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特開2024-21223ごみの攪拌方法及びごみの攪拌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021223
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ごみの攪拌方法及びごみの攪拌システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20240208BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F23G5/50 Q ZAB
F23G5/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123914
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(72)【発明者】
【氏名】北村 真一
(72)【発明者】
【氏名】林 祐一
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 慶文
(72)【発明者】
【氏名】西村 和基
(72)【発明者】
【氏名】島田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】丹野 良介
【テーマコード(参考)】
3K062
3K065
【Fターム(参考)】
3K062AA01
3K062AB01
3K062AC01
3K062CA08
3K062CB01
3K062CB05
3K065AA01
3K065AB01
3K065AC01
3K065EA03
3K065EA29
3K065EA44
(57)【要約】
【課題】ごみの燃焼状態を良好に維持可能なごみ質のごみを焼却炉に供給することができるごみの攪拌方法を提供する。
【解決手段】ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌方法であって、複数の領域に区画された前記ごみピットの領域毎にごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する三次元マップ生成処理と、前記領域毎に貯留されたごみの属性を管理するごみ属性管理処理と、前記ごみ属性管理処理で管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、前記ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する攪拌計画策定処理と、を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌方法であって、
複数の領域に区画された前記ごみピットの領域毎にごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する三次元マップ生成処理と、
前記領域毎に貯留されたごみの属性を管理するごみ属性管理処理と、
前記ごみ属性管理処理で管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、前記ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する攪拌計画策定処理と、
を実行するごみの攪拌方法。
【請求項2】
前記ごみ属性管理処理により管理される前記ごみ属性は、貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状を含み、
前記ごみ性状は、前記ごみクレーンから落下するごみに対する動画像解析で得られるごみの飛散状態に基づいて推定するごみ性状推定処理により取得される請求項1記載のごみの攪拌方法。
【請求項3】
前記ごみ属性管理処理により管理される前記ごみ属性と、前記ごみ属性に対応するごみをごみ焼却炉で焼却処理したときに得られるごみの燃焼状態と、を機械学習装置に入力し、前記機械学習装置から出力される前記ごみ属性の評価値に基づいて前記所定のごみ質が調整される請求項2記載のごみの攪拌方法。
【請求項4】
ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌システムであって、
複数の領域に区画された前記ごみピットの領域毎にごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する三次元マップ生成処理部と、
前記領域毎に貯留されたごみの属性を管理するごみ属性管理処理部と、
