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特開2024-21203温度測定装置、プログラム、及び、温度測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021203
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】温度測定装置、プログラム、及び、温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 3/04 20060101AFI20240208BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20240208BHJP
【FI】
G01K3/04
G01K7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123885
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】池山 友悠
(72)【発明者】
【氏名】村上 和隆
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056EM05
(57)【要約】
【課題】筐体に回路とともに収容された温度センサにより部品の温度を測定するときの測定精度を良くする。
【解決手段】温度測定装置10は、自身が備える端子17Aの温度を測定する温度測定装置10であって、筐体11と、筐体11内に配置された電源回路12等と、筐体11内に配置され、端子温度に応じた値をセンサ出力値として出力する端子温度センサ18と、を備える。温度測定装置10は、前記のセンサ出力値に基づいて端子温度を導出する端子温度導出部15BAと、温度導出部15BAにより導出された端子温度を、電源回路12等の動作状態に応じて補正する端子温度補正部15BBと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、
筐体と、
前記筐体内に配置された回路と、
前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、
前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出部と、
前記温度導出部により導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正部と、
を備える温度測定装置。
【請求項2】
前記温度導出部は、前記温度センサから順次出力される各センサ出力値に基づいて前記部品の温度を順次導出し、
前記温度補正部は、前記動作状態が変化したタイミング以降に順次導出される前記温度を、前記タイミングからの経過時間に応じて異なる補正値によりそれぞれ補正する、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記回路は、電源回路を含み、
前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記温度測定装置の電源がオンして前記電源回路が動作開始する開始タイミングである、
請求項2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記回路は、操作端を駆動する駆動回路を含み、
前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記駆動回路の動作状態が変化したタイミングである、
請求項2又は3に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記部品は、熱電対が接続された端子であり、
前記部品の温度は、基準接点の温度として使用される前記端子の端子温度である、
請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項6】
自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、を備える温度測定装置を制御するコンピュータに、
前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出ステップと、
前記温度導出ステップにより導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項7】
自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、を備える温度測定装置により行う温度測定方法であって、
前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出ステップと、
前記温度導出ステップにより導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正ステップと、
