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特開2024-21179評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021179
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/14 20060101AFI20240208BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240208BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E21D9/14
G06Q50/08
E21D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123835
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】児島 理士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 由訓
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和博
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC07
5L049CC35
(57)【要約】
【課題】トンネルの建設予定地の地盤の評価を支援するための評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムを提供する。
【解決手段】評価支援装置10は、表計算ファイルに記入された情報を記録する入力シート記憶部12と、モデリング装置20に接続される制御部11と、を備える。そして、制御部11が、地盤調査報告書に含まれる地層情報の入力欄を設けた表計算ファイルを取得し、入力シート記憶部12に記録し、表計算ファイルに含まれる地層情報を、モデリング装置20に入力可能な情報に変換して入力し、モデリング装置20から、地層情報に基づいて生成された3次元の地層推定モデルを取得し、トンネルの配置情報を取得し、配置情報に応じて、地層推定モデルを切り出した3次元モデルを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表計算ファイルに記入された情報を記録する入力シート記憶部と、
3次元モデルを生成するモデリング装置に接続される制御部と、を備えた評価支援装置であって、
前記制御部が、
地盤調査報告書に含まれる地層情報の入力欄を設けた表計算ファイルを取得し、前記入力シート記憶部に記録し、
前記表計算ファイルに含まれる地層情報を、前記モデリング装置に入力可能な情報に変換して入力し、
前記モデリング装置から、前記地層情報に基づいて生成された3次元の地層推定モデルを取得し、
トンネルの配置情報を取得し、前記配置情報に応じて、前記地層推定モデルを切り出した3次元モデルを出力することを特徴とする評価支援装置。
【請求項2】
表計算ファイルに記入された情報を記録する入力シート記憶部と、
3次元モデルを生成するモデリング装置に接続される制御部と、を備えた評価支援装置を用いて、評価支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
地盤調査報告書に含まれる地層情報の入力欄を設けた表計算ファイルを取得し、前記入力シート記憶部に記録し、
前記表計算ファイルに含まれる地層情報を、前記モデリング装置に入力可能な情報に変換して入力し、
前記モデリング装置から、前記地層情報に基づいて生成された3次元の地層推定モデルを取得し、
トンネルの配置情報を取得し、前記配置情報に応じて、前記地層推定モデルを切り出した3次元モデルを出力することを特徴とする評価支援方法。
【請求項3】
表計算ファイルに記入された情報を記録する入力シート記憶部と、
3次元モデルを生成するモデリング装置に接続される制御部と、を備えた評価支援装置を用いて、評価支援を行なうプログラムであって、
前記制御部を、
地盤調査報告書に含まれる地層情報の入力欄を設けた表計算ファイルを取得し、前記入力シート記憶部に記録し、
前記表計算ファイルに含まれる地層情報を、前記モデリング装置に入力可能な情報に変換して入力し、
前記モデリング装置から、前記地層情報に基づいて生成された3次元の地層推定モデルを取得し、
トンネルの配置情報を取得し、前記配置情報に応じて、前記地層推定モデルを切り出した3次元モデルを出力する手段として機能させることを特徴とする評価支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トンネルの建設予定地の地盤の評価を支援する評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物の建設予定地の地盤を評価することがある。例えば、地盤の軟弱さを判別するために3次元地形情報を提示する技術が検討されている(特許文献1を参照)。この文献に記載された技術では、3次元地形情報と自己位置情報と水分情報とに基づいて、3次元地形画像上に水分情報が重畳された合成画像を生成する。また、地質構造を3次元で表示させるための技術も検討されている(非特許文献1を参照)。この文献に記載された技術では、ボーリング柱状図の地質区分を用いて、地質情報を3次元モデルで立体的に表示させる。
