(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021262
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20240208BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20240208BHJP
H02K 7/102 20060101ALI20240208BHJP
H02K 7/108 20060101ALI20240208BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20240208BHJP
F16D 125/40 20120101ALN20240208BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
H02K7/102
H02K7/108
F16D121:24
F16D125:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123977
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
5H607
【Fターム(参考)】
3D048BB53
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
3D048HH70
3D048PP02
3D048RR25
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3J058FA07
5H607AA12
5H607BB01
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5H607CC05
5H607DD03
5H607EE03
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE18
5H607HH01
5H607HH09
(57)【要約】
【課題】製造時の部品の組み立て作業を容易とする。
【解決手段】電動制動装置は、荷重センサ34を格納するとともに、直動変換機構の回転部を回転可能に保持するハウジングと、そのハウジングに組付けられたケースと、を有する。ケースは、電気モータの回転運動を伝達する伝達機構を回転可能に保持しており、直動変換機構の回転部は、伝達機構と機械的に噛み合わされている。こうした電動制動装置において、直動変換機構の回転部の回転軸線Oを中心とするように配置された円環形状の第1端子35を荷重センサ34に設置するとともに、第1端子35との接触により同第1端子35と電気的に接続される第2端子を、ケースに設置するようにした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、前記直動変換機構において前記伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、前記直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して前記車輪に制動力を発生する電動制動装置であって、
前記回転体に対する前記摩擦材の押圧荷重を検出し、検出した押圧荷重に応じた信号を出力部に出力するセンサと、
前記出力部を、前記電動制動装置を制御する制御部に電気的に接続する部分である接続部と、
前記センサと前記出力部と前記直動変換機構とを格納するハウジングと、
前記伝達機構と前記制御部と前記接続部とを格納するケースと、
を備え、
前記ハウジングと前記ケースとを組み立てる際に、前記直動変換機構の前記回転部と前記伝達機構とを機械的に咬み合わせる電動制動装置において、
前記回転部は、前記回転部と直接咬み合う前記伝達機構の回転軸線と同軸配置されており、
前記出力部および前記接続部の一方は、円環形状または円弧形状に形成され前記回転軸線を中心に配置されている被接触部を有し、
前記出力部および前記接続部の他方は、前記ハウジングと前記ケースとが組み立てられた状態で前記被接触部と接触することで前記出力部と前記接続部とを電気的に接続する接触部を有している
電動制動装置。
【請求項2】