を備える温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置、プログラム、及び、温度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置として、例えば、熱電対を用いた温度計又は温度調節器(特許文献1)が知られている。このような温度測定装置では、筐体に収容された温度センサにより、熱電対が接続された、前記部品としての端子の温度が基準接点の温度として測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-107089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筐体内に設けられた温度センサにより、端子などの部品の温度を測定する場合、当該温度センサが同じ筐体内の回路の発熱の影響を受けての温度を正確に測定できないことがある。このようなことは、上記特許文献1で考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、筐体に回路とともに収容された温度センサにより部品の温度を測定するときの測定精度を良くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る温度測定装置は、自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出部と、前記温度導出部により導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正部と、を備える。
【0007】
一例として、前記温度導出部は、前記温度センサから順次出力される各センサ出力値に基づいて前記部品の温度を順次導出し、前記温度補正部は、前記動作状態が変化したタイミング以降に順次導出される前記温度を、前記タイミングからの経過時間に応じて異なる補正値によりそれぞれ補正する。
【0008】
一例として、前記回路は、電源回路を含み、前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記温度測定装置の電源がオンして前記電源回路が動作開始する開始タイミングである。
【0009】
一例として、前記回路は、操作端を駆動する駆動回路を含み、前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記駆動回路の動作状態が変化したタイミングである。
【0010】
一例として、前記部品は、熱電対が接続された端子であり、前記部品の温度は、基準接点の温度として使用される前記端子の端子温度である。
【0011】
本発明に係るプログラムは、自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、を備える温度測定装置を制御するコンピュータに、前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出ステップと、前記温度導出ステップにより導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正ステップと、を実行させる。
【0012】
本発明に係る残り温度測定方法は、自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置であって、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、を備える温度測定装置により行う温度測定方法であって、前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出ステップと、前記温度導出ステップにより導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筐体に回路とともに収容された温度センサにより部品の温度を測定するときの測定精度を良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る温度測定装置の構成図である。
図2図2は、図1の制御回路の構成図である。
図3図3は、平衡状態時の実端子温度、センサ温度、導出端子温度の関係を示す図である。
図4図4は、補正処理のフローチャートである。
図5図5は、第1補正テーブルの構成例を示す図である。
図6図6は、電源オン時の実端子温度、センサ温度、導出端子温度、補正値、補正後の端子温度の関係を示す図である。
図7図7は、操作端オン時の実端子温度、センサ温度、導出端子温度、補正値、補正後の端子温度の関係を示す図である。
図8図8は、操作端オフ時の実端子温度、センサ温度、導出端子温度、補正値、補正後の端子温度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態及びその変形例について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る温度測定装置10は、制御対象の温度を制御する制御機器(温度調節器、PLC(Programmable Logic Controller)など)として構成されている。制御機器としての温度測定装置10は、制御対象の温度を熱電対91により測定し、測定した当該温度と目標温度との偏差に応じてヒータからなる操作端92をオンオフ制御することで制御対象の温度をフィードバック制御する機能も備える。温度測定装置10は、熱電対91の温度測定の前提として、熱電対91が接続された端子17Aの温度である端子温度を、筐体11に収容されている端子温度センサ18により、基準接点の温度として測定する。
【0017】
温度測定装置10は、筐体11と、電源回路12と、熱電対入力回路13と、端子温度センサ入力回路14と、制御回路15と、操作端駆動回路16と、端子17A及び17Bと、端子温度センサ18と、通信部21と、表示部22と、を備える。
