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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021271
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20240208BHJP
   H04R 25/02 20060101ALI20240208BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240208BHJP
   H04R 3/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H04R25/00 J
H04R25/02 A
H04R1/00 328Z
H04R3/02
H04R25/00 F
H04R1/00 327A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123991
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】金森 英里
(72)【発明者】
【氏名】般谷 徹
【テーマコード(参考)】
5D017
5D220
【Fターム(参考)】
5D017BC05
5D220CC01
(57)【要約】
【課題】ハウリングを抑制でき、かつ軽量である補聴器を提供する。
【解決手段】補聴器10は、フロント部1と、使用者Uの耳Eに掛けられる一対のテンプル部2と、入力された音を第1電気信号に変換する主マイクロフォン3と、第1電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部4と、出力信号を出力音に変換するスピーカ5と、を備える。制御部4は、骨伝導マイクロフォン9に使用者Uが発した音声が入力されたとき、第1電気信号のレベルを下げて出力信号を送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透光体と前記透光体を互いに連結するブリッジとを有するフロント部と、
前記フロント部に連結されて使用者の耳に掛けられる一対のテンプル部と、
入力された音を第1電気信号に変換する主マイクロフォンと、
前記使用者の音声を第2電気信号に変換する骨伝導マイクロフォンと、
前記第1電気信号および前記第2電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部と、
前記出力信号を出力音に変換するスピーカと、を備え、
前記制御部は、前記骨伝導マイクロフォンに前記使用者が発した音声が入力されたとき、前記第1電気信号のレベルを下げて前記出力信号を送信する、
補聴器。
【請求項2】
前記フロント部は、前記使用者の鼻に載って前記透光体を支持する鼻あてを有し、
前記骨伝導マイクロフォンは、前記鼻あてに設けられている、
請求項1記載の補聴器。
【請求項3】
前記制御部は、前記骨伝導マイクロフォンに周波数125Hz~8000Hzの前記音声が入力されたときに、前記第1電気信号のレベルを下げる処理を行う、
請求項1または2に記載の補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声の聴き取りを補助する補聴器が用いられている。補聴器は、例えば、外部の音を収集するマイクロフォンと、使用者の外耳道に音を出力するスピーカとを備える。補聴器の使用時には、スピーカから出力された音が外部に漏れ、それがマイクロフォンに入力されることにより、ハウリングが起きることがある。
特許文献1に記載の補聴器は、マイクロフォンからスピーカに至る信号の経路と並列に設けられた処理部を有する。処理部は信号の処理によってハウリングを抑える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-223210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の補聴器では、信号処理のために常時電力が必要となるため、高容量のバッテリが搭載されることがある。そのため、補聴器の重量が大きくなる可能性があった。
【0005】
本発明の一態様は、ハウリングを抑制でき、かつ軽量である補聴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一態様は、以下の手段を提供する。
