(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002130
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】温度測定器、ディスク装置用サスペンションの製造装置、およびディスク装置用サスペンションの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 7/02 20210101AFI20231228BHJP
G11B 21/21 20060101ALI20231228BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20231228BHJP
【FI】
G01K7/02 Z
G11B21/21 E
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101146
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 武志
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CL12
(57)【要約】
【課題】 熱電対を用いた温度測定を精度良く行うことが可能な温度測定器、ディスク装置用サスペンションの製造装置、およびディスク装置用サスペンションの製造方法を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る温度測定器は、第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とを貫通する第1開口部と、を有するベースと、前記第2面側に設けられるとともに、前記第1開口部と重なる本体部と、前記本体部から前記第2面に沿って延び、前記第2面と重なる複数の延出部と、を有する支持部材と、前記第1開口部に挿入されるとともに、前記本体部に位置する測定部を有する熱電対と、を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とを貫通する第1開口部と、を有するベースと、
前記第2面側に設けられるとともに、前記第1開口部と重なる本体部と、前記本体部から前記第2面に沿って延び、前記第2面と重なる複数の延出部と、を有する支持部材と、
前記第1開口部に挿入されるとともに、前記本体部に位置する測定部を有する熱電対と、を備える、
温度測定器。
【請求項2】
前記支持部材は、前記第1開口部の中央と重なるとともに、前記本体部を貫通する第2開口部を有し、
前記測定部は、前記第2開口部に位置する、
請求項1に記載された温度測定器。
【請求項3】
前記延出部は、前記本体部と接続された基部と、前記第2面と重なるとともに、前記基部の幅よりも小さい幅を有する先端部と、を有する、
請求項1に記載の温度測定器。
【請求項4】
前記支持部材は、前記複数の延出部に接続されるとともに、前記第2面と重なる枠部をさらに有する、
請求項1に記載の温度測定器。
【請求項5】
前記ベースと前記支持部材とを接着する接着剤をさらに備え、
前記支持部材は、前記第2面と重なるとともに、前記支持部材を貫通する複数の第3開口部をさらに有し、
前記接着剤は、前記第3開口部に位置する、
請求項1に記載の温度測定器。
【請求項6】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造装置であって、
前記アクチュエータ搭載部に接着剤を塗布する塗布装置と、
塗布された前記接着剤に赤外線を照射することにより前記接着剤を加熱する赤外線照射装置と、
前記赤外線による照射位置における温度を測定する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の温度測定器と、
前記温度測定器によって測定された温度に基づき、前記赤外線の照射条件を調整する制御装置と、を備える、
ディスク装置用サスペンションの製造装置。
【請求項7】
前記ディスク装置用サスペンションは、前記アクチュエータ搭載部に位置するメタルベースを有し、
前記支持部材を形成する材料は、前記メタルベースを形成する材料と同じである、
請求項6に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置。
【請求項8】
前記ディスク装置用サスペンションは、前記アクチュエータ搭載部に位置するメタルベースを有し、
前記支持部材の厚さは、前記メタルベースの厚さと同等である、
請求項6に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置。
【請求項9】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造方法であって、
前記アクチュエータ搭載部に塗布される接着剤に照射される赤外線の照射位置に、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の温度測定器を配置し、
前記温度測定器に前記赤外線を照射し、
前記温度測定器によって前記照射位置における温度を測定し、
前記温度測定器によって測定された温度に基づき、前記赤外線の照射条件を調整し、
前記アクチュエータ搭載部に前記接着剤を塗布し、
