(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021212
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/22 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B01D53/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123903
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(72)【発明者】
【氏名】水上 貴彰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 晋士
(72)【発明者】
【氏名】可児 祐子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 秀宏
(72)【発明者】
【氏名】矢敷 達朗
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 良平
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA52Z
4D006JA55Z
4D006JA63Z
4D006JA65Z
4D006KA16
4D006KE01Q
4D006KE02P
4D006KE03P
4D006KE07P
4D006KE08P
4D006KE08Q
4D006KE12P
4D006KE13P
4D006MC03
4D006MC05
4D006MC58
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB64
4D006PB66
4D006PB68
(57)【要約】
【課題】ガス分離装置において、二次側に供給される特定ガスの流量を増大させる。
【解決手段】特定ガスを選択的に透過するガス分離膜を有し、ガス分離膜により一次側と二次側とに隔てられているガス分離膜モジュールを備えるガス分離装置であって、ガス分離膜モジュールには、特定ガスを含む混合ガスを一次側に供給する混合ガス配管と、一次側に接続された非透過ガス配管と、二次側に接続された透過ガス配管と、が設けられ、混合ガス配管と二次側とを接続する分岐配管、又は非透過ガス配管と二次側とを接続する非透過ガス戻り配管を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定ガスを選択的に透過するガス分離膜を有し、前記ガス分離膜により一次側と二次側とに隔てられているガス分離膜モジュールを備え、
前記ガス分離膜モジュールには、
特定ガスを含む混合ガスを前記一次側に供給する混合ガス配管と、
前記一次側に接続された非透過ガス配管と、
前記二次側に接続された透過ガス配管と、が設けられ、
前記混合ガス配管と前記二次側とを接続する分岐配管、又は前記非透過ガス配管と前記二次側とを接続する非透過ガス戻り配管を有する、ガス分離装置。
【請求項2】
前記分岐配管又は前記非透過ガス戻り配管には、ガス流量調整弁が設けられている、請求項1記載のガス分離装置。
【請求項3】
制御部を更に備え、
前記透過ガス配管には、特定ガス濃度検出部が設けられ、
前記制御部は、前記特定ガス濃度検出部が検出した特定ガスの濃度に基づいて、前記混合ガス配管、前記分岐配管及び前記非透過ガス戻り配管のうち少なくとも一つを流れるガスの流量を調整する、請求項2記載のガス分離装置。
【請求項4】
制御部を更に備え、
前記混合ガス配管には、一次側流量検出部、一次側圧力検出部及び一次側特定ガス濃度検出部のうちの少なくとも一つを含む一次側検出部が設けられ、
前記制御部は、前記一次側検出部が検出した一次側流量、一次側圧力及び一次側特定ガス濃度のうち少なくともいずれか一つのデータを用いて、前記分岐配管又は前記非透過ガス戻り配管を流れるガスの流量を調整する、請求項1記載のガス分離装置。
【請求項5】
制御部を更に備え、
前記透過ガス配管には、二次側圧力検出部又は二次側流量検出部が設けられ、
前記制御部は、前記二次側圧力検出部又は前記二次側流量検出部のデータを用いて、前記二次側の圧力を調整する、請求項1記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記透過ガス配管には、減圧機構が設けられている、請求項1記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記特定ガスは、水素であり、
