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特開2024-21201LDS用熱硬化性樹脂組成物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021201
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】LDS用熱硬化性樹脂組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240208BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240208BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20240208BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240208BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240208BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240208BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20240208BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240208BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240208BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08G59/42
C08G59/32
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/36
C08K3/24
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K3/18 B
H01Q9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123883
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】光田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛志
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
5E343
【Fターム(参考)】
4J002AC102
4J002CD051
4J002CD071
4J002DE187
4J002DJ016
4J002EH040
4J002EX060
4J002EX070
4J002FD016
4J002FD160
4J002FD200
4J002FD207
4J002GQ00
4J036AB02
4J036AD07
4J036AE05
4J036DB09
4J036DB23
4J036FA03
4J036FA05
4J036FB05
4J036FB07
4J036FB08
4J036GA04
4J036GA28
4J036JA08
5E343AA17
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB44
5E343BB48
5E343CC71
5E343DD33
5E343DD43
5E343ER02
5E343ER08
5E343GG13
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】高誘電率および低誘電正接等の誘電特性に優れ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物が得られるLDS用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)硬化剤と、(C)無機充填材と、(D)LDS添加剤と、を含み、硬化剤(B)は、下記一般式(1)で表される活性エステル硬化剤(B1)を含み、無機充填材(C)が、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の高誘電率充填材を含み、LDS添加剤(D)が、クロム酸銅を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填材と、
(D)LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)添加剤と、
を含む、LDS用熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、下記一般式(1)で表される活性エステル硬化剤(B1)を含み、
【化1】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
Bは、下記一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。)
無機充填材(C)が、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の高誘電率充填材を含み、
LDS添加剤(D)が、クロム酸銅を含む、
LDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
無機充填材(C)の平均粒径D50が30μm以下である、請求項1に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材(C)がシリカまたはアルミナを含む、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂が、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
硬化剤(B)がフェノール系硬化剤(B2)を含む、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに硬化触媒(E)を含む、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
さらにカップリング剤(F)を含む、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状である、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える成形品。
【請求項11】
請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、前記硬化物の表面に形成された回路と、を備える、回路部品。
【請求項12】
請求項11に記載の回路部品を含む回路基板。
【請求項13】
請求項11に記載の回路部品を含む高周波アンテナ。
【請求項14】
請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面に設けられた回路と、
を備える、回路基板。
【請求項15】
請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板を形成する工程と、
活性エネルギー線を前記誘電体基板表面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる工程と、
めっき処理を行い、活性化された前記誘電体基板の表面に金属を堆積して金属層を形成する工程と、
を含む回路基板の製造方法。
【請求項16】
基板と、
前記基板の一方の面に設けられた、請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器と、
前記共振器の側面の一部を覆う回路と、
を備える、誘電体共振器アンテナ。
【請求項17】
基板の表面に請求項1または2に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器を形成する工程と、
活性エネルギー線を前記共振器の側面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる工程と、
めっき処理を行い、活性化された前記共振器の前記範囲に金属を堆積して回路を形成する工程と、
を含む誘電体共振器アンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LDS用熱硬化性樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元回路を形成する技術として、LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)が知られている。当該技術には、LDS添加剤を含む樹脂組成物が用いられ、当該組成物から得られた成形体の表面にレーザーを照射し、レーザーを照射した部分を活性化させ、この活性化された部分に金属メッキ層を形成することで三次元回路を形成することができる。
【0003】
