(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002129
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】遠隔指導管理装置及び遠隔指導システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20231228BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101145
(22)【出願日】2022-06-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】522252660
【氏名又は名称】原田 英明
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 英明
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】指導効率を向上させつつ、不必要なノウハウの流出を防ぐことができる遠隔指導管理装置及び遠隔指導システムを得る。
【解決手段】作業者P1の作業を遠隔地から指導する遠隔指導システムSにおいて、指導者P2により操作される遠隔指導管理装置10であって、遠隔指導管理装置10は、作業者P1が携行するウエアラブル端末14とネットワークを介して相互に接続され、ウエアラブル端末14で撮影された作業者P1の周囲の撮影画像を表示可能な表示部36と、予め登録された複数の指導画像の中から作業者端末16からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部34と、操作部34で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を作業者端末16へ送信する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業を遠隔地から指導する遠隔指導システムにおいて、指導者により操作される遠隔指導管理装置であって、
前記遠隔指導管理装置は、前記作業者が携行する作業者端末とネットワークを介して相互に接続され、
前記作業者端末で撮影された前記作業者の周囲の撮影画像を表示可能な表示部と、
予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、
前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信する閲覧管理制御部と、
を有する、遠隔指導管理装置。
【請求項2】
前記閲覧管理制御部は、前記操作部で指定された指導画像について、閲覧可能期間を設定し、当該閲覧可能期間が経過した場合に、前記閲覧許可情報を無効にする、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項3】
前記閲覧可能期間は、前記作業者の雇用主と前記作業者の指導について委託を受けた委託先との間で締結された指導契約期間として予め登録された期間、前記雇用主と前記作業者との間で締結された就労契約期間として予め登録された期間及び作業内容に応じた習得期間として予め登録された期間のうち少なくとも一つに基づいて設定される、請求項2に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項4】
前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応する規格として予め登録された規格情報と前記撮影画像に基づいて、前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項5】
前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みモデルに対して前記規格情報と前記撮影画像を入力し、学習済みモデルの処理を実行することで指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項4に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項6】
前記指導項目は建築作業に関する指導項目であり、
前記規格情報は、建築現場に関する作業情報であり、
前記閲覧管理制御部は、前記撮影画像中に映り込んだ建材の認識番号に基づいて建築現場における前記作業者の位置を推定し、推定された位置に対応する前記作業情報に基づいて前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項4に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項7】
前記作業者は技能実習制度により受け入れられた外国人技能実習生であり、
前記指導画像は、前記外国人技能実習生に技能を習得させるための指導画像である、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項8】
作業者が携行する作業者端末と遠隔地の指導者により操作される遠隔指導管理装置とがネットワークを介して相互に接続された遠隔指導システムであって、
前記作業者端末は、前記作業者の周囲を撮影可能な撮像部を有し、
前記遠隔指導管理装置は、前記作業者端末の前記撮像部で撮影された撮影画像を表示可能な表示部と、
予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、
前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信する閲覧管理制御部と、を有する、遠隔指導システム。
【請求項9】
前記作業者端末は、前記作業者のバイタルデータを取得する生体センサを有し、
取得した前記バイタルデータが所定の閾値を超えた場合に、前記作業者端末及び前記遠隔指導管理装置を介して前記作業者及び前記指導者に対してアラートを通知する、請求項8に記載の遠隔指導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔指導管理装置及び遠隔指導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遠隔地から医用装置の操作者に操作方法を指導する操作指導システムが開示されている。この操作指導システムでは、操作者が医用装置の操作に関する所定の情報を選択し、選択された情報について遠隔地にあるサーバシステムのスタッフから音声データを受信することで操作方法の指導が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように、専門性の高い技術の指導を行う場合や、外国人技能実習生等の言語障壁のある作業者に対する指導を行う場合、音声データによる指導では効率化を図ることが難しく、習得に時間を要する場合がある。そこで、音声データに限らず、画像データを用いて指導を行うことが検討される。
【0005】
しかしながら、ネットワークを介して画像データを共有する場合、画像データに含まれるノウハウが外部に流出することを防止する手段を設けることが望ましい。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ネットワークを介して遠隔地から作業者を指導する遠隔指導システムにおいて、指導効率を向上させつつ、ノウハウの流出を防ぐことができる遠隔指導管理装置及び遠隔指導システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る遠隔指導管理装置は、作業者の作業を遠隔地から指導する遠隔指導システムにおいて、指導者により操作される遠隔指導管理装置であって、前記遠隔指導管理装置は、前記作業者が携行する作業者端末とネットワークを介して相互に接続され、前記作業者端末で撮影された前記作業者の周囲の撮影画像を表示可能な表示部と、予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信する閲覧管理制御部と、を有する。
