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  • 特開-銀含有組成物及び金属製部材接合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021290
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】銀含有組成物及び金属製部材接合体
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/052 20220101AFI20240208BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20240208BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240208BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20240208BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20240208BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALN20240208BHJP
【FI】
B22F1/052
B32B15/01 E
C09D11/02
B22F1/00 K
B22F9/24 E
B22F7/08 C
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124014
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】森 昭仁
【テーマコード(参考)】
4F100
4J039
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB01C
4F100AB12
4F100AB17D
4F100AB24A
4F100AB24B
4F100AB24C
4F100AD08E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DE01B
4F100EH462
4F100EH46B
4F100EH712
4F100EH71A
4F100EH71C
4F100EJ202
4F100EJ422
4F100EJ48B
4J039BC09
4J039BC19
4J039BE01
4J039CA07
4J039EA24
4J039FA01
4J039GA11
4K017AA03
4K017BA02
4K017CA07
4K017CA08
4K017DA01
4K017DA07
4K017EJ02
4K017FB03
4K017FB07
4K018AA02
4K018BA01
4K018BB04
4K018BB05
4K018BD04
4K018CA02
4K018CA33
4K018DA22
4K018DA31
4K018DA32
4K018JA36
4K018KA33
(57)【要約】
【課題】銀焼結体を形成し、銀焼結体を介在させて金属製部材同士を接合可能な銀含有組成物であって、銀焼結体の厚さを厚くしても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造可能な銀含有組成物の提供。
【解決手段】平均粒子径が1~11μmの第1銀粒子と、平均粒子径が0.5~0.85μmの第2銀粒子と、1次粒子径が1~100nmで平均2次粒子径が1μm以下の第3銀粒子とを含有する銀含有組成物であって、銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対して、第1銀粒子の含有量の割合が0~40質量%、第2銀粒子の含有量の割合が30~75質量%、第3銀粒子の含有量の割合が14~60質量%、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量の割合が60質量%以上であり、第3銀粒子が、β-ケトカルボン酸銀(1)のギ酸による還元で得られる、銀含有組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀含有組成物であって、
前記銀含有組成物は、平均粒子径が1~11μmの第1銀粒子と、平均粒子径が0.5~0.85μmの第2銀粒子と、1次粒子径が1~100nmであり、かつ平均2次粒子径が1μm以下である第3銀粒子と、を含有し、
前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子の含有量の割合が、0~40質量%であり、
前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第2銀粒子の含有量の割合が、30~75質量%であり、
前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第3銀粒子の含有量の割合が、14~60質量%であり、
前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子と、前記第2銀粒子と、前記第3銀粒子と、の合計含有量の割合が、60質量%以上であり、
前記第3銀粒子が、下記一般式(1)
【化1】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基であり;
は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
で表わされるβ-ケトカルボン酸銀を、ギ酸によって還元することで得られた銀粒子である、銀含有組成物。
【請求項2】
前記銀含有組成物が、さらに、脂肪酸及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、請求項1に記載の銀含有組成物。
【請求項3】
前記銀含有組成物において、前記第1銀粒子及び第2銀粒子の合計含有量に対する、前記脂肪酸及びポリエチレングリコールの合計含有量の割合が、0.5~3質量%である、請求項2に記載の銀含有組成物。
【請求項4】
金属製部材接合体であって、
前記金属製部材接合体は、金属製の第1部材と、金属製の第2部材と、が銀焼結体によって接合されて構成され、
前記銀焼結体が、請求項1~3のいずれか一項に記載の銀含有組成物を用いて形成されたものである、金属製部材接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀含有組成物及び金属製部材接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造には、金属製部材同士の接合が伴い、従来はハンダによる接合が汎用されてきた。これに対して、金属粒子を含有する金属含有組成物を用い、金属粒子を焼成することによって形成した金属焼結体により、金属製部材同士を接合する技術が開示されている。
【0003】
例えば、特定範囲のカルボン酸銀と、アミン化合物と、ギ酸と、が配合されてなる銀インク組成物を用いて、この銀インク組成物から金属銀を形成するとともに、この金属銀によって金属製部材同士を接合する技術が開示されている(特許文献1参照)。この銀インク組成物は、前記カルボン酸銀から生成した銀粒子を含有する銀含有組成物であり、この銀インク組成物を加熱し、銀粒子を焼成することによって、銀焼結体(金属銀)が形成され、この銀焼結体によって、金属製部材同士を高い強度で接合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-193318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、特許文献1で開示されている銀インク組成物を用いた場合には、銀焼結体(金属銀)の厚さを厚くするのに限界があった。銀焼結体の厚さを厚くするためには、銀粒子の含有量が多い銀含有組成物を用いることが考えられるが、単純に銀粒子の含有量を増やしただけでは、形成された銀焼結体の平常時の接合強度が低くなったり、平常時の接合強度が高くても、温度変化が大きい環境下に置かれたときの接合強度が低く、熱衝撃耐性が低くなることがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、銀焼結体を形成するための銀含有組成物であって、前記銀焼結体を介在させて金属製部材同士を接合可能であり、前記銀焼結体の厚さを厚くしても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造可能な銀含有組成物と、前記金属製部材接合体と、を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 銀含有組成物であって、前記銀含有組成物は、平均粒子径が1~11μmの第1銀粒子と、平均粒子径が0.5~0.85μmの第2銀粒子と、1次粒子径が1~100nmであり、かつ平均2次粒子径が1μm以下である第3銀粒子と、を含有し、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子の含有量の割合が、0~40質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第2銀粒子の含有量の割合が、30~75質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第3銀粒子の含有量の割合が、14~60質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子と、前記第2銀粒子と、前記第3銀粒子と、の合計含有量の割合が、60質量%以上であり、前記第3銀粒子が、下記一般式(1)
【0008】
【化1】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基であり;
は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
で表わされるβ-ケトカルボン酸銀を、ギ酸によって還元することで得られた銀粒子である、銀含有組成物。
【0009】
[2] 前記銀含有組成物が、さらに、脂肪酸及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上を含有する、[1]に記載の銀含有組成物。
[3] 前記銀含有組成物において、前記第1銀粒子及び第2銀粒子の合計含有量に対する、前記脂肪酸及びポリエチレングリコールの合計含有量の割合が、0.5~3質量%である、[2]に記載の銀含有組成物。
[4] 金属製部材接合体であって、前記金属製部材接合体は、金属製の第1部材と、金属製の第2部材と、が銀焼結体によって接合されて構成され、前記銀焼結体が、[1]~[3]のいずれか一項に記載の銀含有組成物を用いて形成されたものである、金属製部材接合体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、銀焼結体を形成するための銀含有組成物であって、前記銀焼結体を介在させて金属製部材同士を接合可能であり、前記銀焼結体の厚さを厚くしても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造可能な銀含有組成物と、前記金属製部材接合体と、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る金属製部材接合体の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る銀含有組成物を用いた、金属製部材接合体の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る銀含有組成物を用いた、金属製部材接合体の製造方法の他の例を、模式的に説明するための断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る銀含有組成物を用いた、金属製部材接合体の製造方法のさらに他の例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<銀含有組成物>>
本発明の一実施形態に係る銀含有組成物は、平均粒子径が1~11μmの第1銀粒子と、平均粒子径が0.5~0.85μmの第2銀粒子と、1次粒子径が1~100nmであり、かつ平均2次粒子径が1μm以下である第3銀粒子と、を含有し、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子の含有量の割合が、0~40質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第2銀粒子の含有量の割合が、30~75質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第3銀粒子の含有量の割合が、14~60質量%であり、前記銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子と、前記第2銀粒子と、前記第3銀粒子と、の合計含有量の割合が、60質量%以上であり、前記第3銀粒子が、下記一般式(1)
【0013】
【化2】
(式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基であり;
はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基であり;Rは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~16の脂肪族炭化水素基であり;R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基であり;Rは炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であり;
はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基であり;
は、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基である。)
で表わされるβ-ケトカルボン酸銀を、ギ酸によって還元することで得られた銀粒子である。
本実施形態の銀含有組成物は、金属製部材同士を接合可能な銀焼結体を形成できる。
本実施形態の銀含有組成物は、前記第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子を、それぞれ特定範囲の含有量で含有し、さらに、これらの合計含有量が特定値以上であることで、銀焼結体を介在させて金属製部材同士を接合したときに、銀焼結体の厚さを厚くしても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、温度変化が大きい環境下に置かれたときも銀焼結体の接合強度が高い、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる。
【0014】
<第1銀粒子>
第1銀粒子の平均粒子径は、1~11μmであり、例えば、1~8μm、及び1~5μmのいずれかであってもよいし、4~11μm、及び7~11μmのいずれかであってもよいし、4~8μmであってもよい。
【0015】
本明細書においては、第1銀粒子及び第2銀粒子の場合に限らず、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定によって測定された、粒子の体積基準での50%累積時の粒子径(別名:D50)を意味する。
【0016】
第1銀粒子は、その平均粒子径が1~11μmであれば、その種類は特に限定されない。例えば、製造方法の観点では、第1銀粒子としては、水アトマイズ法、化学還元法等の公知の方法で製造されたものが挙げられる。
【0017】
第1銀粒子のタップ密度は、特に限定されないが、3~7mg/mであることが好ましく、4~6mg/mであることがより好ましい。第1銀粒子のタップ密度がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0018】
銀粒子に限らず、粒子のタップ密度は、例えば、JIS Z 2512:2012に準拠して測定できる。
【0019】
第1銀粒子の比表面積は、特に限定されないが、0.08~1.3m/gであることが好ましく、0.1~1.1m/gであることがより好ましい。第1銀粒子の比表面積がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0020】
銀粒子に限らず、粒子の比表面積は、例えば、透過法、窒素等の気体分子を利用する気体吸着法等の、公知の方法で測定できる。
【0021】
第1銀粒子の結晶子径は、特に限定されないが、10~250nmであることが好ましく、20~230nmであることがより好ましい。第1銀粒子の結晶子径がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0022】
銀粒子に限らず、粒子の結晶子径は、公知の方法で求められる。例えば、粒子をX線回折測定に供し、得られたX線回折プロファイルのうち、最も強度が強い結晶面のピークに関し、シェラー(Scherrer)の式「D=kλ/βcosθ(式中、Dは結晶子径(nm)であり;kはシェラー定数であり;λはX線の波長であり;βはピーク半値幅(rad)であり;θは測定角度の1/2の角度(すなわちブラッグ角)である。)」を用いることで、結晶子径を算出できる。
【0023】
銀含有組成物が含有する第1銀粒子(銀含有組成物において配合される第1銀粒子)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0024】
<第2銀粒子>
第2銀粒子の平均粒子径は、0.5~0.85μmであり、例えば、0.5~0.65μmであってもよいし、0.65~0.85μmであってもよい。
