(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002119
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ワーク挟持装置、及び工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 31/10 20060101AFI20231228BHJP
B23B 31/16 20060101ALI20231228BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B23B31/10 B
B23B31/16 F
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101123
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】合津 秀雄
【テーマコード(参考)】
3C011
3C032
【Fターム(参考)】
3C011DD00
3C032GG03
3C032GG28
3C032HH11
(57)【要約】
【課題】矩形のワークを精度良く挟持できるワーク挟持装置、及び工作機械を提供すること。
【解決手段】本開示のワーク挟持装置は、チャック本体と、チャック本体に取り付けられる複数の第1チャック爪と、チャック本体に取り付けられる第2チャック爪と、第1チャック爪及び第2チャック爪を移動させて矩形のワークを挟持させる駆動源と、を備え、複数の第1チャック爪の各々は、一対の第1当接部を有し、矩形のワークにおける異なる角の位置にそれぞれ配置され、角を形成する2辺に一対の第1当接部の各々を当接させて角を保持し、第2チャック爪は、第2当接部を有し、矩形のワークの一辺に第2当接部を当接させてワークの一辺を保持する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体と、
前記チャック本体に取り付けられる複数の第1チャック爪と、
前記チャック本体に取り付けられる第2チャック爪と、
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪を移動させて矩形のワークを挟持させる駆動源と、
を備え、
複数の前記第1チャック爪の各々は、
一対の第1当接部を有し、矩形の前記ワークにおける異なる角の位置にそれぞれ配置され、前記角を形成する2辺に一対の前記第1当接部の各々を当接させて前記角を保持し、
前記第2チャック爪は、
第2当接部を有し、矩形の前記ワークの一辺に前記第2当接部を当接させて前記ワークの一辺を保持する、ワーク挟持装置。
【請求項2】
複数の前記第1チャック爪は、
2つ設けられ、
前記第2チャック爪は、
前記ワークの一辺における異なる位置のそれぞれに当接する一対の前記第2当接部を有し、
前記ワークは、
四角形であり、
2つの前記第1チャック爪の各々に設けられた一対の前記第1当接部、及び前記第2チャック爪に設けられた一対の前記第2当接部のうち、任意の当接部は、
前記ワークを挟持した場合、前記ワークの辺と平行な方向において、他の当接部と互いに対向する位置に配置され、且つ、全ての当接部が他の当接部と対向する位置にそれぞれ配置される、請求項1に記載のワーク挟持装置。
【請求項3】
一対の前記第1当接部の各々は、
前記ワークに当接するクランプ面を有し、
一対の前記第1当接部のうち、前記ワークの辺と平行な方向において前記第2当接部と対向する位置に配置される前記第1当接部の前記クランプ面が、もう一方の前記第1当接部の前記クランプ面に比べて大きい、請求項2に記載のワーク挟持装置。
【請求項4】
前記ワークは、
厚さ方向に貫通する貫通孔を形成されるものであり、前記貫通孔が形成されない領域である非形成領域を前記角に有し、
一対の前記第1当接部の各々は、
前記ワークに当接するクランプ面を有し、
前記第1チャック爪は、
一対の前記第1当接部のうち、一方の前記第1当接部の前記クランプ面に垂直な直線と、他方の前記第1当接部の前記クランプ面に垂直な直線とが、前記ワークを挟持した場合、前記非形成領域で交差する、請求項1又は請求項2に記載のワーク挟持装置。
【請求項5】
前記第2チャック爪は、
前記ワークの一辺における異なる位置のそれぞれに当接する一対の前記第2当接部を有し、
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々は、
前記チャック本体に対してスライド方向にスライド移動可能に取り付けられ、
前記チャック本体における前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々を取り付
ける取付面と平行で、且つ前記スライド方向に直交する方向を幅方向とした場合に、
一対の前記第2当接部は、
前記幅方向における前記第2チャック爪の中央を間に挟んで対象な位置に配置され、
一対の前記第1当接部の両方は、
前記幅方向における前記第1チャック爪の中央を通り前記スライド方向と平行な直線を間に挟んで、前記第2当接部とは反対側に配置される、請求項1又は請求項2に記載のワーク挟持装置。
【請求項6】
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々は、
カバー部材を取り付け可能であり、
前記カバー部材は、
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々を挿入する挿入部を設けられ、前記挿入部に前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々を挿入した状態で前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々の基部に取り付けられる、請求項1又は請求項2記載のワーク挟持装置。
【請求項7】
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々は、
前記チャック本体に対してスライド方向にスライド移動可能に取り付けられ、
前記カバー部材は、
前記スライド方向において前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々に対して前記ワーク側となる内側に取り付けられ、且つ、前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々の外周面に沿って湾曲した形状に形成される、請求項6に記載のワーク挟持装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々の基部に取り付けられるブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられ、前記チャック本体に接触し、前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々と前記チャック本体の間の隙間を外側から塞ぐ位置に設けられる閉塞部材と、
を備える、請求項6に記載のワーク挟持装置。
【請求項9】
前記ブラケットは、