前記接触部は、前記センサと前記ケースとが組み立てられた状態で弾性圧縮される弾性部を有している請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記出力部および前記接続部の一方は、前記被接触部を複数備え、前記複数の被接触部の少なくとも1つは、その他の前記被接触部と前記回転軸線の方向において異なる位置に配置されている請求項1に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるキャリパ型の電動制動装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同電動制動装置は、電気モータと直動変換機構とを備えている。直動変換機構は、電気モータが発生した回転運動を直線運動に変換する。そして、同電動制動装置は、直動変換機構が変換した直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧することで、車輪に制動力を発生する。また、同電動制動装置は、回転体に対する摩擦材の押圧力を検出する荷重センサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2021-0002011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動制動装置の製造時の構成部品の組付けに際しては、数多くの部品間の位置合せ、位相合せが必要となる。そして、そうした位置合せ、位相合せに要する作業が、電動制動装置の生産性の向上を阻害する要因となる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電動制動装置は、電気モータの回転を伝達機構により直動変換機構に伝達し、直動変換機構において伝達機構により伝達された回転運動を回転部の回転運動から直動部の直線運動に変換し、直動部の直線運動に連動する摩擦材を、車輪と共に回転する回転体に押圧して車輪に制動力を発生する。また、同電動制動装置は、上記回転体に対する摩擦材の押圧荷重を検出し、検出した押圧荷重に応じた信号を出力部に出力するセンサと、上記出力部を、電動制動装置を制御する制御部に電気的に接続する部分である接続部と、センサと出力部と直動変換機構とを格納するハウジングと、伝達機構と制御部と接続部とを格納するケースと、を備えている。そして、同電動制動装置は、ハウジングとケースとを組み立てる際に、直動変換機構の回転部と伝達機構とを機械的に咬み合わせることで製造されている。さらに、同電動制動装置における回転部は、回転部と直接咬み合う伝達機構の回転軸線と同軸配置されている。また、出力部および接続部の一方は、円環形状または円弧形状に形成され前記回転軸線を中心に配置されている被接触部を有している。そして、出力部および接続部の他方は、ハウジングとケースとが組み立てられた状態で被接触部と接触することで出力部と接続部とを電気的に接続する接触部を有している。
【0006】
上記電動制動装置の被接触部は、回転軸線を中心とするように配置された円環形状または円弧形状に形成されている。そのため、ケース及びハウジングの回転軸線周りの相対回転位相がある程度変化しても、出力部と接続部との電気的な接続が途切れない。また、接触部と非接触部との接触により、出力部と接続部とが電気的に接続されている。そのため、ケースとハウジングとが相対回転したときに、出力部と接続部とが干渉しない。よって、回転部と伝達機構とを噛み合わせた後にも、ケースとハウジングとを上記回転軸線周りに相対回転させることが可能となる。よって、ケースとハウジングとの組み立てに際して、ケースとハウジングとの相対回転により回転部と伝達機構との位相合せを実施できる。したがって、上記電動制動装置には、製造時の組み立て作業を容易とする効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】電動制動装置の一実施形態の断面構造及びその周辺の構成を併せ示す図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿った上記電動制動装置の断面図である。
【
図3】上記電動制動装置が備えるねじ軸の先端部の斜視図である。
【
図4】上記電動制動装置が備える第3歯車の平面図である。
【
図5】上記電動制動装置が備える荷重センサの斜視図である。
【
図6】軸方向後方から見た同荷重センサの平面図である。
【
図7】上記電動制動装置の端子周辺部の部分断面図である。
【
図8】上記電動制動装置の製造過程におけるケースへのハウジングの組付けの第1工程の状態を示す図である。
【
図10】同組付けの第3工程の状態を示す図である。
【
図11】電動制動装置の変形例1の荷重センサの平面図である。
【
図12】電動制動装置の変形例2の荷重センサの平面図である。
【
図13】電動制動装置の変形例3のケース側端子及びその周辺の断面図である。
【
図14】電動制動装置の変形例4のケース側端子の斜視図である。
【
図15】電動制動装置の変形例5の荷重センサの斜視図である。
【
