバーする比較的小さなキャビティを形成するのに好適である。
【0014】
本発明の第5の態様に係る赤外線センサの製造方法は、上記第3の態様または第4の態様に係る赤外線センサの製造方法において、前記赤外線センサは、前記赤外線吸収部と前記温度検出部とを接続する支柱を備え、前記パターニング工程で、前記支柱の周囲に複数の前記貫通孔を形成してもよい。
【0015】
第5の態様によれば、エッチング液またはエッチングガスを貫通孔に進入させて基板にキャビティを形成する場合に、キャビティが平面視で貫通孔から支柱側に広がるとともに、支柱とは反対側にも広がるように形成される。このため、平面視で温度検出部の外側に広がる比較的大きなキャビティを形成するのに好適である。
【0016】
本発明の第6の態様に係る赤外線センサは、基板と、前記基板上に形成された温度検出部と、前記温度検出部に接続された支柱と、前記支柱を介して前記温度検出部に接続された傘状の赤外線吸収部と、前記基板上に形成され、前記温度検出部の温度に関する信号の処理する制御部と、を備え、前記支柱の高さは、前記制御部に含まれる配線の膜厚に対応している。
【0017】
第6の態様によれば、温度検出部と傘状の赤外線吸収部との間隔が制御部の配線の膜厚と一致するので、赤外線吸収部を傘状に形成するための犠牲層を制御部の配線と同一膜にすることができる。これにより、専用の犠牲層を設けることなく傘状の赤外線吸収部を形成できるので、製造工程の簡略化により赤外線センサを低コストで製造できる。
【0018】
本発明の第7の態様に係る赤外線センサは、上記第6の態様に係る赤外線センサにおいて、前記支柱および前記赤外線吸収部は、一体に形成されており、前記配線よりも上層に設けられた絶縁膜と同一膜であってもよい。
【0019】
第7の態様によれば、支柱および赤外線吸収部を制御部と同時に形成できるので、支柱または赤外線吸収部が専用の膜により形成される構成と比較して、製造工程を簡略化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、赤外線センサの製造工程を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態の赤外線センサの平面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】第1実施形態の赤外線センサの断面図である。
図4】第1実施形態の赤外線センサの製造方法を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態の検出部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図6】第1実施形態の犠牲層成膜工程における赤外線センサの断面図である。
図7】第1実施形態の配線形成工程における赤外線センサの断面図である。
図8】第1実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図9】第1実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図10】第1実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図11】第1実施形態のキャビティ形成工程における赤外線センサの断面図である。
図12】第1実施形態の犠牲層除去工程における赤外線センサの断面図である。
図13】第2実施形態の赤外線センサの平面図である。
図14図13のXIII-XIII線における断面図である。
図15】第2実施形態の配線形成工程における赤外線センサの断面図である。
図16】第2実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図17】第2実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図18】第2実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図19】第2実施形態のキャビティ形成工程における赤外線センサの断面図である。
図20】第2実施形態の犠牲層除去工程における赤外線センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
[第1実施形態]
(赤外線センサの構成)
図1は、第1実施形態の赤外線センサの平面図である。図2は、図1のII-II線における断面図である。