【0008】
第1の態様によれば、遠隔指導管理装置は、作業者が携行する作業者端末とネットワークを介して接続され、遠隔地から作業者の作業を指導する。この遠隔指導管理装置では、作業者端末で撮影された作業者の周囲の撮影画像を表示部に表示することができる。指導者は、表示部を介して作業中の手元等を確認しながら作業者の習熟後を判断することができる。また、遠隔指導管理装置は、指導者が、予め登録された複数の指導画像の中から作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定すると、指定した指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を作業者端末へ送信する。これにより、作業者端末では、閲覧許可情報を用いて指定された指導画像を視ることができる。
【0009】
このようにして、専門性の高い技術の指導を行う場合や、外国人技能実習生等の言語障壁のある作業者に対する指導を行う場合でも、画像の閲覧によって作業の要点を分かりやすく伝えることができるため、指導効率を向上させることができる。また、指導画像の閲覧には、遠隔指導管理装置から送信される閲覧許可情報が必要であるため、外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る遠隔指導管理装置は、第1の態様において、前記閲覧管理制御部は、前記操作部で指定された指導画像について閲覧可能期間を設定し、当該閲覧可能期間を経過した場合に、前記閲覧許可情報を無効にする。
【0011】
第2の態様によれば、遠隔指導管理装置は、指導画像のデータの閲覧可能期間を設定し、期間が経過すると、作業者端末へ送信した閲覧許可情報を無効にする。これにより、必要な期間を指定して指導画像の閲覧を許可することができるため、外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【0012】
本発明の第3の態様に係る遠隔指導管理装置は、第2の態様において、前記閲覧可能期間は、前記作業者の雇用主と前記作業者の指導について委託を受けた委託先との間で締結された指導契約期間として予め登録された期間、前記雇用主と前記作業者との間で締結された就労契約期間として予め登録された期間及び作業内容に応じた習得期間として予め登録された期間のうち少なくとも一つに基づいて設定される。
【0013】
第3の態様によれば、作業者に対する指導契約期間、就労契約期間及び作業内容に応じた習得期間として予め登録された期間に基づいて指導画像の閲覧を許可することができる。外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【0014】
第4の態様に係る遠隔指導管理装置は、第1の態様において、前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応する規格として予め登録された規格情報と前記撮影画像に基づいて、前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。
【0015】
第4の態様によれば、遠隔指導管理装置では、指導項目に対応する規格として予め登録された規格情報と作業者の周囲を撮影した撮影画像に基づいて、作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。これにより、遠隔指導管理装置を操作する指導者は、判定結果を参照することで、作業者の指導項目に関する習熟度を効率的に把握することができる。その結果、一人の指導者が複数人の作業者に対して同時に指導する場合であっても、各自の習熟度を的確に把握することができるため、一人の指導者が同時に対応できる人数を増やして、指導効率を高めることができる。
【0016】
第5の態様に係る遠隔指導管理装置は、第4の態様において、前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みモデルに対して前記規格情報と前記撮影画像を入力し、学習済みモデルの処理を実行することで指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。
【0017】
第5の態様によれば、作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みモデルを用いて作業品質を判定することで、複雑な演算を必要とせずに高精度で作業品質を確認することができる。
【0018】
第6の態様に係る遠隔指導は、第4の態様において、前記指導項目は建築作業に関する指導項目であり、前記規格情報は、建築現場に関する作業情報であり、前記閲覧管理制御部は、前記撮影画像中に映り込んだ建材の認識番号に基づいて建築現場における前記作業者の位置を推定し、推定された位置に対応する前記作業情報に基づいて前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。
【0019】
第6の態様によれば、建築現場にいる作業者に対して遠隔地にいる指導者から建築作業の指導が行われる。この際、遠隔指導管理装置では、撮影画像中に映り込んだ建材の認識番号に基づいて建築現場における作業者の位置を推定する。そして、推定された位置に対応する作業情報に基づいて、作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。これにより、現場ごとに作業内容が異なる建築作業の指導においても、作業者の指導項目に関する習熟度を効率的に把握することができる。
【0020】
第7の態様に係る遠隔指導管理装置では、第1の態様において、前記作業者は技能実習制度により受け入れられた外国人技能実習生であり、前記指導画像は、前記外国人技能実習生に技能を習得させるための指導画像である。
【0021】
第7の態様によれば、技能実習制度によって指導される専門技術のノウハウが流出することを抑制しつつ、指導画像を通じて言語障壁の多い外国人技能実習生への指導効率を向上させることができる。
【0022】
第8の態様に係る遠隔指導システムでは、作業者が携行する作業者端末と遠隔地の指導者により操作される遠隔指導管理装置とがネットワークを介して相互に接続された遠隔指導システムであって、前記作業者端末は、前記作業者の周囲を撮影可能な撮像部を有し、前記遠隔指導管理装置は、前記作業者端末の前記撮像部で撮影された撮影画像を表示可能な表示部と、予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信する閲覧管理制御部と、を有する。
【0023】
第8の態様によれば、作業者が携行する作業者端末と遠隔地の指導者により操作される遠隔指導管理装置とがネットワークを介して接続されている。遠隔指導管理装置では、作業者端末で撮影された作業者の周囲の撮影画像を表示部に表示することができる。指導者は、表示部を介して作業中の手元等を確認しながら作業者の習熟後を判断することができる。また、遠隔指導管理装置は、指導者が、予め登録された複数の指導画像の中から作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定すると、指定した指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を作業者端末へと送信する。これにより、作業者端末では、閲覧許可情報を用いて指定された指導画像を視ることができる。