前記混合ガスの他の成分は、天然ガス又は都市ガスである、請求項1記載のガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類のガスを含む混合ガスから特定のガスを分離する方法として、ガスを選択的に透過する分離膜を利用する方法がある。分離膜には、例えば、セラミック膜に代表される分子径の差により分離する分子ふるい膜や、膜へのガスの溶解性の差を利用した高分子膜等がある。これらの分離膜では、透過させたい特定ガス以外も一定量透過する。分離膜を透過させる前を「一次側」、透過させた後を「二次側」と呼ぶ。分離膜のガス透過量は、一次側のガス分圧と二次側のガス分圧との差に比例する。分離したいガスの二次側ガス分圧が上昇すると、一次側ガス分圧との差が小さくなって透過量が減少する。
【0003】
特許文献1には、加圧空気に含まれている水分をポリイミド系中空糸分離膜式の除湿器で除湿して乾燥空気供給系統に供給する方法であって、分離膜の一次側に除湿すべき空気を供給し、得られた乾燥空気の一部をその二次側にパージ空気として供給するものが開示されている。特許文献1では、乾燥空気の一部を二次側に供給することにより、乾燥空気中の酸素濃度を一定の濃度以下にならないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、天然ガス(主成分メタン)、都市ガス等のパイプライン(ガスグリッド)に水素を混ぜて輸送するケースを考える。この場合において、水素の供給源は、例えば太陽光や風力等の再生可能エネルギーから得られる電力等を用いたものである。再生可能エネルギーの出力は安定しないため、供給される水素の量は、時間帯によって異なる。このため、天然ガスと水素との混合ガスから水素を分離する際に水素分離膜を用いる場合、水素分離膜に供給される混合ガスに含まれる水素濃度が変動することになる。また、上流側において混合ガスに含まれる天然ガスを分離して使用する場合、消費される天然ガスや水素の量によって、下流側に供給される混合ガスに含まれる水素の濃度が変動する。
【0006】
特許文献1に記載の乾燥空気供給方法においては、利用対象ガスは、乾燥空気であり、除湿により得られた水分は、利用されることなく外部に排出される。これをガス分離装置に適用した場合、一次側の特定ガスの濃度が変化すると、分離膜を透過する混合ガスに含まれる成分の量がそれぞれ変化するため、非透過ガス中の特定ガスの濃度が変化することに留意する必要がある。
【0007】
特定ガスとして水素を用い、二次側の水素濃度を非透過ガスを用いて希釈して調整する場合、一次側の流量と水素濃度によって非透過ガスの水素濃度が変化することから、希釈ガス中の水素濃度の監視と流量の調整が必要となる。また、水素濃度が変化した希釈ガスを二次側に供給すると、二次側の水素分圧が変化し、混合ガス中の各成分の透過量が変化するため、非透過ガスの水素濃度が変化する。この非透過ガスの水素濃度の変化に対応して、再度希釈ガスの流量を調整することになる。非透過ガスをパージガスとして用いて二次側水素濃度を調整する場合、先述したフィードバックがかかるため、希釈ガスの水素濃度が安定するまでに時間を要する。
【0008】
また、二次側に供給できる水素量は、分離膜を透過した水素と希釈ガスに含まれる水素となる。分離膜を通過した非透過ガスである希釈ガスは、システムの中で最も水素濃度が低くなっており、二次側へ供給可能な希釈ガスに含まれる水素量は少なくなる。
【0009】
そこで、本開示の目的は、ガス分離装置において、二次側に供給される特定ガスの流量を増大させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のガス分離装置は、特定ガスを選択的に透過するガス分離膜を有し、ガス分離膜により一次側と二次側とに隔てられているガス分離膜モジュールを備え、ガス分離膜モジュールには、特定ガスを含む混合ガスを一次側に供給する混合ガス配管と、一次側に接続された非透過ガス配管と、二次側に接続された透過ガス配管と、が設けられ、混合ガス配管と二次側とを接続する分岐配管、又は非透過ガス配管と二次側とを接続する非透過ガス戻り配管を有する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ガス分離装置において、二次側に供給される特定ガスの流量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のガス分離装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】比較例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【
