(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021260
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20240208BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20240208BHJP
H02K 7/102 20060101ALI20240208BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240208BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240208BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
H02K7/102
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123975
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
5H607
【Fターム(参考)】
3D048BB53
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH51
3D048HH58
3D048HH64
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048RR25
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA64
3J058CC15
3J058CC22
3J058CC77
3J058DB27
3J058FA06
3J058FA07
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC05
5H607DD03
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE52
(57)【要約】
【課題】製造時のケースへのハウジングの組付け作業を容易とする。
【解決手段】電動制動装置10は、直動変換機構25及び荷重センサ34が組付けられたキャリパ部12のハウジング22を、伝達機構が組付けられたケース18に組付ける際に、直動変換機構25の回転部であるねじ軸26に設けられた嵌合凸部39が、伝達機構の構成部品である第3歯車17に設けられた嵌合凹部41に嵌合した後、荷重センサ34に設置された雄端子35が、ケース18に設置された雌端子36に挿入されるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構において前記伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して前記車輪に制動力を発生する電動制動装置であって、
前記回転体に対する前記摩擦材の押圧荷重を検出するセンサと、前記センサが検出した押圧荷重に応じた信号を出力する出力端子と、前記直動変換機構と、が設けられ、前記直動変換機構の前記回転部を回転可能に保持するハウジングと、
前記伝達機構と、前記センサからの出力が入力される回路基板と、が設けられ、前記伝達機構を回転可能に保持するケースと、
を備え、
前記伝達機構は、前記回転部と機械的に咬み合うよう嵌合することで、前記電気モータの回転運動を前記回転部に伝達し、
前記ケースまたは前記回路基板には、前記出力端子と嵌合する入力端子が設けられ、
前記電動制動装置は、前記ハウジングと前記ケースとの組付けにおいて、前記伝達機構と前記回転部とが嵌合した後に、前記出力端子と前記入力端子とが嵌合されるように構成されている電動制動装置。
【請求項2】
電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構において前記伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して前記車輪に制動力を発生する電動制動装置であって、
前記回転体に対する前記摩擦材の押圧荷重を検出するセンサと、前記直動変換機構と、が設けられ、前記直動変換機構の前記回転部を回転可能に保持するハウジングと、
前記伝達機構と、前記センサからの出力が入力される回路基板と、が設けられ、前記伝達機構を回転可能に保持するケースと、
を備え、
前記ハウジングには、前記センサに電気的に接続されている出力端子であって、雄端子および雌端子の何れか一方の出力端子が設けられ、
前記ケースまたは前記回路基板には、前記回路基板に電気的に接続されている入力端子であって、前記出力端子に対応する前記雄端子および前記雌端子の何れか他方の入力端子が設けられ、
前記センサと前記回路基板は、前記出力端子と前記入力端子との嵌合により電気的に接続され、