【0024】
このようにして、専門性の高い技術の指導を行う場合や、外国人技能実習生等の言語障壁のある作業者に対する指導を行う場合でも、画像の閲覧によって作業の要点を分かりやすく伝えることができ、指導効率を向上させることができる。また、指導画像の閲覧には、遠隔指導管理装置から送信される閲覧許可情報が必要であるため、外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、不必要なノウハウの流出を防ぐことができる。
【0025】
第9の態様に係る遠隔指導システムでは、第8の態様において、前記作業者端末は、前記作業者のバイタルデータを取得する生体センサを有し、取得した前記バイタルデータが所定の閾値を超えた場合に、前記作業者端末及び前記遠隔指導管理装置を介して前記作業者及び前記指導者に対してアラートを通知する。
【0026】
第9の態様によれば、作業者端末の生体センサで検出されるバイタルデータを取得し、取得したバイタルデータが所定の閾値を超えると、作業者端末及び遠隔指導管理装置を介して作業者及び指導者に対してアラートを通知する。これにより、作業者の健康状態を考慮して、声掛けや指導内容の変更等の処置をすることができ、指導中における作業者の体調不良によるミスや事故等の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る遠隔指導管理装置及び遠隔指導システムによれば、ネットワークを介して遠隔地から作業者を指導する遠隔指導システムにおいて、指導効率を向上させつつ、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る遠隔指導システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る遠隔指導管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る作業者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る遠隔指導管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】指導項目設定部の機能を実現するためのデータテーブルの一例である。
【
図6】閲覧期間を設定するためのデータテーブルの一例である。
【
図7】閲覧期間を設定するためのデータテーブルの一例である。
【
図8】実施形態における学習フェーズを説明するためのブロック図である。
【
図9】作業者の作業内容を撮影した撮影画像の一例である。
【
図10】実施形態に係る作業者端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図11】実施形態における遠隔指導処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図12】(A)~(D)は第2作業者端末で実行されるアプリケーションソフトウエアの動作の一例である。
【
図13】実施形態における閲覧規制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態に係る遠隔指導管理装置10を含む遠隔指導システムSについて、図面を参照して説明する。
【0030】
図1に示されるように、本実施形態の遠隔指導システムSは、遠隔指導管理装置10、サーバ12、ウエアラブル端末14に接続された作業者端末16を含んで構成されている。そして、遠隔指導管理装置10、サーバ12及び作業者端末16は、ネットワークNによって接続されている。なお、ネットワークNには複数の作業者P1の携行する作業者端末16が接続されているが、
図1では説明の便宜上、一人の作業者P1の携行する一台の作業者端末16のみが図示されている。
【0031】
本実施形態の遠隔指導管理装置10は一例として、作業者のいる現場から離れた遠隔地に設置された制御装置である。
【0032】
また、サーバ12は、複数の指導画像を管理する管理者が保有するサーバである。このサーバ12には、複数の指導項目に対応付けられた複数の指導画像が登録(格納)されている。
【0033】
作業者端末16にはウエアラブル端末14が電気的に接続されている。このウエアラブル端末14は、一例として、ヘルメット型の本体部18を作業者P1の頭部に装着して使用される。また本体部18には、後述する撮像部54、音声入力部56、音声出力部58及び生体センサ60等が設けられており、本体部18を作業者P1の頭部に装着した状態で、作業者P1の周辺を撮影することができる。また、遠隔指導管理装置10を操作する指導者P2と音声通信を行うことができる。
【0034】
作業者P1の携行する作業者端末16は、一例として、スマートフォンやタブレット等の携行端末で構成されている。本実施形態の一例では、作業者端末16は遠隔指導管理装置10から送信される指導画像の閲覧許可情報を受信し、受信した閲覧許可情報によりサーバ12に格納された指導画像を閲覧することができる。
【0035】
ここで、本実施形態の遠隔指導システムSでは、ウエアラブル端末14で撮影された撮影画像が遠隔指導管理装置10へ送信され、遠隔指導管理装置10の表示部に表示される。遠隔地にいる指導者P2は、遠隔指導管理装置10の表示部36に表示された撮影画像を確認し、作業者の習熟度に応じた指導画像を指定して、作業者P1が作業者端末16を介して指導画像を閲覧することができるようにする。
【0036】
本実施形態では、上記遠隔指導システムSが、技能実習制度により受け入れられた外国人技能実習生の指導に用いられる例について説明する。即ち、サーバ12には外国人技能実習生に技能を習得させるための複数の指導画像が登録されている。また、作業者P1は、技能実習制度により受け入れられた外国人技能実習生である。
【0037】
外国人技能実習生により習得される技術の多くは、熟練の職人などの指導によって伝達される専門性の高い技術が多い。しかしながら、指導者と外国人技能実習生との間の言語障壁や技術指導にあたる職人の不足により、高品質な教育システムの確立が困難な実状がある。
【0038】
遠隔指導システムSでは、専門性の高い技術を有する指導者により、遠隔地から技術指導を行うことができる。これらの技術指導は、指導画像を効果的に利用することで、言語障壁の少ない有効な指導を行うことができる。また、指導効率を高めることで、ネットワークを介して同一の技能の習得に従事する複数の実習生を一人の指導者が同時に指導することが可能になるため、技術指導にあたる職人の不足という課題解決に寄与することが期待される。以下、各構成の詳細について説明する。
【0039】
(遠隔指導管理装置のハードウェア構成)
図2は、遠隔指導管理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図2に示されるように、遠隔指導管理装置10は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)20、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)24、ストレージ26、通信I/F(通信インタフェース)28及び入出力I/F(入出力インタフェース)30を含んで構成されている。各構成は、バス32を介して相互に通信可能に接続されている。