螺合部材を挿入する挿入孔を形成され、前記挿入孔に挿入された前記螺合部材を前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々の基部に螺合されて前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々に取り付けられ、
前記挿入孔は、
前記チャック本体における前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々を取り付ける取付面に垂直な方向に長い長穴である、請求項8に記載のワーク挟持装置。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載のワーク挟持装置と、
前記ワークに対する加工を実行する加工装置と、
制御装置と、
を備え、
前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々は、
前記チャック本体に取り付けられる親爪と、
前記親爪に取り付けられ、前記ワークを挟持する子爪と、
を有し、
前記親爪は、
他のチャック爪の前記親爪に面した内側部分に調整部材を挟持する調整用凹部を有し、
前記制御装置は、
前記ワーク挟持装置を制御し、前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪の各々が有する前記親爪の前記調整用凹部で前記調整部材を挟持させ、前記調整部材を複数の前記親爪で挟持した状態で、前記加工装置により、矩形の前記ワークの外形形状に合わせて前記子爪を加工する、工作機械。
【請求項11】
前記加工装置は、
工具主軸装置を有し、
前記ワーク挟持装置は、
一対設けられ、主軸を中心に前記ワークを回転させる主軸装置であり、
一対の前記ワーク挟持装置は、
前記主軸と平行な方向において互いに対向する位置に配置され、
前記工具主軸装置は、
前記主軸と平行な方向において、一対の前記ワーク挟持装置の間に配置され、一対の前記ワーク挟持装置の各々の前記子爪に対して矩形の前記ワークの外形形状に合わせた前記子爪の加工を実行する、請求項10に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チャック爪によって矩形のワークを挟持するワーク挟持装置、及び工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のチャック爪でワークを挟持するワーク挟持装置について種々提案されている。下記特許文献1には、四角形のワークを3つのチャック爪で挟持するワーク挟持装置について記載されている。特許文献1の3つのチャック爪のうち、2つのチャック爪の先端は、ワークの一辺に当接させる直線状になっている。また、残りの1つのチャック爪の先端は、ワークの二辺に当接させる角形になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5-63708号公報(段落0005、0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したワーク挟持装置では、矩形のワークに対し、複数の角のうち、1つの角のみをチャック爪で保持しており、ワークを挟持する際に位置ずれが発生する虞がある。このため、矩形のワークを挟持するワーク挟持装置として改善の余地があった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、矩形のワークを精度良く挟持できるワーク挟持装置、及び工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、チャック本体と、前記チャック本体に取り付けられる複数の第1チャック爪と、前記チャック本体に取り付けられる第2チャック爪と、前記第1チャック爪及び前記第2チャック爪を移動させて矩形のワークを挟持させる駆動源と、を備え、複数の前記第1チャック爪の各々は、一対の第1当接部を有し、矩形の前記ワークにおける異なる角の位置にそれぞれ配置され、前記角を形成する2辺に一対の前記第1当接部の各々を当接させて前記角を保持し、前記第2チャック爪は、第2当接部を有し、矩形の前記ワークの一辺に前記第2当接部を当接させて前記ワークの一辺を保持する、ワーク挟持装置を開示する。
尚、本開示の内容は、ワーク挟持装置としての実施に限らず、ワーク挟持装置を備える工作機械として実施しても極めて有効である。
【発明の効果】
【0007】
本開示のワーク挟持装置、工作機械によれば、矩形のワークの複数の角を、複数の第1チャック爪でそれぞれ保持しつつ、第2チャック爪で一辺を保持する。第1チャック爪は、角の2辺に一対の第1当接部の各々を当接させて保持する。これにより、複数の第1チャック爪で複数の角をそれぞれ保持することで、矩形のワークを挟持する際に発生する位置ずれを抑制でき、矩形のワークを精度良く挟持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】工作機械の装置カバーを取り外した本体部分を示す斜視図。
【
図4】チャック本体、第1及び第2チャック爪の平面図、その一部拡大図。
【
図5】チャック本体、第1及び第2チャック爪の斜視図。
【
図8】
図7に示すI-I線で切断し矢視方向から見た断面図。
【
図9】第1及び第2チャック爪でワークを挟持した状態を示す平面図。
【
図13】カバー部材を取り外した状態におけるチャック本体、第1及び第2チャック爪の平面図。
【
図14】調整用リングを挟持した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の工作機械を具体化した一実施例について、図を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本実施例の工作機械1の正面図を示している。
図2は、工作機械1のブロック図を示している。
図3は、工作機械1の装置カバー2(
図1参照)を取り外した本体部分の斜視図を示している。以下の説明では、
図1に示すように、工作機械1を正面から見た方向を基準として、機械幅方向であって装置の設置面に水平な方向における右方向をZ方向、装置の設置面に平行でZ方向に垂直な前方向をY方向、Z方向及びY方向に垂直な上方向をX方向と称して説明する。また、以下の説明では、概ね、工作機械1の左側に配置された装置に関する符号に「L」の文字を、右側に配置された装置に関する符号に「R」の文字を付加する。
【0010】
(工作機械1の構成)
図1及び
図2に示すように、工作機械1は、前面を装置カバー2によって覆われており、機械正面には可動式の操作盤3が設けられている。操作盤3は、装置カバー2の前面における右下に設けられたレール6に沿って、装置前面の中央から右端までZ方向へ移動可能となっている。装置カバー2は、工作機械1の左側に左側正面扉5Lが設けられ、右側に右側正面扉5Rが設けられている。左側及び右側正面扉5L,5Rは、例えば、スライド扉であり、扉を開けることで、扉の後方の加工スペースにアクセス可能となっている。
【0011】
図1~
