(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021219
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ごみ焼却炉の燃切位置推定方法及びごみ焼却炉の燃切位置推定装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20240208BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F23G5/50 L ZAB
F23G5/50 C
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123910
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】北村 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 慶文
(72)【発明者】
【氏名】西村 和基
(72)【発明者】
【氏名】島田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】丹野 良介
【テーマコード(参考)】
2F065
3K062
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA58
2F065FF04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ04
2F065QQ07
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ26
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065SS01
3K062AA01
3K062AB01
3K062AC01
3K062CA08
3K062CB05
(57)【要約】
【課題】極力監視員の労力を低減させ、自動運転制御の継続が可能となるごみ焼却炉の燃切位置推定方法を提供する。
【解決手段】撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、ストーカ機構STの上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法であって、画像を所定の二値化閾値で二値化して火炎領域FAを抽出する火炎領域抽出処理と、炉幅方向に沿う仮想直線VLを火炎領域FAの下方から上方に向けて走査したときに、仮想直線VLと火炎領域FAとが重畳する画素数と仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、燃切位置として推定する燃切位置推定処理と、火炎領域の面積と火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理と、火炎領域の面積に対する凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、所定比率を調整する燃切位置調整処理と、を実行する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法であって、
前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理と、
炉幅方向に沿う仮想直線を前記火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理と、
を実行するごみ焼却炉の燃切位置推定方法。
【請求項2】
前記火炎領域の面積と前記火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理と、
前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、前記所定比率を調整する燃切位置調整処理と、
を実行する請求項1記載のごみ焼却炉の燃切位置推定方法。
【請求項3】
燃切位置調整処理は、前記相対値が所定の閾値より大きい場合に、前記相対値が大きくなるに連れて前記所定比率が小さくなるように調整する処理である請求項2記載のごみ焼却炉の燃切位置推定方法。
【請求項4】
前記相対値は、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の差分または比率である請求項2または3記載のごみ焼却炉の燃切位置推定方法。
【請求項5】
撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法であって、
前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理と、
前記火炎領域の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形である凸包火炎領域を生成する凸包処理と、
炉幅方向に沿う仮想直線を前記凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記凸包火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理と、
を実行するごみ焼却炉の燃切位置推定方法。
【請求項6】
撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定装置であって、
前記画像を所定の二値化閾値で二値化して火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理部と、
炉幅方向に沿う仮想直線を前記火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として算出する燃切位置推定処理部と、
を備えているごみ焼却炉の燃切位置推定装置。
【請求項7】
前記火炎領域の面積と前記火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理部と、