【0040】
CPU20は、本発明における「閲覧管理制御部」の一例である。CPU20は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20は、ROM22又はストレージ26からプログラムを読み出し、RAM24を作業領域としてプログラムを実行する。CPU20は、ROM22又はストレージ26に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0041】
ROM22は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM24は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM22又はストレージ26には、遠隔指導処理及び閲覧規制処理を行うためのプログラム及び各種データなどが格納されている。
【0042】
通信I/F28は、遠隔指導管理装置10がサーバ12、作業者端末16等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN(Controller Area Network)、イーサネット(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、FDDI(Fiber Distributed Data Interface)、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0043】
入出力I/F30は、操作部34、表示部36、音声入力部38、音声出力部39と電気的に接続されている。操作部34は、遠隔指導管理装置10に対して所定の指示を入力するための装置であり、例えば、マウス及びキーボードなどを含んで構成されている。本実施形態では、操作部34の操作により、サーバ12に予め登録された複数の指導画像の中から作業者端末16からの閲覧を許可する画像を指定することができる。
【0044】
表示部36は、遠隔指導管理装置10から出力された情報を表示するためのディスプレイなどの装置である。本実施形態では、ウエアラブル端末14の撮像部54で撮影された画像を作業者端末16から送信される。遠隔指導管理装置10では、作業者端末16から受信した撮影画像が表示部36に表示される。
【0045】
音声入力部38は、指導者P2の発した音声を集音するマイクである。音声出力部39は、作業現場にいる作業者P1から送信された音声を出力するスピーカで構成されている。音声入力部38及び音声出力部39は、インターコミュニケーションシステムを構成しており、作業者の携行するウエアラブル端末14と無線通信により音声データによる相互通信が可能となっている。
【0046】
(作業者端末16のハードウェア構成)
図3は、作業者端末16のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図3に示されるように、作業者端末16は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)70、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)74、ストレージ76、通信I/F(通信インタフェース)78及び入出力I/F(入出力インタフェー80を含んで構成されている。各構成は、バス82を介して相互に通信可能に接続されている。
【0047】
CPU70は、本発明における「送信制御部」の一例である。CPU70は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU70は、ROM72又はストレージ76からプログラムを読み出し、RAM74を作業領域としてプログラムを実行する。CPU70は、ROM72又はストレージ76に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0048】
ROM72は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM74は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ76は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本実施形態では、ROM72又はストレージ76には、各種処理を行うためのプログラム及び各種データなどが格納されている。
【0049】
通信I/F78は、作業者端末16が遠隔指導管理装置10、サーバ12及びウエアラブル端末14等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、CAN、イーサネット(登録商標)、LTE、FDDI、Wi-Fi(登録商標)などの規格が用いられる。
【0050】
入出力I/F80は、入力部86及び表示部88、ウエアラブル端末14に含まれる撮像部54、音声入力部56、音声出力部58及び生体センサ60と電気的に接続されている。入力部86は、作業者端末16に所定の指示を入力するための装置である。表示部88は、作業者端末16から出力された情報を表示するための装置である。本実施形態において、これらの入力部86及び表示部88は、一例として、公知のタッチパネルなどの装置により一体に構成されている。
【0051】
撮像部54は、作業者P1の周囲に向けられたカメラで構成されている。本実施形態の一例では、撮像部54は、ヘルメット型の本体部18の正面に設置され、作業者P1の目線の高さ位置に設けられている。撮像部54では、作業者P1の目線の先である前方を撮影可能となっており、作業中の作業者P1の手元を撮影することができる。
【0052】
音声入力部56は、作業者の発した音声を集音するマイクで構成されている。本実施形態の一例では、音声入力部56は、ヘルメット型の本体部18の側面に設置されている。音声出力部58は、遠隔地にいる指導者から送信された音声データを出力するスピーカで構成されている。音声入力部56及び音声出力部58は、インターコミュニケーションシステムを構成しており、指導者の操作する遠隔指導管理装置10と、無線通信により音声データによる相互通信が可能となっている。
【0053】
生体センサ60は、作業者P1のバイタルデータ(生体情報)を取得するセンサで構成されている。生体センサ60は、例えば、心拍センサ、体温センサ、モーションセンサ、視線検知用のカメラ、及び活動量計等の既知のセンサ類を含んでいる。
【0054】
なお、ウエアラブル端末14に含まれる撮像部54、音声入力部56、音声出力部58及び生体センサ60等の各構成は、通信I/F78を介した無線通信により作業者端末16に接続される構成としてもよい。
【0055】
(遠隔指導管理装置10の機能構成)
遠隔指導管理装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。遠隔指導管理装置10が実現する機能構成について
図4を参照して説明する。
【0056】
図4に示されるように、遠隔指導管理装置10は、機能構成としてデータ取得部210、指導画像指定部230、閲覧条件設定部240、閲覧許可情報送信部250及び品質判定部260を含んで構成されている。なお、各機能構成は、CPU20がROM22又はストレージ26に記憶されたプログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0057】
