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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021216
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】開発支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0633 20230101AFI20240208BHJP
【FI】
G06Q10/06 324
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123907
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木谷 光博
(72)【発明者】
【氏名】チャウ マンイウー
(72)【発明者】
【氏名】羅 智圓
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 壮希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尊文
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA07
(57)【要約】
【課題】プロジェクト遂行中にソフトアーキ設計を変更した場合、他の入力変数のKPIに対する影響度を予測モデルを用いて予測し、早期にソフトアーキ設計の妥当性を検証することが可能な開発支援システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る開発支援システムの一例は、開発成果物の第1構成要素の更新履歴データ及び第2構成要素の現データを少なくとも記憶する記憶部と、構成要素毎の、開発成果度に対する評価値を予測する評価予測部と、第1構成要素の現データと、更新履歴データのうちの1つのデータである更新前データとの差分を抽出する差分抽出部と、差分抽出部の出力に基づいて、第2構成要素の現データを変更した変更後データを生成するデータ変更部と、を備え、評価予測部は、第1構成要素の現データと更新前データとに基づいて評価値の第1変動値を算出し、第2構成要素の現データと変更後データとに基づいて評価値の第2変動値を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開発成果物の評価を支援する開発支援システムであって、
前記開発成果物の第1構成要素の更新履歴データ及び第2構成要素の現データを少なくとも記憶する記憶部と、
前記開発成果物の構成要素毎の、開発成果度に対する評価値を予測する評価予測部と、
前記第1構成要素の現データと、前記更新履歴データのうちの1つのデータである更新前データとの差分を抽出する差分抽出部と、
前記差分抽出部の出力に基づいて、前記第2構成要素の現データを変更した変更後データを生成するデータ変更部と、を備え、
前記評価予測部は、前記第1構成要素の現データと前記更新前データとに基づいて前記評価値の第1変動値を算出し、前記第2構成要素の現データと前記変更後データとに基づいて前記評価値の第2変動値を算出する、
ことを特徴とする開発支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の開発支援システムであって、
前記第1構成要素の現データと前記更新前データとを正規化処理する正規化処理部をさらに備え、
前記差分抽出部は、正規化された前記第1構成要素の現データと前記更新前データとの差分を抽出し、
前記データ変更部は、前記第2構成要素の現データを、前記差分抽出部が抽出した、正規化された前記差分に対応するように変更して前記変更後データを生成する、
ことを特徴とする開発支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の開発支援システムであって、
前記第1変動値及び前記第2変動値のそれぞれの、前記開発成果度に対する変動割合を算出する変動割合算出部をさらに備える、
ことを特徴とする開発支援システム。
【請求項4】
請求項3に記載の開発支援システムであって、
前記評価予測部は、複数の前記第2構成要素の評価値を予測し、
前記第1構成要素と前記複数の第2構成要素と間のそれぞれの前記変動値の割合を比較する変動割合比較部をさらに備える、
ことを特徴とする開発支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の開発支援システムであって、
