(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021226
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】財布
(51)【国際特許分類】
A45C 1/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A45C1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123917
(22)【出願日】2022-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和3年11月16日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/blogs/topics/hitoe-fold-less-foschia 販売日:令和3年12月17日、販売した場所:メール送信によるオンライン販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和3年12月23日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/blogs/topics/hitoe-fold-less-crowdfunding 販売日:令和3年12月23日、販売した場所:日本経済新聞社が運営する未来ショッピングのウェブサイト(https://shopping.nikkei.co.jp/projects/hitoe-fold-less)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和3年11月16日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/products/hitoe-fold-less-foschia 販売日:令和4年4月24日、販売した場所:SYRINX合同会社のウェブサイト(https://syrinx.audio/products/hitoe-fold-less-foschia)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和4年2月19日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/blogs/topics/new-aria 販売日:令和4年4月24日、販売した場所:SYRINX合同会社のウェブサイト(https://syrinx.audio/products/hitoe_fold-aria)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイトの掲載日:令和4年3月17日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/blogs/topics/new-2series ウェブサイトの掲載日:令和4年3月17日、ウェブサイトのアドレス:https://syrinx.audio/blogs/topics/self-crowdfunding 販売日:令和4年3月24日、販売した場所:SYRINX合同会社のウェブサイト(https://syrinx.audio/products/hitoe-fold-aria-monocromo) 販売日:令和4年3月24日、販売した場所:SYRINX合同会社のウェブサイト(https://syrinx.audio/products/hitoe-fold-aria-ortensia)
(71)【出願人】
【識別番号】516109266
【氏名又は名称】佐藤 宏尚
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏尚
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA01
3B045CB05
3B045DA31
3B045DA45
3B045EA06
3B045FA01
3B045FC05
(57)【要約】
【課題】カードが落下することを防止しながらも、使用者の利便性を損なうことのない財布、を提供する。
【解決手段】財布10は、カードを挟み込んで保持するカード保持部40を備える。カード保持部40は、カードに対し一方の表面側から対向する第1部分と、カードに対し他方の表面側から対向する第2部分と、カードに対し側面側から対向する第3部分と、を含む。第3部分の内面には、カードを摩擦力によって保持するために、起毛加工が施された起毛部NPが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを挟み込んで保持する保持部、を備え、
前記保持部は、
前記カードに対し一方の表面側から対向する第1部分と、