【0018】
筐体11は、箱状に設けられ、各種回路12~16及び端子温度センサ18を収容している。換言すると、各種回路12~16及び端子温度センサ18は、筐体11の内部空間に配置されている。端子17A及び17B、通信部21、及び、表示部22のそれぞれは、一部が筐体11から露出した状態で配置される。端子17Aは、熱電対91が接続される部分が筐体11から筐体11の外側に向かって露出し、端子温度センサ18により温度測定される側の部分が筐体11の前記内部空間に面するか前記内部空間内に入り込んだ状態で配置されている。
【0019】
電源回路12は、外部電源からの交流電力を直流電力に変換する。電源回路12は、変換した直流電力を各種回路12~16、通信部21、及び、表示部22に供給し、これらを動作させる。
【0020】
熱電対入力回路13は、端子17Aを介して、熱電対91に接続されている。熱電対入力回路13には、熱電対91から、制御対象の温度に応じた電気信号が入力される。この電気信号は、熱電対91に設けられ制御対象に接する測温接点の温度と、基準接点の温度と、の温度差により生じる起電力からなる。基準接点の温度は、端子17Aの温度である端子温度である。熱電対入力回路13は、入力された熱電対91からの電気信号を、アナログ・デジタル変換して制御回路15に入力する。
【0021】
端子温度センサ入力回路14は、端子17Aの端子温度の測定に使用される端子温度センサ18に接続されている。端子温度センサ18は、端子17Aに直接接するか、端子17Aに接続された回路基板の所定箇所などに接して配置される。端子温度センサ18は、自身の温度であるセンサ温度に応じて、自身の抵抗値であるセンサ抵抗値が変化する測温抵抗体からなる。ここで、センサ温度は、端子17Aの端子温度の影響を受けて増減するので、端子温度センサ18の抵抗値は、端子温度に応じて変化する。この抵抗値は端子温度センサ18のセンサ出力値として電気信号(ここでは電圧信号)のかたちで端子温度センサ入力回路14に入力される。端子温度センサ入力回路14は、入力されたセンサ出力値を、アナログ・デジタル変換して制御回路15に入力する。
【0022】
制御回路15は、制御対象の温度をフィードバック制御する処理を行うように構成されている。制御回路15は、電圧導出部15A、端子温度導出部15BA、端子温度補正部15BB、制御対象温度導出部15C、及び、フィードバック演算部15Dを備える。制御回路15は、後述の各種データを記憶する記憶部15Mも備える。
【0023】
制御回路15は、マイクロコンピュータなどの各種コンピュータからなる。図2に示すように、制御回路15は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ15X、プロセッサ15Xのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)15Y、及び、プロセッサ15Xにより実行又は使用されるプログラム及び各種データを記憶する不揮発性の記憶装置15Zを備える。プロセッサ15Xがプログラムを実行することで、図1の上記各部15A~15Dとして動作する。図1の記憶部15Mは、図2のRAM15Y、及び、記憶装置15Zからなる。
【0024】
図1を再び参照し、電圧導出部15Aは、熱電対入力回路13からの電気信号に基づいて、測温接点の温度と、基準接点の温度との温度差により生じる起電力の電圧値を導出する。
【0025】
端子温度導出部15BAは、端子温度センサ入力回路14からのセンサ出力値(端子温度センサ18の抵抗値)に基づいて、端子17Aの端子温度を導出する。
【0026】
端子温度補正部15BBは、端子温度導出部15BAにより導出された端子温度に対して適宜補正を行う。
【0027】
端子温度の導出及び補正の詳細については後述するが、前記の補正により、端子温度が精度良く測定される。端子温度は、以下、熱電対91による温度測定の際の基準接点の温度として使用される。
【0028】
制御対象温度導出部15Cは、電圧導出部15Aが導出した電圧値から温度差を導出し、当該温度差と、端子温度導出部15BAが導出し、端子温度導出部15BAが適宜補正した基準接点の温度としての端子温度と、に基づいて、制御対象の温度を導出する。制御対象温度導出部15Cは、基準接点の温度に温度差を加算することで、制御対象の温度を導出する。制御対象温度導出部15Cは、表示部22に、導出した制御対象の温度を測定温度として表示してもよい。
【0029】
フィードバック演算部15Dは、制御対象温度導出部15Cが導出した制御対象の温度と、当該温度の目標値である目標温度とを比較し、両者の偏差から操作端92をオンまたはオフする指令を操作端駆動回路16に供給する。目標温度は、上位装置などから通信モジュールからなる通信部21を介して供給され、記憶部15Mに格納され参照される。
【0030】
操作端駆動回路16は、端子17Bを介して操作端92に接続されており、フィードバック演算部15Dからの指令に従って操作端92をオンまたはオフする。
【0031】
以上のような構成により、制御対象の温度のフィードバック制御が実現される。
【0032】
ここで、端子温度導出部15BA及び端子温度補正部15BBによる端子17Aの端子温度の導出及び補正について詳細に説明する。
【0033】