【0003】
また、トンネル施工に関するデータを管理するためのトンネル管理システムも検討されている(特許文献2を参照)。この文献に記載された管理システムは、計測情報記憶部に記録された前方探査結果を、設計情報記憶部に記録されたトンネルモデル及び地山情報記憶部に記録された地山モデルに統合した統合モデルをユーザ端末に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-156108号公報
【特許文献2】特開2018-84076号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】豊田守,“地盤情報データベースを活用した3次元地質モデル作成“,[online],2019年,情報地質、第30巻、第1号,pp.015-202[令和4年6月18日検索],インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/geoinformatics/30/1/30_15/_pdf/-char/en>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献1、特許文献2に記載された3次元表示アプリケーションを用いて、3次元モデルで地質情報を表示させることにより、視覚的に状況を把握しやすい。しかしながら、3次元モデルを生成するためには、空間を含めた各種設定を行なう必要があるため、経験がない者にとっては手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための評価支援装置は、表計算ファイルに記入された情報を記録する入力シート記憶部と、3次元モデルを生成するモデリング装置に接続される制御部と、を備える。そして、前記制御部が、地盤調査報告書に含まれる地層情報の入力欄を設けた表計算ファイルを取得し、前記入力シート記憶部に記録し、前記表計算ファイルに含まれる地層情報を、前記モデリング装置に入力可能な情報に変換して入力し、前記モデリング装置から、前記地層情報に基づいて生成された3次元の地層推定モデルを取得し、トンネルの配置情報を取得し、前記配置情報に応じて、前記地層推定モデルを切り出した3次元モデルを出力する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、地質情報について、効率的な3次元モデリングにより、地盤の評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のシステムの説明図である。
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
図3】実施形態の表計算ファイルの説明図である。
図4】実施形態の表計算ファイルのシートの説明図であって、(a)は調査位置シート、(b)は地層分類名称シート、(c)は地表面測量シート、(d)は柱状図シート、(e)は断面図シート、(f)はトンネルシートの説明図である。
図5】実施形態の支援処理の処理手順の説明図である。
図6】実施形態のモデル作成範囲の説明図である。
図7】実施形態の表示画面の説明図である。
図8】実施形態の表示画面の説明図である。
図9】実施形態の表示画面の説明図である。
図10】実施形態の地層境界面の確認処理の説明図である。
図11】実施形態の地層境界面の確認処理の説明図である。
図12】実施形態のトンネルモデルの説明図である。
図13】実施形態のトンネルモデル及び地層モデルの関係を示す説明図である。
図14】実施形態の表示画面の説明図であって、(a)はトンネルの上方からの斜視図、(b)は下方からの斜視図、(c)は前方からの斜視図である。
図15】実施形態の表示画面の説明図であって、(a)はトンネルの切断図、(b)は切断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図15を用いて、評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムを具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、シールド工法によるシールドトンネルを構築する地盤を評価する場合に用いる評価支援装置、評価支援方法及び評価支援プログラムとして説明する。
このシールド工法では、セグメントにより構成された筒を用いて、切羽後方のトンネル壁面を一時的に支える。そして、切羽を掘削しながら逐次シールドを前進させるとともに、シールドの後方に壁面を構築する。
図1に示すように、本実施形態の評価支援システムA1は、ネットワークを介して相互に接続された評価支援装置10、モデリング装置20を備える。
【0011】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、評価支援装置10、モデリング装置20を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0012】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインターフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インターフェース等である。