図3に示すように、工作機械1は、操作盤3の他に、左側加工装置11L、右側加工装置11R、ストッカ装置9、ワーク搬送装置14、制御装置15、工具主軸装置21、自動工具交換装置25を備えている。左側正面扉5Lの後方には、左側加工装置11Lの加工スペースが設けられている。左側加工装置11Lは、例えば、タレット型の旋盤であり、左側主軸装置12Lと、左側タレット13Lを備えている。左側主軸装置12Lは、後述するチャック本体31(
図4参照)を取り付け可能となっている。チャック本体31は、ワークを挟持(チャック)する複数のチャック爪を取り付け可能となっている。左側主軸装置12Lは、複数のチャック爪によってワークを挟持し、Z方向と平行な主軸を中心にワークW(
図9参照)を回転させる。左側タレット13Lは、複数の工具(回転工具や切削工具)を取り付け可能な刃物台を有し、工具の割り出しを実行する。左側タレット13Lは、割り出した工具によって左側主軸装置12Lに挟持されたワークW(
図9参照)に対する加工(切削加工や穴開け加工など)を実行する。尚、右側加工装置11Rは、主軸(装置)の向きを除いて、左側加工装置11Lと同一の構成となっており、右側主軸装置12Rと、右側タレット13Rを備えている。また、
図3は、チャック本体31を取り外した状態を示している。
【0012】
右側主軸装置12Rの主軸は、Z方向と平行であり、左側主軸装置12Lの主軸と左右方向で対向している(向き合っている)。従って、左側及び右側加工装置11L,11R
は、左右対称に配置された所謂、対向2軸型の旋盤である。尚、左側及び右側加工装置11L,11Rは、左右対称な構成でなくとも良い。また、右側加工装置11Rは、左側加工装置11Lと同一構成でなくとも良い。例えば、左側加工装置11L及び右側加工装置11Rの少なくとも一方が、マシニングセンタなどの他の種類の加工装置でも良い。
【0013】
また、工作機械1は、NC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を備えた複合加工機である。工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11R、及び工具主軸装置21を備える複合加工機を一つのベッド22の上に備えている。左右方向における工作機械1の略中央には、工具主軸装置21が設けられている。工具主軸装置21は、旋盤である左側及び右側加工装置11L,11Rでは難しい加工を実行する。工具主軸装置21は、例えば、左側及び右側主軸装置12L,12Rのそれぞれに把持されたワークに対し旋盤加工の他にも穴あけ加工などをすることができ、左側及び右側タレット13L,13Rでは難しい深さや角度でのワーク加工を可能にするものである。
【0014】
左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々は、装置の外側に設けられたスピンドルモータ14L,14Rの駆動に基づいてワークW(
図9参照)を回転させる。また、スピンドルモータ14L,14Rを含む左側及び右側主軸装置12L,12Rは、スラントベッド構造のベッド22の上の傾斜面23に沿ってZ方向と平行な方向にスライド移動可能となっている。左側及び右側主軸装置12L,12Rは、例えば、下部に設けられたZ軸サーボモータ(図示略)によりボールネジ機構(図示略)を駆動させ、Z方向と平行な方向に移動する。左側及び右側タレット13L,13Rと工具主軸装置21は、何れも主軸と直交する機体前後方向と機体上下方向に移動可能となっている。例えば、工具主軸装置21の移動方向が水平なY方向と鉛直なX方向であるのに対し、左側及び右側タレット13L,13Rの移動方向は、Y方向及びX方向を45度傾けたYL方向とXL方向となっている。
【0015】
また、工具主軸装置21の前方側には、自動工具交換装置25が設けられている。工具主軸装置21は、自動工具交換装置25との間で工具(主軸ヘッド工具)を取り替え可能となっている。自動工具交換装置25は、複数の工具を収納したツールマガジンを装置上部に備え、工具主軸装置21と向かい合った位置に設けられたツールチェンジャによって、ツールマガジンから交換用の工具を、工具主軸装置21の工具交換位置まで搬送する。
【0016】
工作機械1は、左側及び右側加工装置11L,11Rの各々でワークWの加工を実行中に、工具主軸装置21の工具交換も実行できる。工作機械1は、例えば、Z方向における工具主軸装置21の左右両側にそれぞれ配置された分離シャッタ(図示略)を備えている。工作機械1は、駆動機構(図示略)によってY方向に2枚の分離シャッタを個別に移動可能となっている。
図3は、この分離シャッタを収納した状態を示している。工作機械1は、2枚の分離シャッタにより、左側加工装置11L、右側加工装置11Rの各々の加工スペースと、工具主軸装置21の工具交換スペースを分離する。これにより、各装置がクーラントや切屑の影響を受けないようにすることができる。また、一方の分離シャッタだけを閉じることにより、工具交換スペースを含めた空間を一方のタレットや工具主軸装置21の加工スペースに拡張することもできる。
【0017】
また、ワーク搬送装置14は、例えば、ガントリ式オートローダであり、左側及び右側加工装置11L,11R、ワークWの搬入・排出を行うストッカ装置9等の各装置との間でワークWの受け渡しを実行する。操作盤3は、装置カバー2の前面に設けられ、タッチパネル3Aや操作装置(押しボタンやスイッチなど)3Bを備えている。
【0018】
また、
図2に示すように、工作機械1の制御装置15は、CPU15Aと、記憶装置15Bを備え、コンピュータを主体とする処理装置である。記憶装置15Bは、例えば、R
AM、ROM、フラッシュメモリ等を備える。制御装置15は、各装置(左側加工装置11Lやワーク搬送装置14等)と電気的に接続され、各装置を制御可能となっている。記憶装置15Bには、各種の制御プログラム16が記憶されている。制御プログラム16には、例えば、ワークWに対する加工において左側及び右側加工装置11L,11Rの各々の動作を制御するNCプログラム、ワーク搬送装置14の動作を制御するプログラム、各種の信号を処理するラダー回路用のプログラム等が含まれている。また、制御プログラム16には、後述するチャック爪(子爪)の取り代97(
図13参照)の加工において、加工位置の設定を行うプログラムが含まれている。
【0019】
(チャック本体31、第1チャック爪32,33、第2チャック爪34について)
次に、左側及び右側主軸装置12L,12Rに取り付けられるチャック本体31について説明する。
図4は、チャック本体31に第1チャック爪32,33及び第2チャック爪34を取り付けた平面図を、
図5は、斜視図を示している。
図6は、チャック本体31の取付部37の斜視図を示している。尚、
図4及び
図5は、
図6に示す取付部37や挿入溝43等を図示せず、チャック本体31を簡略化して図示している。
【0020】
図4~
図6に示すように、チャック本体31は、主軸38に沿った方向(以下、主軸方向という場合がある)において所定の厚みを有する略円柱形状をなしている。チャック本体31には、3つの取付部37(