前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に前記赤外線を照射する、
ディスク装置用サスペンションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定器、ディスク装置用サスペンションの製造装置、およびディスク装置用サスペンションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置には、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクや、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジはアームを有し、ボイスコイルモータ等のポジショニング用モータによってピボット軸を中心にディスクのトラック幅方向に旋回する。
【0003】
上記アームにディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンションと称す)が取り付けられている。サスペンションは、ロードビームや、ロードビームに重ねられたフレキシャなどを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部には、磁気ヘッドを構成するスライダが設けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらのロードビーム、フレキシャ、およびスライダなどによって、ヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0004】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ヘッドジンバルアセンブリをさらに小形化し、かつディスクの記録面に対してスライダをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。磁気ヘッドの位置決め精度向上を目的として、ポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)に加え、アクチュエータとして機能する圧電素子を備えたサスペンションが知られている。
【0005】
圧電素子の固定には、例えば、熱硬化型接着剤が使用される。接着剤は、例えば、赤外線が照射されることにより加熱され、硬化する。照射される赤外線は、サスペンションの性能に影響を与えるため、照射される赤外線については厳密に管理する必要がある。照射される赤外線を管理することを目的として、熱電対などの温度センサによる温度測定が行われる。従来、熱電対を用いた温度測定に関して、様々な提案がなされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、通電により発熱して赤外線を放射する発熱体と、前記発熱体を支持する絶縁性の支持体と、前記発熱体から離間し且つ互いに材料組成の異なる第1金属線及び第2金属線を有し、該第1金属線と第2金属線とが接合して形成された測温部が前記発熱体と前記支持体とで挟まれた空間に配置されている熱電対と、を備えた赤外線ヒーターが開示されている。
【0007】
例えば、特許文献2には、感温用先端部を有する先端部が、可撓性を有する薄板状又は細線状とされると共に、所定角度だけ屈曲されていることを特徴とする表面温度測定用熱電対が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3194388号公報
【特許文献2】特許第5756987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示された赤外線ヒーター、および上記特許文献2に開示された表面温度測定用熱電対を踏まえても、熱電対を用いた温度測定に関しては、未だに種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、熱電対を用いた温度測定を精度良く行うことが可能な温度測定器、ディスク装置用サスペンションの製造装置、およびディスク装置用サスペンションの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る温度測定器は、第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、前記第1面と前記第2面とを貫通する第1開口部と、を有するベースと、前記第2面側に設けられるとともに、前記第1開口部と重なる本体部と、前記本体部から前記第2面に沿って延び、前記第2面と重なる複数の延出部と、を有する支持部材と、前記第1開口部に挿入されるとともに、前記本体部に位置する測定部を有する熱電対と、を備える。
【0011】
前記支持部材は、前記第1開口部の中央と重なるとともに、前記本体部を貫通する第2開口部を有し、前記測定部は、前記第2開口部に位置してもよい。前記延出部は、前記本体部と接続された基部と、前記第2面と重なるとともに、前記基部の幅よりも小さい幅を有する先端部と、を有してもよい。
【0012】