前記回転部及び前記伝達機構の一方には嵌合凸部が、他方には前記嵌合凸部と嵌合した嵌合凹部が、それぞれ設けられ、
前記伝達機構は、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部との嵌合により、前記電気モータの回転運動を前記回転部に伝達し、
前記雌端子への前記雄端子の挿入方向と前記嵌合凹部への前記嵌合凸部の挿入方向とは双方共に、前記回転部の回転軸線に平行な方向となっており、
前記嵌合凹部に対する前記嵌合凸部の挿入量は、前記雌端子に対する前記雄端子の挿入量よりも大きい量に設定されている
電動制動装置。
【請求項3】
前記嵌合凸部の先端側の部分は、前記嵌合凹部から突出しており、前記嵌合凸部の先端側の部分の前記嵌合凹部からの突出量は、前記雌端子に対する前記雄端子の挿入量よりも大きくされている
請求項2に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるキャリパ型の電動制動装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同電動制動装置は、電気モータ、及び直動変換機構を備えている。電気モータは、給電に応じて回転運動を発生する。直動変換機構は、電気モータが発生した回転運動を直線運動に変換する。そして、同電動制動装置は、直動変換機構が変換した直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧することで、車輪に制動力を発生する。また、同電動制動装置は、回転体に対する摩擦材の押圧力を検出する荷重センサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2021-0002011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように電動制動装置の製造時の構成部品の組付けに際しては、数多くの部品間の位置合せ、位相合せが必要となる。そして、そうした位置合せ、位相合せに要する作業が、電動制動装置の生産性の向上を阻害する要因となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動制動装置は、電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、直動変換機構において伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して車輪に制動力を発生する。同電動制動装置は、ハウジング及びケースを備えている。ハウジングには、回転体に対する摩擦材の押圧荷重を検出するセンサと、同センサが検出した押圧荷重に応じた信号を出力する出力端子と、上記直動変換機構と、が設けられている。また、ハウジングは、直動変換機構の回転部を回転可能に保持している。一方、ケースには、上記伝達機構と、センサからの出力が入力される回路基板と、が設けられている。また、ケースは、伝達機構を回転可能に保持している。上記伝達機構は、直動変換機構の回転部と機械的に咬み合うよう嵌合することで、電気モータの回転運動を同回転部に伝達するよう構成されている。さらに、ケースまたは回路基板には、出力端子と嵌合する入力端子が設けられている。そして、同電動制動装置は、ハウジングとケースとの組付けにおいて、伝達機構と回転部とが嵌合した後に、出力端子と入力端子とが嵌合されるように構成されている。
【0006】
上記電動制動装置は、その製造に際して、センサ及び直動変換機構が組付けられたハウジングと、伝達機構が組付けられたケースとの組付けが行われる。また、この組付けに際して、出力端子及び入力端子の嵌合と、直動変換機構の回転部と伝達機構との嵌合と、が行われる。出力端子及び入力端子の嵌合に際しては両端子の位相合せが、回転部と伝達機構との嵌合に際しては両者の位相合せが、それぞれ必要となる。上記電動制動装置は、ケースへのハウジングの組付けにおいて、回転部と伝達機構とが嵌合した後に、出力端子及び入力端子が嵌合するように構成されている。そのため、回転部と伝達機構とが嵌合した状態で、出力端子及び入力端子の位相合せを実施できる。したがって、上記電動制動装置には、製造時のケースへのハウジングの組付け作業を容易とする効果がある。
【0007】