図1および図2に示すように、赤外線センサ1は、熱型赤外線センサである。赤外線センサ1は、基板10を含む。以下では、基板10の厚さ方向を上下方向という。また、上下方向のうち、基板10に対して後述するセンサ素子が形成される側を上側と定義し、その反対側を下側と定義する。
【0024】
赤外線センサ1は、基板10と、基板10上に形成されたセンサ層20と、センサ層20から上方に突出した支柱30と、支柱30に支持された傘状の赤外線吸収部40と、を備える。
【0025】
基板10は、シリコン等の半導体基板である。基板10の上面11には、上方に開放されたキャビティ12が形成されている。
【0026】
センサ層20は、基板10の上面11を覆っている。センサ層20は、基板10に直接積層されている。センサ層20は、全体として上下方向に直交する方向に延びている。センサ層20は、上方から見た平面視でキャビティ12と重なっている。センサ層20のうち上方から見た平面視でキャビティ12と重なる箇所は、基板10の上面11から浮いたメンブレン21である。
【0027】
センサ層20は、サーモパイル型のセンサ素子として、温度検出部22、周辺部23、および不図示の熱電対を備える。温度検出部22は、周辺部23に対して図中の仮想線で区画された部分である。温度検出部22は、メンブレン21に設けられており、平面視でキャビティ12の中心に重なっている。温度検出部22の全体は、平面視でキャビティ12の開口縁よりも内側に配置されている。これにより、温度検出部22は、基板10に対して非接触である。周辺部23は、温度検出部22を取り囲むように設けられている。周辺部23は、温度検出部22を支持している。周辺部23は、基板10の上面11を覆っている。周辺部23は、平面視でキャビティ12よりも外側の箇所で基板10に直接積層されている。
【0028】
温度検出部22および周辺部23は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜である。温度検出部22および周辺部23は、同一材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。また、温度検出部22および周辺部23のうち少なくともいずれか一方は、多層膜により形成されていてもよい。本実施形態では、温度検出部22および周辺部23は、一体に成膜された2層膜であって、それぞれ第1絶縁層24および第2絶縁層25を有している。熱電対は、温度検出部22および周辺部23に埋設されている。熱電対は、温度検出部22と周辺部23との境界を跨るように配置されている。熱電対は、温接点および冷接点を有する。温接点は、温度検出部22に設けられている。冷接点は、周辺部23に設けられている。
【0029】
支柱30は、温度検出部22の上方に配置されている。支柱30は、上下方向に延びている。支柱30の下端は、温度検出部22に直接接続されている。支柱30は、平面視でキャビティ12の中心に配置されている。支柱30は、絶縁材料により形成されている。例えば、支柱30は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜である。
【0030】
赤外線吸収部40は、支柱30の上端に直接接続されている。赤外線吸収部40は、支柱30を介して温度検出部22に接続されている。赤外線吸収部40は、支柱30との接続部から上下方向に直交する方向に広がっている。赤外線吸収部40は、上下方向に厚みを有する板状に形成されている。赤外線吸収部40は、平面視で矩形状に形成されている。赤外線吸収部40の中心部は、支柱30の上端に接続している。赤外線吸収部40の全体は、センサ層20の上面に対して略一定の隙間を有している。赤外線吸収部40とセンサ層20との間には、支柱30を除いて他の部材が配置されていない空間が設けられている。赤外線吸収部40は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜である。本実施形態では、赤外線吸収部40は、支柱30と同一材料により一体に形成されている。これにより赤外線吸収部40および支柱30は、連続性を有する。
【0031】
赤外線センサ1には、キャビティ12と赤外線センサ1の外部とを連通させる貫通孔3が形成されている。貫通孔3は、少なくともセンサ層20を貫通している。本実施形態では、貫通孔3は、赤外線吸収部40、支柱30およびセンサ層20を一括して上下方向に貫通している。この場合、貫通孔3は、センサ層20の温度検出部22を貫通している。
【0032】
図3は、第1実施形態の赤外線センサの断面図であって、図2に示す箇所とは異なる箇所を示している。