前記第1変動値及び前記第2変動値を出力する出力部をさらに備える、
ことを特徴とする開発支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の開発支援システムであって、
前記開発成果物はソフトウェアであり、
前記第1構成要素は前記ソフトウェア自身が含む構成要素であり、
前記第2構成要素は、前記ソフトウェアの開発環境に関する構成要素または前記ソフトウェアを実行するためのハードウェアに関する構成要素のいずれかを少なくとも含む、
ことを特徴とする開発支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウェア開発等のプロジェクトにおいて、ある入力変数がプロジェクトの成果にどの程度寄与するかを予測する開発支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にソフトウェア開発現場においては、そのプロジェクトが終了するまで、すなわちソフトウェアの最終バージョンがリリースされるまでには複数回のバージョンアップを経る。そして、それぞれのバージョンがどれだけ最終目標に近づいているかを判断するための基準として、近年KPI(Key Performance Index)と呼ばれる概念が導入されている。KPIとは、「重要業績評価指標」とも呼ばれ、一般的にはプロジェクトの最終目標を達成するための過程を管理するために設ける、定量的な計測基準である。KPIの具体例としては、例えばCPU負荷、ROM消費量、RAM消費量、バグ数、開発工数、ソフトウェア再利用率等が挙げられる。
【0003】
このKPIを、ソフトウェアアーキテクチャ設計データメトリクスを用いて予測する技術も近年提案されつつある。ここで、ソフトウェアアーキテクチャ設計データメトリクスとは、あるプロジェクトにおける開発対象であるソフトウェアアーキテクチャ(ソフトウェアの構造や機能/非機能要件等)を定量的に評価するための基準を定義するものである。その具体例としては、コア別モジュール数、依存関係数/データ量、依存関係方向、循環的複雑度などが挙げられ、他にも、システム規模の計測、変更に対するシステムの影響の感度の把握、要素間連結の度合いの把握、要素間結合の度合いの把握、要素の循環度合いの把握、といった観点から種々の基準が採用される。なお、以下ではソフトウェアアーキテクチャ設計を単にソフトアーキ設計と呼称し、ソフトウェアアーキテクチャ設計データメトリクスを単にソフトアーキ設計データメトリクスと呼称することがある。
【0004】
ソフトウェアのバージョン変更の場合には、ソフトアーキ設計データ以外に、ハードウェアやプロジェクトに関する情報も変更する場合がある。しかも、近年のソフトウェア開発プロジェクトにおける規模の巨大化や複雑さの増大に伴い、KPI予測のために必要な変数の数も増え続けている。従って、KPIの予測結果に対して各入力変数がどの程度影響を与えたかの絶対量を算出する方法と、ソフトアーキ設計変更の影響を算出する方法の確立が必要とされる。
【0005】
特許文献1には、入力を値域の範囲内でランダムに変更し、対象に関する目的を達成するための入力(特徴量)を特定する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、プロジェクトのパラメータ集合と終了予定日から、予測モデルを用いて(第二)プロジェクト成功確率を算出し、プロジェクトに変更があった場合の新たなパラメータ集合と終了予定日から、同様に(第一)プロジェクト成功確率を算出し、第一と第二の成功確率の差分から、プロジェクト変更によるリスクを推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-119085号公報
【特許文献2】特開2020-091843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1で開示されている技術では、ソフトウェア設計データのようにバージョン管理され、時系列で連続性のあるデータの取り扱いは考慮しておらず、アーキテクチャの設計変更に対するKPI影響の予測値(絶対量)は算出できない。特許文献2においても同様である。