【0013】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶装置H14は、評価支援装置10、モデリング装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0014】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、評価支援装置10、モデリング装置20における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0015】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0016】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0017】
(評価支援システムA1の各機能)
次に、図1を用いて、評価支援システムA1の各機能を説明する。
評価支援装置10は、地盤情報の管理を支援する処理を実行するコンピュータシステムである。この評価支援装置10を用いて、各種情報を入力する。そして、ビューアによって3次元モデルを表示させる。この評価支援装置10は、制御部11、入力シート記憶部12を備える。
【0018】
制御部11は、後述する処理(取得段階、変換段階、表示段階等を含む処理)を行なう。このための処理プログラムを実行することにより、制御部11は、支援処理部111、インターフェース部112、ビューア部113等として機能する。
【0019】
支援処理部111は、モデリング装置20への情報の入力を支援する。本実施形態では、表計算ファイルの各シートを用いて、モデリング装置20に入力する情報を取得する。支援処理部111は、地層境界面を評価するために、地層の深度の実測値と予測値との差異の閾値や、地層の勾配の閾値に関するデータを保持する。なお、これらの閾値は、ユーザによって任意に設定できる。
【0020】
インターフェース部112は、表計算ファイルの各シートに記入された情報を、モデリング装置20に入力可能なフォーマット(データ形式)に変換する。
ビューア部113は、モデリング装置20によって生成された3次元モデルを閲覧するための画面を出力する。
【0021】
図3に示すように、入力シート記憶部12には、表計算アプリケーションプログラムを用いて生成された表計算ファイル120が記録される。この表計算ファイル120は、担当者によって入力された表計算ファイルを取得した場合に記録される。この表計算ファイルは、各種情報の入力欄を含む複数のシートによって構成される。表計算ファイル120は、調査位置シート121、地層分類名称シート122、地表面測量シート123、柱状図シート124、断面図シート125、トンネルシート126を含んで構成される。柱状図シート124~断面図シート125は、複数のシートを含めることが可能である。そして、各シートは、施工計画書R1の図面、地盤調査報告書R2の想定断面図、ボーリング柱状図R3を用いて入力される。
【0022】
図4(a)に示すように、調査位置シート121には、モデル名称、モデル下限標高、モデル作成範囲、グリッド分割数、平面図画像ファイル名等に関するデータが記録される。
【0023】
モデル名称は、生成する地盤モデルの名称である。
モデル下限標高は、3次元モデルが配置される標高の下限値である。
モデル作成範囲は、3次元空間に配置される地盤モデルの範囲を指定する座標である。本実施形態では、モデル作成範囲を、左下X座標(m)、左下Y座標(m)、右上X座標(m)、右上Y座標(m)により設定する。
【0024】
グリッド分割数は、X方向、Y方向の分割数である。これにより、モデル作成範囲を構成する一つのグリッドの各辺の長さやアスペクト比が決まる。
平面図画像ファイル名は、この敷地に配置されるトンネルの構造設計平面図のファイルの名称である。この平面図画像ファイル名を用いることにより、構造設計平面図を取得することができる。
【0025】
図4(b)に示すように、地層分類名称シート122には、地層分類毎に、地層ID、地層区分、色、属性等に関するデータが記録される。
地層IDは、各地層を特定するための識別子である。
【0026】
地層区分は、この地層の土質を示す記号である。例えば、「B」は盛り土層、「OSG」は砂・礫質土層、「OC」は粘性土層等を示す記号に対して、階層を表わす数字が付加される。
色は、この地層を表示する場合の配色である。
属性は、この地層の種類等の属性(例えば、地形面、堆積等)である。
【0027】
図4(c)に示すように、地表面測量シート123には、座標毎に標高等に関するデータが記録される。
座標は、地表面を測量した位置の座標である。
標高は、この位置の標高である。
【0028】
図4(d)に示すように、柱状図シート124には、ボーリング調査に用いたボーリング毎に、地層情報が記録される。この地層情報には、ボーリングID、孔口標高、ボーリング位置座標、下限深度、土質区分、地層ID、地層区分、標準貫入試験結果等に関するデータが含まれる。下限深度、土質区分、地層ID、地層区分、標準貫入試験結果は、このボーリングにおける地層毎に記録される。
【0029】
ボーリングIDは、地質調査のための各ボーリングを特定するための識別子である。
孔口標高は、ボーリングの開孔位置の標高である。