図6参照)が取り付けられている。3つの取付部37は、例えば、チャック本体31の周方向において等間隔に(120度間隔に)配置されている。3つの取付部37の各々には、第1チャック爪32,33、第2チャック爪34がそれぞれ取り付け可能となっている。
【0021】
図6に示すように、取付部37は、スライド部41と、受け部42を備えている。チャック本体31には、取付部37を取り付ける位置(120度ごとの位置)に、挿入溝43が設けられている。挿入溝43は、円柱形状のチャック本体31の半径方向に沿って形成され、ワークW側(
図6の上面31A側)に開口する溝である。挿入溝43は、スライド部41の外形形状に合わせて形成されている。スライド部41は、挿入溝43に挿入された状態では、半径方向へスライド移動可能となっている。従って、本実施例では、スライド部41のスライド方向45が、チャック本体31の半径方向に沿った方向となっている。以下の説明では、チャック本体31の上面31A(本開示の取付面の一例)と平行でスライド方向45(半径方向)に直交する方向を幅方向46と称して説明する。幅方向46は、例えば、スライド方向45及び主軸方向の両方に直交する方向である。
【0022】
スライド部41は、本体部41Aと、一対のフランジ部41Bを備えている。スライド方向45に直交する平面で本体部41Aを切断した形状は、上面31A側に開口41Cを有し、略90度に湾曲したU字形状をなしている。本体部41Aは、主軸方向において、開口41Cとは反対側に縁部41Dが形成されている。縁部41Dは、スライド方向45の外側から見た場合に、幅方向46に沿った略直線形状で形成されている。一対のフランジ部41Bの各々は、この縁部41Dに沿って、幅方向46における本体部41Aの両下端部から外側に突出して形成されている。挿入溝43は、この本体部41A及びフランジ部41Bの外形形状に合わせてチャック本体31を凹設して形成されている。
【0023】
U字形状をなす本体部41Aの両端の上面(上面31A側の面)には、セレーション部41Eがそれぞれ形成されている。一対のセレーション部41Eの各々には、セレーション加工が施され、幅方向46に沿った三角形状の突起が複数形成され、複数の突起がスライド方向45において等間隔に連続して形成されている。受け部42は、スライド方向45に長く、スライド方向45に垂直な平面で切断した断面が略半円形状をなす棒状をなしている。本体部41Aには、受け部42の外形形状に合わせて凹設された挿入溝41Fが開口41C内に形成されている。受け部42は、挿入溝41Fに挿入され、スライド部4
1によって保持されている。受け部42の上面42Aには、上面31Aと平行な(スライド方向45及び幅方向46と平行な)平面が形成されている。また、挿入溝41Fには、受け部42の上方となる位置に、幅方向46の両側へ凹設された一対のナット溝41Gが形成されている。一対のナット溝41Gには、後述するナット56(
図8参照)が挿入される。
【0024】
図2に示すように、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々は、チャック本体31の3つの取付部37をスライド方向45へスライド移動させる駆動源として、例えば、油圧シリンダ47をそれぞれ備えている。1つのチャック本体31に設けられた3つの取付部37は、例えば、油圧シリンダ47の駆動に応じてスライド方向45へ同期してスライド移動する。例えば、制御装置15は、油圧シリンダ47を加圧することで取付部37をスライド方向45の内側(半径方向の内側)へスライド移動させ、油圧シリンダ47を減圧することで取付部37をスライド方向45の外側(半径方向の外側)へスライド移動させる。これにより、制御装置15は、取付部37に取り付けられた第1及び第2チャック爪32~34をスライド移動させ、ワークWの挟持又は挟持の解除を実行する。
【0025】
また、
図2に示すように、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々には、油圧シリンダ47の油圧を調整する電磁比例減圧弁49がそれぞれ設けられている。制御装置15は、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々の電磁比例減圧弁49を制御することで、油圧シリンダ47の油圧を調整する。これにより、制御装置15は、取付部37に取り付けられた第1及び第2チャック爪32~34がワークWを挟持する力(クランプ力)を、ワークWの剛性・発生する歪みの大きさに応じて変更できる。尚、油圧シリンダ47は、本願の駆動源の一例である。第1及び第2チャック爪32~34を移動させる駆動源は、油圧シリンダに限らず、エアシリンダなどの他の流体圧シリンダでも良い。あるいは、駆動源は、流体圧シリンダに限らず、モータなどの他の駆動源でも良い。
【0026】
図4及び
図5に示すように、第1チャック爪32,33の各々は、親爪51、子爪52を備えている。また、第2チャック爪34は、親爪53、子爪54を備えている。まず、第2チャック爪34について説明する。
図7及び
図8に示すように、親爪53は、主軸方向において所定の厚みを有する金属性の部材である。親爪53の上面には、子爪54を載置可能な切り欠き部53Aが形成されている。子爪54は、例えば、幅方向46に長く、主軸方向に薄い金属製の板部材であり、3辺を直線形状に形成され、残りの一辺を外側に膨らんだ円弧形状に形成されている。親爪53の切り欠き部53Aは、子爪54の円弧形状に合わせて湾曲して切り欠かれ、スライド方向45の外側から子爪54の円弧形状の部分に当接している。これにより、子爪54がワークWの一辺を挟持した際に、子爪54のスライド方向45の外側への移動を規制する。
【0027】
親爪53の下面には、スライド部41のセレーション部41Eと同一形状のセレーション部53Bが形成されている。例えば、ユーザは、セレーション部41Eの山の数を基準に、スライド方向45においてスライド部41に対して親爪53を取り付ける位置、即ち、第2チャック爪34を取り付ける位置を決定する。ユーザは、所定の山の位置でセレーション部41E,53Bが噛み合うように親爪53をスライド部41の上に配置する。この所定の山の位置は、ワークWの大きさに応じた位置である。
【0028】
また、親爪53は、例えば、2つのボルト55を挿入され、取付部37に対して取り付けられている。例えば、ボルト55は、主軸方向に沿って親爪53に挿入され、スライド部41のナット溝41Gに挿入されたナット56に先端を螺合される。ボルト55は、例えば、先端を受け部42の上面42Aに接触させる位置まで螺合され、主軸方向における位置を固定される。親爪53は、セレーション部41E,53Bを歯合させ、2つのボルト55をナット56に螺合させることで、取付部37に固定される。尚、子爪54には、
ボルト55を挿入する位置に合わせて貫通孔54Aが形成されている。
【0029】
子爪54は、例えば、4本のボルト57によって親爪53の上に固定されている。尚、上記した親爪53を取付部37に取り付ける方法、及び子爪54を親爪53に取り付ける方法は一例である。例えば、親爪53を取付部37に対してネジ、リベット、クランプ部材など用いて固定しても良い。同様に、子爪54を親爪53に対してネジ等を用いて固定しても良い。また、後述する第1チャック爪32,33の親爪51及び子爪52の取り付け方法についても同様である。
