(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021283
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】給気ユニット、空調システム及び空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/06 20060101AFI20240208BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F24F13/06 A
F24F1/0007 401C
F24F1/02 411C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124005
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】相澤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 正浩
【テーマコード(参考)】
3L051
3L080
【Fターム(参考)】
3L051BJ10
3L080BA05
3L080BA10
3L080BB02
(57)【要約】
【課題】冷房と暖房とを切り換えて使用できる技術を提供する。
【解決手段】本発明による給気ユニットの一態様は、空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットであって、内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、を有し、前記切換部材は、冷房運転時に前記内部空間の下部を閉じ、暖房運転時に前記内部空間の下部を開くように構成され、前記吹出口は、前記暖房運転時に閉塞されることなく開口した状態を維持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットであって、
内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、
前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、
を有し、
前記切換部材は、冷房運転時に前記内部空間の下部を閉じ、暖房運転時に前記内部空間の下部を開くように構成され、
前記吹出口は、前記暖房運転時に閉塞されることなく開口した状態を維持する、
給気ユニット。
【請求項2】
前記吹出口は、前記空調空間の床面から空調対象の高さまでの範囲に分布して複数配置され、
前記内部空間の下部の開口の面積は、複数の前記吹出口の総開口面積と同じ、又は複数の前記吹出口の総開口面積よりも大きい、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項3】
前記内部空間の下部から前記空調空間に吹き出される空気の量は、複数の前記吹出口から前記空調空間に吹き出される空気の総量と同じ、又は複数の前記吹出口から前記空調空間に吹き出される空気の総量よりも多い、
請求項2に記載の給気ユニット。
【請求項4】
前記カバー部材は、シート状の柔軟材料により形成される、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項5】
前記カバー部材は、透明性を有する、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項6】
前記内部空間は、下方に向けて断面積が小さくなる、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項7】
前記側面に固定される緩衝部材を更に有し、
前記カバー部材の左右端は、前記緩衝部材に取り付けられる、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項8】
人の身長よりも高い位置に設けられる保持部であり、硬質材により形成される保持部を更に有し、
前記カバー部材は、前記保持部に取り付けられる、
請求項1に記載の給気ユニット。
【請求項9】
空調機と、
空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットと、
前記空調機から前記給気ユニットに空気を送り込む給気ダクトと、
を備え、
前記給気ユニットは、
内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、
前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、
を有し、
前記切換部材は、冷房運転時に前記内部空間の下部を閉じ、暖房運転時に前記内部空間の下部を開くように構成され、
前記吹出口は、前記暖房運転時に閉塞されることなく開口した状態を維持する、
空調システム。
【請求項10】
空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットによる空調方法であって、
前記給気ユニットは、
内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、
前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、
を有し、
冷房運転時に前記切換部材により前記内部空間の下端を閉じ、暖房運転時に前記吹出口を閉塞することなく開口した状態で前記切換部材により前記内部空間の下端を開く、
空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給気ユニット、空調システム及び空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱中症防止などの観点から、体育館への空調システムの導入が進められている。従来の空調システムでは混合換気方式が一般的であったが、昨今では空調効率が高く、バトミントン等の球技への影響が少ないという理由から置換換気方式の空調システム(以下「置換空調システム」という。)を導入するニーズが高まっている。
【0003】
置換空調システムの一例として、生産工場内の側壁から離れた作業域にソックダクトを設け、該ソックダクトから低速気流を吹き出すことで、効率的な冷房を行う技術が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