図3に示すように、赤外線センサ1は、制御部50を備える。制御部50は、温度検出部22の温度に関する信号を処理する。すなわち、制御部50は、センサ層20の熱電対の起電力を測定する。制御部50は、センサ層20、支柱30および赤外線吸収部40を含むセンサ領域に対して平面視でずれた位置に形成されている。
【0033】
制御部50は、トランジスタ51と、トランジスタ51に積層された第1絶縁膜52と、第1絶縁膜52に積層された第1配線層53と、第1配線層53を被覆する第2絶縁膜54と、第2絶縁膜54に積層された第2配線層55と、第2配線層55を被覆する第3絶縁膜56と、を備える。トランジスタ51は、MOSFETである。ただし、トランジスタ51は、MOSFET以外の構造を有していてもよい。なお図中の符号57は、トランジスタ51同士を絶縁させるLOCOS(Local Oxidation of Silicon)等の素子分離領域である。
【0034】
第1絶縁膜52は、トランジスタ51に直接積層されており、トランジスタ51のゲート、ソースおよびドレインを被覆している。第1絶縁膜52は、センサ層20の第1絶縁層24と同一膜である。本実施形態において同一膜とは、同一工程において成膜された膜である。
【0035】
第1配線層53は、第1絶縁膜52に直接積層されている。第1配線層53は、第1絶縁膜52に形成されたコンタクトホール52h内のコンタクトを通じてトランジスタ51の電極に電気的に接続されている。
【0036】
第2絶縁膜54は、第1配線層53よりも上層に設けられている。本実施形態において上層とは、対象となる構造体よりも後の工程で成膜された層である。第2絶縁膜54は、第1配線層53を被覆しているととともに、第1配線層53の周囲で第1絶縁膜52に直接積層されている。第2絶縁膜54は、センサ層20の第2絶縁層25と同一膜である。これにより、第1絶縁膜52および第2絶縁膜54からなる2層膜は、温度検出部22および周辺部23を形成する2層の絶縁膜に対応する膜厚を持つ。なお対応し合う膜厚には、膜厚が互いに等しい場合に加えて、周辺構造の差異によって成膜時の堆積速度に差が生じて膜厚が互いに相違している場合も含む。
【0037】
第2配線層55は、第2絶縁膜54に直接積層されている。第2配線層55は、第2絶縁膜54に形成されたコンタクトホール54h内の貫通電極を通じて第1配線層53に電気的に接続されている。第2配線層55の第2絶縁膜54上の膜厚は、支柱30の高さに対応している。
【0038】
第3絶縁膜56は、第2配線層55よりも上層に設けられている。第3絶縁膜56は、第2配線層55を被覆しているとともに、第2配線層55の周囲で第2絶縁膜54に直接積層されている。第3絶縁膜56は、支柱30および赤外線吸収部40からなる構造体と同一膜であって、支柱30および赤外線吸収部40からなる構造体に対応する膜厚を持つ。
【0039】
(赤外線センサの製造方法)
図4は、第1実施形態の赤外線センサの製造方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態の赤外線センサ1の製造方法は、検出部形成工程S10と、犠牲層成膜工程S20と、配線形成工程S30と、赤外線吸収部形成工程S40と、キャビティ形成工程S50と、犠牲層除去工程S60と、を備える。
【0040】
図5は、第1実施形態の検出部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図5に示すように、検出部形成工程S10では、基板10となる半導体基板70上にセンサ層20が形成される。すなわち、半導体基板70上に温度検出部22、周辺部23および熱電対が形成される。さらに検出部形成工程S10では、制御部50の第1絶縁膜52、第1配線層53、第2絶縁膜54および第2配線層55が形成される。なお制御部50のトランジスタ51は、検出部形成工程S10よりも前の工程で形成される。
【0041】
具体的に、検出部形成工程S10は以下の工程を含む。最初に、センサ層20の第1絶縁層24を第1絶縁膜52と同時に形成する。次いで、熱電対の温接点および冷接点を、第1配線層53と同時に形成する。このとき、第1絶縁膜52のコンタクトホール52h内のコンタクトは、第1配線層53とともに形成される。なお、熱電対の一部は、第1絶縁層24の成膜前に形成されてもよい。最後に、センサ層20の第2絶縁層25を第2絶縁膜54と同時に形成する。これにより、第1絶縁膜52および第2絶縁膜54からなる2層膜は、温度検出部22および周辺部23を形成する2層の絶縁膜と同一膜となるとともに、互いに対応し合う膜厚を持つ。なお、各絶縁膜は、成膜後に平坦化処理を施される。次いで、犠牲層成膜工程S20を行う。
【0042】
図6は、第1実施形態の犠牲層成膜工程における赤外線センサの断面図である。
