IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社かごしま医療ITセンターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021298
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20240208BHJP
【FI】
G16H15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124027
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505192431
【氏名又は名称】株式会社かごしま医療ITセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】荒木 賢志
(72)【発明者】
【氏名】宇野 裕
(72)【発明者】
【氏名】草野 有希
(72)【発明者】
【氏名】宇都 由美子
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】判定対象人物に関する文書作成を適切に行うことを促すのに有益な判定装置、判定方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示の一実施の形態にかかる判定装置10は、人物の状態情報と、人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、判定対象人物に関する文書の作成の必要度を計算する必要度計算部11と、必要度計算部11が計算した必要度と、判定対象人物について実際に文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定するアラート判定部12を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む第1の学習データを用いることで学習された第1の学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算する必要度計算部と、
前記必要度計算部が計算した前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定するアラート判定部と、
を備える判定装置。
【請求項2】
前記第1の学習モデルの学習には、ロジスティック回帰、SVC(Support Vector Machine)、又はニューラルネットワークのいずれかが用いられる、
請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記必要度計算部は、前記文書の作成が必要か若しくは不要かの少なくともいずれかを示す、前記第1の学習モデルが出力する確率、又は、前記確率がロジット変換された値を、前記必要度として計算する、
請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記アラート判定部は、前記必要度計算部が計算した前記必要度が所定の閾値を超えており、かつ、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されていない場合に、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートを出力する、
請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項5】
前記アラート判定部は、前記必要度計算部が計算した最新の計算時点での前記必要度と、前記判定対象人物について前記必要度計算部が最新の計算時点から過去に計算した過去の前記必要度と、に基づいて、前記判定対象人物における最新の計算時点から将来の前記必要度を予測し、予測した前記必要度が所定の閾値を超える場合に、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートを出力する、
請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項6】
前記人物の状態情報及び前記判定対象人物の状態情報には、前処理がなされた構造化データ及び非構造化データが含まれる、
請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項7】
前記人物の状態情報と、前記人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容と、を含む第2の学習データを用いることで学習された第2の学習モデルに対し、前記判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を出力する記載内容出力部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項8】
前記人物に関する文書は、前記人物の入院診療計画に関する文書、前記人物の院内感染防止対策に関する文書、前記人物の医療安全管理体制に関する文書、前記人物の褥瘡計画に関する文書、又は前記人物の栄養管理体制に関する文書の少なくともいずれかである、
請求項1又は2に記載の判定装置。
【請求項9】
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、
計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する、
コンピュータが実行する判定方法。
【請求項10】
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、
計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、判定装置、判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、医療従事者の負担を軽減するための技術が進展している。例えば、特許文献1には、医師が医用画像データにおいて注視していた領域にも関わらず、レポート文に記述されていない領域に関して、医師に記述漏れの注意喚起を行う支援装置の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-008816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者に質の高い医療を提供する観点、又は医療機関として必要な要件を満たす観点から、医療機関は、患者の状態に応じて特定の種類の文書を作成する必要が生じることがある。しかしながら、患者への医療対応が優先されることによって、そのような文書が適切に作成されないことがある。この場合、行政による調査により、診療の要件が適切に満たされていないと判断され、医療機関が診療報酬を返還せざるを得ないリスクが生じる。
【0005】
本開示の目的は、判定対象人物に関する文書作成を適切に行うことを促すのに有益な判定装置、判定方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる判定装置は、人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報を含む学習データと、を用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算する必要度計算部と、前記必要度計算部が計算した前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定するアラート判定部とを備える。
【0007】
本開示の一態様にかかる判定方法は、人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報を含む学習データと、を用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定することをコンピュータが実行するものである。
【0008】
本開示の一態様にかかるプログラムは、人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報を含む学習データと、を用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定することをコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、判定対象人物に関する文書作成を適切に行うことを促すのに有益な判定装置、判定方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる判定装置の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる判定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1にかかる学習装置の一例を示すブロック図である。
図4】実施の形態1にかかる学習装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2にかかる警告システムの一例を示すブロック図である。
図6】実施の形態2にかかる回帰分析部の一例を示すブロック図である。
図7】実施の形態2にかかる第1の学習データの一例を示すテーブルである。
図8】実施の形態2にかかる判定処理部の一例を示すブロック図である。
図9A】実施の形態2にかかる端末表示の一例を示す図である。
図9B】実施の形態2にかかる端末表示の別の例を示す図である。
図9C】実施の形態2にかかる端末表示の別の例を示す図である。
図10A】実施の形態2にかかる警告システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図10B】実施の形態2にかかる警告システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図11】実施の形態3にかかる判定処理部の一例を示すブロック図である。
図12】実施の形態5に係る決定装置の一例を示すブロック図である。
図13】実施の形態5に係る決定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図14】実施の形態5にかかる警告システムの一例を示すブロック図である。
図15】実施の形態5にかかる回帰分析部の一例を示すブロック図である。
図16】褥瘡計画書における項目毎の記載内容の例を示すテーブルである。
図17】実施の形態5にかかる学習データ前処理部によって生成された第2の学習データの一例を示すテーブルである。
図18】実施の形態5にかかる判定処理部の一例を示すブロック図である。
図19】実施の形態5にかかる警告システムが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図20】各実施の形態にかかる装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して各実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、本開示では、明記のない限り、複数の項目について「その少なくともいずれか」が定義された場合、その定義は、複数の項目中における任意の1項目を意味しても良いし、複数の項目中における任意の2以上の項目(全ての項目を含む)を意味しても良い。
【0012】
実施の形態1
(1A)
以下、図面を参照して本開示の実施の形態1について説明する。この(1A)では、文書作成に関するアラートの出力を決定することが可能な判定装置について説明する。
【0013】
[構成の説明]
図1は、実施の形態1に係る判定装置の一例を示すブロック図である。判定装置10は、必要度計算部11及びアラート判定部12を備える。判定装置10の各部(各手段)は、不図示の制御部(コントローラ)により制御される。以下、各部について説明する。
【0014】