[1]一対の透光体と前記透光体を互いに連結するブリッジとを有するフロント部と、前記フロント部に連結されて使用者の耳に掛けられる一対のテンプル部と、入力された音を第1電気信号に変換する主マイクロフォンと、前記使用者の音声を第2電気信号に変換する骨伝導マイクロフォンと、前記第1電気信号および前記第2電気信号に基づいて出力信号を送信する制御部と、前記出力信号を出力音に変換するスピーカと、を備え、前記制御部は、前記骨伝導マイクロフォンに前記使用者が発した音声が入力されたとき、前記第1電気信号のレベルを下げて前記出力信号を送信する、補聴器。
【0007】
[2]前記フロント部は、前記使用者の鼻に載って前記透光体を支持する鼻あてを有し、前記骨伝導マイクロフォンは、前記鼻あてに設けられている、[1]記載の補聴器。
【0008】
[3]前記制御部は、前記骨伝導マイクロフォンに周波数125Hz~8000Hzの前記音声が入力されたときに、前記第1電気信号のレベルを下げる処理を行う、[1]または[2]に記載の補聴器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、ハウリングを抑制でき、かつ軽量である補聴器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の補聴器の斜視図である。
図2】実施形態の補聴器の斜視図である。
図3】実施形態の補聴器の拡大斜視図である。
図4】実施形態の補聴器のテンプル部および音導管の一部断面状態の斜視図である。
図5】実施形態の補聴器の音導管の長さ方向に沿う断面図である。
図6】実施形態の補聴器の拡大斜視図である。
図7】テンプル部を展開した形態の補聴器の平面図である。
図8】テンプル部を折りたたんだ形態の補聴器の平面図である。
図9】実施形態の補聴器の構成例を示すブロック図である。
図10】マイク制御部における処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[補聴器]
図1は、実施形態の補聴器10の斜視図である。図2は、補聴器10を斜め後方から見た斜視図である。図3は、補聴器10の拡大斜視図である。図4は、テンプル部2および音導管6の一部断面状態の斜視図である。図5は、音導管の長さ方向に沿う断面図である。図6は、補聴器10の拡大斜視図である。図7は、テンプル部2を展開した形態の補聴器10の平面図である。図8は、テンプル部2を折りたたんだ形態の補聴器の平面図である。
【0013】
図1および図2に示すように、補聴器10は、フロント部1と、一対のテンプル部2と、主マイクロフォン3と、制御部4と、一対のスピーカ5と、一対の音導管6と、バッテリ7と、骨伝導マイクロフォン9と、を備える。
【0014】
以下、図1に即して各構成の位置関係を規定する。図1に示すように、補聴器10は、使用者Uの顔Fに装着した状態とする。2つのテンプル部2は水平に並ぶ。ここで定めた位置関係は、補聴器10の使用時の姿勢を限定しない。
【0015】
2つのテンプル部2の並び方向はY方向である。Y方向は左右方向である。水平面内でY方向に直交する方向はX方向である。X方向は前後方向である。使用者Uの前方は-X方向である。使用者Uの後方は+X方向である。X方向およびY方向に直交する方向はZ方向である。2つのテンプル部2が互いに近づく方向は内方である。2つのテンプル部2が互いに離れる方向は外方である。
【0016】
フロント部1は、一対の透光体11と、一対のリム12と、ブリッジ13と、一対の智14と、一対の鼻あて15と、を備える。
透光体11は、透明な板状体である。透光体11は、使用者Uの目の前に配置される。透光体11は、可視光が全波長域にわたって厚さ方向に透過可能であることが好ましい。使用者Uは、顔Fに補聴器10を装着することで、透光体11を通した視界を得ることができる。
【0017】
透光体11は、正面から見て(すなわち、厚さ方向から見て)、例えば、楕円形状、長円形状、円形状、角丸四角形状、矩形状などであってよい。透光体11は、視力矯正の機能を持つレンズであってもよいし、視力矯正の機能がなくてもよい。視力矯正の機能を持つレンズとしては、凸レンズ、凹レンズなどがある。透光体11は、無色であってもよいし、着色されていてもよい。なお、両目に対応することができれば、透光体の数はひとつでもよい。
【0018】
リム12は、透光体11の外周縁の少なくとも一部に取り付けられて透光体11を保持する。本実施形態では、リム12は、透光体11の外周縁の全周にわたる環状に形成されている。リム12は、合成樹脂、金属などにより形成されている。なお、フロント部は、リムがなくてもよい。