図16】電動制動装置の変形例6の荷重センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、電動制動装置を具体化した一実施形態を
図1~
図10に従って説明する。
<電動制動装置の構成>
まず、
図1及び
図2を参照して本実施形態の電動制動装置10の構成を説明する。
図1には、電動制動装置10の断面構造、及びその周辺の構成が示されている。
図2は、
図1の2-2線に沿った電動制動装置10の断面図である。電動制動装置10は、駆動部11とキャリパ部12とを有している。
【0009】
駆動部11は、電気モータ13及び伝達機構14を有している。伝達機構14は、電気モータ13の回転を減速して伝達する機構である。本実施形態では、電気モータ13に連結された第1歯車15、第1歯車15に噛み合わされた第2歯車16、及び第2歯車16に噛み合わされた第3歯車17を有した減速歯車機構を伝達機構14として採用している。なお、本実施形態では、こうした伝達機構14の第3歯車17が、電気モータ13により回転される回転部材に対応している。電気モータ13は、駆動部11の筐体であるケース18に組付けられている。また、ケース18には、カバー19が組付けられている。そして、ケース18及びカバー19により、伝達機構14の格納空間が形成されている。なお、伝達機構14を構成する第1歯車15、第2歯車16、及び第3歯車17はそれぞれ、ケース18に回転可能に保持されている。また、駆動部11は、電気モータ13の出力を制御する制御部としてのCPU21を含む回路基板20を備えている。回路基板20は、伝達機構14とは隔離された状態で、ケース18及びカバー19の内部に格納されている。
【0010】
一方、キャリパ部12は、ハウジング22、ピストン23、及び直動変換機構25を有している。キャリパ部12の筐体であるハウジング22は、ケース18に組付けられている。ハウジング22は、円筒形状のシリンダ24を有している。シリンダ24は、ピストン23を摺動可能に保持している。直動変換機構25は、回転部と直動部とを有しており、回転部の回転運動を直動部の直線運動に変換する機構である。本実施形態の場合、回転部としてのねじ軸26と、直動部としてのナット27と、を有した送りねじ機構を直動変換機構25として採用している。ねじ軸26は、伝達機構14の第3歯車17の回転軸線Oと同軸配置されている。また、ねじ軸26と第3歯車17とは、機械的に直接噛み合わされている。これにより、ねじ軸26と第3歯車17とは、回転運動を伝達可能に連結されている。一方、ナット27は、ピストン23に、直線運動を伝達可能に連結されている。なお、直動変換機構25は、ねじ軸26の回転軸線Oが第3歯車17の回転軸線上に位置するように電動制動装置10に組付けられている。こうした直動変換機構25のねじ軸26は、ナット27に回転可能に保持されている。また、ナット27は、ピストン23を介してシリンダ24に保持されている。よって、直動変換機構25のねじ軸26は、ナット27及びピストン23を介してハウジング22に回転可能に保持されている。
【0011】
電動制動装置10は、自動車の車輪28の側方に配置される。車輪28の回転軸である車輪軸29には、2つの摩擦材30、31に挟まれたブレーキディスク32が一体となって回転するように設置されている。2つの摩擦材30、31は、それらのうちの一つ(摩擦材30)にピストン23が押圧を加えると、両者の間隔が狭まるように連動して動作する。
【0012】
こうした電動制動装置10は、下記の態様で車輪28に制動力を発生させる。電気モータ13の回転は、伝達機構14の第1歯車15、第2歯車16及び第3歯車17を介することで減速されて、直動変換機構25のねじ軸26に伝達される。直動変換機構25において、ねじ軸26の回転運動はナット27の直動運動に変換される。そして、その直線運動に連動して摩擦材30、31がブレーキディスク32を押圧することで、車輪28に制動力が発生する。本実施形態では、ブレーキディスク32が回転体に対応している。
【0013】
以下の説明では、電動制動装置10において、ねじ軸26の回転軸線Oに平行な方向を、軸方向と記載する。さらに、軸方向にあって、第3歯車17から見て、直動変換機構25の直動要素であるナット27が位置する側を軸方向前方F、その反対側を軸方向後方Rと記載する。
【0014】
なお、
図2に示すように、直動変換機構25のねじ軸26は、ナット27に噛み合うねじが設けられたねじ部26Aを有している。また、ねじ軸26は、ねじ部26Aから軸方向後方Rに延びる軸部26Bを有している。ハウジング22におけるシリンダ24の軸方向後方Rの壁面に当たる部分には、軸部26Bが通された軸孔22Aが設けられている。そして、ねじ軸26は、シリンダ24内にねじ部26Aが格納されるとともに、軸孔22Aを通じてねじ部26Aが軸方向後方Rに突出した状態でハウジング22に設置されている。