図6に示すように、犠牲層成膜工程S20では、犠牲層60がセンサ層20上に成膜される。犠牲層60は、金属材料により形成される。例えば、犠牲層60を形成する金属材料は、アルミニウムやアルミニウム合金、銅、銅合金等である。犠牲層60は、制御部50の形成領域にも成膜される。制御部50の形成領域で、犠牲層60は第2絶縁膜54上に成膜される。なお第2絶縁膜54のコンタクトホール54h内の貫通電極は、犠牲層60とともに形成される。これにより、貫通電極は犠牲層60と同じ膜種となる。次いで、配線形成工程S30を行う。
【0043】
図7は、第1実施形態の配線形成工程における赤外線センサの断面図である。
図7に示すように、配線形成工程S30では、犠牲層60をセンサ領域および制御部50の形成領域で成形する。これにより、制御部50の第2配線層55が形成され、センサ領域における犠牲層60が第2配線層55と同一膜になる。さらに配線形成工程S30では、犠牲層60にスルーホール61が形成される。スルーホール61は、犠牲層60を上下方向に貫通している。スルーホール61は、平面視で温度検出部22に重なっている。配線形成工程S30では、ドライエッチング等により犠牲層60を成形する。次いで、赤外線吸収部形成工程S40を行う。
【0044】
図8から図10は、第1実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
図8から図10に示すように、赤外線吸収部形成工程S40では、犠牲層60上に赤外線吸収部40が形成される。赤外線吸収部形成工程S40は、工程順に、成膜工程S41と、パターニング工程S42と、を有する。
【0045】
図8に示すように、成膜工程S41では、赤外線吸収部40を形成する材料が犠牲層60上に成膜される。以下、赤外線吸収部40を形成する材料を吸収部材料71と称する。吸収部材料71は、スルーホール61に堆積するように犠牲層60上に成膜される。これにより、スルーホール61に支柱30が形成される。支柱30の高さが犠牲層60のスルーホール61の深さに一致するので、支柱30の高さが犠牲層60と同一膜である第2配線層55の膜厚に対応する。
【0046】
吸収部材料71は、制御部50の形成領域にも成膜される。吸収部材料71は、第3絶縁膜56となる。これにより、支柱30および赤外線吸収部40からなる構造体と、第3絶縁膜56とが同一膜となる。成膜工程S41では、CVD等によって吸収部材料71が成膜される。
【0047】
図9および図10に示すように、パターニング工程S42では、成膜された吸収部材料71を成形することで、赤外線吸収部40が形成される。具体的に、パターニング工程S42は、工程順に、レジストパターン73を形成する工程と、エッチングによって吸収部材料71を成形する工程と、レジスト材を除去する工程と、を有する。図9に示すように、レジストパターン73を形成する工程では、成膜工程S41で成膜された吸収部材料71の膜上にレジスト材をコートし、リソグラフィによってレジストパターン73を作成する。図10に示すように、吸収部材料71を成形する工程では、犠牲層60をエッチングストッパ層として用いる。吸収部材料71を成形する工程では、吸収部材料71の膜および温度検出部22に貫通孔3が併せて形成される。貫通孔3は、支柱30を貫通している。その後、レジスト材は剥離除去される。次いで、キャビティ形成工程S50を行う。
【0048】
図11は、第1実施形態のキャビティ形成工程における赤外線センサの断面図である。
図11に示すように、キャビティ形成工程S50では、半導体基板70にキャビティ12が形成される。半導体基板70は、キャビティ12が形成されることで基板10となる。キャビティ12は、エッチングによって形成される。キャビティ12は、貫通孔3に進入したエッチング液またはエッチングガスが半導体基板70に接触することで形成される。例えば、キャビティ形成工程S50では、ウェットエッチングによってキャビティ12が形成される。ただし、キャビティ12をドライエッチングによって形成してもよい。キャビティ12は、貫通孔3の下端開口を中心にして広がるように形成される。次いで、犠牲層除去工程S60を行う。
【0049】
図12は、第1実施形態の犠牲層除去工程における赤外線センサの断面図である。