データ取得部210は、作業者について予め設定された指導スケジュールを取得する。この指導スケジュールは、
図5に示すように、例えば、作業者名(ユーザ名)、指導項目及び習得の有無が対応付けられたデータテーブルを保持し、このデータテーブルを参照して、作業者について、予定された又は候補となる指導項目を取得する。
【0058】
また、本実施形態では、データ取得部210が、ウエアラブル端末14で取得された作業者P1のバイタルデータに関するアラートを取得する機能を有する。
【0059】
指導画像指定部230は、取得した指導項目に関連する指導画像を遠隔指導管理装置10の表示部36に表示する。本実施形態の一例では、複数の指導項目と関連する指導画像を対応付けたテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して選定された指導項目に対応する指導画像の一覧を表示部36に表示する。指導者P2は、マウスやキーボードなどの操作部34を介して表示部36に表示された複数の指導画像の選択オブジェクトの中から作業者端末16からの閲覧を許可する画像のオブジェクトを指定する操作を行う。これにより、作業者端末16からの閲覧を許可する指導画像が指定される。
【0060】
閲覧条件設定部240は、操作部34で指定された指導画像について、閲覧条件を設定する。本実施形態の一例では、指導画像の閲覧期間を閲覧条件として設定する。
【0061】
閲覧期間は、例えば、作業者P1の雇用主と作業者P1の指導を受けた委託先との間で締結された指導契約期間として予め登録された期間でもよい。作業者P1の指導を受けた委託先は、本実施形態の場合、指導者P2や指導者P2が属し、指導者P2による遠隔指導サービスを提供する管理会社等である。指導契約期間を閲覧期間として設定すると、指導契約期間の満了後に雇用主等の会社に委託先のノウハウが流出することを防止する抑止力となる。この場合、予め登録された作業者(ユーザ名)と作業者の雇用主と指導委託先との間の指導契約期間とを対応付けたテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して指定された指導画像の閲覧期間を設定してもよい。
【0062】
閲覧期間は、作業者P2と雇用主との間で締結された就労契約期間として予め登録された期間であってもよい。例えば、作業者が外国人技能実習生である本実施例のように、所定の雇用主の下で契約期間の間のみ就労することが決まっている場合、就労契約期間に限り指導画像の閲覧を許可することで個別の作業者P1を介して就労後にノウハウが流出することを防止する抑止力となる。この場合、
図6に示すように、予め登録された作業者(ユーザ名)と就労契約期間とを対応付けたテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して指定された指導画像の閲覧期間を設定してもよい。
【0063】
また例えば、指導画像の閲覧期間は、作業内容に応じて予め登録された習得期間に基づいて設定してもよい。一例として、
図7に示すように、指導画像(動画タイトル)と習得期間とを対応付けたテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して指導画像の閲覧期間を設定してもよい。
【0064】
あるいは、閲覧期間は、指導者の入力操作等により、任意で決定した閲覧期間を設定してもよい。
【0065】
あるいは、作業者の位置条件を閲覧条件とし、所定のエリア内で作業者が作業する場合に閲覧を許可する構成としてもよい。
【0066】
また、閲覧条件設定部240は後述する閲覧規制処理を実行し、作業者P1が指導動画の閲覧条件を満たさない場合に閲覧許可情報を無効にする。
【0067】
閲覧許可情報送信部250は、操作部34で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を作業者端末16に送信する。例えば、閲覧許可情報送信部250は、予め指導画像と閲覧許可情報を対応付けたテーブルを保持しておき、このテーブルを参照して指定された指導画像の閲覧許可情報を送信する。
【0068】
ここで、指導画像の閲覧を可能にするための「閲覧情報の送信」は例えば、サーバ12に格納された指導画像に設定された視聴用のパスワードを作業者端末16に送信することである。もしくは、作業者端末16の表示部の画面上に、視聴を許可された画像が埋め込まれたURLにリンクした選択オブジェクト98を表示させるための指示コマンドの送信を「閲覧情報の送信」としてもよい。この場合、サーバ12に格納された指導画像が特定のドメインのみで再生できるように埋め込まれていることが好ましい。
【0069】
本実施形態の一例では、サーバ12に格納された指導画像の視聴用のパスワードが閲覧許可情報となっている。
【0070】
品質判定部260は、データ取得部210で取得された撮影画像に基づいて、指導項目に関する作業が規格内の品質であるか否かを判定する。
【0071】
ここで、本実施形態では、指導項目に関する作業が規格内の品質であるか否かを判定するように生成された学習済みモデルMに対してデータ取得部210で取得された撮影画像データと指導項目に対応する作業の規格として予め登録された規格情報を入力する。そして、学習済みモデルMの演算処理を実行することで、作業が規格内の品質であるか否かを判定する。
【0072】
本実施形態では、
図8に示すように、学習済みモデルMは、機械学習によって学習済みモデルMを生成する機能を有する学習部90で生成される。学習部90は、指導項目に対応する作業の規格情報と、指導項目に対応する作業が規格内の品質である状態を撮影した正解値の撮影画像とを対応付けた教師データを取得する。そして、取得した教師データに基づいて、指導項目に対応する作業の規格情報と作業者P1によって行われた作業内容を撮影した撮影画像データを入力した場合に、作業者P1によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する学習済みモデルMを生成する。
【0073】
なお、学習済みモデルMとしては、例えば、ディープニューラルネットワークが適用される。本実施形態の学習済モデルMは一例として、RNN(Recursive Neural Network)の一種であるLSTM(Long Short Term Memory)が適用されている。また、学習済みモデルMの生成には、例えば、誤差逆伝播法が用いられる。学習済みモデルMは、規格情報と作業者の作業を撮影した撮影画像データが入力された場合に、作業が規格内の品質であるか否かが出力されるように、ディープニューラルネットワークモデルを機械学習させることによって生成される。
【0074】
ここで、建築技能を指導する場合に、作業者が建築現場で行った作業内容の品質を評価する一例を具体的に説明する。例えば、建築現場での建築技能の指導では、作業者P1が実際に作業を行う建築現場に関する作業情報が「規格情報」として取得される。建築現場に関する作業情報には、建築物の設計情報、建築物の組み立てに使用される部品情報、各部品の表面に付される識別情報が含まれる。
【0075】
図9には、建築現場において作業者端末16によって撮影された作業内容の撮影画像300が示されている。品質判定部260は、撮影画像300の中央部に示される判定エリアX内に映り込んだ作業内容の品質を判定する。
【0076】
品質判定部260は、撮影画像300と建築現場に関する作業情報を取得する。品質判定部260は、撮影画像300中に映り込んだ建材(部品)の表面に付される識別コードD1,D2を認識する。そして、認識した識別コードと建築現場に関する作業情報に基づいて、建築物に対する作業者P1(即ち、作業場所)の位置を推定する。