前記ごみ属性管理処理部で管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、前記ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する攪拌計画策定処理部と、
を備えているごみの攪拌システム。
【請求項5】
前記ごみ属性管理処理部により管理される前記ごみ属性は、貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状を含み、
前記ごみクレーンから落下するごみに対する動画像解析で得られるごみの飛散状態に基づいて、前記ごみ性状を推定するごみ性状推定処理部をさらに備えている請求項4記載のごみの攪拌システム。
【請求項6】
前記ごみ属性管理処理部により管理される前記ごみ属性と、前記ごみ属性に対応するごみをごみ焼却炉で焼却処理したときに得られるごみの燃焼状態とから、前記ごみ属性の評価値を出力する機械学習装置を備え、前記機械学習装置から出力される前記ごみ属性の評価値に基づいて前記所定のごみ質を調整するように構成されている請求項5記載のごみの攪拌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌方法及びごみの攪拌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて事前に攪拌し、攪拌後のごみを焼却炉に投入するように、ごみクレーンを手動運転または自動運転により操作している。攪拌によりごみ質を平準化することで、ごみ焼却炉に投入されたごみの燃焼状態の変動を抑制するためである。
【0003】
しかし、ごみクレーンを手動運転で操作する場合には、操作者の交代によりそれまでの攪拌履歴がその後の運転に反映され難いという問題や、自動運転で操作する場合には操作者であれば目視確認が可能であったごみピットに搬入されたごみの状態に関わらず、一律に攪拌操作されるため、効率的な攪拌が困難であるという問題があった。
【0004】
特許文献1には、ごみピット内におけるごみの混合度を評価するシステムが提案されている。
当該ごみの混合度評価システムは、ごみピット内のごみをその上方から撮像するように設置される撮像部と、ごみの三次元高さ情報を算出する三次元ごみ高さ算出部と、前記撮像部の設置情報に基づいて、前記撮像部で撮像された画像を上空視点画像に変換する画像変換部と、前記ごみの三次元高さ情報に基づいて、前記上空視点画像の全ての区域が同一高さ平面上になるように補正した補正画像を得る画像補正部と、前記補正画像を階調化し、所定の閾値で二値化して二値化画像を得る二値化処理部と、前記二値化画像を複数の分割エリアを有する2以上の評価エリアに分割し、各評価エリアのごみの混合度を評価する混合度評価部と、を備えている。
【0005】
そして、前記混合度評価部は、各分割エリアの明部分あるいは暗部分の抽出面積を算出し、全評価エリアに対するあるいは各評価エリアに対する分割エリアの前記明部分あるいは暗部分の抽出面積のばらつきを算出し、前記ばらつきにより混合度を評価するばらつき評価部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-148409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来技術は、補正画像を例えば色相、彩度、輝度のいずれかで階調化し、さらに二値化して複数の評価エリアに分割し、全評価エリアまたは各評価エリアに対する分割エリアの明部分あるいは暗部分の抽出面積のばらつきにより混合度を評価する評価システムである。
【0008】
しかし、一律に混合度を高めることにより、ごみの焼却に適したごみが得られるとは限らず、ごみ焼却炉で安定した良好な焼却処理を実現するために、ごみピットにおけるごみの攪拌方法については、さらなる改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、ごみの燃焼状態を良好に維持可能なごみ質のごみを焼却炉に供給することができるごみの攪拌方法及びごみの攪拌システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明によるごみの攪拌方法の第一の特徴構成はごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌方法であって、複数の領域に区画された前記ごみピットの領域毎にごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する三次元マップ生成処理と、前記領域毎に貯留されたごみの属性を管理するごみ属性管理処理と、前記ごみ属性管理処理で管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、前記ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する攪拌計画策定処理と、を実行する点にある。