前記カードに対し他方の表面側から対向する第2部分と、
前記カードに対し側面側から対向する第3部分と、を含み、
前記第3部分の内面には、前記カードを摩擦力によって保持するための摩擦部が設けられている、財布。
【請求項2】
前記保持部は、重ねられた複数枚の前記カードを保持するものであり、
前記摩擦部は、前記保持部に保持されている全ての前記カードの側面に当接する、請求項1に記載の財布。
【請求項3】
前記保持部は、所定の取り出し方向に前記カードをスライドさせることで、前記カードを取り出すことが可能となっており、
前記摩擦部が当接する前記カードの側面は、前記取り出し方向に対し平行な側面である、請求項2に記載の財布。
【請求項4】
前記財布は、直線状の折目に沿って折り畳まれるものであり、
前記取り出し方向は、前記折目に沿った方向である、請求項3に記載の財布。
【請求項5】
前記摩擦部は、起毛加工が施された部分として構成されている、請求項1に記載の財布。
【請求項6】
前記摩擦部は、
前記第3部分を構成する部材に対し、起毛加工を直接施すことによって形成されている、請求項5に記載の財布。
【請求項7】
前記摩擦部は、
前記第3部分を構成する部材に対し、起毛加工が施された別部材を取り付けることによって形成されている、請求項5に記載の財布。
【請求項8】
前記摩擦部はゴムにより形成されている、請求項1に記載の財布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は財布に関する。
【背景技術】
【0002】
財布には、硬化や紙幣等の現金を収納する部分に加えて、例えばクレジットカードやキャッシュカードのようなカードを収納する部分も設けられることが多い。下記特許文献1に記載されているように、カードを収納する部分では、互いに対向する一対の部材が袋状となっている。1枚もしくは複数枚のカードが、これら一対の部材の間に挟み込まれた状態で保持される。使用者は、挟み込まれたカードを所定方向にスライドさせて財布から取り出し、当該カードを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
財布に収納されたカードは、上記のように一対の部材の間に挟み込まれた状態で保持されている。このため、財布の角度等によっては、例えば重力によってカードが滑り出てしまい、財布から落下してしまう可能性がある。カードの落下を確実に防止するためには、上記の「所定方向」にカードが滑り出ることを防止するための蓋等を設けることが考えられる。しかしながら、その場合、使用者は財布からカードを取り出すに先立ち、蓋を開ける操作を行わなければならなくなるため、使用者の利便性は損なわれることとなる。
【0005】
本発明は、カードが落下することを防止しながらも、使用者の利便性を損なうことのない財布、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る財布は、カードを挟み込んで保持する保持部、を備える。保持部は、カードに対し一方の表面側から対向する第1部分と、カードに対し他方の表面側から対向する第2部分と、カードに対し側面側から対向する第3部分と、を含む。第3部分の内面には、カードを摩擦力によって保持するための摩擦部が設けられている。
【0007】
このような構成の財布では、保持部において保持されているカードの側面に、摩擦部が当接した状態となる。摩擦部が設けられていない従来の構成に比べ、カードに加えられる摩擦力は大きくなるので、カードが上記の「所定方向」に滑り出て落下してしまうことが防止される。カードの落下を防止するための蓋等を設ける必要が無いので、使用者の利便性が損なわれてしまうことはない。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、カードが落下することを防止しながらも、使用者の利便性を損なうことのない財布、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る財布の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る財布の構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、保持部においてカードが保持された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
本実施形態に係る財布10は、天然皮革により形成された所謂「二つ折り財布」であり、
図1の点線DLに沿って折り畳んだ状態で携帯される財布である。点線DLは、直線状の折目を表している。
図1のように財布10を広げた状態においては、当該折目は財布10の長手方向における略中央に位置している。折目に沿って財布10が折り畳まれると、
