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  • 特開-水素供給装置及び水素供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021279
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】水素供給装置及び水素供給方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/00 20060101AFI20240208BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F17C7/00 A
F02M21/02 G
F02M21/02 301L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124001
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA47
3E172EB02
3E172JA01
3E172JA02
3E172KA22
(57)【要約】
【課題】開閉弁を開弁させるように制御を実行したにも関わらず開閉弁を開弁できなかった場合から、開閉弁を開弁させること。
【解決手段】水素供給装置は、蓄電装置と、タンクと、開閉弁と、中圧圧力センサと、水素センサと、を備える。開閉弁は、タンクから水素消費装置への水素の供給と供給の遮断とを切り替える。中圧圧力センサは、水素が流れる方向において開閉弁よりも下流に設けられている。水素センサは、水素の漏洩を検出するために設けられている。制御装置は、水素供給装置の起動指令を受け付けた場合に、開閉弁を開弁させる制御を実行する。制御装置は、水素の漏洩を検出していない状態で中圧圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁を開弁させる制御を再度実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を消費することによって動作する水素消費装置に前記水素を供給する水素供給装置であって、
負荷に電力を供給する蓄電装置と、
前記水素を貯蔵するタンクと、
前記水素消費装置に向けて前記タンクから放出された前記水素が流れる供給流路と、
前記タンクから前記水素消費装置への前記水素の供給と供給の遮断とを切り替える開閉弁であって前記蓄電装置からの電圧が印加されていない状態で閉弁する開閉弁と、
前記供給流路に設けられた圧力センサであって前記水素が流れる方向において前記開閉弁よりも下流に設けられた圧力センサと、
前記水素の漏洩を検出するための水素センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記水素供給装置の起動指令を受け付けた場合に、前記開閉弁を開弁させる制御を実行した後、
前記水素の漏洩を検出していない状態で前記圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、前記開閉弁を開弁させる制御を再度実行する、水素供給装置。
【請求項2】
前記水素消費装置は、前記水素の燃焼によって動作する内燃機関であり、
前記負荷は、前記内燃機関を始動させるためのスタータを含み、
前記制御装置は、キースイッチがスタート状態にされると、前記蓄電装置から前記スタータ及び前記開閉弁に電力が供給されるように制御を実行する、請求項1に記載の水素供給装置。
【請求項3】
前記供給流路に設けられた減圧弁を備え、
前記圧力センサは、前記水素が流れる方向において前記減圧弁よりも下流に設けられている、請求項1又は請求項2に記載の水素供給装置。
【請求項4】
負荷に電力を供給する蓄電装置と、
水素を貯蔵するタンクと、
前記水素を消費することによって動作する水素消費装置に向けて前記タンクから放出された前記水素が流れる供給流路と、
前記タンクから前記水素消費装置への前記水素の供給と供給の遮断とを切り替える開閉弁であって前記蓄電装置からの電圧が印加されていない状態で閉弁する開閉弁と、
前記供給流路に設けられた圧力センサであって前記水素が流れる方向において前記開閉弁よりも下流に設けられた圧力センサと、
前記水素の漏洩を検出するための水素センサと、
制御装置と、を備えた水素供給装置によって前記水素消費装置に前記水素を供給する水素供給方法であって、
前記制御装置は、
前記水素供給装置の起動指令を受け付けた場合に、前記開閉弁を開弁させる制御を実行した後、