【0030】
スライド方向45における子爪54の内側縁部は、例えば、幅方向46に沿って直線形状に形成されている。この内側縁部には、一対の第2当接部61,62が形成されている。第2当接部61,62は、幅方向46において、例えば、子爪54の両端のそれぞれに形成されている。本実施例の第2当接部61,62は、幅方向46において子爪54の中央78(
図4参照)を間に挟んで対象な位置に配置されている。第2当接部61,62の各々には、ワークWに当接する面が形成されている。以下の説明では、第1当接部71,72及び第2当接部61,62のワークWに当接する面を、クランプ面という場合がある。
【0031】
図9は、第1及び第2チャック爪32~34でワークWを挟持した状態を示している。尚、
図9は、後述するカバー部材83を取り外した状態を示している。
図9に示すように、本実施例の工作機械1は、ワークWとして、例えば、外形が略正方形のワークWに対する加工を実行する。ワークWには、厚さ方向(主軸方向)に貫通する円形の貫通孔Hが形成される。第2チャック爪34は、閉じられた状態では、ワークWの一つの辺63における両端(角)に近接した位置に、第2当接部61,62の各々を当接させて、辺63を保持(挟持)する。好適には、第2チャック爪34は、第2当接部61,62の各々のクランプ面を辺63と平行な状態で面接触させることが好ましい。
【0032】
次に、第1チャック爪32,33について説明する。尚、以下の説明において、第2チャック爪34と同様の構成の部分(例えば、取付部37に固定するナット56の機構等)の説明を適宜省略する。また、第1チャック爪32,33の親爪51は、同様の構成となっている。また、第1チャック爪32,33の子爪52は、幅方向46において反転した形状をなしている。このため、以下の説明では、第1チャック爪32について主に説明し、第1チャック爪33についての説明を適宜省略する。また、第1チャック爪32の親爪51、子爪52を、第1チャック爪33の親爪51、子爪52と区別して説明する場合、親爪51A、子爪52Aと称して(第2チャック爪34の場合は親爪51B、子爪52Bと称して)説明する。
【0033】
図4、
図5、及び
図10に示すように、親爪51Aは、主軸方向において所定の厚みを有する金属性の部材であり、複数の(例えば、2つの)ボルト65によって取付部37(
図6、
図8参照)に取り付けられている。詳細な説明については省略するが、親爪51Aの下面には、親爪53と同様に、セレーション部が形成されている。親爪51Aは、取付部37のセレーション部41Eにセレーション部を噛合わせた状態で取付部37に取り付けられる。また、ボルト65は、取付部37のナット溝41Gに挿入されたナット56(
図8参照)に螺合され、親爪51Aを取付部37に固定する。
【0034】
親爪51Aの上には、子爪52Aが載置されている。子爪52Aは、主軸方向に所定の厚みを有する金属性の板状の部材である。子爪52Aは、スライド方向45及び幅方向46に所定の幅を有する本体部67を備えている。本体部67は、複数の(例えば、2つの)ボルト66によって親爪51Aの上面に固定されている。また、子爪52Aには、突出部68が形成されている。突出部68は、幅方向46における本体部67の一旦(
図10
であれば周方向の左側、反時計回り側の端部)に形成されている。突出部68は、本体部67の端部からスライド方向45の内側に向かって突出している。
【0035】
上記したように、第1及び第2チャック爪32~34は、取付部37に固定される。従って、制御装置15は、油圧シリンダ47を駆動し3つの取付部37をスライド方向45へ移動させることで、取付部37とともに第1及び第2チャック爪32~34を一体的に移動させることができる。これにより、制御装置15は、第1及び第2チャック爪32~34を開閉し、ワークWのチャック及びチャックの解除を実行できる。
【0036】
また、子爪52Aには、一対の第1当接部71,72が形成されている。第1当接部71は、スライド方向45における本体部67の内周面であって、幅方向46において突出部68に近接した位置に形成されている。第1当接部72は、突出部68の内周面に形成されている。
図9に示すように、第1当接部71,72は、ワークWの角を形成する2つの辺63の各々に当接し、ワークWの角を保持する。好適には、第1チャック爪32,33は、第1当接部71,72の各々のクランプ面を、各辺63と平行な状態で面接触さることが好ましい。
【0037】
また、
図4の破線で示すように、2つの第1チャック爪32,33の各々に設けられた一対の第1当接部71,72、及び第2チャック爪34に設けられた一対の第2当接部61,62の合計6個の当接部は、ワークWを挟持した場合(挟持状態で)、ワークWの辺63と平行な方向において、他の当接部と互いに対向する位置にそれぞれ配置されている。具体的には、例えば、第1チャック爪32の第1当接部71は、第1チャック爪33の第1当接部71と辺63と平行な方向において互いに対向する位置に配置されている。ここでいう辺63とは、第1チャック爪32の第1当接部71と、第1チャック爪33の第1当接部71との間に挟まれる辺63である。例えば、第1チャック爪33の第1当接部71は、第1チャック爪32の第1当接部71のクランプ面から、当該クランプ面に垂直な方向に沿って辺63の長さだけ離れた位置に配置される。
【0038】
同様に、第1チャック爪32の第1当接部72は、辺63と平行な方向において、第2チャック爪34の第2当接部62と互いに対向する位置に配置される。また、第1チャック爪33の第1当接部72は、辺63と平行な方向において、第2チャック爪34の第2当接部61と互いに対向する位置に配置される。
【0039】
ここで、当接部を接触させてワークWを挟む位置、即ち、ワークWに対してクランプ力を加える位置によっては、ワークWに歪みが生じる虞がある。特に、
図9に示すように、ワークWを平面視した場合に、例えば、貫通孔Hの面積が、ワークWの全体の面積に対して約50%以上を占めるようなワークWでは、貫通孔Hの周りの厚みが薄くなる。ワークWは、貫通孔Hと辺63との間の厚みが薄い薄肉部分が形成される。このような薄肉部分を有するワークWでは、クランプ力をバランス良く付加しなかった場合、クランプ力を付与した際や付与したクランプ力を開放した後にワークWの歪みが発生する。例えば、貫通孔Hの形状が所望の形状(真円など)から歪んだ形状となる。これに対し、本実施例のチャック本体31では、ワークWの挟持状態において、各当接部を、ワークWを間に挟んで互いに対向する位置に配置する。これにより、ワークWの両側からクランプ力を付加することで、ワークWに発生する歪みを効果的に抑制できる。
【0040】
また、一対の第1当接部71,72のうち、第2当接部61,62と対向する位置に配置される第1当接部72のクランプ面が、もう一方の第1当接部71のクランプ面に比べて大きくなっている。
図4の拡大図に示すように、辺63と平行な方向における第1当接部72の長さは、辺63と平行な方向における第1当接部71の長さに比べて長くなっている。また、主軸方向における第1当接部71,72のクランプ面の長さは、例えば、同
