(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021252
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電子機器、および、制御方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20240208BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 480
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123962
(22)【出願日】2022-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】堀越 秀人
(72)【発明者】
【氏名】楊 欣梅
(72)【発明者】
【氏名】熊田 君夫
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA10
5E555AA63
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC04
5E555CA13
5E555CA43
5E555CB12
5E555CC01
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】通信中におけるノイズ発生を回避し、電力を節約する。
【解決手段】通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、コントローラは、接触検出部への接触が検出されるとき、振動部を振動させ、接触検出部、振動部、および、アンテナは、共通の筐体に配置され、コントローラは、通信部が通信を実行するとき、振動部を振動させない。本実施形態は、電子機器に限られず、制御方法、などいずれの態様によっても実現することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触検出部、振動部、通信部、および、コントローラを備え、
前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、
前記コントローラは、前記接触検出部への接触が検出されるとき、前記振動部を振動させ、
前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナは、共通の筐体に配置され、
前記コントローラは、
前記通信部が通信を実行するとき、前記振動部を振動させない
電子機器。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記通信が行われないとき、前記接触検出部への接触領域に基づいて当該接触検出部への接触物が所定の操作物であるか否かを判定し、
前記接触物が所定の操作物であるとき、前記振動部を振動させ、
前記接触物が所定の操作物ではないとき、前記振動部を振動させない
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記所定の操作物は、人物の指である
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記コントローラは、
近距離無線通信機器の検出に基づいて、前記通信の実行を判定する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記通信を実行するとき、前記接触検出部への接触を検出しない
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
接触検出部、振動部、および、通信部を備え、
前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、
前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナが、共通の筐体に配置される電子機器の制御方法であって、
前記電子機器が、
前記接触検出部への接触が検出されるとき、前記振動部を振動させる第1ステップと、
前記通信部が通信を実行するとき、前記振動部の振動を無効にする第2ステップと、を実行する
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、および、制御方法、例えば、触覚提示機能を備える入力デバイスの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、タブレット端末装置、携帯電話機(いわゆるスマートフォンを含む)などの情報処理装置には、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)機能を備えるものがある。NFCによれば、各々に備わるNFCコイル間の距離が一定以内となるように複数のデバイスを接近させ、各種のデータを送信または受信可能とする。NFCでは、例えば、ISO/IEC14443、ISO/IEC18092に規定された方式が用いられることがある。
【0003】
かかる電子機器には、その表面に入力操作を受け付ける入力デバイスを備えるものがある。例えば、特許文献1に記載の電子機器は、電磁結合型の無線モジュールと、無線モジュールに接続されたコイルと、タッチパネルと、タッチパネルに対する操作を所定の検出感度で検出し、コイルが交番磁束を放射している間、検出感度を低下させるタッチ・コントローラを有する。
また、ユーザが接触した場合に、振動発生器を振動させることによりユーザに触覚を伝える触覚提示機能(Haptics, Haptic Presentation)を備える電子機器も提案されている(例えば、特許文献2参照)。触覚提示機能は、触覚フィードバック(Haptic Feedback)とも呼ばれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-228173号公報