前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、前記所定比率を調整する燃切位置調整処理部と、
を備えている請求項6記載のごみ焼却炉の燃切位置推定装置。
【請求項8】
燃切位置調整処理部は、前記相対値が所定の閾値より大きい場合に、前記相対値が大きくなるに連れて前記所定比率が小さくなるように調整する請求項7記載のごみ焼却炉の燃切位置推定装置。
【請求項9】
前記相対値は、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の差分または比率である請求項7または8記載のごみ焼却炉の燃切位置推定装置。
【請求項10】
撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定装置であって、
前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理部と、
前記火炎領域の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形である凸包火炎領域を生成する凸包処理部と、
炉幅方向に沿う仮想直線を前記凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記凸包火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理部と、
を備えているごみ焼却炉の燃切位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法及びごみ焼却炉の燃切位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ストーカ機構の上面で焼却されるごみにより生じる火炎をストーカ機構の下流側から撮像する撮像装置と、撮像装置により得られた画像データから火炎領域を抽出し、抽出した火炎領域の最下流位置を燃切位置として推定する画像処理装置を備えたごみ焼却炉が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ストーカ機構の上面で焼却されるごみにより生じる火炎の状態は常に変動するため、特許文献1に記載されたごみ焼却炉のように、撮像装置で撮像した火炎領域の最下流位置を燃切位置と推定する場合には、燃切位置の推定値が頻繁に変動する結果、そのような燃切位置の推定値に基づいて、例えばストーカ機構によるごみの送り速度制御や、一次燃焼空気の供給量制御などの自動燃焼制御が実行されても、制御特性が低下して安定した燃焼状態を維持することが困難になる虞があった。
【0005】
また、撮像装置から視て火炎領域の内部または火炎領域の手前側に塊状物が存在すると、一部の火炎が塊状物に遮られる結果、燃切位置が実際よりも上流側にずれて検出されることもあり、そのような場合に自動燃焼制御を継続するとストーカ機構によるごみの送り速度が速くなり、未燃ごみが排出される虞があった。
【0006】
そのため、上述の監視員がモニター画面に表示される焼却炉の燃焼状態を示す画像を監視して、未燃ごみが排出される虞があると判断した場合には、自動燃焼制御を中断して手動操作によりストーカ機構によるごみの送り速度を低下させるような煩雑な操作介入が必要となっていた。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術に鑑み、監視員の労力を極力低減させ、自動運転制御の継続が可能となるごみ焼却炉の燃切位置推定方法及びごみ焼却炉の燃切位置推定装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によるごみ焼却炉の燃切位置推定方法の第一の特徴構成は、撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法であって、前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理と、炉幅方向に沿う仮想直線を前記火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理と、を実行する点にある。
【0009】
ストーカ機構の上面でごみが焼却される際に生じる火炎を含む画像が、ストーカ機構の下流側から撮像装置で撮像される。撮像装置により撮像された画像に対して火炎領域抽出処理が実行されて、画素値を所定の二値化閾値で二値化することにより火炎領域が抽出される。次に火炎領域が抽出された画像に対して燃切位置算出処理が実行されて、炉幅方向に沿う仮想直線が火炎領域の下方から上方に向けて走査され、仮想直線と火炎領域とが重畳する画素の画素数と仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置が燃切位置として推定される。火炎領域の下流側で仮想直線と重畳する火炎の画素が所定比率となる位置を燃切位置と推定することで、火炎領域の下流側を燃切位置とする場合に比較して燃切位置の推定値の激しい変動を抑制することができる。
【0010】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記火炎領域の面積と前記火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理と、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、前記所定比率を調整する燃切位置調整処理と、を実行する点にある。
【0011】