必要度計算部11は、所定の学習モデルに対し、アラートの判定対象となる人物(以下、判定対象人物と記載)の状態情報を入力することで、判定対象人物に関する文書の作成の必要度を計算する。この学習モデルは、ある人物の状態情報と、その人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習されたモデルである。詳細には、学習データは、人物に関する機械学習用のデータであり、説明変数として1以上の人物の状態情報を有し、その説明変数に対応する目的変数として、その人物に関する文書作成が必要か又は不要かを示す情報を有する。学習データは、説明変数と目的変数がセットとなったサンプルを複数有する。
【0015】
人物の状態情報としては、人物の身体的状態を直接的又は間接的に示し得る、1又は複数種類の任意の情報が含まれる。状態情報には、構造化データ、又は非構造化データの少なくともいずれかが含まれていても良い。構造化データは、数値化された任意のデータであり、例えば、人物の年齢、性別、バイタルサイン、検査値、自己申告値、ケアの実施頻度等の情報が該当する。自己申告値は、例えば、睡眠時間、主観的に感じる数値化された体調等の情報が含まれる。一方、非構造化データは、自然言語にて記録された看護記録等の文書、画像、音声等の情報が該当する。画像には、例えば、医用イメージングの画像(可視光、X線、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等による画像)、食事の画像、排泄に関する画像が含まれる。音声には、例えば、医師、看護師又は介護職員による人物の状態の音声記録や、人物の音声が含まれる。このような人物の状態情報は、例えば医療若しくは看護における患者の状態情報、又は介護利用者の状態情報である。
【0016】
人物に関する文書とは、その人物に関連がある1又は複数種類の任意の文書であって、例えば、人物の医療、看護又は介護の少なくともいずれかに関する文書であり、人物が所定の状態にあるときに作成が必要とされる文書、又は作成が推奨される文書のことをいう。所定の状態とは、例えば、人物において所定の傷病の発生若しくは症状の発症がある場合、又はそのような状態の存在が疑われる場合をいう。
【0017】
学習データは、学習対象となる人物について、上記の状態情報、及び文書作成が必要か又は不要かを示す情報を有する。そのため、学習モデルは、この学習データを用いることで、人物がどのような状態にある場合に文書作成の必要度が高いか(又は低いか)を学習する。この学習モデルの生成には、任意の技術を用いることができ、一例として、ロジスティック回帰、SVC(Support Vector Machine)、又はニューラルネットワークのいずれかを用いることができる。必要度計算部11は、その学習済の学習モデルに対して、判定対象人物の状態情報を説明変数として入力することで、判定対象人物に関する文書の作成の必要度を目的変数として計算させる。状態情報は、学習モデルに入力される前に、学習に適した形式となるように変換されても良い。
【0018】
なお、計算される必要度は、定量的に表現される数値等の情報であっても良いし、定性的な形式の情報であっても良い。定量的に表現される情報は、例えば必要か不要かを示す2値であっても良いし、必要度を示す3値以上の離散的な数値又は連続的な数値で表されても良い。3値以上の数値は、文書の作成が必要か若しくは不要かの少なくともいずれかを示す確率を示しても良い。なお、学習モデル又は必要度計算部11は、この確率をロジット変換した数値を計算し、その数値を必要度としても良い。また、必要度の定性的な形式の情報例としては、「文書作成が必要」、「文書作成が必要かもしれない」、「文書作成が必要とは考えにくい」、「文書作成が不要」といったものが想定される。この例では、前者から後者になるにつれて、文書作成の必要度が減少する。ただし、計算される必要度は、これらに限られない。必要度計算部11は、このようにして推論処理を実行する。
【0019】
また、計算される必要度は、計算時点における判定対象人物の文書作成の必要度であっても良い。あるいは、計算される必要度は、それに代えて、又はそれに加えて、計算時点から将来又は過去の少なくともいずれかにおける判定対象人物の文書作成の必要度であっても良い。計算時点からの将来又は過去とは、例えば、計算時点から所定の期間以内の将来又は過去であることを意味するが、これに限られない。
【0020】
アラート判定部12は、必要度計算部11が計算した判定対象人物に関する文書作成の必要度と、判定対象人物について実際に文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する。具体的には、アラート判定部12は、判定対象人物について実際に文書が作成されていない場合であり、かつ、計算された判定対象人物に関する文書作成の必要度が所定値又は所定の情報であれば、判定対象人物の文書作成が必要と判定し、アラートを出力する。
【0021】
計算される必要度が、計算時点における判定対象人物の文書作成の必要度である場合、アラート判定部12は、例えば、判定対象人物について計算時点で有効な文書が実際に作成されたか否かを示す情報を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する。計算時点で有効な文書とは、例えば、作成された文書が所定の要件を満たしていることや、計算時点から所定期間以内(有効期限以内)の過去において文書が作成されたことを意味する。
【0022】
例えば、必要度が「必要」又は「不要」の2値のいずれかで表されると仮定し、判定対象人物について実際に文書が作成されていない場合であり、かつ、判定対象人物に関する計算時点における文書作成の必要度が「必要」である場合を仮定する。このとき、アラート判定部12は、判定対象人物の文書作成が必要と判定する。別の例として、必要度が3値以上のいずれかで表されると仮定し、判定対象人物について実際に文書が作成されていない場合であり、かつ、判定対象人物に関する計算時点における文書作成の必要度が所定の段階以上である場合を仮定する。このとき、アラート判定部12は、判定対象人物の文書作成が必要と判定する。
【0023】
また、計算される必要度が、計算時点から将来における判定対象人物の文書作成の必要度である場合、アラート判定部12は、例えば、判定対象人物についてその将来のタイミングで有効な文書が実際に作成されたか否かを示す情報を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する。将来のタイミングで有効な文書とは、例えば、作成された文書が所定の要件を満たしていることや、将来のタイミングから所定期間以内(有効期限以内)の過去において文書が作成されたことを意味する。
【0024】
また、計算される必要度が、計算時点から過去における判定対象人物の文書作成の必要度である場合、アラート判定部12は、例えば、判定対象人物についてその過去のタイミングで有効な文書が実際に作成されたか否かを示す情報を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する。過去のタイミングで有効な文書とは、例えば、作成された文書が所定の要件を満たしていることや、過去のタイミングから所定期間以内(有効期限以内)の過去において文書が作成されたことを意味する。
【0025】
なお、判定装置10の内部又は外部には、ユーザに対して少なくとも表示又は音声等でアラートを報知可能な報知部が設けられている。報知部は、例えばディスプレイやスピーカ等で構成されている。アラート判定部12がアラートを報知部に対して出力することにより、報知部からユーザに対してアラートが発せられる。
【0026】
なお、実施の形態1において「人物」又は「判定対象人物」は、例えば医療行為の対象となる患者や、介護の対象となる被介護者等であっても良いが、「人物」又は「判定対象人物」となる対象はこれらの人物に限られない。また、判定装置10のユーザは、例えば医療従事者や、介護職員等であっても良いが、ユーザとなる対象はこれらの人物に限られない。なお、医療従事者の具体例は、医師や看護師等である。
【0027】
[処理の説明]
図2は、判定装置10の代表的な処理の一例を示したフローチャートであり、このフローチャートによって、判定装置10の処理が説明される。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、説明を省略する。
【0028】
まず、判定装置10の必要度計算部11は、事前に学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、判定対象人物に関する文書の作成の必要度を計算する(ステップS11;計算ステップ)。アラート判定部12は、必要度計算部11が計算した必要度と、判定対象人物について実際に文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する(ステップS12;判定ステップ)。
【0029】
[効果の説明]
以上のようにして、判定装置10は、例えば必要度計算部11が計算した必要度が所定の値であり、かつ、判定対象人物の文書作成がなされていないような場合に、ユーザに対してアラートを発することができる。このアラートは、判定対象人物に関する文書作成を適切に行うことを促すものである。ユーザは、このアラートによって、判定対象人物に関する文書作成が必要であることに気付くことができ、文書作成をするといった対応を取ることができる。そのため、必要な文書が作成されずに放置されることで生じてしまう診療報酬の返還、行政処分や訴訟といったリスクを抑制することが可能となる。
【0030】
(1B)
次に、(1B)では、学習モデルを生成可能な学習装置について説明する。
【0031】
[構成の説明]
図3は、実施の形態1に係る学習装置の一例を示すブロック図である。学習装置20は、前処理部21及びモデル学習部22を備える。学習装置20の各部(各手段)は、不図示の制御部(コントローラ)により制御される。以下、各部について説明する。
【0032】
前処理部21は、人物の状態に関するデータに前処理を実施することで、人物の状態情報を生成する。前処理は、データを学習モデルに入力させるのに適した形式となるように変換するために行う処理である。前処理の対象となるデータは、構造化データ又は非構造化データの少なくともいずれかを含んでも良い。データに非構造化データが含まれる場合には、前処理部21は、例えばBoW(Bag of Words)、Word2Vec又はBert(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)のいずれかの手法によって前処理を実行することができる。人物の状態に関するデータ及び人物の状態情報は、人物の身体的状態を直接的又は間接的に示す1又は複数種類の任意の情報を有する。この定義の詳細は(1A)の通りであるため、説明を省略する。
【0033】
モデル学習部22は、前処理部21が生成した人物の状態情報と、その人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報を含む学習データを用いることで、学習モデルを学習させる。人物に関する文書の定義の詳細は(1A)の通りであるため、説明を省略する。学習モデルの学習には、ロジスティック回帰、SVC、ニューラルネットワークといった任意の技術を用いることができる。
【0034】
学習データは、学習対象となる人物について、上記の状態情報、及び文書作成が必要か又は不要かを示す情報を有する。そのため、学習モデルは、この学習データを用いることで、人物がどのような状態にある場合に文書作成の必要度が高いか(又は低いか)を学習する。この学習モデルが学習された後、判定対象人物の状態情報が学習モデルに説明変数として入力された場合、判定対象人物に関する文書の作成の必要度が、目的変数として計算され、出力される。計算される必要度の例については、(1A)に記載の通りである。
【0035】
[処理の説明]
図4は、学習装置20の代表的な処理の一例を示したフローチャートであり、このフローチャートによって、学習装置20の処理が説明される。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、説明を省略する。
【0036】
まず、学習装置20の前処理部21は、人物の状態に関するデータに前処理を実施することで、その人物の状態情報を生成する(ステップS21;生成ステップ)。モデル学習部22は、人物の状態情報と、その人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報を含む学習データを用いることで、判定対象人物に関する文書の作成の必要度を計算するモデルを学習させる(ステップS22;学習ステップ)。