【特許文献2】特開2019-185339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、NFC機能と触覚提示機能の両者を備える電子機器では、NFCの実行中に触覚提示機能を動作させると、電磁ノイズが発生し、通信障害の原因となることがあった。また、電磁ノイズの影響を緩和するために、相対的に信号強度を増加させることも考えられる。その場合には、電力消費量が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様に係る電子機器は、接触検出部、振動部、通信部、および、コントローラを備え、前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、前記コントローラは、前記接触検出部への接触が検出されるとき、前記振動部を振動させ、前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナは、共通の筐体に配置され、前記コントローラは、前記通信部が通信を実行するとき、前記振動部を振動させない。
【0007】
上記の電子機器において、前記コントローラは、前記通信が行われないとき、前記接触検出部への接触領域に基づいて当該接触検出部への接触物が所定の操作物であるか否かを判定し、前記接触物が所定の操作物であるとき、前記振動部を振動させ、前記接触物が所定の操作物ではないとき、前記振動部を振動させなくてもよい。
【0008】
上記の電子機器において、前記所定の操作物は、人物の指であってもよい。
【0009】
上記の電子機器において、前記コントローラは、近距離無線通信機器の検出に基づいて、前記通信の実行を判定してもよい。
【0010】
上記の電子機器において、前記コントローラは、前記通信を実行するとき、前記接触検出部への接触を検出しなくてもよい。
【0011】
本発明の第2態様に係る制御方法は、接触検出部、振動部、および、通信部を備え、前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナが、共通の筐体に配置される電子機器の制御方法であって、前記電子機器が、前記接触検出部への接触が検出されるとき、前記振動部を振動させる第1ステップと、前記通信部が通信を実行するとき、前記振動部の振動を無効にする第2ステップと、を実行してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、通信中におけるノイズ発生を回避し、電力を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電子機器の外観構成例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るタッチパッドの表面を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係るタッチパッドの裏面を示す平面図である。
【
図4】本実施形態に係るタッチパッドと第2筐体の構成例を示す断面図である。
【
図5】本実施形態に係る電子機器の機能構成例を示す概略ブロック図である。
【
図6】駆動コイルへ供給される駆動信号を例示する図である。
【
図7】本実施形態に係る触覚提示の制御例を示すタイミングチャートである。
【
図8】本実施形態に係るNFC通信制御の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る触覚提示制御の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本実施形態に係る電子機器1の構成例について説明する。以下の説明では、電子機器1がNFC機能を有するノートブック型PCである場合を主とする。
図1は、本実施形態に係る電子機器1の外観構成例を示す斜視図である。
【0015】
電子機器1は、第1筐体12と、第2筐体16と、を備える。第1筐体12と第2筐体16のそれぞれの一辺が蝶番(図示せず)を用いて結合されている。この構成により、それぞれの一辺に平行な軸まわりに第1筐体12の表面と第2筐体16の表面とのなす角度(本願では、「開き角」と呼ぶことがある)が可変となる。開き角が0°となる状態が、第1筐体12と第2筐体16とが完全に閉じた状態となる。通例、電子機器1は、開き角が90~135°となる状態で用いられる。第1筐体12の表面には、ディスプレイ14が備えられている。第2筐体16の表面には、キーボード18とタッチパッド20が備えられている。タッチパッド20の裏面にはNFCアンテナ22が備えられている。なお、第2筐体16の表面のうち、その長手方向のタッチパッド20を挟む両脇においてパームレスト24が載置されている。本実施形態では、パームレスト24は省略されてもよい。
【0016】
タッチパッド20は、その表面に接触した操作物の位置を接触位置として検出できる接触検出部として機能する。操作物は、主に人の指であるタッチパッド20の表面には、複数のタッチセンサが異なる位置に二次元配置されている。個々のタッチセンサは、自部への接触の有無を検出する。タッチパッド20は、接触を検出した1個のタッチセンサまたは複数のタッチセンサの組をもって、接触が検出された位置を接触位置として特定することができる。特定された接触位置は、例えば、ディスプレイ14の表示領域の座標、もしくは、その座標に配置された画面部品などの特定に用いられうる。本実施形態では、タッチパッド20は、静電容量方式、抵抗膜方式、などいかなる動作原理に基づくものであってもよい。また、タッチセンサとして、自部に対する圧力を検出可能とする圧力センサが用いられてもよい。
【0017】
電子機器1には、タッチパッド20が接触を検出するとき、振動する振動部21(後述)を備える。振動部には、別個の駆動コイル28(後述)が設置される。駆動コイル28は、自部に供給される駆動信号となる交流電流に従って振動する。振動部21は、タッチパッド20の一部をなし、振動を提示するための触覚提示部として機能する。よって、振動部と、その振動を制御するためのコントローラ(後述)により触覚提示(haptic presentation)が実現される。タッチパッド20からの触覚提示によりユーザに対して操作感を与えることができる。
【0018】
NFCアンテナ22は、駆動コイル28とは、別個のコイルをもって構成され、他の機器とのNFCに用いられる。NFCアンテナ22は、NFCコイルとも呼ばれる。NFCは、電磁結合型の無線通信の一種である。電磁結合とは、複数のコイル間で発生する現象である。ある送信コイルに交流電流を流すとその周囲において交番磁界が発生する。交番磁界は、その空間の透磁率に応じた強度を有する交番磁束をなす。巻回面が交番磁束に交わるように配置された受信コイルには、交流電圧が誘起される。この現象が、電磁結合に相当し、電磁誘導とも呼ばれる。言い換えれば、電磁結合型の無線通信では、送信コイルに発生した交番磁束が搬送波として用いられる。交番磁束の強度は、送信コイルからの距離が大きい位置ほど減衰する。電磁結合型の無線通信は、複数のコイル間で有意な電磁結合が発生する範囲内でなしうる。通信距離は、典型的には、2~5cm程度である。