【0019】
ブリッジ13は、2つのリム12を連結する。ブリッジ13は、例えば、リム12と一体に形成されている。ブリッジ13は、合成樹脂、金属などにより形成されている。なお、リムがない場合、ブリッジは直接、2つの透光体どうしを連結する。
【0020】
智14は、リム12の左右方向の端部のうちブリッジ13とは反対の端部に形成されている。智14は、リム12と一体に形成されている。智14は、合成樹脂、金属などにより形成されている。
【0021】
図2および図6に示すように、一対の鼻あて15は、使用者Uの鼻に載って透光体11を支持する。鼻あて15は、ブリッジ13の後面から互いに離れつつ後方に突出する。鼻あて15は、例えば、板状に形成されている。
【0022】
図1に示すように、テンプル部2は、管状に形成されている。一対のテンプル部2は、使用者Uの耳Eに掛けられてフロント部1を支持する。テンプル部2は、ヒンジ部21(図2参照)を介して智14に回動自在に連結されている。テンプル部2は、合成樹脂、金属などにより形成されている。
【0023】
テンプル部2は、フロント部1に対して回動することによって、展開した形態(展開形態P1)(図7参照)と、折りたたんだ形態(折りたたみ形態P2)(図8参照)とを切り替えできる。図7に示すように、展開形態P1では、テンプル部2はフロント部1から概略、後方に延びる。
【0024】
図1および図2に示すように、主マイクロフォン3は、例えば、一対の智14のうち一方に内蔵されている。主マイクロフォン3は、入力された音を第1電気信号に変換する。外部の音のみが主マイクロフォン3に入力されたときに得られる第1電気信号を「外部音信号」という。
【0025】
使用者Uが音声を発すると、使用者Uの音声は、外部の音とともに主マイクロフォン3に入力される。そのため、使用者Uが音声を発するときに主マイクロフォン3に入力される音は、外部の音と使用者Uの音声とを含む混合音である。混合音が主マイクロフォン3に入力されたときに得られる第1電気信号を「混合音信号」という。
【0026】
図6に示すように、骨伝導マイクロフォン9は、例えば、一対の鼻あて15の少なくとも一方に設けられている。骨伝導マイクロフォン9は、使用者Uの音声が空気の振動により入力されるのではなく、使用者Uの骨の振動により入力される。詳しくは、骨伝導マイクロフォン9には、次のようにして音声が入力される。使用者Uが音声を発する際には声帯が振動する。声帯が振動すると、その振動は使用者Uの骨(頭蓋骨、鼻骨など)に伝えられる。骨伝導マイクロフォン9には、例えば、使用者Uの鼻骨の振動が鼻あて15を介して伝えられる。骨伝導マイクロフォン9は、骨からの振動を検出することにより音の入力がなされる。骨伝導マイクロフォン9は、使用者Uの音声を第2電気信号に変換することができる。第2電気信号は「音声信号」である。
【0027】
図1および図2に示すように、制御部4は、一方のテンプル部2に内蔵されている。
図9は、補聴器10の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、制御部4は、マイク制御部41と、通信制御部42と、アンテナ43と、アンプ44と、音変調部45と、を備える。
【0028】
外部の音のみが主マイクロフォン3に入力される場合は、マイク制御部41には、主マイクロフォン3から第1電気信号(外部音信号)が入力される。マイク制御部41は、第1電気信号に基づいて制御信号をアンプ44に送る。
【0029】
使用者Uが音声を発した場合は、主マイクロフォン3から第1電気信号(混合音信号)がマイク制御部41に入力されるだけでなく、骨伝導マイクロフォン9からの第2電気信号(音声信号)もマイク制御部41に入力される。この場合、マイク制御部41は、第1電気信号および第2電気信号に基づいて制御信号をアンプ44に送る。
使用者Uが音声を発していない場合は、骨伝導マイクロフォン9には音声の入力がされないため、第2電気信号はマイク制御部41に送られない。
【0030】
記憶部22は、補聴器10で用いられる各種情報およびプログラムを記憶する。記憶部22は、制御部4の機能を実現するプログラムを記憶できる。
【0031】
図10は、マイク制御部41における処理(減算処理)の流れを示すフロー図である。
図10に示すように、マイク制御部41には、主マイクロフォン3から第1電気信号(混合音信号)と、骨伝導マイクロフォン9からの第2電気信号(音声信号)とが入力される(ステップS1,S2)。