【0037】
[効果の説明]
以上のようにして、学習装置20は、モデルに学習させるための学習データを生成し、それを用いて判定対象人物用の学習モデルを学習させることができる。そのため、この学習モデルを用いることで、例えば(1A)に示したように、判定対象人物に関する文書作成を適切に行うことを促すことができる。これにより、判定対象人物に関する文書作成が必要であることをユーザに気付かせることが可能となる。
【0038】
なお、学習装置20は、例えば(1A)に示した判定装置10と接続され、又は判定装置10と同じ装置を構成することにより、文書作成に関するアラートのためのAI(Artificial Intelligence)システムを構築することができる。この詳細な具体例については、実施の形態2で説明する。
【0039】
実施の形態2
以下、図面を参照して本開示の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、実施の形態1にて説明した判定装置10及び学習装置20を搭載したシステムの具体例を開示する。ただし、実施の形態1に示した装置の具体例は、以下に限られない。
【0040】
[構成の説明]
図5は、実施の形態2に係る警告システムの一例を示すブロック図である。警告システム100は、病院のデータを管理する医療システムであり、回帰分析部101及び判定処理部102を備える。警告システム100は、ネットワークを介して、電子カルテDB(Data Base)200、特定文書DB300及び端末400とそれぞれ通信可能なように接続されている。
【0041】
電子カルテDB200には、患者の状態に関する電子カルテデータとして、患者の年齢、性別、病名、バイタルサイン、検査結果、看護記録及び患者の状態を示すその他の文書の情報が、患者及びその担当看護師を特定する情報(例えば、患者及びその担当看護師の氏名や番号)と対応付けられて、患者毎に格納されている。検査結果には、検査値や、医用イメージングの画像が含まれる。その他の文書としては、例えば、入院診療計画書、外出・外泊の計画書といった文書が該当するが、文書の種類はこれに限られない。看護記録やその他の文書については、自然言語として記録されている。また、電子カルテデータには、音声情報等、実施の形態1で人物の状態情報として挙げられた性質を有する情報も含まれ得る。電子カルテデータは、看護師等の医療従事者が各患者の状態情報を新たに入力する度に更新される。なお、電子カルテデータにおける画像は、例えば医療機関内に設置されたカメラ等と接続されることにより取得することができる。
【0042】
特定文書DB300には、作成の必要度を判定する対象である特定文書の作成履歴に関する情報が、各患者に対して格納されている。判定対象となる特定文書は、医療又は看護に係る1以上の文書であり、例えば、入院診療計画に関する文書(一例として「入院診療計画書」)、院内感染防止対策に関する文書(一例として「院内感染防止対策書」)、医療安全管理体制に関する文書(一例として「医療安全管理体制書」)、褥瘡計画に関する文書(一例として「褥瘡計画書」)、又は栄養管理体制に関する文書(一例として「栄養管理計画書」)の少なくともいずれかを示す。但し、医療又は看護に関係がある文書であれば、文書の種類はこれらに限られない。作成履歴の情報としては、特定文書が作成されたか否かを示す情報が少なくとも格納される。ただし、作成履歴の情報には、特定文書が作成された場合、その作成日付を示す情報がさらに含まれていても良い。
【0043】
警告システム100は、第1の学習モデルの学習段階において、電子カルテDB200に格納された電子カルテデータと、特定文書DB300に格納された特定文書作成の有無を示す履歴情報(特定文書の作成が必要か否かを示す情報)とを取得する。そして、これらを第1の学習データとして利用し、第1の学習モデルを学習させる。その後、警告システム100は、判定対象患者(例えば新規な患者)に関する電子カルテデータを定期的に電子カルテDB200から取得し、この電子カルテデータ及び学習済の第1の学習モデルを用いて、判定対象患者の特定の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する。
【0044】
ある判定対象患者の特定文書の作成に関してアラートの出力が必要と判定された場合、警告システム100は、端末400にアラートを出力する。この処理の詳細については後述する。なお、以上に示した、判定対象患者の電子カルテデータの取得、アラートの出力有無の判定及びアラート出力の一連の処理は、警告システム100が定期的に(例えば、一日に一回、又は一週間に一回の頻度で)実行しても良いし、不定期に実行しても良い。
【0045】
端末400は、画面及び入力部(例えばキーボードやマウス)を備えており、警告システム100からアラートが出力された場合、端末400は画面にそのアラートを表示させる。医療従事者は、その端末400を見ることにより、その患者の特定文書が生成されていないことを認識し、端末400の入力部を操作してその文書を作成することができる。
【0046】
以下、警告システム100の詳細な構成について説明する。図5に記載の通り、警告システム100は、回帰分析部101及び判定処理部102を備える。回帰分析部101は、複数の患者の電子カルテデータと、その各患者についての特定文書作成の履歴情報を用いることにより、第1の学習モデルに対して、患者がどのような状態にある場合に特定文書作成の必要度が高いか(又は低いか)を予め学習させる。そして、回帰分析部101はその第1の学習モデルを用いて、判定対象患者に対する文書作成の必要度を判定する推論処理を実行する。判定処理部102は、回帰分析部101が計算したその必要度を用いて、判定対象患者に対する特定文書の新規作成が必要であるか否かを判定し、必要である場合に、端末400にアラートを出力する。
【0047】
図6は、回帰分析部101の一例を示すブロック図である。回帰分析部101は、学習データ前処理部111、モデル学習部112、モデル記憶部113、対象データ前処理部114及び必要度計算部115を備える。以下、各部について説明する。
【0048】
学習データ前処理部111は、第1の学習データの説明変数として過去の患者(以下、過去患者とも記載)の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する。電子カルテデータには、上述の通り、構造化データ及び非構造化データ(看護記録等の文書、画像、音声等の情報)が含まれており、学習データ前処理部111はこれらのデータの各項目について、第1の学習モデルに入力させるのに適した形式となるような前処理を施す。例えば、学習データ前処理部111は、非構造化データに対し、BoW、Word2Vec又はBert等の手法によって前処理を実行して、数値化されたベクトル情報に変換することができる。また、学習データ前処理部111は、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間(時間間隔)を特定し、その期間毎に、過去患者の電子カルテデータを抽出する。これにより、学習データ前処理部111は、電子カルテデータについて、(過去患者,判定対象期間)のサンプルセットを抽出することにより、第1の学習データを生成することができる。
【0049】
さらに、学習データ前処理部111は、過去患者の電子カルテデータの各サンプルセットに対応する特定文書作成の履歴情報を、特定文書DB300から取得する。例えば、電子カルテデータのあるサンプルセットにおいて、特定の患者の特定の日付の状態情報が含まれる場合に、学習データ前処理部111は、その特定の患者の特定の日付における特定文書作成の履歴を、特定文書DB300から取得する。そして、学習データ前処理部111は、抽出した履歴情報のサンプルセットと、電子カルテデータのサンプルセットとを対応付けることで、第1の学習データを生成する。
【0050】
図7は、学習データ前処理部111によって生成された第1の学習データの一例を示すテーブルである。この例では、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間は一日であり、電子カルテデータ及び特定文書作成の履歴情報について、(過去患者,日数)の各サンプルセットが抽出されている。ただし、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間はこれに限られない。例えば、判定対象期間が一週間である場合には、電子カルテデータ及び特定文書作成の履歴情報について、(過去患者,週)の各サンプルセットが抽出されることになる。
【0051】
図7では、過去患者のサンプルとして患者A、患者Bが設定され、日数のサンプルとして1日目、2日目が設定されているが、取得される電子カルテデータに含まれる患者数及び日数はこの例に限られない。また、図7には、各サンプルセットにおける患者の状態情報(電子カルテデータの情報)として、体温、年齢、ベクトル情報に変換された看護記録が示されているが、患者の状態情報として含まれる情報は、これらに限定されない。
【0052】
図7では、特定文書である文書1、文書2の作成の履歴情報として、患者Aの1日目及び2日目、並びに患者Bの1日目及び2日目について、作成の有無を示す情報が示されている。履歴情報が「1」であれば作成がなされ、「0」であれば作成がなされなかったことを意味する。患者の状態情報は、第1の学習データにおける説明変数であり、履歴情報は、特定文書作成の必要性を示す情報であって、第1の学習データにおける目的変数である。学習データ前処理部111は、このようにして生成された第1の学習データを、モデル学習部112に出力する。
【0053】
モデル学習部112は、学習データ前処理部111が生成した第1の学習データを用いて、第1の学習モデルにおけるモデルパラメータの学習を実行する。第1の学習モデルには、例えば、ロジスティック回帰、SVC、又はニューラルネットワークのいずれかの技術を用いることができる。第1の学習モデルは、この学習によって、患者がどのような状態にある場合に文書作成の必要度が高いか(又は低いか)を学習する。モデル記憶部113には、その学習済の第1の学習モデルが記憶される。詳細には、学習済の第1の学習モデルのモデルパラメータがモデル記憶部113に記憶される。
【0054】
対象データ前処理部114は、判定対象患者の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する。電子カルテデータには、上記の構造化データ及び非構造化データが含まれており、対象データ前処理部114は、学習データ前処理部111と同様の前処理を施す。この前処理の詳細は、学習データ前処理部111について説明した通りである。このとき、対象データ前処理部114は、判定対象患者に関して、判定対象となる判定対象期間の分の電子カルテデータを抽出する。例えば、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間が一日であれば、対象データ前処理部114は、判定対象日当日の判定対象患者における電子カルテデータを抽出する。あるいは、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間が一週間であれば、対象データ前処理部114は、判定対象日を含めた一週間分の判定対象患者における電子カルテデータを抽出することができる。対象データ前処理部114は、このようにして取得した電子カルテデータに前処理を実行したものを、必要度計算部115に出力する。
【0055】
必要度計算部115は、前処理がなされた判定対象患者のデータを、説明変数として、モデル記憶部113に記憶された学習済の第1の学習モデルに入力する。この結果、第1の学習モデルは、判定対象患者に関する特定文書の作成の必要度を、目的変数として計算する。ここで計算される必要度は、特定文書の作成が必要であることを示す確率であり、0以上1以下の数値を取り得る。必要度が1に近いほど、特定文書の作成が必要であり、必要度が0に近いほど、特定文書の作成が不要であることを意味する。ただし、必要度が取り得る値はこれに限られない。また、必要度計算部115は、第1の学習モデルが算出した確率をロジット変換し、変換後の数値を必要度としても良い。なお、判定対象となる特定文書が複数ある場合、第1の学習モデルは各特定文書に関して、必要度を算出する。