【0025】
第2銀粒子は、その平均粒子径が0.5~0.85μmであれば、その種類は特に限定されない。例えば、製造方法の観点では、第2銀粒子としては、化学還元法等の公知の方法で製造されたものが挙げられる。
【0026】
第2銀粒子のタップ密度は、特に限定されないが、2~6mg/mであることが好ましく、3~5mg/mであることがより好ましい。第2銀粒子のタップ密度がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0027】
第2銀粒子の比表面積は、特に限定されないが、0.8~2.3m/gであることが好ましく、1.1~2m/gであることがより好ましい。第2銀粒子の比表面積がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0028】
第2銀粒子の結晶子径は、特に限定されないが、5~45nmであることが好ましく、15~35nmであることがより好ましい。第2銀粒子の結晶子径がこのような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0029】
銀含有組成物が含有する第2銀粒子(銀含有組成物において配合される第2銀粒子)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0030】
<第3銀粒子>
第3銀粒子の1次粒子径は、1~100nmであり、1~70nmであることが好ましく、1~40nmであることがより好ましく、例えば、1~25nm、及び1~10nmのいずれかであってもよいし、15~40nm、及び30~40nmのいずれかであってもよいし、15~25nmであってもよい。
【0031】
第3銀粒子の平均2次粒子径は、1μm以下であり、800nm以下であることが好ましく、例えば、700nm以下、500nm以下、及び300nm以下のいずれかであってもよい。
一方、第3銀粒子の平均2次粒子径は、100nm以上であることが好ましい。
一実施形態において、第3銀粒子の平均2次粒子径は、100nm~1μm、100~800nm、100~700nm、100~500nm、及び100~300nmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、第3銀粒子の平均2次粒子径の一例である。
【0032】
本明細書において、「銀粒子の平均2次粒子径」とは、特に断りのない限り、実施例で後述するように、銀含有組成物の凍結破断を行い、これにより得られた凍結破断物の破断面を観察したときに測定した各銀粒子凝集体の最大径の合計値を、前記最大径を測定した銀粒子凝集体の総数で除することにより得られた、前記最大径の平均値を意味する。最大径を測定する銀粒子凝集体の数は、50~100個であることが好ましい。
「銀粒子の1次粒子径」は、実施例で後述するように、前記破断面における銀粒子凝集体を観察することで、求められる。
【0033】
第3銀粒子は、前記一般式(1)で表わされるβ-ケトカルボン酸銀(本明細書においては、「β-ケトカルボン酸銀(1)」と称することがある)を、ギ酸によって還元することで得られた銀粒子である。このような特定の方法で製造されることで、第3銀粒子は、その1次粒子径が1~100nmであり、かつその平均2次粒子径が1μm以下となる。
以下、第3銀粒子の製造方法について、より詳細に説明する。
【0034】
[第3銀粒子の製造方法]
第3銀粒子は、前記β-ケトカルボン酸銀(1)を、ギ酸によって還元することで製造でき、含窒素化合物の共存下で、β-ケトカルボン酸銀(1)を、ギ酸によって還元することで製造することが好ましい。
そのためには、β-ケトカルボン酸銀(1)と、ギ酸と、を配合すればよく、さらに前記含窒素化合物を配合することが好ましい。
【0035】
この場合には、第3銀粒子以外に、β-ケトカルボン酸銀(1)の銀以外の分解物、含窒素化合物の反応物(別種の含窒素化合物)等の、配合成分の分解物及び反応物等が生じる。
【0036】
○β-ケトカルボン酸銀(1)
β-ケトカルボン酸銀(1)は、前記一般式(1)で表される。
式中、Rは1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基若しくはフェニル基、水酸基、アミノ基、又は一般式「R-CY -」、「CY -」、「R-CHY-」、「RO-」、「RN-」、「(RO)CY-」若しくは「R-C(=O)-CY -」で表される基である。
【0037】
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状(脂肪族環式基)のいずれであってもよく、環状である場合、単環状及び多環状のいずれであってもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基及び不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。そして、前記脂肪族炭化水素基は、炭素数が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。Rにおける好ましい前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
【0038】
Rにおける直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、3-エチルブチル基、1-エチル-1-メチルプロピル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、4-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、1-メチルヘプチル基、2-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、4-メチルヘプチル基、5-メチルヘプチル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、1,1-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、1,2,3-トリメチルペンチル基、1,2,4-トリメチルペンチル基、2,3,4-トリメチルペンチル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1,4,4-トリメチルペンチル基、3,4,4-トリメチルペンチル基、1,1,2-トリメチルペンチル基、1,1,3-トリメチルペンチル基、1,1,4-トリメチルペンチル基、1,2,2-トリメチルペンチル基、2,2,3-トリメチルペンチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,3,3-トリメチルペンチル基、2,3,3-トリメチルペンチル基、3,3,4-トリメチルペンチル基、1-プロピルペンチル基、2-プロピルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
Rにおける環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
【0039】
Rにおける前記アルケニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が二重結合(C=C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルケニル基としては、例えば、ビニル基(エテニル基、-CH=CH)、アリル基(2-プロペニル基、-CH-CH=CH)、1-プロペニル基(-CH=CH-CH)、イソプロペニル基(-C(CH)=CH)、1-ブテニル基(-CH=CH-CH-CH)、2-ブテニル基(-CH-CH=CH-CH)、3-ブテニル基(-CH-CH-CH=CH)、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基等が挙げられる。
【0040】
Rにおける前記アルキニル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基の炭素原子間の1個の単結合(C-C)が三重結合(C≡C)に置換された基等が挙げられる。
このような前記アルキニル基としては、例えば、エチニル基(-C≡CH)、プロパルギル基(-CH-C≡CH)等が挙げられる。
【0041】
Rにおける炭素数1~20の脂肪族炭化水素基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。また、前記脂肪族炭化水素基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての置換基が同一であってもよいし、すべての置換基が異なっていてもよく、一部の置換基のみが異なっていてもよい。
【0042】
Rにおけるフェニル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、炭素数が1~16の飽和又は不飽和の一価の脂肪族炭化水素基、前記脂肪族炭化水素基が酸素原子に結合してなる一価の基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、水酸基(-OH)、シアノ基(-C≡N)、フェノキシ基(-O-C)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
置換基である前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0043】
RにおけるYは、それぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、臭素原子又は水素原子である。そして、一般式「R-CY -」、「CY -」及び「R-C(=O)-CY -」においては、それぞれ複数個のYは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0044】
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基又はフェニル基(C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、例えば、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~16の脂肪族炭化水素基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~16である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるR及びRは、それぞれ独立に炭素数1~18の脂肪族炭化水素基である。すなわち、R及びRは、互いに同一でも異なっていてもよく、R及びRにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~18である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
RにおけるRは、炭素数1~19の脂肪族炭化水素基、水酸基又は式「AgO-」で表される基である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~19である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0045】
Rは、上記の中でも、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、一般式「R-C(=O)-CY -」で表される基、水酸基又はフェニル基であることが好ましい。そして、Rは、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、水酸基又は式「AgO-」で表される基であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)において、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはベンジル基(C-CH-)、シアノ基、N-フタロイル-3-アミノプロピル基、2-エトキシビニル基(C-O-CH=CH-)、又は一般式「RO-」、「RS-」、「R-C(=O)-」若しくは「R-C(=O)-O-」で表される基である。
における炭素数1~20の脂肪族炭化水素基としては、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0047】
におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
におけるフェニル基及びベンジル基は、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよい。好ましい前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ニトロ基(-NO)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びベンジル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
におけるRは、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、チエニル基(CS-)、又は1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基若しくはジフェニル基(ビフェニル基、C-C-)である。Rにおける前記脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数が1~10である点以外は、Rにおける前記脂肪族炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、Rにおけるフェニル基及びジフェニル基が有する前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)等が挙げられる。置換基を有する前記フェニル基及びジフェニル基において、前記置換基の数及び位置は特に限定されない。そして、置換基の数が複数である場合、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
がチエニル基又はジフェニル基である場合、これらの、Xにおいて隣接する基又は原子(酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基)との結合位置は、特に限定されない。例えば、チエニル基は、2-チエニル基及び3-チエニル基のいずれであってもよい。
【0049】
一般式(1)において、2個のXは、2個のカルボニル基で挟まれた炭素原子と二重結合を介して1個の基として結合していてもよい。このようなXとしては、例えば、式「=CH-C-NO」で表される基等が挙げられる。
【0050】
は、上記の中でも、水素原子、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、ベンジル基、又は一般式「R-C(=O)-」で表される基であることが好ましく、少なくとも一方のXが水素原子であることが好ましい。
【0051】
β-ケトカルボン酸銀(1)は、2-メチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、アセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-エチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCH)-C(=O)-OAg)、プロピオニル酢酸銀(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、カプロイル酢酸銀(CH(CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-n-ブチルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CHCHCHCH)-C(=O)-OAg)、2-ベンジルアセト酢酸銀(CH-C(=O)-CH(CH)-C(=O)-OAg)、ベンゾイル酢酸銀(C-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、ピバロイルアセト酢酸銀((CHC-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、イソブチリルアセト酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)、2-アセチルピバロイル酢酸銀((CHC-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、2-アセチルイソブチリル酢酸銀((CHCH-C(=O)-CH(-C(=O)-CH)-C(=O)-OAg)、又はアセトンジカルボン酸銀(AgO-C(=O)-CH-C(=O)-CH-C(=O)-OAg)であることが好ましい。
【0052】
第3銀粒子の製造時に用いるβ-ケトカルボン酸銀(1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0053】
○ギ酸
第3銀粒子の製造時において、ギ酸の配合量は、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり、0.2~5モルであることが好ましく、0.3~3モルであることがより好ましく、例えば、0.4~2モル、及び0.4~1モルのいずれかであってもよい。前記配合量が、このような範囲であることで、第3銀粒子の収率がより高くなる。
【0054】
○含窒素化合物
前記含窒素化合物としては、例えば、炭素数25以下のアミン化合物が挙げられる。