前記水素の漏洩を検出していない状態で前記圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、前記開閉弁を開弁させる制御を再度実行する、水素供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素供給装置及び水素供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の水素供給装置は、タンクと、開閉弁と、制御装置と、を備える。水素供給装置は、水素消費装置に水素を供給する。水素消費装置は、水素を消費することによって動作する。水素消費装置は、例えば、燃料電池システム、又は水素エンジンである。タンクは、水素を貯蔵している。開閉弁は、電磁弁である。開閉弁は、タンクから水素消費装置への水素の供給と供給の遮断とを切り替える。開閉弁は、蓄電装置から電圧が印加されることによって開弁する。開閉弁は、蓄電装置から電圧が印加されなくなることで閉弁する。制御装置は、開閉弁を開弁させる際には、蓄電装置から開閉弁に電圧が印加されるように制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-243563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置が開閉弁以外の負荷に電力を供給している場合、蓄電装置から当該負荷に流れる電流と蓄電装置の内部抵抗とに基づいて蓄電装置に電圧降下が生じる。蓄電装置に電圧降下が生じると、制御装置が開閉弁を開弁させるように制御を実行したにも関わらず開閉弁を開弁できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する水素供給装置は、水素を消費することによって動作する水素消費装置に前記水素を供給する水素供給装置であって、負荷に電力を供給する蓄電装置と、前記水素を貯蔵するタンクと、前記水素消費装置に向けて前記タンクから放出された前記水素が流れる供給流路と、前記タンクから前記水素消費装置への前記水素の供給と供給の遮断とを切り替える開閉弁であって前記蓄電装置からの電圧が印加されていない状態で閉弁する開閉弁と、前記供給流路に設けられた圧力センサであって前記水素が流れる方向において前記開閉弁よりも下流に設けられた圧力センサと、前記水素の漏洩を検出するための水素センサと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記水素供給装置の起動指令を受け付けた場合に、前記開閉弁を開弁させる制御を実行した後、前記水素の漏洩を検出していない状態で前記圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、前記開閉弁を開弁させる制御を再度実行する。
【0006】
制御装置は、水素供給装置の起動指令を受け付けた場合、開閉弁を開弁させる制御を実行する。水素の漏洩が検出されていない状態で、圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁よりも下流の圧力が低下している状態である。この場合、開閉弁が閉弁している状態で、水素消費装置によって水素が消費されていると想定される。従って、この場合に、制御装置が開閉弁を開弁させる制御を再度実行することによって、開閉弁を開弁させるように制御を実行したにも関わらず開閉弁を開弁できなかった場合から、開閉弁を開弁させることができる。
【0007】
上記水素供給装置について、前記水素消費装置は、前記水素の燃焼によって動作する内燃機関であり、前記負荷は、前記内燃機関を始動させるためのスタータを含み、前記制御装置は、キースイッチがスタート状態にされると、前記蓄電装置から前記スタータ及び前記開閉弁に電力が供給されるように制御を実行してもよい。
【0008】
上記水素供給装置について、前記供給流路に設けられた減圧弁を備え、前記圧力センサは、前記水素が流れる方向において前記減圧弁よりも下流に設けられていてもよい。
上記課題を解決する水素供給方法は、負荷に電力を供給する蓄電装置と、水素を貯蔵するタンクと、前記水素を消費することによって動作する水素消費装置に向けて前記タンクから放出された前記水素が流れる供給流路と、前記タンクから前記水素消費装置への前記水素の供給と供給の遮断とを切り替える開閉弁であって前記蓄電装置からの電圧が印加されていない状態で閉弁する開閉弁と、前記供給流路に設けられた圧力センサであって前記水素が流れる方向において前記開閉弁よりも下流に設けられた圧力センサと、前記水素の漏洩を検出するための水素センサと、制御装置と、を備えた水素供給装置によって前記水素消費装置に前記水素を供給する水素供給方法であって、前記制御装置は、前記水素供給装置の起動指令を受け付けた場合に、前記開閉弁を開弁させる制御を実行した後、前記水素の漏洩を検出していない状態で前記圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、前記開閉弁を開弁させる制御を再度実行する。
【0009】
制御装置は、水素供給装置の起動指令を受け付けた場合、開閉弁を開弁させる制御を実行する。水素の漏洩が検出されていない状態で、圧力センサによって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁よりも下流の圧力が低下している状態である。この場合、開閉弁が閉弁している状態で、水素消費装置によって水素が消費されていると想定される。従って、この場合に、制御装置が開閉弁を開弁させる制御を再度実行することによって、開閉弁を開弁させるように制御を実行したにも関わらず開閉弁を開弁できなかった場合から、開閉弁を開弁させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開閉弁を開弁させるように制御を実行したにも関わらず開閉弁を開弁できなかった場合から、開閉弁を開弁させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】水素供給装置の概略構成図である。