ストーカ機構の上面で焼却される被焼却物に難燃性または不燃性の塊状物が存在すると、塊状物によって火炎が遮られて火炎領域抽出処理で抽出された火炎領域の大きさが小さくなる傾向があり、実際に燃焼状態が低下して火炎領域が小さくなる場合と識別することが困難な場合がある。そのため、面積算出処理が実行されて、火炎領域の面積と、火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積が算出される。凸包火炎領域の面積は、少なくとも塊状物で遮られた火炎を内包した面積となるため、火炎領域の面積と凸包火炎領域の面積から塊状物による影響の程度を把握することができる。塊状物で遮られた場合の凸包火炎領域の面積の方が、燃焼状態が低下して火炎領域が小さくなる場合の凸包火炎領域の面積よりも大きくなる傾向があるからである。そこで、燃切位置調整処理により、火炎領域の面積に対する凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、所定比率を調整することで、塊状物により燃切位置が本来の位置より上流側にあると誤判定されるリスクを低減させることができる。
【0012】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、燃切位置調整処理は、前記相対値が所定の閾値より大きい場合に、前記相対値が大きくなるに連れて前記所定比率が小さくなるように調整する処理である点にある。
【0013】
塊状物により遮られる火炎領域の大きさが相対値で評価でき、所定比率が一定値であれば、相対値が大きくなるほど燃切位置が上流側にシフトする傾向となる。そこで、相対値が所定の閾値より大きい場合に、燃切位置が本来の位置より上流側にあると誤判定されるリスクが高くなると想定して、相対値が大きくなるに連れて所定比率が小さくなるように、つまり燃切位置が下流側にあると判定できるように調整される。
【0014】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記相対値は、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の差分または比率である点にある。
【0015】
火炎領域の面積に対する凸包火炎領域の面積の相対値として、火炎領域の面積に対する凸包火炎領域の面積の差分または比率を採用することが好ましく、差分を採用する場合には、差分が大きくなるほど燃切位置が本来の位置より上流側にあると誤判定するリスクが高くなると想定でき、比率を採用する場合には、比率が大きくなるほど燃切位置が本来の位置より上流側にあると誤判定するリスクが高くなると想定できる。
【0016】
同第五の特徴構成は、撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定方法であって、前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理と、前記火炎領域の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形である凸包火炎領域を生成する凸包処理と、炉幅方向に沿う仮想直線を前記凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記凸包火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理と、を実行する点にある。
【0017】
ストーカ機構の上面で焼却される被焼却物に難燃性または不燃性の塊状物が存在すると、塊状物によって火炎が遮られて火炎領域抽出処理で抽出された火炎領域の大きさが小さくなる傾向があり、実際に塊状物が存在することなく燃焼状態が低下して火炎領域が小さくなる場合との差異を識別することが困難な場合がある。そこで、凸包処理することで、塊状物で遮られた場合の火炎領域の影響と、燃焼状態が低下して火炎領域が小さくなる場合の火炎領域の影響の其々を反映した凸包火炎領域を、燃切位置推定処理の対象とすることで、燃切位置を適切に推定することができるようになる。燃切位置算出処理では、炉幅方向に沿う仮想直線が凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査され、仮想直線と凸包火炎領域とが重畳する画素の画素数と仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置が燃切位置として推定される。
【0018】
本発明によるごみ焼却炉の燃切位置推定装置の第一の特徴構成は、撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定装置であって、前記画像を所定の二値化閾値で二値化して火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理部と、炉幅方向に沿う仮想直線を前記火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理部と、を備えている点にある。
【0019】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記火炎領域の面積と前記火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理部と、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、前記所定比率を調整する燃切位置調整処理部と、を備えている点にある。
【0020】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、燃切位置調整処理部は、前記相対値が所定の閾値より大きい場合に、前記相対値が大きくなるに連れて前記所定比率が小さくなるように調整する点にある。
【0021】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記相対値は、前記火炎領域の面積に対する前記凸包火炎領域の面積の差分または比率である点にある。
【0022】
