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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021241
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/04 20200101AFI20240208BHJP
【FI】
B63H9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123947
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】青野 健
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 明彦
(57)【要約】
【課題】帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、風力によって船体11を推進させる複数の風力推進部10を備える。そのため、船舶1は、風が吹いたときには、風力推進部10による推進力で帆走を行うことができる。ここで、複数の風力推進部10は、他の主帆10A,10B,10C(第1の風力推進部)に比して小さい制御帆10D(第2の風力推進部)を有する。これにより、船舶1は、小さい制御帆10Dにてモーメントを調整することで、他の主帆10A,10B,10Cによるモーメントとの釣り合いを調整することができる。従って、舵の操作(当て舵)によらず、帆走時における船体11の旋回を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
風力によって前記船体を推進させる複数の風力推進部と、を備え、
前記複数の風力推進部は、他の第1の風力推進部に比して小さい第2の風力推進部を有する、船舶。
【請求項2】
前記複数の風力推進部は、前記船体に前後方向に並ぶように配置され、
前記第2の風力推進部は、前記前後方向における端部側に配置される、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
少なくとも前記第2の風力推進部は、エネルギーの供給によって駆動する、請求項1又は2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CO等のGHGガスの削減のために、風力等の再生可能エネルギーを用いて推力を発生する船舶が知られている。例えば、特許文献1に記載された船舶は、プロペラによる推進器に加えて、船体上に、風力によって船体を推進させる風力推進部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-45018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような船舶は、ロータ帆などを有する風力推進部を船体に複数備えている。船舶は、全ての風力推進部において最大の推力が得られるように各風力推進部を制御する。船舶においては、風速の変化によって船体が旋回してしまうことがあり、当該旋回に対して舵の操作(当て舵)を行うことで、当該旋回に対処していた。しかしながら、このような当て舵の抵抗によって帆走の推進効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶は、船体と、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部と、を備え、複数の風力推進部は、他の第1の風力推進部に比して小さい第2の風力推進部を有する。
【0007】
本発明に係る船舶は、風力によって船体を推進させる複数の風力推進部を備える。そのため、船舶は、風が吹いたときには、風力推進部による推進力で帆走を行うことができる。ここで、複数の風力推進部は、他の第1の風力推進部に比して小さい第2の風力推進部を有する。これにより、船舶は、小さい第2の風力推進部にてモーメントを調整することで、他の第1の風力推進部によるモーメントとの釣り合いを調整することができる。従って、舵の操作(当て舵)によらず、帆走時における船体の旋回を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【0008】
複数の風力推進部は、船体に前後方向に並ぶように配置され、第2の風力推進部は、前後方向における端部側に配置されてよい。この場合、第2の風力推進部は、前後方向における端部側の位置にて、他の第1の風力推進部によるモーメントとの釣り合いの調整を行うことができるため、効率よく旋回のモーメントを抑制することができる。
【0009】
少なくとも第2の風力推進部は、エネルギーの供給によって駆動してよい。第2の風力推進部の小型化を図ることができる場合、当該第2の風力推進部に対するエネルギー供給機構の小型化を図ることができる。すなわち、第1の風力推進部と同じ大きさの風力推進部を設けて、当該風力推進部へのエネルギーを低減してモーメントを調整する場合、エネルギー供給機構が過剰となるが、第2の風力推進部を小さくすることで、エネルギー供給機構が過剰となることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、帆走時における推進効率を向上できる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。
図2】(a)はロータ帆の原理について説明する図であり、(b)は船舶の平面図である。