図2図1の制御装置が実行するバルブ状態判定制御を示すフローチャートである。
図3図1の制御装置が実行する復帰制御を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
水素供給装置及び水素供給方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両10は、水素消費装置11を備える。車両10は、例えば、産業車両、又は乗用車である。産業車両は、例えば、フォークリフト、又はトーイングトラクタである。水素消費装置11は、水素を消費することによって動作する。本実施形態の水素消費装置11は、内燃機関である。内燃機関は、水素の燃焼によって動作する水素エンジンである。
【0013】
車両10は、スタータ12を備える。スタータ12は、水素消費装置11である内燃機関を始動させる。スタータ12としては、例えば、セルモータが用いられる。
車両10は、キースイッチ13を備える。キースイッチ13は、車両10のユーザーによってキーオフ状態、スタート状態、及びイグニッション状態のいずれかに切り替えられる。
【0014】
<水素供給装置>
車両10は、水素供給装置20を備える。水素供給装置20は、水素消費装置11に水素を供給する。
【0015】
水素供給装置20は、蓄電装置21を備える。蓄電装置21は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、又はリチウムイオン二次電池である。蓄電装置21は、車両10が備える負荷に電力を供給する。負荷には、スタータ12が含まれる。
【0016】
水素供給装置20は、制御装置22を備える。制御装置22は、プロセッサ23と、記憶部24と、を備える。記憶部24は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部24は、処理をプロセッサ23に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部24、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置22は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置22は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0017】
制御装置22には、キースイッチ13を介して蓄電装置21が接続されている。制御装置22は、キースイッチ13を介して蓄電装置21から印加される電圧からキースイッチ13の状態を判定する。キーオフ状態は、水素供給装置20から水素消費装置11に水素が供給されない状態である。スタート状態は、蓄電装置21からスタータ12に電力を供給することによって水素消費装置11である内燃機関を始動させる状態である。イグニッション状態は、水素供給装置20から水素消費装置11に水素が供給される状態である。
【0018】
水素供給装置20は、タンク25を備える。タンク25は、水素を貯蔵している。
水素供給装置20は、レセプタクル26を備える。レセプタクル26には、水素充填装置のプラグが接続される。
【0019】
水素供給装置20は、充填流路27を備える。充填流路27は、レセプタクル26とタンク25とを接続している。
水素供給装置20は、逆止弁28を備える。逆止弁28は、タンク25からレセプタクル26に向けて水素が流れることを抑止する。逆止弁28は、レセプタクル26からタンク25に向けて水素が流れることを許容する。タンク25に水素を充填する際には、レセプタクル26に水素充填装置のプラグが接続される。水素充填装置は、タンク25の圧力よりも高い圧力で水素を供給する。水素は、充填流路27を介してタンク25に供給される。これにより、タンク25に水素が充填される。逆止弁28は、単数であっても、複数であってもよい。
【0020】
水素供給装置20は、供給流路29を備える。供給流路29は、タンク25と水素消費装置11とを接続している。供給流路29には、水素消費装置11に向けてタンク25から放出された水素が流れる。供給流路29を介してタンク25から水素消費装置11に水素が供給されることで、水素消費装置11は動作する。
【0021】
水素供給装置20は、開閉弁30を備える。開閉弁30は、例えば、タンク25、又は供給流路29に設けられる。開閉弁30は、タンク25から水素消費装置11への水素の供給と供給の遮断とを切り替える。開閉弁30が開弁するとタンク25から水素消費装置11への水素の供給が行われる。開閉弁30が閉弁するとタンク25から水素消費装置11への水素の供給が遮断される。開閉弁30は、ノーマリークローズの電磁弁である。開閉弁30は、蓄電装置21からの電圧が印加されていない状態で閉弁する。開閉弁30は、蓄電装置21からの電圧が印加されている状態で開弁する。
【0022】