【0056】
図8は、判定処理部102の一例を示すブロック図である。判定処理部102は、必要度記憶部121及びアラート判定部122を備える。以下、各部について説明する。
【0057】
必要度記憶部121は、必要度計算部115によって計算がなされる度に、その計算結果を内部に記憶し、計算履歴として保持する。例えば、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間が一日であれば、必要度記憶部121は、一日毎に判定対象患者の計算結果を更新し、新たに計算された計算結果を内部に格納する。なお、必要度記憶部121は、計算時から所定の期間が経過した計算結果を、内部から消去しても良い。
【0058】
さらに、必要度記憶部121には、判定対象となる1以上の各特定文書について、以下のような閾値がさらに格納されても良い。例えば、必要度記憶部121には、アラート情報出力の必要性を判定するための所定の閾値が格納されていても良い。また、これとは別に、必要度記憶部121は、アラートが発出される際に、アラートの端末400での提示態様(アラートのレベル)を変更するか否かを判定するための所定の閾値が格納されていても良い。これらの閾値は、判定対象患者毎に同じ値であっても良いし、異なる値であっても良い。また、これらの閾値は、適宜更新されても良い。さらに、これらの閾値は、定数であっても良いし、判定のタイミング(例えば日付)といった条件に応じて変化可能な変数であっても良い。
【0059】
アラート判定部122は、必要度記憶部121に記憶された判定対象患者に関する必要度の計算結果が更新された場合に、特定文書の作成の必要の有無に関して、アラートの有無を判定する。
【0060】
例えば、アラート判定部122は、更新され、新たに計算された特定文書作成の必要度(必要度計算部115による最新の計算時点での特定文書作成の必要度)を、必要度記憶部121から取得する。また、その特定文書に関する、アラート情報出力の必要性を判定するための所定の閾値についても、必要度記憶部121から取得する。アラート判定部122は、両者を比較し、最新の計算時点での特定文書作成の必要度が、所定の閾値を超えているか否かを判定する。
【0061】
最新の計算時点での特定文書作成の必要度が所定の閾値を超えていない場合(所定の閾以下である場合)、アラート判定部122は、その特定文書については作成する必要がないと判定する。一方、最新の計算時点での特定文書作成の必要度が所定の閾値を超えている場合、アラート判定部122は、その特定文書を作成する必要があると判定する。このとき、アラート判定部122はさらに、特定文書DB300にアクセスし、判定対象患者について、作成する必要があると判定された特定文書の作成履歴を参照する。そして、判定対象患者について、作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されているか否かを判定する。
【0062】
作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されている場合、アラート判定部122は、判定対象患者のその特定文書に関するアラートの発出は不要と判断する。
【0063】
ただし、アラート判定部122は、作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されている場合であっても、その特定文書の作成日付が判定対象期間外(すなわち有効期間外)であれば、作成の必要があると判定された特定文書が作成されていないとみなすことができる。例えば、判定対象期間が一日である一方、その特定文書の最新の作成日付が、必要度が計算された日付の一日前であれば、アラート判定部122は、判定対象となる特定文書が作成されていないとみなすことができる。同様に、判定対象期間が一週間である一方、その特定文書の最新の作成日付が、必要度が計算された日付の一週間より前であれば、アラート判定部122は、判定対象となる特定文書が作成されていないとみなすことができる。
【0064】
アラート判定部122は、作成の必要があると判定された特定文書が作成されていない場合、又は作成されていないとみなされた場合に、判定対象患者について、現段階で作成されるべき特定文書が未だ作成されていない(すなわち、作成漏れがある)と判定する。そのため、アラート判定部122は、判定対象患者のその特定文書に関するアラートの発出が必要と判断し、判定対象患者のその特定文書に関するアラート情報を生成し、端末400に出力する。このアラート情報には、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報(例えば判定対象患者及びその担当看護師における、氏名又は番号の少なくともいずれか)、作成漏れがあると判定された特定文書を特定する情報、及び現段階でその作成が必要とされることを示す情報(文言等の表現)が含まれ得る。さらに、アラート情報には、所定の閾値を超えると必要度計算部115が計算した必要度、又はその必要度に基づく、特定文書の作成の必要性を示す文面等の表現の少なくともいずれかが含まれていても良い。なお、アラート判定部122は、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報を、判定対象患者の電子カルテデータから抽出することで、アラート情報を生成する。
【0065】
また、アラート判定部122は、必要度記憶部121から、判定対象患者の特定文書について、最新の計算時点から所定の期間分の過去の計算結果を取得することもできる。アラート判定部122は、最新の計算時点での特定文書作成の必要度と、取得した過去の期間における特定文書作成の必要度の計算結果を用いて、将来(例えば、最新の計算時の翌日又は翌々日までといった、最新の計算時から所定期間以内の将来)における特定文書作成の必要度を予測することができる。この予測は、例えば、上記の判定により、最新の計算時点での特定文書作成の必要度が所定の閾値を超えていない場合に実行される。しかしながら、この予測は、最新の計算時点での特定文書作成の必要度が所定の閾値を超えている場合であっても実行されても良い。
【0066】
アラート判定部122は、判定対象患者について、最新の計算時点での特定文書作成の必要度の数値と、取得した過去の期間における特定文書作成の必要度の数値を用いて、例えば外挿の手法により、将来における特定文書作成の必要度の数値を予測することができる。ただし、予測方法はこれに限られない。例えば、アラート判定部122は、予測用のモデルに対し、判定対象患者の最新の計算時点及び取得した過去の期間における特定文書作成の必要度の数値を入力することで、将来における特定文書作成の必要度を計算させても良い。この予測用のモデルは、第1の学習データとして、過去患者における必要度の数値の時系列での変遷に関するデータを用いることで、学習させることができる。
【0067】
予測された必要度の数値が、最新の計算時点から将来までの期間のどこかで、アラート情報出力の必要性を判定するための所定の閾値を超える場合、アラート判定部122は、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定する。そして、判定対象患者のその特定文書に関するアラート情報を生成し、端末400に出力する。このアラート情報には、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報、将来作成する必要が生じると判定された特定文書を特定する情報、及び作成が必要になると予測されるタイミングを特定する情報が含まれ得る。また、アラート情報には、判定対象患者の最新の計算時点及び過去の期間における特定文書作成の必要度の数値の情報が、さらに含まれていても良い。さらに、アラート情報には、アラート判定部122が所定の閾値を超えると予測した必要度、又はその必要度に基づく、特定文書の作成の必要性を示す文面等の表現の少なくともいずれかが含まれていても良い。
【0068】
ただし、アラート判定部122は、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定した場合でも、作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されており、所定の条件を満たす場合、アラート情報を生成し、出力しなくても良い。所定の条件とは、特定文書の作成日付が、作成が必要になると予測される将来のタイミングから見て判定対象期間内(すなわち有効期間内)である場合である。アラート判定部122は、この場合、作成が必要になると予測される将来のタイミングにおいて、必要な特定文書が作成されていることになると判定し、アラート情報を出力しない。しかしながら、アラート判定部122は、この判定を実行することなく、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定した場合、一律に判定対象患者のその特定文書に関するアラート情報を生成し、端末400に出力しても良い。
【0069】
さらに、アラート判定部122は、アラート情報を出力する場合に、端末400におけるその提示態様(アラートのレベル)を、最新の計算時点での必要度又は予測された必要度の数値に応じて変更しても良い。アラート判定部122は、アラートのレベルを変更するか否かを、必要度記憶部121に記憶された所定の閾値を用いて判定する。
【0070】
例えば、ある特定文書作成について、必要度を判定するための所定の閾値が0.5であり、アラートのレベルを上げるか否かを判定するための所定の閾値が0.8であるとする。ある特定文書作成について、最新の計算時点での必要度が0.7である場合、最新の計算時点での必要度は、アラート発出の必要に関する閾値を超えるものの、アラートのレベルに関する判定の閾値以下である。この場合、アラート判定部122は、アラートが必要であると判定するものの、アラートのレベルを上げる必要はないと判定し、通常レベルのアラートを出力する。一方、ある特定文書作成について、最新の計算時点での必要度が0.9である場合、最新の計算時点での必要度は、アラート発出の必要に関する閾値だけでなく、アラートのレベルに関する判定の閾値をも超える。この場合、レベルを上げたアラートを発出する必要があると判定し、レベルを上げた提示態様の情報を含むアラート情報を出力する。
【0071】
以上に示した「アラートのレベルを上げる」とは、端末400を操作するユーザに対してアラート情報の訴求力を上げるような提示態様を端末400にさせることを意味する。具体的には、アラートのレベルを上げることで、端末400の画面に表示させるアラート情報の色をより目立つものにすること、アラート情報の表示領域を拡大すること、アラート情報を音声でも通知するようにすること、又はアラート情報を通知する音量を大きくすること等が想定される。アラート情報の色をより目立つものにすることは、例えば、警告のため表示される色を黄色から赤色に変更すること等が含まれる。
【0072】
また、アラート判定部122は、アラートのレベルを上げた場合、アラート情報を常に出力する対象である端末400だけでなく、別の所定の端末(例えば、看護師長等、文書作成者の監督者となる人物の端末)にもアラート情報を通知することができる。この所定の端末は、予め設定された端末であり、判定対象患者及び特定文書の種類に関わらず同一の端末が設定されても良いし、判定対象患者又は特定文書の種類の少なくともいずれかに応じて、異なる端末が設定されても良い。このような所定の端末は、例えば必要度記憶部121にその接続先情報が格納されている。アラート判定部122は、判定対象患者及び特定文書の情報に応じてその接続先情報を参照することによって、端末400以外にアラート情報を出力する端末を特定し、その端末にアラート情報を出力する。しかしながら、アラートのレベルを上げることに伴う具体的な提示態様の変化は、上記に示したものに限られない。
【0073】
アラートのレベルは、上記に示した高・低の2段階に限られず、3段階以上のレベルが設定されても良い。その場合、アラートのレベルに関する判定の閾値として、複数の閾値が必要度記憶部121に格納されることになる。