この実施の形態では、筐体11に収容された電源回路12及び操作端駆動回路16が、自身の動作状況により発熱することがある。この発熱は、端子温度センサ18のセンサ温度及び端子17Aの端子温度に影響を及ぼす。特に、端子温度導出部15BAで導出される端子温度と、実際の端子温度とにズレが生じることがある。この実施の形態では、端子温度の測定精度向上のため、導出後の端子温度に対して補正が行われる。なお、以下の説明では、実際の端子温度を「実端子温度」ともいい、端子温度導出部15BAで導出された端子温度を「導出端子温度」ともいう。
【0034】
端子温度導出部15Bは、端子温度センサ18のセンサ出力値とセンサ温度との関係を示すテーブルまたは式により、端子温度センサ入力回路14から入力される端子温度センサ18のセンサ出力値(抵抗値)のときのセンサ温度を導出する。前記のテーブルまたは式は、記憶部15Mに予め用意される。導出されたセンサ温度は、精度が高く、実際のセンサ温度と同じとみてよい。センサ温度は、端子17Aの実端子温度により増減するが、筐体11内の電源回路12及び駆動回路16の少なくともいずれかの動作に伴う発熱によっても増減する。このため、センサ温度と実端子温度とは互いに異なることがある。具体的に、温度測定装置10の動作が安定しているとき、端子17Aの実端子温度、センサ温度、電源回路12の温度、駆動回路16の温度など、つまり、筐体11内の温度分布は平衡状態となるが、このときのセンサ温度は、図3に示すように、実端子温度よりも2℃高くなる。これは、端子温度センサ18が、端子17Aよりも熱源となる回路12及び16の近くに配置され、回路12及び16からの熱的影響を端子17Aよりも受けやすいからである。端子温度導出部15Bは、前記の平衡状態を前提としてセンサ温度を2℃分減じることで、端子温度(図3では、28℃の導出端子温度)を導出する。
【0035】
他方、筐体11内の温度分布が平衡状態となっていないときは、センサ温度が実端子温度よりも2℃高いとは限らず、端子温度導出部15BAが、常時センサ温度を2℃減じてしまうと、導出端子温度は実端子温度と異なってしまう(図6などを参照)。そこで、本実施形態では、端子温度補正部15BBが、筐体11内の温度分布が非平衡状態のときに、導出端子温度を補正する。
【0036】
端子温度補正部15BBは、例えば、図4に示す補正処理を実行することにより、導出端子温度を補正する。図4の補正処理は、温度測定装置10が電源オンになったときに開始される。電源オンの前は、電源回路12及び駆動回路16が動作せず発熱していない。このような場合、端子17Aの実端子温度と、端子温度センサ18Bのセンサ温度とは、同じ温度である。
【0037】
温度測定装置10の電源がオンとなったとき、温度測定装置10が動作(端子温度の導出も含む)を開始する。電源のオンにより、電源回路12が動作開始し、端子温度補正部15BBも動作開始し図4の補正処理を開始する。ここで、熱電対91を用いた制御対象の温度測定は、一定期間(ここでは1秒とする)ごとに順次行われる。従って、端子温度導出部15BAでは、一定期間ごとに端子温度センサ18から順次出力されるセンサ出力値に基づいて導出端子温度が順次導出され、導出された各導出端子温度は、端子温度補正部15BBに順次入力されるものとする。
【0038】
図4の補正処理において、端子温度補正部15BBは、まず、電源回路12の動作開始による発熱に対処するための電源オン時の補正処理を実行する(ステップS11)。この補正処理では、記憶部15Mに予め用意された図5に示す第1補正テーブルが参照される。第1補正テーブルでは、電源オンから上記一定期間(1秒)を単位とする経過時間nに対応づけられて補正値が規定されている。端子温度補正部15BBは、電源オンから経過時間n経過後の導出端子温度を、この経過時間nに対応する補正値により下記の式(1)により補正する。ここで、Tnは、経過時間nの時の導出端子温度、Anは、経過時間nの時の補正値、Tは、補正後の端子温度である。
T=Tn+An・・・(1)
【0039】
図6に、電源オン時の各温度の関係を示す。図6に示すように、電源オンのタイミング(経過時間n=0分)では、実端子温度とセンサ温度とは同じである。この場合、端子温度導出部15BAでセンサ温度から減じられる2℃を吸収するため、補正値は+2℃となっている。電源回路12は、動作開始時により多くの電力を消費して温度上昇し、その後徐々に動作が安定して温度も一定となり、筐体11内の温度分布は平衡状態となる。このような温度変化に伴って、実端子温度及びセンサ温度は、徐々に平衡状態に近づき、補正値も徐々に小さくなる。ここで、補正値は正の値をとる。その後、経過時間n=20分以降は、筐体11内の温度分布が平衡状態となって補正値は0℃となる。図5に示すように、第1補正テーブルは、前記平衡状態となる経過時間n=20分の前までの補正値を規定している。端子温度補正部15BBは、第1補正テーブルを参照し、第1補正テーブルで規定されている経過時間nまで補正を行うと、ステップS11の処理つまり補正を終了する。
【0040】
その後、端子温度補正部15BBは、操作端92がオンとなるかを監視する(ステップS12)。例えば、端子温度補正部15BBは、フィードバック演算部15Dが操作端駆動回路16に供給する操作端92をオンまたはオフする指令を監視し、オンする指令があったときに、操作端92がオンとなると判別する(ステップS12;Yes)。操作端92がオンとなる場合、操作端駆動回路16が操作端92で電流を供給することになり、電流が流れる操作端駆動回路16は発熱する。この場合、端子温度補正部15BBは、操作端駆動回路16に対処するため操作端92オン時の補正処理を実行する(ステップS13)。この補正処理では、記憶部15Mに予め用意された第2補正テーブルが参照される。第2補正テーブルでは、操作端のオン時から上記一定期間(1秒)を単位とする経過時間nに対応づけられて補正値が規定されている。端子温度補正部15BBは、操作端のオン時から経過時間n経過後の導出端子温度を、この経過時間nに対応する補正値により上記の式(1)により補正する。