置換空調システムの一例として、オフィスビル内の下部空間に半円筒状のディフューザー面をもつ筐体である空気拡散口を設け、該空気拡散口から新鮮空気を流出させることで、室内空気を新鮮な空気と置き換える技術が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-15267号公報
【特許文献2】特開平4-143538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2には、冷房と暖房とを切り換えて使用する点については記載されていない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、冷房と暖房とを切り換えて使用できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成すべく、本発明による給気ユニットの一態様は、空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットであって、内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、を有し、前記切換部材は、冷房運転時に前記内部空間の下部を閉じ、暖房運転時に前記内部空間の下部を開くように構成され、前記吹出口は、前記暖房運転時に閉塞されることなく開口した状態を維持する。本態様によれば、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。また、本態様によれば、冷房運転時と暖房運転時においてそれぞれ効率的な気流形状を簡易に形成できる。また、本態様によれば、暖房運転時に内部空間の下端から空調空間に空気が吹き出され、該空気がコアンダ効果により空調空間の床に沿って遠くまで行き渡る。その結果、空調空間の下部に位置する居住域の全体を効率的に暖めることができる。
【0009】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記吹出口は、前記空調空間の床面から空調対象の高さまでの範囲に分布して複数配置され、前記内部空間の下部の開口の面積は、複数の前記吹出口の総開口面積と同じ、又は複数の前記吹出口の総開口面積よりも大きい。本態様によれば、内部空間の下端部にかかる動圧がそのまま空調空間へ開放されるため、内部空間の下端から空調空間に吹き出される空気の量が全吹出口から空調空間に吹き出される空気の総量と同じ又は全吹出口から空調空間に吹き出される空気の総量よりも多くなり、空調空間の床に沿った空気の流れが形成されやすい。
【0010】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記内部空間の下部から前記空調空間に吹き出される空気の量は、複数の前記吹出口から前記空調空間に吹き出される空気の総量と同じ、又は複数の前記吹出口から前記空調空間に吹き出される空気の総量よりも多い。本態様によれば、空調空間の床に沿った空気の流れが形成されやすい。
【0011】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記カバー部材は、シート状の柔軟材料により形成される。本態様によれば、給気ユニットに人や物体が衝突した際の衝撃を吸収できる。
【0012】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記カバー部材は、透明性を有する。本態様によれば、カバー部材が取り付けられた状態で給気ユニット内を確認できるため、安全性が向上する。
【0013】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記内部空間は、下方に向けて断面積が小さくなる。本態様によれば、内部空間の下方における動圧が高くなる。その結果、内部空間の下端から空調空間に吹き出される空気の流速を高めることができる。
【0014】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、前記側面に固定される緩衝部材を更に有し、前記カバー部材の左右端は、前記緩衝部材に取り付けられる。本態様によれば、給気ユニットに人や物体が衝突した際の衝撃を吸収しやすい。
【0015】
また、本発明による給気ユニットの他の態様において、人の身長よりも高い位置に設けられる保持部であり、硬質材により形成される保持部を更に有し、前記カバー部材は、前記保持部に取り付けられる。本態様によれば、吹出シートの形状が定まりやすい。また、本態様によれば、保持部に対する人の接触が抑制され、安全性が向上する。
【0016】
また、本発明による空調システムの一態様は、空調機と、空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットと、前記空調機から前記給気ユニットに空気を送り込む給気ダクトと、を備え、前記給気ユニットは、内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、を有し、前記切換部材は、冷房運転時に前記内部空間の下部を閉じ、暖房運転時に前記内部空間の下部を開くように構成され、前記吹出口は、前記暖房運転時に閉塞されることなく開口した状態を維持する、。本態様によれば、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。また、本態様によれば、冷房運転時と暖房運転時においてそれぞれ効率的な気流形状を簡易に形成できる。また、本態様によれば、暖房運転時に内部空間の下端から空調空間に空気が吹き出され、該空気がコアンダ効果により空調空間の床に沿って遠くまで行き渡る。その結果、空調空間の下部に位置する居住域の全体を効率的に暖めることができる。
【0017】
また、本発明による空調方法の一態様は、空調空間に面する側面の下部に設けられる給気ユニットによる空調方法であって、前記給気ユニットは、内部空間を形成し、かつ前記内部空間と前記空調空間とを連通する吹出口を含むカバー部材と、前記内部空間の下部を開閉し、前記内部空間と前記空調空間との連通状態を切り換える切換部材と、を有し、冷房運転時に前記切換部材により前記内部空間の下端を閉じ、暖房運転時に前記吹出口を閉塞することなく開口した状態で前記切換部材により前記内部空間の下端を開く。本態様によれば、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。また、本態様によれば、冷房運転時と暖房運転時においてそれぞれ効率的な気流形状を簡易に形成できる。また、本態様によれば、暖房運転時に内部空間の下端から空調空間に空気が吹き出され、該空気がコアンダ効果により空調空間の床に沿って遠くまで行き渡る。その結果、空調空間の下部に位置する居住域の全体を効率的に暖めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る給気ユニットの概略構成を示す断面図(1)