ボーリング位置座標は、ボーリングが行なわれた平面図上の平面座標(X、Y)である。
【0030】
下限深度は、地層の下端の深さである。上層の地層の下限深度から、この下限深度までが一つの地層を構成する。
土質区分は、土質の区分である。例えば、盛土、礫混りシルト質細砂、礫・シルト混り細中砂、シルト質粘土、礫混り砂、シルト質粘土、シルト質細砂、シルト、粘土混り砂礫、シルト質粘土、粘土質砂礫、細砂、砂質シルト等が記録される。
【0031】
地層IDは、この土質が含まれる地層を特定する識別子である。
地層区分は、この地層に対応する地層区分である。この地層区分は、地層分類名称シート122に対応して設定される。
標準貫入試験結果は、この土質の標準貫入試験の結果が記録される。ここでは、開始深度、貫入量、打撃回数、N値が記録される。
【0032】
図4(e)に示すように、断面図シート125には、所望の断面を確認するための断面線ID、断面線座標等に関するデータが記録される。
【0033】
断面線IDは、各断面を特定するための識別子である。
断面線座標は、断面を構成する複数のノードを配置する平面図上の平面座標(X、Y)である。一つの断面線IDで関連付けられた各ノードの断面線座標を順番に繋げた線分を上辺として、深さ方向の鉛直面の断面が形成される。
【0034】
図4(f)に示すように、トンネルシート126には、トンネルID、直径、中心位置等に関するデータ(トンネルの配置情報)が記録される。
トンネルIDは、各トンネルを特定するための識別子である。
【0035】
直径は、このトンネルの直径である。
中心位置情報は、トンネルを円筒の連続体で表現した場合の切羽(シールド機先端の掘削面)の中心位置に関する情報であって、中心ID、座標、深さに関する情報を含む。
【0036】
中心IDは、各トンネルの各中心を特定するための識別子である。
座標は、このトンネルの中心の平面図上の平面座標(X、Y)である。
深さは、この中心の深さである。
【0037】
本実施形態では、図12に示すように、トンネルモデルT1は、隣接する中心位置CT1を繋げた直線を中心軸として、トンネルの直径Rd1の切羽(掘削面)を有する円筒CL1を並べて構成する。
【0038】
図1のモデリング装置20は、地盤情報の3次元モデルを生成する処理を実行するコンピュータシステムである。このモデリング装置20は、モデリング部21、モデル情報記憶部22を備える。
【0039】
モデリング部21は、3次元CAD(computer-aided design)技術を用いて、地盤に関わる各要素を3次元モデル(オブジェクト)により表現して3次元仮想空間内に配置するモデリング処理(3次元CAD処理)を行なう。このモデリングでは、要素の形状だけではなく、要素の属性(プロパティ)を管理することができる。例えば、各要素の属性情報(例えば、地質区分情報)を保持する。
【0040】
モデル情報記憶部22には、モデリング部21を用いて作成した3次元モデル情報が記録される。この3次元モデル情報は、モデリング部21を用いて、3次元モデルの生成を行なった場合に記録される。3次元モデル情報は、モデル名称に対して、3次元モデル情報(オブジェクトID、要素モデル、配置情報、属性情報)を含む。
【0041】
モデル名称は、生成する地盤モデルの名称である。
オブジェクトIDは、地層を構成する3次元形状(3次元モデル)を特定するための識別子に関する情報である。
【0042】
要素モデルは、地層等を構成する3次元形状のオブジェクト(3次元モデル)に関する情報である。本実施形態では、要素として、地層推定モデル、ボーリングモデル、トンネルモデルが用いられる。
【0043】
配置情報は、3次元モデルの配置(3次元仮想空間内の座標)に関する情報を含む。
属性情報は、各要素モデルの内容を含む。地層推定モデルの属性情報には、地層分類名称シート122、柱状図シート124等の各情報が記録される。ボーリングオブジェクトの属性情報には、柱状図シート124のボーリングID等が記録される。トンネルオブジェクトの属性情報には、トンネルシート126のトンネルID等が記録される。
【0044】
(支援処理)
図5図15を用いて、支援処理を説明する。
図5に示すように、評価支援装置10の制御部11は、モデル化する範囲の入力処理を実行する(ステップS01)。具体的には、まず、表計算アプリケーションプログラムを起動する。そして、制御部11の支援処理部111は、テンプレートの表計算ファイル120を表示装置H13に出力する。この表計算ファイル120には、調査位置シート121~トンネルシート126が設けられており、各項目は空欄となっている。この場合、調査位置シート121において、モデル名称、モデル下限標高、モデル作成範囲、グリッド分割数、平面図画像ファイル名を入力する。この場合、制御部11の支援処理部111は、表計算ファイル120を入力シート記憶部12に記録する。
【0045】
例えば、図6に示すように、平面図500を参照して、モデル作成範囲510が設定される。この平面図500は、調査位置シート121の平面図画像ファイル名で指定された構造設計平面図に応じた図である。モデリング装置20において、このモデル作成範囲510が、指定されたグリッド分割数で分割される。
【0046】