図3】制御システムを示すブロック図である。
図4】モーメントについて説明するための概略平面図である。
図5】変形例を示す図である。
図6】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の船首と船尾を結ぶ方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。船舶1は、例えば原油や液体ガス等の石油系液体貨物を運搬する船舶であり、例えば、オイルタンカーである。なお、船舶は、オイルタンカーに限定されず、例えば、バルクキャリア、その他、様々な種類の船舶であってよい。
【0014】
船舶1は、図1に示すように、船体11と、推進器12と、複数の風力推進部10と、を備えている。船体11は、船首部2と、船尾部3と、機関室4と、貨物室6と、を有している。船体11の上部には(または船内には)上甲板19が設けられている。船首部2は、船体11の前方側に位置している。船尾部3は、船体11の後方側に位置している。
【0015】
船首部2は、例えば満載喫水状態における造波抵抗の低減が図られた形状を有している。推進器12は、船体11の推力を機械的に発生させるものであり、例えばスクリューシャフトが用いられている。推進器12は、推進時に船尾部3における喫水線(海Wの水面)よりも下方に設置される。また、船尾部3における喫水線よりも下方には、推進方向を調整するための舵15が設置されている。
【0016】
機関室4は、船尾部3の船首側に隣り合う位置に設けられている。機関室4は、推進器12に駆動力を付与するためのメインエンジン16を配置するための区画である。上甲板19上には、機関室4の上方に居住区22、及び排気用の煙突23が設けられる。貨物室6は、船首部2と機関室4との間に設けられている。貨物室6は、貨物を収容するための区画である。貨物室6は、外板20と内底板21の二重船殻構造を採用することによって、複数の貨物室26と複数のバラストタンク27とに区画されている。バラストタンク27は、船の大きさ等に応じた量のバラスト水を収容する。
【0017】
風力推進部10は、風力によって船体11を推進させる機構である。本実施形態では、風力推進部10としてロータ式の風力推進機構が採用されている。風力推進部10は、船体11の上甲板19上に前後方向に並ぶように複数(ここでは四個)設けられている。図2(a)に示すように、風力推進部10は、上下方向に延びる円柱状のロータ帆31と、ロータ帆31を回転させる電動機32と、を備える。ロータ帆31に対して横側から風WDが吹き込むと、後側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが互いに反対となり、前側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが一致する。これによって、ロータ帆31の前後で圧力差が発生することで、前側へ向かう推力PFが発生する(マグナス効果)。図2(b)に示すように、船体11に対して横側から風WDが吹くことで、各風力推進部10の推力PFにより、船体11は前方へ進む。なお、以降の説明においては、複数の風力推進部10を前から順に「主帆10A」「主帆10B」「主帆10C」「制御帆10D」と称する場合がある。
【0018】
図3を参照して、制御装置50を備える制御システム100について説明する。制御装置50は、上述のような複数の風力推進部10を有する船舶1を制御する装置である。制御装置50は、複数の風力推進部10を制御することで、船体11を旋回させるモーメントを抑制する。
【0019】
具体的に、制御システム100は、前述の複数の主帆10A,10B,10C(第1の風力推進部)と、制御帆10D(第2の風力推進部)と、推進器12と、舵15と、を備える。また、制御システム100は、これらの機器を制御する制御装置50と、情報検出部51と、を備える。
【0020】
制御装置50は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されている。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)などの演算器である。メモリは、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体である。通信インターフェースは、データ通信を実現する通信機器である。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インターフェースを統括し、後述する制御部30の機能を実現する。制御部30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。制御部30は、複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0021】
制御装置50は、主帆10A,10B,10Cの電動機32A,32B,32C、及び制御帆10Dの電動機32Dへ制御信号を出力することで、ロータ帆31を所望の回転数で回転させる。制御装置50は、推進器12の駆動部(メインエンジン16等)へ制御信号を出力することで、推進器12を動作させる。制御装置50は、舵15の駆動部へ制御信号を出力することで、舵が所望の角度となるように動作させる。
【0022】