【0055】
前記アミン化合物は、炭素数が1~25であり、第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミンのいずれであってもよい。
前記アミン化合物は、鎖状及び環状のいずれであってもよい。
前記アミン化合物において、アミン部位を構成する窒素原子(例えば、第1級アミンの場合には、アミノ基(-NH)を構成する窒素原子)の数は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、アミン化合物中の、アミン部位を構成する窒素原子の位置も、特に限定されない。
【0056】
前記第1級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいモノアルキルアミン、モノアリールアミン、モノ(ヘテロアリール)アミン、ジアミン等が挙げられる。
【0057】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、このようなアルキル基としては、例えば、Rにおける前記アルキル基と同様のものが挙げられる。前記アルキル基は、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。
好ましい前記モノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン(2-アミノヘプタン)、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン等が挙げられる。
【0058】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。前記アリール基の炭素数は、6~10であることが好ましい。
【0059】
前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、芳香族環骨格を構成する原子として、ヘテロ原子を有するものであり、前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ホウ素原子等が挙げられる。また、芳香族環骨格を構成する前記へテロ原子の数は特に限定されず、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。2個以上である場合、これらへテロ原子は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、これらへテロ原子は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部だけ異なっていてもよい。
前記ヘテロアリール基は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されないが、3~12員環であることが好ましい。
【0060】
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~4個有する単環状のものとしては、例えば、ピロリル基、ピロリニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジニル基、ピペラジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、フラニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1個有する単環状のものとしては、例えば、チエニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、モルホリニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する単環状のものとしては、例えば、チアゾリル基、チアジアゾリル基、チアゾリジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、3~8員環であることが好ましく、5~6員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、窒素原子を1~5個有する多環状のものとしては、例えば、インドリル基、イソインドリル基、インドリジニル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、インダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、テトラゾロピリジル基、テトラゾロピリダジニル基、ジヒドロトリアゾロピリダジニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ジチアナフタレニル基、ベンゾチオフェニル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、酸素原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
前記ヘテロアリール基で、硫黄原子を1~2個及び窒素原子を1~3個有する多環状のものとしては、例えば、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基等が挙げられ、このようなヘテロアリール基は、7~12員環であることが好ましく、9~10員環であることがより好ましい。
【0061】
前記ジアミンは、アミノ基を2個有していればよく、2個のアミノ基の位置関係は特に限定されない。好ましい前記ジアミンとしては、例えば、前記モノアルキルアミン、モノアリールアミン又はモノ(ヘテロアリール)アミンにおいて、アミノ基(-NH)を構成する水素原子以外の1個の水素原子が、アミノ基で置換されたもの等が挙げられる。
前記ジアミンは炭素数が1~10であることが好ましく、より好ましいものとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン等が挙げられる。
【0062】
前記第2級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいジアルキルアミン、ジアリールアミン、ジ(ヘテロアリール)アミン等が挙げられる。
【0063】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
好ましい前記ジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン等が挙げられる。
【0064】
前記ジアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。また、ジアリールアミン一分子中の2個のアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0065】
前記ジ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基は、前記モノ(ヘテロアリール)アミンを構成するヘテロアリール基と同様であり、6~12員環であることが好ましい。また、ジ(ヘテロアリール)アミン一分子中の2個のヘテロアリール基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0066】
前記第3級アミンとしては、例えば、1個以上の水素原子が置換基で置換されていてもよいトリアルキルアミン、ジアルキルモノアリールアミン等が挙げられる。
【0067】
前記トリアルキルアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~19の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、トリアルキルアミン一分子中の3個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のアルキル基は、すべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。
好ましい前記トリアルキルアミンとして、具体的には、例えば、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0068】
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアルキル基は、前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基と同様であり、炭素数が1~6の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。また、ジアルキルモノアリールアミン一分子中の2個のアルキル基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記ジアルキルモノアリールアミンを構成するアリール基は、前記モノアリールアミンを構成するアリール基と同様であり、炭素数が6~10であることが好ましい。
【0069】
ここまでは、主に鎖状のアミン化合物について説明したが、前記アミン化合物は、アミン部位を構成する窒素原子が環骨格構造(複素環骨格構造)の一部であるようなヘテロ環化合物であってもよい。すなわち、前記アミン化合物は環状アミンであってもよい。この時の環(アミン部位を構成する窒素原子を含む環)構造は、単環状及び多環状のいずれであってもよく、その環員数(環骨格を構成する原子の数)も特に限定されず、脂肪族環及び芳香族環のいずれでもよい。
環状アミンで好ましいものとして、例えば、ピリジン等が挙げられる。
【0070】
前記第1級アミン、第2級アミン及び第3級アミン及び第4級アンモニウム塩において、「置換基で置換されていてもよい水素原子」とは、アミン部位を構成する窒素原子に結合している水素原子以外の水素原子である。この時の置換基の数は特に限定されず、1個であってもよいし、2個以上であってもよく、前記水素原子のすべてが置換基で置換されていてもよい。置換基の数が複数の場合には、これら複数個の置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数個の置換基はすべて同じであってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ異なっていてもよい。また、置換基の位置も特に限定されない。
【0071】
前記アミン化合物における前記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、トリフルオロメチル基(-CF)等が挙げられる。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0072】
前記モノアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基としてアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は置換基として好ましくは炭素数が1~5のアルキル基を有する、炭素数が3~7の環状のアルキル基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアルキルアミンとして、具体的には、例えば、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、2,3-ジメチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
また、置換基である前記アリール基及びアルキル基は、さらに1個以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。このようなハロゲン原子で置換された置換基を有するモノアルキルアミンとしては、例えば、2-ブロモベンジルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0073】
前記モノアリールアミンを構成するアリール基が置換基を有する場合、前記アリール基は、置換基としてハロゲン原子を有する、炭素数が6~10のアリール基であることが好ましい。このような置換基を有するモノアリールアミンとして、具体的には、例えば、ブロモフェニルアミン等が挙げられる。ここで、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0074】
前記ジアルキルアミンを構成するアルキル基が置換基を有する場合、前記アルキル基は、置換基として水酸基又はアリール基を有する、炭素数が1~9の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、このような置換基を有するジアルキルアミンとして、具体的には、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルベンジルアミン等が挙げられる。
【0075】
第3銀粒子の製造時に用いる前記含窒素化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0076】
前記アミン化合物は、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-へキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、3-アミノペンタン、3-メチルブチルアミン、2-ヘプチルアミン、2-アミノオクタン、2-エチルヘキシルアミン、2-フェニルエチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、N-メチル-n-ヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルベンジルアミン、ジ(2-エチルへキシル)アミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン又はN,N-ジメチルシクロヘキシルアミンであることが好ましい。
【0077】
第3銀粒子の製造時において、前記含窒素化合物の配合量は、β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量1モルあたり、0.1~5モルであることが好ましく、0.1~3モルであることがより好ましく、例えば、0.2~2モル、及び0.2~1モルのいずれかであってもよい。前記配合量が、このような範囲であることで、第3銀粒子の収率がより高くなる。
【0078】
○他の成分
第3銀粒子の製造時においては、β-ケトカルボン酸銀(1)と、ギ酸と、前記含窒素化合物と、のいずれにも該当しない他の成分を配合してもよい。
第3銀粒子の製造時に用いる前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0079】
第3銀粒子の製造時においては、配合成分の総量に対する、β-ケトカルボン酸銀(1)と、ギ酸と、前記含窒素化合物と、の合計配合量の割合(([β-ケトカルボン酸銀(1)の配合量(質量部)]+[ギ酸の配合量(質量部)]+[含窒素化合物の配合量(質量部)])/[配合成分の総量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、例えば、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、第3銀粒子の収率がより高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
第3銀粒子の製造時に前記含窒素化合物を配合しない場合、前記含窒素化合物の配合量は0質量部である。
【0080】
各成分(β-ケトカルボン酸銀(1)と、ギ酸と、必要に応じて前記含窒素化合物と、必要に応じて前記他の成分)の配合後は、得られたもの(本明細書においては、「中間組成物」と称することがある)から、第3銀粒子を単離して、銀含有組成物の製造に用いてもよいが、本実施形態においては、得られたもの(中間組成物)をそのまま銀含有組成物の製造に用いることが好ましい。すなわち、銀含有組成物の製造時には、第3銀粒子は前記中間組成物のまま混合物として用いることが好ましい。さらに、必要に応じて中間組成物に対して、公知の後処理操作又は精製操作を行い、得られたものを銀含有組成物の製造に用いてもよい。このように、第3銀粒子を中間組成物、中間組成物の後処理物、又は中間組成物の精製物として用いることで、銀含有組成物をより容易に製造できる。
【0081】
各成分の配合順序は、特に限定されない。前記含窒素化合物を用いる場合の各成分の好ましい配合方法の一例としては、前記含窒素化合物にβ-ケトカルボン酸銀(1)を加えて混合し、次いで、得られた混合物にギ酸を加えて混合する配合方法が挙げられる。
前記他の成分を配合する場合には、前記他の成分を、その種類に応じて適したタイミングで、配合できる。
【0082】
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0083】
各成分の配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、-5~60℃であることが好ましい。そして、配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節するとよい。
また、各成分の配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、10分~36時間であることが好ましい。
【0084】
各成分の配合により得られた、第3銀粒子を含有する前記中間組成物において、前記中間組成物の総質量に対する、第3銀粒子の含有量の割合([中間組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]/[中間組成物の総質量(質量部)]×100)は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、銀含有組成物をより容易に製造できる。