同第五の特徴構成は、撮像装置を用いてストーカ機構の下流側から燃焼状態を撮影した画像に基づいて、前記ストーカ機構の上面で焼却されるごみの燃切位置を推定するごみ焼却炉の燃切位置推定装置であって、前記画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理部と、前記火炎領域の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形である凸包火炎領域を生成する凸包処理部と、炉幅方向に沿う仮想直線を前記凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、前記仮想直線と前記凸包火炎領域とが重畳する画素数と前記仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、前記燃切位置として推定する燃切位置推定処理部と、を備えている点にある。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した通り、本発明によれば、極力監視員の労力を低減させ、自動運転制御の継続が可能となるごみ焼却炉の燃切位置推定方法及びごみ焼却炉の燃切位置推定装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】ストーカ式のごみ焼却炉の要部拡大図である。
【
図3】(a),(b)は燃焼制御装置の機能ブロック構成図である。
【
図4】(a)はストーカ上で燃焼するごみと撮像装置の相対位置を示す説明図、(b)は撮像装置により撮像された燃焼火炎に基づく燃切位置推定の説明図である。
【
図5】(a)は、撮像装置で撮像された燃焼火炎の面積S1と燃焼火炎を凸包処理した火炎の面積S1´に基づく燃切位置の調整原理の説明図、(b)は撮像装置で撮像された燃焼火炎の面積S2と燃焼火炎を凸包処理した火炎の面積S2´に基づく燃切位置の調整原理の説明図である。
【
図6】撮像装置で撮像された燃焼火炎が塊状物の影響で面積S11,S12の二つに分離され、其々の燃焼火炎を凸包処理した火炎の面積S11´,S12´に基づく燃切位置の調整原理の説明図である。
【
図7】燃焼制御の手順を示すフローチャートである。
【
図8】燃切位置推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】性状判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明によるごみ焼却炉の燃切位置推定方法及びごみ焼却炉の燃切位置推定装置を図面に基づいて説明する。
【0026】
[ごみ焼却炉の構造]
図1には、ストーカ式のごみ焼却炉1が示されている。ごみ収集車が進入するプラットホームA、ごみ収集車により収集されたごみを集積するごみピットB、ごみ投入ホッパD、ごみピットBからごみをごみ投入ホッパDに移送するごみクレーンC、炉室E、炉室Eの上部空間に設置した廃熱ボイラF、エコノマイザGなどを備え、炉室Eで生じた燃焼排ガスが煙道に沿って配された減温塔H、集塵機Iなどの排ガス処理設備で浄化された後に煙突Jから排気される。炉室Eを負圧に維持するべく、煙道には誘引送風機Lが設けられている。
【0027】
プラットホームAとごみピットBの間に設けられた臭気漏洩防止及び安全確保のための観音開き式のごみ投入扉Kを開放することにより、ごみ収集車によって収集運搬されたごみがごみピットBに投入される。
【0028】
ごみピットBに集積されたごみは、自動または制御室の運転員によって操作されるクラブバケット方式のごみクレーンCによって把持されて、ごみ投入ホッパDの上端に形成された開口部まで移送された後に落下投入される。
【0029】
ごみ投入ホッパDの底部に給じん装置Pが設けられ、ごみ投入ホッパDに充填されたごみが炉室Eに押込み投入される。ごみ投入ホッパDに充填されたごみが、ごみ投入ホッパDから炉室Eへの外気の流入を遮断するシール機構として機能し、炉室が負圧に維持される。
【0030】
炉室Eは、主燃焼室2と主燃焼室2で生じた燃焼排ガスを完全燃焼させる二次燃焼室3を備え、二次燃焼室3の壁部に廃熱ボイラFの複数の水管WTが埋め込まれている。
【0031】
図2に示すように、主燃焼室2には、固定火格子と可動火格子がごみの搬送方向に沿って交互に配置されたストーカ機構STが設けられている。油圧機構h1,h2,h3によって可動火格子が固定火格子に対して前後方向に往復駆動されることにより、ごみが撹拌されながら下流側に搬送される。
【0032】
ストーカ機構STの下部に上流側から下流側に向けて順に四つの風箱W1,W2,W3,W4が設けられ、押込み送風機から主燃焼用空気が供給される。ストーカ機構STのうち風箱W1に対応する上流領域が乾燥帯ST1、風箱W2,W3に対応する中流領域が燃焼帯ST2、風箱W4に対応する下流領域が後燃焼帯ST3となる。
【0033】
風箱W1,W2,W3,W4の其々に圧力センサPS1,PS21,PS22,PS3が設けられるとともに、主燃焼室2に圧力センサPSが設けられ、各風箱と主燃焼室2の圧力差が検出可能に構成され、さらにストーカ機構STを介して主燃焼室2に流入する燃焼空気流量を検出する流量センサQSが設けられている。
【0034】
給じん装置Pから主燃焼室2に押し込まれたごみは乾燥帯ST1で主に加熱乾燥され、燃焼帯ST2でガス化燃焼されて、ガス化燃焼により炭化されたごみは燃焼帯S2の下流側から後燃焼帯ST3で固体燃焼されて灰化され、灰化された後に後燃焼帯ST3の端部から灰シュートに落下する。
【0035】
主燃焼室2から二次燃焼室3の入口部にかけて、炉室Eの前壁2F及び後壁2Rにくびれ部が形成され、当該くびれ部にガス供給機構4が設けられている。ガス供給機構4から供給されるガスにより二次燃焼室3に流入する燃焼排ガスが撹拌され、整流されて二次燃焼室3で完全燃焼される。
【0036】
なお、ガス供給機構4から供給されるガスは二次燃焼用の空気であってもよいし、主燃焼室2から引抜かれた排ガス、集塵機Iより下流の煙道から分岐された再循環排ガス、或いはそれ以外の排ガス流路から分岐された排ガスであってもよいし、空気と前記各排ガスの混合ガスであってもよい。
【0037】
被焼却物に対する理論空気比が約1.3となるように主燃焼用空気と二次燃焼用空気の総量が調整されていればよく、例えば理論空気比が約1.3となるように全ての空気が主燃焼用空気で賄われている場合にはガス供給機構4から供給されるガスは、煙道から引抜かれた排ガスのみであってもよい。また、主燃焼用空気で約1.0の空気が賄われ、二次燃焼用空気で約0.3の空気が賄われるように構成してもよい。二次燃焼室3の出口部には、温度センサ及びガスセンサが設けられている。