【0074】
アラート判定部122は、判定対象となる特定文書が複数ある場合には、各特定文書に関して、上記の判定及びアラート情報の出力処理を実行する。
【0075】
端末400は、アラート判定部122から出力されたアラート情報をユーザに提示する。端末400は、画面での表示、スピーカによる音声出力等の態様によって、アラート情報をユーザに提示する。このアラート情報は、アラート判定部122によってアラートが必要と判定された特定文書毎に、端末400によって提示される。
【0076】
図9Aは、実施の形態2にかかる端末表示の一例を示す図である。図9Aに示されたGUI(Graphical User Interface)のイメージは、担当看護師が端末400の画面を表示している際に、アラート情報A1及びA2が画面にリスト化されて表示されている状態を示す。アラート情報A1では、褥瘡計画書の作成漏れがあることが表示され、アラート情報A2では、栄養管理計画書の作成漏れがあることが表示されている。また、アラート情報A1及びA2では、判定対象患者の番号(ID)、年齢等の患者の状態情報も、電子カルテデータから抽出された情報として端末400に表示されている。このように、特定文書の作成漏れが起きたことを警告システム100が判断した場合、判定対象患者と該当の文書名がリスト化されて端末400に表示することができる。
【0077】
図9Aでは、アラート情報A2に対し、アラート情報A1におけるアラートのレベルが上げられた状態となっている。すなわち、アラートであることを示す感嘆符が、アラート情報A1ではアラート情報A2に比較して大きく、かつ目立つ色で表示されている。また、アラート対象となる特定文書の情報も、アラート情報A1ではアラート情報A2に比較して大きく表示されている。
【0078】
端末400は、端末400のユーザのログイン等の際に担当看護師を特定する情報が入力された場合、その情報と、アラート情報に含まれる担当看護師の特定情報とを照合し、両者が一致した場合に、そのアラート情報をユーザに提示しても良い。別の例として、端末400には、担当看護師とその監督者を対応付ける情報が事前に記憶されていても良い。ユーザのログイン等の際に、担当看護師の監督者を特定する情報が入力された場合、端末400は、入力された監督者を特定する情報と、アラート情報に含まれる担当看護師の特定情報とが、事前に記憶されたその情報に一致しているか否かを判断する。一致している場合に、端末400は、アラート情報をユーザに提示する。
【0079】
また、端末400は、担当看護師の監督者(例えば看護師長)の端末であっても良い。この場合、監督者は、アラート情報を一括して把握及び管理することができ、アラート情報がアラート判定部122から出力された場合、該当する担当看護師にその情報を伝達することができる。
【0080】
以上では、アラート判定部122が端末400にアラート情報を出力する例について説明した。しかしながら、アラート判定部122は、端末400に代えて、又は端末400に加えて、電子カルテDB200にアラート情報を出力しても良い。この場合、電子カルテDB200には、アラート情報が指定する判定対象患者又は担当看護師の電子カルテデータに紐づけられた状態で、アラート情報が格納される。
【0081】
図9Bは、端末表示の別の例を示す図である。図9Bに示されたGUIのイメージは、担当看護師が端末400を操作し、電子カルテDB200にアクセスして、判定対象患者についての電子カルテデータを閲覧する際の状態を示す。判定対象患者について特定文書である褥瘡計画書の作成漏れが起きていることは、ポップアップ形式で表示されたアラート情報A3によって通知されている。このようにして、日々の現場業務を行っている担当看護師に対して、特定文書の作成が忘れられている点を気づかせることが可能となる。ただし、担当看護師だけでなく、他の看護師や監督者が電子カルテDB200にアクセスした際にも、端末400は、アラート情報を同様の方法で提示することができる。
【0082】
図9Cは、端末表示の別の例を示す図である。この表示は、アラート判定部122が、最新の計算時点(図9Cにおける「今日」)から2日後の将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定した場合のアラート情報を示す。このアラート情報には、将来作成する必要が生じると判定された特定文書の情報、作成が必要になると予測されるタイミングを特定する情報、判定対象患者の最新の計算時点及び過去の期間における必要度の数値の情報、及び所定の閾値を超えると外挿によって予測された必要度の数値の情報が含まれる。所定の閾値は、図9Cでは0.5として示される。また、図9Cでは記載を省略しているが、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報がさらに表示されていても良い。
【0083】
[処理の説明]
図10A及び10Bは、警告システム100が実行する処理の一例を示すフローチャートであり、このフローチャートによって、警告システム100の処理が説明される。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、説明を省略する。
【0084】
まず、学習データ前処理部111は、過去患者の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する。また、学習データ前処理部111は、その過去患者の電子カルテデータに対応する特定文書作成の履歴情報を、特定文書DB300から取得する。学習データ前処理部111は、これらのデータに基づいて、第1の学習データを生成する(ステップS31)。モデル学習部112は、ステップS31で生成された第1の学習データを用いて、第1の学習モデルの学習を実行する(ステップS32)。ステップS31~S32が、判定処理前に実行される学習フェーズである。学習された第1の学習モデルは、モデル記憶部113に格納される。
【0085】
対象データ前処理部114は、判定対象患者の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する(ステップS33)。必要度計算部115は、前処理がなされた判定対象患者のデータを第1の学習モデルに入力することで、判定対象患者に関する特定文書の作成の必要度を計算させる(ステップS34)。必要度記憶部121は、必要度計算部115の計算結果を計算履歴として保持する。
【0086】
アラート判定部122は、必要度記憶部121に新たに記憶された所定の特定文書に関する必要度の数値と、その特定文書に関する判定のための所定の閾値とを比較し、必要度が所定の閾値を超えているか否かを判定する(ステップS35)。
【0087】
必要度が所定の閾値を超えていない場合(ステップS35のNo)、アラート判定部122は、その特定文書については作成する必要がないと判定する。この場合、アラート判定部122は、その特定文書についてのアラート情報を出力しない。
【0088】
一方、必要度が所定の閾値を超えている場合(ステップS35のYes)、アラート判定部122は、その特定文書を作成する必要があると判定する。この場合、アラート判定部122は、判定対象患者について、作成する必要があると判定された特定文書の作成履歴を参照し、その特定文書が既に作成されているか否かを判定する(ステップS36)。
【0089】
作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されている場合(ステップS36のYes)、アラート判定部122は、判定対象患者のその特定文書に関するアラートの発出は不要と判断する。この場合、アラート判定部122は、その特定文書についてのアラート情報を出力しない。
【0090】
一方、アラート判定部122は、作成の必要があると判定された特定文書が作成されていない場合(ステップS36のNo)、判定対象患者について、現段階で作成されるべき特定文書が未だ作成されていない(すなわち、作成漏れがある)と判定する。そのため、アラート判定部122は、判定対象患者のその特定文書に関するアラートの発出が必要と判断し、端末400に対し、判定対象患者のその特定文書に関するアラート情報を出力する(ステップS37)。
【0091】
[効果の説明]
看護師等、医療従事者は多忙であるため、患者への医療対応を行う過程で、必要となる文書作成を失念する可能性がある。特に、文書作成の必要性の判定に関して、その明示的なルールの生成が困難な文書が存在する。このような文書の具体例として、褥瘡計画書等が挙げられる。これらの文書は、患者の褥瘡の発生リスク又は低栄養状態といった患者の状態を判断するという、医療従事者の専門的な技能が必要となるため、判定の明示的なルールの生成が困難であった。そのような文書については、医療従事者が作成を忘れた場合、その作成が必要であることに気付ける人物が少なく、そのまま作成が忘れられてしまう懸念があった。
【0092】
実施の形態2に記載の警告システム100は、この課題を解決することが可能である。具体的には、警告システム100は、過去のデータを第1の学習データとして活用し、患者の状態情報(身体的状態を示す検出値や看護記録等の文書情報を含む)と、文書作成の必要性との関係を、AIで学習して第1の学習モデルを生成する。その上で、警告システム100は、第1の学習モデルを用いて判定対象患者の状態情報を自動的に分析し、文書作成の必要度を判断することでアラートを出力するため、必要な文書の作成漏れを抑制することができる。端的に言えば、警告システム100は、医療従事者への支援システムとして機能する。
【0093】
また、第1の学習モデルの学習には、ロジスティック回帰、SVC、又はニューラルネットワークのいずれかを用いても良い。これにより、既存のアルゴリズムを適用し、第1の学習モデルの学習処理を容易に実行することができる。
【0094】
また、必要度計算部115は、特定文書の作成が必要か若しくは不要かの少なくともいずれかに関する、第1の学習モデルが出力する確率、又は、その確率がロジット変換された値を、必要度として計算しても良い。これにより、必要度が分かりやすく表されるため、アラートの判定に必要な計算処理が少なくなるほか、ユーザが必要度を参照する際に、必要度の概念を明確に理解することができる。
【0095】
また、アラート判定部122は、必要度計算部115が計算した必要度が所定の閾値を超えており、かつ、判定対象患者について実際に特定文書が作成されていない場合に、判定対象患者の特定文書作成に関するアラートを出力しても良い。これにより、作成の必要性が高いと考えられる特定文書であるにも関わらず、作成されていない文書について、ユーザに確実に気づきを与え、作成させることができる。
【0096】
また、アラート判定部122は、必要度計算部115が計算した最新の計算時点での必要度と、判定対象患者について過去に計算された過去の必要度と、に基づいて、判定対象患者における将来の必要度を予測しても良い。予測した必要度が所定の閾値を超える場合に、アラート判定部122は、判定対象患者の文書作成に関するアラートを出力する。これにより、将来作成する必要性が高いと考えられる特定文書について、ユーザに事前に気づきを与え、作成が忘れられることを抑制させることができる。
【0097】
また、第1の学習データとして用いられる患者の電子カルテデータ(状態情報)及び判定対象患者の電子カルテデータ(状態情報)には、前処理がなされた構造化データ及び非構造化データが含まれていても良い。これにより、自然言語にて記録された看護記録等の文書、画像、音声等の情報であっても、特定文書の作成有無の判定に用いることができるため、判定精度を向上させることができる。
【0098】
また、非構造化データは、BoW、Word2Vec又はBertのいずれかの手法によって前処理がなされ、第1の学習モデルに入力されても良い。これにより、既存のアルゴリズムを適用し、非構造化データの前処理を容易に実行することができる。
【0099】
また、患者に関する特定文書は、患者の入院診療計画に関する文書、患者の院内感染防止対策に関する文書、患者の医療安全管理体制に関する文書、患者の褥瘡計画に関する文書、又は患者の栄養管理体制に関する文書の少なくともいずれかであっても良い。これにより、病院等の医療機関における医療従事者の業務を改善することができる。