特許文献1には、少なくとも2つの環状イミド基を含有する環状イミド化合物と、所定のLDS添加剤を含む熱硬化性マレイミド樹脂組成物が開示されている。当該文献には、この組成物の硬化物は誘電特性に優れ、その表面又は内部に無電解メッキ処理により金属層(メッキ層)を選択的かつ容易に形成できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-20996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のマレイミド樹脂組成物から得られる硬化物は、高誘電率および低誘電正接に改善の余地があり、メッキ層の形成にも改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の硬化剤と、LDS添加剤と、高誘電率充填材とを組み合わせて用いることで、高誘電率および低誘電正接に優れ誘電特性が改善されるとともに、メッキ層の形成にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
[1](A)熱硬化性樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填材と、
(D)LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)添加剤と、
を含む、LDS用熱硬化性樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、下記一般式(1)で表される活性エステル硬化剤(B1)を含み、
【化1】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
Bは、下記一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。)
無機充填材(C)が、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の高誘電率充填材を含み、
LDS添加剤(D)が、クロム酸銅を含む、
LDS用熱硬化性樹脂組成物。
[2] 無機充填材(C)の平均粒径D50が30μm以下である、[1]に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[3] 無機充填材(C)がシリカまたはアルミナを含む、[1]または[2]に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[4] 熱硬化性樹脂(A)がエポキシ樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[5] 前記エポキシ樹脂が、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、[4]に記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[6] 硬化剤(B)がフェノール系硬化剤(B2)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[7] さらに硬化触媒(E)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[8] さらにカップリング剤(F)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[9] 粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状である、[1]~[8]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える成形品。
[11] [1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物と、前記硬化物の表面に形成された回路と、を備える、回路部品。
[12] [11]に記載の回路部品を含む回路基板。
[13] [11]に記載の回路部品を含む高周波アンテナ。
[14] [1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面に設けられた回路と、
を備える、回路基板。
[15] [1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板を形成する工程と、
活性エネルギー線を前記誘電体基板表面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる工程と、
めっき処理を行い、活性化された前記誘電体基板の表面に金属を堆積して金属層を形成する工程と、
を含む回路基板の製造方法。
[16] 基板と、
前記基板の一方の面に設けられた、[1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器と、
前記共振器の側面の一部を覆う回路と、
を備える、誘電体共振器アンテナ。
[17] 基板の表面に[1]~[9]のいずれかに記載のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器を形成する工程と、
活性エネルギー線を前記共振器の側面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる工程と、
めっき処理を行い、活性化された前記共振器の前記範囲に金属を堆積して回路を形成する工程と、
を含む誘電体共振器アンテナの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、高誘電率および低誘電正接等の誘電特性に優れ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物を提供することができ、さらに当該硬化物に回路が形成された成形品を含むアンテナ等は高誘電率に優れており、アンテナ等を小型化・軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の回路基板(電磁バンドキャップ)の製造方法を示す断面および上面斜視図である。
図2】本実施形態の誘電体共振器アンテナの製造方法を示す断面および上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0011】
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、LASER DIRECT STRUCTURING(レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS))に用いる熱硬化性樹脂組成物である。LDSとは、三次元成形回路部品(MID)の製造方法の一つであり、活性エネルギー線を照射して、LDS添加剤を含有する樹脂成形品の表面に金属核を生成し、その金属核をシードとして、例えば無電解めっき処理等により、エネルギー線照射領域にめっきパターン(配線)を形成することができる。
【0012】
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、
(A)熱硬化性樹脂と、
(B)硬化剤と、
(C)無機充填材と、
(D)LASER DIRECT STRUCTURING(LDS)添加剤と、
を含む。
【0013】
[熱硬化性樹脂(A)]
本実施形態において、熱硬化性樹脂(A)としては、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、およびマレイミド樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。これらの中でも、本発明の効果および熱伝導性ペーストの接着性を向上させる観点からは、エポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。
【0014】
エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は限定されない。
【0015】
エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0016】
本実施形態の樹脂成形材料は、エポキシ樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種類以上含んでもよい。また、同種のエポキシ樹脂であっても異なる分子量のものを併用してもよい。
【0017】
本実施形態のエポキシ樹脂は、本発明の効果の観点から、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェニルメタン型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0018】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂とは、具体的には、メタン(CH)の4つの水素原子のうちの3つがベンゼン環で置換された部分構造を含むエポキシ樹脂である。ベンゼン環は、無置換であっても置換基で置換されていてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基やグリシジルオキシ基などを挙げることができる。
【0019】
具体的には、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂は、以下一般式(a1)で表される構造単位を含む。この構造単位が2つ以上連なることで、トリフェニルメタン骨格が構成される。
【0020】
【化3】
【0021】
一般式(a1)において、
11は、複数ある場合はそれぞれ独立に、1価の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはシアノ基であり、