【0038】
炉室Eの後壁2Rに撮像装置5としての産業用テレビカメラ(ITV)が設置され、ストーカ機構STの上面で搬送されつつ焼却されるごみの燃焼火炎を含む燃焼状態が撮影される。
【0039】
[燃焼制御装置の構成]
図3には、上述したごみ焼却炉1で焼却されるごみの燃焼状態を制御し、廃熱ボイラFで生成される蒸気量を制御する燃焼制御装置10の構成が示されている。燃焼制御装置10は、給じん装置Pによって主燃焼室2に供給されるごみの投入量を調整する給じん制御部11、油圧機構h1,h2,h3によって乾燥帯ST1、燃焼帯ST2、後燃焼帯ST3それぞれの搬送速度を制御する搬送制御部12、各風箱W1~W4から供給する主燃焼用空気の給気量を調整するとともにガス供給機構4からの給気量を調整する給気制御部13、各制御部11,12,13に制御指令を出力する演算処理部14を備えている。
【0040】
演算処理部14は、燃焼帯ST2におけるごみの燃切位置を推定する燃切位置推定部15、ごみに混入する塊状物の有無やごみ枯れなどの性状を判定する性状判定部16、廃熱ボイラFで生成する蒸気量を調整する蒸気量調節部17の各演算部と、各演算部による演算結果に基づいて得られる指標に従って、各制御部11,12,13に出力する制御指令を生成する制御指令生成部18とを備えている。上述した各圧力センサ、流量センサ、ガスセンサ、温度センサ、蒸気量センサの各検出値や撮像装置5で撮影された画像などが演算処理部14に入力されている。
【0041】
燃焼制御装置10は、CPUボード、メモリボード、入出力インタフェースボード、表示装置、入力装置などを備えて構成されている。メモリボード上のメモリに燃焼制御プログラムがインストールされ、CPUボード上のCPUで燃焼制御プログラムが実行されることにより、上述した各機能ブロックが具現化される。
【0042】
即ち、
図7に示すように、燃焼制御装置10は、上述した圧力センサ、流量センサ、温度センサ、ガスセンサなどの各種のセンサの値を入力するとともに(SA1)、撮像装置5により撮影された燃焼画像を取得し(SA2)、これらの入力情報に基づいて、燃切位置推定処理(SA3)、性状判定処理(SA4)、蒸気量調整処理(SA5)を実行する。そして、それら結果に基づいてPID演算などを含む各種の制御演算を実行して、各制御部11,12,13に出力する制御指令を生成し(SA6)、給じん制御部11を介した給じん制御処理(SA7)、搬送制御部12を介した搬送制御処理(SA8)、給気制御部13を介した給気制御処理(SA9)を、所定の時間間隔で繰返し実行する(SA10)。各演算処理の繰返し周期は特に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。例えば、数秒から数十秒の繰返し周期に設定することが好ましい。
【0043】
[燃切位置推定部]
燃切位置推定部15は、ストーカ機構STの上面で焼却されるごみを撮像装置5で撮影した燃焼状態を示す画像情報に基づいて燃切位置を推定する演算部である。
【0044】
燃切位置推定部15は、火炎領域抽出処理部15Aと、燃切位置推定処理部15Bと、面積算出処理部15Cと、燃切位置調整処理部15Dの各機能ブロックを備えている。
【0045】
図7に示したように、燃切位置推定部15は、火炎領域抽出処理部15Aによる火炎領域抽出処理と、燃切位置推定処理部15Bによる燃切位置推定処理と、面積算出処理部15Cによる面積算出処理と、燃切位置調整処理部15Dによる燃切位置調整処理とを、経時的に繰返して実行するように、つまり所定の時間間隔で繰返し実行するように構成されている。
【0046】
図8には、燃切位置推定部15で実行される燃切位置推定処理の手順が示されている。火炎領域抽出処理部15Aは、撮像装置5で撮影した動画像を格納するメモリと、メモリに格納された動画像から抽出した所定のフレーム画像の画素値を所定の二値化閾値で二値化して、単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する二値化処理部を備えている。画像は火炎領域とその他の領域を識別できるものであれば、グレースケール画像、RGBカラー画像など、どのような画素で構成されていてもよく、火炎領域を抽出する画素値として輝度値やRGB成分値などを適宜採用することができる。また、二値化閾値は特定の値に限るものではなく、火炎領域を抽出可能な値であれば特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0047】
火炎領域抽出処理部15Aは、フレーム画像を二値化して単一または複数の火炎領域を得て(SB1)、大きさ(面積)が第1閾値以上の第1火炎領域FAと、第1閾値より小さな第2閾値以下の大きさ(面積)の第2火炎領域FAsを区別して抽出する(SB2,SB3)。第1閾値の値は、ストーカ機構の上面で燃焼している最大の燃焼火炎が抽出でき、後述する塊状物の影響により複数に分断された場合でも主要な燃焼火炎を抽出できる値であればよい。また、第2閾値は、主要な燃焼火炎を除く微小な燃焼火炎を抽出できる値であればよい。
【0048】
燃切位置推定処理部15Bは、抽出した火炎領域のうち大きさ(面積)が第1閾値以上の単一または複数の第1火炎領域FAからごみの燃切位置を推定する機能ブロックである。
【0049】
詳述すると、二値化された画像に対して、炉幅方向に沿う仮想直線(本実施形態では水平方向の直線)VLを生成して、当該仮想直線VLを第1火炎領域FAの下方(下流側)から上方(上流側)に向けて走査(平行移動)し(SB4)、仮想直線VLと第1火炎領域FAとが重畳する画素数を算出するとともに(SB5)、そのときの仮想直線VLの全画素数との比率を算出する処理を繰り返す(SB6)。ステップSB6で求めた比率が所定比率R以上となる最初(最下流側)の位置を燃切位置として推定する(SB12,SB13)。
【0050】