【0011】
ごみピットが複数の領域に区画され、区画された領域毎にごみの貯留状態、例えばごみの貯留量などのごみの属性を示した三次元マップが生成される。三次元マップの各領域に位置するごみの属性が管理され、所定のごみ質が得られるように、ごみの属性に基づいてごみクレーンを用いたごみの攪拌計画が策定される。
【0012】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ごみ属性管理処理により管理される前記ごみ属性は、貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状を含み、前記ごみ性状は、前記ごみクレーンから落下するごみに対する動画像解析で得られるごみの飛散状態に基づいて推定するごみ性状推定処理により取得される点にある。
【0013】
ごみ属性として、ごみの貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状が含まれ、これらのごみ属性に基づいて領域毎にごみ質が把握される。ごみ性状は、ごみクレーンから落下するごみに対する動画像解析で得られるごみの飛散状態により推定される。
【0014】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記ごみ属性管理処理により管理される前記ごみ属性と、前記ごみ属性に対応するごみをごみ焼却炉で焼却処理したときに得られるごみの燃焼状態と、を機械学習装置に入力し、前記機械学習装置から出力される前記ごみ属性の評価値に基づいて前記所定のごみ質が調整される点にある。
【0015】
ごみ属性と、当該ごみ属性のごみを焼却炉で焼却したときの燃焼状態とを機械学習することにより、各ごみ属性に対する評価値が得られ、評価値に基づいてごみ質の良否を判定することで、目標とするごみ質が得られるようにごみの攪拌計画が策定される。
【0016】
本発明によるごみの攪拌システムの第一の特徴構成は、ごみピットに搬入されたごみを、ごみクレーンを用いて把持、移動、落下することにより攪拌するごみの攪拌システムであって、複数の領域に区画された前記ごみピットの領域毎にごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する三次元マップ生成処理部と、前記領域毎に貯留されたごみの属性を管理するごみ属性管理処理部と、前記ごみ属性管理処理部で管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、前記ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する攪拌計画策定処理部と、を備えている点にある。
【0017】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記ごみ属性管理処理部により管理される前記ごみ属性は、貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状を含み、前記ごみクレーンから落下するごみに対する動画像解析で得られるごみの飛散状態に基づいて、前記ごみ性状を推定するごみ性状推定処理部をさらに備えている点にある。
【0018】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記ごみ属性管理処理部により管理される前記ごみ属性と、前記ごみ属性に対応するごみをごみ焼却炉で焼却処理したときに得られるごみの燃焼状態とから、前記ごみ属性の評価値を出力する機械学習装置を備え、前記機械学習装置から出力される前記ごみ属性の評価値に基づいて前記所定のごみ質を調整するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によれば、ごみの燃焼状態を良好に維持可能なごみ質のごみを焼却炉に供給することができるごみの攪拌方法及びごみの攪拌システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ストーカ式のごみ焼却炉の説明図
図2】ストーカ式のごみ焼却炉の要部拡大図。
図3】ごみ焼却炉の制御システムの説明図
図4】複数の領域に区画されたごみピットを管理する三次元三次元マップの説明図