前記支持部材は、前記複数の延出部に接続されるとともに、前記第2面と重なる枠部をさらに有してもよい。前記ベースと前記支持部材とを接着する接着剤をさらに備え、前記支持部材は、前記第2面と重なるとともに、前記支持部材を貫通する複数の第3開口部をさらに有し、前記接着剤は、前記第3開口部に位置してもよい。
【0013】
一実施形態に係るディスク装置用サスペンションの製造装置は、圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造装置であって、前記アクチュエータ搭載部に接着剤を塗布する塗布装置と、塗布された前記接着剤に赤外線を照射することにより前記接着剤を加熱する赤外線照射装置と、前記赤外線による照射位置における温度を測定する、前記温度測定器と、前記温度測定器によって測定された温度に基づき、前記赤外線の照射条件を調整する制御装置と、を備える。
【0014】
前記ディスク装置用サスペンションは、前記アクチュエータ搭載部に位置するメタルベースを有し、前記支持部材を形成する材料は、前記メタルベースを形成する材料と同じでもよい。前記ディスク装置用サスペンションは、前記アクチュエータ搭載部に位置するメタルベースを有し、前記支持部材の厚さは、前記メタルベースの厚さと同等でもよい。
【0015】
一実施形態に係るディスク装置用サスペンションの製造方法は、圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造方法であって、前記アクチュエータ搭載部に塗布される接着剤に照射される赤外線の照射位置に、前記温度測定器を配置し、前記温度測定器に前記赤外線を照射し、前記温度測定器によって前記照射位置における温度を測定し、前記温度測定器によって測定された温度に基づき、前記赤外線の照射条件を調整し、前記アクチュエータ搭載部に前記接着剤を塗布し、前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に前記赤外線を照射する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱電対を用いた温度測定を精度良く行うことが可能な温度測定器、ディスク装置用サスペンションの製造装置、およびディスク装置用サスペンションの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、ディスク装置の一例を示す概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、ディスク装置の一部を示す概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、ディスク装置が備えるサスペンションの一例を示す概略的な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されたサスペンションの先端側の一部をスライダ側から見た概略的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された第1のアクチュエータ搭載部を示す概略的な断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係るサスペンションの製造装置の概略的な構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示された1つのサスペンションの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、温度測定器と赤外線照射装置とを概略的に示した側面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された温度測定器を示す概略的な平面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示されたX-X線に沿う温度測定器の一部を示す概略的な断面図である。
【
図11】
図11は、ワークのアクチュエータ搭載部と赤外線の照射領域との関係を説明するための図である。
【
図12】
図12は、赤外線照射装置の各出力における測定温度を示す図である。
【
図18】
図18は、第2実施形態に係る温度測定器を示す概略的な平面図である。
【
図19】
図19は、
図18に示されたXIX-XIX線に沿う温度測定器の一部を示す概略的な断面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態に係る温度測定器を示す概略的な平面図である。
【
図21】
図21は、第4実施形態に係る温度測定器を示す概略的な平面図である。
【
図22】
図22は、第4実施形態に係る温度測定器を示す概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照しながら、本発明の各実施形態について説明する。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状などを実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合がある。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、ディスク装置(HDD)1の一例を示す概略的な斜視図である。ディスク装置1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転する複数のディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7と、を備えている。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0020】