【0032】
マイク制御部41は、主マイクロフォン3からの混合音信号と、骨伝導マイクロフォン9からの音声信号とを比較する(ステップS3)。マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいか否かを判定する(ステップS4)。
【0033】
マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいと判定された場合、混合音信号のレベルを下げる(ステップS5)。
【0034】
マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいと判定されなかった場合は、混合音信号のレベルを増減させず、そのまま維持する(ステップS6)。マイク制御部41は、主マイクロフォン3からの混合音信号のレベルを記憶部22に保存する(ステップS7)。
【0035】
このように処理された第1電気信号(混合音信号)および第2電気信号(音声信号)に基づき、マイク制御部41は、制御信号をアンプ44に送る。
【0036】
アンプ44は、制御信号に基づいて出力信号をスピーカ5に送る。アンプ44は、信号を増幅してスピーカ5に送ることができる。
【0037】
アンテナ43は、スマートフォン等からの無線信号を受信し、受信信号を通信制御部42に送る。通信制御部42は、受信信号に基づいて、制御信号を、音変調部45を介してアンプ44に送る。音変調部45は、受信信号に応じて音の変調度を調整した制御信号をアンプ44に送る。これにより、アンテナ43からの信号に基づいてスピーカ5が発する音量を調整することができる。
【0038】
アンテナ43は、制御部4からの送信信号に基づいて信号を送信することもできる。
【0039】
図1および図2に示すように、一対のスピーカ5は、それぞれ一方および他方のテンプル部2に内蔵されている。図5に示すように、スピーカ5は、管状のテンプル部2の内部の中空部2aに設けられている。図9に示すように、スピーカ5は、アンプ44に電気的に接続されている。スピーカ5は、制御部4からの出力信号を出力音に変換する(図10に示すステップS8)。
【0040】
スピーカ5としては、例えば、バランスドアーマチュア型のスピーカが使用できる。バランスドアーマチュア型は、振動板が連結されたアーマチュア(可動鉄片)を、2組のコイルと磁石で挟み込んだ構造を有する。バランスドアーマチュア型のスピーカでは、それぞれのコイルに電流を流しアーマチュア内の磁界を変化させる。これにより、アーマチュアが振動し、音波が発生する。
【0041】
テンプル部2内には、隔壁8が設けられている。隔壁8は、中空部2aを前後(テンプル部2の長さ方向)に区画する。隔壁8は、主マイクロフォン3(図1参照)とスピーカ5との間のいずれかの位置に形成されている。隔壁8によって、主マイクロフォン3とスピーカ5との間で音が伝わるのを抑制し、ハウリングを抑えることができる。
【0042】
図3に示すように、音導管6は、テンプル部2の下縁から斜め後方に向けて延出する。図4および図5に示すように、音導管6は、内部に中空部6aを有する。図5に示すように、中空部6aは、テンプル部2の中空部2aと連通する。音導管6は、テンプル部2に対する傾斜角度が徐々に小さくなるように湾曲していてもよい。
【0043】
図4は、テンプル部2の長さ方向に沿う音導管6の断面を示す。図4に示すように、中空部6aの断面形状は、テンプル部の長さ方向を長径とする長孔形状である。中空部6aが長孔形状であると、音導管6のY方向寸法を抑えつつ、中空部6aの断面積を大きくすることができる。そのため、中空部6aを通した出力音の伝達を効率よく行うことができる。図5に示すように、中空部6aの内径は、先端部61(拡径部62)を除いて一定であってよい。
【0044】
図1および図2に示すように、音導管6の先端部61には、拡径部62が形成されている。拡径部62の内径と、音導管6の他の部分の内径との関係は特に限定されない。拡径部62の内径は、音導管6の他の部分の内径より大きくてもよいし、音導管6の他の部分の内径と同じでもよいし、音導管6の他の部分の内径より小さくてもよい。
拡径部62の内面には、開口63が形成されている。開口63は、中空部6aに通じる。開口63は、使用者Uの顔Fの側面に対向する。開口63は、使用者Uの耳Eの外耳道孔に近い位置にあることが望ましい。
【0045】