【0009】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、プロジェクト遂行中にソフトアーキ設計を変更した場合、他の入力変数のKPIに対する影響度を予測モデルを用いて予測し、早期にソフトアーキ設計の妥当性を検証することが可能な開発支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る開発支援システムの一例は、開発成果物の第1構成要素の更新履歴データ及び第2構成要素の現データを少なくとも記憶する記憶部と、構成要素毎の、開発成果度に対する評価値を予測する評価予測部と、第1構成要素の現データと、更新履歴データのうちの1つのデータである更新前データとの差分を抽出する差分抽出部と、差分抽出部の出力に基づいて、第2構成要素の現データを変更した変更後データを生成するデータ変更部と、を備え、評価予測部は、第1構成要素の現データと更新前データとに基づいて評価値の第1変動値を算出し、第2構成要素の現データと変更後データとに基づいて評価値の第2変動値を算出する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロジェクト遂行中にソフトアーキ設計を変更した場合、他の入力変数のKPIに対する影響度を予測モデルを用いて予測し、早期にソフトアーキ設計の妥当性を検証することが可能になる。
本発明に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】予測モデルを用いてKPIを予測する手法の概要を示す図。
図2】本発明の一実施例に係る開発支援システムの機能構成を示すブロック図。
図3】開発支援システムが実行する処理において各機能部間の関係を示す図。
図4】開発支援システムを適用した場合の、KPIに対する変数間の変動割合比較の算出方法を説明するための図。
図5】開発支援システムが実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、ソフトアーキ設計データ及び、ソフトアーキ設計データ以外のKPI関連データをKPI予測モデルに入力してKPIを予測する手法の概要を示す図である。ソフトアーキ設計データとは、開発対象のソフトウェアの構成要件を示すデータであり、上述の通りコア別モジュール数、依存関係数/データ量、依存関係方向、循環的複雑度等が挙げられる。KPI関連データとは、開発対象のソフトウェア自体に関するデータではないが、開発プロジェクトに関するその他のデータのことであり、過去案件との類似性や顧客からの要求等のプロジェクトそのものに関するプロジェクト管理データと、マイコンスペック等のハードウェア設計データとを含む。具体的には例えば図1の変数名X2~X8で示されるようなデータ種である。
【0015】
そして、これらのデータを、過去の入力変数と、実際に算出されたKPIとの関係を示すデータを学習させたAIによるKPI予測モデルに入力し、KPIを予測する。図1においては、KPIの例としてSoftware productivity[LoC/hour](単位時間当たりに生成されるソースコード行数:生産性を示す)、CPU workload[%](CPU負荷率)、及びSoftware bugs[Number/LoC](ソースコード1行当たりのバグ数)が示されている。
【0016】
図1に示すように、開発対象のソフトウェアのバージョンが修正されるたびに、各KPIも変動していることがわかる。これらの結果は再びKPI予測モデルのAIへとフィードバックされ、その予測精度も向上していく。
【0017】
しかしながら、当然のことながらソフトウェアのバージョン修正に伴って各ソフトアーキ設計データ及びKPI関連データも変更されていく。すると、既述の通り、近年のソフトウェア開発プロジェクトの複雑化に伴う、扱うべき変数の増加とも相俟って、KPIに対する変数全体の変化の影響はある程度予測できるが、変数毎の変化がKPIの変化にどれだけ影響を与えているかを把握することが非常に困難である。
【0018】
本発明は上記背景を基になされたものであり、図2に本発明の一実施例に係る開発支援システム1の機能構成ブロック図を示す。なお、開発支援システム1は、ハードウェア構成としては例えばメモリ及びプロセッサを備えたコンピュータであってもよく、サーバ上に実装されたクラウドであってもよい。
【0019】
開発支援システム1は、正規化処理部11、差分抽出部12、スケール調整部13、データ変更部14、評価予測部15、変動割合算出部16、変動割合比較部17、及び評価結果出力部18を備える。これらの機能の詳細については後述する。開発支援システム1はまた記憶部100を備える。
【0020】
記憶部100には、ソフトアーキ設計データ101及びKPI関連データ102が格納されており、KPI関連データ102はさらにハードウェア設計データ1021及びプロジェクト管理データ1022を含む。これらソフトアーキ設計データ101及びKPI関連データ102は、ソフトウェアバージョン毎に紐づけられて格納されている。