情報検出部51は、制御装置50の演算に必要な各種情報を検出する。情報検出部51は、風向き、及び風速などの風に関する情報を検出可能な風向風速計52を有する(図1参照)。情報検出部51は、舵15の角度を検出する舵角計53を有する(図1参照)。また、情報検出部51は、船体11の姿勢・動揺などの船体運動や方位を計測する計測器54を備える(図1参照)。その他、情報検出部51は、天気予報等の予め風の状態を把握しておくことができるような情報受信部を備える。情報検出部51は、GPSなど、船体11の位置を検出可能な計測器を備える。情報検出部51は、検出した情報を制御装置50へ送信する。
【0023】
次に、主帆10A,10B,10C、及び制御帆10Dについて、図4(a)を参照して詳細に説明する。制御帆10Dは、他の主帆10A,10B,10Cに比して小さい帆である。
【0024】
上述のように、ロータ帆31を有する風力推進部10は、電動機32に対するエネルギーの供給によって駆動する。制御帆10Dは、他の主帆10A,10B,10Cよりも小さいため、エネルギーの供給量も少なくてよく、それに比例して電源や油圧容量、送風機容量、モーターサイズ等のエネルギー供給機構も小型化することができる。そのため、制御帆10Dの電動機32Dは、他の主帆10A,10B,10Cの電動機32A,32B,32Cよりも小さくてよい。その他、制御帆10Dのエネルギー供給機構として関わる機器、機能全般を、他の主帆10A,10B,10Cのものより小さくすることができる。
【0025】
制御帆10Dは、前後方向における端部側に配置される。制御帆10Dは、船体1の後端部側に配置される。本実施形態では、制御帆10Dは、居住区22よりも後側に配置される。従って、主帆10Cと制御帆10Dとの間の離間距離は、主帆10Bと主帆10Cとの間の離間距離、及び主帆10Aと主帆10Cとの間の離間距離よりも大きい。このように、最後端の制御帆10Dを居住区22の後ろに配置することで、居住区22直前の主帆10Cと操作室との距離が拡がり、視覚的に好影響となる。ただし、制御帆10Dは、居住区22より前側に配置されてもよい。
【0026】
ここで、制御帆10Dが主帆10A,10B,10Cに比してどの程度小さいかについて説明する。制御帆10Dの大きさは、船体の設計条件に依存するが、例えば8万トンのタンカーでロータ帆31を四本有するものを想定するものとする。この場合、本発明の考え方に基づいて主帆10A,10B,10Cと制御帆10Dの役割を切り分けると、重心から最も遠い場所に設置される船体後方の制御帆10Dは他の主帆10A,10B,10Cと比較して最大揚力で約20%分小さくすることができる。揚力を小さくする方法としてロータ帆31の物理的サイズ(直径・高さ、面積など)を小さくする、物理的なサイズは同じで運転条件(ロータ帆31の場合は最大回転数)などを小さくする、あるいはその双方をバランスよく採用するなどの対策が考えられる。このような制御帆10Dの採用により、造船所は帆の装置本体の物量のみならず発電機の小型化、船体補強の容易化や配置の柔軟性といったメリットを享受できる。船の運航者は実際には最大出力で運転する事が少ない帆の剰余仕様分の初期コストと、運用コスト、メンテナンスコストを削減できる。
【0027】
次に、本実施形態に係る船舶1の船体11に作用するモーメントを説明するために、図4(b)を参照して、比較例に係る船舶200の船体11に作用するモーメントについて説明する。比較例に係る船舶200の最後端の風力推進部10は、小さい制御帆10Dに代えて、他の主帆10A,10B,10Cと同じ大きさの主帆10Eが設けられる。ここでは、主帆10A,10B,10Cの三本の帆の合力中心P1に作用するモーメントと、最後端の主帆10Eの着力点P2に作用するモーメントとの関係について説明する。船舶1に向かって横側から風WDが吹くと、主帆10Eにて揚力、及び抗力が発生する。従って、主帆10Eの着力点P2に揚力と抗力の合力Faftが作用する。この合力F1の前方の成分が推進力Fxaftとなり、船幅方向の成分が横力Fyaftとなる。船舶1に向かって横側から風WDが吹くと、主帆10A,10B,10Cの三本の帆の合力中心P1に三本の帆分の推進力Fxforeが前方に作用し、横力Fyforeが船幅方向に作用する。
【0028】
このときの重心P3周りの回頭モーメントについて説明する。重心P3と最後端の主帆10Eの着力点P2の前後方向の距離は「距離xaft」であるため、着力点P2に作用するモーメントは「xaft・Fyaft」となる。重心P3と三本の帆の合力中心P1の前後方向の距離は「距離xfore」であるため、合力中心P1に作用するモーメントは「xfore・Fyfore」となる。比較例においては、最後端の主帆10Eによるモーメントが過剰であるため、「xaft・Fyaft>xfore・Fyfore」という関係が成り立つ。そのため、船体11に対して左回頭の回頭モーメントMTが作用する。このような回頭モーメントMTを打ち消して船体11の旋回を回避するために舵15を切った場合(図4(b)の仮想線の舵15参照)、舵15による抵抗が増加してしまい、船舶1が減速してしまう。
【0029】