次に、評価支援装置10の制御部11は、地層種類情報の入力処理を実行する(ステップS02)。具体的には、地層分類名称シート122において、今回の地盤での地層分類毎に、地層ID、地層区分、色、属性等を入力する。この場合、制御部11の支援処理部111は、入力シート記憶部12に記録された表計算ファイル120の地層分類名称シート122を更新する。
【0047】
次に、評価支援装置10の制御部11は、ボーリング情報の入力処理を実行する(ステップS03)。具体的には、柱状図シート124において、ボーリング毎に、ボーリングID、孔口標高、位置座標、下限深度、土質区分、地層ID、標準貫入試験結果等に関する情報を入力する。この場合、制御部11の支援処理部111は、地層分類名称シート122から、入力された地層IDに対応する地層区分を、柱状図シート124に設定する。そして、支援処理部111は、入力シート記憶部12に記録された表計算ファイル120の柱状図シート124を更新する。
【0048】
次に、評価支援装置10の制御部11は、断面線座標の入力処理を実行する(ステップS04)。具体的には、断面図シート125において、所望の断面を確認するための断面線ID、断面座標等に関する情報を入力する。この場合、制御部11の支援処理部111は、入力シート記憶部12に記録された表計算ファイル120の断面図シート125を更新する。
【0049】
例えば、図6に示すように、一つの断面線IDに対して、平面図500における複数のノードについて断面座標c1,c2,c3を順番に設定する。また、他の断面線IDに対して、複数のノードについて断面座標c4,c5,c6を順番に設定する。
【0050】
次に、評価支援装置10の制御部11は、トンネル情報の入力処理を実行する(ステップS05)。具体的には、トンネルシート126において、トンネルID、直径、中心位置(中心ID、座標、深さ)等に関する情報を入力する。この場合、制御部11の支援処理部111は、入力シート記憶部12に記録された表計算ファイル120のトンネルシート126を更新する。
【0051】
次に、評価支援装置10の制御部11は、変換処理を実行する(ステップS06)。具体的には、制御部11のインターフェース部112は、入力シート記憶部12に記録された表計算ファイル120の各シートの情報を、モデリング装置20に対応したフォーマットに変換する。そして、インターフェース部112は、変換した各種情報をモデリング装置20に入力する。
【0052】
次に、モデリング装置20は、地層モデルの生成処理を実行する(ステップS07)。この場合、モデリング部21は、インターフェース部112から取得した情報に基づいて、各地層の3次元モデルを生成する。具体的には、まず、モデリング部21は、ボーリング位置座標毎に、円柱状の3次元モデルを生成する。次に、モデリング部21は、ボーリング位置座標に対して、各地層の下限深度を用いて地層を配置する。次に、モデリング部21は、隣接する周囲の円柱状の3次元モデルにおいて、共通する地層を繋げるように地層境界面を推定する。この場合、近似法により、地層面の平滑化を行なう。そして、モデリング部21は、推定した地層境界面を設定した3次元モデル(地層推定モデル)をモデル情報記憶部22に記録する。更に、モデリング部21は、トンネルシート126に記録された情報に基づいて、トンネルモデルを生成し、モデル情報記憶部22に記録する。
【0053】
次に、評価支援装置10の制御部11は、3次元モデルの出力処理を実行する(ステップS08)。具体的には、制御部11のビューア部113は、モデル情報記憶部22に記録された地層推定モデルを取得する。そして、ビューア部113は、表示画面600を表示装置H13に出力する。
【0054】
この場合、図7に示すように、表示画面600には、3次元仮想空間に、各地層の地層推定モデル601が出力される。また、地表面には、断面線602,603が表示される。断面線602は断面座標c1,c2,c3によって指定される。断面線603は断面座標c4,c5,c6によって指定される。
断面表示が指示された場合、ビューア部113は、モデル情報記憶部22に記録された地層推定モデルを用いた断面図の作成を指示する。
【0055】
そして、図8に示すように、ビューア部113は、断面図を含めた表示画面610を、モデリング装置20から取得する。この表示画面610には、地層推定モデルにおいて、断面線602,603に対応した断面612,613が表示される。
【0056】
次に、評価支援装置10の制御部11は、断面図の表示処理を実行する(ステップS09)。具体的には、制御部11の支援処理部111は、断面図選択画面を出力する。この断面図選択画面では、複数のボーリングIDを指定する。この場合、支援処理部111は、各ボーリング位置座標を繋げた直線を上辺とした断面を生成する。そして、支援処理部111は、地層推定モデルを、生成した断面で切り出した断面図を出力する。
【0057】
図9に示すように、断面表示を指示した場合、表示画面620が出力される。この表示画面620には、ボーリング位置621~625に対応する地層の断面図が表示される。また、各ボーリング位置621~625には、標準貫入試験結果(N値)が表示される。
【0058】
次に、評価支援装置10の制御部11は、地層境界面の確認処理を実行する(ステップS10)。具体的には、制御部11の支援処理部111は、各ボーリング位置座標について、柱状図シート124に記録された地層毎に下限深度を取得する。
【0059】