図3】変形例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【
図4】
図1~3の構成で二次側14への水素供給量を計算した例を示すグラフである。
【
図5】分離対象の混合ガスの水素濃度を変化させたときの性能を評価した結果を示すグラフである。
【
図6】第2の実施形態のガス分離装置の例を示す概略構成図である。
【
図7】第2の実施形態に係る変形例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【
図8】第3の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【
図9】第4の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【
図10】第5の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態は、既存の天然ガス等のパイプラインを用いて天然ガスとは異なる特定ガスを供給する場合に、利用者が利用場所において、ガスパイプラインから所望の濃度の特定ガスを利用者に供給するガス分離装置に関する。特定ガスとしては、例えば、水素ガスがある。
【0014】
以下、本開示の一実施形態に係るガス分離装置について図面を用いて説明する。なお、以下においては、混合ガスが天然ガスの主成分であるメタンであってこれに混合する特定ガスが水素である場合について説明するが、本開示のガス分離装置は、このような混合ガスの組成に限定されるものではなく、特定ガス、及び特定ガスを分離した結果として混合ガス側に残った残存ガス(以下の実施形態においては「非透過ガス」と呼ぶ。)が両方とも、装置の外部に放出(排出)又は廃棄をされることなく有効利用される全ての場合に適用されることが望ましい。少なくとも特定ガスは、有効利用されることが望ましい。ここで、有効利用は、「有用」という用語で言い換えることができる。
【0015】
また、混合ガスの他の例としては、発電所、工場等で発生する排ガスが挙げられる。排ガスには、燃焼等により発生する二酸化炭素のほか、窒素、酸素等が含まれる。この場合、少なくとも二酸化炭素が特定ガスとして有効利用される。二酸化炭素は、有機合成における炭素源として有用である。
【0016】
[第1の実施形態]
本実施形態では、水素とメタンとの混合ガスを水素分離膜で水素を二次側へ分離する場合について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のガス分離装置の一例を示す概略構成図である。
【0018】
本図においては、水素分離装置1(ガス分離装置)は、混合ガス主配管2から分岐した混合ガス配管3を通して水素とメタンとの混合ガスの供給を受けるように構成されている。水素分離装置1は、水素分離膜モジュール11(ガス分離膜モジュール)を有する。水素分離膜モジュール11は、水素分離膜12(ガス分離膜)により一次側13と二次側14とに隔てられている。水素分離膜12は、高分子膜のポリイミド膜である。なお、水素分離膜12としては、セラミック系や炭素系のものを用いてもよい。
【0019】
混合ガス配管3は、一次側13に接続されている。一次側13には、非透過ガス配管4が接続されている。二次側14には、透過ガス配管5が接続されている。また、混合ガス配管3には、分岐配管6(希釈ガス配管)が設けられ、二次側14に接続されている。
【0020】
混合ガス配管3には、混合ガス流量調整弁24が設けられている。分岐配管6には、希釈ガス流量調整弁21及び減圧弁22が設けられている。なお、希釈ガス流量調整弁21に減圧作用を兼ねさせて、減圧弁22を省略してもよい。
【0021】
混合ガス主配管2から水素分離装置1の一次側13に供給される混合ガスのうち、主として水素が水素分離膜12を透過する。メタンも、水素分離膜12を透過するが、水素の方がメタンよりも透過しやすい。このため、二次側14は、一次側13に比べ、水素濃度が高くなる。各ガスの透過量は、一次側13と二次側14の各ガスの分圧差に比例する。
【0022】
図2は、比較例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0023】
本図においては、
図1に示す分岐配管6が設けられていない。すなわち、本比較例は、水素濃度が高くなる二次側14の水素の希釈をしない場合である。この場合、希釈ガスを用いない場合、二次側14の水素濃度が高いため、分圧差が小さくなり、水素分離膜12における水素の透過量が少なくなる。