図12に示すように、犠牲層除去工程S60では、センサ層20および赤外線吸収部40に挟まれた犠牲層60が選択的に除去される。犠牲層除去工程S60では、ウェットエッチング等により犠牲層60を除去する。犠牲層60を除去することで、赤外線吸収部40がセンサ層20から離間した傘状に形成される。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態では、支柱30の高さが制御部50に含まれる第2配線層55の膜厚に対応している。この構成によれば、温度検出部22と傘状の赤外線吸収部40との間隔が第2配線層55の膜厚と一致するので、赤外線吸収部40を傘状に形成するための犠牲層60を制御部50の第2配線層55と同一膜にすることができる。すなわち、犠牲層60を金属材料により成膜する犠牲層成膜工程S20と、犠牲層60を成形して第2配線層55を形成する配線形成工程S30と、犠牲層60上に赤外線吸収部40を形成する赤外線吸収部形成工程S40と、を備えた赤外線センサ1の製造方法を採用できる。これにより、第2配線層55を形成する膜を用いて、傘状の赤外線吸収部40を形成するための犠牲層60を形成できる。したがって、傘状の赤外線吸収部を形成するための犠牲層を専用に設ける場合と比較して、製造工程を簡略化できる。また、赤外線センサ1は、専用の犠牲層を設けることなく傘状の赤外線吸収部40が形成されるので、製造工程の簡略化により低コストで製造される。
【0051】
配線形成工程S30で、犠牲層60に支柱30が形成されるスルーホール61を形成する。これにより、第2配線層55を形成するのと同時に支柱30用のスルーホール61を形成できるので、支柱30用のスルーホール61を形成する専用の工程を省略できる。したがって、製造工程が増えることを抑制できる。
【0052】
赤外線吸収部形成工程S40は、成膜された吸収部材料71の膜を成形して赤外線吸収部40を形成するパターニング工程S42を有する。パターニング工程S42では、キャビティ12と赤外線センサ1の外部とを連通させる貫通孔3を形成する。これにより、赤外線吸収部40を形成するのと同時に貫通孔3を形成できるので、貫通孔3を形成する専用の工程を省略できる。したがって、製造工程が増加することを抑制できる。
【0053】
パターニング工程S42で、支柱30および温度検出部22に貫通孔3を形成する。この方法によれば、エッチング液を貫通孔3に進入させて基板10にキャビティ12を形成する場合に、平面視で支柱30を中心に広がるようにキャビティ12が形成される。このため、支柱30に接続した温度検出部22の全体をカバーする比較的小さなキャビティ12を形成するのに好適である。
【0054】
支柱30および赤外線吸収部40は、第2配線層55よりも上層に設けられた第3絶縁膜56と同一膜である。この構成によれば、支柱30および赤外線吸収部40を制御部50と同時に形成できるので、支柱30または赤外線吸収部40が専用の膜により形成される構成と比較して、製造工程を簡略化できる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、図13から図20を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、キャビティ12と赤外線センサ1の外部とを連通される貫通孔3が支柱30に形成されている。これに対して第2実施形態では、貫通孔3Aが支柱30を避けて形成されている点で、第1実施形態とは異なる。なお、以下で説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0056】
(赤外線センサ1の構成)
図13は、第2実施形態の赤外線センサの平面図である。図14は、図13のXIII-XIII線における断面図である。
図13および図14に示すように、赤外線吸収部40は、平面視で矩形状に形成されており、4つの角部が切り欠かれた形状を有する。貫通孔3Aは、平面視で支柱30の周囲に複数形成されている。貫通孔3Aは、平面視で赤外線吸収部40の外側に形成されている。貫通孔3Aは、平面視で赤外線吸収部40の4つの角部の切欠に対応する位置に形成されている。貫通孔3Aは、センサ層20を上下方向に貫通している。本実施形態では、貫通孔3Aは、センサ層20の周辺部23のみを貫通している。
【0057】
(赤外線センサの製造方法)
本実施形態の赤外線センサ1の製造方法は、検出部形成工程と、犠牲層成膜工程と、配線形成工程と、赤外線吸収部形成工程と、キャビティ形成工程と、犠牲層除去工程と、を備える。なお、検出部形成工程および犠牲層成膜工程は第1実施形態と同様のため説明を省略する。
【0058】
図15は、第2実施形態の配線形成工程における赤外線センサの断面図である。
図15に示すように、配線形成工程では、犠牲層60にスルーホール61に加えて、他のスルーホール62が形成される。他のスルーホール62は、犠牲層60を上下方向に貫通している。他のスルーホール62は、平面視でスルーホール61の周囲に形成されている。他のスルーホール62は、平面視でセンサ層20の周辺部23に重なっている。次いで、赤外線吸収部形成工程を行う。