【0021】
開発支援システム1はまた、開発支援システム1の不図示の通信インターフェースに接続された通信路2を介して外部サーバ3へと接続されている。通信路2は、物理的には複数の通信バスを含んでもよく、各通信バスの規格はすべて同一でもよいし異なっていてもよい。外部サーバ3は通信路2を介して開発支援システム1との間でメッセージの送受信を行う。
【0022】
図2に示す機能ブロック図は例示であり、機能の単位及び名称はこれに限らない。例えば、本実施例においてスケール調整部13が実現する機能は、図1に示す他の機能部によって実現されてもよく、図1に示さない機能部によって実現されてもよい。
【0023】
図3は、開発支援システムが実行する処理において各機能部間の関係を示す図である。ここでは一例として、図1を参照してソフトウェアバージョンがv2.0からv3.0へと更新された場合の処理を説明する。まず、正規化処理部11は、記憶部100から、ソフトアーキ設計データ101の現データ(ソフトウェアバージョンv3.0のデータ)と更新前のデータ(ソフトウェアバージョンv2.0のデータ)を抽出し、正規化処理を行う。ここでいう正規化とは任意の形式を利用できる。例えば線形変換やアフィン変換を用いて、それぞれのデータにおける最大値を1、最小値を0とする変換等が採用できる。
【0024】
続いて、差分抽出部12は、正規化処理部11で処理された現データと更新前データとの差分を抽出する。この差分は、0~1に正規化されているものの差分であるため、-1~1の値をとることになる。
【0025】
抽出された差分はスケール調整部13に渡される。同時に、またはこれに先立って、データ変更部14のデータ変更前メトリクス値算出部141は、記憶部100のKPI関連データ102を参照し、現データ(ソフトウェアバージョンv3.0のデータ)を抽出し、予め設定された観点から測定し、メトリクス値を算出する。この際、KPI関連データの中から複数のデータを抽出し、まとめてメトリクス値として算出してもよい。算出したメトリクス値はスケール調整部13へと渡される。
【0026】
スケール調整部13は、差分抽出部12から受け取った差分及びデータ変更前メトリクス値算出部141から受け取ったKPI関連データ102の現データに関するメトリクス値を関連付けて、データ変更後メトリクス値算出部142に渡す。
【0027】
データ変更後メトリクス値算出部142は、受け取ったデータに基づいて、現KPI関連データのメトリクス値を、差分抽出部12が抽出した、更新前後のソフトアーキ設計データメトリクス値の正規化された差分と同じだけ差分を有する値へと変更する。具体的には例えば、ソフトアーキ設計データメトリクス値の正規化された差分が0.5であった場合、すなわち更新前のソフトアーキ設計データメトリクス値から更新後のソフトアーキ設計データメトリクス値へと、最大値の50%分の値だけ増加したと仮定した場合に、データ変更後メトリクス値算出部142は、現在のKPI関連データメトリクス値を正規化した値から0.5を減じ、その値をさらに正規化前の基準で数値化したものを、変更後KPI関連データメトリクス値として算出する。これらの値は評価予測部15へと渡される。
【0028】
評価予測部15のデータ変更前評価予測値算出部151は、データ変更前メトリクス値算出部141から受信した、現在(データ変更前)のKPI関連データメトリクス値の、KPIに対する評価を予測する。また、データ変更後評価予測値算出部152も同様に、データ変更後メトリクス値算出部142から受信した、データ変更後のKPI関連データメトリクス値の、KPIに対する評価を予測する。算出したこれらの値は変動割合算出部16へと渡される。
【0029】
変動割合算出部16は、評価予測部15から受け取った2つの予測値を比較し、その変動割合を算出する。すなわち、正規化された更新前後のソフトアーキ設計データメトリクス値の差分に基づいて変更されたKPI関連データメトリクス値から現在のKPI関連データメトリクス値への変動が、現在のKPI関連データメトリクス値に対してどれほどの割合を占めているか、を算出する。算出した割合は変動割合比較部17へと渡される。
【0030】
変動割合比較部17は、変動割合算出部16から、全てのKPI関連データメトリクス値についての変動割合を受け取った後、ソフトアーキ設計データメトリクス値の変動割合も含めて、全ての変数間の変動割合を比較する。算出された結果は入力変数影響度評価結果19として、評価結果出力部18から外部の管理者等へと出力される。
【0031】