【
図2】実施形態に係る給気ユニットの概略構成を示す断面図(2)
【
図3】実施形態の第1例に係る給気ユニットを示す斜視図
【
図4】実施形態の第1例に係る給気ユニットを示す側面図
【
図5】実施形態の第1例に係る給気ユニットを示す断面図
【
図9】実施形態の第1例に係る給気ユニットの冷房運転時の状態を説明する図
【
図10】実施形態の第1例に係る給気ユニットの暖房運転時の状態を説明する図
【
図11】実施形態の第2例に係る給気ユニットを示す側面図
【
図12】実施形態の第2例に係る給気ユニットを示す断面図
【
図13】実施形態の第3例に係る給気ユニットを示す斜視図
【
図14】実施形態の第3例に係る給気ユニットを示す側面図
【
図15】実施形態の第4例に係る給気ユニットを示す斜視図
【
図16】実施形態の第4例に係る給気ユニットを示す側面図
【
図17】実施形態に係る給気ユニットを含む空調システムの一例を示す平面図
【
図18】実施形態に係る給気ユニットを含む空調システムの一例を示す断面図
【
図19】実施形態に係る給気ユニットを含む空調システムの別の一例を示す断面図
【
図20】実施形態に係る給気ユニットを含む空調システムの別の一例を示す斜視図
【
図21】実施形態に係る給気ユニットを含む空調システムの別の一例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一又は対応する部材又は部品については、同一又は対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
<給気ユニット>
図1及び
図2を参照し、実施形態に係る給気ユニット1について説明する。
図1及び
図2は、給気ユニット1の概略構成を示す断面図である。
【0022】
給気ユニット1は、空調空間Pに設けられる。空調空間Pは、例えば体育館、事務室、電算室、客室、宴会場、遊技場、印刷室、病室、便所、厨房、機械室、ボイラ室、工場等であり、床P1、側壁P2及び天井(図示せず)で区画される。給気ユニット1は、空調空間Pの側面の下部に設けられる。例えば、給気ユニット1は、空調空間Pに面する側壁P2の下部に設けられる。給気ユニット1は、例えば床P1から離間して取り付けられる。この場合、床P1の清掃が容易になる。給気ユニット1は、例えば床P1に設置されてもよい。給気ユニット1は、カバー部材110と、切換部材120と、保持部130とを有する。
【0023】
カバー部材110は、空調空間Pに対して区画された内部空間Aを形成する。カバー部材110は、例えばシート状の柔軟材料により形成される。この場合、給気ユニット1に人や物体が衝突した際の衝撃を吸収できる。カバー部材110は、例えば板状の鋼板等により形成されてもよい。カバー部材110は、例えば透明性を有する。この場合、カバー部材110が取り付けられた状態で給気ユニット1内を確認できるため、安全性が向上する。
【0024】
カバー部材110は、例えば上端が保持部130に取り付けられる。この場合、カバー部材110がシート状の柔軟材料により形成される場合にカバー部材110の形状が定まりやすい。カバー部材110は、例えば上端が側壁P2に取り付けられてもよい。カバー部材110は、例えば左右端及び下端が側壁P2に取り付けられる。
【0025】
カバー部材110は、複数の吹出口110aを含む。各吹出口110aは、内部空間Aと空調空間Pとを連通する。各吹出口110aは、内部空間Aの空気を空調空間Pに水平方向に吹き出す。複数の吹出口110aは、例えばカバー部材110のほぼ全面に分布して配置される。複数の吹出口110aは、空調空間Pに設置されたときに、床面から所定の高さ、例えば居住域の高さ、すなわち空調対象となる領域の高さ(例えば2m)までの領域に全体に分布して配置される。
【0026】
カバー部材110は、例えば内部空間Aが下方に向けて断面積が小さくなるように設けられる。この場合、内部空間Aの空気の動圧と静圧の和となる全圧が内部空間A内全体で均一化され、各吹出口110aからの吹出し風速の均一化が図れる。また、内部空間Aの下端が開かれた場合において、内部空間Aの下端部にかかる動圧がそのまま空調空間Pへ開放されるため、内部空間Aの下端から空調空間Pに吹き出される空気の流速を高めることができる。
【0027】
切換部材120は、内部空間Aの下部(例えば下端)を開閉し、内部空間Aと空調空間Pとの連通状態を切り換える。切換部材120は、例えば面ファスナー、線ファスナー、ボタン、マグネット、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0028】
切換部材120は、例えば冷房運転時に内部空間Aの下端を閉じる。この場合、内部空間Aの下端において内部空間Aと空調空間Pとが連通しない状態となる。このため、
図1中の矢印で示されるように、内部空間Aの空気は複数の吹出口110aから空調空間Pに向けて低速で吹き出される。その結果、置換空調により空調空間Pの下部に位置する居住域の全体を効率的に冷やすことできる。
【0029】
切換部材120は、例えば暖房運転時に内部空間Aの下端を開く。この場合、内部空間Aの下端において内部空間Aと空調空間Pとが連通する状態となる。暖かい空気は軽いので上昇しやすい性質を有する。このため、吹出口から吹き出された空気はすぐに上昇し、吹出口から遠い領域が暖められにくい。そこで、内部空間Aの下端において内部空間Aと空調空間Pとが連通する状態にすることで、
図2中の矢印で示されるように、複数の吹出口110aに加えて、内部空間Aの下端から空調空間Pに空気が吹き出される。内部空間Aの下端から空調空間Pに吹き出される空気は、コアンダ効果により空調空間Pの床P1に沿って遠くまで行き渡る。その結果、空調空間Pの下部に位置する居住域の全体を効率的に暖めることができる。暖房時の風速は、コアンダ効果により空調空間Pの床P1に沿った気流となる風速、例えば1.5m/s以上とすることが好ましく、例えば4m/s程度とする。暖房運転時、各吹出口110aは閉塞されることなく開口した状態を維持する。このため、各吹出口110aを閉塞することなく開口したまま暖房運転(内部空間Aの下端からの空気の吹き出し)が可能である。