図5】(a)はごみピットの撮影に基づく三次元マップの生成処理の手順を示すフローチャート、(b)は攪拌計画策定処理の手順を示すフローチャート、(c)はごみの攪拌処理の手順を示すフローチャート、(d)はごみピットからごみホッパへのごみの搬出手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明によるごみの攪拌方法及びごみの攪拌システムを図面に基づいて説明する。
【0022】
[ごみ焼却炉の構造]
図1には、ストーカ式のごみ焼却炉1が示されている。ごみ収集車が進入するプラットホームA、ごみ収集車により収集されたごみを搬入して集積するごみピットB、ごみホッパD、ごみピットBに集積されたごみを攪拌するとともにごみホッパDに搬出するごみクレーンC、炉室E、炉室Eの上部空間に設置した廃熱ボイラF、エコノマイザGなどを備え、炉室Eで生じた燃焼排ガスが煙道に沿って配された減温塔H、集塵機Iなどの排ガス処理設備で浄化された後に煙突Jから排気される。炉室Eを負圧に維持するべく、煙道には誘引送風機Lが設けられている。
【0023】
プラットホームAとごみピットBの間に設けられた臭気漏洩防止及び安全確保のための観音開き式のごみ投入扉Kを開放することにより、ごみ収集車によって収集運搬されたごみがごみピットBに搬入される。
【0024】
ごみピットBに集積されたごみは、自動制御または制御室の運転員によって操作されるグラブバケット方式のごみクレーンCに把持されて、ごみピットB内で移送、攪拌され、或いはごみホッパDの上端に形成された開口部まで移送された後にごみホッパDに落下投入される。ごみピットBの上方には、ごみピットBに投入されたごみを撮影し、ごみの表面高さを検出可能なステレオカメラ6が設置されている。
【0025】
ごみホッパDの底部に給じん装置Pが設けられ、ごみホッパDに投入されたごみが給じん装置Pにより炉室Eに押込み投入される。ごみホッパDに投入されたごみは、ごみホッパDから炉室Eへの外気の流入を遮断するシール機構として機能し、煙道に備えた誘引送風機Lによる誘引で炉室Eが負圧に維持される。
【0026】
炉室Eは、主燃焼室2と、主燃焼室2で生じた燃焼排ガスを完全燃焼させる二次燃焼室3を備え、二次燃焼室3の壁部に廃熱ボイラFの複数の水管WTが埋め込まれている。
【0027】
図2に示すように、主燃焼室2には、固定火格子と可動火格子がごみの搬送方向に沿って交互に配置されたストーカ機構STが設けられている。油圧機構h1,h2,h3によって可動火格子が固定火格子に対して前後方向に往復駆動されることにより、ごみが撹拌されながら下流側に搬送される。
【0028】
ストーカ機構STの下部にごみの搬送方向に沿う上流側から下流側に向けて順に四つの風箱W1,W2,W3,W4が設けられ、押込み送風機から各風箱W1,W2,W3,W4に主燃焼用空気が供給される。ストーカ機構STのうち風箱W1に対応する上流領域が乾燥帯ST1、風箱W2,W3に対応する中流領域が燃焼帯ST2、風箱W4に対応する下流領域が後燃焼帯ST3となる。
【0029】
風箱W1,W2,W3,W4の其々に圧力センサが設けられるとともに、主燃焼室2に圧力センサが設けられ、各風箱と主燃焼室2の圧力差が検出可能に構成されている。さらに、ストーカ機構STを介して主燃焼室2に流入する燃焼空気流量を検出する流量センサが設けられている。
【0030】
給じん装置Pによって主燃焼室2に押し込まれたごみは、乾燥帯ST1で主に加熱乾燥され、燃焼帯ST2でガス化燃焼されて、ガス化燃焼により炭化されたごみは燃焼帯ST2の下流側から後燃焼帯ST3で固体燃焼されて灰化され、灰化された後に後燃焼帯ST3の端部から灰シュートに落下する。
【0031】
主燃焼室2から二次燃焼室3の入口部にかけて、炉室Eの前壁2F及び後壁2Rにくびれ部が形成され、当該くびれ部にガス供給機構4が設けられている。ガス供給機構4から供給されるガスにより二次燃焼室3に流入する燃焼排ガスが撹拌され、整流されて二次燃焼室3で完全燃焼される。
【0032】
なお、ガス供給機構4から供給されるガスは二次燃焼用の空気であってもよいし、主燃焼室2から引抜かれた排ガス、集塵機Iより下流の煙道から分岐された再循環排ガス、或いはそれ以外の排ガス流路から分岐された排ガスであってもよいし、空気と前記各排ガスの混合ガスであってもよい。
【0033】
被焼却物に対する理論空気比が約1.3となるように主燃焼用空気と二次燃焼用空気の総量が調整されていればよく、例えば理論空気比が約1.3となるように全ての空気が主燃焼用空気で賄われている場合にはガス供給機構4から供給されるガスは、煙道から引抜かれた排ガスのみであってもよい。また、主燃焼用空気で約1.0の空気が賄われ、二次燃焼用空気で約0.3の空気が賄われるように構成してもよい。二次燃焼室3の出口部には、温度センサ及びガスセンサが設けられ、二次燃焼室3における二次燃焼状態がモニタされる。
【0034】