水素供給装置20は、接続線31を備える。接続線31は、開閉弁30と制御装置22とを接続している。制御装置22は、接続線31を介して蓄電装置21からの電圧を開閉弁30に印加するか否かを制御する。これにより、制御装置22は、開閉弁30の開閉状態を制御できる。
【0023】
水素供給装置20は、バルブリレー32を備える。バルブリレー32は、コイル33と、スイッチ34と、を備える。コイル33は、制御装置22に接続されている。制御装置22は、コイル33への通電と、通電の遮断と、を切り替える。スイッチ34は、接続線31に設けられている。コイル33への通電が行われると、スイッチ34がオンする。コイル33への通電が遮断されると、スイッチ34がオフする。
【0024】
水素供給装置20は、減圧弁35を備える。減圧弁35は、供給流路29に設けられている。減圧弁35は、タンク25から放出された水素を減圧する。減圧弁35は、例えば、水素を予め定められた圧力に減圧するレギュレータである。減圧弁35は、例えば、水素を1[MPa]まで減圧する。減圧弁35は、水素が流れる方向において開閉弁30よりも下流に設けられている。
【0025】
水素供給装置20は、高圧圧力センサ41を備える。高圧圧力センサ41は、水素が流れる方向において開閉弁30よりも下流に設けられている。高圧圧力センサ41は、供給流路29のうち開閉弁30と減圧弁35との間に設けられている。高圧圧力センサ41は、供給流路29のうち開閉弁30と減圧弁35との間の圧力を測定する。高圧圧力センサ41は、測定によって得られた圧力を制御装置22に出力する。制御装置22は、高圧圧力センサ41によって測定される圧力を監視している。
【0026】
水素供給装置20は、中圧圧力センサ42を備える。中圧圧力センサ42は、水素が流れる方向において開閉弁30よりも下流に設けられている。中圧圧力センサ42は、水素が流れる方向において減圧弁35よりも下流に設けられている。中圧圧力センサ42は、供給流路29のうち水素が流れる方向において減圧弁35よりも下流の圧力を測定する。中圧圧力センサ42は、測定によって得られた圧力を制御装置22に出力する。中圧圧力センサ42は、圧力センサである。制御装置22は、中圧圧力センサ42によって測定される圧力を監視している。中圧圧力センサ42は、高圧圧力センサ41よりも圧力の低い場所に設けられている。このため、中圧圧力センサ42に許容される測定誤差は、高圧圧力センサ41に許容される測定誤差よりも小さい。中圧圧力センサ42の分解能は、高圧圧力センサ41の分解能よりも小さい。
【0027】
水素供給装置20は、水素センサ43,44を備える。水素センサ43,44は、水素の漏洩を検出するためのセンサである。水素センサ43,44は、水素の濃度を測定する。水素センサ43,44は、測定した水素の濃度を制御装置22に出力する。水素センサ43,44は、第1水素センサ43と、第2水素センサ44と、を含む。第1水素センサ43は、水素供給装置20からの水素の漏洩を制御装置22が検出できるように設けられている。第1水素センサ43は、例えば、タンク25が収容される収容空間に設けられる。第2水素センサ44は、水素消費装置11からの水素の漏洩を制御装置22が検出できるように設けられている。第2水素センサ44は、例えば、水素消費装置11が収容される収容空間に設けられる。
【0028】
<制御装置が行う制御>
制御装置22は、キースイッチ13がキーオフ状態からスタート状態にされると、蓄電装置21からスタータ12に電力が供給されるように制御を実行する。
【0029】
制御装置22は、キースイッチ13がキーオフ状態からスタート状態にされると、タンク25から水素消費装置11に水素を供給する。キースイッチ13がキーオフ状態からスタート状態にされることが水素供給装置20の起動指令である。制御装置22は、水素供給装置20の起動指令を受け付けると、タンク25から水素消費装置11への水素の供給を開始する。制御装置22は、タンク25から水素消費装置11に水素を供給する際には、開閉弁30を開弁させるように制御を実行する。本実施形態であれば、制御装置22は、スイッチ34がオンするようにコイル33に通電を行う。更に、制御装置22は、開閉弁30に蓄電装置21からの電圧が印加されるように制御を行う。制御装置22は、開閉弁30を開弁させるように制御を実行すると、開閉弁30が開弁した状態に維持されるように、開閉弁30への電圧の印加を維持する。
【0030】
<バルブ状態判定制御>
制御装置22は、所定の制御周期でバルブ状態判定制御を行う。バルブ状態判定制御は、開閉弁30が開弁しているか閉弁しているかを判定する制御である。
【0031】
図2に示すように、ステップS1において、制御装置22は、所定条件が成立するか否かを判定する。所定条件の成立とは、第1条件~第4条件の全てが成立することである。所定条件は、開閉弁30が開弁しているか閉弁しているかを判定するための条件である。
【0032】
第1条件…キーオン状態。
第2条件…水素の漏洩がない。
第3条件…中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満。
【0033】
第4条件…バルブ制御状態が通常状態又は待ち状態。
第1条件は、キースイッチ13がスタート状態、又はイグニッション状態の場合に成立する。キーオン状態は、スタート状態、又はイグニッション状態を示す。