【0024】
図3は、変形例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0025】
本図においては、
図1に示す分岐配管6が設けられていないが、非透過ガス配管4には、非透過ガス戻り配管7が設けられ、二次側14に接続されている。非透過ガス戻り配管7には、希釈ガス流量調整弁121及び減圧弁122が設けられている。なお、希釈ガス流量調整弁121に減圧作用を兼ねさせて、減圧弁122を省略してもよい。このように、本変形例においては、非透過ガスの一部が希釈ガスとして二次側14に供給される。非透過ガスは、水素濃度が低いため、二次側14の水素が希釈され、水素の分圧差が大きくなる。このため、水素分離膜12を透過する水素量が増大する。二次側14に供給される水素量は、水素分離膜12を透過した水素と希釈ガスに含まれる水素との和となる。
【0026】
図1に示す構成では、混合ガス配管3から混合ガスを水素分離膜12の一次側13に供給するとともに、分岐配管6を通して水素分離膜12の二次側14にも混合ガスを希釈ガスとして供給する。混合ガスの水素濃度は、二次側14の水素濃度よりも低いため、二次側14の水素が希釈され、水素の分圧差が大きくなる。このため、水素分離膜12を透過する水素量が増大する。二次側14に供給される水素量は、水素分離膜12を透過した水素と希釈ガスに含まれる水素との和となる。
【0027】
本図に示すガス分離装置は、
図3に示す構成と比較して、希釈ガスの水素濃度が高いため、希釈ガスの流量によって供給できる水素量が多くなることが期待できる。
【0028】
図4は、
図1~3の構成で二次側14への水素供給量を計算した例を示すグラフである。横軸には
図1~3の図番を、縦軸には混合ガス1000に対する二次側水素流量Q
H2(-)をとっている。
【0029】
計算条件は、一次側圧力は1.7MPaG、二次側圧力は0.2MPaG、供給する混合ガスの水素濃度は5%、ポリイミド膜の水素透過速度/メタン透過速度は約300とし、二次側の水素濃度を20%に調整するものとする。
【0030】
本図に示すように、比較例(
図2)、変形例(
図3)、本実施形態(
図1)の順にQ
H2が大きくなっている。
【0031】
具体的には、混合ガス流量調整弁24で混合ガス流量を1000とした場合に、
図2の比較例では、二次側14における流量が2のとき、水素濃度は29%となり、水素透過量は0.6である。一次側13の水素分圧は0.09MPaA、二次側14の水素分圧は0.087MPaAで分圧差は0.003MPaである。水素分離膜モジュール11の外部で透過した二次側14のガスと一次側13の非透過ガスとを混合して水素濃度を20%に調整する。
【0032】
例として、
図2では、非透過ガス配管4で非透過ガスの流量が1.3の場合に、この非透過ガスに透過ガスを混合して水素濃度を20%に調整できる。この場合、調整された水素量の和は0.64である。
【0033】
図3の変形例では、希釈ガスを二次側14に流量31.5で供給すると、水素濃度を20%に調整できる。この場合、二次側14の水素分圧は0.06MPaAで分圧差が0.03MPaとなる。この分圧差は、比較例の10倍である。二次側流量は39.6で、水素濃度は20%である。
【0034】
本変形例においては、水素分離膜12を透過した水素量は6.5で、希釈ガス中に含まれる水素は1.4となり、二次側14の合計の水素流量は7.9となる。よって、本変形例においては、比較例に比べ、約12倍の水素量を得ることができる。
【0035】
図1に示す本実施形態の構成では、水素分離膜モジュール11の上流側の混合ガスを希釈ガスとして二次側14に流量を33として供給すると、水素濃度を20%に調整できる。この場合、二次側14の水素分圧は0.06MPaAで分圧差が0.03MPaとなり、
図3の変形例と同じ分圧差となる。二次側流量は41であり、水素濃度は20%である。水素分離膜12を透過した水素量は6.5で、希釈ガス中に含まれる水素は1.7となり、二次側14の合計の水素流量は8.2となる。
【0036】
よって、
図1の本実施形態の場合、
図2の比較例に比べ、約13倍の水素流量を得ることができる。
図3の変形例と比較しても、水素流量が約4%増加する。
【0037】
なお、二次側14の水素濃度を20%としているため、
図3と同じ分圧差となり、水素分離膜12を透過する水素量は同じであるが、希釈ガスの水素濃度が高く、希釈ガス流量も多いため、希釈ガス中の水素量の差だけ二次側14の水素流量が増加する。二次側14への水素流量が同じであれば、本実施形態の構成は、