前記割合の上限値は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、前記割合が85質量%以下である中間組成物は、その取り扱い性がより良好である。
【0085】
銀含有組成物が含有する第3銀粒子(銀含有組成物において配合される第3銀粒子)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0086】
<第4銀粒子>
銀含有組成物は、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、のいずれにも該当しない第4銀粒子を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
前記第4銀粒子の一例としては、平均粒子径が0.08μm以上0.5μm未満の銀粒子が挙げられるが、第4銀粒子はこれに限定されない。
【0087】
第4銀粒子は、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、のいずれにも該当しない銀粒子であれば、その種類は特に限定されない。例えば、製造方法の観点では、第4銀粒子としては、化学還元法等の公知の方法で製造されたものが挙げられる。
【0088】
銀含有組成物が含有する第4銀粒子(銀含有組成物において配合される第4銀粒子)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0089】
<各銀粒子の含有量>
銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子の含有量の割合([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)])×100)(本明細書においては、「全銀粒子中の第1銀粒子の含有量(質量%)」と称することがある。)は、0~40質量%であり、例えば、0~30質量%、0~20質量%、及び0~10質量%のいずれかであってもよいし、10~40質量%、20~40質量%、及び30~40質量%のいずれかであってもよいし、10~30質量%であってもよい。前記割合(全銀粒子中の第1銀粒子の含有量(質量%))が、このような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる。
【0090】
銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子、第2銀粒子又は第3銀粒子の含有量の割合を算出するときに、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、第4銀粒子と、のいずれかを銀含有組成物が含有しない場合には、銀含有組成物のその銀粒子の含有量は0質量部である。
【0091】
銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第2銀粒子の含有量の割合([銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)])×100)(本明細書においては、「全銀粒子中の第2銀粒子の含有量(質量%)」と称することがある。)は、30~75質量%であり、例えば、30~65質量%、30~55質量%、及び30~45質量%のいずれかであってもよいし、40~75質量%、50~75質量%、及び60~75質量%のいずれかであってもよいし、40~65質量%、及び50~55質量%のいずれかであってもよい。前記割合(全銀粒子中の第2銀粒子の含有量(質量%))が、このような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる。
【0092】
銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第3銀粒子の含有量の割合([銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)])×100)(本明細書においては、「全銀粒子中の第3銀粒子の含有量(質量%)」と称することがある。)は、14~60質量%であり、例えば、14~50質量%、14~40質量%、及び14~30質量%のいずれかであってもよいし、25~60質量%、35~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよいし、25~50質量%、及び35~40質量%のいずれかであってもよい。前記割合(全銀粒子中の第3銀粒子の含有量(質量%))が、このような範囲であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる。
【0093】
銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、前記第1銀粒子と、前記第2銀粒子と、前記第3銀粒子と、の合計含有量の割合(([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)])/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)])×100)(本明細書においては、「全銀粒子中の第1~第3銀粒子の合計含有量(質量%)」と称することがある。)は、60質量%以上であり、例えば、70質量%以上、80質量%以上、及び90質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合(全銀粒子中の第1~第3銀粒子の合計含有量(質量%))が、前記下限値以上であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0094】
全銀粒子中の第1~第3銀粒子の合計含有量(質量%)が60質量%以上である、とは、銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第4銀粒子の含有量の割合([銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)]/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第4銀粒子の含有量(質量部)])×100)が、40質量%以下である、ことと同義である。
【0095】
<溶媒>
銀含有組成物は、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子以外に、溶媒を含有していることが好ましい。このような銀含有組成物は、液状とすることが容易であり、取り扱い性が良好である。
【0096】
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、溶質を溶解させるための、常温で液状の成分と、分散質を分散させるための分散媒として機能する、常温で液状の成分と、の両方を包含する概念である。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0097】
前記溶媒は、加熱条件下で除去(気化)可能なものであれば、特に限定されず、銀含有組成物中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子等の、溶媒以外の成分との反応性を有しないものが好ましい。
溶媒としては、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、グルタル酸モノメチル、グルタル酸ジメチル等のエステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の低分子量グリコール(炭素数6以下のグリコール)等が挙げられる。
なかでも、低分子量グリコールは、焼成による銀含有組成物からの銀焼結体の形成を促進する効果を有することがあり、特に好ましい溶媒である。
【0098】
銀含有組成物が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0099】
銀含有組成物が溶媒を含有する場合、銀含有組成物において、銀含有組成物の総質量に対する、溶媒の含有量の割合([銀含有組成物の溶媒の含有量(質量部)]/[銀含有組成物の総質量(質量部)]×100)は、0.5~2.5質量%であることが好ましく、0.7~1.9質量%であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、銀含有組成物の取り扱い性が良好になる、銀焼結体の形成を促進する効果が高くなる等の、溶媒を用いたことにより得られる効果が、より高くなる。前記割合が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0100】
<他の成分>
銀含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、第4銀粒子と、溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を含有していてもよい。前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
銀含有組成物が含有する前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
銀含有組成物が前記他の成分を含有する場合、銀含有組成物の前記他の成分の含有量は、前記他の成分の種類に応じて、適宜調節できる。
【0101】
銀含有組成物が含有する前記他の成分で好ましいものとしては、例えば、脂肪酸、ポリエチレングリコール(別名:ポリエチレンオキシド)、が挙げられる。すなわち、銀含有組成物は、さらに、脂肪酸及びポリエチレングリコールからなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることが好ましい。前記脂肪酸又はポリエチレングリコールを用いることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できることがある。
【0102】
前記脂肪酸は、飽和脂肪酸であることが好ましく、直鎖状飽和脂肪酸(カルボキシ基に結合しているアルキル基が直鎖状アルキル基である飽和脂肪酸)と、分岐鎖状飽和脂肪酸(カルボキシ基に結合しているアルキル基が分岐鎖状アルキル基である飽和脂肪酸)と、のいずれであってもよい。
【0103】
好ましい前記脂肪酸としては、例えば、デカン酸(別名:カプリン酸)、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸(別名:ラウリン酸)、トリデカン酸、テトラデカン酸(別名:ミリスチン酸)、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(別名:パルミチン酸)、ヘプタデカン酸(別名:マルガリン酸)、オクタデカン酸(別名:ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸(別名:アラキジン酸)等の、炭素数10~20の飽和脂肪酸(より具体的には、炭素数10~20の直鎖状飽和脂肪酸又は分岐鎖状飽和脂肪酸)が挙げられる。
【0104】
前記ポリエチレングリコールとしては、分子量200以上のポリエチレンオキシドが挙げられ、より具体的には、例えば、ポリエチレングリコール300(PEG300)、ポリエチレングリコール400(PEG400)、ポリエチレングリコール600(PEG600)等が挙げられる。
【0105】
銀含有組成物が、脂肪酸及びポリエチレングリコールのいずれか一方又は両方を含有する場合、銀含有組成物において、第1銀粒子及び第2銀粒子の合計含有量に対する、脂肪酸及びポリエチレングリコールの合計含有量の割合(([銀含有組成物の脂肪酸の含有量(質量部)]+[銀含有組成物のポリエチレングリコールの含有量(質量部)])/([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)])×100)は、0.2~4.5質量%であることが好ましく、0.3~3.8質量%であることがより好ましく、0.5~3質量%であることがさらに好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、脂肪酸又はポリエチレングリコールを用いたことにより得られる効果が、より高くなる。すなわち、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。さらに、銀含有組成物が溶媒を含有する場合、銀含有組成物中において、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子が溶媒と混合し易く、銀含有組成物の取り扱い性及び安定性が向上する。一方、前記割合が前記上限値以下であることで、銀焼結体中での脂肪酸又はポリエチレングリコールの残存が抑制され、その結果、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
銀含有組成物が脂肪酸を含有しない場合、銀含有組成物の脂肪酸の含有量は0質量部である。銀含有組成物がポリエチレングリコールを含有しない場合、銀含有組成物のポリエチレングリコールの含有量は0質量部である。
【0106】
第3銀粒子を前記中間組成物の状態で配合した場合には、前記他の成分としては、中間組成物中の第3銀粒子以外の成分も挙げられる。ここで、第3銀粒子以外の成分としては、先の説明のとおり、β-ケトカルボン酸銀(1)の銀以外の分解物、含窒素化合物の反応物(別種の含窒素化合物)等の、配合成分の分解物及び反応物等が挙げられる。
【0107】
銀含有組成物は、前記他の成分として、脂肪酸を含有していることが好ましく、直鎖状飽和脂肪酸及び分岐鎖状飽和脂肪酸からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることがより好ましく、炭素数10~20の直鎖状飽和脂肪酸と、炭素数10~20の分岐鎖状飽和脂肪酸と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることがさらに好ましく、デカン酸(カプリン酸)、ネオデカン酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)及びオクタデカン酸(ステアリン酸)からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることがさらに好ましく、デカン酸及びネオデカン酸のいずれか一方又は両方を含有していることが特に好ましい。デカン酸及びネオデカン酸はいずれも、炭素数10~20の飽和脂肪酸の中では、特に、加熱によって揮発し易く、銀焼結体中でのその残存の抑制効果が高い。したがって、デカン酸又はネオデカン酸を用いることで、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
【0108】
銀含有組成物において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、脂肪酸と、ポリエチレングリコールと、の合計含有量の割合(([銀含有組成物の第1銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第2銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の第3銀粒子の含有量(質量部)]+[銀含有組成物の脂肪酸の含有量(質量部)]+[銀含有組成物のポリエチレングリコールの含有量(質量部)])/[銀含有組成物の溶媒以外の全ての成分の総含有量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度がより高く、熱衝撃耐性がより高い金属製部材接合体を製造できる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
銀含有組成物が脂肪酸を含有しない場合、銀含有組成物の脂肪酸の含有量は0質量部である。銀含有組成物がポリエチレングリコールを含有しない場合、銀含有組成物のポリエチレングリコールの含有量は0質量部である。
【0109】
<<銀含有組成物の製造方法>>
銀含有組成物は、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、必要に応じて第4銀粒子と、必要に応じて溶媒と、必要に応じて前記他の成分(例えば、脂肪酸と、ポリエチレングリコールと、のいずれか一方又は両方)と、を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られた配合物をそのまま銀含有組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られた精製物を銀含有組成物としてもよい。
【0110】
各成分の配合順序は、特に限定されない。例えば、2種以上の成分を配合する場合には、これら2種以上の成分を別々に添加してもよいし、これら2種以上の成分をあらかじめ混合しておき、この混合物を添加してもよい。
【0111】
各成分の配合時には、すべての成分を加えてからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次加えながら混合してもよく、すべての成分を順次加えながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、三本ロール、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0112】
溶媒を配合する場合には、溶媒を溶媒以外の成分とあらかじめ混合しておき、得られた溶液、分散物又は非分散物を添加してもよく、この場合、別途、溶媒を単独で添加してもよいし、添加しなくてもよい。本明細書において、「非分散物」とは、溶媒に不溶の成分と溶媒との混合物であって、溶媒量が相対的に少なく、溶媒に不溶の成分が分散状態にはない混合物を意味する。