上記課題を解決する、もう一つの電動制動装置は、電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、直動変換機構において伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して車輪に制動力を発生する。同電動制動装置は、ハウジング及びケースを備えている。ハウジングには、回転体に対する摩擦材の押圧荷重を検出するセンサと、上記直動変換機構と、が設けられている。また、ハウジングは、直動変換機構の回転部を回転可能に保持している。一方、ケースには、上記伝達機構と、センサからの出力が入力される回路基板と、が設けられている。また、ケースは、伝達機構を回転可能に保持している。さらに、ハウジングには、センサに電気的に接続されている出力端子であって、雄端子および雌端子の何れか一方の出力端子が設けられている。一方、ケースまたは回路基板には、回路基板に電気的に接続されている入力端子であって、出力端子に対応する雄端子および雌端子の何れか他方の入力端子が設けられている。そして、センサと回路基板とは、出力端子と入力端子との嵌合により電気的に接続されている。また、回転部及び伝達機構の一方には嵌合凸部が、他方には嵌合凸部と嵌合した嵌合凹部が、それぞれ設けられている。そして、伝達機構は、嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合により、電気モータの回転運動を回転部に伝達するよう構成されている。雌端子への雄端子の挿入方向と、嵌合凹部への嵌合凸部の挿入方向とは双方共に、回転部の回転軸線に平行な方向となっている。そして、嵌合凹部に対する嵌合凸部の挿入量は、雌端子に対する雄端子の挿入量よりも大きい量に設定されている。
【0008】
上記電動制動装置は、その製造に際して、センサ及び直動変換機構が組付けられたハウジングと、伝達機構が組付けられたケースとの組付けが行われる。また、この組付けに際して、出力端子及び入力端子の嵌合、すなわち雌端子への雄端子の挿入と、嵌合凹部と嵌合凸部との嵌合、すなわち嵌合凹部への嵌合凸部の挿入と、が行われる。雌端子への雄端子の挿入方向、及び嵌合凹部への嵌合凸部の挿入方向はいずれも、回転部の回転軸線に平行な方向となっている。また、嵌合凹部への嵌合凸部の挿入量は、雌端子への雄端子の挿入量よりも大きい量となっている。こうした電動制動装置では、ケースへのハウジングの組付けにおいて、嵌合凸部の一部が嵌合凹部に挿入されて回転部と伝達機構とが嵌合した後に、出力端子及び入力端子が嵌合するようになる。そのため、回転部と伝達機構とが嵌合した状態で、出力端子及び入力端子の位相合せを実施できる。したがって、上記電動制動装置には、製造時のケースへのハウジングの組付け作業を容易とする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電動制動装置の一実施形態の断面構造及びその周辺の構成を併せ示す図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿った上記電動制動装置の断面図である。
【
図3】上記電動制動装置が備える荷重センサの平面図である。
【
図4】上記電動制動装置が備えるハウジングの平面図である。
【
図5】上記電動制動装置が備える雌端子の斜視図である。
【
図6】上記電動制動装置が備えるねじ軸の先端部の斜視図である。
【
図7】上記電動制動装置が備える第3歯車の平面図である。
【
図8】
図7の8-8線に沿った第3歯車の断面図である。
【
図9】上記電動制動装置の製造過程におけるキャリパの部品組付けの第1工程の状態を示す図である。
【
図10】同部品組付けの第2工程の状態を示す図である。
【
図11】同部品組付け後のキャリパ部の断面図である。
【
図12】上記電動制動装置の製造過程におけるキャリパ及びハウジングの組付けの第1工程の状態を示す図である。
【
図13】同組付けの第2工程の状態を示す図である。
【
図14】同組付けの第3工程の状態を示す図である。
【
図15】ケースへのキャリパ部の組付中の状態を示す図である。
【
図16】ケースへのキャリパ部の組付中の状態を示す図である。
【
図17】ケースへのキャリパ部の組付中の状態を示す図である。
【
図18】ケースへのキャリパ部の組付中の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、電動制動装置を具体化した一実施形態を
図1~
図14に従って説明する。
<電動制動装置の構成>
まず、
図1及び
図2を参照して本実施形態の電動制動装置10の構成を説明する。
図1には、電動制動装置10の断面構造、及びその周辺の構成が示されている。
図2は、
図1の2-2線に沿った電動制動装置10の断面図である。電動制動装置10は、駆動部11とキャリパ部12とを有している。
【0011】