一となっている。これによれば、一つの辺63を保持する第2チャック爪34と対向する第1当接部72のクランプ面を大きくすることで、第2当接部61,62のクランプ力とのバランスを取り、ワークWに発生する歪みを抑制できる。尚、第1当接部71,72のクランプ面は同一面積でも良い。また、第1当接部72のクランプ面が、第1当接部71のクランプ面に比べて小さくとも良い。
【0041】
また、第1当接部71,72の各々の垂線は、ワークWの角(貫通孔Hが形成されていない部分)で交差している。詳述すると、ワークWにおいて、貫通孔Hが形成されない領域で、ワークWの角に形成された領域を、非形成領域73とする(
図9参照)。また、
図4の拡大図に示すように、第1当接部71のクランプ面に垂直な直線74と、第1当接部72のクランプ面に垂直な直線75とが交差する点を交点76とする。この場合、
図9に示すように、交点76は、ワークWの挟持状態において、非形成領域73内に配置される。換言すれば、一対の第1当接部71,72は、交点76が非形成領域73に配置されるほど互いに近接した位置で、且つワークWの角に近い位置に配置されている。これにより、薄肉部分ではなく、貫通孔Hと辺63との距離が長い(肉厚部分)である角により近い位置に第1当接部71,72の両方を当接させることができ、ワークWに発生する歪みを抑制できる。
【0042】
さらに、本実施例では、第2当接部61,62の各々も、第1当接部72と対向する位置に配置されるため、ワークWの角に近い位置に配置される。これにより、第2当接部61,62から付与するクランプ力によってワークWに発生する歪みを抑制できる。
【0043】
また、
図4に示すように、第2当接部61,62は、幅方向46における第2チャック爪の中央78を間に挟んで対象な位置に配置されている。例えば、親爪53及び子爪54は、中央78を通りスライド方向45に平行な直線に対して線対称な構造となっている。従って、中央78は、幅方向46における親爪53や子爪54の中点である。例えば、幅方向46における中央78と第2当接部61との距離は、幅方向46における中央78と第2当接部62との距離と同一になっている。これによれば、スライド移動する第2チャック爪34の第2当接部61,62からワークWに対してより均等にクランプ力を付与できる。尚、
図4に示す第2当接部61,62の配置や数は一例である。例えば、第2当接部61,62を、幅方向46における中央78の一方側に配置しても良い。あるいは、子爪54は、1つの第2当接部を備える構成や、3つ以上の第2当接部を備える構成でも良い。また、子爪54におけるワークW側の縁部を、辺63に沿った1つの第2当接部として構成しても良い。
【0044】
また、幅方向46における第1チャック爪32の中央79を通りスライド方向45に平行な直線を直線81とした場合、一対の第1当接部71,72は、幅方向46において直線81の一方側に配置されている。また、第1当接部71,72の両方は、幅方向46において直線81を間に挟んで第2チャック爪34(第2当接部61,62)とは反対側に配置されている。これによれば、第1チャック爪32,33を角に近い位置に配置しつつ、幅方向46における第1チャック爪32,33の中央79を、第2チャック爪34に近づけることができる。その結果、第1及び第2チャック爪32~34の間の距離を短くでき、チャック本体31の小型化を図ることができる。尚、
図4に示す第1当接部71,72の配置や数は一例である。例えば、第1当接部71,72を、幅方向46における中央79を間に挟んだ両側に配置しても良い。あるいは、子爪52Aは、3つ以上の第1当接部を備える構成でも良い。
【0045】
(カバー部材83)
次に、カバー部材83について説明する。
図4及び
図5に示すように、第1及び第2チャック爪32~34の親爪51,53には、カバー部材83がそれぞれ取り付けられてい
る。3つのカバー部材83の構造は略同一となっている。このため、以下の説明では、第2チャック爪34の親爪53に取り付けられたカバー部材83について説明する。
【0046】
図11及び
図12は、カバー部材83の斜視図を示している。
図7、
図8、
図11及び
図12に示すように、カバー部材83は、ブラケット85と、閉塞部材86を有している。ブラケット85は、例えば、SPHC(熱間圧延鋼板)であり、略U字形状に形成されている。尚、ブラケット85は、SPHCに限らず、SPCC(冷間圧延鋼板)など他の加工方法で加工した金属板でも良い。
【0047】
ブラケット85は、親爪53の外形形状に合わせて折り曲げられ、親爪53を挿入する挿入部85Aが形成されている。挿入部85Aは、スライド方向45に長い溝であり、親爪53の外周に沿うように、親爪53の形状に合わせて形成されている。このため、ブラケット85は、親爪53に取り付けられることで、挿入部85Aの内周面を親爪53の基部(チャック本体31側の端部部分)に密着させて取り付け可能となっている。
【0048】
ブラケット85には、主軸方向に延びる取付部85Bが設けられている。取付部85Bは、主軸方向の幅を一定とし、親爪53の基部を取り囲むように挿入部85A(親爪53の外周面)に沿って形成されている。取付部85Bには、複数のボルト穴85Cが形成されている。ブラケット85は、複数のボルト穴85Cに挿入したボルト87(
図7参照)を、親爪53に形成されたボルト穴89(
図14参照)に螺合することで、親爪53に対して固定される。従って、3つカバー部材83の各々は、挿入部85Aに第1及び第2チャック爪32~34の親爪51,53をそれぞれ挿入した状態で、親爪51,53の各々の基部に取り付けられる。
【0049】
ここで、本実施例のチャック本体31のように、チャック本体31に第1及び第2チャック爪32~34を交換可能に取り付ける構成では、第1及び第2チャック爪32~34と、チャック本体31や取付部37との間の隙間に切粉が進入する虞がある。切粉が隙間に挟まることで、第1及び第2チャック爪32~34の開閉動作に不具合が発生する、あるいは、第1及び第2チャック爪32~34とワークWの間に切粉が挟まってチャック動作に不具合が発生する虞がある。そこで、本実施例の第1及び第2チャック爪32~34は、上記した隙間への切粉の進入を防止すべくカバー部材83を取り付け可能となっている。これにより、切粉の進入を抑制し、上記した不具合の発生を抑制できる。
【0050】
さらに、カバー部材83には、閉塞部材86が設けられている。閉塞部材86の材料としては、例えば、MCナイロン(登録商標)を用いることができる。尚、閉塞部材86の材料は、MCナイロン(登録商標)に限らず、ウレタンやゴム等でも良い。閉塞部材86は、ブラケット85の形状に合わせて、即ち、親爪53の形状に合わせて略U字形状に形成されている。
【0051】
図4及び
図5に示すように、3つのカバー部材83の各々は、スライド方向45において第1及び第2チャック爪32~34の各々に対してワークW側となる内側(半径方向の内側)に取り付けられている。また、カバー部材83は、第1及び第2チャック爪32~34の各々の外周面に沿ってブラケット85や閉塞部材86が湾曲した形状に形成されている。これにより、隙間に対してワークW側となる位置にカバー部材83を配置することで、ワークWから発生する切粉が隙間に進入することをより確実に防ぐことが可能となる。