【0030】
内部空間Aの下端の開口面積は、例えば全吹出口110aの総開口面積と同じ又は全吹出口110aの総開口面積よりも大きい。この場合、内部空間Aの下端部にかかる動圧がそのまま空調空間Pへ開放される。このため、内部空間Aの下端から空調空間Pに吹き出される空気の量が全吹出口110aから空調空間Pに吹き出される空気の総量と同じ又は全吹出口110aから空調空間Pに吹き出される空気の総量よりも多くなる。その結果、空調空間Pの床P1に沿った空気の流れが形成されやすい。
【0031】
保持部130は、カバー部材110と共に内部空間Aを形成する。保持部130は、例えば鋼板等の硬質材により形成される。保持部130は、例えば側壁P2に取り付けられる。保持部130は、例えば人の身長よりも高い位置に設けられる。この場合、保持部130に対する人の接触が抑制され、安全性が向上する。
【0032】
以上に説明したように、実施形態に係る給気ユニット1によれば、切換部材120が内部空間Aの下端を開閉することにより、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて効率的な気流形状を簡易に形成できる。すなわち、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。
【0033】
〔第1例〕
(全体構成)
図3~
図5を参照し、実施形態の第1例に係る給気ユニット1Aについて説明する。
図3は、給気ユニット1Aを正面側の斜め側方から見た図である。
図4は、給気ユニット1Aを側方から見た図である。
図5は、給気ユニット1Aを水平方向に沿って切断した断面図である。
【0034】
給気ユニット1Aは、保持部11と、吹出シート13と、緩衝部材14と、底面シート15と、連結部材16とを有する。
【0035】
保持部11は、前述の保持部130に相当する。保持部11は、例えば鋼板により形成される。保持部11は、例えば人の身長よりも高い位置に設けられる。この場合、保持部11に対する人の接触が抑制され、安全性が向上する。本実施形態において、床P1から保持部11の下端までの高さH1は2mである。
【0036】
吹出シート13は、前述のカバー部材110に相当する。吹出シート13は、保持部11と共に、空調空間Pに対して区画された内部空間Aを形成する。
【0037】
吹出シート13は、給気ユニット1Aの正面側に取り付けられ、空調空間Pに向けて凸となる曲面状を有する。吹出シート13は、例えば保持部11、緩衝部材14及び底面シート15に取り付けられる。この場合、吹出シート13の形状が定まりやすい。吹出シート13は、例えば着脱自在である。この場合、吹出シート13が破損した場合等に吹出シート13を容易に交換できる。吹出シート13は、内部に空気が供給されると、内部全体に所定の圧力が加わり膨らんだ状態となる。これにより、人が衝突した際の衝撃を緩和でき、また各吹出口13aからの吹き出し風速を均一化できる。
【0038】
吹出シート13は、例えば内部空間Aが下方に向けて断面積が小さくなるように設けられる。この場合、内部空間Aの下方における動圧が高くなる。その結果、内部空間Aの下端が開かれた場合において、内部空間Aの下端から空調空間Pに吹き出される空気の流速を高めることができる。
【0039】
吹出シート13は、複数の吹出口13a(
図7参照)を含む。
図3及び
図4では、複数の吹出口13aの図示を省略する。複数の吹出口13aは、前述の複数の吹出口110aに相当する。各吹出口13aは、空調空間Pに連通し、給気ダクト2から給気ユニット1Aに取り込まれた空気を空調空間Pに水平方向に吹き出す。
【0040】
緩衝部材14は、側壁P2に固定される。緩衝部材14は、正面側から見たときに矩形状を有する。緩衝部材14は、例えば40mm~60mmの厚みのシート状を有する。緩衝部材14が設けられることで、給気ユニット1Aに人や物体が衝突した際の衝撃を吸収しやすい。
【0041】
底面シート15は、例えば吹出シート13と同じ材料により形成される。底面シート15は、吹出シート13及び緩衝部材14により床P1近傍に形成される開口を塞ぐように取り付けられる。底面シート15は、例えば透明性を有する。この場合、底面シート15が取り付けられた状態で床P1を確認できるため、安全性が向上する。底面シート15は、例えば帯電防止性を有する。この場合、静電気を帯びにくく、底面シート15への埃等の付着を抑制できる。底面シート15は、例えば難燃性を有する。
【0042】
連結部材16は、面ファスナー16a~16dを含む。面ファスナー16aは、保持部11と吹出シート13の上端とを着脱自在に連結する。面ファスナー16bは、前述の切換部材120に相当する。面ファスナー16bは、吹出シート13の下端と底面シート15とを着脱自在に連結する。面ファスナー16cは、吹出シート13の左端と緩衝部材14の左側面とを着脱自在に連結する。面ファスナー16dは、吹出シート13の右端と緩衝部材14の右側面とを着脱自在に連結する。連結部材16は、面ファスナー16a~16dに代えて、線ファスナー、ボタン、又はマグネットを含んでいてもよい。
【0043】
(保持部)
図6を参照し、保持部11の一例について説明する。
図6(a)は保持部11を正面側の斜め上方から見た図であり、
図6(b)は保持部11を正面側の斜め下方から見た図であり、
図6(c)は保持部11を背面側の斜め上方から見た図である。
【0044】
保持部11は、側壁P2(
図3参照)に取り付けられる。保持部11は、上部が閉塞し、下部が開口する。保持部11は、前面板11aと、背面板11bと、天井板11cとを含む。
【0045】
前面板11aは、矩形板状を有し、左右方向の両端が背面側に屈曲して背面板11bと接続される。
【0046】
背面板11bは、矩形板状を有し、左右方向の両端において前面板11aと接続される。背面板11bは、側壁P2(
図3参照)に固定される。背面板11bには、給気ダクト(図示せず)を接続するための背面接続口11dが設けられる。背面接続口11dは、高さよりも幅が広い矩形状を有する。ただし、背面接続口11dの形状はこれに限定されず、例えば円形状、楕円形状であってもよい。
【0047】
天井板11cは、前面板11a及び背面板11bにより形成される上側の開口を塞ぐように設けられる。天井板11cには、給気ダクト2(