【0015】
<ねじ軸及び第3歯車の連結構造>
次に、
図3及び
図4を参照して、ねじ軸26と第3歯車17との連結構造について説明する。
図3は、ねじ軸26の軸方向後方Rの端部の斜視構造を示している。また、
図4に、軸方向前方Fから見た第3歯車17の平面構造を示している。
【0016】
上記のように、直動変換機構25のねじ軸26は、回転運動を伝達可能に伝達機構14の第3歯車17に連結されている。
図3に示すように、ねじ軸26は、軸部26Bにおける軸方向後方Rの端部に、四角柱形状をなした嵌合凸部39を有している。一方、
図4に示すように、第3歯車17は、その中央にねじ軸26の嵌合凸部39が嵌合可能な四角形状の孔である嵌合凹部41を有している。ねじ軸26及び第3歯車17は、嵌合凸部39が嵌合凹部41に嵌合した状態で電動制動装置10に組付けられている。そして、第3歯車17及びねじ軸26は、これら嵌合凸部39及び嵌合凹部41の嵌合により、機械的に直接噛み合わされている。
【0017】
<荷重センサ及びその端子の構造>
図2に示すように、電動制動装置10は、摩擦材30、31がブレーキディスク32に加える押圧荷重を検出するためのセンサである荷重センサ34を備えている。荷重センサ34は、ハウジング22に格納されている。荷重センサ34は、シリンダ24の内部におけるねじ部26Aよりも軸方向後方Rの部分に配置されている。摩擦材30、31がブレーキディスク32に押圧を加えると、その反力がピストン23に加わる。ピストン23に加わった反力は、ナット27を介してねじ軸26に伝達される。荷重センサ34は、ねじ軸26に伝達された反力を受けるように配置されている。そして、荷重センサ34は、ねじ軸26から受けた反力に応じた信号を、押圧荷重の検出信号として出力するように構成されている。
【0018】
図5に、荷重センサ34の斜視構造を示す。また、
図6に、軸方向後方Rから見た荷重センサ34の平面構造を示す。荷重センサ34は、ねじ軸26の軸部26Bを通す円柱形状の通孔34Aを有した円環柱形状をなしている。以下の説明では、電動制動装置10に組付けられた状態の荷重センサ34にあって、軸方向後方Rに位置する円環形状の面を、同荷重センサ34の底面34Bと記載する。荷重センサ34は、その中心軸が、通孔34Aに軸部26Bが通されたねじ軸26の回転軸線O上に位置した状態でハウジング22に組付けられている。すなわち、荷重センサ34は、その底面34Bが、ねじ軸26の回転軸線Oの直交面上に位置するようにハウジング22に組付けられている。
【0019】
荷重センサ34の底面34Bには、センサ内の電気回路を外部に接続するための第1端子35が3つ設けられている。荷重センサ34は、検出した押圧荷重に応じた信号を第1端子35に出力する。本実施形態では、こうした第1端子35が出力部に対応する。各第1端子35はそれぞれ、回転軸線Oと底面34Bが位置する同回転軸線Oの直交面との交点Pを中心とする円環形状をなした電極板である。3つの第1端子35は、同心円状に配置されている。すなわち、各第1端子35はそれぞれ、回転軸線Oを中心とするように配置された円環形状に形成されている。なお、3つの第1端子35はそれぞれ、プラス側の電力端子、検出信号の出力端子、及び接地側の電力端子となっている。
【0020】
図7に示すように、ケース18における荷重センサ34の底面34Bと対向する部分には、端子台37が設置されている。端子台37には、3つの端子穴38が並んで配置されている。そして、各端子穴38にはそれぞれ、第2端子36が格納されている。各第2端子36は、回転軸線Oに平行な方向を伸縮方向とするコイルばねにより構成されている。各第2端子36はそれぞれ、配線を通じて回路基板20に接続されている。そして、各第2端子36は、軸方向前方Fの端が荷重センサ34の各第1端子35にそれぞれ接触しており、かつ荷重センサ34とケース18とに挟まれて弾性圧縮された状態で電動制動装置10に設置されている。すなわち、第2端子36は、荷重センサ34とケース18とが組み立てられた状態で弾性圧縮される弾性部となっている。なお、以下の説明では、各端子穴38に第2端子36がそれぞれ格納された状態の端子台37を、ケース側端子部42と記載する。
【0021】
第1端子35及び第2端子36は、接触を通じて電気的に接続されている。そして、これにより、荷重センサ34が検出信号を出力する出力部である第1端子35は、制御部としてのCPU21が設けられた回路基板20に電気的に接続されている。すなわち、本実施形態では、第2端子36が、出力部である第1端子35を、制御部であるCPU21に電気的に接続する部分である接続部に対応している。