【0113】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、-5~40℃であることが好ましい。配合時の温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節してもよい。
配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されないが、5分~24時間であることが好ましい。
【0114】
<<金属製部材接合体>>
本発明の一実施形態に係る金属製部材接合体は、金属製の第1部材(本明細書においては、単に「第1部材」と称することがある)と、金属製の第2部材(本明細書においては、単に「第2部材」と称することがある)と、が銀焼結体によって接合されて構成され、前記銀焼結体が、上述の本発明の一実施形態に係る銀含有組成物を用いて形成されたものである。
本実施形態の金属製部材接合体においては、銀焼結体の厚さが厚くても、平常時の銀焼結体の接合強度が高い。より具体的には、平常時の前記第1部材と銀焼結体との接合強度が高く、平常時の前記第2部材と銀焼結体との接合強度も高い。ここで、「平常時」とは、金属製部材接合体が、温度変化が大きい環境下に置かれていないときを意味する。例えば、製造直後から、大きい温度変化に晒されていない金属製部材接合体は、平常時の金属製部材接合体である。さらに、本実施形態の金属製部材接合体が、温度変化が大きい環境下に置かれたときも、銀焼結体の厚さが厚くても、銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い。より具体的には、温度変化が大きい環境下に置かれた後であっても、前記第1部材と銀焼結体との接合強度が高く、前記第2部材と銀焼結体との接合強度も高い。
【0115】
<第1部材>
前記第1部材は金属製であり、これを構成する金属は、単体金属及び合金のいずれであってもよい。
前記金属で好ましいものとしては、例えば、銅、銀、金、パラジウム、ニッケル、並びに、銅、銀、金、パラジウム及びニッケルからなる群より選択される1種又は2種以上を含む合金が挙げられる。これらの中でも、前記金属は、銅、銀、金、パラジウム又はニッケルであることがより好ましく、銅又は銀であることがさらに好ましい。
【0116】
金属製部材接合体は、金属製部材の表面にさらに金属層が設けられたものを、第1部材を含む部材として備えていてもよい。前記金属層は、例えば、蒸着、メッキ等の公知の方法で、金属製部材の表面に形成できる。
【0117】
このような金属層を表面に備えた金属製部材で好ましいものとしては、例えば、銅製部材と、前記銅製部材の表面に設けられた1層又は2層以上の金属層と、を備えた金属層付き銅製部材が挙げられ、その一例としては、銅製部材と、前記銅製部材の表面に設けられたチタン層と、前記チタン層の前記銅製部材側とは反対側の面に設けられた銀層と、を備えた金属層付き銅製部材が挙げられる。ただし、これらは、金属層を表面に備えた金属製部材の一例である。
【0118】
金属製部材接合体は、金属製部材と非金属製部材との複合体を、第1部材を含む部材として備えていてもよい。
前記非金属製部材としては、例えば、半導体ウエハ、半導体チップ、有機絶縁基材、無機絶縁基材、有機・無機複合絶縁基材等が挙げられ、これらは公知のものであってもよい。
【0119】
前記半導体ウエハ又は半導体チップとしては、例えば、シリコン、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)若しくは窒化ガリウム等の半導体を構成材料とする、ウエハ又はチップ等が挙げられる。
前記有機絶縁基材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製基材、ポリイミド製基材、液晶ポリマー製基材、シクロオレフィンポリマー製基材等が挙げられる。
前記無機絶縁基材としては、例えば、セラミック製基材等が挙げられる。
前記有機・無機複合絶縁基材は、有機材料及び無機材料をともに構成材料とする基材であり、その例としては、ガラスエポキシ樹脂製基材等が挙げられる。
【0120】
前記複合体は、非金属製部材の種類によらず、例えば、非金属製部材の目的とする箇所に、蒸着、メッキ、スパッタリング若しくは印刷等によって、金属製部材を形成するか、又は、ろう付け若しくは接着剤による貼合せ等によって、金属製部材を接合することによって、作製できる。
【0121】
ここまでは、金属製部材として、半導体ウエハ、半導体チップ、有機絶縁基材、無機絶縁基材、又は有機・無機複合絶縁基材等に設けられたものついて、主に説明したが、金属製部材としては、例えば、これらに設けられていない金属板(例えば、放熱板)も好適である。
【0122】
第1部材の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、板状、角柱状、角錐状、円柱状、円錐状、球状、長球状、棒状、これら9種(すなわち、シート状、板状、角柱状、角錐状、円柱状、円錐状、球状、長球状及び棒状)からなる群より選択される2種以上が組み合わされた又は融合された形状、並びに不定形状のいずれであってもよい。
【0123】
第1部材の大きさは、特に限定されない。
【0124】
第1部材の形状及び大きさは、第1部材の用途に応じて、適宜選択できる。
例えば、第1部材が板状又は棒状である場合には、第1部材の接合面(後述する第1面)における1辺の長さは、0.01~30mm、0.02~26mm、及び0.03~22mmのいずれかであってもよく、第1部材の厚さは、0.01~7mm、0.02~5mm、及び0.03~3mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは、第1部材の形状及び大きさの一例である。これらの形状及び大きさの第1部材は、例えば、回路を構成する電極等の部品として好適である。
第1部材の形状が、板状及び棒状のいずれでもない場合には、例えば、接合面の面積が、上述の1辺の長さから算出される接合面の面積と同等となるように、第1部材の大きさを調節できる。
【0125】
<第2部材>
前記第2部材も金属製である。
第2部材を構成する金属としては、上記の第1部材を構成する金属と同様のものが挙げられる。
第2部材の形状としては、第1部材の形状と同様のものが挙げられる。
第2部材の大きさは、第1部材の大きさと同様であってよい。
【0126】
第2部材も、第1部材の場合と同様に、第2部材を含む部材として、用いることができる。そして、第2部材を含む部材は、上述の第1部材を含む部材と同様に用いることができる。
【0127】
第1部材と第2部材は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、第1部材と第2部材は、材質の点、形状の点、及び大きさの点において、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0128】
本実施形態で好ましい第2部材としては、例えば、回路を構成する電極等の部品が挙げられる。
【0129】
<銀焼結体>
前記銀焼結体は、前記銀含有組成物を用いて形成されたものである。銀焼結体の形成方法は、以降に記載の金属製部材接合体の製造方法において、より具体的に説明する。
【0130】
前記銀焼結体の厚さは、30μm以上であることが好ましく、例えば、60μm以上、90μm以上、及び120μm以上のいずれかであってもよい。銀焼結体の厚さが前記下限値以上であることで、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる、という効果がより顕著となる。
銀焼結体の厚さの上限値は、特に限定されない。例えば、銀焼結体の形成がより容易である点では、銀焼結体の厚さは、300μm以下であることが好ましく、例えば、250μm以下であってもよい。
一実施形態において、銀焼結体の厚さは、例えば、30~300μm、60~300μm、90~300μm、及び120~300μmのいずれかであってもよいし、30~250μm、60~250μm、90~250μm、及び120~250μmのいずれかであってもよい。ただし、これらは銀焼結体の厚さの一例である。
【0131】
本明細書において、「銀焼結体の厚さ」とは、銀焼結体の、第1部材と第2部材との接合方向における厚さを意味する。
【0132】
<他の層>
本実施形態の金属製部材接合体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1部材と、第2部材と、銀焼結体13と、のいずれにも該当しない、1又は2以上の他の層を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
前記他の層は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の層の数と配置位置も、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0133】
<金属製部材接合体の例>
図1は、本実施形態の金属製部材接合体の一例を模式的に示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0134】
ここに示す金属製部材接合体1は、金属製の第1部材11と、金属製の第2部材12と、が銀焼結体13によって接合されて構成されており、銀焼結体13が、前記銀含有組成物を用いて形成されたものである。ここでは、第1部材11はプレート状であり、その一方の面(第2部材12側の面、本明細書においては「第1面」と称することがある)11aは、銀焼結体13の接合面である。第2部材12においては、その一方の面(第1部材11側の面、本明細書においては「第1面」と称することがある)12aが、銀焼結体13の接合面である。
【0135】
金属製部材接合体1においては、銀焼結体の厚さT13が、例えば、上述のように30μm以上であるなど、一定値以上で厚いことが好ましい。銀焼結体の厚さT13が厚くても、平常時の銀焼結体13の接合強度が高く、さらに、金属製部材接合体1が、温度変化が大きい環境下に置かれたときも、銀焼結体13の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い。
【0136】
本実施形態の金属製部材接合体は、金属製部材接合体1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、金属製部材接合体1において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0137】
<<金属製部材接合体の製造方法(金属製部材の接合方法、銀含有組成物の使用方法)>>
前記金属製部材接合体は、例えば、前記銀含有組成物を、前記第1部材(金属製の第1部材)に付着させる工程(A)と、付着させた前記銀含有組成物を加熱することにより、前記銀含有組成物の加熱物を得る工程(B)と、前記加熱物を介在させて、前記第1部材と、前記第2部材(金属製の第2部材)と、を圧着しながら、前記加熱物を焼成することにより、前記銀焼結体を形成するとともに、前記第1部材と前記第2部材とを、前記銀焼結体によって接合する工程(C)と、を有する製造方法で製造できる。
【0138】
<工程(A)>
前記製造方法の前記工程(A)においては、前記銀含有組成物を前記第1部材に付着させる。
第1部材(第1部材の表面)に銀含有組成物を付着させる方法としては、例えば、印刷法、塗布法等の公知の方法が挙げられる。
【0139】
前記印刷法としては、例えば、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディップ式印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等が挙げられる。
【0140】
前記塗布法としては、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター等の各種コーターを用いる方法;ワイヤーバーを用いる方法;スロットダイ等のコーティング装置を用いる方法;スプレー法等が挙げられる。
【0141】
第1部材における銀含有組成物の付着箇所に対しては、銀含有組成物を付着させる前に、不純物を取り除く清浄化処理を行ってもよい。このようにすることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。
【0142】
前記清浄化処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、薬剤による表面の化学処理と、表面加工による物理処理と、のいずれであってもよい。
前記薬剤としては、例えば、硝酸、リン酸、硫酸、塩酸等の酸;アセトン等の有機溶剤等が挙げられる。酸による化学処理は、不純物の除去全般を行うときに有用である。酸を用いた場合には、第1部材の酸処理箇所(酸処理面)をさらに水洗することが好ましい。有機溶剤による化学処理は、脂溶性の高い不純物の除去を行うときに有用である。
前記表面加工としては、例えば、やすり等の研磨材を用いた研磨処理等が挙げられる。
【0143】
第1部材における銀含有組成物の付着量は、特に限定されず、銀焼結体の目的とする厚さを考慮して、適宜設定すればよい。
【0144】
工程(A)において、付着させた銀含有組成物の層の厚さは、100μm以上であることが好ましく、例えば、150μm以上、200μm以上、及び250μm以上のいずれかであってもよい。前記加熱物の厚さが前記下限値以上であることで、平常時の銀焼結体の接合強度が高く、熱衝撃耐性が高い金属製部材接合体を製造できる、という効果がより顕著となる。
工程(A)における、銀含有組成物の層の厚さの上限値は、特に限定されない。例えば、前記加熱物の厚さが過剰となることが避けられる点では、前記銀含有組成物の層の厚さは、600μm以下であることが好ましい。
一実施形態において、前記銀含有組成物の層の厚さは、例えば、100~600μm、150~600μm、200~600μm、及び250~600μm、のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記銀含有組成物の層の厚さの一例である。
工程(A)における、銀含有組成物の層の厚さは、例えば、第1部材における銀含有組成物の付着量を調節することで、調節できる。
【0145】
工程(A)においては、先の説明のとおり、金属製部材と非金属製部材との複合体を、第1部材を含む部材として用いてもよい。
また、工程(A)においては、先の説明のとおり、金属製部材の表面にさらに金属層が設けられたものを、第1部材を含む部材として用いてもよい。
このような金属層を表面に備えた金属製部材においては、銀含有組成物を付着させる箇所が、第1部材となる。例えば、前記金属層のみに銀含有組成物を付着させる場合には、前記金属層が第1部材となる。金属製部材と前記金属層の両方に銀含有組成物を付着させる場合には、金属製部材と前記金属層がともに第1部材となる。金属製部材のみに銀含有組成物を付着させる場合には、金属製部材が第1部材となる。
【0146】
<工程(B)>
前記製造方法の前記工程(B)においては、第1部材に付着させた前記銀含有組成物を加熱することにより、前記銀含有組成物の加熱物を得る。銀含有組成物の加熱物中では、第1銀粒子、第2銀粒子、第3銀粒子等の銀粒子が、全く焼結していないか、又は一部が焼結しているのみで完全には焼結しておらず(少なくとも一部が未焼結であり)、後述する銀焼結体を形成するために、適した状態に変化している。
【0147】
例えば、銀含有組成物が溶媒等の揮発性成分を含有している場合には、銀含有組成物の加熱によって、その一部又は全量が、気化によって銀含有組成物の加熱物から除去される。その場合には、銀含有組成物の加熱物の質量は、加熱前の銀含有組成物の質量よりも少なくなり、銀含有組成物の質量の減少が認められる。
【0148】
例えば、銀含有組成物の溶媒等の揮発性成分の含有の有無によらず、銀含有組成物の加熱物中では、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子からなる群より選択される1種又は2種以上は、粒子状の形状を維持していてもよいし、粒子同士が互いに融着していてもよい。そして、銀含有組成物が、さらに第4銀粒子を含有している場合には、銀含有組成物の溶媒等の揮発性成分の含有の有無によらず、銀含有組成物の加熱物中では、第4銀粒子は、粒子状の形状を維持していてもよいし、粒子同士が互いに融着していてもよい。第1銀粒子、第2銀粒子、第3銀粒子及び第4銀粒子のいずれであるかによらず、銀粒子同士が互いに融着している場合には、適度な隙間を残しながら、これら銀粒子同士が互いに十分に融着し、もはや銀粒子の形状をとどめていない状態であってもよい。このような状態は、銀の焼成の初期段階で観察されることがあり、この段階では銀の焼成(焼結)は完了しておらず、ネッキングと称されることがある。銀含有組成物の加熱温度を調節することによって、銀粒子のネッキングが良好に進行する。工程(B)においては、このように、銀粒子がネッキングしていてもよいし、ネッキングしていなくてもよい。
【0149】
工程(B)において、第1部材に付着させた銀含有組成物の加熱温度は、65℃以上であることが好ましく、例えば、85℃以上、110℃以上、及び135℃以上のいずれかであってもよい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。
前記加熱温度の上限値は、特に限定されない。過剰な加熱が避けられる点では、前記加熱温度は160℃以下であることが好ましく、例えば、130℃以下、及び105℃以下のいずれかであってもよい。