【0034】
第2条件は、水素センサ43,44によって測定される水素の濃度が漏洩閾値未満の場合に成立する。漏洩閾値は、予め定められた値である。漏洩閾値は、水素消費装置11又は水素供給装置20から水素が漏洩した場合に制御装置22によって水素の漏洩を検出できるように設定されている。本実施形態では、第1水素センサ43によって測定される水素の濃度、及び第2水素センサ44によって測定される水素の濃度の両方が漏洩閾値未満の場合に第2条件が成立する。
【0035】
第3条件は、供給流路29の水素の量が低下した場合に成立する。閾値は、予め定められた値である。閾値は、減圧弁35による減圧によって水素が至る圧力よりも低い値である。タンク25から水素が放出されない状態で水素消費装置11が水素を消費すると、供給流路29の圧力が低下していく。これにより、中圧圧力センサ42によって測定される圧力は低下していく。閾値は、タンク25から水素が放出されている場合には、中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満とならないように設定されている。閾値としては、例えば、250~350[kPaA]から任意の値を設定できる。
【0036】
第4条件は、後述する復帰制御によってバルブ制御状態が通常状態又は待ち状態になることで成立する。
所定条件が成立する場合、開閉弁30は閉弁している。キーオン状態であってバルブ制御状態が通常状態又は待ち状態の場合、制御装置22は、開閉弁30が開弁するように制御を行っている。水素が漏洩していないにも関わらず中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満となる場合、開閉弁30が開弁するように制御を行っているにも関わらず開閉弁30が開弁していないと考えられる。このため、所定条件が成立するか否かを判定することによって開閉弁30が開弁しているか閉弁しているかを判定できる。
【0037】
ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御装置22は、ステップS2の処理を行う。ステップS1の判定結果が否定の場合、制御装置22は、ステップS11の処理を行う。
ステップS2において、制御装置22は、所定条件が成立した状態での経過時間を計数する。
【0038】
次に、ステップS3において、制御装置22は、所定条件が成立した状態での経過時間が所定時間を超えたか否かを判定する。所定時間は、予め定められている。所定時間は、例えば、外乱、又は測定誤差の影響によって所定条件が一時的に成立した場合であっても、これにより開閉弁30が閉弁していると判定されないように設定されている。ステップS3の判定結果が肯定の場合、制御装置22は、ステップS4の処理を行う。ステップS3の判定結果が否定の場合、制御装置22は、ステップS12の処理を行う。
【0039】
ステップS4において、制御装置22は、リトライ回数が所定回数未満か否かを判定する。リトライ回数は、所定条件が成立していると判定された後に、開閉弁30を開弁させる制御を実行した回数である。所定回数としては、任意の値を設定することができる。所定回数は、開閉弁30に異常が生じていると判定できる回数に設定される。所定回数は、例えば、3~5回から任意の回数を設定できる。ステップS4の判定結果が肯定の場合、制御装置22は、ステップS5の処理を行う。ステップS4の判定結果が否定の場合、制御装置22は、ステップS13の処理を行う。
【0040】
ステップS5において、制御装置22は、リトライフラグをオンする。
ステップS11において、制御装置22は、リトライフラグをオフする。制御装置22は、経過時間をリセットする。
【0041】
ステップS12において、制御装置22は、リトライフラグをオフする。
ステップS13において、制御装置22は、リトライフラグをオフする。制御装置22は、圧力低下異常が生じていると判断する。圧力低下異常は、例えば、開閉弁30を開弁させる制御を実行しても開閉弁30が開弁しないことによる異常である。圧力低下異常が生じていると判定されると、例えば、車両10のユーザーへの通知が行われる。通知は、例えば、音による通知、又は表示による通知によって行われる。
【0042】
<復帰制御>
制御装置22が行う復帰制御について説明する。復帰制御は、例えば、リトライフラグがオンした場合に実行される。
【0043】
図3に示すように、復帰制御は、バルブ制御状態を通常状態ST1、停止状態ST2、起動状態ST3、及び待ち状態ST4のいずれかにすることで行われる。通常状態ST1、停止状態ST2、起動状態ST3、及び待ち状態ST4のそれぞれには、制御装置22が実行する制御が対応付けられている。制御装置22は、各状態ST1~ST4に応じた制御を行う。
【0044】
通常状態ST1では、開閉弁30が開弁した状態に維持されるように制御が実行される。通常状態ST1では、スイッチ34がオンに維持されるように制御が実行される。通常状態ST1では、リトライ回数がリセットされる。
【0045】
停止状態ST2では、開閉弁30が閉弁するように制御が実行される。停止状態ST2では、スイッチ34がオフするように制御が実行される。