図1における紙面手前側の表面のうち、点線DLを間に挟んだ両側の部分が、互いに対向した状態となる。
【0012】
財布10は、皮革である複数の部材を組み合わせ、これらを縫い合わせることで形成されている。これの部材には、基材110と、第1保持部材120と、フラップ部材130と、第2保持部材140と、第1袋部材150と、第2袋部材160と、が含まれる。尚、これらの各部材は、可撓性を有する部材であればよく、天然皮革とは異なる部材(例えば合成皮革や布等)であってもよい。
【0013】
基材110は、財布10の外観を構成する部材であり、財布10の大部分を占める。基材110の外形は概ね長方形であり、その長手方向における中央に上記の折目が設けられている。折目(点線DL)が伸びる方向は、基材110の長手方向に対し垂直な方向である。
【0014】
図2には、
図1と同様に広げられた状態の財布10を、基材110の表面に対し垂直な方向から見たときの状態が示されている。説明の便宜上、略長方形である基材110の4つの辺のそれぞれを、「辺121」、「辺122」、「辺123」、「辺124」と称する。辺121は、
図2における右側の短辺である。辺122は、
図2における上側の長辺である。辺123は、
図2における左側の短辺である。辺124は、
図2における下側の長辺である。
【0015】
第1保持部材120は、基材110のうち
図2における右側の端部近傍の部分、に重なった状態で、基材110に縫い付けられ固定された部材である。第1保持部材120は、辺121及び辺122に沿った部分が、基材110に対し縫い付けられている。第1保持部材120と基材110との間の隙間は、例えば紙幣等を保持するためのポケットとして用いることができる。
【0016】
フラップ部材130は、第1保持部材120のうち
図2における右下側の端部近傍の部分、に重なった状態で、第1保持部材120に縫い付けられ固定された部材である。フラップ部材130は、辺121及び辺124に沿った部分が、第1保持部材120に対し縫い付けられている。
図1に示されるように、フラップ部材130のうち、第1保持部材120に縫い付けられた部分を除く大部分は、第1保持部材120から離間した状態となっている。その結果、フラップ部材130と第1保持部材120との間には略矩形の開口が形成されている。フラップ部材130のうち当該開口の縁131は、辺121から辺124に向かって傾斜した直線状となっている。このようなフラップ部材130が設けられている理由については後に説明する。
【0017】
第2保持部材140は、基材110のうち
図2における左側の部分、に重なった状態で、基材110に縫い付けられ固定された部材である。第2保持部材140は、基材110のうち折目の近傍部分を除いた全体、に対し重なっている。第2保持部材140は、辺122及び辺123に沿った部分が、基材110に対し縫い付けられている。第2保持部材140と基材110との間の隙間は、紙幣を挟み込んで保持するための紙幣保持部20として機能する。第2保持部材140と基材110との間の隙間と、第1保持部材120と基材110との間の隙間と、の両方に、1つの紙幣が跨った状態で保持されることとしてもよい。
【0018】
第1袋部材150及び第2袋部材160は、第2保持部材140の略全体に重なった状態で、第2保持部材140に縫い付けられ固定された部材である。本実施形態では、第1袋部材150及び第2袋部材160は単一の部材となっている。当該部材のうち
図2の左側の部分が第1袋部材150であり、右側の部分が第2袋部材160である。第1袋部材150と第2袋部材160との間の境界部分は、第2保持部材140に対し直線状に縫い付けられている。
【0019】
第1袋部材150のうち辺122及び辺123に沿った部分は、第2保持部材140に対し縫い付けられている。また、第2袋部材160のうち辺122及び辺124に沿った部分も、第2保持部材140に対し縫い付けられている。
【0020】
第1袋部材150は、辺123から辺124に向かって直線状にカットされており、辺123等に対し傾斜した縁151を有している。
図2のうち縁151よりも左側においては、第2保持部材140が露出している。
【0021】
図1に示されるように、第1袋部材150のうち、第2保持部材140に縫い付けられた部分を除く大部分は、第2保持部材140から離間した状態となっている。第2保持部材140と第1袋部材150との間の隙間は、例えばクレジットカード等のカードCD(
図1等においては不図示、
図3を参照)を挟み込んで保持するためのカード保持部40として機能する。当該隙間の大きさは、保持されるカードCDの枚数及び厚さに合わせて適宜設定される。
図3に示されるように、本実施形態では、3枚のカードCDを重ねた状態で保持することが想定されているので、第2保持部材140と第1袋部材150との間の隙間は、カードCDの3枚分の厚さと概ね等しくなっている。カード保持部40に保持されるカードCDの枚数は、