駆動部11は、電気モータ13及び伝達機構14を有している。伝達機構14は、電気モータ13の回転を減速して伝達する機構である。本実施形態では、電気モータ13に連結された第1歯車15、第1歯車15に噛み合わされた第2歯車16、及び第2歯車16に噛み合わされた第3歯車17を有した減速歯車機構を伝達機構14として採用している。電気モータ13は、駆動部11の筐体であるケース18に組付けられている。また、ケース18には、カバー19が組付けられている。そして、ケース18及びカバー19により、伝達機構14の格納空間が形成されている。なお、伝達機構14を構成する第1歯車15、第2歯車16、及び第3歯車17はそれぞれ、ケース18に回転可能に保持されている。また、駆動部11は、電気モータ13の出力を制御する制御部としてのCPU21を含む回路基板20を備えている。回路基板20は、伝達機構14とは隔離された状態で、ケース18及びカバー19の内部に格納されている。
【0012】
一方、キャリパ部12は、ハウジング22、ピストン23、及び直動変換機構25を有している。キャリパ部12の筐体であるハウジング22は、ケース18に組付けられている。ハウジング22は、シリンダ24を有している。シリンダ24は、ピストン23が摺動可能に保持している。直動変換機構25は、回転部と直動部とを有している。そして、直動変換機構25は、伝達機構14により伝達された回転運動を、回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換する。本実施形態の場合、回転部としてのねじ軸26と、直動部としてのナット27と、を有した送りねじ機構を直動変換機構25として採用している。ねじ軸26は、伝達機構14の第3歯車17に、機械的に咬み合うよう嵌合することで回転運動を伝達可能に連結されている。一方、ナット27は、ピストン23に、直線運動を伝達可能に連結されている。なお、直動変換機構25は、ねじ軸26の回転軸線が第3歯車17の回転軸線O上に位置するように電動制動装置10に組付けられている。こうした直動変換機構25のねじ軸26は、ナット27に回転可能に保持されている。また、ナット27は、ピストン23を介してシリンダ24に保持されている。よって、直動変換機構25のねじ軸26は、ナット27及びピストン23を介してハウジング22に回転可能に保持されている。
【0013】
電動制動装置10は、自動車の車輪28の側方に配置される。車輪28の回転軸である車輪軸29には、2つの摩擦材30、31に挟まれたブレーキディスク32が一体となって回転するように設置されている。2つの摩擦材30、31は、それらのうちの一つ(摩擦材30)にピストン23が押圧を加えると、両者の間隔が狭まるように連動して動作する。
【0014】
こうした電動制動装置10は、下記の態様で車輪28に制動力を発生させる。電気モータ13の回転は、伝達機構14の第1歯車15、第2歯車16及び第3歯車17を介することで減速されて、直動変換機構25のねじ軸26に伝達される。直動変換機構25において、ねじ軸26の回転運動はナット27の直動運動に変換される。そして、その直線運動に連動して摩擦材30、31がブレーキディスク32を押圧することで、車輪28に制動力が発生する。本実施形態では、ブレーキディスク32が回転体に対応している。
【0015】
以下の説明では、電動制動装置10において、第3歯車17の回転軸線Oに平行な方向を、軸方向と記載する。さらに、軸方向にあって、第3歯車17から見て、直動変換機構25の直動要素であるナット27が位置する側を軸方向前方F、その反対側を軸方向後方Rと記載する。
【0016】
<荷重センサ及び端子の構成>
電動制動装置10は、摩擦材30、31がブレーキディスク32に加える押圧荷重を検出するためのセンサである荷重センサ34を備えている。荷重センサ34は、ハウジング22に格納されている。なお、直動変換機構25のねじ軸26は、その軸方向前方Fの部分に、ナット27に噛み合うねじが設けられたねじ部26Aを有している。荷重センサ34は、シリンダ24の内部におけるねじ部26Aよりも軸方向後方Rの部分に配置されている。
【0017】
摩擦材30、31がブレーキディスク32に押圧を加えると、その反力がピストン23に加わる。ピストン23に加わった反力は、ナット27を介してねじ軸26に伝達される。荷重センサ34は、ねじ軸26に伝達された反力を受けるように配置されている。そして、荷重センサ34は、ねじ軸26から受けた反力に応じた信号を、押圧荷重の検出信号として出力するように構成されている。
【0018】
図3に、軸方向後方Rから見た荷重センサ34の平面構造を示す。荷重センサ34は、ねじ軸26を通す孔を中央に有した円環柱形状をなしている。また、荷重センサ34は、押圧荷重に応じた信号を出力する出力端子として、軸方向後方Rに突出する雄端子35を有している。雄端子35は、軸方向後方Rに突出する3本のプラグ35Aを有している。
【0019】
図4に、軸方向前方Fから見たハウジング22の平面構造を示す。ハウジング22は、シリンダ24の軸方向後方Rの壁面を構成する部分に、ねじ軸26を通す孔である軸孔37と、雄端子35を通す孔である端子孔38と、を有している。
【0020】