拡径部62は、曲面からなる外表面を有する形状とされている。拡径部62の外面形状は、例えば、半楕円球状、半球状などであってよい。拡径部62は、曲面からなる外表面を有する形状であることによって、音導管6の先端が使用者Uの顔Fに当たって顔Fを傷付けるのを抑制できる。
【0046】
音導管6の長さは、例えば、3cm~5cmとすることができる。
中空部6aの内径は、例えば、4mm~9mmとすることができる。中空部6aの内径をこの範囲とすることによって、人間の音声(例えば、周波数125Hz~8000Hz)が伝わりやすくなる。
【0047】
図1に示すように、テンプル部2を3つの長さ範囲(第1長さ範囲L1、第2長さ範囲L2、および第3長さ範囲L3)に分ける。第2長さ範囲L2は第1長さ範囲L1の後方に連なる長さ範囲である。第3長さ範囲L3は第2長さ範囲L2の後方に連なる長さ範囲である。第1長さ範囲L1と、第2長さ範囲L2と、第3長さ範囲L3とは互いに等しい。
【0048】
音導管6は、Z方向から見て、第2長さ範囲L2に包含されることが望ましい。音導管6が第2長さ範囲L2に包含される範囲にあると、開口63を耳Eに近い位置に配置することができるため、開口63からの音が使用者Uに伝わりやすい。
【0049】
バッテリ7としては、例えば、リチウムイオン電池が挙げられる。バッテリ7は、制御部4が設けられたテンプル部2とは異なるテンプル部2に設けられている。これにより、2つのテンプル部2の重量の偏りを小さくできる。そのため、使用者Uの耳Eおよび鼻にかかる荷重を抑制できる。
【0050】
[補聴器の使用方法]
補聴器10の使用方法の一例を説明する。
使用者Uは、顔Fに補聴器10を装着する。透光体11が使用者Uの目の前に配置されるため、使用者Uは、透光体11を通した視界を得ることができる。
【0051】
テンプル部2を耳Eに掛けることによって、音導管6の先端部61に形成された開口63は、顔Fの側面の外耳道孔に近い位置に対向する。音導管6は、顔Fに接してもよいが、顔Fに接触しないことが望ましい。
【0052】
主マイクロフォン3は外部の音を電気信号に変換する。制御部4は電気信号に基づいて出力信号を送信する。スピーカ5は出力信号を出力音に変換する。出力音は音導管6の中空部6a内を先端方向に伝わり、開口63から放出される。これにより、使用者Uは出力音を認識する。
【0053】
図10に示すように、マイク制御部41(図9参照)には、主マイクロフォン3から第1電気信号(混合音信号)と、骨伝導マイクロフォン9からの第2電気信号(音声信号)とが入力される(ステップS1,S2)。
マイク制御部41は、主マイクロフォン3からの混合音信号と、骨伝導マイクロフォン9からの音声信号とを比較する(ステップS3)。マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいか否かを判定する(ステップS4)。
【0054】
マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいと判定された場合、混合音信号のレベルを下げる(ステップS5)。マイク制御部41は、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧より、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧が大きいと判定されなかった場合は、混合音信号のレベルをそのまま維持する(ステップS6)。
【0055】
言い換えれば、主マイクロフォン3に入力された混合音の音圧をP1とし、骨伝導マイクロフォン9に入力された音声の音圧をP2として、P1<P2とP1≧P2とのうち、P1<P2の場合のみ混合音信号のレベルを下げる。
【0056】
混合音信号のレベルの下げ幅は、音圧P1と音圧P2の比または差分に応じて定めることができる。例えば、音圧P1と音圧P2との比(P1/P2)を「r」(0<r<1)とすると、混合音信号のレベルLを、「r×L」またはこれに比例した数とすることができる。具体的には、例えば、P1/P2が0.8のとき、混合音信号のレベルをLから0.8Lに下げることができる。
【0057】
混合音信号のレベルが低下すると、スピーカ5が発する音は低く抑えられる。スピーカ5が発する音は主マイクロフォン3に入力されてハウリングの原因となる可能性があるが、スピーカ5が発する音が低く抑えられることによって、主マイクロフォン3に入力される音も低くなり、ハウリングは抑えられる。
【0058】