図2は、ディスク装置1の一部を示す概略的な断面図である。
図1および
図2に示すように、キャリッジ6には複数(例えば、3つ)のアーム(キャリッジアーム)8が設けられている。
【0021】
複数のアーム8の先端部には、ディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンション10と称す)がそれぞれ取り付けられている。各サスペンション10の先端部には、磁気ヘッドを構成するスライダ11がそれぞれ設けられている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0022】
サスペンション10は、ベースプレート21を備えている。ベースプレート21には、アーム8に形成された孔8aに挿入されるボス部21aが形成されている。ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0023】
図3は、ディスク装置1が備えるサスペンション10の一例を示す概略的な斜視図である。
図4は、
図3に示されたサスペンション10の先端側の一部をスライダ11側から見た概略的な斜視図である。
【0024】
サスペンション10は、上述のベースプレート21と、ロードビーム22と、フレキシャ23と、を備えている。ロードビーム22およびフレキシャ23は、いずれもサスペンション10の長さ方向に延びている。
【0025】
以下、サスペンション10、ベースプレート21、ロードビーム22、およびフレキシャ23の長さ方向を長さ方向Xと定義する。長さ方向Xと直交する方向をサスペンション10、ベースプレート21、ロードビーム22、およびフレキシャ23などの幅方向Yと定義する。
【0026】
長さ方向Xおよび幅方向Yと交差(例えば、直交)する方向をサスペンション10、ベースプレート21、ロードビーム22、およびフレキシャ23などの厚さ方向Zと定義する。さらに、
図4に示すように、ロードビーム22の先端近傍に円弧状の矢印で示すように、スウェイ方向Sを定義する。
【0027】
図3に示すように、ロードビーム22の一端側は、ベースプレート21と重なっている。フレキシャ23は、ロードビーム22に沿って配置されている。
図3および
図4に示すように、フレキシャ23は、例えばステンレス鋼からなるメタルベース24と、メタルベース24の上に形成された配線部25と、を備えている。配線部25の一部は、スライダ11に接続されている。
【0028】
メタルベース24の厚さは、ロードビーム22の厚さよりも小さい。メタルベース24の厚さは、例えば12~25μmであり、一例では20μmである。ロードビーム22の厚さは、例えば30μmである。
【0029】
ロードビーム22の先端部付近において、フレキシャ23は、ジンバル部として機能するタング26を有している。タング26には、磁気ヘッドをなすスライダ11が取り付けられている。タング26は、メタルベース24の一部であり、例えばエッチングによって形成される。
【0030】
図4に示すように、スライダ11の先端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子12が設けられている。これらの素子12によって、ディスク4(
図1および
図2に示す)に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。
【0031】
スライダ11、ロードビーム22およびフレキシャ23などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
図3に示すように、フレキシャ23のテール部27は、ベースプレート21の後方に延びている。
【0032】
図4に示すように、サスペンション10は、一対のアクチュエータ搭載部13,14と、一対の圧電素子15,16と、をさらに備えている。一対のアクチュエータ搭載部13,14は、サスペンション10の先端部に設けられている。
【0033】
幅方向Yにおけるスライダ11の一方側には、圧電素子15が搭載される第1のアクチュエータ搭載部13が配置されている。幅方向Yにおけるスライダ11の他方側には、圧電素子16が搭載される第2のアクチュエータ搭載部14が配置されている。
【0034】
圧電素子15,16は、アクチュエータとして機能する。圧電素子15,16は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体から形成されている。印加された電圧に応じて、圧電素子15,16が変形することによって、タング26をスウェイ方向Sに回動させることができる。
【0035】
図5は、
図4に示された第1のアクチュエータ搭載部13を示す概略的な断面図である。第2のアクチュエータ搭載部14は、第1のアクチュエータ搭載部13と実質的に同様の構成である。このため第1のアクチュエータ搭載部13について以下に説明し、第2のアクチュエータ搭載部14の説明は省略する。