炉室Eの後壁2Rに産業用テレビカメラ5が設置され、ストーカ機構STの上面で搬送されつつ焼却されるごみの燃焼火炎を含む燃焼状態が撮影される。
【0035】
[制御システムの構成]
図3には、上述したごみ焼却炉1の制御システムが示されている。制御システムは、燃焼制御装置10、ごみ攪拌システム17、機械学習装置18等を備えている。燃焼制御装置10、ごみ攪拌システム17、機械学習装置18の其々は、CPUボード、メモリボード、入出力インタフェースボード、表示装置、入力装置などを備えて構成されている。メモリボード上のメモリに各種の制御プログラムがインストールされ、CPUボード上のCPUで各種の制御プログラムが実行されることにより、其々所定の機能が発揮される。
【0036】
燃焼制御装置10は、ごみ焼却炉1で焼却されるごみの燃焼状態や、廃熱ボイラFで生成される蒸気量を制御する機能ブロックで、給じん装置Pによって主燃焼室2に供給されるごみの投入量を調整する給じん制御部11、油圧機構h1,h2,h3によって乾燥帯ST1、燃焼帯ST2、後燃焼帯ST3それぞれの搬送速度を制御する搬送制御部12、各風箱W1~W4から供給する主燃焼用空気の給気量を調整するとともにガス供給機構4からの給気量を調整する給気制御部13を備え、燃焼状態に基づいて各制御部11,12,13に制御指令を出力する演算処理部14を備えている。
【0037】
演算処理部14は、燃焼状態評価部15、制御指令生成部16を備えている。燃焼状態評価部14は、上述した温度センサ、圧力センサ、流量センサ、ガスセンサ、蒸気量センサなどの各種のセンサによる検出値や、産業用テレビカメラ5で撮影された炉内の燃焼画像が入力され、各種のセンサによる検出値と目標値とのずれ量や、燃焼画像の解析から得られるストーカ機構ST上の燃切位置やごみ厚などに基づいて燃焼状態を評価する機能ブロックである。
【0038】
制御指令生成部16は、燃焼状態評価部15による評価結果に基づいて、現在の燃焼状態が目標とする燃焼状態に到るように、PID制御等のフィードバック演算を行ない、各制御部11,12,13に出力する制御指令を生成する機能ブロックである。
【0039】
[ごみ攪拌システムの構成]
ごみ攪拌システム17は、ごみピットBに搬入されたごみを、ごみクレーンCを用いて把持、移動、落下することによりごみピットB内で攪拌して、所定のごみ質に調質したごみを、ごみクレーンCを用いてごみホッパDに搬出するシステムである。
【0040】
ごみ攪拌システム17は、三次元マップ生成処理部17A、ごみ属性管理処理部17B、攪拌計画策定処理部17C、攪拌制御部17Dを備えている。
【0041】
三次元マップ生成処理部17Aは、ステレオカメラ6で撮影されたごみ画像に基づいて、ごみピットBにおけるごみの堆積高さを求め、ごみの堆積高さに基づいて複数の領域に区画されたごみピットBの領域毎のごみの貯留状態を示す三次元マップを生成する。
【0042】
図4には、ごみピットBに区画された所定サイズの直方体の複数の領域Ri,j(i,jは自然数)が示され、ステレオカメラ6で撮影されたごみ画像から求めたごみの堆積高さが各領域Ri,jに割り付けられた三次元マップが示されている。領域Ri,j毎に算出されるごみの堆積高さの平均値が各領域Ri,jのごみ堆積高さとなり、ごみが堆積している領域がハッチングされている。領域Ri,jのサイズは特に限定されるものではないが、ごみクレーンCにより1回で把持可能なごみの平均量の整数倍の容量となるように設定されている。ごみクレーンCは、ごみピットBの上空でX,Y,Z方向に移動可能に設置されている。
【0043】
ごみ属性管理処理部17Bは、領域Ri,j毎にごみの属性を管理する。ごみの属性として、ごみの貯留期間、ごみクレーンによる攪拌履歴、ごみ性状が含まれる。
ごみの貯留期間とは、ごみ収集車からごみピットBに搬入された時点からの経過時間をいい、経過時間が長いほど圧密化される傾向が高いと判断する指標となる。
攪拌履歴は、領域Ri,jに堆積されたごみの攪拌回数をいい、攪拌回数が一定値以上であれば、ごみが均質化されている傾向が高いと判断する指標となる。
ごみ性状とは、例えば低位発熱量を推定する指標で、主にステレオカメラ6で撮影されたごみ画像に対して行なわれるごみの挙動解析により定められる。
【0044】
ごみの挙動解析について説明する。ごみ投入扉KからごみピットBにごみが投入される様子がステレオカメラ6で撮影され、またごみクレーンCにより任意の領域から把持されたごみが別の領域の上方から落下される様子がステレオカメラ6で撮影される。ごみの落下時にステレオカメラ6で撮影される動画像に対する解析により把握されるごみの飛散状態に基づいてごみ性状が推定される。例えば、ごみの落下時に撮影された複数フレームのごみ画像に対して実行される追尾処理やオプティカルフロー法等を活用することができる。