【0100】
また、アラート判定部122は、必要度計算部121が計算した必要度に基づいて、ユーザに提示するアラートの態様を変更しても良い。これにより、特定文書作成の必要度が高い場合に、よりその必要性を強調するようなアラートが可能となるため、看護師等のユーザに対して、必要性の高い特定文書の作成を促すことができる。
【0101】
なお、判定処理部102は、判定対象患者について計算され、必要度記憶部121に記憶された必要度について、アラート情報が出力されない場合であっても、端末400に出力することができる。例えば、判定対象患者の必要度のデータが更新された場合に、その必要度のデータ、及び、その判定対象患者における、更新時から所定期間以内の過去における必要度のデータ、又は更新時から所定期間以内の将来について予測された必要度のデータの少なくともいずれかについて、端末400に出力されても良い。これにより、特定文書作成の必要度がユーザに対して可視化されることで、将来の特定文書作成の有無に関する注意や、判定対象患者の状態について、何らかの気づきを与えることができる。
【0102】
実施の形態3
以降、実施の形態2のバリエーションについて説明する。なお、以降の説明において、実施の形態2の警告システム100と同じ点については、説明を省略する。
【0103】
[構成の説明]
図11は、実施の形態3に係る判定処理部102の一例を示すブロック図である。判定処理部102は、必要度記憶部121、アラート判定部122のほか、アラート履歴記憶部123及びアラート履歴提示部124を備える。必要度記憶部121、アラート判定部122については、実施の形態2に記載した通りであるため、説明を省略する。
【0104】
アラート履歴記憶部123は、アラート判定部122が特定文書の作成漏れがあると判定し、アラート情報を端末400に出力する場合に、出力されたアラート情報の履歴情報を記憶する。記憶される履歴情報には、例えば、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報、所定の閾値を超えると必要度計算部115が計算した必要度、未だ作成されていないと判断された特定文書を特定する情報、アラート情報が出力された日時情報等が含まれ得る。
【0105】
ただし、アラート判定部122が、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定し、アラート情報を端末400に出力する場合であっても、アラート履歴記憶部123は、出力されたアラート情報に関する履歴情報を記憶しても良い。この履歴情報は、例えば、判定対象患者及びその担当看護師を特定する情報、将来所定の閾値を超えると必要度計算部115が計算した必要度、判定対象患者の最新の計算時点及び過去の期間における特定文書作成の必要度の数値の情報、作成が必要になると予測されるタイミングを特定する情報、将来作成する必要が生じると判定された特定文書を特定する情報、アラート情報が出力された日時情報等が含まれ得る。
【0106】
アラート履歴提示部124は、アラート履歴記憶部123に記憶されたアラート情報に関する履歴情報を、端末400等の端末に出力する。アラート履歴提示部124は、例えば端末からの指示に応じて、特定文書の作成漏れがあると判定された場合におけるアラート情報に関する履歴情報を、端末に出力する。また、アラート履歴提示部124は、同様に、例えば端末からの指示に応じて、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判断した場合におけるアラート情報に関する履歴情報を、端末に出力しても良い。
【0107】
[効果の説明]
以上に示したように、実施の形態3では、判定対象患者の特定文書作成に関するアラートの出力履歴をユーザに提示することが可能となる。そのため、医療従事者等に対し、特定文書の作成漏れ、又は特定文書の将来の作成予定の少なくともいずれかに関する情報を周知させることで、特定文書の作成を促すことができる。
【0108】
また、警告システム100又は他のシステムは、アラート履歴記憶部123に記憶されたアラート情報に関する情報を解析することによって、文書作成漏れの傾向を明らかにすることも可能である。解析は、例えば、電子カルテデータに記録された患者の属性(年齢、性別、病名等)、担当看護師等の情報に基づいてなされる。このようにして、アラート情報に関する情報を二次活用することが可能となる。
【0109】
実施の形態4
[構成の説明]
この実施の形態において、アラート判定部122は、特定文書の作成漏れがあると判定し、アラート情報を端末400に出力する場合に、判定対象患者の電子カルテデータ(状態情報)から、作成漏れがあると判定された特定文書の作成に必要な情報を抽出し、端末400に出力しても良い。端末400は、その情報を画面等で提示する。
【0110】
例えば、アラート判定部122は、特定文書DB300から、作成漏れがあると判定された特定文書に必要な情報の項目を取得する。そして、取得した項目と、判定対象患者の電子カルテデータとを照合し、項目に合致する電子カルテデータの情報を抽出して、端末400に出力する。端末400に出力される情報は、例えば、判定対象患者の年齢、性別、病名、検査結果といった情報であるが、これに限られない。
【0111】
また、アラート判定部122は、作成漏れがあると判定された特定文書の電子フォーマットの情報を取得しても良い。電子フォーマットの情報は、警告システム100内に格納されても良いし、特定文書DB300等、別の装置に格納されていても良い。アラート判定部122は、電子フォーマットの情報に基づいて、判定対象患者の電子カルテデータから、電子フォーマットに記載する電子カルテデータの情報を抽出する。そして、電子フォーマットにその情報を付加し、情報が付加された電子フォーマットのデータを端末400に出力する。この場合、端末400を操作するユーザに対して、必要事項の一部が既に記入された状態の電子フォーマットが提示されることになる。
【0112】
[効果の説明]
以上に示した警告システム100では、特定文書の作成が必要な場合において、その作成支援をすることが可能である。特に、端末400を操作するユーザに対して、必要事項の一部が既に記入された状態の電子フォーマットを提示する場合、ユーザの特定文書の作成にかかる時間を短縮する効果を向上させることができる。なお、特定文書の作成漏れがあると判定された場合に限らず、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定された場合においても、警告システム100では、同様の文書作成支援の処理をすることが可能である。ただし、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定した場合には、アラート判定部122は、必要事項の一部が既に記入された状態の電子フォーマットを端末400に出力しなくとも良い。将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になる場合、特定文書の記載用の電子フォーマットをすぐにユーザに提示する必要がない場合も考えられるからである。
【0113】
実施の形態5
以下、実施の形態5では、実施の形態1~4に関連する発明について説明する。以下の(5A)では、当該発明に関する最小限の構成要素について説明する。また、(5B)では、実施の形態2に記載の警告システム100に対してその発明を適用した場合の具体例(すなわち、実施の形態2のバリエーション)について説明する。なお、(5B)の説明において、実施の形態2の警告システム100と同じ点については、説明を省略する。
【0114】
(5A)
[構成の説明]
図12は、実施の形態5に係る決定装置の一例を示すブロック図である。決定装置30は、少なくとも記載内容決定部31を備える。ただし、決定装置30は、後述の推論処理で用いるための学習モデルを格納するための格納部、又は、推論対象人物の状態情報を取得するための取得部の少なくともいずれかをさらに備えていても良い。決定装置30の各部(各手段)は、不図示の制御部(コントローラ)により制御される。
【0115】
記載内容決定部31は、所定の学習モデルに対し、文書における項目毎の記載内容を推論する対象となる人物(以下、推論対象人物と記載)の状態情報を入力することで、推論対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を決定する。この学習モデルは、ある人物の状態情報と、その人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容と、を含む学習データを用いることで学習されたモデルである。詳細には、学習データは、人物に関する機械学習用のデータであり、説明変数として1以上の人物の状態情報を有し、その説明変数に対応する目的変数として、その人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容を示す情報を有する。学習データは、説明変数と目的変数がセットとなったサンプルを複数有する。
【0116】
人物の状態情報の定義は、実施の形態1の(1A)に示した通りであり、説明を省略する。また、人物に対して作成された文書の定義も、実施の形態1の(1A)に示した「人物に関する文書」と同じであるため、説明を省略する。学習データは、学習対象となる人物について、上記の状態情報、及びその人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容を示す情報を有する。そのため、学習モデルは、この学習データを用いることで、人物がどのような状態にある場合に、文書における項目毎にどのような記載をすべきかを学習する。この学習モデルの生成には、任意の技術を用いることができ、一例として、ロジスティック回帰、SVC、又はニューラルネットワークのいずれかを用いることができる。記載内容決定部31は、その学習済の学習モデルに対して、推論対象人物の状態情報を説明変数として入力することで、推論対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を導出させる。状態情報は、学習モデルに入力される前に、学習に適した形式となるように変換されても良い。
【0117】
[処理の説明]
図13は、決定装置30の代表的な処理の一例を示したフローチャートであり、このフローチャートによって、決定装置30の処理が説明される。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、説明を省略する。
【0118】
決定装置30の記載内容決定部31は、所定の学習モデルに対し、推論対象人物の状態情報を入力することで、推論対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を決定させる(ステップS41;決定ステップ)。この学習モデルは、人物の状態情報と、その人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容とを含む学習データを用いることで学習されたモデルである。
【0119】
[効果の説明]
以上のようにして、決定装置30は、推論対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を決定することができる。これにより、ユーザに対して、推論対象人物に関する文書の記載内容の示唆を与え、文書作成を適切に行うことを促すことができる。ユーザは、この記載内容の情報を取得した際に、推論対象人物に関して正確な内容の文書を作成することができる。そのため、必要な文書が作成されずに放置されることで生じてしまう診療報酬の返還、行政処分や訴訟といったリスクを抑制することが可能となる。
【0120】
(5B)
[構成の説明]
図14は、実施の形態5に係る警告システムの一例を示すブロック図である。警告システム100は、病院のデータを管理する医療システムであり、回帰分析部101、131及び判定処理部132を備える。回帰分析部101の説明は、実施の形態2と同様であるため省略する。
【0121】