【0036】
アクチュエータ搭載部13、フレキシャ23のメタルベース24などによって構成されている。圧電素子15の一方の端部15aは、接着剤31によってメタルベース24の第1のアクチュエータ支持部24aに固定されている。
【0037】
圧電素子15の他方の端部15bは、接着剤31によってメタルベース24の第2のアクチュエータ支持部24bに固定されている。接着剤31は、電気絶縁性である。接着剤31は、例えば、一液熱硬化型エポキシ系接着剤である。
【0038】
圧電素子15の第1の電極17は、導電材32を介してアクチュエータ搭載部13の第1の導体25aと導通している。圧電素子15の第2の電極18は、導電材32を介してアクチュエータ搭載部13の第2の導体25bと導通している。導電材32は、例えば、導電性接着剤である。
【0039】
続いて、サスペンション10の製造について、説明する。
図6は、本実施形態に係るサスペンション10の製造装置100の概略的な構成を示す図である。製造装置100は、搬送装置110と、塗布装置120と、赤外線照射装置130と、素子供給装置140と、温度測定器50と、制御装置160と、を備えている。
【0040】
搬送装置110は、制御装置160によって制御され、ステージに載せられた製造途中のサスペンション10を塗布装置120、赤外線照射装置130、および素子供給装置140に向けて搬送する。以下、製造途中のサスペンション10をワークWと呼ぶ場合がある。
【0041】
塗布装置120は、制御装置160によって制御され、ワークWのアクチュエータ搭載部13,14(
図4に示す)に対して接着剤を塗布する。塗布装置120は、ノズル121を有するディスペンサ122と、ディスペンサ122を移動させてノズル121の位置を制御する移動機構123と、を備えている。
【0042】
ノズル121からは、未硬化(液状)の接着剤が吐出される。この接着剤を硬化させることにより、上述の接着剤31が形成される。塗布装置120は、図示しない接着剤の供給源などをさらに含んでもよい。
【0043】
赤外線照射装置130は、制御装置160によって制御され、赤外線の照射位置RPまで搬送されたワークWのアクチュエータ搭載部13,14に塗布された接着剤に赤外線を照射する。塗布された接着剤は、照射される赤外線によって加熱される。
【0044】
赤外線照射装置130は、赤外線を照射する照射ヘッド131と、照射ヘッド131の位置を制御する移動機構132と、を備えている。照射ヘッド131は、移動機構132によって位置を調整可能に設けられている。
【0045】
素子供給装置140は、制御装置160によって制御され、アクチュエータ搭載部13,14に塗布された接着剤の上に圧電素子15,16(
図4に示す)をそれぞれ配置する。
【0046】
このとき、塗布された接着剤は、例えば、赤外線照射装置130によって加熱され、粘度が増加した状態となっている。この場合、接着剤の上に配置された圧電素子15,16が接着剤の表面張力などによって、所定位置から移動することが抑制されている。塗布された接着剤は、圧電素子15,16が配置された後にのみ、赤外線照射装置130によって加熱される場合もある。
【0047】
温度測定器50は、赤外線照射装置130から照射される赤外線の照射位置RPにおける温度を測定する。
図6に示す例において、温度測定器50は、赤外線の照射位置RPに位置している。温度測定器50は、熱電対51を含む熱電対ユニット60と、熱電対51と接続された測定モジュール52と、を備えている。
【0048】
制御装置160は、搬送装置110、塗布装置120、赤外線照射装置130、素子供給装置140、および温度測定器50など、製造装置100が備える各種の要素を制御する。制御装置160は、これら要素の制御や検査に関わる動作を実現するためのコンピュータプログラムやデータを格納したメモリと、このプログラムを実行するプロセッサと、を備えている。
【0049】
制御装置160は、例えば、温度測定器50によって測定された温度に基づき、赤外線照射装置130の検査、および赤外線の照射条件を調整する。製造装置100は、図示しない、導電材供給装置、および加熱装置などをさらに備えてもよい。
【0050】
続いて、圧電素子15,16をアクチュエータ搭載部13,14に実装する製造方法の一例について、説明する。
図7は、
図3に示された1つのサスペンション10の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0051】
ここでは、搬送装置110、塗布装置120、赤外線照射装置130、素子供給装置140、および温度測定器50を用いた製造工程に着目し、他の工程の詳細な説明は省略する。温度測定器50を用いた温度測定は、例えば、赤外線照射装置130の運転開始前に実行される。温度測定器50を用いた温度測定は、赤外線照射装置130のメンテナンス時や日常点検時に実行されてもよい。
【0052】
図7のフローチャートにおいては、まず、赤外線照射装置130の赤外線の照射位置RP(
図6に示す)に温度測定器50の熱電対ユニット60が配置される(工程S1)。熱電対ユニット60は、制御装置160に制御された装置(図示しない)によって配置されてもよいし、作業者によって配置されてもよい。