【0022】
<ケースとハウジングとの組み立て>
電動制動装置10の製造に際しては、キャリパ部12の部品組付け、すなわちハウジング22への荷重センサ34、直動変換機構25、及びピストン23の組付けが行われる。そして、部品組付けが行われたハウジング22をケース18に固定する、ハウジング22とケース18との組み立てが行われる。
【0023】
図8~
図10を参照して、ケース18へのハウジング22の組み立て手順を説明する。同組み立てに際しては、キャリパ部12の部品組付けと、ケース18への伝達機構14及びケース側端子部42の組付けと、が予め行われる。なお、電気モータ13、カバー19、及び回路基板20のケース18への組付けは、キャリパ部12の組付け前、組付け後のいずれに行ってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、キャリパ部12を固定するとともに、ケース18を下記のように保持した状態で、組み立て作業を行っている。すなわち、第3歯車17の回転軸線Oがねじ軸26の回転軸線O上に位置する状態を維持し、かつ回転軸線O周りのケース18の回転と軸方向へのケース18の直動とが可能な状態である。
【0025】
ケース18とハウジング22との組み立てに際してはまず、
図8に示すように、ねじ軸26の嵌合凸部39と嵌合凹部41との距離がある程度に近くなるまでケース18を軸方向に移動する。そして、嵌合凸部39と嵌合凹部41との位相合せを行う。すなわち、回転軸線O周りの嵌合凸部39の回転位相が嵌合凹部41に挿入可能な位相となるように、ケース18を回転させる。次に、
図9に示すように、嵌合凸部39の一部が嵌合凹部41に挿入されるまで、ケース18を軸方向前方Fに移動させる。そして、
図10に示すように、ケース18を再び回転軸線O周りに回転させて、ハウジング22に対するケース18の位相合せを行う。その後、ハウジング22に突き当たる位置まで、ケース18を移動させた後、ケース18及びハウジング22の固定作業を行う。
【0026】
なお、嵌合凸部39および嵌合凹部41の少なくとも一方の面取りを行ってもよい。面取りを行うことで嵌合凸部39と嵌合凹部41との位相ずれを吸収することができるため、位相合わせが容易になる。
【0027】
<実施形態の作用効果>
本実施形態の電動制動装置10の荷重センサ34の底面34Bに設置された第1端子35は、ケース18に設置された第2端子36と接触している。そして、その接触を通じて、第1端子35と第2端子36とが電気的に接続されている。第1端子35は、ねじ軸26の回転軸線O上に中心が位置する円環形状をなしている。これにより、回転軸線O周りの荷重センサ34の回転位相が変化しても、第1端子35と第2端子36との電気接続が維持される。そのため、ハウジング22への荷重センサ34の組付けに際して、荷重センサ34の位相合せが不要となる。したがって、ハウジング22への荷重センサ34の組付け作業が、ひいてはキャリパ部12の組み立て作業が容易となる。
【0028】
また、本実施形態の電動制動装置10では、回転軸線Oの直交面上に位置する面状の第1端子35への第2端子36の接触により、第1端子35及び第2端子36が電気的に接続されている。こうした電動制動装置10では、第3歯車17の嵌合凹部41にねじ軸26の嵌合凸部39の一部又は全部が嵌合した状態で、ケース18及びハウジング22を回転軸線O周りに相対回転させても、第1端子35及び第2端子36との干渉が生じない。そのため、ケース18及びハウジング22の相対回転により、第3歯車17の嵌合凹部41に対するねじ軸26の嵌合凸部39の位相合せを行うことが可能となる。したがって、ケース18とハウジング22との組み立て作業も容易となる。
【0029】
なお、本実施形態の電動制動装置10では、第2端子36をコイルばねで構成している。そして、第2端子36を、荷重センサ34とケース18とに挟まれて弾性圧縮された状態で設置している。そのため、荷重センサ34及び端子台37の距離が多少変化しても、第1端子35に対する第2端子36の接触を維持できる。したがって、制動力発生時のハウジング22等に歪みが発生した際に、第1端子35及び第2端子36の電気接続が切断され難くなる。また、第1端子35及び第2端子36を電気的に接続可能な荷重センサ34及び端子台37の距離の許容範囲が広がるため、電動制動装置10の構成部品の寸法公差や組付け公差を広げられる。
【0030】
<他の実施形態>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0031】