この場合、図10に示すように、ボーリング位置座標毎、地層毎に下限深度を記録した実測テーブル651が生成される。
次に、支援処理部111は、モデル情報記憶部22に記録された地層推定モデルにおいて、ボーリング位置座標における地層の推定下限深度を算出する。この場合、図10に示すように、ボーリング位置座標毎、地層毎に推定下限深度を記録した推定テーブル652が生成される。
【0060】
そして、支援処理部111は、各ボーリング位置座標の地層毎に、実測テーブル651の下限深度と、推定テーブル652の推定下限深度との差分を算出する。そして、支援処理部111は、差分が標高差閾値を超えている場合には、注意喚起メッセージを出力する。この注意喚起メッセージには、ボーリング位置座標、地層を特定できる情報を含める。
また、支援処理部111は、モデル情報記憶部22に記録された3次元モデルの地層境界面の形状において、深さ方向の勾配を算出する。
【0061】
図11に示すように、ボーリング位置座標661~666において、共通する地層ST1の深度に応じて、地層境界面66Lが推定される。なお、この図11は、地層境界面66Lを線で表示しているが、図13(後述)に示すように、3次元空間では2次元面となる。
次に、図11に示すように、支援処理部111は、地層境界面66Lの各位置の勾配SL1を算出する。そして、支援処理部111は、算出した勾配が、勾配閾値(例えば、60度)を超えている場合には、この地層の勾配についての注意喚起メッセージを出力する。注意喚起メッセージには、勾配閾値を超えた地層及び領域を特定できる情報を含める。
【0062】
次に、評価支援装置10の制御部11は、トンネル評価処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部11のビューア部113は、トンネルモデルが通過する地盤を特定する。そして、ビューア部113は、地盤を切り出したトンネルモデルの表示画面を生成する。
【0063】
図13に示すように、地層推定モデル601に対して、地層の違いにより色分けされたトンネルモデルT1が配置される。ここで、地層推定モデル601には、地層の違いにより、地層境界面b1が生成される。そして、トンネルモデルT1が、地層境界面b1を横切るように配置される。
【0064】
図14(a)に示すように、トンネルモデル表示を指示した場合、表示画面670が出力される。この表示画面670には、3次元空間に、上方から見たトンネルモデルT1の斜視図が表示される。この場合、トンネルモデルT1は、地層の違いにより色分けされた地層推定モデル601を切り出して構成される。複数の地層推定モデル601を横切る場合には、トンネルモデルT1の側面に、地層境界面b1を表す模様が生じる。
【0065】
画面操作に応じて、表示画面670において、トンネルモデルT1を任意の方向から確認することができる。
例えば、図14(b)に示すように下方からの斜視図や、図14(c)に示すように前方からの斜視図を用いて、トンネルモデルT1が切断する地層推定モデル601を確認することができる。
【0066】
更に、図15(a)に示すように、切断位置を指定して、トンネルモデルの切断表示を指示した場合、表示画面680が出力される。この表示画面680には、トンネルモデルT1の断面SC1が表示される。図15(b)に示すように、この断面SC1にも、地層推定モデル601が色分けされて表示される。
【0067】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、表計算ファイル120は、調査位置シート121、地層分類名称シート122、地表面測量シート123、柱状図シート124、断面図シート125、トンネルシート126を含んで構成される。これにより、表計算ファイルに数値を設定することにより、3次元モデルを生成するモデリング装置20に引き継ぐデータを設定することができる。
【0068】
(2)本実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、変換処理を実行する(ステップS06)。これにより、表計算ファイルのデータを、モデリング装置20において利用可能なデータ形式に変換することができる。
【0069】
(3)本実施形態では、モデリング装置20は、地層モデルの生成処理を実行する(ステップS07)。これにより、離散的なボーリング柱状図の情報を用いて、面状の地層モデルを生成することができる。
【0070】
(4)本実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、3次元モデルの出力処理を実行する(ステップS08)。これにより、地盤状態を3次元形状で把握することができる。また、ビューアを用いることにより、モデリング装置20を直接操作することなく、効率的に3次元形状を確認できる。
【0071】
(5)本実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、断面図の表示処理を実行する(ステップS09)。これにより、所望の位置での地層断面を確認することができる。