【0052】
また、ブラケット85には、閉塞部材86を取り付ける面に、複数の貫通孔85Dが形成されている(
図11参照)。また、閉塞部材86には、複数の貫通孔85Dの各々の位置に合わせてネジ穴86Aが形成されている(
図12参照)。閉塞部材86は、複数の貫
通孔85Dの各々に挿入されたネジ91をネジ穴86Aに螺合されることで、ブラケット85に対して固定される。閉塞部材86は、チャック本体31とブラケット85の間に挟まれる位置に配置される。尚、閉塞部材86をブラケット85に取り付ける方法は、ネジ91を用いる方法に限らず、ボルトを用いる方法でも良い。あるいは、ブラケット85と閉塞部材86を、インサート成形により一体的に形成しても良い。
【0053】
カバー部材83は、閉塞部材86をチャック本体31の上面31Aに接触させた状態で、親爪51,53に取り付けられる。各カバー部材83の閉塞部材86は、下面をチャック本体31に接触させ、第1及び第2チャック爪32~34の各々とチャック本体31の間の隙間を外側から塞ぐ位置に設けられる。これにより、隙間を外側から塞いで隙間への切粉の進入を防ぐことが可能となる。
【0054】
ここで、上記したように閉塞部材86は、チャック本体31に接触する位置に設けられるため、第1及び第2チャック爪32~34のスライド移動に伴って摩耗する虞がある。閉塞部材86は、主軸方向において所定の厚み(例えば、数mmの厚み)を有する。この厚みは、
図8に示すように、ネジ91におけるネジ穴86Aに螺合(挿入)された部分の長さに、所定の余剰分を加えた長さである。この余剰分の長さは、摩耗してなくなる長さ(厚み)として許容される長さである。また、ブラケット85のボルト穴85Cは、
図11に示すように、主軸方向に長い長穴として形成されている。これにより、ユーザは、閉塞部材86が摩耗して薄くなった場合に、長穴のボルト穴85Cにおけるボルト87の挿入位置を調整し、主軸方向におけるカバー部材83の取り付け位置を、チャック本体31側に寄せることで、閉塞部材86をチャック本体31に接触させることができる。従って、閉塞部材86の位置を調整して切粉の進入を継続して防ぐことができる。
【0055】
尚、上記したカバー部材83の構成は一例である。例えば、カバー部材83は、閉塞部材86を備えなくとも良い。この場合、隙間への切粉の進入をブラケット85だけで抑制しても良い。また、ブラケット85や閉塞部材86は、親爪53の外形形状に沿った形状でなくとも良い。例えば、親爪53の外周面と、ブラケット85や閉塞部材86の内周面の間に隙間があっても良い。
【0056】
(第1及び第2当接部71,72,61,62の調整)
次に、第1及び第2当接部71,72,61,62(以下、第1当接部71等という場合がある)を加工して調整する作業について説明する。
図13は、第1及び第2チャック爪32~34を取り付けたチャック本体31の平面図であって、カバー部材83を取り外した状態を示している。
図14は、第1及び第2チャック爪32~34で調整用リング93を挟持した状態を示している。
【0057】
本実施例の工作機械1では、第1当接部71等に所定量の取り代97を予め設けておき、調整用リング93を挟持した状態で取り代97から不要な部分を取り除くことができる。詳述すると、
図13に示すように、スライド方向45における親爪51,53の内周側の面(他の親爪に面した内側部分)には、調整用凹部95が形成されている。調整用リング93は、
図14に示すように、例えば、円環形状の金属部材である。各調整用凹部95は、この調整用リング93の外形形状に合わせて円弧形状に切り欠かれている。
【0058】
3つの親爪51,53は、油圧シリンダ47の駆動に応じてスライド方向45に同期してスライド移動する。
図14に示すように、3つの調整用凹部95に挟持された調整用リング93の中心は、例えば、主軸38の位置と一致している。また、調整用リング93の半径は、加工対象のワークWの大きさに合った長さとなっている。このため、第1及び第2チャック爪32~34は、親爪51,53で調整用リング93を挟んだ状態では、ワークWを挟持する位置に第1当接部71等を配置する。
【0059】
第1当接部71等の位置は、第1及び第2チャック爪32~34を親爪51,53に取り付ける作業の取り付け誤差等によりずれる虞がある。そこで、工作機械1は、ワークWのクランプ面と接触する位置に合わせて、第1当接部71等に設けられた取り代97を加工する。これにより、第1当接部71等のクランプ面をワークWに精度良く当接させることができる。取り代97の厚みは例えば、数mmから0.数mmである。尚、
図14は、取り代97の位置を理解し易くするため、実際の大きさよりも取り代97を大きく図示している。
【0060】
制御装置15は、例えば、タッチパネル3Aに対する操作入力に基づいて左側主軸装置12Lを制御し、親爪51,53で調整用リング93を挟持する。制御装置15は、調整用リング93を挟持させた状態において、左側タレット13Lや工具主軸装置21によって、第1及び第2当接部71,72,61,62の各取り代97を切削する。即ち、ワークWの四角形状に合わせて第1当接部71等のクランプ面の位置や形状を調整する。ユーザは、例えば、主軸38の位置を基準として、辺63の位置やワークWのクランプされる位置の座標を、タッチパネル3Aで入力する。
図14に矢印で示すように、制御装置15は、入力された座標に基づいて、例えば、工具主軸装置21のエンドミル99を取り代97に当てて、ワークWの辺63に沿った方向などにエンドミル99を移動させて取り代97を切削する。これにより、第1及び第2チャック爪32~34の取り付け誤差や、前工程のワークWの加工誤差が発生したとしても、製造現場で第1当接部71等のクランプ面の形状や位置を調整でき、第1当接部71等を精度良くワークWに密着させることができる。
【0061】
因みに、左側主軸装置12L、右側主軸装置12Rは、ワーク挟持装置、主軸装置の一例である。油圧シリンダ47は、駆動源の一例である。主軸38と平行な方向は、厚さ方向の一例である。上面31Aは、取付面の一例である。ボルト87は、螺合部材の一例である。ボルト穴85Cは、挿入孔の一例である。左側及び右側タレット13L,13Rは、加工装置の一例である。工具主軸装置21は、加工装置の一例である。調整用リング93は、調整部材の一例である。
【0062】
以上、上記した本実施例によれば以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、第1チャック爪32,33の各々は、矩形のワークWにおける異なる角の位置にそれぞれ配置され、角を形成する2辺に一対の第1当接部71,72の各々を当接させて角を保持する。また、第2チャック爪34は、ワークWの辺63に第2当接部61,62を当接させワークWの一辺を保持する。これによれば、矩形のワークWの2つ角を、2つの第1チャック爪32,33でそれぞれ保持しつつ、第2チャック爪34で一辺を保持する。矩形のワークWを挟持する際に発生する位置ずれを抑制でき、矩形のワークWを精度良く挟持できる。また、上記したチャック本体31は、第1及び第2チャック爪32~34の種類を変更することで、一般的な3方爪チャックとして使用することができる。このため、ワークWの段取り替えにおいて左側及び右側主軸装置12L,12Rからチャック本体31を取り外して交換する必要がなく、同じチャック本体31を用いて円形のワークWだけでなく、矩形のワークWも挟持できる。