【0053】
続いて、照射位置RPに配置された熱電対ユニット60に向けて赤外線照射装置130から赤外線が照射される(工程S2)。続いて、温度測定器50によって照射位置RPにおける温度が測定される(工程S3)。
【0054】
本実施形態においては、赤外線照射装置130から赤外線が照射されると、熱電対51を介して測定モジュール52が温度を測定する。測定された温度は、測定モジュール52から制御装置160に出力される。
【0055】
続いて、工程S3で測定された温度に基づき、制御装置160によって赤外線照射装置130の赤外線の照射条件が適正であるかが判定される(工程S4)。制御装置160は、例えば、測定された温度が予め規定された数値範囲内であれば、赤外線の照射条件が適正であると判定し、測定された温度が数値範囲外であれば、赤外線の照射条件が適正でないと判定する。
【0056】
続いて、工程S4の判定によって、赤外線の照射条件が適正でないと判定された場合、制御装置160は、赤外線の照射条件が適正となるように、赤外線照射装置130に関する制御パラメータを調整するフィードバックを実行する(工程S5)。
【0057】
例えば、制御パラメータは、照射ヘッド131の位置、赤外線の出力、赤外線の照射時間などである。工程S4の判定によって、赤外線の照射条件が適正であると判定された場合、制御装置160は、赤外線照射装置130に関する制御パラメータは調整されない。
【0058】
続いて、搬送装置110によって塗布装置120のノズル121と正対する塗布位置までワークWが搬送され、塗布装置120によってアクチュエータ搭載部13,14に接着剤が塗布される(工程S6)。搬送されるワークWは、ベースプレート21とロードビーム22との組付けなどを含む前工程が実施されている。
【0059】
続いて、搬送装置110によって照射位置RPまでワークWが搬送され、赤外線照射装置130によってワークWのアクチュエータ搭載部13,14に塗布された接着剤に赤外線が照射される(工程S7)。
【0060】
続いて、素子供給装置140によってアクチュエータ搭載部13,14に塗布された接着剤の上に圧電素子15,16が配置される(工程S8)。その後、サスペンション10の完成に必要な各種の処理が施される(工程S9)。
【0061】
以上の各製造工程を経ることにより、圧電素子15,16がアクチュエータ搭載部13,14に実装される。なお、工程S5において赤外線照射装置130の制御パラメータが調整された後、再度、工程S2以降の処理が実行され、赤外線の照射条件が適正であるかが判定されてもよい。また、塗布された接着剤への赤外線の照射は、圧電素子15,16が配置された後に実行されてもよい。
【0062】
続いて、本実施形態の温度測定器50について、説明する。
【0063】
図8は、温度測定器50と赤外線照射装置130とを概略的に示した側面図である。
図9は、
図8に示された温度測定器50を示す概略的な平面図である。
図10は、
図9に示されたX-X線に沿う温度測定器50の一部を示す概略的な断面図である。
図8において、熱電対ユニット60は赤外線照射装置130の照射位置RPに配置されている。
図9および
図10については、測定モジュール52を省略している。
【0064】
上述の通り、温度測定器50は、熱電対ユニット60および測定モジュール52を備えている。
図8に示すように、熱電対ユニット60は、固定台61と、ベース70と、支持部材80と、熱電対51と、を備えている。以下、
図8乃至
図10に示すように、温度測定器50の第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3を定義する。これらの方向は、互い直交する方向である。
【0065】
第3方向D3は、固定台61、ベース70、および支持部材80が重なる方向に相当する。第3方向D3の矢印が示す方向を熱電対ユニット60の上方と呼び、その反対方向を熱電対ユニット60の下方と呼ぶ場合がある。第1方向D1および第2方向D2で規定される平面を見ることを平面視と呼ぶ場合がある。
【0066】
図8に示すように、固定台61、ベース70、支持部材80、および照射ヘッド131は、この順で第3方向D3に沿って並んでいる。固定台61は、例えば、アルミニウム合金などの金属材料で形成されている。固定台61は、熱電対51が挿入される開口部63を有している。開口部63は、第3方向D3に沿って固定台61を貫通している。
【0067】
ベース70は、固定台61に固定されている。ベース70は、例えば、アルミニウム合金などの金属材料によって形成されている。他の例として、ベース70は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などのエンジニアリングプラスチックによって形成されてもよい。
【0068】
ベース70は、平板状に形成されている。
図9に示す例において、ベース70は、平面視において、長方形状である。例えば、長辺側である第1方向D1に沿うベース70の長さは10~100mmであり、短辺側である第2方向D2に沿うベース70の長さは10~100mmである。ベース70の厚さは、支持部材80の厚さよりも厚い。ここで、厚さは、第3方向D3に沿う距離に相当する。ベース70の厚さは、例えば、約1.5mm~約2.0mmである。