(6)本実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、地層境界面の確認処理を実行する(ステップS10)。これにより、地層推定モデルの妥当性を確認することができる。ここでは、支援処理部111は、差分が標高差閾値を超えている場合には、注意喚起メッセージを出力する。これにより、推定した地層の深さと実測値とのずれを確認できる。また、支援処理部111は、算出した勾配が、勾配閾値(例えば、60度)を超えている場合には、この地層の勾配についての注意喚起メッセージを出力する。これにより、特異な形状の地層を確認できる。
【0072】
(7)本実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、トンネル評価処理を実行する(ステップS11)。これにより、トンネルの側面や切羽の地層を確認して、トンネルを構築することができる。
【0073】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、評価支援装置10、モデリング装置20を用いたが、ハードウェア構成は、これに限定されるものではない。例えば、評価支援装置10、モデリング装置20を一体で構成するようにしてもよい。
【0074】
・上記実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、地層種類情報の入力処理を実行する(ステップS02)。これに代えて、地層分類名称シート122に、汎用的な地層分類毎に、地層ID、地層区分、色、属性等を予め設定しておいてもよい。
【0075】
・上記実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、ボーリング情報の入力処理を実行する(ステップS03)。ここでは、地盤調査報告書R2のボーリング柱状図R3に関する情報が設定された柱状図シート124を用いる。ここで、評価支援装置10の制御部11が、地盤調査報告書R2、ボーリング柱状図R3を取得した場合、画像認識によりボーリング柱状図R3を特定し、文字認識した情報を柱状図シート124に設定するようにしてもよい。
【0076】
・上記実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、地層境界面の確認処理を実行する(ステップS10)。ここでは、支援処理部111は、差分が標高差閾値を超えている場合には、注意喚起メッセージを出力する。この場合、地層推定モデルにおいて、差分が標高差閾値を超えている領域をハイライト表示するようにしてもよい。
【0077】
また、支援処理部111は、算出した勾配が、勾配閾値(例えば、60度)を超えている場合には、この地層の勾配についての注意喚起メッセージを出力する。この場合、地層推定モデルにおいて、算出した勾配が勾配閾値を超えている領域をハイライト表示するようにしてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、評価支援装置10の制御部11は、トンネル情報の入力処理を実行する(ステップS05)。ここでは、断面が円形のシールドトンネルを想定したが、シールドトンネルに限定されるものではない。例えば、断面が矩形状の開削トンネルに適用してもよい。この場合には、トンネル情報として、断面形状の座標を記録する。そして、断面を多角柱で繋げたトンネルモデルを生成する。
【0079】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記制御部が、
前記トンネルの建設予定地の平面図において、断面線を取得し、
前記断面線を含む鉛直面で、前記地層推定モデルを切断した断面図を取得することを特徴とする請求項1に記載の評価支援装置。
【0080】
(b)前記制御部が、
複数のボーリング位置の座標を取得し、
前記ボーリング位置の座標を結んだ直線を含む鉛直面で、前記地層推定モデルを切断した断面図を取得することを特徴とする請求項1又は前記(a)に記載の評価支援装置。
【0081】
(c)前記制御部が、
前記ボーリング位置における標準貫入試験結果を取得し、
前記断面図における、前記ボーリング位置に前記標準貫入試験結果を付加することを特徴とする前記(b)に記載の評価支援装置。
【0082】
(d)前記制御部が、
ボーリング位置における地層の実測深度を取得し、
前記地層推定モデルにおける前記地層の推定深度を算出し、
前記実測深度と前記推定深度との比較結果に応じて、深度のずれについての注意喚起情報を出力することを特徴とする前記(a)~(c)の何れか1つに記載の評価支援装置。
【0083】
(e)前記制御部が、前記地層推定モデルの地層の勾配を算出し、前記勾配に応じて注意喚起情報を出力することを特徴とする請求項1、(a)~(d)に記載の評価支援装置。
【0084】
(f)前記制御部が、
前記トンネルの切断位置に関する情報を取得し、
前記切断位置におけるトンネルの断面において切断する地層推定モデルを表示することを特徴とする請求項1、前記(a)~(e)の何れか1つに記載の評価支援装置。
【符号の説明】
【0085】
A1…評価支援システム、10…評価支援装置、11…制御部、111…支援処理部、112…インターフェース部、113…ビューア部、12…入力シート記憶部、20…モデリング装置、21…モデリング部、22…モデル情報記憶部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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