図3の例とは異なる枚数であってもよい。例えば、1枚のカードCDのみがカード保持部40に保持されることとしてもよい。
【0022】
カード保持部40の内部空間は、
図2における下方側の部分において外部に開放されている。このため、使用者は、カード保持部40からカードCDを取り出す際に、
図1及び
図2の矢印AR1で示される方向に沿ってカードCDをスライドさせることとなる。当該方向は、折目である点線DLに沿った方向(具体的には、点線DLと平行な方向)であり、本実施形態における「取り出し方向」に該当する。
【0023】
財布10を折目に沿って折り畳んだ状態においては、フラップ部材130の縁131と、第1袋部材150の縁151とが、互いに平行となり且つ僅かな隙間を空けて対向した状態となる。このような構成においては、カード保持部40に保持されたカードCDのうち、縁151から外側に露出している部分に対し、フラップ部材130を引っ掛けることができる。つまり、カードCDのうちカード保持部40から露出している部分を、フラップ部材130の内側に収めることができる。これにより、財布10が折り畳まれた状態を維持し、使用者の意図に反して財布10が広がってしまうような事態を防止することができる。加えて、フラップ部材130がカードCDを保持することにより、財布10が折り畳まれた状態においてカードCDが落下してしまうような事態を確実に防止することができる。
【0024】
図1に示されるように、第2袋部材160のうち、第2保持部材140に縫い付けられた部分を除く大部分は、第2保持部材140から離間した状態となっている。第2保持部材140と第2袋部材160との間の隙間は、例えば硬貨を収納するための硬貨収納部30として機能する。硬貨の出入り口となる開口は、
図2において符号「30」が付された矢印で示される部分において、点線DLと平行に伸びるように形成されている。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、第2保持部材140の一部は、硬貨収納部30よりも点線DL伸に延びている。このように伸びている部分のことを、以下では「蓋部141」とも称する。蓋部141は基材110に対し縫い付けられていない。財布10が点線DLに沿って折り曲げられると、蓋部141は、硬貨収納部30の入口を塞いだ状態となり、硬貨収納部30から硬貨が漏れ出てしまうことを防止する。
【0026】
カード保持部40の更に具体的な構成について説明する。先に述べたように、財布10のカード保持部40は、互いに対向する一対の部材(第2保持部材140、第1袋部材150)によってカードCDを挟み込んで保持する構成となっている。
【0027】
図1において符号「P1」が付されている部分は、第2保持部材140のうち、カードCDに対し一方の表面側(財布10が折りたたまれた状態における外側)から対向する部分である。当該部分は、本実施形態における「第1部分」に該当する。
図1において符号「P2」が付されている部分は、第1袋部材150のうち、カードCDに対し他方の表面側(財布10が折りたたまれた状態における内側)から対向する部分である。当該部分は、本実施形態における「第2部分」に該当する。
【0028】
図1において符号「P3」が付されている部分は、第1袋部材150のうち、カードCDに対し一方の側面側(折目に近い方の側面側)から対向する部分である。当該部分は、本実施形態における「第3部分」に該当する。
図1において符号「P4」が付されている部分は、第1袋部材150のうち、カードCDに対し他方の側面側(折目から遠い方の側面側)から対向する部分である。以上のように、カード保持部40は、P1、P2、P3、及びP4からなる4つの部分を有しており、これらによって、重ねられた状態のカードCDを4方向から囲んで保持する構成となっている。第1袋部材150が当接するカードCDの「側面」は、カードCDのうち、取り出し方向に対し平行な側面となっている。
【0029】
カードCDが取り出し方向(
図2の矢印AR1)に移動することは、カードCDと、これに当接する第1袋部材150等と、の間の摩擦力のみによって防止されている。このような構成においては、例えばカード保持部40の出口が鉛直下方に向けられた場合等において、重力によってカードCDが財布10から落下してしまう可能性がある。特に、本実施形態のように、取り出し方向が折目と平行となっている構成の財布10においては、使用者が財布10を開いて、例えば硬化を取り出すために硬貨収納部30の開口を上向きにすると、カード保持部40の開口は横を向くこととなるので、そこから財布10が少し傾いただけで、重力によってカードCDが落下してしまう可能性が高くなる。
【0030】