【0041】
図7に、操作端のオン時の各温度の関係を示す。図7に示すように、操作端オン時の当初、実端子温度とセンサ温度とは平衡状態となっている(経過時間n=0分)。この場合、補正値は0℃となっている。その後、操作端駆動回路16の発熱が進むと、実端子温度及びセンサ温度は、平衡状態から乖離していくため、センサ温度には負の補正値が加算される。当該負の補正値の絶対値は、時間の経過に伴って徐々に大きくなる。その後、経過時間n=15分以降は、温度上昇がなく、補正値は-1.5℃で固定され、操作端がオフとなるまで、補正が継続される。
【0042】
その後、端子温度補正部15BBは、操作端92がオフとなるかを監視する(ステップS14)。例えば、端子温度補正部15BBは、フィードバック演算部15Dからオフの指令があったときに、操作端92がオフとなると判別する(ステップS14;Yes)。この場合、端子温度補正部15BBは、操作端駆動回路16の発熱の終了に対処するため操作端92オフ時の補正処理を実行する(ステップS15)。この補正処理では、記憶部15Mに予め用意された第3補正テーブルが参照される。第3補正テーブルでは、操作端のオフ時から上記一定期間(例えば、1秒)を単位とする経過時間nに対応づけられて補正値が規定されている。端子温度補正部15BBは、操作端のオフ時から経過時間n経過後の導出端子温度を、この経過時間nに対応する補正値により上記の式(1)により補正する。
【0043】
図8に、操作端のオフ時の各温度の関係を示す。図8に示すように、操作端オフ時の当初、実端子温度とセンサ温度とは操作端オン時と同じとなっている(経過時間n=0分参照)。この場合、補正値は-1.5℃となっている。その後、操作端オフにより操作端駆動回路16の発熱が止むと、実端子温度及びセンサ温度は、平衡状態のときの温度に徐々に近づき、経過時間n=10分以降、平衡状態となる。当該負の補正値の絶対値は、時間の経過に伴って徐々に小さくなる。その後、経過時間n=10分以降は、補正がされなくなる。補正の終了後は、ステップS12の処理が再度行われる。
【0044】
第1補正テーブルから第3補正テーブルは、温度調節器としての温度測定装置10の設計段階でシミュレーション又は実験などにより求められ、温度測定装置10に製造時に記憶されればよい。なお、同機種については、共通の補正テーブルが設定されてもよい。電源オンのあと実端子温度の補正を行っている期間に操作端のオンがあった場合などは、複数の補正テーブルが同時に参照されて適宜の式などにより補正が行われてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、筐体11に収容された端子温度センサ18からの端子17Aの端子温度に応じた抵抗値であるセンサ出力値に基づいて端子温度が導出される。さらに、この端子温度が、電源回路12又は操作端駆動回路16といった回路の動作状態に応じて補正される。これにより、筐体11内の回路の動作状態に応じて生じる発熱による端子温度への影響分が補正されるので、端子温度が精度よく測定される。そして、これにより、端子温度を基準接点の温度とした熱電対91を用いた制御対象の温度測定の精度も向上する。
【0046】
さらにこの実施の形態では、順次導出される導出端子温度が、電源オンによる電源回路12の動作開始から又は操作端駆動回路16による操作端オンの開始のための動作開始からの経過時間など、各回路の動作状態が変化してからの経過時間に応じて異なる補正値により補正される。従って、精度の良い補正が実現され、端子温度が精度よく測定される。
【0047】
さらに、この実施の形態では、温度測定装置10の電源がオンして電源回路12が動作開始する開始タイミング以降に順次導出される端子温度に、前記の開始タイミングからの時間の経過に伴って徐々に小さくなる正の補正値がそれぞれ加算される補正が順次行われる。これにより、電源オン時の筐体11内の温度の変化に応じた補正が行われ、端子温度が精度よく測定される。
【0048】
さらに、この実施の形態では、操作端駆動回路16が操作端92の駆動を開始する開始タイミング以降に順次導出される端子温度に、前記の開始タイミングからの時間の経過に伴って徐々に絶対値が大きくなる負の補正値がそれぞれ加算される補正が順次行われる。これにより、操作端92の駆動時の筐体11内の温度の変化に応じた補正が行われ、端子温度が精度よく測定される。なお、上記駆動は、操作端92のオン以外の駆動であってもよい。例えば、操作端92がバルブである場合のバルブの開度制御ための駆動であってもよい。
【0049】
(変形例)
上記実施の形態の構成は、任意に変更可能である。以下変形例を例示する。各変形例は、少なくとも一部同士組み合わせることもできる。
【0050】
(変形例1)
筐体11内の各構成要素の配置などにより、前記の平衡状態において、センサ温度と端子温度とが同じとなってもよく、この場合にはセンサ温度=端子温度として端子温度が導出される。
【0051】
(変形例2)