12は、複数ある場合はそれぞれ独立に、1価の有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはシアノ基であり、
iは、0~3の整数であり、
jは、0~4の整数である。
【0022】
11およびR12の1価の有機基の例としては、後述の一般式(BP)におけるRおよびRの1価の有機基として列挙されているものを挙げることができる。
iおよびjは、それぞれ独立に、好ましくは0~2であり、より好ましくは0~1である。
【0023】
一態様として、iおよびjはともに0である。つまり、一態様として、一般式(a1)中のベンゼン環の全ては、1価の置換基としては、明示されたグリシジルオキシ基以外の置換基を有しない。
【0024】
ビフェニル構造を含むエポキシ樹脂とは、具体的には、2つのベンゼン環が単結合で連結している構造を含むエポキシ樹脂のことである。ここでのベンゼン環は、置換基を有していてもいなくてもよい。
具体的には、ビフェニル構造を含むエポキシ樹脂は、以下一般式(BP)で表される部分構造を有する。
【0025】
【化4】
【0026】
一般式(BP)において、
およびRは、複数ある場合はそれぞれ独立に、1価の有機基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子であり、
rおよびsは、それぞれ独立に、0~4であり、
*は、他の原子団と連結していることを表す。
【0027】
およびRの1価の有機基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、カルボキシル基などを挙げることができる。
【0028】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、例えばアリル基、ペンテニル基、ビニル基などが挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル基などが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えばメチリデン基、エチリデン基などが挙げられる。
アリール基としては、例えばトリル基、キシリル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
アルカリル基としては、例えばトリル基、キシリル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。
【0029】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
ヘテロ環基としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。
【0030】
およびRの1価の有機基の総炭素数は、それぞれ、例えば1~30、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、特に好ましくは1~6である。
rおよびsは、それぞれ独立に、好ましくは0~2であり、より好ましくは0~1である。一態様として、rおよびsはともに0である。
【0031】
より具体的には、ビフェニル構造を含むエポキシ樹脂は、以下一般式(BP1)で表される構造単位を有するビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0032】
【化5】
【0033】
一般式(BP1)において、
およびRの定義および具体的態様は、一般式(BP)と同様であり、
rおよびsの定義および好ましい範囲は、一般式(BP)と同様であり、
は、複数ある場合はそれぞれ独立に、1価の有機基、ヒドロキシル基またはハロゲン原子であり、
tは、0~3の整数である。
の1価の有機基の具体例としては、RおよびRの具体例として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
tは、好ましくは0~2であり、より好ましくは0~1である。
【0034】
エポキシ樹脂は、本発明の効果の観点から、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下の量で含むことができる。
【0035】
[硬化剤(B)]
硬化剤(B)は、活性エステル化合物(B1)を含む。また、活性エステル化合物(B1)とともにフェノール系硬化剤(B2)を含むこともできる。
【0036】
(活性エステル化合物(B1))
活性エステル化合物(活性エステル硬化剤)(B1)は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化剤として機能する。
活性エステル化合物(B1)は、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物からなる群から選ばれる一または二以上を含む。
この中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0037】
本実施形態において、活性エステル化合物(B1)は、例えば、以下の一般式(1)で表される構造を有する樹脂を用いることができる。
【0038】
【化6】
【0039】
上記一般式(1)中、
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar'は、置換または非置換のアリール基であり、
Bは、下記一般式(B)で表される構造であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。
【0040】
【化7】
【0041】
上記一般式(B)中、
Arは、置換または非置換のアリーレン基である。置換されたアリーレン基の置換基は炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。前記基の置換基としては、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
Yとして好ましくは、単結合、メチレン基、-CH(CH-、エーテル結合、置換されていてもよいシクロアルキレン基、置換されていてもよい9,9-フルオレニレン基等が挙げられる。
nは0~4の整数であり、好ましくは0または1である。
Bは、具体的には、下記一般式(B1)または下記一般式(B2)で表される構造である。
【0042】
【化8】
【0043】
上記一般式(B1)および上記一般式(B2)中、ArおよびYは、一般式(B)と同義である。
【0044】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、特定の活性エステル化合物を含むことにより、得られる硬化物は優れた誘電特性を有することができ、低誘電正接に優れる。
【0045】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる活性エステル化合物(B1)は、式(B)で表される活性エステル基を有する。エポキシ樹脂と活性エステル化合物(B1)との硬化反応において、活性エステル化合物(B1)の活性エステル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して2級の水酸基を生じる。この2級の水酸基は、活性エステル化合物(B1)のエステル残基により封鎖される。そのため、硬化物の誘電正接が低減される。
【0046】
一実施形態において、上記式(B)で表される構造は、以下の式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0047】
【化9】
【0048】
式(B-1)~(B-6)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
【0049】
はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。
【0050】
上記式(B-1)~(B-6)で表される構造は、いずれも配向性が高い構造であることから、これを含む活性エステル化合物(B1)を用いた場合、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高周波帯域における低誘電正接を有する。
中でも、低誘電正接の観点から、式(B-2)、式(B-3)または(B-5)で表される構造を有する活性エステル化合物が好ましく、さらに式(B-2)のnが0である構造、式(B-3)のXがエーテル結合である構造、または式(B-5)において二つのカルボニルオキシ基が4,4'-位にある構造を有する活性エステル化合物がより好ましい。また各式中のRはすべて水素原子であることが好ましい。
【0051】
式(1)における「Ar'」はアリール基であり、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、2-ベンジルフェニル基、4-ベンジルフェニル基、4-(α-クミル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であり得る。中でも、特に誘電正接の低い硬化物が得られることから、1-ナフチル基または2-ナフチル基であることが好ましい。
【0052】