【0063】
このように各種の形状のワークWを挟持する場合、制御装置15は、ワークWに応じたクランプ力の調整が必要となる。本実施例の左側及び右側主軸装置12L,12Rは、電磁比例減圧弁49をそれぞれ備えている。例えば、加工対象のワークWの識別情報(ワークNO)と、そのワークWの加工に用いるNCプログラムを関連付けたデータを記憶装置15Bに記憶させる。このNCプログラムには、ワークWに適したクランプ力に応じた電磁比例減圧弁49の電流値が設定されている。ここでいうワークWに適したクランプ力とは、ワークWの形状や剛性に応じたクランプ力である。制御装置15は、識別情報に応じ
たNCプログラムを記憶装置15Bから読み出して実行することで、ワークWに適したクランプ力となるように油圧シリンダ47の油圧を調整できる。結果として、チャック時にワークWに発生する歪みを抑制できる。尚、制御装置15は、例えば、加工対象のワークWの形状、加工内容、剛性などを分析して最適なクランプ力を判断し、電磁比例減圧弁49の電流値を制御してクランプ力を調整しても良い。また、左側及び右側主軸装置12L,12Rは、電磁比例減圧弁49を備えない構成でも良い。
【0064】
また、本実施例の工作機械1は、左側及び右側タレット13L,13R、工具主軸装置21を備える複合加工機である。これによれば、矩形のワークWを左側主軸装置12Lや右側主軸装置12Rに挟持した状態のまま、即ち、1つのワークの挟持状態に挟持した状態のまま、旋盤や回転工具等を用いた各種の加工を実行できる。従って、矩形のワークWに各種の加工を実行する場合に、各加工間の位置ズレの発生を抑制できる。
【0065】
また、左側及び右側主軸装置12L,12Rは、所謂、対向2軸の主軸装置である。工具主軸装置21は、主軸38と平行な方向において、左側及び右側主軸装置12L,12Rの間に配置されている。そして、本実施例の制御装置15は、左側及び右側主軸装置12L,12Rの各々の子爪52,54に対して調整用リング93を用いた加工を実行できる。これによれば、工具主軸装置21にエンドミル99等の回転工具を設けて置くことで、左側及び右側主軸装置12L,12Rの両方の取り代97に対する削り出しを1つの工具主軸装置21で実行できる。
【0066】
尚、本開示は上記の実施例に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記実施例における
図4~
図6に示すチャック本体31、第1及び第2チャック爪32~34の構成は、一例である。例えば、第1及び第2チャック爪32~34を配置する位置は、チャック本体31の周方向において、120度間隔でなくとも良い。また、チャック本体31が取り付け可能なチャック爪の数は、3つに限らず、4つ以上でも良い。従って、第1チャック爪32,33は、3つ以上あっても良く、第2チャック爪34は、2つ以上あっても良い。
上記実施例におけるワークWの形状は、一例である。ワークWは、5角形以上の多角形でも良い。また、ワークWは、貫通孔Hを形成されないものでも良い。
また、上記実施例では、全ての当接部が、ワークWの挟持状態において、ワークWの辺63と平行な方向において他の当接部と対向する位置に設けられたが、これに限らない。例えば、第1当接部72を、第2当接部61,62と対向する位置からずらした位置に配置しても良い。また、第1チャック爪32,33の各々の第1当接部71について、一方の第1当接部71を、他方の第1当接部71と対向する位置からずらした位置に配置しても良い。
【0067】
また、本開示のワーク挟持装置は、左側主軸装置12LのようなワークWを回転させる装置に限らない。例えば、ワーク挟持装置は、マシニングセンタやフライス盤のようなワークを回転させない装置で用いるワーク挟持装置でも良い。
クランプ面の交点76が非形成領域73の外に配置されるように、第1当接部71,72の位置を調整しも良い。
左側及び右側主軸装置12L,12Rは、カバー部材83を取り付けできない構成でも良い。即ち、工作機械1は、カバー部材83を備えなくとも良い。
本開示の螺合部材は、ボルト87に限らず、ネジなどの他の螺合する部材でも良い。
ボルト穴85Cは、長穴に限らず、円形の穴でも良い。
本開示の調整部材は、調整用リング93のような円環状の部材に限らず、四角形等の多角形の部材でも良い。この場合、調整用凹部95の形状を、矩形等に適宜変更しても良い。
【0068】
カバー部材83は、親爪51,53の全周を覆う環状形状でも良い。あるいは、カバー部材83は、スライド方向45における第1及び第2チャック爪32~34の外側から嵌め込むU字形状でも良い。
カバー部材83は、子爪52,54に取り付けられる構成でも良い。
左側及び右側加工装置11L,11Rは、対向2軸の旋盤に限らず、平行2軸の旋盤でも良い。
本開示の工作機械としては、複合加工機に限らず、例えば、横型旋盤、正面旋盤、立型旋盤、マシニングセンタ、フライス盤、ボール盤など、様々な工作機械を採用できる。
【0069】
また、本明細書では、請求項4において「請求項1又は2に記載のワーク挟持装置」を「請求項1~3の何れか1項に記載のワーク挟持装置」に変更した技術思想も開示されている。また、請求項5において「請求項1又は2に記載のワーク挟持装置」を「請求項1~4の何れか1項に記載のワーク挟持装置」に変更した技術思想も開示されている。また、請求項6において「請求項1又は2に記載のワーク挟持装置」を「請求項1~5の何れか1項に記載のワーク挟持装置」に変更した技術思想も開示されている。また、請求項8において「請求項6に記載のワーク挟持装置」を「請求項6又は請求項7に記載のワーク挟持装置」に変更した技術思想も開示されている。また、請求項10において「請求項1又は2に記載のワーク挟持装置と、」を「請求項1~9の何れか1項に記載のワーク挟持装置と、」に変更した技術思想も開示されている。
【符号の説明】
【0070】
1 工作機械、12L 左側主軸装置(ワーク挟持装置、主軸装置)、12R 右側主軸装置(ワーク挟持装置、主軸装置)、13L,13R 左側及び右側タレット(加工装置)、15 制御装置、21 工具主軸装置(加工装置)、31 チャック本体、31A
上面(取付面)、32,33 第1チャック爪、34 第2チャック爪、38 主軸、45 スライド方向、46 幅方向、47 油圧シリンダ(駆動源)、51,51A,51B,53 親爪、52,52A,52B,54 子爪、61,62 第2当接部、63
辺、71,72 第1当接部、73 非形成領域、78,79 中央、81 直線、83 カバー部材、85 ブラケット、85C ボルト穴(挿入孔)、86 閉塞部材、87 ボルト(螺合部材)、93 調整用リング(調整部材)、95 調整用凹部、W ワーク。