一実施形態において、前記加熱温度は、例えば、65~160℃、85~160℃、110~160℃、及び135~160℃のいずれかであってもよいし、65~130℃、85~130℃、及び110~130℃のいずれかであってもよいし、65~105℃、及び85~105℃のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記加熱温度の一例である。
【0150】
工程(B)における、銀含有組成物の加熱時間は、特に限定されないが、5~60分であることが好ましく、例えば、5~40分、5~30分、及び5~20分のいずれかであってもよいし、15~60分、25~60分、及び35~60分のいずれかであってもよいし、15~40分であってもよい。前記加熱時間が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。前記加熱時間が前記上限値以下であることで、前記加熱時間が過大となることが避けられる。このような加熱時間は、加熱温度が上述の数値範囲である場合に、特に好適である。
【0151】
工程(B)における、銀含有組成物の加熱時には、加熱温度を一定又は略一定としてもよいし、これらとは異なり、変動させてもよい。
前記加熱温度を変動させる場合には、加熱温度を一貫して上昇させてもよい(換言すると、一定とすること、略一定とすること、及び低下させること、をいずれも行わなくてもよい)し、一定又は略一定とする時間を設けてもよいし、低下させる時間を設けてもよい。なかでも、前記加熱温度は、必ず上昇させるか、あるいは一定又は略一定とすること(換言すると、全く低下させないこと)が好ましい。
【0152】
本明細書においては、銀含有組成物を略一定の温度で加熱する、とは、加熱温度域によらず、加熱温度の変動を3℃以内に抑えながら、銀含有組成物を加熱することを意味する。
【0153】
工程(B)においては、銀含有組成物が付着している第1部材は、銀含有組成物が付着していない箇所を直接加熱することが好ましい。このようにすることで、銀含有組成物の目的外の変質を抑制する効果が、より高くなる。
【0154】
銀含有組成物は、例えば、電気炉による加熱、感熱方式の熱ヘッドによる加熱、遠赤外線照射による加熱、高熱ガスの吹き付けによる加熱、高周波照射による加熱、誘電加熱等の公知の方法によって、加熱できる。
【0155】
工程(B)において、銀含有組成物の加熱開始時の温度は、例えば、常温であってよい。
【0156】
銀含有組成物の加熱を開始してから、銀含有組成物の加熱物を得るまでの間に、銀含有組成物を昇温するときの昇温速度は、特に限定されず、例えば、5~50℃/min、5~30℃/min、及び5~16℃/minのいずれかであってもよい。
【0157】
銀含有組成物の加熱は、銀含有組成物の加熱温度によらず、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよいが、常圧下で行うことが好ましい。
銀含有組成物の加熱は、例えば、銀含有組成物の加熱温度によらず、大気雰囲気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよい。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0158】
工程(B)においては、第1部材に付着させた銀含有組成物を、85℃以下の一定又は略一定の温度で加熱してから(本明細書においては、この加熱を「予備加熱」と称することがある)、これよりも高い一定又は略一定の温度で加熱する(本明細書においては、この加熱を「主加熱」と称することがある)ことにより、銀含有組成物の加熱物を得てもよい。85℃以下の温度で前記予備加熱を行い、銀含有組成物中の溶媒等の揮発性成分の一部又は全量をあらかじめ気化させて銀含有組成物から除去しておく(すなわち乾燥させておく)ことにより、これよりも高い一定又は略一定の温度で前記主加熱を行ったときに、予備加熱後の銀含有組成物において、揮発性成分の気化を防止、又は気化量を低減でき、揮発性成分の気化に伴う銀含有組成物の泡立ちを抑制できる。その結果、第1部材上で形成した銀含有組成物の加熱物の表面の荒れを抑制でき、最終的に、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られることがある。
【0159】
銀含有組成物の予備加熱では、揮発性成分が気化するため、予備加熱後の銀含有組成物の質量は、予備加熱前の銀含有組成物の質量よりも少なくなる。すなわち、予備加熱では、銀含有組成物の質量の減少が認められる。
【0160】
予備加熱時の銀含有組成物の加熱温度(すなわち、85℃以下で一定又は略一定に保持する温度)は、65~90℃であることが好ましく、例えば、65~85℃であってもよい。予備加熱時の前記加熱温度が前記下限値以上であることで、主加熱での銀含有組成物の泡立ちをより抑制できる。予備加熱時の前記加熱温度が前記上限値以下であることで、予備加熱での銀含有組成物の泡立ちを抑制できる。
【0161】
予備加熱時の銀含有組成物の加熱時間(すなわち、85℃以下の一定又は略一定の温度で銀含有組成物を加熱する時間)は、特に限定されないが、2~40分であることが好ましく、例えば、2~35分であってもよい。予備加熱時の前記加熱時間が前記下限値以上であることで、主加熱での銀含有組成物の泡立ちをより抑制できる。予備加熱時の前記加熱時間が前記上限値以下であることで、予備加熱時間が過大となることが避けられる。
【0162】
予備加熱は、上述の加熱温度及び加熱時間の点以外は、先に説明した銀含有組成物の65℃以上の温度での加熱の場合と同様の条件で、行うことができる。
【0163】
主加熱時の銀含有組成物の加熱温度は、75~160℃であることが好ましく、例えば、75~130℃、及び75~105℃のいずれかであってもよいし、90~160℃、105~160℃、及び130~160℃のいずれかであってもよいし、90~130℃であってもよい。主加熱時の前記加熱温度が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。主加熱時の前記加熱温度が前記上限値以下であることで、過剰な加熱が避けられる。
【0164】
主加熱時の銀含有組成物の加熱時間は、特に限定されないが、2~30分であることが好ましく、例えば、2~20分であってもよい。主加熱時の前記加熱時間が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。主加熱時の前記加熱時間が前記上限値以下であることで、過剰な加熱が避けられる。
【0165】
銀含有組成物の加熱物の厚さは、特に限定されず、後述する銀焼結体の目的とする厚さを考慮して、適宜設定すればよい。
銀含有組成物の加熱物の厚さは、例えば、50μm以上であることが好ましく、例えば、100μm以上であってもよい。前記加熱物の厚さが前記下限値以上であることで、金属製部材接合体の接合強度がより高くなる。
前記加熱物の厚さの上限値は、特に限定されない。例えば、前記加熱物の厚さが過剰となることが避けられる点では、前記加熱物の厚さは、500μm以下であることが好ましい。
一実施形態において、前記加熱物の厚さは、例えば、50~500μm、及び100~500のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記加熱物の厚さの一例である。
前記加熱物の厚さは、例えば、第1部材における銀含有組成物の付着量を調節することで、調節できる。
【0166】
工程(B)において、銀含有組成物の加熱物は、1層であってもよいし、2層以上であってもよく、2層以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に調節できる。
銀含有組成物の加熱物が2層以上である場合には、各層の合計の厚さを、上記の好ましい加熱物の厚さとすることができる。
【0167】
例えば、銀含有組成物の種類や、銀含有組成物を付着させる方法によっては、第1部材に銀含有組成物を付着させる操作を1回行っただけでは、銀含有組成物の付着量が目的とする量とはならないことがある。その場合には、銀含有組成物を付着させる操作を2回以上繰り返して行う必要がある。この場合には、最終的に得られた前記加熱物は、1層となる場合もあるが、2層以上となることもある。
本実施形態においては、2層以上である前記加熱物は、1層である前記加熱物の場合と、同様に扱うことができる。
【0168】
<工程(C)>
前記製造方法の前記工程(C)においては、銀含有組成物の前記加熱物を介在させて、前記第1部材(金属製の第1部材)と、前記第2部材(金属製の第2部材)と、を圧着しながら、前記加熱物を焼成することにより、銀焼結体を形成すると同時に、前記第1部材と前記第2部材とを、前記銀焼結体によって接合する。これにより、目的とする金属製部材接合体が得られる。
前記銀焼結体は、導電性接合部とすることができる。
【0169】
工程(C)においては、第1部材と、前記加熱物と、第2部材と、がこの順に積層された積層構造体に対して、第1部材から第2部材へ向かう方向の圧力、及び、第2部材から第1部材へ向かう方向の圧力、のいずれか一方又は両方を加えることにより、第1部材と第2部材とを圧着できる。
【0170】
前記積層構造体に対して、第1部材から第2部材へ向かう方向の圧力を加える場合には、この方向において、第2部材を固定した状態で、前記圧力を加えることが好ましい。
前記積層構造体に対して、第2部材から第1部材へ向かう方向の圧力を加える場合には、この方向において、第1部材を固定した状態で、前記圧力を加えることが好ましい。
【0171】
上述の2方向の圧力は、公知の方法で加えればよい。
例えば、上述の2方向のうち、1方向のみに圧力を加える場合には、第1部材及び第2部材のいずれか一方の表面を、鉛直方向下向きとして、水平面上で前記積層構造体を固定し、第1部材及び第2部材の他方の表面を、鉛直方向上向きとして、その上に錘を載置することにより、前記積層構造体に1方向のみから圧力を加えることができる。
ここでは、第1部材及び第2部材のいずれか一方に対して、錘の載置によって圧力を加える場合について説明したが、他の押圧手段によって圧力を加えてもよい。
ここでは、第1部材及び第2部材の表面を鉛直方向にむけて、前記積層構造体を配置する場合について説明したが、鉛直方向ではなく、水平方向をはじめとする他の方向にむけて、前記積層構造体を配置してもよい。
【0172】
前記加熱物を介在させて、第1部材と第2部材とを圧着するときの圧力(本明細書においては、「圧着圧力」と称することがある)は、特に限定されないが、2MPa以上であることが好ましく、例えば、5MPa以上、及び10MPa以上のいずれかであってもよい。前記圧着圧力が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。
前記圧着圧力の上限値は、特に限定されない。過剰な圧着が避けられる点では、前記圧着圧力は、18MPa以下であることが好ましく、例えば、13MPa以下、及び8MPa以下のいずれかであってもよい。
一実施形態において、前記圧着圧力は、例えば、2~18MPa、5~18MPa、及び10~18MPaのいずれかであってもよいし、2~13MPa、5~13MPa、及び10~13MPaのいずれかであってもよいし、2~8MPa、及び5~8MPaのいずれかであってもよい。ただし、これらは前記圧着圧力の一例である。
【0173】
前記圧着圧力は、圧着開始時から圧着終了時までの間、一定としてもよいし、一定とせずに変動させてもよい。
前記圧着圧力を変動させる場合には、圧着圧力を一貫して上昇させてもよい(換言すると、変化させないこと及び低下させること、をいずれも行わなくてもよい)し、変化させない時間を設けてもよいし、低下させる時間を設けてもよい。なかでも、前記圧着圧力は、必ず上昇させるか又は変化させないこと(換言すると、全く低下させないこと)が好ましい。
【0174】
前記加熱物の焼成は、前記加熱物のさらなる加熱により、行うことができる。このときの加熱は、工程(B)において銀含有組成物に対して行う加熱の場合と、同じ方法で行うことができる。
【0175】
前記加熱物の焼成のために加熱を開始するときの温度は、例えば、常温など、工程(B)の終了時での前記加熱物の温度よりも低い温度であってもよいし、工程(B)の終了時での前記加熱物の温度に対して同等以上であってもよい。
【0176】
前記加熱物の焼成温度は、200℃以上であることが好ましく、例えば、240℃以上、及び280℃以上のいずれかであってもよい。前記焼成温度が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。
前記焼成温度の上限値は、特に限定されない。例えば、工程時間を短縮でき、かつ過剰な加熱が避けられる点では、前記焼成温度は、320℃以下であることが好ましく、例えば、260℃以下であってもよい。
一実施形態において、前記焼成温度は、例えば、200~320℃、240~320℃、及び280~320℃のいずれかであってもよいし、200~260℃、及び240~260のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記焼成温度の一例である。
【0177】
前記加熱物の焼成のために加熱を開始してから、前記加熱物の焼成を終了するまでの間に、前記加熱物を昇温するときの昇温速度は、特に限定されないが、5~50℃/minであることが好ましく、5~40℃/minであることがより好ましく、5~30℃/minであることがさらに好ましい。
【0178】
前記加熱物の焼成時間は、特に限定されないが、1分~6時間であることが好ましく、例えば、1分~2時間、及び1~30分のいずれかであってもよい。前記焼成時間が前記下限値以上であることで、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる。前記焼成時間が前記上限値以下であることで、前記焼成時間が過大となることが避けられる。
【0179】
前記加熱物の焼成時には、焼成温度を一定又は略一定としてもよいし、これらとは異なり、変動させてもよい。
前記焼成温度を変動させる場合には、焼成温度を一貫して上昇させてもよい(換言すると、一定とすること、略一定とすること、及び低下させること、をいずれも行わなくてもよい)し、一定又は略一定とする時間を設けてもよいし、低下させる時間を設けてもよい。なかでも、前記焼成温度は、必ず上昇させるか、あるいは一定又は略一定とすること(換言すると、全く低下させないこと)が好ましく、例えば、焼成温度を一貫して上昇させたのち、そこで到達した最高温度を、工程(C)の終了時まで、一定時間保持してもよい。その場合、前記加熱物の焼成温度を一定時間保持する時間は、1~60分であることが好ましく、例えば、1~40分、及び1~20分のいずれかであってもよい。
【0180】
本明細書においては、銀含有組成物の加熱物を略一定の温度で焼成する、とは、焼成温度域によらず、焼成温度の変動を3℃以内に抑えながら、前記加熱物を焼成することを意味する。
【0181】
前記加熱物の焼成は、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれで行ってもよい。
前記加熱物の焼成は、例えば、大気雰囲気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよい。前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0182】
工程(C)においては、(X1)第1部材と第2部材との圧着を開始してから、前記加熱物の焼成を開始してもよい(本明細書においては、「圧着焼成方法(X1)」と称することがある)し、(X2)前記加熱物の焼成を開始してから、第1部材と第2部材との圧着を開始してもよい(本明細書においては、「圧着焼成方法(X2)」と称することがある)し、(X3)第1部材と第2部材との圧着と、前記加熱物の焼成と、を同時に開始してもよく(本明細書においては、「圧着焼成方法(X3)」と称することがある)、上述の圧着と焼成の開始のタイミングは、任意に選択できる。
【0183】
これらの中でも、接合強度がより高い金属製部材接合体が得られる点では、圧着焼成方法(X1)又は(X3)を採用することが好ましく、圧着焼成方法(X1)を採用することがより好ましい。
【0184】
<他の工程(1)>
前記製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、工程(A)と、工程(B)と、工程(C)と、のいずれにも該当しない、他の工程(本明細書においては、「他の工程(1)」と称することがある)を有していてもよい。
前記他の工程(1)は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
他の工程(1)を行うタイミングも、目的に応じて任意に選択でき、例えば、工程(A)の前、工程(A)と工程(B)との間、工程(B)と工程(C)との間、及び工程(C)の後、のいずれであってもよい。
【0185】
<金属製部材接合体の製造方法の例>
図2は、前記製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す金属製部材接合体1を製造する場合を例に挙げて、工程(C)において、圧着焼成方法(X1)を採用した場合の前記製造方法(本明細書においては、「製造方法-1」と称することがある)について、説明する。
【0186】
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0187】
すなわち、前記製造方法-1の工程(A)においては、図2(a)に示すように、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、を含有し、全銀粒子中の第1銀粒子の含有量が0~40質量%であり、全銀粒子中の第2銀粒子の含有量が30~75質量%であり、全銀粒子中の第3銀粒子の含有量が14~60質量%であり、全銀粒子中の第1~第3銀粒子の合計含有量が60質量%以上であり、第3銀粒子が、前記β-ケトカルボン酸銀(1)を、ギ酸によって還元することで得られた銀粒子である、銀含有組成物130を、第1部材11に付着させる。ここでは、プレート状の第1部材11の一方の面(第1面)11aに、銀含有組成物130を付着させている。