本実施形態において、式(1)で表される活性エステル化合物(B1)における[A]は、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、このようなアリーレン基としては、例えば、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物と、フェノール性化合物とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。
【0053】
前記1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物は、例えば、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンの多量体、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、リモネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られることからジシクロペンタジエンが好ましい。尚、ジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンにはシクロペンタジエンの多量体や、他の脂肪族或いは芳香族性ジエン化合物等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等の性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品を用いることが望ましい。
【0054】
一方、前記フェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル化合物となることからフェノールが好ましい。
【0055】
好ましい実施形態において、式(1)で表される活性エステル化合物における[A]は、式(A)で表される構造を有する。式(1)における[A]が以下の構造である活性エステル化合物を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高周波帯域における低誘電正接を実現できる。
【0056】
【化10】
【0057】
式(A)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
lは0または1であり、mは1以上の整数である。
【0058】
式(1)で表される活性エステル硬化剤のうち、より好ましいものとして、下記式(1-1)、式(1-2)および式(1-3)で表される樹脂が挙げられ、特に好ましいものとして、下記式(1-3)で表される樹脂が挙げられる。
【0059】
【化11】
【0060】
式(1-1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0061】
【化12】
【0062】
式(1-2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0063】
【化13】
【0064】
式(1-3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0065】
上記一般式(A)で表される活性エステル化合物(B1)は、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール性水酸基を有するアリール基が複数結節された構造を有するフェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)とを反応させる、公知の方法により製造することができる。
【0066】
上記フェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)との反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜調整することができるが、中でも、より硬化性の高い活性エステル化合物(B1)が得られることから、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.25~0.90モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.10~0.75モルの範囲となる割合で各原料を用いることが好ましく、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.50~0.75モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.25~0.50モルの範囲となる割合で各原料を用いることがより好ましい。
【0067】
また、活性エステル化合物(B1)の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電正接の低い硬化物が得られることから、200g/eq以上230g/eq以下の範囲であることが好ましく、210g/eq以上220g/eq以下の範囲であることがより好ましい。
【0068】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物において、活性エステル化合物(B1)とエポキシ樹脂との含有量は、硬化性に優れ、誘電正接の低い硬化物が得られることから、活性エステル化合物(B1)中の活性基の合計1当量に対して、エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、活性エステル化合物(B1)中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0069】
活性エステル化合物(B1)は、熱硬化性樹脂組成物100質量%中、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下の量で用いられる。
特定の活性エステル化合物(B1)を上記範囲で含むことにより、得られる硬化物はより優れた誘電特性を有することができ、低誘電正接にさらに優れる。
【0070】
(フェノール系硬化剤(B2))
本実施形態において、硬化剤(B)は、活性エステル化合物(B1)とともにフェノール系硬化剤(B2)を含むこともできる。フェノール系硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂の硬化剤として機能する。
フェノール系硬化剤(B2)は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂および/またはフェノールノボラック樹脂を含む。
【0071】
熱硬化性樹脂組成物は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂およびフェノールノボラック樹脂以外の他の硬化剤を含んでもよい。
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂としては、例えば、ビフェニレン骨格を含むフェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格を含むナフトールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0072】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、活性エステル化合物(B1)以外の他の硬化剤を含むことができる。
他の硬化剤としては、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂およびフェノールノボラック樹脂以外のフェノール樹脂系硬化剤、アミン化合物系硬化剤、アミド化合物系硬化剤、酸無水物系硬化剤などが用いられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。この中でも、フェノール樹脂系硬化剤を用いてもよい。
【0073】
フェノール樹脂系硬化剤は、例えば、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、ビフェニレン骨格を含むフェノール樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミンやベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0074】
アミン化合物系硬化剤は、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等のアミン化合物が挙げられる。
アミド化合物系硬化剤は、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂が挙げられる。
酸無水物系硬化剤は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0075】
フェノール系硬化剤(B2)を用いる場合、フェノール系硬化剤(B2)の配合量は、熱硬化性樹脂100質量%に対して、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下の量で用いられる。の量である。上記範囲の量で硬化剤を使用することにより、優れた硬化性を有する熱硬化性樹脂組成物が得られる。
【0076】
[無機充填材(C)]
無機充填材(C)は、高誘電率充填材を含む。