混合音信号と音声信号との比較は、人間の音声に応じた周波数域(例えば、125Hz~8000Hz)に限定して行ってもよい。すなわち、マイク制御部41は、骨伝導マイクロフォン9に周波数125Hz~8000Hzの音声が入力されたときにのみ、第1電気信号(混合音信号)のレベルを下げる処理を行うことができる。これによって、使用者Uの音声以外の音により誤ってマイク制御部41が作動してステップS5の処理を行うのを回避できる。そのため、電力消費を抑えることができる。
【0059】
マイク制御部41は、主マイクロフォン3からの混合音信号のレベルを記憶部22(図9参照)に保存する(ステップS7)。
このように処理された第1電気信号(混合音信号)および第2電気信号(音声信号)に基づき、マイク制御部41は、制御信号をアンプ44に送る。
【0060】
アンプ44は、制御信号に基づいて出力信号をスピーカ5に送る。アンプ44は、信号を増幅してスピーカ5に送る。スピーカ5は、制御部4からの出力信号を出力音に変換する(ステップS8)。
【0061】
補聴器10は、例えば、内部にコンピュータシステムを有している。補聴器10は、マイク制御部41が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することができる。補聴器10は、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含む。「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0062】
記録媒体には、プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。プログラムは複数に分割され、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後にマイク制御部41が備える各構成で合体されてもよい。分割されたプログラムは、配信する配信サーバが異なっていてもよい。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、一定時間プログラムを保持している記録媒体も含む。一定時間プログラムを保持している記録媒体としては、例えば、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステムの内部の揮発性メモリ(RAM)がある。プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。プログラムは、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0063】
[実施形態の補聴器が奏する効果]
補聴器10では、制御部4は、骨伝導マイクロフォン9に、使用者Uが発した音声が入力されたとき、第1電気信号(混合音信号)のレベルを下げて出力信号をスピーカ5に送ることができる。したがって、ハウリングを抑制することができる。
【0064】
補聴器10では、マイク制御部41において、使用者Uが発した音声が入力されたときのみ、骨伝導マイクロフォン9から第2電気信号(音声信号)が入力され、第1電気信号(混合音信号)のレベルを下げる処理が行われる。そのため、信号処理のために常時電力が必要となる場合に比べ、省電力化が可能である。そのため、バッテリ7の容量を小さくすることができる。よって、補聴器10の軽量化を図ることができる。
【0065】
補聴器10では、骨伝導マイクロフォン9が鼻あて15に設けられているため、使用者Uの音声による骨振動を骨伝導マイクロフォン9に効率よく伝えることができる。よって、音声から第2電気信号への変換効率は良好となる。
【0066】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、図6に示すように、実施形態の補聴器10では、骨伝導マイクロフォン9が鼻あて15に設けられているが、骨伝導マイクロフォン9の位置は特に限定されない。骨伝導マイクロフォン9の位置は、骨伝導による音声入力が可能な位置であればよい。骨伝導マイクロフォン9は、例えば、テンプル部2に設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…フロント部、2…テンプル部、3…主マイクロフォン、4…制御部、5…スピーカ、9…骨伝導マイクロフォン、10…補聴器、11…透光体、13…ブリッジ、15…鼻あて
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図10