図3)を接続するための上部接続口11eが設けられる。上部接続口11eは、奥行きよりも幅が広い楕円形状を有する。ただし、上部接続口11eの形状はこれに限定されず、例えば円形状、矩形状であってもよい。
【0048】
このように保持部11には、背面接続口11d及び上部接続口11eが設けられるので、給気ダクト2の取付位置が給気ユニット1Aの背面及び上方のいずれの場合であっても給気ユニット1Aに給気ダクト2を取り付けることができる。なお、給気ダクト2が取り付けられない側の接続口を塞ぐようにしてもよい。また、背面接続口11d及び上部接続口11eのいずれか一方を設けなくてもよい。
【0049】
なお、
図3及び
図4に示される給気ユニット1Aでは、上部接続口11eに給気ダクト2が接続され、背面接続口11dに給気ダクトが接続されていない場合を示している。
【0050】
(吹出シート)
図7を参照し、吹出シート13の一例について説明する。
図7は、取り付け前の吹出シート13を正面から見た図である。
【0051】
吹出シート13は、冷房運転時と暖房運転時の両方に使用される。吹出シート13は、正面から見たときに矩形状を有し、複数の吹出口13aを含む。複数の吹出口13aは、例えば吹出シート13の全面に設けられる。各吹出口13aは、例えば円形状を有する。ただし、各吹出口13aの形状はこれに限定されず、例えば矩形状、楕円形状であってもよい。
【0052】
吹出シート13は、柔軟材料により形成される。柔軟材料としては、保持部11よりも柔らかい材料、例えば軟質PVC(ポリ塩化ビニル)、ターポリン、ガラスクロスシート、ビニルシート、シェード、飛散防止ネット等が挙げられる。本実施形態において、吹出シート13は可塑化ポリ塩化ビニル混合物により形成される。この場合、防炎、帯電防止及び耐寒に優れる。
【0053】
吹出シート13は、例えば透明性を有する。この場合、吹出シート13が取り付けられた状態で給気ユニット1A内を確認できるため、安全性が向上する。吹出シート13は、例えば帯電防止性を有する。この場合、静電気を帯びにくく、吹出シート13への埃等の付着を抑制できる。吹出シート13は、例えば難燃性を有する。
【0054】
本実施形態において、吹出シート13は、例えば高さが2000mm、幅が1000mm、厚さが1mmである。吹出シート13には、直径が3mmの円形状の吹出口13aが、上下方向に12mmピッチで167個、幅方向に12mmピッチで150個設けられる。ただし、吹出口13aの形状、大きさ、ピッチ、個数等はこれに限定されるものではない。例えば、各吹出口13aは、直径が1mm~10mmの円形状であってよい。吹出口13aの開口率は、例えば1%~10%であり、一例としては5%である。
【0055】
(緩衝部材)
図8を参照し、緩衝部材14の一例について説明する。
図8は、緩衝部材14を斜め上方から見た図である。
【0056】
緩衝部材14は、積層体14aがビニールレザー14bで覆われた形態を有する。積層体14aは、合板14cと、チップウレタン層14dと、ウレタンフォーム14eとを含む。ビニールレザー14bの厚みは、例えば1mmであってよい。合板14cの厚みは、例えば9mmであってよい。チップウレタン層14dの厚みは、例えば20mm以上40mm以下であってよい。ウレタンフォーム14eの厚みは、例えば10mmであってよい。
【0057】
(給気ユニットによる空調方法)
図9及び
図10を参照し、給気ユニット1Aによる空調方法について説明する。
図9は、給気ユニット1Aの冷房運転時の状態を説明する図である。
図10は、給気ユニット1Aの暖房運転時の状態を説明する図である。
【0058】
冷房運転時の給気ユニット1Aの動作を説明する。冷房運転時には、
図9に示されるように、面ファスナー16bによって吹出シート13の下端と底面シート15とを連結し、内部空間Aの下端を閉じる。これにより、内部空間Aの下端において内部空間Aと空調空間Pとが連通しない状態となる。このため、
図9中の矢印で示されるように、内部空間Aの空気は吹出シート13に形成された複数の吹出口13a(
図7参照)から空調空間Pに向けて低速で吹き出される。その結果、置換空調により空調空間Pの下部に位置する居住域の全体を効率的に冷やすことできる。
【0059】
暖房運転時の給気ユニット1Aの動作を説明する。暖房運転時には、
図10に示されるように、面ファスナー16bによる吹出シート13の下端と底面シート15との連結を解除し、内部空間Aの下端を開く。これにより、内部空間Aの下端において内部空間Aと空調空間Pとが連通する状態となる。このため、
図10中の矢印で示されるように、複数の吹出口13aに加えて、内部空間Aの下端から空調空間Pに空気が吹き出される。内部空間Aの下端から吹き出される空気は、コアンダ効果により空調空間Pの床P1に沿って遠くまで行き渡る。その結果、空調空間Pの下部に位置する居住域の全体を効率的に暖めることができる。
【0060】
以上に説明したように、吹出シート13の下端と底面シート15との連結状態を切り換え、内部空間Aの下端を開閉することにより、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて効率的な気流形状を簡易に形成できる。すなわち、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。
【0061】
〔第2例〕
図11及び
図12を参照し、実施形態の第2例に係る給気ユニット1Bについて説明する。
図11は、給気ユニット1Bを側方から見た図である。
図12は、給気ユニット1Bを水平方向に沿って切断した断面図である。
【0062】
給気ユニット1Bは、吹出シート13が背面シート17に取り付けられる点で給気ユニット1Aと異なる。以下では給気ユニット1Aと異なる点を中心に説明する。
【0063】
給気ユニット1Bは、保持部11と、吹出シート13と、底面シート15と、連結部材16と、背面シート17と、支持部18とを有する。
【0064】
背面シート17は、例えば吹出シート13と同じ材料により形成される。背面シート17は、側壁P2に沿って平面状に取り付けられる。背面シート17は、例えば透明性を有する。この場合、背面シート17が取り付けられた状態で側壁P2を確認できるため、安全性が向上する。背面シート17は、例えば帯電防止性を有する。この場合、静電気を帯びにくく、背面シート17への埃等の付着を抑制できる。背面シート17は、例えば難燃性を有する。背面シート17は、左右端が支持部18により正面側に折り曲げられる。背面シート17の左端は、面ファスナー16cにより吹出シート13の左端と着脱自在に連結される。背面シート17の右端は、面ファスナー16dにより吹出シート13の右端と着脱自在に連結される。