【0045】
オプティカルフロー法は、時間的に間隔を隔てた複数枚のフレーム画像間で対応する画素またはブロック画素の動きを解析して特定の被写体の速度ベクトルを求める手法で、画像の濃淡パターンが運動に対して不変に保たれるという仮定に基づいて、画像中の濃淡分布の空間的勾配と時間的勾配を関係付ける式に基づく勾配法などが採用される。オプティカルフロー法により、堆積しているごみ表面にごみの塊が落下するまでの挙動や落下した後の挙動を解析し、その挙動からごみの種類を推定する。
【0046】
例えば、落下速度が遅い場合には比較的軽量物であり、落下速度が速い場合には比較的重量物であると推定でき、例えば、色やサイズから破袋されていないごみ袋が落下していると判定できる場合には、ごみ袋の内容物が重量物なのか、軽量物なのかが推定される。例えば、ごみのサイズ、色、落下速度、落下後の跳ね返り状態、転がり速度の程度に基づいて、燃え易いごみであるのか、燃えにくいごみであるのか、或いは発熱量の高いごみであるのか、発熱量の低いごみであるのかなどが推定される。事前に様々なごみの落下時の画像にオプティカルフロー法を適応した場合のごみ性状とその代表的挙動を学習した機械学習装置を用いて、ごみ性状に対応した低位発熱量を推定してもよい。
【0047】
本実施形態では、低位発熱量を複数段階にグループ化し、オプティカルフロー法を適応して得られるごみ画像から得られる各低位発熱量と各低位発熱量に対応するごみ画像の画素数との積を、全画素数で除した値を、落下ごみを代表する低位発熱量として、該当するグループに帰属させるように構成している。
【0048】
攪拌計画策定処理部17Cは、ごみ属性管理処理部17Bで管理されるごみ属性に基づいて、所定のごみ質が得られるように、予め設定された攪拌ルールに従って、ごみクレーンを用いたごみの攪拌計画を策定する。
【0049】
攪拌制御部17Dは、攪拌計画策定処理部17Cにより策定された攪拌計画に従って、ごみクレーンCを自動制御、つまり、ある領域に堆積したごみを把持して持ち上げ、別の領域の上方に移動した後に、把持しているごみを落下させるという一連の攪拌動作を繰り返す。
【0050】
攪拌動作を実行する度に、ごみ属性管理処理部17Bは、対応する領域Ri,jのごみの属性を更新処理する。更新処理として、以下が例示できる。ごみの貯留期間について、該当する領域Ri,jに以前から存在していたごみの貯留期間と、新たに落下されたごみの貯留期間との相加平均値を新たな貯留期間として更新する。ごみクレーンによる攪拌履歴として、該当する領域Ri,jに以前から存在していたごみの攪拌回数と、新たに落下されたごみの攪拌回数との相加平均値を新たな攪拌回数として更新する。ごみ性状として、該当する領域Ri,jに落下されたごみ画像に対して実行されたオプティカルフロー法に基づくごみの種類、つまり低位発熱量と、該当する領域Ri,jに以前から存在していたごみの低発熱量との相加平均値を新たなごみの種類として更新する。
【0051】
ごみ属性の更新処理は相加平均に限らず、重み付け平均であってもよい。新たに落下されたごみの属性値に対する重みを、該当する領域Ri,jに以前から存在していたごみの属性値に対する重みよりも大きくすることで、新たに落下されたごみの寄与度を大きくすることができる。また領域Ri,jの大きさをクレーンによる1回の把持領域より小さく設定し、攪拌に伴うごみ属性の更新処理を、1回の攪拌に対し投下範囲にある複数領域に同時に適用してもよい。
【0052】
以下、図5(a)から(d)に基づいて、ごみ攪拌システム17により実行されるごみの攪拌方法を説明する。
図5(a)には、ごみピットの撮影に基づく三次元マップの生成処理の手順が示されている。ステレオカメラ6でごみピットBが動画像として撮影されてメモリに格納され(SA1)、直前のフレーム画像との間で変化の有無が判断される(SA2)。変化があると攪拌によるごみの落下または新たなごみの搬入と判断して、対応する一連の画像に対してオプティカルフロー法によるゴミ性状推定処理が実行される(SA3)。
【0053】
ステレオカメラ6で撮影された画像に基づいて求めたごみ表面高さに従って、三次元マップがメモリに更新記憶され(SA4)、ゴミ性状推定処理の結果に基づいて対応する領域Ri,jのごみ属性がメモリに更新記憶される(SA5)。ステップSA1からステップSA5が繰り返される。
【0054】
図5(b)には、攪拌計画策定処理の手順が示されている。メモリから三次元マップ及びその属性が読み込まれると(SB1)、ごみ高さの分布が評価されるとともに(SB2)、ごみ属性の分布が評価される(SB3)。
【0055】