なお、警告システム100は、ネットワークを介して、電子カルテDB(Data Base)200、特定文書DB300及び端末400とそれぞれ通信可能なように接続されている。特定文書DB300には、特定文書の作成履歴に関する情報(すなわち、作成された文書の種別を示す情報)だけでなく、特定文書が作成された場合、その特定文書における項目毎の記載内容の情報が、各患者に対して格納されている。特定文書が作成された場合、特定文書DB300には、その作成日付を示す情報がさらに含まれていても良い。
【0122】
図15は、実施の形態5に係る回帰分析部131の一例を示すブロック図である。回帰分析部131は、学習データ前処理部141、モデル学習部142及びモデル記憶部143を備える。以下、各部について説明する。
【0123】
学習データ前処理部141は、第2の学習データの説明変数として過去患者の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する。電子カルテデータに対して学習データ前処理部141が実行する処理は、学習データ前処理部111と同様であるため、説明を省略する。
【0124】
さらに、学習データ前処理部141は、過去患者に対して作成された特定文書の種別を示す情報と、その特定文書における項目毎の記載内容の情報を、特定文書DB300から取得する。特定文書は、実施の形態2に記載の通り、医療又は看護に係る1以上の文書である。
【0125】
図16は、特定文書の一例である褥瘡計画書における項目毎の記載内容の例を示すテーブルである。図16に記載の通り、褥瘡計画書における項目毎の記載内容は、褥瘡の有無、褥瘡発生部位、今後褥瘡発生の可能性がある部位、マットレス、医療従事者による措置内容及び褥瘡の発生に影響する薬剤の使用等情報が含まれる。学習データ前処理部141は、特定文書の種別を示す情報及びこのような記載内容の情報のサンプルセットと、電子カルテデータのサンプルセットとを対応付けることで、第2の学習データを生成する。
【0126】
図17は、学習データ前処理部141によって生成された第2の学習データの一例を示すテーブルである。この例では、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間は一日であり、電子カルテデータ及び特定文書作成の履歴情報について、(過去患者,日数)の各サンプルセットが抽出されている。ただし、図7の説明について記載した通り、判定対象患者に対して文書作成の有無を判定する判定対象期間はこれに限られない。
【0127】
図17では、過去患者のサンプルとして患者A、患者Bが設定され、日数のサンプルとして1日目、2日目が設定されている。また、図17には、各サンプルセットにおける患者の状態情報(電子カルテデータの情報)として、体温、年齢、ベクトル情報に変換された看護記録が示されている。ただし、これらの情報はあくまで例示である。
【0128】
図17では、特定文書である文書1の作成の履歴情報として、患者Aの1日目及び2日目、並びに患者Bの1日目及び2日目について、作成の有無を示す情報が示されている。履歴情報が「1」であれば作成がなされ、「0」であれば作成がなされなかったことを意味する。さらに、文書1が作成された場合、その文書における項目毎の記載内容が、ベクトル情報に変換された情報として示されている。なお、文書1だけでなく、文書2など、複数の特定文書の作成履歴及び項目毎の記載内容の情報が、第2の学習データに含まれていても良い。患者の状態情報及び文書作成の履歴は、第2の学習データにおける説明変数である。また、文書の項目毎の記載内容は、第2の学習データにおける目的変数である。学習データ前処理部141は、このようにして生成された第2の学習データを、モデル学習部142に出力する。
【0129】
図15に戻り、説明を続ける。モデル学習部142は、学習データ前処理部141が生成した第2の学習データを用いて、第2の学習モデルにおけるモデルパラメータの学習を実行する。第2の学習モデルには、例えば、ロジスティック回帰、SVC、又はニューラルネットワークのいずれかの技術を用いることができる。第2の学習モデルは、この学習によって、患者がどのような状態にある場合に、その患者に対して作成される文書について、項目毎に何を記載すべきかを学習する。モデル記憶部143には、その学習済の第2の学習モデルが記憶される。詳細には、学習済の第2の学習モデルのモデルパラメータがモデル記憶部143に記憶される。
【0130】
図18は、実施の形態5に係る判定処理部132の一例を示すブロック図である。判定処理部132は、実施の形態2に係る判定処理部102が有する必要度記憶部121及びアラート判定部122のほか、さらに記載内容出力部151を備える。必要度記憶部121及びアラート判定部122の処理については、実施の形態2に記載した通りであるため、説明を省略する。
【0131】
アラート判定部122がアラート情報を生成した場合、生成されたアラート情報は記載内容出力部151に出力される。例えば、必要度計算部115の最新の計算時点での特定文書作成の必要度が所定の閾値を超えている場合に、アラート判定部122は、生成したアラート情報を記載内容出力部151に出力しても良い。なお、アラート判定部122は、将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になると判定した場合には、生成したアラート情報を記載内容出力部151に出力しても良いし、しなくとも良い。将来において判定対象患者の特定文書作成が必要になる場合、特定文書の記載内容をすぐにユーザに提示する必要がない場合も考えられるからである。
【0132】
記載内容出力部151は、アラート情報を取得した場合、アラート情報に含まれる、作成漏れがあると判定された特定文書を特定する情報を認識する。そして、記載内容出力部151は、アラート情報中の特定文書を特定する情報と、対象データ前処理部114によって前処理がなされた判定対象患者のデータを、説明変数として、モデル記憶部143に記憶された学習済の第2の学習モデルに入力する。この結果、第2の学習モデルは、判定対象患者の人物に対して作成する文書における項目毎の記載内容を、目的変数として計算する。なお、アラート情報において、作成漏れがあると判定された特定文書が複数存在する場合には、第2の学習モデルは、その複数の特定文書について、各々の項目毎の記載内容を、目的変数として計算する。記載内容出力部151は、第2の学習モデルが計算して出力した、作成の必要がある特定文書における項目毎の記載内容の情報を、端末400に出力する。なお、警告システム100は、アラート判定部122から出力されたアラート情報と併せて、この記載内容を端末400に出力しても良いし、アラート情報とは独立にこの記載内容を端末400に出力しても良い。
【0133】
端末400は、出力された、特定文書における項目毎の記載内容の情報をユーザに提示する。例えば、端末400は、図16に示したような文書の記載内容を画面に表示する。端末400は、この記載内容を、アラート判定部122から出力されたアラート情報と共にユーザに提示する(例えば、端末400の表示部に同時に表示する)ことができる。しかしながら、端末400は、この記載内容のみをユーザに提示してもよい。
【0134】
別の例として、端末400は、アラート情報の提示後に、ユーザからの要求があった場合に、この記載内容をユーザに提示することも可能である。詳細には、実施の形態2に示した通り、アラート判定部122から端末400にアラート情報が出力された場合、ユーザは端末400の入力部を操作することで、その情報を確認したことを示す。端末400は、警告システム100に対し、ユーザがアラート情報を確認したことを示す確認情報を出力する。記載内容出力部151は、この確認情報に基づいて、特定文書における項目毎の記載内容の情報を端末400に出力し、端末400は、この記載内容をユーザに提示する。
【0135】
[処理の説明]
図19は、警告システム100が特定文書の記載内容を決定する処理の一例を示すフローチャートである。なお、各処理の詳細については上述の通りであるため、説明を省略する。また、図10A及び10Bに示した処理についても、説明を省略する。
【0136】
まず、学習データ前処理部141は、過去患者の電子カルテデータを電子カルテDB200から取得し、そのデータに前処理を実行する。また、学習データ前処理部141は、その過去患者に対して作成された文書の種別を示す情報と、その文書における項目毎の記載内容の情報を、特定文書DB300から取得する。学習データ前処理部141は、これらのデータに基づいて、第2の学習データを生成する(ステップS51)。モデル学習部142は、ステップS51で生成された第2の学習データを用いて、第2の学習モデルの学習を実行する(ステップS52)。ステップS51~S52が、判定処理前に実行される学習フェーズである。学習された第2の学習モデルは、モデル記憶部143に格納される。
【0137】
記載内容出力部151は、アラート判定部122からアラート情報が出力されたか否かを判定する(ステップS53)。アラート情報が出力されない場合(ステップS53のNo)、記載内容出力部151は、記載内容を決定すべき特定文書が存在しないと判定し、処理を実行しない。
【0138】
一方、アラート情報が出力された場合(ステップS53のYes)、記載内容出力部151は、記載内容を決定すべき特定文書が存在すると判定する。そして、記載内容出力部151は、アラート情報中の特定文書を特定する情報と、対象データ前処理部114によって前処理がなされた判定対象患者のデータとを第2の学習モデルに入力する。これにより、作成の必要がある特定文書における項目毎の記載内容を出力させる。記載内容出力部151は、端末400に対し、特定文書における項目毎の記載内容の情報を出力する(ステップS54)。
【0139】
[効果の説明]
以上に示した通り、アラート情報が出力される際に、警告システム100は、判定対象患者に対して作成が必要な特定文書における項目毎の記載内容を決定し、端末400に出力することができる。例えば、医療従事者であるユーザは、記載内容出力部151から出力された記載内容を確認又は修正するだけで、必要な特定文書を作成することが可能となる。このように、医療従事者は、記載内容出力部151が出力した記載内容を参考にして特定文書を作成することができるため、医療従事者の文書作成作業を簡略化することができる。
【0140】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施の形態2において、アラート判定部122が、特定文書の作成の必要度が所定の閾値を超えていると判定した場合に、作成の必要があると判定された特定文書が既に作成されているか否かを判断することなく、アラート情報を生成し、出力しても良い。また、必要度計算部115によって計算される必要度は、定量的に表現される数値等の情報でなく、定性的な形式の情報であっても良い。この場合でも、警告システム100は、実施の形態2と同様に判定処理を実行することができる。
【0141】
実施の形態2~5に示した内容は、それぞれその一部の内容が実施されても良いし、また、異なる実施の形態に係る内容が適宜組み合わされて実施されても良い。例えば、実施の形態4及び5を組み合わせた場合、記載内容出力部151は、特定文書における項目毎の記載内容を、その特定文書の記載用の電子フォーマットに予め記入された状態とし、項目毎の記載内容が記入された電子フォーマットを端末400に出力する。これにより、ユーザが自分自身で特定文書に記入する箇所を少なくすることができるため、特定文書の作成にかかる時間を短縮する効果を向上させることができる。
【0142】
実施の形態1において、判定装置又は学習装置は、単一の装置筐体に各構成要素が備えられるものに限られず、複数の筐体に各構成要素が分散されて設けられている構成を有しても良い。また、実施の形態2~5において、警告システムは、単一の装置として設けられていても良いし、構成要素が複数の装置に分散されて存在している分散システムとして設けられていても良い。
【0143】
以上に示した実施の形態では、この開示をハードウェアの構成として説明したが、この開示は、これに限定されるものではない。この開示は、上述の実施形態において説明された判定装置、学習装置、決定装置又は警告システムの処理(ステップ)を、コンピュータ内のプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0144】