【0019】
図1の例では、NFCカード50が電子機器1に近接するとき、NFCにより各種のデータが無線で送受信可能となる。NFCカード50は、NFCアンテナ52を内蔵し、その表面にICカード56を備える。NFCカード50と電子機器1の間でのデータの送受信において、NFCアンテナ22、52間で生ずる電磁結合が用いられる。このとき、タッチパッド20は、NFCアンテナ22、52の両方の磁束を通過するアクセス面となる。そのため、触覚提示により生ずる電磁波がコイルをもって構成されるNFCアンテナ22、52に対して電磁誘導を引き起こし、発生した誘導電流はノイズの原因となりうる。また、NFC通信によりNFCアンテナ22、52に生ずる交番磁束は、タッチパッド20により検出される接触を示す接触信号に対する電磁ノイズの原因となりうる。この交番磁束が、通信障害またはタッチパッド20に対する接触の誤検出を招来しかねない。
【0020】
そこで、本実施形態1に係る電子機器1は、NFCの実行中において、タッチパッド20の表面に振動を生ずる駆動コイル28(後述)を振動させず、NFCを実行しないときに駆動コイル28の振動を許容するコントローラ(後述)を備える。ここで、「振動を許容」とは、タッチパッド20への接触に応じて振動できる状態にするという意味を含み、必ず振動させることを意味するものではない。
【0021】
次に、本実施形態に係るタッチパッド20の構成例について説明する。
図2は、本実施形態に係るタッチパッド20の表面を示す平面図である。
図3は、本実施形態に係るタッチパッド20の裏面を示す平面図である。
【0022】
タッチパッド20は、周縁部において第2筐体16に固定するための装着具を備える。タッチパッド20は、表面において他の物体との接触を検出する。タッチパッド20の裏面には、2個の駆動コイル28-1、28-2と、NFCアンテナ22が配置される。駆動コイル28-1、28-2のそれぞれの位置は、NFCアンテナ22の位置から所定距離以上離れている。この配置により駆動コイル28-1、28-2とNFCアンテナ22のそれぞれが生じる交番磁界同士の干渉が低減する。
【0023】
タッチパッド20が第2筐体16に設置された状態では、駆動コイル28-1、28-2にそれぞれ永久磁石17(後述)が対面する。そのため、駆動コイル28-1、28-2に駆動信号とする交流電流を流すことにより、駆動コイル28-1、28-2の巻回面の法線方向に駆動コイル28-1、28-2が振動する。この振動によりタッチパッド20が振動し、タッチパッド20の表面に接触している操作物に対して機械的振動による刺激を与えることができる。
【0024】
図4は、本実施形態に係るタッチパッド20と第2筐体16の構成例を示す断面図である。
図4は、タッチパッド20が第2筐体16に装着されている場合を例示する。タッチパッド20は、ガラス層212、接着剤層214、および、PCBA(Printed Circuit Board Assembly、プリント回路基板アセンブリ)216を備え、その順に積層してなる。
【0025】
ガラス層212の表面には、各種の操作物が接触され、PCBA216に配置された各種の部材を保護する。
PCBA216は、PCB(Printed Circuit Board、プリント基板)を備え、PCB上にコントローラ、接触センサなど、各種の部材が配置されてなる。PCBの裏面には、NFCアンテナ22と駆動コイル28-1、28-2の他、コンポーネント282、ストッパ286、および、スペーサ288が配置される。
【0026】
コンポーネント282は、NFCコントローラ382(後述)など、その他の電子部材に相当する。
ストッパ286は、タッチパッド20の裏面に配置されたNFCアンテナ22の裏面と第2筐体16の基板162との接触、ならびに、コンポーネント282の裏面と第2筐体16の保護シート166との接触を防止するための部材である。ストッパ286の厚みは、静止状態におけるタッチパッド20の裏面と第2筐体16の装着面との間隔よりも薄く、スペーサ288よりも剛性が高い材料からなる。
【0027】
スペーサ288は、その裏面において第2筐体16の基板162と同一面を共有するスプリング(発条)164に接し、ストッパ286ならびにPCBよりも柔軟な材料からなる。スペーサ288の厚みは、静止状態におけるタッチパッド20の裏面と第2筐体16の装着面との間隔に相当する。スペーサ288は、タッチパッド20の振動を吸収し第2筐体16による支持を安定化する。
【0028】
第2筐体16の装着面は、基板162、保護シート166、および、底面シート168を備え、その順に積層してなる。基板162には、タッチパッド20が装着された状態で、スペーサ288に対面する領域においてスプリング164が配置され、駆動コイル28-1、28-2に対面する領域において永久磁石17が配置され、コンポーネント282に対面する領域において開口部が設けられている。また、基板162の表面には、ストッパ286とNFCアンテナ22が対面する。タッチパッド20が押下された状態では、基板162の開口部にコンポーネント282が陥入する。これにより、コンポーネント282ならびにNFCアンテナ22と、第2筐体16との接触が回避される。永久磁石17として、例えば、フェライトシートが利用可能である。
【0029】
底面シート168は、一定の厚みを有し、電子機器1の底面に相当する部位を覆う。底面シート168は、第2筐体16と第1筐体12が開いた状態で、第2筐体16を支持する支持面(例えば、机、テーブル、作業台などの表面)と接触する。保護シート166は、底面シート168に加わる外力、損傷などから、基板162を保護する。
【0030】
次に、本実施形態に係る電子機器1の機能構成例について説明する。
図5は、本実施形態に係る電子機器1の機能構成例を示す概略ブロック図である。
電子機器1は、タッチパッド20、振動部21、システムI/Oコントローラハブ34、MCU36、NFCコントローラ382、タッチセンサコントローラ384、および、触覚コントローラ386を含んで構成される。MCU36、NFCコントローラ382、タッチセンサコントローラ384、および、触覚コントローラ386の一部、または、全部は、上記のコンポーネント282としてPCB上に設置されうる。NFCアンテナ22とNFCコントローラ382は、NFCを実現するためのNFCモジュールとして一体に構成されてもよい。
【0031】