【0065】
支持部18は、左補強材18aと、右補強材18bとを含む。左補強材18a及び右補強材18bは、例えば鋼板により形成される平板状のフラットプレートである。左補強材18aは、保持部11の左下端から下方向に延在する。右補強材18bは、保持部11の右下端から下方向に延在する。左補強材18a及び右補強材18bの上下方向の長さは、例えば吹出シート13の上下方向の長さと同じ又は略同じである。左補強材18a及び右補強材18bは、側壁P2との間に背面シート17を挟み込んで側壁P2に固定される。
【0066】
給気ユニット1Bにおいても、給気ユニット1Aと同様に、吹出シート13の下端と底面シート15との連結状態を切り換え、内部空間Aの下端を開閉することにより、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて効率的な気流形状を簡易に形成できる。すなわち、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。
【0067】
〔第3例〕
図13及び
図14を参照し、実施形態の第3例に係る給気ユニット1Cについて説明する。
図13は、給気ユニット1Cを正面側の斜め側方から見た図である。
図14は、給気ユニット1Cを側方から見た図である。
【0068】
給気ユニット1Cは、吹出シート13が支持部12に取り付けられる点で給気ユニット1Aと異なる。以下では、給気ユニット1Aと異なる点を中心に説明する。
【0069】
給気ユニット1Cは、保持部11と、支持部12と、吹出シート13と、底面シート15と、連結部材16と、背面シート17とを有する。
【0070】
支持部12は、例えば鋼板により形成される。支持部12は、保持部11の下方に設けられる。支持部12は、保持部11と共に、吹出シート13、底面シート15及び背面シート17を支持する。支持部12は、補強材12a~12dを含む。補強材12a~12dは、背面シート17を側壁P2に固定する。補強材12a~12dは、例えばL型アングルである。補強材12bには、底面シート15が着脱自在に取り付けられる。補強材12c,12dには、吹出シート13が着脱自在に取り付けられる。
【0071】
吹出シート13は、例えば内部空間Aが上方と下方とにおいて断面積が等しくなるように設けられる。吹出シート13は、例えば内部空間Aが下方に向けて断面積が小さくなるように設けられてもよい。
【0072】
連結部材16は、面ファスナー16a~16dを含む。面ファスナー16aは、保持部11と吹出シート13の上端とを着脱自在に連結する。面ファスナー16bは、底面シート15と吹出シート13の下端とを着脱自在に連結する。面ファスナー16cは、補強材12cと吹出シート13の左端とを着脱自在に連結する。面ファスナー16dは、補強材12dと吹出シート13の右端とを着脱自在に連結する。
【0073】
給気ユニット1Cにおいても、給気ユニット1Aと同様に、吹出シート13の下端と底面シート15との連結状態を切り換え、内部空間Aの下端を開閉することにより、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて効率的な気流形状を簡易に形成できる。すなわち、冷房と暖房とを切り換えて使用できる。
【0074】
〔第4例〕
図15及び
図16を参照し、実施形態の第4例に係る給気ユニット1Dについて説明する。
図15は、給気ユニット1Dを正面側の斜め側方から見た図である。
図16は、給気ユニット1Dを側方から見た図である。
【0075】
給気ユニット1Dは、背面側から正面側に向けて下方に傾斜する天井板21cを含む保持部21を有する点で、給気ユニット1Aと異なる。以下では、給気ユニット1Aと異なる点を中心に説明する。
【0076】
給気ユニット1Dは、保持部21と、吹出シート13と、緩衝部材14と、底面シート15と、連結部材16とを有する。
【0077】
保持部21は、側壁P2に取り付けられる。保持部21は、上部が閉塞し、下部が開口する。保持部21は、前面板21aと、背面板21bと、天井板21cと、パンチングメタル21fとを含む。
【0078】
前面板21aは、左右方向の両端が背面側に屈曲して背面板21bと接続される。前面板21aは、曲面形状を有する。この場合、前面板21aに人や物体が衝突した際の安全性が向上する。
【0079】
背面板21bは、矩形板状を有し、左右方向の両端において前面板21aと接続される。背面板21bは、側壁P2に固定される。背面板21bには、給気ダクト(図示せず)を接続するための背面接続口21dが設けられる。背面接続口21dは、高さよりも幅が広い矩形状を有する。ただし、背面接続口21dの形状はこれに限定されず、例えば円形状、楕円形状であってもよい。
【0080】
天井板21cは、前面板21a及び背面板21bにより形成される上側の開口を塞ぐように設けられる。天井板21cは、背面側から正面側に向けて下方に傾斜する。
【0081】
パンチングメタル21fは、保持部21の下端の開口、すなわち前面板21a及び背面板21bにより形成される下側の開口を塞ぐように設けられる。パンチングメタル21fは、設けられなくてもよい。
【0082】
このように保持部21には、背面接続口21dが設けられ、かつ背面側から正面側に向けて下方に傾斜する天井板21cが設けられる。この場合、給気ダクト2の給気は、背面接続口21dから給気ユニット1D内に取り込まれた後、天井板21cに衝突することより下方に向かう流れとなる。このため、内部空間Aに効率よく給気を送り込みやすい。
【0083】
<空調システム>
実施形態に係る空調システムについて説明する。実施形態に係る空調システムは、置換換気方式の空調システム(以下「置換空調システム」という。)である。置換空調システムでは、空調空間内の下部(例えば居住域)に室温より若干低温の空気をゆっくりとした給気速度(一般的には0.2m/s以下)で供給し、その空気が空調空間内に存在する発熱体などによって加熱されて発生する上昇流により、空調空間内で生じた塵埃やガスなどの汚染物質を空調空間内の上方に搬送している。そして、天井などに設けられた排気口から加熱された空気と共に汚染物質を排気することにより、空調空間内の換気を行う。
【0084】
〔体育館向け空調システム〕
図17及び
図18を参照し、給気ユニット1Aを備える空調システムの一例として、体育館向けの空調システムについて説明する。