【0188】
前記製造方法-1の工程(B)においては、第1部材11に付着させた銀含有組成物130を加熱することにより、図2(b)に示すように、銀含有組成物の加熱物130’を得る。
【0189】
前記製造方法-1の工程(C)においては、まず、図2(c)に示すように、第1部材11と、前記加熱物130’と、第2部材12と、の積層構造体を作製する。このとき、第2部材12の第1部材11側の面(第1面)12aが、前記加熱物130’と接触する。
【0190】
次いで、前記製造方法-1の工程(C)においては、図2(d)に示すように、前記積層構造体の圧着を開始する。前記積層構造体を圧着するために加える力は、力P及び力Pのいずれか一方又は両方とすることができる。
【0191】
次いで、前記製造方法-1の工程(C)においては、図2(e)に示すように、前記積層構造体中の前記加熱物130’の焼成を開始する。ここでは、銀焼結体となる前の、焼成の途中段階の前記加熱物に、符号1301’を付している。
【0192】
このように、銀含有組成物の加熱物130’を介在させて、第1部材11と、第2部材12と、を圧着しながら、前記加熱物130’を焼成することにより、図2(f)に示すように、前記加熱物130’から銀焼結体13を形成すると同時に、第1部材11と第2部材12とを、銀焼結体13によって接合する。これにより、目的とする金属製部材接合体1が得られる。
【0193】
図3は、前記製造方法の他の例を、模式的に説明するための断面図である。ここでは、工程(C)において、圧着焼成方法(X2)を採用した場合の前記製造方法(本明細書においては、「製造方法-2」と称することがある)について、説明する。
【0194】
前記製造方法-2の工程(A)及び工程(B)は、前記製造方法-1の工程(A)及び工程(B)と同じであるため、その説明を省略する。
【0195】
前記製造方法-2の工程(C)においては、まず、図3(a)に示すように、第1部材11と、前記加熱物130’と、第2部材12と、の積層構造体を作製する。これは、前記製造方法-1の場合と同じである。
【0196】
次いで、前記製造方法-2の工程(C)においては、図3(b)に示すように、前記積層構造体中の前記加熱物130’の焼成を開始する。ここでは、前記加熱物130’が焼成の途中段階の前記加熱物1301’となっている状態を示している。
【0197】
次いで、前記製造方法-2の工程(C)においては、図3(c)に示すように、第1部材11と、焼成の途中段階の前記加熱物1301’と、第2部材12と、の積層構造体の圧着を開始する。
【0198】
このように、銀含有組成物の加熱物130’を介在させて、第1部材11と、第2部材12と、を圧着しながら、前記加熱物130’を焼成することにより、図3(d)に示すように、前記加熱物130’から銀焼結体13を形成すると同時に、第1部材11と第2部材12とを、銀焼結体13によって接合する。これにより、図2(f)に示すものと同様の、目的とする金属製部材接合体1が得られる。
【0199】
図4は、前記製造方法のさらに他の例を、模式的に説明するための断面図である。ここでは、工程(C)において、圧着焼成方法(X3)を採用した場合の前記製造方法(本明細書においては、「製造方法-3」と称することがある)について、説明する。
【0200】
前記製造方法-3の工程(A)及び工程(B)は、前記製造方法-1の工程(A)及び工程(B)と同じであるため、その説明を省略する。
【0201】
前記製造方法-3の工程(C)においては、まず、図4(a)に示すように、第1部材11と、前記加熱物130’と、第2部材12と、の積層構造体を作製する。これは、前記製造方法-1の場合と同じである。
【0202】
次いで、前記製造方法-3の工程(C)においては、第1部材11と第2部材12との圧着と、前記積層構造体中の前記加熱物130’の焼成と、を同時に開始する。図4(b)では、前記加熱物130’が焼成の途中段階の前記加熱物1301’となっている状態を示している。
【0203】
このように、銀含有組成物の加熱物130’を介在させて、第1部材11と、第2部材12と、を圧着しながら、前記加熱物130’を焼成することにより、図4(c)に示すように、前記加熱物130’から銀焼結体13を形成すると同時に、第1部材11と第2部材12とを、銀焼結体13によって接合する。これにより、図2(f)に示すものと同様の、目的とする金属製部材接合体1が得られる。
【実施例0204】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0205】
実施例又は比較例で用いた第1銀粒子、第2銀粒子及び第4銀粒子を以下に示す。
【0206】
【表1】
【0207】
実施例又は比較例で用いた添加剤を以下に示す。
SA:オクタデカン酸(別名:ステアリン酸)(富士フィルム和光純薬社製)
DA:デカン酸(富士フィルム和光純薬社製)
NDA:ネオデカン酸(ヘキシオン社製)
MA:テトラデカン酸(別名:ミリスチン酸)(富士フィルム和光純薬社製)
PEG300:ポリエチレングリコール300(富士フィルム和光純薬社製)
PEG400:ポリエチレングリコール400(富士フィルム和光純薬社製)
【0208】
実施例又は比較例で用いた溶媒を以下に示す。
EG:エチレングリコール(富士フィルム和光純薬社製)
【0209】
[実施例1]
<<銀含有組成物の製造>>
<中間組成物の製造>
液温が50℃以下となるように、ビーカー中で2-エチルヘキシルアミン(後述する2-メチルアセト酢酸銀に対して0.4倍モル量)に2-メチルアセト酢酸銀を添加して、メカニカルスターラーを用いて15分撹拌することにより、液状物を得た。この液状物に、反応液の温度が50℃以下となるように、ギ酸(2-メチルアセト酢酸銀に対して0.65倍モル量)を30分かけて滴下した。ギ酸の滴下終了後、25℃にて反応液をさらに1.5時間撹拌することにより、中間組成物を得た。この中間組成物は、第3銀粒子(以下、「第3銀粒子(31)」と称することがある)を含有していた。
この中間組成物中の全ての2-メチルアセト酢酸銀が、第3銀粒子(31)を形成したと仮定した場合、中間組成物において、中間組成物の総質量に対する、第3銀粒子(31)の含有量(質量部)の割合は、63.3質量%であった。
【0210】
別途、上記と同じ方法で同じ組成の中間組成物を製造し、この中間組成物を冷却し、凍結破断を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、「Cryo FIC-SEM FEI, Helios NanoLab600」)を用いて、加速電圧1kV(反射電子像)の条件で、凍結破断物の破断面を観察した。そして、画像解析ソフト(「Image J.」)を用いて、倍率10000倍のSEM画像を画像処理することにより、銀粒子凝集体を識別した。その識別結果から、個々の銀粒子凝集体の最大径を測定した。銀粒子凝集体の観測数は、700以上とした。ここで、「最大径」とは、銀粒子凝集体の識別像において、輪郭線上に位置する任意の2点を結ぶ線分の長さの最大値を意味する。その結果、前記最大径の平均値、すなわち、銀粒子(第3銀粒子(31))の平均2次粒子径は、294nmであった。
【0211】
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて、前記凍結破断物の破断面を観察した結果、個々の銀粒子凝集体は、1次粒子径が3.6~32.7nmの銀粒子で構成されていた。すなわち、第3銀粒子(31)の1次粒子径は、3.6~32.7nmであった。
【0212】
<銀含有組成物の製造>
室温下で、上記で得られた中間組成物の全量と、第1銀粒子(11)(2.7g)と、第2銀粒子(21)(6.3g)と、エチレングリコール(0.2g)と、を混合し、10分撹拌することで、液状の銀含有組成物を得た。
【0213】
表3に示すように、得られた銀含有組成物において、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第1銀粒子の含有量)は、25.7質量%であり、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第2銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第2銀粒子の含有量)は、59.9質量%であり、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第3銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第3銀粒子の含有量)は、14.4質量%であり、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、の合計含有量の割合(全銀粒子中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量)は、100質量%であった。
このように、表3においては、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子については、上記の使用量ではなく、銀含有組成物における、すべての銀粒子の合計含有量に対する、これら銀粒子の含有量の割合を示している。その際には、第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子はいずれも純度が100質量%ではないため、純度に基づいて実際の使用量を算出し、その算出値(実際の使用量)から、これら銀粒子の含有量の割合を算出している。これに対して、表3においては、添加剤及び溶媒については、実際の使用量を記載している。
以上の点は、後述の他の実施例及び比較例においても同様である。
【0214】
<<金属製部材接合体の製造>>
大きさが20mm×20mm×2mmである銅製基材と、大きさが4.7mm×4.7mm×0.3mmである炭化ケイ素(SiC)チップと、を準備した。前記銅製基材の接合対象面の全面と、前記炭化ケイ素チップの接合対象面の全面に、それぞれ、メッキ処理により、チタン膜(厚さ0.1μm)及び銀膜(厚さ5μm)をこの順に積層することにより、メッキ膜付き銅製基材と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップと、を作製した。
次いで、このメッキ膜付き銅製基材中の前記銀膜(換言すると、メッキ膜)上に、スクリーン印刷法によって、上記で得られた銀含有組成物の、大きさが5mm×5mm×0.15mmの印刷層(銀含有組成物の層)を形成した(工程(A))。
【0215】
次いで、プログラムホットプレート(AS ONE社製「EC-1200NP」)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)の条件で、80℃で5分、前記印刷層の加熱を行った。このとき、印刷層ではなく、印刷層が形成されているメッキ膜付き銅製基材中の銅製基材を、プログラムホットプレートに接触させ、印刷層を銅製基材側から加熱した(工程(B))。
【0216】
次いで、メッキ膜付き銅製基材に設けられた前記印刷層の加熱物上に、上記のメッキ膜付き炭化ケイ素チップを、その中の前記銀膜(換言すると、メッキ膜)を前記加熱物側に向けて載せた。このとき、これらを上方から見下ろして平面視した状態で、印刷層の加熱物の中心と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップの中心と、を一致させ、さらに、印刷層の加熱物の外周と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップの外周と、が平行となるように、メッキ膜付き炭化ケイ素チップを位置合わせした。
【0217】
次いで、大気下で、熱プレス機を用いて、得られた積層物を、銅製基材と炭化ケイ素チップとの積層方向において、15MPaの圧力で加圧しながら、昇温速度15℃/minで室温から300℃まで昇温し、そのまま300℃で10分保持し、前記印刷層の加熱物を焼成した。これによって、銀焼結体を形成するとともに、メッキ膜付き銅製基材と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップと、を前記銀焼結体によって接合した(工程(C))。
次いで、熱プレス機を水冷し、ステージ温度を室温まで下げることで、上記で得られた接合体の温度を室温まで下げてから、積層物(接合体)の加圧を解除した。
以上により、メッキ膜付き銅製基材と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップと、が銀焼結体(4.7mm×4.7mm×0.088mm)からなる接合部によって接合されて構成された、金属製部材接合体を得た。
【0218】
<<金属製部材接合体の評価>>
<初期の金属製部材接合体の接合率の算出>
超音波探傷装置(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製「Nordson sonoscan C-SAM Gen6」)を用いて、使用トランスデューサー50MHzの条件で、上記で得られた金属製部材接合体中の、炭化ケイ素チップにチタン膜を介して設けられている銀膜と、銀焼結体と、の界面を観察した。このとき、前記界面を、炭化ケイ素チップ側の上方から見下ろして平面視したとき、炭化ケイ素チップよりも銀焼結体側の領域で、黒く見える領域が、炭化ケイ素チップ上の銀膜に密着している銀焼結体(接合部)であると判断できるため、銀焼結体の炭化ケイ素チップ側の面の面積に対する、上述の黒く見える領域の面積の割合([炭化ケイ素チップより銀焼結体側の領域で黒く見える領域の面積]/[銀焼結体の炭化ケイ素チップ側の面の面積]×100)を算出し、これを初期の金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(本明細書においては、「チップ側の初期接合率」と称することがある)(%)として採用した。
【0219】
さらに、同様に、金属製部材接合体中の、銅製基材にチタン膜を介して設けられている銀膜と、銀焼結体と、の界面を観察した。すなわち、前記界面を、銅製基材側の上方から見下ろして平面視したとき、銅製基材よりも銀焼結体側の領域で、黒く見える領域が、銅製基材上の銀膜に密着している銀焼結体(接合部)であると判断できるため、銀焼結体の銅製基材側の面の面積に対する、上述の黒く見える領域の面積の割合([銅製基材より銀焼結体側の領域で黒く見える領域の面積]/[銀焼結体の銅製基材側の面の面積]×100)を算出し、これを初期の金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(本明細書においては、「基材側の初期接合率」と称することがある)(%)として採用した。
【0220】
これらの初期の接合率(%)を表3に示す。表3においては、初期の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)を「初期接合率(%)」中の「チップ側」の欄に示し、初期の銅製基材側の接合率(%)を「初期接合率(%)」中の「基材側」の欄に示している。
【0221】
<熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の金属製部材接合体の接合率の算出>
上記の初期の接合率を算出した金属製部材接合体を熱衝撃試験機(エスペック社製「TSA-71L-A」)に入れて、150℃の加熱条件下で30分静置し、その2分後から、-40℃の冷却条件下で30分静置し、これを1サイクルとして、さらにその2分後から、同様の加熱条件下での静置と、冷却条件下での静置と、の熱冷サイクルを99回繰り返し、この熱冷サイクルを合計で100回行うことによって、熱衝撃試験を行った。次いで、金属製部材接合体を熱衝撃試験機から取り出した。そして、上述の初期の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)の場合と同様に、銀焼結体の炭化ケイ素チップ側の面の面積に対する、上述の黒く見える領域の面積の割合を算出し、これを熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(本明細書においては、「チップ側の100サイクル後接合率」と称することがある)(%)として採用した。
また、上述の初期の銅製基材側の接合率(%)の場合と同様に、銀焼結体の銅製基材側の面の面積に対する、上述の黒く見える領域の面積の割合を算出し、これを熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(本明細書においては、「基材側の100サイクル後接合率」と称することがある)(%)として採用した。
これらの接合率(%)を表3に示す。表3においては、熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)を「100サイクル後接合率(%)」中の「チップ側」の欄に示し、熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の銅製基材側の接合率(%)を「100サイクル後接合率(%)」中の「基材側」の欄に示している。
【0222】
<金属製部材接合体の熱衝撃耐性の評価>
上記の各接合率の算出結果に基づき、下記基準に従って、金属製部材接合体の熱衝撃耐性を評価した。結果を表3に示す。
A:基材側の初期接合率と、チップ側の初期接合率のうち、低い方の接合率が88%以上であり、かつ、基材側の100サイクル後接合率と、チップ側の100サイクル後接合率のうち、低い方の接合率が50%以上であり、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が極めて高い。