高誘電率充填材としては、本発明の効果の観点、特に低誘電正接の観点から、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸マグネシウムを挙げることができ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、これらの高誘電率充填材を含むことにより、高誘電率に優れた硬化物を得ることができ、アンテナ等を小型化・軽量化することができる。
【0077】
高誘電率充填材の形状は、粒状、不定形、フレーク状などであり、これらの形状の高誘電率充填材を任意の比率で用いることができる。高誘電率充填材の平均粒子径D50は、本発明の効果の観点や流動性・充填性の観点から、好ましくは30μm以下、より好ましくは0.1μm以上30μm以下、さらに好ましくは0.3μm以上20μm以下、特に好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
【0078】
高誘電率充填材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは20質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~75質量%、さらに好ましくは40質量%~70質量%の範囲である。高誘電率充填材の添加量が上記範囲であると、得られる硬化物の誘電率がより低くなるとともに、成形品の製造にも優れる。

無機充填材(C)は高誘電率充填材とともに他の無機充填材を含むことができる。
他の無機充填材としては、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、またはこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の無機充填材の中で、線膨張係数低減の観点からはシリカまたはアルミナが好ましく、充填材形状は成形時の流動性および金型摩耗性の点から球形が好ましい。
【0079】
他の無機充填材の配合量は、成形性、熱膨張性の低減、および強度向上の観点から、LDS用熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下の範囲とすることができる。上記範囲であれば、熱膨張性低減および成形性に優れる。
無機充填材(C)の平均粒径D50は、好ましくは30μm以下、より好ましくは0.1μm以上30μm以下、さらに好ましくは0.3μm以上20μm以下、特に好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
【0080】
[LDS添加剤(D)]
LDS添加剤(D)は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成する非導電性金属化合物である。
【0081】
非導電性金属化合物としては、(i)スピネル型の金属酸化物、(ii)周期表第3族~第12族の中から選択されており、かつ当該族が隣接する2以上の遷移金属元素を有する金属酸化物、(iii)錫含有酸化物等を挙げることができる。
【0082】
非導電性金属化合物は、活性エネルギー線の照射により金属核を形成できるものである。詳細なメカニズムは定かでないが、このような非導電性金属化合物は、吸収可能な波長領域を有するYAGレーザー等の活性エネルギー線が照射されると、金属核が活性化して(例えば、還元されて)、金属めっきが可能な金属核が生成される、と考えられる。そして、非導電性金属化合物が分散された熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に対して上記活性エネルギー線を照射すると、その照射面に、金属めっきが可能な金属核を有するシード領域が形成される。得られたシード領域を利用することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に、回路などのめっきパターンを形成することが可能になる。
【0083】
本実施形態においては、LDS添加剤(D)として、非導電性金属化合物であるクロム酸銅(CuCrO)を含む。
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物が、LDS添加剤(D)としてクロム酸銅を含むことにより高誘電率および低誘電正接に優れ、特に低誘電正接に優れた硬化物を得ることができ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物を提供することができる。さらに当該硬化物に三次元回路が形成された成形品を含むアンテナ等は受信感度に優れており、アンテナ等を小型化・軽量化することができる。
【0084】
クロム酸銅は、本発明の効果の観点から、LDS用熱硬化性樹脂組成物100質量%中に、好ましくは0.5質量%以上30質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上15質量%以下の量で含むことができる。
【0085】
LDS添加剤(D)は、本発明の効果を奏する範囲で、クロム酸銅とともに、他のLDS添加剤を含むことができる。
他のLDS添加剤としては、非導電性金属化合物である、FeCr、CuCrO、CuCr、CuWO、NiCr、MnCr、MgCr、ZnCr、CoCr、CuFe、NiFe、MnFe、MgFe、ZnFe、CoFeなどが挙げられる。
【0086】
[硬化触媒(E)]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、さらに硬化触媒(E)を含むことができる。
硬化触媒(E)は、硬化促進剤などと呼ばれる場合もある。硬化触媒(E)は、熱硬化性樹脂(A)の硬化反応を早めるものである限り特に限定されず、公知の硬化触媒を用いることができる。
【0087】
具体的には、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール類(イミダゾール系硬化促進剤);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物などを挙げることができ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0088】
これらの中でも、硬化性を向上させ、曲げ強度などの機械強度に優れた硬化物を得る観点からはリン原子含有化合物を含むことが好ましく、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましく、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が特に好ましい。
【0089】
一般式(1)で表される活性エステル硬化剤(B1)と潜伏性を有する硬化触媒とを組み合わせて用いることにより、成形性により優れるとともに、曲げ強度などの機械強度により優れた硬化物を得ることができる。
【0090】
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0091】
【化14】
【0092】
一般式(6)において、
Pはリン原子を表す。
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、芳香族基またはアルキル基を表す。
Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。
【0093】
AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。
x、yは1~3、zは0~3であり、かつx=yである。
【0094】
一般式(6)で表される化合物は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
【0095】
ホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0096】
【化15】
【0097】
一般式(7)において、
Pはリン原子を表す。
は炭素数1~3のアルキル基、Rはヒドロキシル基を表す。
fは0~5であり、gは0~3である。
【0098】
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。
まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。
【0099】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
【0100】
【化16】
【0101】
一般式(8)において、
Pはリン原子を表す。
10、R11およびR12は、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。
【0103】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
【0104】
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
【0105】
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
【0106】
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
【0107】
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
【0108】
【化17】
【0109】
一般式(9)において、
Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。