【0077】
品質判定部260は、推定された作業者P1の位置に対応する作業情報を特定し、特定した作業情報と撮影画像300とを学習済みモデルMに入力する。撮影画像300の一例では、建物の柱301と梁302との固定作業の品質が判定されている。このような建物の骨格を成す建材の接続部分には、構造上必要とされる強度に対応して使用するビス303やブラケット304等の金物の規格が指定されている。例えば、ビス303は、規格に応じた色に着色することにより識別可能となっている。品質判定部260は、撮影画像300から推定されるビス303の色が作業情報に登録された規格のビスの色と適合するか否かによって、作業者P1によって行われた作業が規格内の作業であるか否かを判定することができる。
【0078】
又は、ブラケット304等の金物は、撮影画像300から推定されるサイズが作業情報に登録された規格のサイズと適合するか否かによって、作業者1によって行われた作業が規格内の作業であるか否かを判定することができる。なお、識別の態様は着色に限らず、形状やその他の識別可能な特徴の付加等で識別してもよく、これらの組み合わせにより識別してもよい。
【0079】
品質判定部260は、作業者P1によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定した判定結果を遠隔指導管理装置10の表示部36に表示させる。これにより、指導者は、作業者が習得した作業と未習得の作業とを効率的に把握することができる。
【0080】
(作業者端末16の機能構成)
作業者端末16は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。作業者端末16が実現する機能構成について
図10を参照して説明する。
【0081】
図10に示されるように、作業者端末16は、機能構成としてデータ取得部710、アラート通知部720及びデータ送信部730を含んで構成されている。なお、各機能構成は、一例として、CPU70がROM72又はストレージ76に記憶されたアプリケーションソフトウエアを読み出し、実行することにより実現される。
【0082】
データ取得部710は、ウエアラブル端末14の撮像部54で撮影された撮影画像を取得する。
【0083】
データ取得部710は、生体センサ60で検出した作業者P1のバイタルデータを取得する。また、データ取得部710は、ネットワークNを介して天候情報等、作業者P1の作業する現場の環境情報を取得してもよい。
【0084】
アラート通知部720は、データ取得部710で取得したバイタルデータが、所定の閾値を超える場合に、遠隔指導管理装置10及び作業者端末16を介して指導者P2及び作業者P1にアラートを通知する。この通知方法は公知の方法を適宜選択することができる。例えば、遠隔指導管理装置10及び作業者端末16の音声出力部40,58に警告音や警告メッセージ等の音声データを出力させてもよい。又は、遠隔指導管理装置10及び作業者端末16の表示部36,88に警告メッセージを文字情報で出力してもよい。
【0085】
なお、データ送信部730は、データ取得部710で取得した撮影画像を遠隔指導管理装置10へ送信する。
【0086】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0087】
(遠隔指導処理)
遠隔指導処理の流れの一例について、
図11に示されているシーケンス図を用いて説明する。なお、遠隔指導管理装置10における処理は、CPU20がデータ取得部210、指導画像指定部230、閲覧条件設定部240、閲覧許可情報送信部250及び品質判定部260として機能することにより実現される。
また、作業者端末16における処理は、CPU70がデータ取得部710、アラート通知部720及びデータ送信部730として機能することにより実現される。
【0088】
ステップS102では、作業者P1によって装着されるウエアラブル端末14の撮像部54で撮影が開始され、撮影された撮影画像データが作業者端末16からから遠隔指導管理装置10へ送信される。遠隔指導管理装置10では、表示部36に作業者端末16から受信した画像が表示される。遠隔地において遠隔指導管理装置10を操作する指導者P2は、表示部36を介して撮影画像を確認しながら作業者の周囲の状況を確認することができる。
【0089】
ステップS104では、遠隔指導管理装置10が、データ取得部210の機能に基づいて、作業者P1について予め設定された指導項目を選定する。
【0090】
ステップS106では、遠隔指導管理装置10が、指導画像指定部230の機能に基づいて、選定された指導項目に関連する指導画像の一覧を表示部36に表示させる。
【0091】
ステップS108では、指導者P2は、操作部34の操作により、複数の指導画像の中から作業者P1の指導に利用する指導画像を指定する。
【0092】
ステップS110では、遠隔指導管理装置10が、閲覧許可情報送信部250の機能に基づいて、指導者によって指定された指導画像の閲覧を許可する閲覧許可情報を作業者端末16に送信する。
【0093】
ステップS112では、作業者端末16でサーバ12へアクセスし、指導画像を閲覧する。具体的には、先ず、作業者端末16を操作する作業者が、指導画像を閲覧するためのアプリケーションソフトウエアを起動する。
【0094】
一例として、
図12(A)に示すように、作業者端末16の表示部88には、アプリケーション画面92が表示される。アプリケーション画面92には、ユーザ名と、ユーザ毎に割り当てられるログインパスワードを入力するテキストボックス94が表示されており、テキストボックスに対する作業者の入力によって、作業者毎に設定されたマイページ画面96を表示する(
図12(B)を参照)。
【0095】
図12(B)に示されるように、マイページ画面96には、遠隔地にいる指導者P2が指定した指導画像の選択オブジェクト98が表示される。作業者の操作により任意の選択オブジェクト98が選択されると、
図12(C)に示すように、作業者端末16は、サーバ12にアクセスし、選択した指導画像が埋め込まれた閲覧ページ97に移動する。この際、閲覧ページ97には、閲覧許可情報を入力するためのテキストボックス99が表示され、テキストボックス99に正しい閲覧許可情報が入力されるまでは、指導画像が表示されない。本実施形態では、閲覧許可情報として、画像閲覧用のパスワードの入力が求められる。作業者の操作によりテキストボックス99に閲覧許可情報が入力されると、
図12(D)に示すように指導画像Qが表示される。指導画像Qは、静止画でもよいし、動画でもよい。
【0096】
なお、本実施形態では、画像閲覧用のパスワードを閲覧許可情報として設定したが、これに限定されない。例えば、指導画像に閲覧用のパスワードを設定しなくてもよい。この場合、マイページ画面96に指導者P2から指定された指導画像の選択オブジェクト98を表示させる指示コマンドを閲覧許可情報としてもよい。即ち、遠隔指導管理装置10から作業者端末16へ、指定した指導画像の選択オブジェクト98を表示させる指示コマンドを送信することにより、閲覧許可情報を送信する構成としてもよい。
【0097】
ステップS114で、作業者P1は、作業者端末16で指導画像を閲覧する。その後、未習得の作業を現場で開始する(S116)。
【0098】