【0059】
図16から図18は、第2実施形態の赤外線吸収部形成工程における赤外線センサの断面図である。
赤外線吸収部形成工程は、工程順に、成膜工程と、パターニング工程と、を有する。図16に示すように、成膜工程では、吸収部材料71が犠牲層60上に成膜される。吸収部材料71は、スルーホール61および他のスルーホール62に堆積するように犠牲層60上に成膜される。これにより、スルーホール61に支柱30が形成される。
【0060】
図17および図18に示すように、パターニング工程では、成膜された吸収部材料71を成形することで、赤外線吸収部40が形成される。図17に示すように、パターニング工程では、吸収部材料71の膜上にレジストパターン74を作成する。続いて図18に示すように、犠牲層60をエッチングストッパ層として用いて、吸収部材料71の膜をエッチングする。この際、犠牲層60の他のスルーホール62に堆積された吸収部材料71、およびセンサ層20の周辺部23がエッチングされて、周辺部23に貫通孔3Aが形成される。その後、レジスト材は剥離除去される。次いで、キャビティ形成工程を行う。
【0061】
図19は、第2実施形態のキャビティ形成工程における赤外線センサの断面図である。
図19に示すように、キャビティ形成工程では、半導体基板70にキャビティ12が形成される。キャビティ12は、エッチングによって形成される。キャビティ12は、貫通孔3Aに進入したエッチング液が半導体基板70に接触することで形成される。次いで、犠牲層除去工程を行う。
【0062】
図20は、第2実施形態の犠牲層除去工程における赤外線センサの断面図である。
図20に示すように、犠牲層除去工程では、センサ層20および赤外線吸収部40に挟まれた犠牲層60が選択的に除去される。
【0063】
本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏する。これに加え、本実施形態では、パターニング工程で、支柱30の周囲に複数の貫通孔3Aを形成する。この方法によれば、エッチング液を貫通孔3Aに進入させて基板10にキャビティ12を形成する場合に、キャビティ12が平面視で貫通孔3Aから支柱30側に広がるとともに、支柱30とは反対側にも広がるように形成される。このため、平面視で温度検出部22の外側に広がる比較的大きなキャビティ12を形成するのに好適である。
【0064】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、温度検出部がサーモパイル型のセンサ素子を形成しているが、この構成に限定されない。温度検出部は、焦電型やボロメータ型等のセンサ素子を形成井廷々もよい。
【0065】
また、上記実施形態では、犠牲層60が制御部50のトランジスタ51の電極に電気的に接続された第2配線層55と同一膜であるが、この構成に限定されない。犠牲層は、制御部が有する複数の金属配線のいずれかと同一膜であればよい。支柱30および赤外線吸収部40の膜種についても同様である。すなわち、支柱および赤外線吸収部は、制御部における犠牲層と同一膜の配線よりも上層に設けられた膜と同一膜であればよい。
【0066】
上記実施形態では、支柱30および赤外線吸収部40が一体に形成されているが、この構成に限定されない。すなわち、支柱および赤外線吸収部は、互いに異なる工程で成膜されていてもよい。この場合には、支柱および赤外線吸収部のうち少なくともいずれか一方は、第2配線層55よりも上層に設けられた絶縁膜と同一膜であることが望ましい。これにより、支柱および赤外線吸収部のうち前記一方を制御部と同時に形成できるので、支柱および赤外線吸収部が専用の膜により形成される構成と比較して、製造工程を簡略化できる。
【0067】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。すなわち、赤外線センサに貫通孔3および貫通孔3Aの両方が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…赤外線センサ 3,3A…貫通孔 10…基板 12…キャビティ 22…温度検出部 30…支柱 40…赤外線吸収部 50…制御部 55…第2配線層(配線) 60…犠牲層 61…スルーホール S10…検出部形成工程 S20…犠牲層成膜工程 S30…配線形成工程 S40…赤外線吸収部形成工程 S41…成膜工程 S42…パターニング工程
図1
図2
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