次に、図4(a)を参照して、本実施形態に係る船舶1の船体11に作用するモーメントを説明する。本実施形態に係る船舶1の最後端の風力推進部10は、小さい制御帆10Dである。この場合、制御帆10Dの着力点P2に作用する横力Fyaftが小さくなる。そのため、着力点P2に作用する「xaft・Fyaft」のモーメントも小さくなる。従って、「xaft・Fyaft=xfore・Fyfore」という関係が成り立つ。そのため、モーメントが釣り合うことによって、回頭モーメントMTが抑制され、船体11に直進する推力PFが作用する。このため、回頭モーメントMTを打ち消すための舵15による当て舵が不要となる。制御帆10Dの配置を主帆10A,10B,10Cの力の中心位置からできるだけ距離を離して設置することで、小さな力でも十分なモーメントを確保する事ができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る船舶1の作用・効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係る船舶1は、風力によって船体11を推進させる複数の風力推進部10を備える。そのため、船舶1は、風が吹いたときには、風力推進部10による推進力で帆走を行うことができる。ここで、複数の風力推進部10は、他の主帆10A,10B,10C(第1の風力推進部)に比して小さい制御帆10D(第2の風力推進部)を有する。これにより、船舶1は、小さい制御帆10Dにてモーメントを調整することで、他の主帆10A,10B,10Cによるモーメントとの釣り合いを調整することができる。従って、舵の操作(当て舵)によらず、帆走時における船体11の旋回を抑制することができる。以上により、帆走時における推進効率を向上できる。
【0032】
複数の風力推進部10は、船体11に前後方向に並ぶように配置され、制御帆10Dは、前後方向における端部側に配置されてよい。この場合、制御帆10Dは、前後方向における端部側の位置にて、他の主帆10A,10B,10Cによるモーメントとの釣り合いの調整を行うことができるため、効率よく旋回のモーメントを抑制することができる。
【0033】
少なくとも制御帆10Dは、エネルギーの供給によって駆動してよい。制御帆10Dの小型化を図ることができる場合、当該制御帆10Dに対するエネルギー供給機構の小型化を図ることができる。例えば、主帆10A,10B,10Cと同じ大きさの風力推進部10を設けて、当該風力推進部10へのエネルギーを低減してモーメントを調整する場合、エネルギー供給機構が過剰となる。エネルギーの供給量に応じて推進力を調整可能な帆では、大型の帆を搭載すればそれに比例して電源や油圧容量、送風機容量、モーターサイズ等も大型化する。つまり大型の帆を搭載しているのに推進力最大で使用しないと、装置の能力を十分に活用しない使い方となり過剰な仕様という事にもなりうる。これに対し、制御帆10Dを小さくすることで、エネルギー供給機構が過剰となることを抑制できる。このように、制御帆10Dの役割を針路の制御と明確化する事で、最大で推力で運転する機会の少ない端部の帆は小型化が可能である。なお、ロータ帆31を有する風力推進部10の場合、小型の帆はそれだけ慣性モーメントも小さいため、制御帆10Dの細やかな制御への追従も可能となる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0035】
例えば、風力推進部の数や配置など、船体に対してどのように設けるかなどは特に限定されない。例えば、横方向にずれるような風力推進部を設けてもよい。
【0036】
また、推力を増減させる風力推進部10の数は一つに限定されない。例えば、図5(a)に示すように五本の風力推進部10を有してもよく、それ以上の風力推進部10を有してもよい。また、制御帆は複数本存在してもよい。図5(a)では、二本の制御帆10D,10Fが設けられている。また、図5(a)に示すように、制御帆10Fは船首側に存在してもよい。なお、重心から最も遠い帆が必ずしも制御帆である必要はない。最遠の帆が主帆で、例えば遠い順の2・3番目が制御帆でもよい。なお、重心からの距離の順序に沿って制御帆のサイズが並ぶ必要はない。図5(a)の場合、制御帆10Fをさらに備えることで、制御帆10D単独の場合よりもさらに旋回モーメントの抑制制御を行いやすくできる。さらに、図4(a)の場合と比較して、制御帆10Fがある分、制御帆10Dのさらなる小型化が可能となる。なお、図5(a)では、制御帆10Fと制御帆10Dの実施例を紹介したが、主帆10A~10Cと制御帆との距離が離れていれば旋回モーメントは解消できるので、船主側に制御帆10Fのみ配置しても良い。
【0037】
制御帆10Dは必ずしも主帆10A,10B,10Cと同じタイプの帆を小型化する必要はなく、例えば図5(b)に示すように、三角帆のような異なるタイプの帆を使用してもよい。更に、主帆および制御帆は船体中心線上に設置されていなくても良い。また、帆は一列に並んでいなくてもよい。図5(c)に示すように、三角帆のタイプの制御帆10Dが船体中心線からずれた位置に一対設けられている。なお、図5(a)の船尾側の制御帆10Dは、図6に示すように、船体中心からずれた位置に一対設けられるように構成してもよい。船尾側は、居住区22が設けられるが、船舶のセンターライン上に制御帆10Dが配置されると、居住区22から後ろが制御帆10Dによって視界が遮られる可能性がある。このため、制御帆10Dを船体中心からずれた位置に一対設けることで、居住区22からの視界も確保することができる。また、複数本の制御帆が存在するとき、それぞれの帆のサイズやタイプが異なってもよい。また、実施形態に係る風力推進部10は、電動機32に対するエネルギーの供給によって駆動していた。ただし、駆動態様は、必ずしも電動に限定されない。
【0038】
船体11の構造も図1に示すものに限定されず、用途等に応じて適宜変更してよい。
【符号の説明】
【0039】
1…船舶、11…船体、10…風力推進部、10A,10B,10C…主帆(第1の風力推進部)、10D…制御帆(第2の風力推進部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6