図3の変形例と比較して、水素分離膜12の物量を4%削減できる。このため、装置をコンパクトにでき、水素分離膜12に関わるコストを低減できる。
【0038】
図5は、分離対象の混合ガスの水素濃度を変化させたときの性能を評価した結果を示すグラフである。横軸には混合ガスの水素濃度C
H2、縦軸には混合ガス1000に対する二次側水素流量Q
H2をとっている。本実施形態(
図1)を○印及び実線、比較例(
図2)を△印及び点線、変形例(
図3)を●印及び実線で表している。
【0039】
混合ガスの水素濃度C
H2が増加すると、二次側14の水素濃度が上昇する。二次側14の水素濃度を20%で一定に維持するために、希釈ガス流量が増え、二次側水素流量Q
H2が増加する。透過ガスを希釈しない比較例(
図2)の構成では、水素濃度が増加しても、二次側水素濃度も上昇し、水素分圧差の上昇が抑制されるため、二次側水素流量Q
H2が大きく増加しない。一方、透過ガスを希釈すると、水素分圧差が拡大し、水素透過量が多くなる。
【0040】
本実施形態(
図1)のように混合ガスを希釈ガスとして用いる場合、透過ガスを水素濃度20%まで希釈するために必要な希釈ガスの流量は、水素濃度が高いため、変形例(
図3)のように非透過ガスを希釈ガスとして用いる場合よりも多くする必要がある。本実施形態(
図1)の場合、変形例(
図3)と比較して、流量が多く水素濃度も高いことから、希釈ガスに含まれる水素量が多く、水素濃度C
H2が高くなるほど差が顕著となる。この点で、本実施形態(
図1)は、変形例(
図3)に比べ、効果が高い。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、一次側と二次側との特定ガスの分圧差を大きくすることができ、かつ、二次側に供給される特定ガスの流量を増大させることができる。この増大効果をガス分離膜の小型化に利用すれば、ガス分離装置のコスト低減が可能となる。
【0042】
[第2の実施形態]
本実施形態においては、水素濃度計を用いて制御する場合について説明する。
【0043】
図6は、本実施形態のガス分離装置の一例を示す概略構成図である。
【0044】
【0045】
図6においては、
図1の構成に水素濃度計31(水素濃度検出部(「特定ガス濃度検出部」ともいう。))及び制御装置32(制御部)が付加されている。
【0046】
水素濃度計31は、二次側14の水素濃度を測定する。制御装置32は、水素濃度計31のデータを用いて希釈ガス流量調整弁21の開度を調整する。水素濃度計31と制御装置32とは、二次側水素濃度信号ケーブル51により接続されている。希釈ガス流量調整弁21と制御装置32とは、希釈ガス流量調整弁制御信号ケーブル52により接続されている。二次側水素濃度信号ケーブル51及び希釈ガス流量調整弁制御信号ケーブル52により、所定のデータ等の信号の送受信を行う。なお、本図に示すように、これらのケーブルを介して有線でデータ等の送受信を行ってもよいが、これらのケーブルを用いずに無線で送受信を行ってもよい。
【0047】
図7は、変形例のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0048】
【0049】
図7においては、
図3の構成に水素濃度計31及び制御装置32が付加されている。制御装置32は、水素濃度計31のデータを用いて希釈ガス流量調整弁121の開度を調整する。
【0050】
図6のように混合ガスを希釈ガスとして用いることにより、混合ガスの濃度が変化したときの二次側水素濃度の制御が
図7の構成と比較して容易となる。
【0051】
例として、前述の計算条件から、混合ガスの水素濃度が5%から10%に変化した場合において
図6と
図7とでどのように異なるかについて説明する。
【0052】
混合ガスの水素濃度が5%から10%になると、希釈なしのケースで二次側水素濃度が約57%となる。このとき、非透過ガスの水素濃度は4.95%から9.84%に変化する。
【0053】
図7の構成では、最終的に希釈ガスの流量を166にすると二次側水素濃度が目標の20%となるが、このときの非透過ガスの水素濃度は7.58%であり、二次側水素濃度を調整している間に希釈ガスの水素濃度が変化する。この水素濃度の変化に応じて希釈ガス流量を調整する必要がある。また、希釈ガス流量を変えると、非透過ガスの水素濃度が変化する。水素濃度計31の信号を用いて制御装置32により希釈ガス流量調整弁21の開度を調整するが、非透過ガスを希釈ガスとして用いた場合、その流量により希釈ガスの水素濃度にフィードバックがかかり、二次側水素濃度を安定にするまでに時間を要する。