【0110】
16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
20は、基YおよびYと結合する有機基である。
21は、基YおよびYと結合する有機基である。
【0111】
およびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
【0112】
およびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
Z1は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
【0113】
一般式(9)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
【0114】
一般式(9)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびY5は互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(9)中の-Y-R20-Y-、およびY-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
【0115】
一般式(9)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法は、例えば以下である。
【0116】
メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。
【0117】
硬化触媒(E)を用いる場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.02~2質量%である。このような数値範囲とすることにより、他の性能を過度に悪くすることなく、十分に硬化促進効果が得られる。
【0118】
[カップリング剤(F)]
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤(F)を含むことができる。
上記カップリング剤(F)は、メルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0119】
上記エポキシシランとしては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0120】
また、上記アミノシランとしては、例えば、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナン等が挙げられる。アミノシランの1級アミノ部位をケトン又はアルデヒドを反応させて保護した潜在性アミノシランカップリング剤として用いてもよい。また、アミノシランとしては、2級アミノ基を有してもよい。
【0121】
また、上記メルカプトシランとしては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランのほか、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドのような熱分解することによってメルカプトシランカップリング剤と同様の機能を発現するシランカップリング剤など、が挙げられる。
【0122】
これらのシランカップリング剤は予め加水分解反応させたものを配合してもよい。これらのシランカップリング剤は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0123】
本実施形態において、カップリング剤として、メルカプトシラン、アミノシランおよびエポキシシランからなる群から選択される一種以上を含むことにより、熱硬化性樹脂組成物の粘度を最適にすることにより、金型成形性を向上させることができる。
【0124】
連続成形性という観点では、メルカプトシランが好ましく、流動性の観点では、2級アミノシランが好ましく、密着性という観点ではエポキシシランが好ましい。
【0125】
上記カップリング剤の含有量の下限値としては、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物のフロー流動長を長くすることができるので、射出成形性を向上させることができる。一方で、カップリング剤の含有量の上限値としては、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。
【0126】
(その他の成分)
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、たとえば、離型剤、難燃剤、イオン捕捉剤、着色剤、低応力剤および酸化防止剤等の添加剤を含有することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
上記離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックスや酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類、ならびにパラフィンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0128】
上記難燃剤は、たとえば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
上記イオン捕捉剤は、ハイドロタルサイト類またはマグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0129】
上記着色剤は、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンから選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
上記低応力剤は、ポリブタジエン化合物、アクリロニトリルブタジエン共重合化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム等のシリコーン化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0130】
また、本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、上記着色剤として用いるカーボンブラックなどのカーボンを含有しない構成とすることができる。これにより、めっき付き特性を向上させることができる。
【0131】
[LDS用熱硬化性樹脂組成物の製造方法]
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の製造方法としては、たとえば、上記の各成分を、公知の手段で混合することにより混合物を得る。さらに、混合物を溶融混練することにより、混練物を得る。混練方法としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機や、ミキシングロール等のロール式混練機を用いることができるが、2軸型混練押出機を用いることが好ましい。冷却した後、混練物を所定の形状とすることができる。
【0132】
このようにして得られる本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、無機充填材(C)と、LDS添加剤(D)と、を含み、
硬化剤(B)が、前記一般式(1)で表される活性エステル硬化剤を含み、
無機充填材(C)が、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の高誘電率充填材を含み、
LDS添加剤(D)が、クロム酸銅を含む。
このようなLDS用熱硬化性樹脂組成物によれば、高誘電率および低誘電正接等の誘電特性に優れ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物を提供することができる。
【0133】
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の形状としては、例えば、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状等の所定の形状を有していてもよい。これにより、トランスファー成形、射出成形、および圧縮成形等の公知の成形方法に適するLDS用熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0134】
本実施形態において、粉粒状のLDS用熱硬化性樹脂組成物とは、得られた混練物を粉砕した粉砕物であり、顆粒状のLDS用熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂組成物の粉末(粉粒状の混練物)同士を固めた凝集体または公知の造粒法で得られた造粒物であり、タブレット状のLDS用熱硬化性樹脂組成物とは、熱硬化性樹脂組成物を高圧で打錠成形することによって所定形状を有するように造形された造形体であり、シート状のLDS用熱硬化性樹脂組成物とは、例えば、枚葉状または巻き取り可能なロール状を有する熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂膜であることを意味する。
本実施形態において、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状の、LDS用熱硬化性樹脂組成物は、半硬化状態(Bステージ状態)であってもよい。