図4は、図3で説明した処理を視覚的に示した、開発支援システムを適用した場合の、KPIに対する変数間の変動割合比較の算出方法を説明するための図である。
【0032】
まず、変数名X1で表される任意のソフトアーキ設計データメトリクスの更新前後の値がKPI予測モデルを構成するAIに入力され、それぞれに対するKPIの評価予測が算出される。一例として図4においてKPIはバグ数であり、現Ver(更新後)におけるソフトアーキ設計データメトリクス値に対して予測されるバグ数は20であり、旧Ver(更新前)におけるソフトアーキ設計データメトリクス値に対して予測されるバグ数は10である。
【0033】
このことから、現Verにおけるソフトアーキ設計データメトリクス値に対して予測されるバグ数(20)に対して更新前後のKPIの変動値(10)が占める割合は50%であることから、図4において変動割合算出部16は、変数名X1で表されるソフトアーキ設計データメトリクス値のKPIに対する変動割合として50%を算出する。
【0034】
これと並行して、変数名X2で表されるKPI関連データメトリクス(図4においては過去プロジェクト類似度メトリクス)についてもKPIが予測され、変動割合が算出される。上述したように、正規化された更新前後のソフトアーキ設計データメトリクス値の差分と一致するようにKPI関連データメトリクス値を変更する。図4においては、現在の過去プロジェクト類似度メトリクスの正規化された値が0.7であり、上述の正規化された更新前後のソフトアーキ設計データメトリクス値の差分が-0.02であったとして、変更後の過去プロジェクト類似度メトリクスの正規化された値を0.72と設定する。
【0035】
そして、これらの値をKPI予測モデルへと入力し、それぞれに対するKPIの評価予測が算出される。図4の例においては、現在の過去プロジェクト類似度メトリクス値に対して予測されるバグ数は20であり、データ変更後の過去プロジェクト類似度メトリクス値に対して予測されるバグ数は18である。
【0036】
このことから、変更前後において過去プロジェクト類似度メトリクス値の変動値は2であり、現在の過去プロジェクト類似度メトリクス値に対して予測されるバグ数20に占める割合は10%であることから、図4において変動割合算出部16は、過去プロジェクト類似度メトリクス値のKPIに対する変動割合として10%を算出する。
【0037】
上記の処理を、残りの変数名X3~X5で表されるKPI関連データメトリクスに対しても同様に行う。その結果として、変動割合算出部16は、変数名X3~X5で表されるKPI関連データメトリクスの、KPIに対する変動割合としてそれぞれ15%、8%、及び30%を算出する。
【0038】
そして、変動割合比較部17は、上記の変動割合算出部16の算出結果に基づいて、変数間の変動割合を比較する。これは、例えば全体が100%となるようにそれぞれの変動割合を平準化することによって得られる。この結果から、ソフトウェアバージョンを更新した際に、ソフトアーキ設計データメトリクス値がKPIの変動に与える影響は全体の44%であり、例えば変数名X3で表される要求の複雑度メトリクス値がKPIの変動に与える影響は全体の13%であることがわかる。
【0039】
最後に、開発支援システム1が実行する処理のフローを、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
まずステップS501において、Ver毎のソフトアーキ設計データ及びKPI関連データから任意のデータを抽出し、所定の基準で評価することによって数値化(メトリクス値計算)する。この処理は、例えばデータ変更部14によって実行されてもよいし、開発支援システムの備える不図示のCPUによって実行されてもよい。
【0041】
次に、ステップS502において、Ver間ソフトアーキ設計データメトリクス変更割合を算出する。これは、具体的にはすでに説明した正規化処理部11による正規化処理(ステップS5021)及び差分抽出部12による差分抽出処理(ステップS5022)によって実行される。
【0042】
続いて、ステップS503において、現在(変更前)のKPI関連データメトリクス値及びVer間ソフトアーキ設計データメトリクス値差分から、スケール調整部13によるスケール調整が行われ、ステップS504において、データ変更後メトリクス値算出部142によるデータ変更が行われる。
【0043】
ステップS505において、変更後のKPI関連データメトリクス値が評価予測部15に入力され、KPI予測値が算出される。
【0044】