【0054】
一方、
図6に示す本実施形態の構成では、希釈ガスとして混合ガスを用いているため、希釈ガスの水素濃度は、常に混合ガスの水素濃度である。最終的に希釈ガスの流量の値を208として希釈ガスを供給すると、二次側水素濃度が目標の20%となる。二次側水素濃度を調整するには、水素濃度計31で二次側の水素濃度を監視しながら、希釈ガスの流量を制御すればよく、
図7の変形例と比較して、非透過ガスの水素濃度を考慮しなくてよいので、制御アルゴリズムを簡略にすることができる。
【0055】
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0056】
本図においては、第2の実施形態の
図6との相違点を説明する。
【0057】
図8においては、混合ガス配管3に一次側流量計33(一次側流量検出部)、一次側圧力計34(一次側圧力検出部)及び一次側水素濃度計35(一次側水素濃度検出部(「一次側特定ガス濃度検出部」ともいう。))を設けている。なお、これらの3つの検出部は、「一次側検出部」の構成要素である。また、分岐配管6に希釈ガス流量計36(希釈ガス流量検出部)を設けている。これらの計測データはそれぞれ、一次側流量計信号ケーブル53、一次側圧力計信号ケーブル55、一次側水素濃度信号ケーブル56を介して制御装置32に送信されるようになっている。制御装置32は、これらの計測データを用いて、希釈ガス流量を調整するようになっている。水素分離膜12の分離性能については、制御装置32に入力するパラメータに対する所定の値が算出できるようにあらかじめ数表や相関式等の形式で制御装置32の演算部又は記憶部に記憶させておくことが望ましい。
【0058】
例えば、第1の実施形態の計算例のように、一次側圧力1.7MPaG、二次側圧力0.2MPaG、供給する混合ガスの流量1000、水素濃度5%とすると、制御装置32で二次側水素濃度を20%にするための希釈ガス流量の値が33と算出され、希釈ガス流量の値が33となるように希釈ガス流量調整弁21の開度が調整される。次に、水素濃度が10%に変化したときは、希釈ガス流量が208となるように希釈ガス流量調整弁21の開度が調整される。これにより、二次側水素濃度の変化に影響されることなく希釈ガス流量を調整して目標の二次側水素濃度に調整が可能であり、一次側水素濃度の変動に対して短時間で二次側水素濃度を調整することが可能となる。
【0059】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0060】
本図においては、第3の実施形態の
図8との相違点を説明する。
【0061】
本図においては、混合ガス配管3に設けられた混合ガス流量調整弁24に制御装置32から混合ガス流量調整弁制御信号ケーブル60が接続されている。これにより、混合ガス流量調整弁24の開度を制御装置32により調整するようになっている。
【0062】
また、透過ガス配管5には、二次側出口に二次側圧力計37(二次側圧力検出部)、二次側流量計38(二次側流量検出部)及び二次側圧力調整機構23が設けられている。
【0063】
二次側圧力計37は二次側圧力計信号ケーブル57、二次側流量計38は二次側流量計信号ケーブル59、二次側圧力調整機構23は二次側圧力調整弁制御信号ケーブル58により、制御装置32と接続されている。制御装置32は、二次側圧力計37及び二次側流量計38のデータを用いて二次側圧力調整機構23に制御信号を送り、二次側圧力を調整する。なお、混合ガス流量調整弁と二次側圧力調整機構とは、必ずしも併用する必要はなく、二次側圧力計、二次側流量計、二次側圧力調整機構は備えていなくてもよい。
【0064】
混合ガス流量調整弁24の開度を調整することに関しては、次のような状況がある。
【0065】
例えば、日中に太陽光で多くの水素が製造されて一次側13の水素濃度が上昇した場合に、二次側水素濃度が高くなる。目標の水素濃度に希釈するために希釈ガス流量が多くなり、二次側14に送られる水素量が需要よりも多くなる場合が考えられる。水素量が需要よりも多くなる場合には、水素分離膜モジュール11に供給する混合ガス量を減少させて二次側14に送る水素量を増加させる等して水素量を調整することができる。
【0066】
例えば、第1の実施形態の計算例のように、一次側圧力1.7MPaG、二次側圧力0.2MPaG、供給する混合ガスの流量1000、水素濃度5%とすると、二次側水素濃度20%で二次側14への水素供給量は、8.2である。水素濃度が10%に上昇すると、第2の実施形態で試算したとおり、二次側14への水素供給量は47となる。この供給量を水素濃度5%の場合と同じにするには、混合ガス流量調整弁24を絞って混合ガス流量を68にする。これにより、二次側水素濃度20%で水素供給量が8.2となり、混合ガスの水素濃度5%のときと同じ水素供給量とすることができる。