ごみ高さの分布評価とは、ごみ投入扉Kの近傍のごみ高さが上昇している場合に、新たなごみが搬入されたため、優先して他の領域に移送する必要があると評価し、或いは、局所的にごみ高さが高い、或いは低い領域がある場合に、高い領域のごみを移送し、或いは低い領域にごみを移送する必要があると評価することなどをいう。
【0056】
ごみ属性の分布の評価とは、各領域のごみ属性である貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状から攪拌の優先度の高い領域を抽出する処理をいい、貯留期間の長い領域と短い領域の抽出、攪拌履歴の好きない領域と多い領域の抽出、ごみ性状(本実施形態では低位発熱量)の低い領域と高い領域の抽出をいう。
【0057】
次に、ごみホッパDに搬出するための目標ごみ質が設定され(SB4)、移送の必要性の高い領域を優先して、目標ごみ質を必要な量だけ得るための効率的な攪拌手順を生成する(SB5)。目標ごみ質はオペレータによって設定され、焼却炉の燃焼状態やごみの搬入日の天候や搬入されるごみの性状に基づいて設定される。ステップSB5からステップSB1が繰り返される。
【0058】
図5(c)には、ごみの攪拌処理示されている。ステップSB5で生成された攪拌手順に従って、ごみの把持対象領域にごみクレーンが移動制御され、クレーンが降下されてごみが把持される。その後クレーンが上昇されて移送対象領域にごみクレーンが移動制御されて落下される、という攪拌処理が繰り返される(SC1)。
【0059】
図5(d)には、ごみピットからごみホッパへのごみの搬出手順が示されている。ごみホッパDに投入されたごみのレベルがごみホッパDに備えたレベルセンサで検知され、新たなごみの投入が必要と判断されると(SD1)、三次元マップのごみ属性をメモリから読み出して(SD2)、目標ごみ質に調質された領域を特定し、当該領域を搬出領域として特定し(SD3)、ごみクレーンを制御して当該領域のごみをごみホッパDに搬出する(SD4)。
【0060】
上述した実施形態では、ごみの種類として低位発熱量を用いた例を説明したが、低位発熱量以外の特性値を用いてもよい。例えば、オプティカルフロー法を応用して、可燃性分の比率と含水率燃え易さを求め、それを複数段階の数値で表すようにしてもよい。
【0061】
図3に示すように、ごみ属性管理処理部17Bにより管理されるごみ属性と、ごみ属性に対応するごみをごみ焼却炉で焼却処理したときに得られるごみの燃焼状態とから、ごみ属性の評価値を出力する機械学習装置18を備え、機械学習装置から出力されるごみ属性の評価値に基づいて、攪拌計画策定処理部17Cがごみピット内のごみを所定のごみ質に調整するように構成されていることが好ましい。
【0062】
ごみ属性と、当該ごみ属性のごみを焼却炉で焼却したときの燃焼状態とを機械学習することにより、各ごみ属性に対する評価値が得られ、評価値に基づいてごみ質の良否を判定することで、目標とするごみ質が得られるようにごみの攪拌計画が適切に策定されるようになる。
【0063】
機械学習装置18で実行される学習アルゴリズムとして、教師あり機械学習アルゴリズムであるニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等を好適に用いることができる。機械学習装置18に入力するごみ属性として上述した貯留期間、攪拌履歴、ごみ性状(低位発熱量)、ごみの燃焼状態として発生蒸気量、ストーカ速度、燃切位置を採用することができる。
【0064】
上述した実施形態では、三次元マップ生成処理部17Aが、ステレオカメラ6で撮影されたごみ画像に基づいて、ごみピットBにおけるごみの堆積高さを求めることで、三次元マップを生成する例を説明したが、ごみの堆積高さを求めるためにステレオカメラ6以外の測定器を用いてもよい。例えば、単一または複数のLiDAR(light detection and ranging)を用いて、ごみ表面までの距離画像を取得してもよい。
【0065】
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各部の具体的な構成は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1:ごみ焼却炉
2:主燃焼室
3:二次燃焼室
4:ガス供給機構
5:産業用テレビカメラ
6:ステレオカメラ
10:燃焼制御装置
11:給じん制御部
12:搬送制御部
13:給気制御部
14:演算処理部
15:燃焼状態評価部
16:制御指令生成部
17:ごみ攪拌システム
17A:三次元マップ生成処理部
17B:ごみ属性管理処理部
17C:攪拌計画策定処理部
17D:攪拌制御部
18:機械学習装置
A:プラットホーム
B:ごみピット
C:クレーン機構
D:ごみホッパ
E:炉室
F:廃熱ボイラ
G:エコノマイザ
図1
図2
図3
図4
図5