ステップS507において、以上の処理を入力変数全てに対して実行したかを判定し、入力変数全てに対して実行するまでステップS504~S505の処理を繰り返す。
【0045】
また上記の処理と並行してまたは先立って、ステップS506において、現在のソフトアーキ設計データメトリクス値及びKPI関連データメトリクス値の、KPI予測値が算出される。
【0046】
ステップS508において、変動割合算出部16が、変更前後のKPI関連データメトリクス値のKPI予測値から、変動割合を算出する。
【0047】
最後に、ステップS509において、変動割合比較部17が、入力変数間におけるKPI予測値の変動割合を比較し、入力変数影響度評価結果19として算出する。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、KPI関連データメトリクス値を、既知であるソフトアーキ設計データメトリクス値の更新前後と同一の変動幅になるように調整し、KPI予測モデルを用いてKPIを予測している。これにより、ソフトアーキ設計データメトリクス値を含めた、変数毎のKPIへの影響度を評価することが可能になる。従って、当該評価結果を用いて、ソフトアーキ設計の妥当性を迅速に評価することが可能になる。
【0049】
以上で説明した本発明の実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)本発明に係る開発支援システムの一例は、開発成果物の第1構成要素の更新履歴データ及び第2構成要素の現データを少なくとも記憶する記憶部と、開発成果物の構成要素毎の、開発成果度に対する評価値を予測する評価予測部と、第1構成要素の現データと、更新履歴データのうちの1つのデータである更新前データとの差分を抽出する差分抽出部と、差分抽出部の出力に基づいて、第2構成要素の現データを変更した変更後データを生成するデータ変更部と、を備え、評価予測部は、第1構成要素の現データと更新前データとに基づいて評価値の第1変動値を算出し、第2構成要素の現データと変更後データとに基づいて評価値の第2変動値を算出する。
【0050】
上記構成により、プロジェクト遂行中にソフトアーキ設計を変更した場合、他の入力変数のKPIに対する影響度を予測モデルを用いて予測し、早期にソフトアーキ設計の妥当性を検証することが可能になる。
【0051】
(2)第1構成要素の現データと更新前データとを正規化処理する正規化処理部をさらに備え、差分抽出部は、正規化された第1構成要素の現データと更新前データとの差分を抽出し、データ変更部は、第2構成要素の現データを、差分抽出部が抽出した、正規化された差分に対応するように変更して変更後データを生成する。これにより、構成要素間でデータの粒度や単位が異なっていたとしても、正規化して無次元化することにより容易にデータ間の比較をすることが可能になる。
【0052】
(3)第1変動値及び第2変動値のそれぞれの、開発成果度に対する変動割合を算出する変動割合算出部をさらに備える。これにより、変動値間で開発成果に対する影響度の大小を比較することが可能になり、どの構成要素が開発成果により影響を与えるのかを容易に判断することが可能になる。
【0053】
(4)評価予測部は、複数の第2構成要素の評価値を予測し、第1構成要素と複数の第2構成要素と間のそれぞれの変動値の割合を比較する変動割合比較部をさらに備える。これにより、(3)の効果に加えて、構成要素が複数ある場合に、それらの影響の大きさを順位付けして把握することが可能になる。
【0054】
(5)第1変動値及び第2変動値を出力する出力部をさらに備える。これにより、評価結果を外部の管理者等が閲覧可能な表示装置等に対して出力することが可能になり、管理者等にとって情報管理の利便性が向上する。
【0055】
(6)開発成果物はソフトウェアであり、第1構成要素はソフトウェア自身が含む構成要素であり、第2構成要素は、ソフトウェアの開発環境に関する構成要素またはソフトウェアを実行するためのハードウェアに関する構成要素のいずれかを少なくとも含む。本発明は、このようなソフトウェア開発環境において好適に適用可能である。
【0056】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 開発支援システム、11 正規化処理部、12 差分抽出部、13 スケール調整部、14 データ変更部、15 評価予測部、16 変動割合算出部、17 変動割合比較部、18 評価結果出力部(出力部)、100 記憶部、101 ソフトアーキ設計データ、102 KPI関連データ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1