ここで、燃焼帯ST2で焼却されるごみに塊状物が混入している場合と、塊状物が混入していない場合で、第1火炎領域FAの大きさが変動することに鑑み、所定比率Rが以下の手順に沿って調整される。
【0051】
以下に、調整手順を説明する。面積算出処理部15Cは、第1火炎領域FAの面積Sと、第1火炎領域FAの輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積S´を其々算出する(SB7,SB8,SB9)。凸包とは、与えられた点を全て包含する最小の凸多角形をいい、凸包処理とは火炎画像の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形を凸包火炎領域として生成する処理をいう。
【0052】
燃切位置調整処理部15Dは、第1火炎領域FAの面積Sに対する凸包火炎領域の面積S´の相対値RVを算出し(SB10)、算出した相対値RVに基づいて、燃切位置推定処理部15Bで参照される所定比率Rを調整する(SB11)。相対値RVとして、第1火炎領域FAの面積Sに対する凸包火炎領域の面積S´の差分(S´-S)、または、比率(S´/S)を採用することができる。
【0053】
燃切位置調整処理部15Dは、相対値RVが所定の閾値より大きい場合に、相対値が大きくなるに連れて所定比率Rが小さくなるように、つまり燃切位置が下流側に補正されるように調整する。相対値RVが所定の閾値以下の場合には、所定比率Rとして初期値が採用される。相対値RVの閾値は予め実機を用いた試験等により決定することができる。
【0054】
即ち、ストーカ機構STの上面で焼却されるごみに難燃性または不燃性の塊状物が存在すると、塊状物によって火炎が遮られて火炎領域抽出処理で抽出された第1火炎領域FAの大きさが小さくなる傾向があり、実際に塊状物が存在することなく燃焼状態が低下して第1火炎領域FAが小さくなる場合との差異を識別することが困難な場合がある。
【0055】
そのため、面積算出処理が実行されて、第1火炎領域FAの面積Sと、第1火炎領域FAの輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積S´が算出される。凸包火炎領域の面積S´は、少なくとも塊状物で遮られた火炎を内包した面積となるため、第1火炎領域FAの面積Sと凸包火炎領域の面積S´から塊状物による影響の程度を把握することができる。塊状物で遮られた場合の凸包火炎領域の面積S´の方が、燃焼状態が低下して第1火炎領域FAが小さくなる場合の凸包火炎領域の面積S´よりも大きくなる傾向があるからである。
【0056】
そこで、燃切位置調整処理により、火炎領域の面積Sに対する凸包火炎領域の面積S´の相対値に基づいて、所定比率Rを調整することで、塊状物により燃切位置が本来の位置より上流側にあると誤判定されるリスクを低減させることができる。
【0057】
図4(a)には、ストーカ機構STの上面で焼却処理されるごみの燃焼状態を、ストーカ機構STの下流側から撮影する撮像装置5が、炉室Eの後壁に設置された様子が示されている。本実施形態では、当該撮像装置5の左右方向中心は炉幅方向の中心に調節され、上下方向中心はストーカ機構STのうち乾燥帯ST1及び燃焼帯ST2の搬送方向に沿う上下長さの中心部に調節されている。
【0058】
図4(b)には、撮像装置5で撮像された画像が示されている。燃焼帯ST2でガス化燃焼されることにより生じる第1火炎領域FA及び第2火炎領域FAsがハッチングされている。燃焼帯ST2でガス化燃焼されて炭化したごみは、後燃焼帯ST3に搬送後に熾き燃焼されて灰化され、灰シュートに落下する。
図4(b)では、撮像装置5の画角から上方にはみ出した火炎の上部が略平坦になっている。
【0059】
図5(a)の上部には、二値化された第1火炎領域FAの画像(破線は二値化により喪失した画像)が示されている。炉幅方向に沿う仮想直線VL(二点鎖線で示されている。)が第1火炎領域FAの下方(炉の下流側)から上方(炉の上流側)に向けて走査(平行移動)すると、仮想直線VLと火炎領域FAとが接し(図中、「下端位置」と表記。)、さらに上方に向けて走査(移動)すると、仮想直線VLと火炎領域FAとが重畳するようになる。重畳領域を太い実線で示している。
【0060】
燃切位置推定処理部15Bは、仮想直線VLの走査量(移動量)を増やしていき、火炎領域FAの重畳領域の画素数PFと仮想直線VLの全画素数PVとの比率(PF/PV)が所定比率Rとなる最下流側の位置を、燃切位置として推定する。
【0061】
このように燃切位置を推定することにより、ストーカ機構STの作動と燃焼状態の変動により第1燃焼火炎FAの領域の下端が頻繁に変動するような場合でも、その影響を軽減して正確で安定した燃切位置を推定することができるようになる。
【0062】
所定比率Rは特に限定されるものではないが、本実施形態では初期値としてR=0.3(30%)に設定している。例えば、水平方向画素数が1920となるフルハイビジョンに対応する動画像であれば、仮想直線VLの全画素数が1920となり、火炎領域FAの重畳領域の画素数PFが1920×0.3=576画素となる位置が燃切位置となる。なお、演算負荷を低減するために、画像を所定の間引き率で間引いた画像に対して比率(PF/PV)を求めるように構成してもよい。
【0063】
図5(b)の上部に示すように、炉内に塊状物MTが投入され、それが燃焼帯ST2に到達して、撮像装置5で撮像された燃焼火炎の一部が当該塊状物MTで遮られると、二値化処理された火炎領域FAが複数に割れたり、小さくなったりする現象が現れる。その結果、第1火炎領域FAとの重畳領域における第1火炎領域FAの画素数PFと仮想直線VLの全画素数PVとの比率(PF/PV)が予め設定された所定比率Rとなる最下流側の位置が、塊状物MTが存在しない場合の位置よりも上流側にシフトする現象が現れる。つまり、上流側に燃切位置があるとの誤判定となる。そこで、上述した手順で、所定比率Rが調整される。
【0064】