【0069】
図10に示すように、ベース70は、固定台61と対向する第1面71と、第1面71と反対側の第2面72と、第1面71と第2面72とを貫通する開口部73(第1開口部)と、を有している。第1面71および第2面72は、第1方向D1および第2方向D2で規定される平面と平行である。開口部73は、第3方向D3に延びる軸CXを中心とする円形状である。
【0070】
開口部73は、内面74を有している。内面74は、第3方向D3に一様な径を有している。なお、開口部73の形状は、多角形状など他の形状であってもよい。以下、
図9および10に示すように、軸CXを中心として軸CXから離れる方向を径方向Drと定義し、軸CXを中心とする周方向Dθを定義する。
【0071】
支持部材80は、第2面72側に設けられている。支持部材80は、薄板状に形成されている。支持部材80は、例えば、金属材料によって形成されている。支持部材80を形成する材料は、上述のメタルベース24を形成する金属材料と同じであることが好ましい。
【0072】
より具体的には、支持部材80は、例えば、ステンレス鋼によって形成されている。支持部材80の厚さは、メタルベース24の厚さと実質的に同等であることが好ましい。支持部材80の厚さは、例えば、30μm(0.03mm)以下であって、一例では、20μm(0.02mm)である。
【0073】
支持部材80の厚さを大きくすると、後述の測定温度が低下する。例えば、支持部材80の厚さが30μmの場合、支持部材80の厚さが20μmの場合と比較して、測定温度は約9%低くなったが、測定温度の低下を10%未満に抑えることが可能である。
【0074】
図9に示すように、支持部材80は、本体部81と、本体部81から第2面72に沿って延びる複数の延出部82と、延出部82と接続された固定部83と、本体部81を貫通する開口部84(第2開口部)と、を有している。
【0075】
支持部材80は、平面視において、本体部81が開口部73の中央と重なるように設けられている。開口部84は、例えば、円形状である。開口部84は、開口部73と同軸上に位置している。
【0076】
他の観点からは、開口部84は、開口部73の中央と重なっている。なお、開口部84の形状は、多角形状など他の形状であってもよい。また、本体部81の形状は、図示した例に限られない。
【0077】
複数の延出部82は、本体部81の周りにおいて、周方向Dθに実質的に均等に設けられている。延出部82の数量は、例えば、3つであるが、2つでもよいし、4つ以上でもよい。複数の延出部82は、それぞれ同じ形状を有している。
【0078】
図9に示す例において、延出部82は、径方向Drに沿って本体部81から離れるに従い、幅が小さくなる先細り状に形成されている。ここで、幅は、径方向Drおよび第3方向D3と直交する方向における距離に相当する。他の観点からは、延出部82は、径方向Drに沿って、一定の割合、または任意の割合で減少する幅を有している。
【0079】
延出部82は、本体部81と接続された基部85と、基部85と反対側の先端部86と、を有している。基部85は開口部73と重なり、先端部86は第2面72と重なっている。先端部86の幅W86(
図9に示す)は、基部85の幅W85(
図9に示す)よりも小さい(W86<W85)。
【0080】
固定部83は、先端部86と接続されている。固定部83は、例えば、略長方形状であるが、この例に限られない。
図9に示す例において、固定部83の幅W83は、先端部86の幅W86よりも大きく、基部85の幅W85よりも大きい(W83>W86,W83>W85)。
【0081】
熱電対51の種類は、測定される温度範囲に応じて適宜変更することができる。熱電対51は、例えば、K熱電対である。熱電対51は、第3方向D3に沿って、開口部63および開口部73に挿入されている。熱電対51は、金属線53,54と、金属線53,54によって形成された測定部55と、を有している。
【0082】
測定部55は、測定接点(測温接点、熱接点)である。測定部55は、金属線53,54の一端側の各々が電気的に接続されることで形成されている。金属線53,54の測定部55と反対側の端部の各々は、測定モジュール52と電気的に接続されている。
【0083】
測定モジュール52は、熱電対51による熱起電力に基づいて温度を測定する。測定モジュール52は、一例として、データロガーである。測定モジュール52と金属線53,54との間には、補償導線が設けられてもよい。
【0084】
図10に示す例において、測定部55は、本体部81の開口部84に位置している。他の観点からは、測定部55は、開口部84の内面87(
図10に示す)に覆われている。なお、測定部55は、開口部84よりも上方に位置してもよいし、または開口部84よりも下方に位置してもよい。
【0085】
温度測定器50は、接着剤33,34と、をさらに備えている。接着剤33,34は、例えば、熱硬化型接着剤である。接着剤33,34は、例えば、上述の接着剤31と同様の材料によって形成されている。
【0086】
接着剤33は、測定部55を開口部84に固定している。
図9に示す例において、接着剤33は、開口部84に位置する第1部分331と、開口部84よりも上方に位置する第2部分332と、開口部84よりも下方に位置する第3部分333と、を有している。なお、接着剤33は、第2部分332および第3部分333を有さなくてもよい。