一方、ケース18には、荷重センサ34の出力端子と嵌合する入力端子が設置されている。本実施形態では、雄端子35を出力端子としているため、入力端子は、雄端子35が挿入される雌端子36となっている。
【0021】
図5に、雌端子36の斜視構造を示す。雌端子36は、雄端子35の各プラグがそれぞれ挿入される3つのソケット孔36Aを有している。なお、
図4に示すハウジング22の端子孔38は、雌端子36を挿入可能な寸法形状とされている。
【0022】
図2に示すように、電動制動装置10において荷重センサ34は、ケース18に設置された雌端子36に雄端子35が挿入された状態で設置されている。以下の説明では、雌端子36に対する雄端子35の挿入量を端子挿入量L1と記載する。端子挿入量L1は、より詳細には、雄端子35の各プラグ35Aにおける、雌端子36のソケット孔36A内に位置している部分の長さである。雌端子36に対する雄端子35の挿入方向は、軸方向となっている。
【0023】
ケース18において、雌端子36は、回路基板20に配線されている。これにより、荷重センサ34の押圧荷重の検出信号が回路基板20のCPU21に入力される。そして、CPU21は、荷重センサ34の押圧荷重の検出値に基づき、電気モータ13の出力を制御している。
【0024】
<ねじ軸及び第3歯車の連結構造>
上記のように、直動変換機構25のねじ軸26は、回転運動を伝達可能に伝達機構14の第3歯車17に連結されている。次に、こうしたねじ軸26と第3歯車17との連結構造について説明する。
【0025】
図6に、ねじ軸26の軸方向後方Rの端部の斜視構造を示す。
図6に示すように、ねじ軸26は、その軸方向後方Rの端部に、四角柱形状をなした嵌合凸部39を有している。なお、ねじ軸26にあって、上述のねじ部26Aと嵌合凸部39との間の部分は、円柱形状をなした軸部26Bとなっている。
【0026】
図7に、軸方向前方Fから見た第3歯車17の平面構造を示す。また、
図8に、
図7の8-8線に沿った第3歯車17の断面構造を示す。第3歯車17の中央には、ねじ軸26の嵌合凸部39が嵌合可能な四角柱形状をなした嵌合凹部41が設けられている。
【0027】
図2に示すように、電動制動装置10においてねじ軸26は、その嵌合凸部39が嵌合凹部41に嵌合した状態で組付けられている。そして、四角柱形状をなした嵌合凸部39及び嵌合凹部41の嵌合により、回転運動を伝達可能に第3歯車17及びねじ軸26が連結されている。なお、電動制動装置10においてねじ軸26は、嵌合凸部39の一部が、第3歯車17よりも軸方向後方Rに突き出した状態で組付けられている。以下の説明では、嵌合凸部39における、第3歯車17よりも軸方向後方Rに突き出した部分の長さを、嵌合部突出量L2と記載する。また、嵌合凹部41に対する嵌合凸部39の挿入量を嵌合部挿入量L3と記載する。嵌合部挿入量L3は、嵌合凸部39における嵌合凹部41内に位置する部分の長さと、嵌合部突出量L2と、の合計である。本実施形態の電動制動装置10では、嵌合部突出量L2が上述の端子挿入量L1よりも大きくなるように、嵌合凸部39の長さが設定されている。なお、嵌合部挿入量L3は嵌合部突出量L2よりも大きいため、嵌合部挿入量L3も端子挿入量L1よりも大きくなっている。
【0028】
<電動制動装置の製造手順>
次に、電動制動装置10の製造手順を説明する。電動制動装置10の製造に際しては、キャリパ部12の部品組付け、すなわちハウジング22への荷重センサ34、直動変換機構25、及びピストン23の組付けが行われる。そして、部品組付けが行われたキャリパ部12のケース18への組付けが行われる。
【0029】
<キャリパ部の部品組付け>
図9~
図11を参照して、キャリパ部12の部品組付けの手順について説明する。なお、キャリパ部12の部品組付けは予め、直動変換機構25のナット27にピストン23を組付けた状態で行われる。
【0030】
キャリパ部12の部品組付けに際してはまず、ハウジング22への荷重センサ34の組付けが行われる。
図9に示すように、荷重センサ34は、端子孔38を通って雄端子35の先端が軸方向後方Rに突出した状態で、ハウジング22のシリンダ24の最奥部に組付けられる。シリンダ24の最奥部とは、シリンダ24における、最も軸方向後方Rの部分である。なお、荷重センサ34は、キー等の回り止め部品を用いて、回転軸線O周りの回転を制限した状態でシリンダ24に設置することが望ましい。
【0031】
続いて、荷重センサ34が組付けられたハウジング22への直動変換機構25及びピストン23の組付けが行われる。
図10に示すように、第2工程ではまず、ねじ軸26の軸方向後方Rの部分を、荷重センサ34の中央の孔、及びハウジング22の軸孔37を挿入する。そして、
図11に示すように、ねじ部26Aが荷重センサ34と接触する位置まで直動変換機構25及びピストン23をシリンダ24に挿入する。
【0032】