図5(a),(b)の下部には、其々ハッチングされた火炎領域の面積S1,S2と、凸包処理された凸多角形の面積S1´,S2´が示されている。相対値RVとして差分(S´-S)を採用する場合、燃焼帯ST2に塊状物MTが無い場合の相対値RV1=(S1´-S1)より、燃焼帯ST2に塊状物MTがある場合の相対値RV2=(S2´-S2)の方が大きくなる傾向がある。
【0065】
燃切位置調整処理部15Dは、相対値RV=(S1´-S1)が所定の閾値より大きい場合に、塊状物の存在により燃切位置が上流側にずれていると判断して、相対値が大きくなるに連れて所定比率Rが小さくなるように、つまり燃切位置が下流側になるように調整する。なお、相対値RVが所定の閾値以下の場合には、塊状物が存在していてもその影響は小さいと判断して、予め設定された固定値に維持される。また、所定の閾値及び調整率は、予め試験などを行なって、燃切位置が適正な位置と判断される相対値RVと所定比率との相関関係を求めておき、求めた相関関係に基づいて決定すればよい。
【0066】
図6には、塊状物MTにより第1燃焼火炎FAが二つに分離された例が示されている。この場合、各第1火炎領域FAと仮想直線VLの重畳領域の合計画素数PFと仮想直線VLの全画素数PVとの比率(PF/PV)が所定比率Rとなる最下流側の位置が、燃切位置として推定される。
【0067】
そして、この場合も、上述と同様に、相対値RV={(S11´-S11)+(S12´-S12)}が所定の閾値より大きい場合に、塊状物MTの存在により燃切位置が上流側にずれていると判断して、相対値RVが大きくなるに連れて所定比率Rが小さくなるように、つまり燃切位置が下流側になるように調整される。
【0068】
なお、塊状物MTにより第1燃焼火炎FAが二つ以上の領域に部寧された場合、複数の第1燃焼火炎FAのうち、最大面積を有する第1燃焼火炎FAに対して、当該第1火炎領域FAと仮想直線VLの重畳領域の合計画素数PFと仮想直線VLの全画素数PVとの比率(PF/PV)が所定比率Rとなる最下流側の位置を、燃切位置として推定してもよい。
【0069】
[性状判定部]
性状判定部16は、ストーカ機構STの上面で焼却されるごみを撮像装置5で撮影した画像情報に基づいてごみの性状を判定する演算部である。
【0070】
図3(b)に示すように、性状判定部16は、火炎領域抽出処理部16Aと、ごみ枯れ推定処理部16Bと、面積算出処理部16Cと、塊状物判定処理部16Dの各機能ブロックを備えている。火炎領域抽出処理部16Aと、面積算出処理部16Cは、上述した燃切位置推定部15を構成する火炎領域抽出処理部15Aと面積算出処理部15Cが兼用される。
【0071】
図7に示したように、燃切位置推定部15と同様に、性状判定部16は、火炎領域抽出処理部16Aによる火炎領域抽出処理と、ごみ枯れ推定処理部16Bによるごみ枯れ推定処理と、面積算出処理部16Cによる面積算出処理と、塊状物判定処理部16Dによる塊状物判定処理を、経時的に繰返すように、つまり所定の時間間隔で繰返し実行するように構成されている。
【0072】
図9には、性状判定部16で実行される性状判定処理の手順が示されている。火炎領域抽出処理部16Aは、火炎領域抽出処理部15Aで説明した通り、フレーム画像を二値化した単一または複数の火炎領域のうち、大きさ(面積)が第1閾値以上の第1火炎領域FAと、第1閾値より小さな第2閾値以下の大きさ(面積)の第2火炎領域FAsを区別して抽出する(SC1,SC2,SC3)。
【0073】
面積算出処理部16Cは、第1火炎領域FAの面積Sと、第1火炎領域FAの輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積S´を算出する(SC4,SC5,SC6)。塊状物判定処理部16Dは、第1火炎領域FAの面積Sに対する凸包火炎領域の面積S´の相対値RVに基づいて、ストーカ機構STの上面にごみの塊状物MTが有るか無いかを判定する。相対値RVとして、火炎領域FAの面積Sに対する凸包火炎領域の面積S´の差分(S´-S)、または、比率(S´/S)を採用することができる。
【0074】
塊状物判定処理部16Dは、相対値RV=(S´-S)が所定の閾値より大きい場合に(SC7,Y)、塊状物MTが存在すると判定し(SC8)、相対値RV=(S´-S)が所定の閾値以下の場合に(SC7,N)、塊状物MTが存在しないと判定する(SC9)。そして、塊状物判定処理部16Dは、相対値RVが経時的に減少する場合に(SC10,Y)、当該塊状物MTが可燃性の塊状物であると判定し(SC11)、相対値RVが経時的に減少しない場合に(SC10,N)、当該塊状物MTが不燃性の塊状物であると判定する(SC12)。
【0075】
なお、
図6に示すように、第1火炎領域FAが2以上の複数に分離される場合には、塊状物判定処理部16Dは、相対値RV=(S´-S)に関わらず、塊状物MTが存在すると判定するとともに、当該塊状物MTが可燃性の塊状物MTであると判定する。
【0076】
ごみ枯れ推定処理部16Bは、切位置推定処理部15Bで推定された燃切位置と、火炎領域抽出処理部16Aで抽出された第2火炎領域FAsに基づいてごみ枯れの傾向があるか否かを推定する。具体的に、ごみ枯れ推定処理部16Bは、燃切位置よりも下流側に第2火炎領域FAsが点在する場合に(SC13,Y)、ごみ枯れの傾向があると推定する(SC14)。具体的には、燃切位置よりも下流側に存在する第2火炎領域FAsの数が予め設定されたごみ枯れ閾値より多い場合に、ごみ枯れの傾向があると推定する。
【0077】
燃切位置より上流側のごみ層厚さが薄くなると、ストーカ機構STの下方から供給される燃焼用空気の吹き抜けが生じて、ごみが燃切位置より下流側に吹き飛ばされて燃切位置より下流側で小さな火炎領域が点在する現象が発生する。ごみ枯れ推定処理部16Bは、燃切位置よりも下流側に点在する第2火炎領域の数がごみ枯れ閾値より多い場合に、ごみ枯れの傾向があると推定できるようになる。なお、ごみ枯れ閾値の値は、2以上の値で適宜設定すればよい。
【0078】
[燃焼制御装置による燃焼制御]