【0135】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物のスパイラルフロー流動長の下限値は、例えば、50cm以上であり、好ましくは55cm以上であり、より好ましくは60cm以上である。これにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性を優れたものとすることができ、その成形性を向上させることができる。上記スパイラルフロー流動長の上限値は、特に限定されないが、例えば、600cm以下としてもよい。
【0136】
本実施形態において、上記スパイラルフロー流動長は、EMMI-1-66法に従い、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で測定することができる。
【0137】
[成形品]
本実施形態における熱硬化性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形やトランスファー成形などの金型形成が挙げられる。このような成形方法を使用することにより、上記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を備える樹脂成形品を製造することができる。
【0138】
[回路基板]
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高誘電率および低誘電正接等の誘電特性に優れ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物が得られることから、当該硬化物と前記硬化物の表面に形成された回路とを備える回路部品や、当該回路部品を含む回路基板または高周波アンテナ等を提供することができる。
例えば、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物や基板等を、例えば、電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナの誘電体基板や誘電体共振器アンテナ(DRA)の共振器に用いることができる。
【0139】
(電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナ)
電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナとは、対象とする電磁波の波長よりも小さい周期構造を、例えば金属材料で形成するものである。周期構造を構成することで、特定の周波数帯域の電磁波が存在できない電磁バンドギャップ(Electromagnetic Band Gap (EBG))をつくりだすことができる。
本実施形態の電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナは、図1(c)に示すように、金属基板12と、誘電体基板14と、複数の導体パターン16とが積層されており、誘電体基板14を貫通するビア18により金属基板12と導体パターン16とが電気的に接続されている。
誘電体基板14は本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成される。
金属基板12および導体パターン16は銅から構成されていることが好ましい。導体パターン16は渦巻き状であってもよく、矩形状であってもよい。
【0140】
(誘電体共振器アンテナ(DRA))
誘電体共振器アンテナ(Dielectric resonator antennas(DRA))とは、マイクロ波およびミリ波帯の電波の共振器として機能するように設計された誘電体材料を含むアンテナである。
本実施形態の誘電体共振器アンテナ(DRA)は、図2(c)に示すように、基板22と、基板22上に搭載された複数の柱状の誘電体共振素子24と、誘電体共振素子24の側面の一部に形成された金属層26からなる回路(給電プローブ)とを備える。金属層26(回路(給電プローブ))は、プローブピン、スロット、マイクロストリップライン等の給電線(不図示)と接続しており、または金属層26として一体に形成されており、誘電体共振素子24に給電が行われるように構成されている。
誘電体共振素子24は本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成される。その形状は、円柱状、四角柱状であってもよい。基板22は、リジッドプリント配線基板用基板、フレキシブルプリント回路基板、セラミック基板、または樹脂基板等を挙げることができる。金属層26は、銅から構成されていることが好ましい。
【0141】
[回路基板の製造方法]
本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物を用いて回路基板を製造することができる。当該製造方法は、例えば以下の工程を含む。
工程a:本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板を形成する。
工程b:活性エネルギー線を前記誘電体基板表面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる。
工程c:めっき処理を行い、活性化された前記誘電体基板の表面に金属を堆積して金属層を形成する。
【0142】
本実施形態においては、電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナの製造方法を例に図1を参照しながら説明する。
【0143】
(電磁バンドギャップ(EBG)構造アンテナの製造方法)
工程aにおいては、トランスファー成形または圧縮成形により、金属基板12の表面に、本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる誘電体基板14を形成する(図1(a))。
次いで、誘電体基板14の表面にフォトレジスト層を形成し、次いで露光現像により貫通孔を形成する箇所を選択的に取り除く。次いで、フォトレジスト層を介して誘電体基板14をエッチングして底部に金属基板12の表面が露出する貫通孔15を形成する。
【0144】
さらに、工程bにおいて、フォトレジスト層を露光現像により誘電体基板14の表面の所定の範囲14aを露出させ、活性エネルギー線を貫通孔15の側面および誘電体基板14の表面の所定の範囲14aに照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる(図1(b))。
【0145】
本実施形態において活性エネルギー線としては、例えば、レーザーを用いることができる。レーザーは、例えば、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではないが、例えば、200nm~12000nmである。この中でも、好ましくは248nm、308nm、355nm、532nm、1064nmまたは10600nmを使用してもよい。
【0146】
誘電体基板14は、LDS添加剤(D)として、非導電性金属化合物であるクロム酸銅(CuCrO)を含むことから、吸収可能な波長領域を有するYAGレーザー等の活性エネルギー線が照射されると、金属核が活性化して(例えば、還元されて)、金属めっきが可能な金属核が生成される、と考えられる。そして、非導電性金属化合物が分散された熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に対して上記活性エネルギー線を照射すると、その照射面に、金属めっきが可能な金属核を有するシード領域が形成される。得られたシード領域を利用することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の表面に、回路などのめっきパターンを形成することが可能になる。
【0147】
次いで、工程cにおいて、めっき処理を行い、活性化された貫通孔15の側面および誘電体基板14の表面の所定の範囲14aに金属を堆積して、貫通孔15の側面にビア18を形成し、所定の範囲14aに導体パターン16を形成する(図1(c))。導体パターン16は渦巻き状であってもよく、矩形状であってもよい。
【0148】
上記めっき処理としては、電界めっきまたは無電解メッキのいずれを用いてもよい。上述の活性化された領域に、めっき処理を施すことにより、導体パターンを形成することができる。めっき液としては、特に定めるものではなく、公知のめっき液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているめっき液を用いてもよい。
【0149】
[誘電体共振器アンテナの製造方法]
本実施形態の誘電体共振器アンテナの製造方法は以下の工程を含む。
工程1:基板22の表面に本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器24を形成する。
工程2:活性エネルギー線を共振器24の側面の所定の範囲25に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる。
工程3:めっき処理を行い、活性化された共振器24の表面(所定の範囲25)に金属を堆積して回路26を形成する。
【0150】
工程1においては、所定の成形方法により、基板22の表面に、本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる柱状の共振器24を形成する(図2(a))。柱状の共振器24を別途形成した後に、基板上に搭載してもよい。