図20は、以上に示した各実施の形態の処理が実行される情報処理装置(信号処理装置)のハードウェア構成例を示すブロック図である。図20を参照すると、この情報処理装置90は、信号処理回路91、プロセッサ92及びメモリ93を含む。
【0145】
信号処理回路91は、プロセッサ92の制御に応じて、信号を処理するための回路である。なお、信号処理回路91は、送信装置から信号を受信する通信回路を含んでいても良い。
【0146】
プロセッサ92は、メモリ93と接続されて(結合して)おり、メモリ93からソフトウェア(コンピュータプログラム)を読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された装置の処理を行う。プロセッサ92の一例として、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Demand-Side Platform)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のうち一つを用いてもよいし、そのうちの複数を並列で用いてもよい。
【0147】
メモリ93は、揮発性メモリや不揮発性メモリ、またはそれらの組み合わせで構成される。メモリ93は、1個に限られず、複数設けられてもよい。なお、揮発性メモリは、例えば、DRAM (Dynamic Random Access Memory)、SRAM (Static Random Access Memory)等のRAM (Random Access Memory)であってもよい。不揮発性メモリは、例えば、PROM (Programmable Random Only Memory)、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory) 等のROM (Read Only Memory)、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)であってもよい。
【0148】
メモリ93は、1以上の命令を格納するために使用される。ここで、1以上の命令は、ソフトウェアモジュール群としてメモリ93に格納される。プロセッサ92は、これらのソフトウェアモジュール群をメモリ93から読み出して実行することで、上述の実施形態において説明された処理を行うことができる。
【0149】
なお、メモリ93は、プロセッサ92の外部に設けられるものに加えて、プロセッサ92に内蔵されているものを含んでもよい。また、メモリ93は、プロセッサ92を構成するプロセッサから離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ92は、I/O(Input/Output)インタフェースを介してメモリ93にアクセスすることができる。
【0150】
以上に説明したように、上述の実施形態における各装置が有する1又は複数のプロセッサは、図面を用いて説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。この処理により、各実施の形態に記載された信号処理方法が実現できる。
【0151】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0152】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む第1の学習データを用いることで学習された第1の学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算する必要度計算部と、
前記必要度計算部が計算した前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定するアラート判定部と、
を備える判定装置。
(付記2)
前記第1の学習モデルの学習には、ロジスティック回帰、SVC(Support Vector Machine)、又はニューラルネットワークのいずれかが用いられる、
付記1に記載の判定装置。
(付記3)
前記必要度計算部は、前記文書の作成が必要か若しくは不要かの少なくともいずれかを示す、前記第1の学習モデルが出力する確率、又は、前記確率がロジット変換された値を、前記必要度として計算する、
付記1又は2に記載の判定装置。
(付記4)
前記アラート判定部は、前記必要度計算部が計算した前記必要度が所定の閾値を超えており、かつ、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されていない場合に、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートを出力する、
付記1乃至3のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記5)
前記アラート判定部は、前記必要度計算部が計算した最新の計算時点での前記必要度と、前記判定対象人物について前記必要度計算部が最新の計算時点から過去に計算した過去の前記必要度と、に基づいて、前記判定対象人物における最新の計算時点から将来の前記必要度を予測し、予測した前記必要度が所定の閾値を超える場合に、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートを出力する、
付記1乃至4のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記6)
前記人物の状態情報及び前記判定対象人物の状態情報には、前処理がなされた構造化データ及び非構造化データが含まれる、
付記1乃至5のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記7)
前記人物の状態情報と、前記人物に対して作成された文書における項目毎の記載内容と、を含む第2の学習データを用いることで学習された第2の学習モデルに対し、前記判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に対して作成が必要な文書における項目毎の記載内容を出力する記載内容出力部と、
をさらに備える付記1乃至6のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記8)
前記人物に関する文書は、前記人物の入院診療計画に関する文書、前記人物の院内感染防止対策に関する文書、前記人物の医療安全管理体制に関する文書、前記人物の褥瘡計画に関する文書、又は前記人物の栄養管理体制に関する文書の少なくともいずれかである、
付記1乃至7のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記9)
前記アラート判定部は、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートを出力する場合に、前記判定対象人物の状態情報から、前記判定対象人物の文書作成に必要な情報を抽出して提示する、
付記1乃至8のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記10)
前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力履歴を提示する履歴提示部と、
付記1乃至9のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記11)
前記アラート判定部は、前記必要度計算部が計算した前記必要度に基づいて、ユーザに提示する前記アラートの態様を変更する、
付記1乃至10のいずれか1項に記載の判定装置。
(付記12)
前記非構造化データは、BoW(Bag of Words)、Word2Vec又はBert(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)のいずれかの手法によって前記前処理がなされ、前記第1の学習モデルに入力される、
付記6に記載の判定装置。
(付記13)
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、
計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する、
コンピュータが実行する判定方法。
(付記14)
人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで学習された学習モデルに対し、判定対象人物の状態情報を入力することで、前記判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算し、
計算された前記必要度と、前記判定対象人物について実際に前記文書が作成されたか否かを示す情報と、を用いて、前記判定対象人物の文書作成に関するアラートの出力の有無を判定する、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
(付記15)
人物の状態に関するデータに前処理を実施することで、前記人物の状態情報を生成する前処理部と、
前記人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで、判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算するモデルを学習させるモデル学習部と、
を備える学習装置。
(付記16)
前記学習モデルの学習には、ロジスティック回帰、SVC(Support Vector Machine)、又はニューラルネットワークのいずれかが用いられる、
付記15に記載の学習装置。
(付記17)
前記人物に関する文書は、前記人物の入院診療計画に関する文書、前記人物の院内感染防止対策に関する文書、前記人物の医療安全管理体制に関する文書、前記人物の褥瘡計画に関する文書、又は前記人物の栄養管理体制に関する文書の少なくともいずれかである、
付記15又は16に記載の学習装置。
(付記18)
前記人物の状態情報には、前処理がなされた構造化データ及び非構造化データが含まれる、
付記15乃至17のいずれか1項に記載の学習装置。
(付記19)
前記非構造化データは、BoW(Bag of Words)、Word2Vec又はBert(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)のいずれかの手法によって前記前処理がなされ、前記学習モデルに入力される、
付記18に記載の学習装置。
(付記20)
人物の状態に関するデータに前処理を実施することで、前記人物の状態情報を生成し、
前記人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで、判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算するモデルを学習させる、
コンピュータが実行する学習方法。
(付記21)
人物の状態に関するデータに前処理を実施することで、前記人物の状態情報を生成し、
前記人物の状態情報と、前記人物に関する文書の作成が必要か又は不要かを示す情報と、を含む学習データを用いることで、判定対象人物に関する前記文書の作成の必要度を計算するモデルを学習させる、
ことをコンピュータに実行させるプログラム。
【0153】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上記によって限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0154】
10 判定装置
11 必要度計算部 12 アラート判定部
20 学習装置
21 前処理部 22 モデル学習部
30 決定装置
31 記載内容決定部
100 警告システム
101 回帰分析部 102 判定処理部
111 学習データ前処理部 112 モデル学習部
113 モデル記憶部 114 対象データ前処理部
115 必要度計算部
121 必要度記憶部 122 アラート判定部
123 アラート履歴記憶部 124 アラート履歴提示部
131 回帰分析部 132 判定処理部
141 学習データ前処理部 142 モデル学習部
143 モデル記憶部 144 対象データ前処理部
151 記載内容出力部
200 電子カルテDB 300 特定文書DB
400 端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20