ステップS118で、作業者端末16で、アラート通知部720の機能によりバイタル監視処理を実行する。具体的に、アラート通知部720は、ウエアラブル端末14の生体センサ60で検出したバイタルデータを取得し、取得したバイタルデータが所定の閾値を超えたか否かについて判定する。そして、バイタルデータが所定の閾値を超えたと判定した場合に、遠隔指導管理装置10と作業者端末16を介して指導者P2及び作業者P1にアラートを通知する。これにより、作業者P1の健康状態に問題があることが推定される場合等に、休憩を促したり、指導項目を変更したりすることができる。また、作業者P1には、体調への注意を促すことができる。
【0099】
ステップS120では、作業者端末16は、データ送信部730の機能により、作業者P1によって行われた作業内容が撮影された撮影画像データを遠隔指導管理装置10へ送信する。作業内容が撮影された撮影画像データとは、例えば、作業者P1が作業を行う様子を撮影した動画や作業が完了した状態を撮影した静止画である。
【0100】
ステップS122では、遠隔指導管理装置10が、品質判定部20の機能により、品質判定処理を実行する。具体的には、学習済みモデルMに対してデータ取得部210で取得した規格情報と作業者端末16から受信した撮影画像とを入力し、学習済みモデルMの演算処理を実行することで、指導項目に関連する作業の品質が規格内であるか否かを判定する。
【0101】
また、品質判定処理による判定結果は、遠隔指導管理装置10の表示部36に表示される。これにより、指導者P2に作業者P1の習得度合いを認識させることができる。
【0102】
続くステップS124で、遠隔指導管理装置10による指導が終了すると、遠隔指導処理が終了する。
【0103】
(閲覧規制処理)
次に、作業者P1が指導者P2から閲覧を許可された指導画像の閲覧について、遠隔指導管理装置10で実行される閲覧規制処理の流れの一例について、
図13に示されているフローチャートを用いて説明する。この閲覧規制処理は、例えば、所定の時間的周期に基づいて遠隔指導管理装置10で実行される。
【0104】
なお、遠隔指導管理装置10における処理は、CPU20がデータ取得部210、指導画像指定部230、閲覧条件設定部240、閲覧許可情報送信部250及び品質判定260として機能することにより実現される。
【0105】
ステップS202で、CPU20は、指導者P2の指定により、作業者P1に閲覧を許可された指導画像の閲覧条件に関する情報を取得する。本実施形態の例では、閲覧条件として、各指導画像に閲覧期間が設定されている。
【0106】
ステップS204で、CPU20は、指導画像が閲覧条件を満たすか否かについて判定する。具体的に、本実施形態の例では、CPU20は、各指導画像について、予め設定された閲覧期間であるか否かについて判定する。例えば、全ての指導画像の閲覧期間が予め24時間に設定されている場合、作業者端末16で指導画像の閲覧が許可されてから24時間以内であるか否かについて判定する。CPU20は、閲覧条件を満たすと判定した場合、ステップS206の処理へ進む。一方、閲覧条件を満たさないと判定した場合、ステップS208の処理へ進む。
【0107】
ステップS206で、CPU20は、閲覧許可情報を有効にし、作業者端末16から所定の指導画像を閲覧することができる状態を維持して閲覧規制処理を終了する。
【0108】
一方、ステップS208で、CPU20は、閲覧許可情報を無効にし、作業者端末16から所定の指導画像を閲覧することができない状態にして閲覧規制処理を終了する。具体的にCPU20は、各指導画像に設定された視聴用のパスワードを自動更新して、作業者端末16に送信したパスワードを無効にして閲覧規制処理を終了する。
【0109】
なお、ステップS208で行われる無効化の処理は上記に限らない。例えば、作業者端末16に表示されるマイページ画面96から、閲覧条件を満たさない指導画像の選択オブジェクト98の表示を削除させる指示コマンドを遠隔指導管理装置10から作業者端末16へ送信して閲覧許可情報の無効化の手段としてもよい。
【0110】
以上のように、本実施形態に係る遠隔指導管理装置10は、作業者P1が携行するウエアラブル端末14及び作業者端末16とネットワークNを介して接続され、遠隔地から作業者P1の作業を指導する。この遠隔指導管理装置10では、ウエアラブル端末14で撮影された作業者P1の周囲の撮影画像を表示部36に表示することができる。指導者P2は、表示部36を介して作業中の手元等を確認しながら作業者P1の習熟後を判断することができる。また、遠隔指導管理装置10は、指導者P2が、予め登録された複数の指導画像の中から作業者端末16からの閲覧を許可する画像を指定すると、指定した指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を作業者端末16へ送信する。これにより、作業者端末16では、閲覧許可情報を用いて指定された指導画像を視ることができる。
【0111】
このようにして、専門性の高い技術の指導を行う場合や、外国人技能実習生等の言語障壁のある作業者に対する指導を行う場合でも、画像の閲覧によって作業の要点を分かりやすく伝えることができ、指導効率を向上させることができる。また、指導画像の閲覧には、遠隔指導管理装置10から送信される閲覧許可情報が必要であるため、外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【0112】
遠隔指導管理装置10は、指導画像データの閲覧可能期間を設定し、期間が経過すると、作業者端末16へ送信した閲覧許可情報を無効にする。これにより、必要な期間を指定して指導画像の閲覧を許可することができるため、外部への指導画像の流出を防ぐ抑止力となり、ノウハウの流出を防ぐことができる。
【0113】
また閲覧期間は、全ての指導画像について一律に設定されていてもよいし、指導者P2が任意に設定してもよい。作業者の雇用主と前記作業者の指導について委託を受けた委託先との間で締結された指導契約期間として予め登録された期間、雇用主と前記作業者との間で締結された就労契約期間、作業内容に応じた習得期間等に基づいて設定することもできる。
【0114】
遠隔指導管理装置10は、指導項目に対応する規格として予め登録された規格情報と作業者P1の周囲を撮影した撮影画像に基づいて、作業者P1によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。これにより、遠隔指導管理装置10を操作する指導者P2は、判定結果を参照することで、作業者P1の指導項目に関する習熟度を効率的に把握することができる。その結果、一人の指導者が複数人の作業者に対して同時に指導する場合であっても、各自の習熟度を的確に把握することができるため、一人の指導者が同時に対応できる人数を増やして、指導効率を高めることができる。
【0115】
また、本実施形態では、作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みモデルを用いて作業品質を判定することで、複雑な演算を必要とせずに高精度で作業品質を確認することができる。
【0116】
また、本実施形態の遠隔指導システムSを建築現場で作業する作業者P1への建築作業の指導に適用すると、指導項目は建築作業に関する指導項目であり、規格情報は、建築現場に関する作業情報とされる。そして、遠隔指導管理装置10では、撮影画像中に映り込んだ建材の認識番号に基づいて、建築現場における作業者P1の位置を推定する。そして、推定された位置に対応する作業情報に基づいて、作業者P1によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する。これにより、現場ごとに作業内容が異なる建築作業の指導においても、作業者P1の指導項目に関する習熟度を効率的に把握することができる。