【0151】
工程2においては、活性エネルギー線を共振器24の側面の所定の範囲に照射し、金属が堆積可能な状態に活性化させる(図2(b))。本実施形態においては、基板22表面に本実施形態のLDS用熱硬化性樹脂組成物の硬化物層を形成することが好ましい。これにより、共振器24の側面の所定の範囲と基板22上の所望の範囲とを含む領域25を金属が堆積可能な状態に活性化させることができる。
【0152】
工程3において、活性化された領域25の表面に金属を堆積して金属層26を形成する(図2(c))。
【0153】
本実施形態における樹脂成形品は、三次元成形回路部品に用いることもできる。
三次元成形回路部品(MOLDED INTERCONNECT DEVICE(以下、「MID」と呼称する))は、三次元形状、上記樹脂成形品、三次元回路の3要素を有するものであり、例えば、三次元構造の樹脂成形品の表面に金属膜で回路形成された部品である。具体的には、上記三次元成形回路部品は、例えば、三次元構造を有する樹脂成形品と、この樹脂成形品の表面に形成された三次元回路と、を備えることができる。このような三次元成形回路部品(MID)を使用することにより、空間を有効活用でき、部品点数の削減や軽薄短小化が可能である。
【0154】
本実施形態のLDSとは、MIDの製造方法の一つであり、活性エネルギー線により、LDS添加剤を含有する熱硬化性樹脂組成物の硬化物(三次元構造の樹脂成形品)の表面に金属核を生成し、その金属核をシードとして、例えば無電解めっき処理等により、エネルギー線照射領域にめっきパターン(配線)を形成することができる。
【0155】
本実施形態において、MIDの製造工程は、LDSに用いる熱硬化性樹脂組成物の作製、この熱硬化性樹脂組成物の成形、得られた樹脂成形品に対する活性エネルギー線の照射、及びめっき処理による回路形成を含むことができる。なお、めっき処理前に表面洗浄工程を追加してもよい。
【0156】
本実施形態において活性エネルギー線としては、例えば、レーザーを用いることができる。レーザーは、例えば、YAGレーザー、エキシマレーザー、電磁線等の公知のレーザーから適宜選択することができ、YGAレーザーが好ましい。また、レーザーの波長も特に定めるものではないが、例えば、200nm~12000nmである。この中でも、好ましくは248nm、308nm、355nm、532nm、1064nmまたは10600nmを使用してもよい。
【0157】
上記めっき処理としては、電界めっきまたは無電解メッキのいずれを用いてもよい。上述のレーザーが照射された領域に、めっき処理を施すことにより、回路(めっき層)を形成することができる。めっき液としては、特に定めるものではなく、公知のめっき液を広く採用することができ、金属成分として銅、ニッケル、金、銀、パラジウムが混合されているめっき液を用いてもよい。
【0158】
本実施形態において、上記樹脂成形品(熱硬化性樹脂組成物の硬化物)は、最終製品に限らず、複合材料や各種部品も含むことができる。上記樹脂成形品は、携帯電子機器、車両および医療機器の部品や、その他の電気回路を含む電子部品、半導体封止材ならびに、これらを形成するための複合材料として用いることができる。また、上記MIDとしては、携帯電話やスマートフォンの内臓アンテナ、車載アンテナ、センサー、半導体装置に適用することもできる。本発明の効果の観点から、上記MIDは、携帯電話やスマートフォンの内臓アンテナ、車載アンテナ等に好適に用いることができる。
【0159】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0160】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に、実施例、比較例で用いた成分を示す。
【0161】
(無機充填材)
・シリカ:非晶質シリカ/結晶質シリカ(MUF-4V、龍森社製、平均粒子径=3.8μm)
・アルミナ1:アルミナ(DAB-45SI、電気化学工業社製、平均粒子径=17μm)
・アルミナ2:アルミナ(AX3-20R、株式会社マイクロン製、平均粒子径=4μm)
・高誘電率充填剤1:チタン酸バリウム(平均粒子径2μm)
・高誘電率充填剤2:チタン酸ストロンチウム(平均粒子径1.6μm)
・高誘電率充填剤3:チタン酸カルシウム(平均粒子径 2.0μm)
・高誘電率充填剤4:チタン酸マグネシウム(平均粒子径 0.5μm)
【0162】
(LDS添加剤)
・クロム酸銅(CuCrO):Black3702、アサヒ化成工業社製
【0163】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF-4083)
・カップリング剤2:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S510、チッソ社製)
【0164】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000、前掲の一般式(BP1)で表される構造単位含有)
・エポキシ樹脂2:トリフェニルメタン構造を含むエポキシ樹脂(三菱ケミカル製、jER1032H60、23℃で固形、前掲の一般式(a1)で表される構造単位含有
・エポキシ樹脂3:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YX4000K)
【0165】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS)
・硬化剤2:2-ヒドロキシベンズアルデヒドとホルムアルデヒドとフェノールの反応生成物(エア・ウォーター社製、HE910-20)
・硬化剤3:下記調製方法で調製した活性エステル樹脂
(活性エステル樹脂の調製方法)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3-ベンゼンジカルボン酸ジクロリド203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂を得た。得られた活性エステル樹脂の構造を確認したところ、上述の式(1-3)においてR及びRが水素原子、Zがナフチル基、lが0の構造を有していた。活性エステル樹脂の繰り返し単位の平均値kは、反応等量比から算出したところ0.5~1.0の範囲であった。得られた活性エステル樹脂は具体的に以下の化学式で表される構造を有していた。下記式中、繰り返し単位の平均値kは0.5~1.0であった。
【化18】
【0166】
[硬化触媒]
・硬化触媒1:テトラフェニルフォスフォニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート
・硬化触媒2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
【0167】
(離型剤)
・離型剤1:グリセリントリモンタン酸エステル(製品名:リコルブWE-4、クラリアントジャパン社製)
【0168】
(低応力剤)
・低応力剤1:カルボキシル基末端ブタジエンアクリルゴム(製品名:CTBN1008SP、宇部興産社製)
【0169】
[実施例1~9、比較例1~3]
下記の表1に示す配合量の各原材料を、常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して、粉粒状の熱硬化性樹脂組成物を得た。次いで、高圧で打錠成形することによってタブレット状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0170】
(スパイラルフロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機(株)製「KTS-15」)を用いて、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用の金型に金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で、実施例および比較例で得られた樹脂組成物を注入し、流動長を測定した。
【0171】
(誘電率(Dk)・誘電正接(Df))
実施例1~9、比較例1~3の熱硬化性樹脂組成物をタブレット状に打錠したのち、持ち出し金型を用いたトランスファー成型を行い、φ50mmの硬化物を得た。
得られた硬化物について、JIS C2565に準じ10GHzでの誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)をQメーターで測定した。
【0172】
(メッキ性)
各例で得られた樹脂組成物を175℃の条件で成形硬化し硬化物を得た。得られた硬化物の表面に、YAGレーザーを照射し、そのレーザー照射領域におけるメッキ付き性について、以下の判断基準で評価した。
○:めっき表面にムラなし
△:めっき表面にムラが見えるがめっき未着部分はなし
×:めっき表面にひどいムラが見えめっき未着部あり
【0173】
【表1】
【0174】
表1に記載のように、本発明のLDS用熱硬化性樹脂組成物によれば、高誘電率および低誘電正接等の誘電特性に優れ、かつメッキ層の形成にも優れた硬化物を得ることができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0175】
12 金属基板
14 誘電体基板
14a 所定の範囲
15 貫通孔
16 導体パターン
18 ビア
22 基板
24 誘電体共振素子
25 所定の範囲
26 金属層
図1
図2