図17は、給気ユニット1Aを含む空調システムが導入された体育館Qの内部を上方から見た図である。
図18は、実施形態に係る給気ユニット1Aを含む空調システムが導入された体育館Qの断面図である。
【0085】
体育館Qは、空調空間Pの一例であり、床Q1、側壁Q2及び天井Q3で区画される。体育館Q内の側壁Q2には、歩廊Q4が設けられる。歩廊Q4には、例えばバスケットゴールBGが取り付けられる。側壁Q2の上部、例えば歩廊Q4と略同じ高さ位置には、排気口Q5が設けられる。
【0086】
空調システムは、体育館Q内の温度、湿度、気流、清浄度等の空気環境を最適な状態に保つためのシステムである。空調システムは、給気ユニット1Aと、給気ダクト2と、排気ダクト3と、空調機4とを備える。
【0087】
給気ユニット1Aは、体育館Q内の側壁Q2の下部に取り付けられる。給気ユニット1Aは、給気ダクト2から取り込まれる給気SA(Supply Air)を吹出口13a(
図7参照)から体育館Q内の居住域に向かって吹き出す。給気ユニット1Aは、体育館Qの長手方向の一方の側壁Q2の2箇所及び他方の側壁Q2の2箇所に取り付けられている。一方の側壁Q2に取り付けられた給気ユニット1Aと、他方の側壁Q2に取り付けられた給気ユニット1Aとは、例えば対向して配置される。ただし、給気ユニット1Aの配置及び数はこれに限定されず、体育館Qの形状、サイズ、窓の配置等に応じて定められる。
【0088】
給気ダクト2は、給気ユニット1Aと空調機4とを接続する。これにより、空調機4で作られた給気SA(Supply Air)が給気ダクト2を通って給気ユニット1Aに供給される。本実施形態において、給気ダクト2は、給気ユニット1Aの背面接続口11d(
図6参照)に接続されている。これにより、水平方向に給気ユニット1A内に空気が流入するため、流入した空気が前面板11a(
図6参照)側に衝突して拡散されて下方の吹出シート13(
図3参照)側に流れる。その結果、給気ユニット1A内の空気の流れが均一化されるため、複数の吹出口13a(
図7参照)から均等に空気を吹き出すことができる。給気ダクト2には、風量を調整するためのダンパ5が設けられても良い。
【0089】
排気ダクト3は、排気口Q5と空調機4とを接続する。これにより、排気口Q5からの還気RA(Return Air)が排気ダクト3を通って空調機4に導入される。排気ダクト3には、風量を調整するためのダンパ6が設けられても良い。
【0090】
空調機4は、例えば体育館Qの外部に設けられる。空調機4は、フィルタ、冷却コイル、加熱コイル、加湿器等を含み、体育館Q外からの外気OA(Outside Air)及び体育館Q内からの還気RAを取り込んで給気SAを作り出す。ただし、空調機4は、外気OAのみを取り込んで給気SAを作り出してもよく、還気RAのみを取り込んで給気SAを作り出してもよい。給気SAは、暖房運転時には高温空気であり、冷房運転時には低温空気である。なお、高温空気とは体育館Q内の居住域に溜まっている空気よりも高温の空気を意味し、低温空気とは体育館Q内の居住域に溜まっている空気よりも低温の空気を意味する。
【0091】
係る空調システムでは、外気OA及び還気RAを空調機4に取り込んで作られた給気SAが給気ユニット1Aに供給され、給気ユニット1Aに取り付けられた吹出シート13の吹出口13a(
図7参照)から、体育館Q内の居住域に向かって吹き出される。
【0092】
なお、上記の空調システムでは、体育館Qの側壁Q2に排気口Q5が形成される場合を説明したが、これに限定されない。例えば、排気口Q5は設けられていなくてもよい。
【0093】
また、上記の空調システムでは、空調機4が体育館Qの外部に設けられる形態を説明したが、これに限定されない。例えば、
図19に示されるように、空調機4は体育館Qの内部に設けられてもよい。
図19の例では、体育館Q内に側壁Q2から隙間をあけて区画壁Q6が設けられ、空調機4が側壁Q2と区画壁Q6との間に設けられる。
図19の例では、給気ユニット1Dが空調機4に直接取り付けられる。なお、
図19は、実施形態に係る給気ユニット1Dを含む空調システムが導入された体育館Qの断面図である。
【0094】
〔避難所建屋向け空調システム〕
図20を参照し、給気ユニット1Aを備える空調システムの別の一例として、避難所建屋向けの空調システムについて説明する。
図20は、給気ユニット1Aを含む空調システムが導入された避難所建屋Rの一例の内部を斜め上方から見た斜視図である。
【0095】
避難所建屋Rは、空調空間Pの一例であり、既存の体育館や公会堂、ホール等であり、災害時に一定期間避難施設として指定され、比較的多数の避難者の避難を可能とした建屋である。
【0096】
避難所建屋Rの内部には、健康な避難者のための床スペース(図示せず)が確保される他に、感染症患者等を収容する複数(図示例は6つ)の避難所用テント70が設置される。また、避難所建屋Rには、空調システムが導入される。
【0097】
各避難所用テント70には固有の室外分岐エアダクト83が連通し、各室外分岐エアダクト83は、共通の主エアダクト82に連通し、主エアダクト82が室外給気ファン81に連通することにより、避難所用テントユニット90が形成される。このように、避難所建屋Rは、既存の体育館等が避難施設とされ、その内部に避難所用テントユニット90が設置された建屋である。
【0098】
図示例では、室外給気ファン81に対してトランス84(ここでは、アップトランス)が電気的に接続され、トランス84にて例えば100Vから200Vに昇圧された電圧が室外給気ファン81に印加される。図示例の室外給気ファン81は二系統の給気系統を備え、各給気系統にそれぞれ固有の主エアダクト82の一端が取り付けられる。
【0099】
各主エアダクト82から三本の室外分岐エアダクト83が分岐し、三室の避難所用テント70の天井上方にあるチャンバー31に対して、対応する室外分岐エアダクト83の一端が取り付けられる。
【0100】