<ケースへのキャリパ部の組付け>
図12~
図14を参照して、ケース18へのキャリパ部12の組付け手順を説明する。キャリパ部12の組付けは予め、伝達機構14の第1歯車15、第2歯車16、及び第3歯車17と雌端子36とをケース18に組付けた状態で行われる。なお、電気モータ13、カバー19、及び回路基板20のケース18への組付けは、キャリパ部12の組付け前、組付け後のいずれに行ってもよい。
【0033】
また、本実施形態では、キャリパ部12を固定するとともに、ケース18を下記のように保持した状態で、組付作業を行っている。すなわち、第3歯車17の回転軸線Oがねじ軸26の回転軸線上に位置する状態を維持し、かつ回転軸線O周りのケース18の回転と軸方向へのケース18の直動とが可能な状態である。
【0034】
ケース18へのキャリパ部12の組付けに際してはまず、
図12に示すように、ねじ軸26の嵌合凸部39と嵌合凹部41との距離がある程度に近くなるまでケース18を軸方向に移動する。そして、嵌合凸部39と嵌合凹部41との位相合せを行う。すなわち、回転軸線O周りの嵌合凸部39の回転位相が嵌合凹部41に挿入可能な位相となるように、ケース18を回転させる。
【0035】
次に、
図13に示すように、嵌合凸部39の一部が嵌合凹部41に挿入されるまで、ケース18を軸方向前方Fに移動させる。一方、
図13の「D」は、軸方向における雄端子35と雌端子36との距離である端子間距離を示している。この時点では、端子間距離Dが「0」となる位置よりも軸方向前方Fには、ケース18を移動させないようにしている。
【0036】
続いて、
図14に示すように、雄端子35及び雌端子36の位相合せを行う。すなわち、回転軸線O周りの雄端子35の回転位相が雌端子36に挿入可能な位相となるように、ケース18を回転させる。
【0037】
その後、ハウジング22に突き当たる位置まで、ケース18を移動する。この移動により、雄端子35が雌端子36に挿入される。なお、ボルト締結等でケース18とハウジング22とを固定する場合には、その固定作業を行う。以上により、ケース18へのキャリパ部12の組付が完了する。
【0038】
<実施形態の作用及び効果>
以上のように構成された本実施形態の電動制動装置10の作用及び効果を説明する。
上記のように電動制動装置10の製造過程では、ケース18へのキャリパ部12の組付けが行われる。ケース18へのキャリパ部12の組付け過程では、第3歯車17の嵌合凹部41に対するねじ軸26の嵌合凸部39の嵌合と、ケース18に設置された雌端子36への荷重センサ34の雄端子35の挿入と、が行われる。そのため、ケース18へのキャリパ部12の組付けでは、嵌合凹部41及び嵌合凸部39の位相合せと、雄端子35及び雌端子36の位相合せと、を行う必要がある。
【0039】
こうしたケース18へのキャリパ部12の組付けは、例えば次の手順でも行える。まず、嵌合凹部41及び嵌合凸部39と、雄端子35及び雌端子36と、が双方共に位相合せがなされた状態とする。そして、その状態を維持しながら、キャリパ部12及びケース18を軸方向に相対変位させて、両者を組付ける。
【0040】
ただし、嵌合凹部41が設けられた第3歯車17は、回転可能に保持された状態でケース18に設置されている。また、嵌合凸部39が設けられたねじ軸26も同様に、回転可能に保持された状態でハウジング22に設置されている。そのため、嵌合凹部41及び嵌合凸部39の位相が合い、かつ雄端子35及び雌端子36の位相が合う状態を形成するには、ねじ軸26及び第3歯車17を回してそれらの回転位相を調整する必要がある。また、組付け作業中に位相がずれてしまわないように、ねじ軸26及び第3歯車17を回転不能に固定する必要がある。
【0041】
これに対して本実施形態の電動制動装置10では、ケース18へのキャリパ部12の組付けに際して、嵌合凸部39及び嵌合凹部41の位相合せ、及びそれらの嵌合を行った後、雄端子35及び雌端子36の位相合せを実施できる。そのため、嵌合凸部39及び嵌合凹部41の位相合せ、及び雄端子35及び雌端子36の位相合せを行いながら、ケース18へのキャリパ部12の組付けを実施できる。したがって、ケース18へのキャリパ部12の組付作業が容易となる。なお、嵌合凸部39および嵌合凹部41の少なくとも一方の面取りを行ってもよい。面取りを行うことで多少の位相ずれを吸収することができるため、位相合わせが容易になる。
【0042】
<電動制動装置の構成部品の寸法要件について>
上記のように、嵌合凸部39及び嵌合凹部41が嵌合した状態で、雄端子35及び雌端子36の位相合せを実施可能であれば、ケース18へのキャリパ部12の組付け作業が容易となる。こうした組付け作業が可能となる電動制動装置10の構成部品の寸法要件について考察する。
【0043】
ここで、