【0067】
また、二次側圧力の調整に関しては、次のような状況がある。
【0068】
例えば、日中に太陽光で多くの水素が製造されて一次側13の水素濃度が上昇した場合に、二次側水素濃度が高くなる。目標の水素濃度に希釈するために希釈ガス流量が多くなり、二次側へ送られる水素量が需要よりも多くなる場合が考えられる。水素量が需要よりも多くなる場合には、二次側14の圧力を上げて一次側13と二次側14の水素分圧差を小さくして水素透過量を減少させる。さらに、二次側水素濃度が低下するため、必要な希釈ガス流量を減少させる。二次側圧力の調整により、二次側14に送る水素量を調整することができる。
【0069】
例えば、第1の実施形態の計算例のように、一次側13圧力1.7MPaG、二次側圧力0.2MPaG、供給する混合ガスの流量1000、水素濃度5%とすると、二次側水素濃度20%で二次側14への水素供給量は8.2である。水素濃度が10%に上昇すると、第2の実施形態で試算したとおり、二次側14への水素供給量は47となる。二次側圧力調整機構23を調整して二次側圧力を0.7MPaGにすると、二次側水素濃度20%で水素供給量が8.2となり、混合ガスの水素濃度5%のときと同じ水素供給量とすることができる。
【0070】
[第5の実施形態]
図10は、第5の実施形態のガス分離装置を示す概略構成図である。
【0071】
本図において
図9と異なる点は、透過ガス配管5にコンプレッサー25(減圧機構)を設置していることである。
【0072】
例えば、第1の実施形態での試算では、水素分離膜12の二次側圧力を0.2MPaGとしているが、コンプレッサー25により二次側14を減圧して水素透過量を増やすとともに、コンプレッサー25の下流側を昇圧して、需要先に必要な圧力とすることができる。例えば、二次側圧力を0.0MPaG(大気圧)とすると、水素透過量は8.2から19.2に増加させることができる。
【0073】
なお、コンプレッサー25は、第1の実施形態から第3の実施形態にも適用することができ、水素透過量を増加させることができる。、同じ水素透過量であれば、水素分離膜12の物量を低減でき、水素分離膜12に関わるコストを削減できる。
【0074】
以下、本開示に係るガス分離装置の望ましい実施形態についてまとめて説明する。
【0075】
分岐配管又は非透過ガス戻り配管には、ガス流量調整弁が設けられている。
【0076】
ガス分離装置は、制御部を更に備え、透過ガス配管には、特定ガス濃度検出部が設けられ、制御部は、特定ガス濃度検出部が検出した特定ガスの濃度に基づいて、混合ガス配管、分岐配管及び非透過ガス戻り配管のうち少なくとも一つを流れるガスの流量を調整する。
【0077】
混合ガス配管には、一次側流量検出部、一次側圧力検出部及び一次側特定ガス濃度検出部のうちの少なくとも一つを含む一次側検出部が設けられ、制御部は、一次側検出部が検出した一次側流量、一次側圧力及び一次側特定ガス濃度のうち少なくともいずれか一つのデータを用いて、分岐配管又は非透過ガス戻り配管を流れるガスの流量を調整する。
【0078】
透過ガス配管には、二次側圧力検出部又は二次側流量検出部が設けられ、制御部は、二次側圧力検出部又は二次側流量検出部のデータを用いて、二次側の圧力を調整する。
【0079】
透過ガス配管には、減圧機構が設けられている。
【0080】
特定ガスは、水素であり、混合ガスの他の成分は、天然ガス又は都市ガスである。
【符号の説明】
【0081】
1:水素分離装置、2:混合ガス主配管、3:混合ガス配管、4:非透過ガス配管、5:透過ガス配管、6:分岐配管、7:非透過ガス戻り配管、11:水素分離膜モジュール、12:水素分離膜、13:一次側、14:二次側、21:希釈ガス流量調整弁、22:減圧弁、23:二次側圧力調整機構、24:混合ガス流量調整弁、25:コンプレッサー、31:水素濃度計、32:制御装置、33:一次側流量計、34:一次側圧力計、35:一次側水素濃度計、36:希釈ガス流量計、37:二次側圧力計、38:二次側流量計、38:二次側流量計、51:二次側水素濃度信号ケーブル、52:希釈ガス流量調整弁制御信号ケーブル、53:一次側流量計信号ケーブル、54:希釈ガス流量計信号ケーブル、55:一次側圧力計信号ケーブル、56:一次側水素濃度信号ケーブル、57:二次側圧力計信号ケーブル、58:二次側圧力調整弁制御信号ケーブル、59:二次側流量計信号ケーブル、60:混合ガス流量調整弁制御信号ケーブル。