起動状態ST3では、開閉弁30が起動される。開閉弁30の起動とは、開閉弁30が閉弁から開弁にされることである。起動状態ST3では、開閉弁30を閉弁から開弁に切り替える制御が実行される。開閉弁30を閉弁から開弁に切り替える場合、開閉弁30を開弁した状態に維持する場合に比べて、蓄電装置21から開閉弁30に流れる電流が大きい。起動状態ST3では、スイッチ34をオフからオンに切り替える制御が実行される。
【0046】
待ち状態ST4では、開閉弁30が開弁した状態に維持されるように制御が実行される。待ち状態ST4では、スイッチ34がオンに維持されるように制御が実行される。待ち状態ST4では、リトライ回数がインクリメントされる。
【0047】
制御装置22は、バルブ制御状態が通常状態ST1の場合に、リトライフラグがオンになると、バルブ制御状態を停止状態ST2に遷移させる。リトライフラグがオンの場合、開閉弁30を開状態に維持するように制御装置22によって制御が実行されているにも関わらず開閉弁30が閉弁している状態である。即ち、制御装置22が認識している開閉弁30の開閉状態と実際の開閉弁30の開閉状態とが一致していない。リトライフラグがオンの場合に、バルブ制御状態を停止状態ST2に遷移させることによって、制御装置22が認識している開閉弁30の開閉状態と実際の開閉弁30との開閉状態とを一致させる。
【0048】
制御装置22は、バルブ制御状態が停止状態ST2になることによって開閉弁30が閉弁し、かつ、スイッチ34がオフになるとバルブ制御状態を起動状態ST3に遷移させる。バルブ制御状態が起動状態ST3になることによって、制御装置22は開閉弁30を閉弁から開弁に切り替える。リトライフラグがオンになった場合、バルブ制御状態が停止状態ST2を経由して起動状態ST3になる。リトライフラグは、所定条件の成立によってオンになることから、所定条件が成立した場合に、バルブ制御状態は、起動状態ST3になる。従って、制御装置22は、水素の漏洩を検出していない状態で中圧圧力センサ42によって検出される圧力が閾値未満の場合、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する。制御装置22は、開閉弁30が開弁するように制御を実行すると、開閉弁30が開弁した状態に維持されるように制御を実行する。また、制御装置22は、スイッチ34がオンするように制御を実行すると、スイッチ34のオンが維持されるように制御を実行する。
【0049】
制御装置22は、バルブ制御状態が起動状態ST3になることによって、開閉弁30が開弁した状態に維持されるように制御が実行され、かつ、スイッチ34がオンに維持されるように制御が実行されると、バルブ制御状態を待ち状態ST4に遷移させる。これにより、リトライ回数がインクリメントされる。
【0050】
制御装置22は、バルブ制御状態が待ち状態ST4の場合に、バルブ状態判定制御でリトライフラグがオンに維持されていると、バルブ制御状態を停止状態ST2に遷移させる。この場合、起動状態ST3での開閉弁30の起動によって開閉弁30が開弁しなかったといえる。制御装置22は、起動状態ST3での開閉弁30の起動によって開閉弁30が開弁しなかった場合、停止状態ST2を経由して、再度、開閉弁30が開弁するように制御を実行する。
【0051】
制御装置22は、バルブ制御状態が待ち状態ST4の場合に、復帰制御がオフになると、バルブ制御状態を通常状態ST1に遷移させる。復帰制御がオフの場合、バルブ制御状態は、通常状態ST1に維持される。復帰制御は、制御装置22によって圧力低下異常と判断されておらず、かつ、リトライフラグが所定時間以上オフの場合にオフになる。所定時間は、開閉弁30が開弁していると判断できるように設定されている。所定時間は、例えば、3~7[sec]の範囲で任意に設定できる。
【0052】
上記したように、水素消費装置11に水素を供給する水素供給方法は、制御装置22がバルブ状態判定制御、及び復帰制御を実行することによって行われる。
[本実施形態の作用]
制御装置22は、キースイッチ13がスタート状態にされると、開閉弁30を開弁させる制御を実行する。この際、制御装置22が開閉弁30を開弁させる制御を実行したにも関わらず、開閉弁30が開弁しない場合がある。キースイッチ13がスタート状態にされると、制御装置22は、蓄電装置21からスタータ12に電力が供給されるように制御を実行する。スタータ12に流れる電流と蓄電装置21の内部抵抗とに基づいて蓄電装置21の電圧降下が生じる。蓄電装置21に電圧降下が生じると、開閉弁30を起動するために必要となる電圧を確保することができず、開閉弁30を開弁できない場合が生じ得る。
【0053】