システムI/Oコントローラハブ(system I/O controller hub)34は、1個または複数個のコントローラを備え、複数のデバイスと各種のデータを入出力可能に接続する。接続先となる複数のデバイスには、ホストデバイス(図示せず)、MCU36、NFCコントローラ382、および、その他の周辺デバイスが含まれる。システムI/Oコントローラハブ34は、チップセット、PCH(Platform Controller Hub)などとも呼ばれることがある。
【0032】
ホストデバイスは、電子機器1の中核となるコンピュータシステムを構成するデバイスである。ホストデバイスには、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、システムメモリが含まれる。プロセッサは、ソフトウェア(プログラム)に記述された命令で指示される種々の演算処理を実行するプロセッサである。プロセッサは、例えば、OS(Operating System)、BIOS、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶ)など、各種のソフトウェアで指示される処理を実行する。なお、ソフトウェアに記述された指令(コマンド)で指示される処理を実行することを、「ソフトウェアを実行する」と呼ぶことがある。メインメモリは、プロセッサの実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込むための作業領域として利用される書き込み可能メモリである。実行プログラムには、OS、周辺機器などのハードウェアを操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリ等が含まれる。
【0033】
ホストデバイスは、いずれかのプログラムを実行して、タッチパッド20において検出された接触位置と押圧力の一方または両方を含む操作情報を用いることがある。また、ホストデバイスは、いずれかのプログラムの実行において、NFCを用いて受信される受信データを用いること、または、その実行において取得される送信データを、NFCを用いて送信することがある。従って、システムI/Oコントローラハブ34は、ホストデバイスと協働して上位システムとして機能しうる。
【0034】
NFCコントローラ382は、NFCアンテナ22を用い、NFCアンテナ22に近接したNFC機器との通信を制御する。
図1に例示されるNFCカード50が、NFCの相手先のNFC機器となりうる。NFCコントローラ382は、例えば、ISO/IEC 18092などの通信規格に規定された所定の手順に従って、プレポーリング(pre-polling)とフルポーリング(full-polling)を行い、通信可能とする相手先のNFC機器の発見を試みる。NFCコントローラ382は、発見されたNFC機器の有無により、NFCを実行するか否かを判定することができる。NFCコントローラ382は、NFCの実行の有無、例えば、コミュニケーションモード(後述)にあるか否かを示す実行状態情報をMCU36に出力する。NFCコントローラ382は、この実行状態情報をシステムI/Oコントローラハブ34を経由してホストデバイスに出力してもよい。ホストデバイスは、NFCコントローラ382から通知された実行状態情報に基づいてデータの送受信を制御してもよい。
【0035】
NFCコントローラ382は、発見された機器との間で、各種のデータの送信または受信を制御する。NFCコントローラ382は、データ受信において、NFCアンテナ22から入力される交番電流の周波数帯域をRF(Radio Frequency、無線周波数)バンドからベースバンド(基底周波数帯域)にダウンコンバートする。NFCコントローラ382は、ベースバンドの受信信号を復調して得られる受信データをシステムI/Oコントローラハブ34に出力する。
【0036】
NFCコントローラ382は、データ送信において、システムI/Oコントローラハブ34から入力される送信データを変調して得られる送信信号の周波数帯域をベースバンドからRFバンドにアップコンバートする。NFCコントローラ382は、アップコンバートして得られたRFバンドの送信信号をなす交番電流をNFCアンテナ22に出力する。
【0037】
MCU(Micro Controller Unit)36は、ホストシステムの動作状態に関わらず、自部に接続された各種デバイス(周辺装置やセンサ等)の状況を監視して制御するコントローラである。MCU36は、NFCコントローラ382、タッチセンサコントローラ384、触覚コントローラ386、その他のコントローラと協働して、それらのデバイスの一部の制御を実行する。MCU36は、ホストデバイスとは別個のCPU、RAMの他、ROM、各種の入出力インタフェース(図示せず)を備えるマイクロコンピュータとして構成されてもよい。MCU36は、エンベデッドコントローラ(Embedded Controller)とも呼ばれる。
【0038】
より具体的には、MCU36は、NFCコントローラ382から入力される実行状態情報に基づいてタッチセンサコントローラ384によるタッチパッド20からの接触情報の取得を制御する。MCU36は、実行状態情報(NFC_Active)がNFC実行(true)を示すときタッチパッド20の動作を無効(ディスエーブル(disable))と定める。このとき、MCU36は、タッチセンサコントローラ384にタッチパッド20により検出された接触領域に基づく接触情報の取得を停止させる。MCU36は、実行状態情報がNFC実行なしを示すときタッチパッド20の動作を有効(エネーブル(enable))と定める。このとき、MCU36は、タッチセンサコントローラ384にタッチパッド20により検出された接触領域に基づく接触情報の取得を開始させる。MCU36は、タッチセンサコントローラ384から入力される接触情報をシステムI/Oコントローラハブ34を経由してホストデバイスに出力する。
【0039】
また、MCU36は、実行状態情報に基づいてタッチセンサコントローラ384から入力される接触情報に基づく触覚提示の要否を制御する。MCU36は、実行状態情報がNFC実行を示すとき、触覚提示を無効と定める。このとき、MCU36は、例えば、触覚コントローラ386への接触情報の出力を停止する。そして、触覚コントローラ386から駆動コイル28-1、28-2への駆動信号とする交流電流の供給が停止される。MCU36は、実行状態情報がNFC実行なしを示すとき、触覚提示を有効と定める。このとき、MCU36は、例えば、触覚コントローラ386への接触情報の出力を開始する。そして、出力される接触情報に基づいて触覚コントローラ386から駆動コイル28-1、28-2へ駆動信号が供給される。