・第1端子35及び第2端子36の数は任意に変更して良い。
図11には、4つの第1端子35が設置された荷重センサ34の構成例が示されている。
・
図12に例示するように、第1端子35を円弧形状としてもよい。そうした場合にも、ハウジング22への組付けに際して、許容可能な荷重センサ34の回転位相の範囲が広くなる。そのため、第1端子35を円弧形状としても、キャリパ部12の組み立て作業が容易となる。
【0032】
・
図13に示すように、第1端子35と接触する接触子43と接触子43を付勢するばね44とにより、第2端子36を構成してもよい。
図13の場合、ばね44は、圧縮された状態で端子穴38内に設置されている。そして、接触子43は、そのばね44により軸方向前方Fに付勢されている。この場合、接触部としての接触子43と、弾性部としてのばね44と、により、接続部としての第2端子36が構成される。
【0033】
・第2端子36のばねとして、コイルばね以外のばねを用いるようにしてもよい。
図14には、板ばねを用いた第2端子36の構成例が示されている。
・ばねを有していない端子を第2端子36として用いるようにしてもよい。すなわち、接触部を、荷重センサ34とケース18とが組み立てられた状態で弾性圧縮される弾性部を有していない構成としてもよい。
【0034】
・
図15に示すように、隣接する2つの第1端子35の設置面間に段差Sを設けるようにしてもよい。すなわち、複数の非接触部の少なくとも一つが、その他の被接触部と回転軸線Oの延伸方向において異なる位置に配置された構成としてもよい。隣接する2つの第1端子35が同一平面上に設置されている場合には、本来接触する第1端子35とは異なる第1端子35に第2端子36が接触する可能性がある。
図15のように各第1端子35の設置面間に段差Sを設ければ、そうした第2端子36の誤接触が生じ難くなる。
【0035】
・
図16に示すように、それぞれ円弧形状をなした複数の第1端子35を、回転軸線O周りにずらした位置に配置するようにしてもよい。こうした場合にも、上記のような第2端子36の誤接触が生じ難くなる。
【0036】
・荷重センサ34と第1端子35とを別体とするようにしてもよい。例えば第1端子35をケース18に設置するとともに、荷重センサ34及び第1端子35を配線により電気的に接続するようにしてもよい。
【0037】
・第1端子35をケース18に設置するとともに、第2端子36を荷重センサ34に設置するようにしてもよい。すなわち、ハウジング22に格納された出力部が接触部を有し、ケース18に格納された接続部が被接触部を有する構成としてもよい。
【0038】
・ケース18へのキャリパ部12の組付けを、ケース18を固定、キャリパ部12を回転可能、かつ軸方向に移動可能に保持した状態で行うようにしてもよい。また、ケース18及びキャリパ部12の一方を回転可能に保持、かつ他方を軸方向に移動可能に保持した状態で、同組付けを行うようにしてもよい。さらに、ケース18及びキャリパ部12の双方をそれぞれ、回転可能、かつ軸方向に移動可能に保持した状態で行うようにしてもよい。
【0039】
・ナット27を回転要素とするとともに、ねじ軸26を直動要素とするように直動変換機構25を構成してもよい。その場合には、嵌合凸部39は、回転要素であるナット27に設けることになる。
【0040】
・直動変換機構25の回転要素に嵌合凹部41を設けるとともに、第3歯車17に嵌合凸部39を設けるようにしてもよい。
・嵌合凸部39及び嵌合凹部41を、嵌合を通じて回転運動を伝達可能な形状であれば、四角柱形状以外の形状としてもよい。
【0041】
・伝達機構14の歯車の数を変更してもよい。また、巻き掛け伝動機構などの減速歯車機構以外の機構を伝達機構14に採用してもよい。
・摩擦材30、31の押圧を受ける回転体として、ドラム型の回転体を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…電動制動装置
11…駆動部
12…キャリパ部
13…電気モータ
14…伝達機構
15…第1歯車
16…第2歯車
17…第3歯車
18…ケース
19…カバー
20…回路基板
21…CPU(制御部)
22…ハウジング
22A…軸孔
23…ピストン
24…シリンダ
25…直動変換機構
26…ねじ軸
26A…ねじ部
26B…軸部
27…ナット
28…車輪
29…車輪軸
30、31…摩擦材
32…ブレーキディスク(回転体)
34…荷重センサ(センサ)
34A…通孔
34B…底面
35…第1端子(出力部、非接触部)
36…第2端子(接続部、接触部、弾性部)
37…端子台
38…端子穴
39…嵌合凸部
41…嵌合凹部
42…ケース側端子部(接続部)
43…接触子(接触部)
44…ばね(弾性部)