室外給気ファン81から給気されたエアは、二本の主エアダクト82をZ1方向に流通し、各室外分岐エアダクト83をZ2方向に流通してチャンバー31に給気され、チャンバー31を介して避難所用テント70の室内に給気される。なお、チャンバー31はフィルタを有し、避難所用テント70の室内にはフィルタで浄化された空気が供給される。また、チャンバー31は、チャンバー内ファン(図示せず)を有する。チャンバー内ファンは、室外給気ファン81によりチャンバー31へZ2方向に給気されたエアを、避難所用テント70の室内へ供給する給気補助機能を有する。また、チャンバー内ファンは、避難所用テント70の室内のエアを室外に排気する排気機能を有する。給気補助機能と排気機能とは、例えばチャンバー31が備える切り替えボタン(図示せず)が操作されることで切り替えられる。また、避難所建屋Rに設置される避難所用テント70は、図示例以外の数であってもよく、室外給気ファン81から一本の主エアダクト82が延設し、一本の主エアダクト82から複数の室外分岐エアダクト83が分岐する形態であってもよい。
【0101】
室外給気ファン81は、通常のエアコン(エアーコンディショナー)と同様に、給気エアとして冷気と暖気を生成する冷暖房機能を有するのが望ましく、季節や昼夜等の避難所建屋R内の温度や湿度に応じて、所望温度の冷気又は暖気に切り換えられる。また、室外給気ファン81は、その内部で例えば冷気を生成する際に生じる熱を排熱する室外機を機内に内蔵していてもよい。
【0102】
室外給気ファン81は、制御部(図示せず)を内蔵する。制御部は、CPU(Central Processing Unit)、NVRAM(Non-Volatile RAM)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disc Drive)等を有する(いずれも図示せず)。制御部の各部は、バスを介してデータを送受信可能に接続される。ROMには、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶される。RAMは、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPUは、RAMにロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDDには、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記憶される。NVRAMには、各種の設定情報等が記憶される。
【0103】
例えば、温度センサや湿度センサ(いずれも図示せず)等からの計測情報に基づき、給気に好適な温度のエアを生成し、各避難所用テント70に給気するように構成されてもよい。
【0104】
また、トランス84には電工ドラム85が電気的に接続され、電工ドラム85から延設する電気配線86が各避難所用テント70の室内に延設し、電気配線86の端部に取り付けられるコンセントが室内に設置されるようになっている。
【0105】
また、避難所用テント70の天井には、開口(図示せず)が形成され、該開口を閉塞する平面視矩形の閉塞シート19が取り付けられている。閉塞シート19には、機能別に異なる素材のシートが適用される。具体的には、室外分岐エアダクト83を介してZ2方向に流通するエアを、チャンバー31を介して避難所用テント70の室内に給気する場合や供給も排気も行わない場合は、光透過性の透明もしくは半透明の樹脂シート等により形成される閉塞シートが適用される。一方、避難所用テント70の室内からチャンバー31を介して排気する場合は、通気性を有する閉塞シートが適用される。通気性を有する閉塞シートを介して室内に外気を取り込むことにより、排気の際の室内の過度な陰圧雰囲気を解消することができる。通気性を有する閉塞シートとしては、不織布等が挙げられる。
【0106】
空調システムは、避難所建屋R内の温度、湿度、気流、清浄度等の空気環境を最適な状態に保つためのシステムである。空調システムは、給気ユニット1A、給気ダクト、排気ダクト、空調機等を備える。
【0107】
給気ユニット1Aは、避難所建屋R内の側壁R2の下部に取り付けられる。給気ユニット1Aは、給気ダクトから取り込まれる給気SAを吹出口13a(
図7参照)から避難所建屋R内の居住域に向かって吹き出す。
図20の例では、避難所建屋Rに給気ユニット1Aが1つ設けられる場合を示すが、給気ユニット1Aの数はこれに限定されず、例えば2つ以上であってもよい。
【0108】
給気ダクト、排気ダクト及び空調機については、前述の体育館Qに導入される空調システムにおける給気ダクト2、排気ダクト3及び空調機4と同じ構成であってよい。
【0109】
係る空調システムでは、外気OA及び還気RAを空調機に取り込んで作られた給気SAが給気ユニット1Aに供給され、給気ユニット1Aに取り付けられた吹出シート13の吹出口13a(
図7参照)から、避難所建屋R内の居住域に向かって吹き出される。
【0110】
なお、
図20の例では、室外給気ファン81から給気されたエアが、主エアダクト82及び室外分岐エアダクト83を流通してチャンバー31に給気され、チャンバー31を介して避難所用テント70の室内に給気される形態を説明したが、これに限定されない。例えば、
図21に示されるように、室外給気ファン81、主エアダクト82、室外分岐エアダクト83、トランス84、電工ドラム85及び電気配線86が設けられていなくてもよい。
図21の例では、前述の空調システムで空調された避難所建屋R内の空気がチャンバー31を介して避難所用テント70内に供給される。
【0111】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1,1A,1B,1C,1D 給気ユニット
2 給気ダクト
3 排気ダクト
4 空調機
5 ダンパ
6 ダンパ
11 保持部
11a 前面板
11b 背面板
11c 天井板
11d 背面接続口
11e 上部接続口
12 支持部
12a~12d 補強材
13 吹出シート
13a 吹出口
14 緩衝部材
14a 積層体
14b ビニールレザー
14c 合板
14d チップウレタン層
14e ウレタンフォーム
15 底面シート
16 連結部材
16a~16d 面ファスナー
17 背面シート
18 支持部
18a 左補強材
18b 右補強材
19 閉塞シート
21 保持部
21a 前面板
21b 背面板
21c 天井板
21d 背面接続口
21f パンチングメタル
31 チャンバー
70 避難所用テント
81 室外給気ファン
82 主エアダクト
83 室外分岐エアダクト
84 トランス
85 電工ドラム
86 電気配線
90 避難所用テントユニット
110 カバー部材
110a 吹出口
120 切換部材
130 保持部
A 内部空間
P 空調空間
P1 床
P2 側壁
Q 体育館
Q1 床
Q2 側壁
Q3 天井
Q4 歩廊
Q5 排気口
Q6 区画壁
R 避難所建屋
R2 側壁
OA 外気
RA 還気
SA 給気