制御回路15も動作状態に応じて発熱する場合、制御回路15の状態に応じて導出端子温度の補正が行われてもよい。上記第1~第3補正テーブルの補正値は、制御回路15の発熱が反映された補正値としてもよい。例えば、操作端92の駆動制御時に制御回路15が発熱する場合、第2及び第3補正テーブルの補正値は、制御回路15の発熱も反映された値とするとよい。また、温度測定装置10の起動時に初期設定などにより制御回路15が発熱する場合、第1補正テーブルの補正値は、制御回路15の発熱も反映された値とするとよい。このように、導出端子温度の補正は、複数の回路の発熱温度が反映された補正値により行われてもよい。導出端子温度の補正は、複数の回路の少なくともいずれかの動作状態に応じて行われればよい。
【0052】
(変形例3)
導出端子温度の補正で使用される補正値は、回路の発熱以外の補正要因も加味された値として設定されてもよい。補正値は、補正テーブルの代わりに所定の式により導出されてもよい。
【0053】
(変形例4)
温度測定装置10のハードウェア構成は任意である。操作端駆動回路16は、リレー回路などを含んでもよい。リレー回路の動作状態であるリレー出力が、NO(ノーマリーオープン)からNC(ノーマリークローズ)に変化したときに、上記補正が行われてもよい。制御回路15の少なくとも一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及び、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの各種の論理回路から構成されてもよい。温度測定装置10は、その構成要素が一つの筐体にまとめられた装置の他、その構成要素が複数の筐体に分散して収容されたシステムを含む。端子温度センサ18は、測温抵抗体以外のセンサにより構成されてもよい。なお、端子温度導出部15BAと端子温度補正部15BBとがプログラムを実行するプロセッサ15Xからなる場合、当該プログラム及びテーブルを従来の制御機器に適用することで、端子温度の補正が可能となる。端子温度導出部15BAと端子温度補正部15BBは、温度測定装置10を制御する外部のコンピュータがプログラムを実行することで実現されてもよい。プロセッサ15Xにより実行されるプログラムは、例えば、コンピュータが読み取り可能な非一時的な(つまり、不揮発性の)記憶媒体に記憶されればよい。
【0054】
(温度測定装置の構成)
本発明は、自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置全般に適用可能である。以下、温度測定装置の構成例を列挙する。
【0055】
自身が備える部品の温度を測定する温度測定装置は、筐体と、前記筐体内に配置された回路と、前記筐体内に配置され、前記部品の温度に応じた値をセンサ出力値として出力する温度センサと、前記センサ出力値に基づいて前記部品の温度を導出する温度導出部と、前記温度導出部により導出された前記部品の温度を、前記回路の動作状態に応じて補正する温度補正部と、を備える。前記の回路は、電源回路12、制御回路15、操作端駆動回路16などの複数の回路の集合として捉えてもよい。前記の部品は、その少なくとも一部が筐体内の空間に面するか当該空間に入り込んだ状態で設置されたものであるとよい。
【0056】
前記温度導出部は、前記温度センサから順次出力される各センサ出力値に基づいて前記部品の温度を順次導出し、前記温度補正部は、前記動作状態が変化したタイミング以降に順次導出される前記温度を、前記タイミングからの経過時間に応じて異なる補正値によりそれぞれ補正する。なお、補正値は、前記のタイミングから一定期間経過後、一定としてもよい。また、補正値は、最初から一定であってもよい。
【0057】
前記回路は、電源回路を含み、前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記温度測定装置の電源がオンして前記電源回路が動作開始する開始タイミングである。
【0058】
前記回路は、操作端を駆動する駆動回路を含み、前記動作状態が変化した前記タイミングは、前記駆動回路の動作状態が変化したタイミング(例えば、前記駆動回路が前記操作端の駆動を開始する開始タイミング、又は、リレー回路としての前記駆動回路のリレー出力がNOからNCに変化したタイミングなど)である。
【0059】
(本発明の範囲)
以上、実施形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。例えば、本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記実施形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。上記実施形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
10…温度測定装置(制御機器)、11…筐体、12…電源回路、13…熱電対入力回路、14…端子温度センサ入力回路、15…制御回路、15A…電圧導出部、15BA…端子温度導出部、15BB…端子温度補正部、15C…制御対象温度導出部、15D…フィードバック演算部、15M…記憶部、15X…プロセッサ、15Y…RAM、15Z…記憶装置、16…操作端駆動回路、17A,17B…端子、18…端子温度センサ、21…通信部、22…表示部、91…熱電対、92…操作端。
図1
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図8