【0040】
タッチセンサコントローラ384は、MCU36の制御に従って、タッチパッド20による接触物の検出を制御する。タッチパッド20の動作が有効と指示されるとき、タッチセンサコントローラ384は、タッチパッド20により検出される接触領域を示す接触情報のMCU36への出力を開始する。
タッチセンサコントローラ384は、タッチパッド20に配置されたタッチセンサごとに検出された検出値が所定の検出閾値を超えるか否かにより、そのタッチセンサの位置への接触の有無を判定することができる。検出値の種類は、検出原理により異なりうる。静電容量方式が用いられる場合には、静電容量、もしくは、その基礎となる電圧値が検出値となりうる。圧力方式が用いられる場合には、圧力が検出値として用いられる。
【0041】
なお、タッチセンサコントローラ384は、空間的に連続した一連の接触領域の重心を接触位置と定め、定めた接触位置を接触情報に含めてMCU36に出力してもよい。また、検出値が圧力を示す場合には、タッチセンサコントローラ384は、検出された圧力をタッチセンサ間で積分して押圧力を定め、定めた押圧力を接触情報に含めてMCU36に出力してもよい。接触ありと判定されたタッチセンサの位置の集合により検出領域が表される。タッチパッド20の動作が無効と指示されるとき、タッチセンサコントローラ384は、検出情報のMCU36への出力を停止する。
【0042】
タッチセンサを構成する電極には、NFCアンテナ22から放射される交番磁束により誘導電圧が誘起される。誘起された誘導電圧は様々な周波数成分を含み、接触情報にノイズとして混入する。そこで、タッチセンサコントローラ384は、NFCコントローラ382からMCU36を経由して通知されるNFCモードに応じてタッチパッド20に配置されたタッチセンサの検出閾値を制御してもよい。NFCモードは、例えば、NFCの実行状態としてのNFC実行なし、プレポーリングモード、フルポーリングモード、コミュニケーションモードのいずれかを示す実行状態情報とみなすこともできる。NFC実行なしの状態では、検出閾値は、例えば、環境ノイズによるノイズレベルよりも大きい値であればよい。
【0043】
プレポーリングモードとは、プレポーリング信号によりNFCアンテナ22に生じた誘導電圧に基づいて、NFCアンテナ22への金属の接近の検出を試みる動作モードである。金属は、NFC機器の候補となり、誘導電圧の発生要因となる。NFCコントローラ382は、所定のプレポーリング周期(例えば、数百ms~数秒)ごとにプレポーリングを実行する。NFCコントローラ382は、プレポーリングにおいて、プレポーリング周期よりも短い期間、プレポーリング信号とする交番電圧をNFCアンテナ22に出力する。NFCコントローラ382は、プレポーリング信号の出力開始、終了を、プレポーリングモードへの変更、解除として判定することができる。プレポーリングは、電子機器1のホストシステムの動作が停止している間、省電力モードで動作している間、などの時期に行われてもよい。
【0044】
フルポーリングモードは、プレポーリングにより金属が検出されるとき、フルポーリング信号を送信し、NFCアンテナ22に生じた誘導電圧に基づく受信信号からNFC機器を識別する動作モードである。NFCコントローラ382は、フルポーリング信号を搬送する交番電圧をNFCアンテナ22に出力し、フルポーリング信号を搬送する交流磁場を放射させる。フルポーリング信号には、電子機器1の識別情報が含まれてもよい。
【0045】
NFCアンテナ22に近接したNFC機器は、放射された交流磁場により誘起された誘導電圧に基づく受信信号を受信する。NFC機器は、受信した受信信号を復調しフルポーリング信号を取得する。NFC機器は、フルポーリング信号に対する応答信号を搬送する交流磁場を放射する。応答信号には、NFC方式の種別(例えば、Type-A, Type-B、など)を示す種別情報が含まれてもよい。NFCコントローラ382は、NFCアンテナ22に生じた誘導電圧に基づく受信信号を復調して応答信号を取得し、取得した種別情報に基づいて送信元としてのNFC機器を識別することができる。コミュニケーションモードにおいて、NFCコントローラ382は、種別情報に示されるNFC方式に従って、NFC機器との通信を実行する。NFCコントローラ382は、フルポーリング信号の出力開始を、フルポーリングモードへの変更と判定することができる。NFCコントローラ382は、NFC機器を識別するとき、NFCモードをフルポーリングモードからコミュニケーションモードに変更することができる。NFCコントローラ382は、フルポーリングモードの開始から所定のフルポーリングタイムアウト時間内に応答信号を取得できない場合、または、応答信号を取得してもNFC機器を識別できない場合には、NFCモードをフルポーリングモードからNFC実行なしに変更することができる。
【0046】
なお、NFCコントローラ382は、コミュニケーションモードの開始から所定のコミュニケーションタイムアウト時間内に送信データの送信も受信データの受信もなされないとき、NFCモードとしてコミュニケーションモードをNFC実行なしに変更することができる。NFCコントローラ382は、ホストデバイスからの通信終了通知が指示されるときにコミュニケーションモードの終了を判定してもよい。その後、NFCコントローラ382は、コミュニケーションモードの終了をもってNFC実行なしと判定してもよい。
【0047】
タッチセンサコントローラ384は、例えば、NFCモードがNFC実行なしの場合、検出閾値を予め定めた基準閾値に設定し、NFCモードがプレポーリングモード、フルポーリングモードとなる場合、検出閾値を基準閾値よりも高い予め定めた設定値(以下の説明では、それぞれ「プレポーリング閾値」、「フルポーリング閾値」と呼ぶことがある)に設定する。タッチセンサコントローラ384は、NFCモードがNFC実行なしの場合、個々のタッチセンサからの検出値の取得を停止し、タッチパッド20による接触領域の取得を無効とする。
【0048】
触覚コントローラ386は、MCU36の制御に従って、触覚提示の要否を制御する。触覚提示が有効と指示されるとき、触覚コントローラ386は、MCU36からの接触情報の入力に応じて触覚提示を実行。触覚提示を実行するとき、触覚コントローラ386は、駆動信号を駆動コイル28-1、28-2に供給し、振動部21を振動させる。触覚提示を実行しないとき、触覚コントローラ386は、駆動信号の駆動コイル28-1、28-2への供給を停止し、振動部21を振動させない。