図15に示すように、第3歯車17の回転軸線O上にねじ軸26の回転軸線が位置した状態を維持しながら、軸方向におけるキャリパ部12とケース18との距離を縮めていくことで、ケース18へのキャリパ部12の組付を行う場合を考える。
図16に示すように、端子間距離Dが0よりも大きい状態で、嵌合凹部41に嵌合凸部39が嵌合した状態となるのであれば、嵌合凹部41への嵌合凸部39の嵌合後に、雄端子35及び雌端子36の位相合せを実施できる。以下の説明では、嵌合凹部41への嵌合凸部39の嵌合後の雄端子35及び雌端子36の位相合せを嵌合後端子位相合せと記載する。
【0044】
一方、端子間距離Dが0よりも大きい状態では、嵌合凹部41に嵌合凸部39が嵌合することがないのであれば、嵌合後端子位相合せは実施できないことになる。よって、嵌合後端子位相合せの実施が可能な条件は、端子間距離Dが0となった時点で嵌合凸部39が嵌合凹部41に嵌合した状態にあること、となる。
【0045】
図17に示すように、端子間距離Dが0となると同時に、嵌合凸部39への嵌合凹部41の嵌合が開始する場合を考える。この状態は、嵌合後端子位相合せの実施の可否を分ける境界の状態となる。この場合には、組付けが完了した時点の端子挿入量L1と嵌合部挿入量L3とが等しい量となる。よって、嵌合部挿入量L3が端子挿入量L1よりも大きくなるように電動制動装置10の構成部品の寸法が設定されていれば、嵌合後端子位相合せが実施可能となる。
【0046】
嵌合凹部41の一部にのみ嵌合凸部39が嵌合した状態で雄端子35及び雌端子36の位相合せを行うと、作業中に嵌合凸部39が嵌合凹部41から外れてしまう可能性がある。そのため、雄端子35及び雌端子36の位相合せは、嵌合凹部41の全体に嵌合凸部39が嵌合した状態で行うことが望ましい。
【0047】
図18に示すように、端子間距離Dがちょうど0となったときに、嵌合凹部41の全体に嵌合凸部39が嵌合した状態となる場合を考える。この状態は、嵌合凹部41の全体に嵌合凸部39が嵌合した状態での雄端子35及び雌端子36の位相合せの実施の可否を分ける境界の状態となる。この場合には、組付けが完了した時点の端子挿入量L1と嵌合部突出量L2とが等しい量となる。よって、嵌合部突出量L2が端子挿入量L1よりも大きくなるように電動制動装置10の構成部品の寸法が設定されていれば、嵌合凹部41の全体に嵌合凸部39が嵌合した状態で雄端子35及び雌端子36の位相合せを行える。
【0048】
<他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・ケース18へのキャリパ部12の組付けを、ケース18を固定、キャリパ部12を回転可能、かつ軸方向に移動可能に保持した状態で行うようにしてもよい。また、ケース18及びキャリパ部12の一方を回転可能に保持、かつ他方を軸方向に移動可能に保持した状態で、同組付けを行うようにしてもよい。さらに、ケース18及びキャリパ部12の双方をそれぞれ、回転可能、かつ軸方向に移動可能に保持した状態で行うようにしてもよい。
【0050】
・雌端子36を回路基板20に設置するようにしてもよい。
・荷重センサ34に雌端子36を設置するとともに、ケース18又は回路基板20に雄端子35を設置するようにしてもよい。
【0051】
・雄端子35及び雌端子36の形状は適宜に変更してもよい。要は、雌端子36への雄端子35の挿入により電気的に接続される形状であればよい。
・ナット27を回転部とするとともに、ねじ軸26を直動部とするように直動変換機構25を構成してもよい。その場合には、嵌合凸部39は、回転部であるナット27に設けることになる。
【0052】
・直動変換機構25の回転部に嵌合凹部41を設けるとともに、伝達機構14側に嵌合凸部39を設けるようにしてもよい。
・嵌合凸部39及び嵌合凹部41を、嵌合を通じて回転運動を伝達可能な形状であれば、四角柱形状以外の形状としてもよい。
【0053】
・伝達機構14の歯車の数を変更してもよい。また、巻き掛け伝動機構などの減速歯車機構以外の機構を伝達機構14に採用してもよい。
・摩擦材30、31の押圧を受ける回転体として、ドラム型の回転体を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…電動制動装置
11…駆動部
12…キャリパ部
13…電気モータ
14…伝達機構
15…第1歯車
16…第2歯車
17…第3歯車
18…ケース
19…カバー
20…回路基板
21…CPU(制御部)
22…ハウジング
23…ピストン
24…シリンダ
25…直動変換機構
26…ねじ軸
26A…ねじ部
26B…軸部
27…ナット
28…車輪
29…車輪軸
30、31…摩擦材
32…ブレーキディスク(回転体)
34…荷重センサ(センサ)
35…雄端子
35A…プラグ
36…雌端子
36A…ソケット孔
37…軸孔
38…端子孔
39…嵌合凸部
40…貫通孔
41…嵌合凹部