そこで、本実施形態に係る財布10では、カード保持部40のうち、カードCDに当接する部分に起毛加工を施すことで、当該部分における摩擦力を大きくし、これによりカードCDの落下を防止している。具体的には、第1袋部材150のうち符号「P3」が付されている第3部分の内面に起毛加工が施されている。起毛加工が施された部分のことを、以下では「起毛部NP」とも称する。起毛部NPは、カードCDを摩擦力によって保持するための「摩擦部」として機能する。
【0031】
図3には、カードCDを保持しているカード保持部40を、取り出し方向に沿って見た状態が描かれている。尚、
図3においては、発明の理解のために起毛部NPの厚さが誇張して描かれているのであるが、実際の起毛部NPの厚さ等は、
図3に描かれているものとは異なっていてもよい。
【0032】
起毛部NPは、カード保持部40に保持された全てのカードCDの側面に対して当接しており、それぞれのカードCDに対して押し付けられている。更に、起毛部NPにおける表面粗さの影響等も加わることで、カードCDに加えられる摩擦力は、起毛部NPが設けられていない場合に比べると大きくなっている。当該摩擦力により、使用者の意図しないカードCDの落下を防止することができる。
【0033】
尚、カードCDの落下を防止するための構成としては、起毛部NPを第3部分に設けることに替えて、カード保持部40の内面全体にに例えばゴム等の素材を貼り付けておくこと等も考えられる。しかしながら、ゴム等によってカードCDの落下を防止する構成においては、摩擦力が強くなり過ぎて、使用者がカード保持部40からカードCDを取り出そうとした際の使用感が悪化してしまうことが懸念される。
【0034】
これに対し、起毛部NPを設けた本実施形態の構成においては、使用者がカードCDを取り出すために一定の力を加えると、それ以降はカードCDは滑らかに移動し、摩擦力を殆ど感じさせることなくカード保持部40からスムーズに取り出される。この点は、力を加えるほど滑り止めの効果が大きくなり過ぎるゴムとは大きく異なっている。このように、本実施形態では、意図しないカードCDの落下を確実に防止しつつも、使用者の利便性を損なわない程度に、カードCDとの間で適度な摩擦力を生じさせることができる。
【0035】
特に、本実施形態ように、取り出し方向が折目と平行となっている構成の財布10においては、カード保持部40からカードCDが滑り出ようとした場合に、カードCDの角が、必ず起毛部NPのいずれかの箇所に接触し、起毛部NPから摩擦力を受けることとなる。これにより、使用者の意図に反したカードCDの落下をより確実に防止することができる。
【0036】
図2に示されるように、本実施形態の起毛部NPは、符号「P3」が付された部分の内面にのみ設けられている。このような範囲にのみ起毛部NPを設けることで、起毛加工の手間を削減し、財布10の製造コストを抑制することができる。製造コスト等が問題とならない場合には、カード保持部40の他の内面(例えば、符号「P4」が付された部分の内面)に、追加で起毛部NPを設けてもよい。
【0037】
また、カード保持部40の内面のうち、符号「P4」が付された部分の内面のみに、起毛部NPを設けた構成としてもよい。この場合、当該部分が「第3部分」に該当することとなる。いずれの場合であっても、起毛部NPは、カードCDのうち、取り出し方向に対し平行な側面に当接する部分に設けられることが好ましい。
【0038】
本実施形態の起毛部NPは、第3部分を構成する部材に対し、起毛加工を直接施すことによって形成されている。このような態様に換えて、第3部分を構成する部材に対し、起毛加工が施された別部材(スエード等)を取り付けることによって、起毛部NPを形成してもよい。
【0039】
内側に起毛部NPが設けられる第3部分は、本実施形態のように第2部分と一体となっている部材であってもよいが、第2部分に縫い付けられた別部材であってもよい。また、第3部分が第1部分と一体となっている部材であってもよい。第1部分、第2部分、及び第3部分の具体的な構成については、特に限定されない。
【0040】
カード保持部40の内面に起毛部NPを設ける構成は、本実施形態のような二つ折り財布において特に大きな効果を奏するが、二つ折り財布以外の財布に適用することも可能である。
【0041】
カードCDを摩擦力によって保持するための「摩擦部」は、カード保持部40の内面のうち、カードCDに対する摩擦力が他の部分に比べて相対的に高くなっているのであれば、本実施形態のような起毛部NPとは異なる態様で設けられていてもよい。例えば、第3部分の内面にシート状のゴムを縫い付けた構成としてもよく、第3部分の素材そのものをゴムとしてもよい。ただし、適切な摩擦力を発揮させるためには、本実施形態のように起毛加工が施された部分(起毛部NP)として摩擦部を構成する方が好ましい。
【0042】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0043】
10:財布、40:カード保持部、140:第2保持部材、150:第1袋部材、NP:起毛部。