【0049】
次に、駆動コイル28-1、28-2へ供給される駆動信号の例を示す。
図6は、駆動コイル28-1、28-2へ供給される駆動信号を例示する図である。上段、下段は、それぞれ駆動コイル28-1、28-2に供給する駆動信号の時間変化を示す。この例では、駆動信号の基本周波数は、100~400KHzである。駆動信号は、基本周波数よりも低い周波数(本願では、「振幅周波数」と呼ぶ)で振幅が周期的に変動する。駆動コイル28-1に対する駆動信号の振幅は、ほぼ0に近似する第1状態と、最大値となる第2状態とが繰り返され、第1状態の期間よりも第2状態の期間の方が長い。駆動コイル28-2に対する駆動信号の振幅の時間変化は、駆動コイル28-1に対する駆動信号の振幅の時間変化とは半周期異なり、かつ、第1状態をとる期間と第2状態をとる期間との比率が逆となる。駆動コイル28-1、28-2をタッチパッド20の中心を通る対称軸に対して対称となる位置に配置することで、タッチパッド20の振動部21を効率よく振動させることができる。振幅周波数は、人間の触覚として感知可能な周波数帯域の範囲内、例えば、10Hz~200Hzであればよい。
【0050】
なお、ISO/IEC18092で規定された搬送周波数は、13.92MHzであり、駆動信号の振幅周波数や基本周波数よりも格段に高い。しかしながら、駆動信号は比較的高い電圧を有し(例えば、8~15V)、予期しない高調波による交番磁束がNFCアンテナ22に電磁ノイズを発生させることがある。また、NFCアンテナ22により生じる交番磁束がタッチパッド20からの接触情報を搬送する導線との電磁結合を生じ、電磁ノイズを発生させることがある。
【0051】
この点、MCU36は、NFCの実行中においてタッチパッド20に対する触覚提示を無効とすることで、駆動コイル28-1、28-2に交番磁束が発生させないため、予期しない電磁ノイズを回避することができる。NFCアンテナ22に発生する交番磁束による接触情報を伝達する導線との電磁結合が、タッチパッド20からの接触情報の取得を無効とすることで、電磁ノイズが混入した接触情報の取得を回避することができる。
もっとも、タッチパッド20をNFC機器のアクセス面として用いることで、タッチパッド20に対する操作は、NFC機器のタッチパッド20への接近とを異なる時期になされうる。
【0052】
次に、NFCの実行状態とタッチパッド20への接触に基づく触覚提示の制御例について説明する。
図7は、本実施形態に係る触覚提示の制御例を示すタイミングチャートである。
図7の上段、中段、下段は、それぞれNFCの実行状態、接触検出状態、および、触覚提示の制御状態の時間変化を示す。触覚提示の制御状態として、ディスエーブルとされているか否かが示されている。
【0053】
図7の例では、NFC実行状態がプレポーリング、フルポーリング、NFCデータ送信の順に変化する。プレポーリングは、時刻t0から一定のプレポーリング周期ごとになされ、時刻t1において金属が検出される。その後、フルポーリングが開始される。時刻t2において、フルポーリング信号に対する応答信号に基づいてNFC機器であるNFCカード50が検出される。その時点において、NFCモードがコミュニケーションモードとなり、触覚提示が無効(ディスエーブル)に制御される。その後、データ送信(NFCデータ送信)がなされる。時刻t7においてNFCデータ送信の終了とともに、NFCモードがコミュニケーションモードからNFC実行なしに変化する。この時点において、触覚提示が無効から有効(エネーブル)に変更される。即ち、時刻t2から時刻t6までの期間において、タッチパッド20に操作物が接触しても、触覚提示がなされない。
図7の例では、時刻t3からt4までの期間と、時刻t5からt6までの期間においてユーザの指がタッチパッド20に接触することが仮定されている。これらの期間では、触覚提示がなされない。そのため、触覚提示による交番磁束の発生による送信データまたは受信データへの電磁ノイズの混入を回避することができる。
【0054】
次に、本実施形態に係るNFC通信制御の一例について説明する。
図8は、本実施形態に係るNFC通信制御の一例を示すフローチャートである。
図8の処理は、NFCモジュールの動作中になされる。初期状態において、NFCモードはNFC実行なしとなる。
(ステップS104)タッチセンサコントローラ384は、タッチパッド20のタッチセンサの検出閾値として基準閾値を設定する。
(ステップS106)NFCコントローラ382は、所定のプレポーリング周期ごとに、NFCモードをNFC実行なしからプレポーリングモードに変更する。タッチセンサコントローラ384は、タッチセンサの検出閾値をプレポーリング閾値に変更する。
【0055】
(ステップS108)NFCコントローラ382は、プレポーリング信号の送信に応じてNFCアンテナ22に生ずる誘導電圧を監視し、誘導電圧に基づいて金属が検出されたか否かを判定する。検出される場合(ステップS108 YES)、ステップS110の処理に進む。検出されない場合(ステップS108 NO)、NFCモードをNFC実行なしに変更し、タッチセンサの検出閾値を基準閾値に変更し、ステップS106の処理に戻る。
【0056】
(ステップS110)NFCコントローラ382は、NFCモードをプレポーリングモードからフルポーリングモードに変更する。タッチセンサコントローラ384は、タッチセンサの検出閾値をフルポーリング閾値に変更する。
(ステップS112)NFCコントローラ382は、フルポーリング信号の送信に応じてNFCアンテナ22に生ずる誘導電圧から復調された受信信号として応答信号で搬送される種別情報の検出を試みる。NFCコントローラ382は、種別情報の検出の成否に基づいて、NFCカードの有無を検出する。NFCカードが検出される場合(ステップS112 YES)、ステップS114の処理に進む。NFCカードが検出されない場合(ステップS112 NO)、ステップS106の処理に戻る。
【0057】
(ステップS114)NFCコントローラ382は、NFCモードをフルポーリングモードからコミュニケーションモードに変更する。
(ステップS116)MCU36は、触覚提示を無効(ディスエーブル)と定め、触覚コントローラ386への接触情報の出力を停止する。触覚コントローラ386から駆動コイル28への交番電流の供給を停止することで振動部21の振動が停止する。
【0058】
(ステップS118)MCU36は、タッチパッド20の動作を無効(ディスエーブル)と定め、タッチセンサコントローラ384に接触情報の取得を停止させる。