制御装置22は、開閉弁30を開弁できなかった場合に、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する。中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満の場合、供給流路29の水素が減少していると想定される。供給流路29の水素が減少する原因としては、供給流路29への水素の供給が行われていないにも関わらず水素消費装置11によって水素が消費されていることが挙げられる。中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁30よりも下流の圧力が低下している状態である。この場合、開閉弁30が閉弁している状態で、水素消費装置11によって水素が消費されていると想定される。この場合に、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行することによって、制御装置22は、開閉弁30を開弁できなかった場合に、開閉弁30を開弁する制御を実行することができる。
【0054】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置22は、開閉弁30を開弁させるように制御を実行したにも関わらず、開閉弁30を開弁できなかった場合に、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する。従って、蓄電装置21の電圧降下によって、開閉弁30を開弁させるように制御を実行したにも関わらず、開閉弁30を開弁できなかった場合であっても、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行することによって開閉弁30を開弁させることができる。
【0055】
(2)制御装置22は、開閉弁30を開弁できなかった場合に、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する。水素供給装置20が車両10に搭載されている場合、車両10のユーザーに違和感を与えることなく、水素消費装置11への水素の供給を継続することができる。
【0056】
(3)制御装置22は、水素が漏洩している場合には、開閉弁30を開弁させる制御を実行しない。水素が漏洩している場合、開閉弁30を開弁させることによって水素が更に漏洩するおそれがある。水素が漏洩している場合には、開閉弁30を開弁させる制御を実行しないことで、水素が更に漏洩することを抑制できる。
【0057】
(4)制御装置22は、水素が漏洩している場合には、開閉弁30を開弁させる制御を実行しない。水素が漏洩している場合、開閉弁30が開弁しているにも関わらず、水素の漏洩によって中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満になっている場合がある。水素が漏洩していない場合に、制御装置22が開閉弁30を開弁させる制御を再度実行することで、開閉弁30が開弁していない場合に、開閉弁30を開弁させることができる。
【0058】
(5)制御装置22は、キースイッチ13がスタート状態にされると、蓄電装置21からスタータ12に電力が供給されるように制御を実行する。スタータ12に電力を供給すると、スタータ12に流れる電流によって蓄電装置21の電圧降下が生じる。スタータ12は、水素消費装置11である内燃機関の始動時に一時的に用いられるものである。制御装置22が開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する際には、スタータ12に電力を供給することを原因とする蓄電装置21の電圧降下が生じない。開閉弁30を開弁させる制御を再度実行することによって、スタータ12による影響によって開閉弁30を開弁できない事態が生じにくい。
【0059】
(6)制御装置22は、中圧圧力センサ42によって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行する。中圧圧力センサ42の分解能は、高圧圧力センサ41の分解能よりも小さい。このため、供給流路29の圧力が閾値未満になったか否かの判定精度を向上させることができる。
【0060】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
○制御装置22は、水素の漏洩を検出していない状態で高圧圧力センサ41によって測定される圧力が閾値未満の場合、開閉弁30を開弁させる制御を再度実行してもよい。この場合、高圧圧力センサ41が圧力センサである。
【0062】
○水素消費装置11は、燃料電池システムであってもよい。その場合、負荷はスタータではなく、電動ファンのような消費電力が比較的大きいものが挙げられる。
○水素供給装置20は、水素センサとして第1水素センサ43、又は第2水素センサ44を備えていてもよい。
【0063】
○水素供給装置20は、水素消費装置11を備える装置であれば、どのような装置に設けられていてもよい。この場合、水素供給装置20に、ユーザーが操作可能な操作部を設けて、操作部が操作されることによって水素供給装置20に起動指令が出力されるようにしてもよい。
【0064】
○水素供給装置20は、バルブリレー32を備えていなくてもよい。この場合であっても、制御装置22は、実施形態と同様に、開閉弁30に電圧を印加するか否かを制御することができる。
【符号の説明】
【0065】
11…水素消費装置、12…負荷であるスタータ、13…キースイッチ、20…水素供給装置、21…蓄電装置、22…制御装置、25…タンク、30…開閉弁、35…減圧弁、42…圧力センサである中圧圧力センサ、43,44…水素センサ。
図1
図2
図3