B:基材側の初期接合率と、チップ側の初期接合率のうち、高い方の接合率が95%以上であり、低い方の接合率が85%以上であり、かつ、基材側の100サイクル後接合率と、チップ側の100サイクル後接合率のうち、高い方の接合率が85%以上であり、低い方の接合率が20%以上であり、金属製部材接合体の熱衝撃耐性は、前記Aの場合よりも劣るが高い。
C:前記A及びBのいずれにも該当せず、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が低い。
【0223】
<<銀含有組成物の製造、金属製部材接合体の製造、金属製部材接合体の評価>>
[実施例2~19、比較例1~18]
下記の10項目
・第1銀粒子の種類
・第2銀粒子の種類
・第3銀粒子の種類
・すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第1銀粒子の含有量)
・すべての銀粒子の合計含有量に対する、第2銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第2銀粒子の含有量)
・すべての銀粒子の合計含有量に対する、第3銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第3銀粒子の含有量)
・添加剤の種類
・添加剤の使用量
・溶媒の種類
・溶媒の使用量
のいずれか1又は2以上が、表3~表5に示すとおりとなるように条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、銀含有組成物を製造した。比較例17~18においては、さらに、第4銀粒子を用いた。
そして、この銀含有組成物を用いた点と、必要に応じて、この銀含有組成物のメッキ膜付き銅製基材に対するスクリーン印刷の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、金属製部材接合体を製造し、評価した。結果を表3~表5に示す。
【0224】
表5に示すように、比較例17においては、第4銀粒子(41)を用い、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第4銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第4銀粒子の含有量)は、42.6質量%であり、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、の合計含有量の割合(全銀粒子中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量)は、57.4質量%であった。
表5に示すように、比較例18においては、第4銀粒子(42)を用い、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第4銀粒子の含有量の割合(全銀粒子中の第4銀粒子の含有量)は、42.5質量%であり、すべての銀粒子の合計含有量に対する、第1銀粒子と、第2銀粒子と、第3銀粒子と、の合計含有量の割合(全銀粒子中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量)は、57.5質量%であった。
第4銀粒子は純度が100質量%ではないため、純度に基づいて実際の使用量を算出し、その算出値(実際の使用量)から、これら銀粒子の含有量の割合を算出している。
【0225】
[実施例20~40]
<<銀含有組成物の製造、金属製部材接合体の製造>>
上記の実施例2等の場合と同様に、表5~表6に示すように、実施例1の場合とは条件を変更して銀含有組成物を製造した。
そして、この銀含有組成物を用いた点と、必要に応じて、表2に示すように、前記工程(A)~工程(C)のいずれか1又は2以上の条件を変更した点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、金属製部材接合体を製造した。
【0226】
例えば、実施例20においては、以下に示すように、工程(A)~工程(C)を行った。
すなわち、前記メッキ膜付き銅製基材中の前記銀膜(換言すると、メッキ膜)上に、スクリーン印刷法によって、銀含有組成物の、大きさが5mm×5mm×0.3mmの印刷層を形成した(工程(A))。
次いで、プログラムホットプレート(AS ONE社製「EC-1200NP」)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)の条件で、70℃で30分、前記印刷層の加熱(予備加熱)を行った。このとき、印刷層ではなく、印刷層が形成されているメッキ膜付き銅製基材中の銅製基材を、プログラムホットプレートに接触させ、印刷層を銅製基材側から加熱した。さらに、強制対流オーブン(エスペック社製「PH-202」)を用いて、大気下、無加圧下(常圧下)、風速1.5m/sの条件下で、80℃で6.5分、前記印刷層の加熱(主加熱)を行った(工程(B))。
次いで、メッキ膜付き銅製基材に設けられた前記印刷層の加熱物上に、上記のメッキ膜付き炭化ケイ素チップを、その中の前記銀膜(換言すると、メッキ膜)を前記加熱物側に向けて載せた。このとき、これらを上方から見下ろして平面視した状態で、印刷層の加熱物の中心と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップの中心と、を一致させ、さらに、印刷層の加熱物の外周と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップの外周と、が平行となるように、メッキ膜付き炭化ケイ素チップを位置合わせした。
次いで、大気下で、熱プレス機を用いて、得られた積層物を、銅製基材と炭化ケイ素チップとの積層方向において、15MPaの圧力で加圧しながら、昇温速度15℃/minで室温から300℃まで昇温し、そのまま300℃で10分保持し、前記印刷層の加熱物を焼成した。これによって、銀焼結体を形成するとともに、メッキ膜付き銅製基材と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップと、を前記銀焼結体によって接合した(工程(C))。
次いで、熱プレス機を水冷し、ステージ温度を室温まで下げることで、上記で得られた接合体の温度を室温まで下げてから、積層物(接合体)の加圧を解除した。
以上により、メッキ膜付き銅製基材と、メッキ膜付き炭化ケイ素チップと、が銀焼結体(4.7mm×4.7mm×0.173mm)からなる接合部によって接合されて構成された、金属製部材接合体を得た。
【0227】
<<金属製部材接合体の評価>>
<初期の金属製部材接合体の接合率の算出>
上記で得られた金属製部材接合体について、実施例1の場合と同じ方法で、チップ側の初期接合率、及び基材側の初期接合率を算出した。結果を表5~表6に示す。
【0228】
<熱冷サイクル150回の熱衝撃試験後の金属製部材接合体の接合率の算出>
上記の初期の接合率を算出した金属製部材接合体を用い、熱冷サイクルの回数を100回に代えて150回とした点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、熱冷サイクル150回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(本明細書においては、「チップ側の150サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(本明細書においては、「基材側の150サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、を算出した。
これらの接合率(%)を表5~表6に示す。表5~表6においては、熱冷サイクル150回の熱衝撃試験後の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)を「150サイクル後接合率(%)」中の「チップ側」の欄に示し、熱冷サイクル150回の熱衝撃試験後の銅製基材側の接合率(%)を「150サイクル後接合率(%)」中の「基材側」の欄に示している。
【0229】
<金属製部材接合体の熱衝撃耐性の評価>
上記の各接合率の算出結果に基づき、下記基準に従って、金属製部材接合体の熱衝撃耐性を評価した。結果を表5~表6に示す。
A:基材側の初期接合率と、チップ側の初期接合率のうち、低い方の接合率が88%以上であり、かつ、基材側の150サイクル後接合率と、チップ側の150サイクル後接合率のうち、低い方の接合率が45%以上であり、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が極めて高い。
B:基材側の初期接合率と、チップ側の初期接合率のうち、高い方の接合率が95%以上であり、低い方の接合率が85%以上であり、かつ、基材側の150サイクル後接合率と、チップ側の150サイクル後接合率のうち、高い方の接合率が80%以上であり、低い方の接合率が15%以上であり、金属製部材接合体の熱衝撃耐性は、前記Aの場合よりも劣るが高い。
C:前記A及びBのいずれにも該当せず、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が低い。
【0230】
【表2】
【0231】
【表3】
【0232】
【表4】
【0233】
【表5】
【0234】
【表6】
【0235】
上記結果から明らかなように、実施例1~40においては、銀焼結体の厚さが34μm以上(34~173μm)であり、厚かったが、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が高かった。実施例1~40においては、チップ側の初期接合率が86.7%以上(86.7~99.9%)であり、基材側の初期接合率が91.9%以上(91.9~99.9%)であった。実施例1~19においては、チップ側の100サイクル後接合率が20.3%以上(20.3~99.9%)であり、基材側の100サイクル後接合率が54.3%以上(54.3~99.9%)であった。実施例20~40においては、チップ側の150サイクル後接合率が16.1%以上(16.1~99.9%)であり、基材側の150サイクル後接合率が77.5%以上(77.5~99.7%)であった。
【0236】
実施例1~40においては、全銀粒子中の第1銀粒子の含有量が6.1~36.3質量%であり、全銀粒子中の第2銀粒子の含有量が30.7~72.6質量%であり、全銀粒子中の第3銀粒子の含有量が14.4~49.5質量%であり、全銀粒子中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量が100質量%であった。
【0237】
実施例1~40においては、銀含有組成物において、第1銀粒子及び第2銀粒子の合計含有量に対する、脂肪酸及びポリエチレングリコールの合計含有量の割合は、0.5~3質量%であった。
【0238】
これに対して、比較例1、3~6、8~12、18においては、チップ側の初期接合率と、基材側の初期接合率と、のいずれか一方又は両方が低く、金属製部材接合体の基本的な特性が不良であった。これら比較例においては、銀焼結体の厚さが60μm以上(60~110μm)で厚かった。
比較例2、7、13~17においては、チップ側の100サイクル後接合率又は基材側の100サイクル後接合率が低く、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が低かった。これら比較例においては、銀焼結体の厚さが81μm以上(81~109μm)で厚かった。
【0239】
比較例1~2、5、13、16においては、全銀粒子中の第2銀粒子の含有量が77.1質量%以上であった。
比較例3、4、7~12においては、全銀粒子中の第1銀粒子の含有量が42.9質量%以上であり、かつ、全銀粒子中の第2銀粒子の含有量が25.7質量%以下であった。
比較例6、14、15においては、第1銀粒子の含有量が42.8質量%であった。
比較例17、18においては、全銀粒子中の第1銀粒子、第2銀粒子及び第3銀粒子の合計含有量が57.5質量%以下であった。
【0240】
実施例3の銀含有組成物は、実施例6の銀含有組成物に添加剤(SA、オクタデカン酸)を添加したものに相当し、実施例4の銀含有組成物は、実施例7の銀含有組成物に添加剤(SA、オクタデカン酸)を添加したものに相当する。実施例3と実施例6との比較、実施例4と実施例7との比較から、添加剤の使用により、金属製部材接合体の熱衝撃耐性が向上することを、明確に確認できた。
【0241】
<熱冷サイクル200回、300回の熱衝撃試験後の金属製部材接合体の接合率の算出>
実施例2~5、10、14、15、17~19においては、上記の熱冷サイクル100回の熱衝撃試験後の接合率を算出した金属製部材接合体を、さらに、再度前記熱衝撃試験機に入れて、上述の熱冷サイクルを追加で100回(合計で200回)行うことによって、追加熱衝撃試験を行った。そして、上述の熱冷サイクル100回の場合と同様に、熱冷サイクル200回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(本明細書においては、「チップ側の200サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(本明細書においては、「基材側の200サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、を算出した。
これらの接合率(%)を表7に示す。表7においては、熱冷サイクル200回の熱衝撃試験後の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)を「200サイクル後接合率(%)」中の「チップ側」の欄に示し、熱冷サイクル200回の熱衝撃試験後の銅製基材側の接合率(%)を「200サイクル後接合率(%)」中の「基材側」の欄に示している。表7には、さらに、熱冷サイクル200回以前の、チップ側の接合率と基材側の接合率も、あわせて示す。
【0242】
実施例2~5、10、14、15、17~19においては、チップ側の200サイクル後接合率が75.4%以上(75.4~99.7%)であり、基材側の200サイクル後接合率が34.5%以上(34.5~97.8%)であった。すなわち、これら実施例においては、熱冷サイクル200回の熱衝撃試験後も、依然、これら接合率が高水準であった。
【0243】
さらに、実施例2、4、10、19においては、再度前記熱衝撃試験機に入れて、上述の熱冷サイクルを追加で100回(合計で300回)行うことによって、追加熱衝撃試験を行い、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(本明細書においては、「チップ側の300サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(本明細書においては、「基材側の300サイクル後接合率」と称することがある)(%)と、を算出した。
これらの接合率(%)を、上記の熱冷サイクル200回の場合と同様に、表7に示す。
【0244】
実施例2、4、10、19においては、チップ側の300サイクル後接合率が65.7%以上(65.7~90.9%)であり、基材側の300サイクル後接合率が68.8%以上(68.8~96.6%)であった。すなわち、これら実施例においては、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後も、依然、これら接合率が高水準であった。
【0245】
【表7】
【0246】
<熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後の金属製部材接合体の接合率の算出>
実施例21~24、28~34、39、40においては、上記の熱冷サイクル150回の熱衝撃試験後の接合率を算出した金属製部材接合体を、さらに、再度前記熱衝撃試験機に入れて、上述の熱冷サイクルを追加で150回(合計で300回)行うことによって、追加熱衝撃試験を行った。
そして、上述の熱冷サイクル100回の場合と同様に、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後の、金属製部材接合体の炭化ケイ素チップ側の接合率(チップ側の300サイクル後接合率)(%)と、金属製部材接合体の銅製基材側の接合率(基材側の300サイクル後接合率)(%)と、を算出した。
これらの接合率(%)を表8に示す。表8においては、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後の炭化ケイ素チップ側の接合率(%)を「300サイクル後接合率(%)」中の「チップ側」の欄に示し、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後の銅製基材側の接合率(%)を「300サイクル後接合率(%)」中の「基材側」の欄に示している。表8には、さらに、熱冷サイクル300回以前の、チップ側の接合率と基材側の接合率も、あわせて示す。
【0247】
実施例21~24、28~34、39、40においては、チップ側の300サイクル後接合率が53%以上(53~97.5%)であり、基材側の300サイクル後接合率が63.3%以上(63.3~99.7%)であった。すなわち、これら実施例においては、熱冷サイクル300回の熱衝撃試験後も、依然、これら接合率が高水準であった。
【0248】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明は、回路基板をはじめとする、金属製部材接合体を備えた各種装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0250】
1・・・金属製部材接合体、11・・・金属製の第1部材、12・・・金属製の第2部材、13・・・銀焼結体、130・・・銀含有組成物、130’・・・銀含有組成物の加熱物
図1
図2
図3
図4