(ステップS120)NFCコントローラ382は、上記の手法を用いてコミュニケーションモードを終了するか否かを判定する。終了しないと判定されるとき(ステップS120 NO)、ステップS120の処理を繰り返す。終了したと判定されるとき(ステップS120 YES)、NFCコントローラ382は、NFCモードをコミュニケーションモードからNFC実行なしに変更し、ステップS122の処理に進む。
【0059】
(ステップS122)MCU36は、触覚提示を有効(エネーブル)と定め、触覚コントローラ386への接触情報の出力を再開する。
(ステップS124)MCU36は、タッチパッド20の動作を有効(エネーブル)と定め、タッチセンサコントローラ384に接触情報の取得を再開させる。その後、ステップS104の処理に戻る。
【0060】
なお、
図7は、フルポーリングによりNFCカード50が検出された後で、タッチパッド20に接触物が接触する場合を例示するが、これには限られない。NFCカード50の検出前にタッチパッド20に接触物が接触されることも生じうる。その場合には、接触物の接触に応じて触覚提示がなされることがある。触覚提示による電磁ノイズがプレポーリングまたはフルポーリングを阻害し、NFCの実行に至らないこともある。そこで、MCU36は、NFCがなされないとき、タッチセンサコントローラ384に示される接触領域に基づいて、タッチパッド20への接触物が所定の操作物であるか否かを判定する。接触物が所定の操作物であると判定するとき、MCU36は、触覚提示を有効(エネーブル)と定め、触覚コントローラ386への接触情報の出力を許容する。接触物が所定の操作物でないと判定するとき、MCU36は、触覚提示を無効(ディスエーブル)と定め、触覚コントローラ386への接触情報の出力を停止する。所定の操作物は人物の指としてもよい。
【0061】
検出される操作物が指、または、その他の所定の操作物(例えば、スライタスペン)である場合には、タッチパッド20の振動がユーザに伝わることで、そのユーザに対する触覚提示の目的が達される。そして、その操作により他のNFC機器がタッチパッド20に接近する可能性が低くなる。操作中においてプレポーリングまたはフルポーリングがなされたとしても、新たなNFCが開始される可能性も低い。
【0062】
他方、検出される操作物が指、または、その他の所定の操作物でない場合には、タッチパッド20の振動がユーザに伝わらないため、触覚提示の目的が達されない。その場合には、ユーザによる操作は推認されず、他のNFC機器がタッチパッド20に接近する可能性が低くなるとは限らない。よって、触覚提示を停止することで、電磁ノイズの発生を抑制することで、NFC実行なしからコミュニケーションモードへの円滑になされる。
【0063】
MCU36は、接触情報に示される空間的に連続した1個の接触領域に基づいて、接触物が所定の操作物であるか否かを判定することができる。MCU36は、接触領域の大きさ、または、形状を表すパラメータが予め定めた範囲内に含まれるか否かにより、接触物が所定の操作物であるか否かを判定することができる。かかるパラメータとして、径、アスペクト比(縦横比)、などを用いることができる。MCU36は、予め定めた機械学習モデルを用いて、接触領域が所定の操作物となる確率を算出し、その確率が判定閾値以上となるか否かに基づいて、接触物が所定の操作物であるか否かを判定してもよい。
【0064】
次に、本実施形態に係る触覚提示制御の例について説明する。
図9は、本実施形態に係る触覚提示制御の例を示すフローチャートである。
図9の処理は、NFCモードがNFC実行なし、プレポーリングモード、または、フルポーリングモードである場合に、
図8の処理と並行してなされる。
図8の処理による触覚提示制御の判定結果と、
図9の処理による触覚提示制御の判定結果とが異なる場合には、MCU36は、
図9の処理による触覚提示制御の判定結果を優先する。
【0065】
(ステップS132)MCU36は、タッチパッド20への接触の有無を判定する。MCU36は、例えば、タッチセンサコントローラ384からの接触情報の入力を有無に基づいて、接触の有無を判定することができる。MCU36は、接触を検出するとき(ステップS132 YES)、ステップS136の処理に進む。MCU36は、接触を検出しないとき(ステップS132 NO)、ステップS134の処理に進む。
(ステップS134)MCU36は、触覚提示を無効(ディスエーブル)と定め、触覚コントローラ386への接触情報の出力を停止する。その後、ステップS132の処理に戻る。
【0066】
(ステップS136)MCU36は、入力される接触情報に示される接触領域に基づいて操作物が所定の操作物(例えば、人物の指)であるか否かを判定する。所定の操作物と判定されるとき(ステップS136 YES)、ステップS138の処理に進む。所定の操作物ではないと判定されるとき(ステップS136 NO)、ステップS134の処理に進む。
(ステップS138)MCU36は、触覚提示を有効(エネーブル)と定め、触覚コントローラ386に接触情報を出力する。その後、ステップS132の処理に戻る。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る電子機器は、接触検出部(例えば、タッチパッド20)、振動部21、通信部(例えば、NFCコントローラ382)、および、コントローラ(例えば、MCU36、タッチセンサコントローラ384、触覚コントローラ386)を備える。通信部は、アンテナ(例えば、NFCアンテナ22)を用いて無線で通信可能とする。コントローラは、接触検出部への接触が検出されるとき、振動部を振動させる。接触検出部、振動部、および、アンテナは、共通の筐体(例えば、第2筐体16)に配置され、コントローラは、通信部が通信を実行するとき、振動部を振動させない。
この構成によれば、無線での通信中に振動部が振動しないため、振動によるアンテナにおける磁束の変動による誘導電圧の発生が抑制される。そのため、誘導電圧によるノイズの発生を抑えることができる。また、ノイズの低減または回避により、より低い電力でも通信が可能になるため、消費電力を節約することができる。
【0068】
コントローラは、無線での通信が行われないとき、接触検出部への接触領域に基づいて当該接触検出部への接触物が所定の操作物であるか否かを判定してもよい。コントローラは、接触物が所定の操作物であるとき、振動部を振動させ、接触物が所定の操作物ではないとき、振動部を振動させなくてもよい。所定の操作物は、人物の指であってもよい。