【0117】
また、本実施形態の遠隔指導システムSでは、作業者端末16の生体センサ60で検出される作業者P1のバイタルデータを取得し、取得したバイタルデータが所定の閾値を超えると、作業者端末16及び遠隔指導管理装置10を介して作業者P1及び指導者P2に対してアラートを通知する。これにより、作業者P1の健康状態を考慮して、声掛けや指導内容の変更等の処置をすることができ、指導中における作業者P1の体調不良によるミスや事故等の発生を回避することができる。
【0118】
[補足説明]
【0119】
以上、実施形態に係る遠隔指導管理装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、作業者端末16に作業者によって作業者の装着するウエアラブル端末14が接続される構成としたが、本開示はこれに限らない。ウエアラブル端末14と作業者端末16のハードウェア構成を一つの作業者端末で構成してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、複数の指導画像が予めサーバ12に格納される構成としたが、これに限らない。複数の指導画像を遠隔指導管理装置10に格納してもよい。
【0121】
さらに、上記実施形態では、品質判定部260は、学習済みモデルMに対して撮影画像データなどを入力し、学習済みモデルMの演算処理を実行することで、作業品質を判定したが、これに限定されない。作業の品質が規格内であるか否かについての判断は、指導者P2の目視で行い、目視による判断結果を入力してもよい。また、学習済みモデルMを用いずに作業品質を推定してもよい。この場合、取得した撮影画像の画像解析により作業内容の規格に関する特徴点を抽出し、規格情報を参照して規格内の品質か否かを判定する構成としてもよい。
【0122】
また、上記実施形態の指導画像では、外国人技能実習生の指導を目的としたが、これに限らない。医療技術や美容技術等の各種技能の指導に利用することができる。
【0123】
さらに、上記実施形態でCPU20,70がプログラムを読み込んで実行した処理を、CPU20,70以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上記処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせで実行してもよく、例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0124】
さらに、上記実施形態では、ストレージ26,46,76に種々のデータを記憶させる構成としたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体を記憶部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラム及びデータなどが格納されることとなる。
【符号の説明】
【0125】
S 遠隔指導システム
10 遠隔指導管理装置
14 第1作業者端末(作業者端末)
16 第2作業者端末(作業者端末)
20 ECU(閲覧管理制御部)
36 表示部
34 操作部
70 ECU(送信制御部)
54 撮像部
【手続補正書】
【提出日】2022-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の作業を遠隔地から指導する遠隔指導システムにおいて、指導者により操作される遠隔指導管理装置であって、
前記遠隔指導管理装置は、前記作業者が携行する作業者端末とネットワークを介して相互に接続され、
前記作業者端末で撮影された前記作業者の周囲の撮影画像を前記指導者に向けて表示可能な表示部と、
前記表示部を介して前記撮影画像を確認した前記指導者による入力操作が可能とされ、当該入力操作に基づいて、予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、
前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信し、前記操作部で指定された指導画像について、閲覧可能期間を設定し、当該閲覧可能期間が経過した場合に、前記閲覧許可情報を無効にする閲覧管理制御部と、
を有する、遠隔指導管理装置。
【請求項2】
前記閲覧可能期間は、前記作業者の雇用主と前記作業者の指導について委託を受けた委託先との間で締結された指導契約期間として予め登録された期間、前記雇用主と前記作業者との間で締結された就労契約期間として予め登録された期間及び作業内容に応じた習得期間として予め登録された期間のうち少なくとも一つに基づいて設定される、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項3】
前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応する規格として予め登録された規格情報と前記撮影画像に基づいて、前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項4】
前記閲覧管理制御部は、指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定するための機械学習を行った学習済みモデルに対して前記規格情報と前記撮影画像を入力し、学習済みモデルの処理を実行することで指導項目に対応して前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項3に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項5】
前記指導項目は建築作業に関する指導項目であり、
前記規格情報は、建築現場に関する作業情報であり、
前記閲覧管理制御部は、前記撮影画像中に映り込んだ建材の認識番号に基づいて建築現場における前記作業者の位置を推定し、推定された位置に対応する前記作業情報に基づいて前記作業者によって行われた作業が規格内の品質であるか否かを判定する、請求項3に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項6】
前記作業者は技能実習制度により受け入れられた外国人技能実習生であり、
前記指導画像は、前記外国人技能実習生に技能を習得させるための指導画像である、請求項1に記載の遠隔指導管理装置。
【請求項7】
作業者が携行する作業者端末と遠隔地の指導者により操作される遠隔指導管理装置とがネットワークを介して相互に接続された遠隔指導システムであって、
前記作業者端末は、前記作業者の周囲を撮影可能な撮像部を有し、
前記遠隔指導管理装置は、前記作業者端末の前記撮像部で撮影された撮影画像を前記指導者に向けて表示可能な表示部と、
前記表示部を介して前記撮影画像を確認した前記指導者による入力操作が可能とされ、当該入力操作に基づいて、予め登録された複数の指導画像の中から前記作業者端末からの閲覧を許可する画像を指定可能な操作部と、
前記操作部で指定された指導画像の閲覧を可能にする閲覧許可情報を前記作業者端末へ送信し、前記操作部で指定された指導画像について、閲覧可能期間を設定し、当該閲覧可能期間が経過した場合に、前記閲覧許可情報を無効にする閲覧管理制御部と、を有する、遠隔指導システム。
【請求項8】
前記作業者端末は、前記作業者のバイタルデータを取得する生体センサを有し、
取得した前記バイタルデータが所定の閾値を超えた場合に、前記作業者端末及び前記遠隔指導管理装置を介して前記作業者及び前記指導者に対してアラートを通知する、請求項7に記載の遠隔指導システム。