制御指令生成部18は、所定の指標に基づいてストーカ機構STの搬送速度の制御値を算出し、搬送制御部12を介して油圧機構h1,h2,h3を制御することで、ストーカ機構STを構成する乾燥帯ST1、燃焼帯ST2、後燃焼帯ST3の各搬送速度を調節するように構成されている。即ち、制御指令生成部18と搬送制御部12により搬送制御処理部が構成されている。なお、乾燥帯ST1、燃焼帯ST2、後燃焼帯ST3は一定の速度比を維持した状態で速度制御されるように油圧機構h1,h2,h3が調整されている。
【0079】
そして、搬送制御処理部は、塊状物判定処理部16Dで塊状物MTが有ると判定された場合に、当該所定の指標に基づくストーカ機構STの搬送速度を補正処理するように構成されている。具体的に、塊状物判定部16で塊状物MTが可燃性の塊状物であると判定されると、搬送制御処理部は搬送速度を減速補正することで、塊状物MTの燃焼時間を確保する。また、塊状物判定部16で塊状物MTが不燃性の塊状物MTであると判定されると、搬送制御処理部は搬送速度を増速補正することで、塊状物MTを迅速にストーカ機構ST(炉内)から排出する。
【0080】
搬送制御処理部により実行されるこのような搬送制御処理により、予め設定された指標に基づいてストーカ機構STの搬送速度が適切に自動制御されるので、オペレータによる手動の操作介入の必要性が低減される。
【0081】
さらに、搬送制御処理部は、ごみ枯れ推定処理部16Bでごみ枯れの傾向があると推定された場合に、当該所定の指標に基づくストーカ機構STの搬送速度を増速補正することで、ごみ枯れの発生を未然に防止するように構成されている。
【0082】
所定の指標として、燃切位置推定部15により推定されたごみの燃切位置を用いることができる。具体的に、推定されたごみの燃切位置が予め設定された制御範囲に維持されるように、制御指令生成部18によりストーカ機構STの搬送速度の制御値が算出される。このとき、同時に制御指令生成部18により給じん装置Pに対する制御値が算出され、給じん制御部11を介して給じん装置Pによる給じん速度が調整される。このとき、ストーカ機構STの搬送速度の増速補正または減速補正に連動して給じん速度が増速補正または減速補正される。
【0083】
所定の指標として、廃熱ボイラFの発生蒸気量を用いることもできる。蒸気量調節部17は、温度センサにより検出された炉出口温度や蒸気量センサにより検出された蒸気量に基づいて、所定の蒸気量が生成されるように目標蒸気量を算出する。制御指令生成部18は、当該目標蒸気量が得られるように燃焼空気の供給量の制御値、ストーカ機構STの搬送速度の制御値、給じん装置Pによる給じん速度の制御値を算出する。各制御値が給気制御部13、搬送制御部12、給じん制御部11に入力されて、給気量、搬送速度、給じん速度が制御される。
【0084】
なお、ごみ枯れ推定処理部16Bに加えて、或いはごみ枯れ推定処理部16Bとは別に、ストーカ機構STで焼却されるごみの層厚を算出する層厚算出部を備えている場合には、層厚算出部で算出されるごみの層厚を指標としてストーカ機構の搬送速度を制御することも可能である。例えば、層厚算出部として赤外線カメラにより撮影されたごみの燃焼画像に対して、火炎を除くように二値化処理した画像を得て、当該画像から燃焼帯ST2の床面からごみの表面までの平均高さをごみの層厚として検出することができる。なお、層厚算出部の具体的構成は特に限定するものではなく、既存の層厚算出部の構成を採用することができる。
【0085】
上述したごみ枯れ推定処理部16Bでごみ枯れの傾向があると推定する場合に参照する燃切位置は、燃切位置推定部15で推定された燃切位置以外の燃切位置を参照してもよい。例えば、第1燃焼火炎FAの最下流位置を燃切位置として採用してもよい。
【0086】
上述した実施形態では、燃切位置推定部15に、撮像装置により撮影されたフレーム画像から火炎領域(第1火炎領域S)を抽出する火炎領域抽出処理部15Aと、炉幅方向に沿う仮想直線を火炎領域(第1火炎領域S)の下方から上方に向けて走査したときに、仮想直線と火炎領域(第1火炎領域S)とが重畳する画素数と仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、燃切位置として算出する燃切位置推定処理部15Bを備えるとともに、火炎領域の面積と火炎領域の輪郭を凸包処理して得た凸包火炎領域の面積を算出する面積算出処理部15Cと、火炎領域の面積に対する凸包火炎領域の面積の相対値に基づいて、所定比率を調整する燃切位置調整処理部15Dを備えた構成を説明したが、面積算出処理部15C及び燃切位置調整処理部15Dを備えずに、火炎領域抽出処理部15Aと、燃切位置推定処理部15Bのみを備えて燃切位置推定部15を構成してもよい。
【0087】
また、燃切位置推定部15として、画像を所定の二値化閾値で二値化して単一または複数の閉領域で構成される火炎領域を抽出する火炎領域抽出処理部と、火炎領域の輪郭点を全て包含する最小の凸多角形である凸包火炎領域を生成する凸包処理部と、炉幅方向に沿う仮想直線を凸包火炎領域の下方から上方に向けて走査したときに、仮想直線と凸包火炎領域とが重畳する画素数と仮想直線の画素数との比率が所定比率となる最下流側の位置を、燃切位置として推定する燃切位置推定処理部と、を備えて構成してもよい。
【0088】
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各部の具体的な構成は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
1:ごみ焼却炉
2:主燃焼室
3:二次燃焼室
4:ガス供給機構
5:撮像装置
10:燃焼制御装置
11:給じん制御部
12:搬送制御部
13:給気制御部
14:演算処理部
15:燃切位置推定部
15A:火炎領域抽出処理部
15B:燃切位置推定処理部
15C:面積算出処理部
15D:燃切位置調整処理部
16:性状判定部
16A:火炎領域抽出処理部
16B:ごみ枯れ推定処理部
16C:面積算出処理部
16D:塊状物判定処理部
17:蒸気量調節部
18:制御指令生成部
A:プラットホーム
B:ごみピット
C:クレーン機構
D:ごみ投入ホッパ
E:炉室
F:廃熱ボイラ
G:エコノマイザ
FA:火炎領域
VL:仮想直線