この構成によれば、接触物が所定の操作物であるか否かにより振動部を振動させるか否かを制御することができる。そのため、接触物がユーザに振動を伝える所定の操作物である場合には、他の操作物が接近しない可能性が高い状況で、ユーザに対して接触時における振動による刺激を与えることができる。また、接触物がユーザに振動を伝える所定の操作物でない場合には、接触時における振動を回避することで、アンテナにおける磁束の変動による誘導電圧の発生を抑制することができる。
【0069】
コントローラは、NFC機器の検出に基づいて、無線での通信の実行を判定してもよい。この構成により、振動部の振動を制限する時期をNFC機器の検出時に限定することができる。そのため、触覚提示機能を必要以上に制限することを回避することができる。
【0070】
コントローラは、無線での通信を実行するとき、接触検出部への接触を検出しなくてもよい。この構成により、通信時における磁束の変動による誘導電圧の変動に起因するノイズを含む検出信号の取得を回避することができる。
【0071】
なお、上記の説明は、電子機器1がNFC機能を有するノートブック型PCである場合を主としたが、これには限られない。電子機器1は、タブレット端末装置、携帯電話機(いわゆるスマートフォンを含む)などの汎用の情報通信機器であってもよいし、接触によりユーザ操作を受け付け、かつ、NFC機能を有する機器であれば専用の機器であってもよい。電子機器1は、例えば、飲食物、乗車券の販売に係る自動販売機、クレジットカード、デビットカードなどの決済カードから情報を読み取るカードリーダ、公共サービスの提供に係る情報提供端末装置(いわゆるキオスク端末を含む)、などであってもよい。
【0072】
接触検出部として、単独のタッチパッド20が適用されなくてもよい。接触検出部は、ディスプレイ14と重ね合わせて一体化された単一のタッチパネルとして構成されてもよい。接触検出部として、ボタン、キーボード、など、接触により操作を受け付ける機器が用いられてもよい。
駆動コイル28の数は、2個に限られず、1個または3個以上であってもよい。
【0073】
上記の各種のコントローラの種類、機能分担は、例示したものに限られない。例えば、MCUは、MFCコントローラ382と一体に構成されてもよい。MCU36は、MFCコントローラ382に代えて、もしくは、MFCコントローラ382とともに、タッチセンサコントローラ384と触覚コントローラ386の一方または両方と一体に構成されてもよい。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0075】
1…電子機器、12…第1筐体、14…ディスプレイ、16…第2筐体、17…永久磁石、18…キーボード、20…タッチパッド、21…振動部、22…NFCアンテナ、28(28-1、28-2)…駆動コイル、34…システムI/Oコントローラハブ、36…MCU、50…NFCカード、52…NFCアンテナ、56…ICカード、162…基板、164…スプリング、166…保護シート、168…底面シート、212…ガラス層、214…接着剤層、216…PCBA、282…コンポーネント、286…ストッパ、288…スペーサ、382…NFCコントローラ、384…タッチセンサコントローラ、386…触覚コントローラ
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触検出部、振動部、通信部、および、コントローラを備え、
前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、
前記アンテナは、他の機器との電磁結合に基づくデータ通信に用いられる通信コイルを備え、
前記振動部には、前記接触検出部の裏面に永久磁石と対面するように駆動信号に従って振動する駆動コイルが設置され、
前記コントローラは、前記接触検出部への接触が検出されるとき、前記振動部を振動させ、
前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナは、共通の筐体に配置され、
前記コントローラは、
前記アンテナに生じる受信信号としてポーリング信号に対する応答信号が取得されることにより前記データ通信が開始されるとき、前記振動部の振動を停止し、
一定期間以上前記データ通信がなされないとき、前記接触の検出に応じた前記振動部の振動を再開する、
電子機器。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記データ通信が行われないとき、前記接触検出部への接触領域に基づいて当該接触検出部への接触物が所定の操作物であるか否かを判定し、
前記接触物が所定の操作物であるとき、前記振動部を振動させ、
前記接触物が所定の操作物ではないとき、前記振動部を振動させない
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記所定の操作物は、人物の指である
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
接触検出部、振動部、および、通信部を備え、
前記通信部は、アンテナを用いて無線で通信可能とし、
前記アンテナは、他の機器との電磁結合に基づくデータ通信に用いられる通信コイルを備え、
前記振動部には、前記接触検出部の裏面に永久磁石と対面するように駆動信号に従って振動する駆動コイルが設置され、
前記接触検出部、前記振動部、および、前記アンテナが、共通の筐体に配置される電子機器の制御方法であって、
前記電子機器が、
前記アンテナに生じる受信信号としてポーリング信号に対する応答信号が取得されることにより前記データ通信が開始されるとき、前記振動部の振動を停止するステップと、
一定期間以上前記データ通信がなされないとき、
前記接触検出部への接触の検出に応じた前記振動部の振動を再開するステップと、を実行する
制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
触覚コントローラ386は、MCU36の制御に従って、触覚提示の要否を制御する。触覚提示が有効と指示されるとき、触覚コントローラ386は、MCU36からの接触情報の入力に応じて触覚提示を実行する。触覚提示を実行するとき、触覚コントローラ386は、駆動信号を駆動コイル28-1、28-2に供給し、振動部21を振動させる。触覚提示を実行しないとき、触覚コントローラ386は、駆動信号の駆動コイル28-1、28-2への供給を停止し、振動部21を振動させない。