図9においては、接着剤33にドットを付して示している。
【0087】
接着剤34は、ベース70と支持部材80とを接着している。接着剤34は、ベース70と固定部83との間に設けられている。先端部86の幅W86よりも大きい幅を有する固定部83とベース70とを接着剤34によって固定することで、支持部材80をベース70に対して、安定して固定することができる。
【0088】
ただし、接着剤34は、ベース70と先端部86との間に設けられてもよい。
図10に示す例においては、説明の都合上、ベース70と支持部材80との間に隙間が形成されているが、当該隙間は微小な隙間であり、ベース70と支持部材80とは接してもよい。
【0089】
続いて、温度測定器50と赤外線照射装置130との関係について、説明する。
【0090】
図8に示すように、赤外線照射装置130の照射ヘッド131は、熱電対ユニット60の上方に設けられている。第3方向D3における照射ヘッド131の先端133から支持部材80の上面までは、距離H(
図8に示す)離れている。
【0091】
距離Hは、サスペンション10の製造工程(工程S7)における照射ヘッド131の先端133からワークWまでの距離と実質的に等しい。距離Hは、例えば、約3.0mmである。
【0092】
距離Hは、固定台61およびベース70などによって、工程S7における照射ヘッド131の先端133からワークWまでの距離と実質的に等しくなるように調整される。このように距離Hを設定することによって、ワークWを用いた場合と同等の測定温度を得ることが可能である。
【0093】
図9には、照射ヘッド131から照射される赤外線の照射領域のうち、照射エネルギーの90%が到達する領域Aを示している。熱電対ユニット60は、軸CXが照射ヘッド131の中心(領域Aの中心)と一致するように配置されている。
【0094】
平面視において、開口部73の大きさは、領域Aの大きさよりも大きいことが好ましい。本体部81および延出部82の基部85は領域Aと重なっているが、延出部82の先端部86、固定部83、およびベース70の第2面72は領域Aと重なっていない。
【0095】
開口部73の内径ID(
図10に示す)は、例えば、2.0mm以上であって、一例では、約3.0mmである。開口部73の内径IDは、3.0mmよりも大きくてもよい。領域Aの大きさは赤外線照射装置130や距離Hなどによって異なるため、開口部73の大きさが領域Aの大きさよりも大きくなるように適宜調整される。
【0096】
ここで、領域Aとアクチュエータ搭載部13,14との関係について、説明する。
図11は、ワークWのアクチュエータ搭載部13,14と赤外線の照射領域との関係を説明するための図である。ワークWは、一対のアクチュエータ搭載部13,14を有している。
【0097】
ワークWが照射位置RPまで搬送され、照射ヘッド131の先端133と正対すると、アクチュエータ搭載部13,14は、赤外線照射装置130の照射領域のうち領域Aと重なる。
【0098】
他の観点からは、領域Aは、アクチュエータ搭載部13,14をそれぞれ含むように設定されている。このように領域Aを設定することによって、アクチュエータ搭載部13,14のそれぞれに塗布された接着剤に同時に赤外線を照射することが可能である。
【0099】
図12は、赤外線照射装置130の各出力における測定温度を示す図である。
図12の横軸は赤外線照射装置130の出力[%]を示している。
図12の縦軸は、測定温度[Deg/C]を示している。
図12においては、温度測定器50を用いた場合の測定温度C1と、ワークWを用いた場合の測定温度C2とをそれぞれ示している。
【0100】
図12は、開口部73の内径ID(
図10に示す)が約3.0mmであるベース70を使用した場合である。ワークWを用いた場合の測定温度は、ワークWの一対のアクチュエータ搭載部13,14の間のタング26近傍に熱電対51の測定部55を固定させた状態で得た。
【0101】
図12に示すように、赤外線照射装置130の出力の増加に伴い、測定温度が増加することがわかる。本実施形態の温度測定器50であれば、ワークWを用いた場合と同等の測定温度が得られた。
【0102】
ワークWを用いた場合には赤外線照射装置130の出力が90%の場合で測定温度がばらついた。一方、温度測定器50を用いた場合には赤外線照射装置130の各出力において測定温度のばらつきがほとんどなく、安定した測定温度を得ることができた。
【0103】
図13および
図14は、時間と測定温度との関係を示す図である。
図13および
図14の横軸は時間[s]を示しており、ゼロが測定開始時に相当する。
図13および
図14の縦軸は、測定温度[Deg/C]を示している。
【0104】
図13は開口部73の内径ID(
図10に示す)が約3.0mmであるベース70を使用した場合であり、
図14は開口部73の内径IDが約2.0mmであるベース70を使用した場合である。温度測定器50におけるベース70以外の要素については、同様に構成されている。
【0105】
図13および
図14に示す例において、赤外線照射装置130は、出力が100%の赤外線を0.7秒間照射(1回目)した後、出力が93%の赤外線を0.7秒間照射(2回目)した。
図13および
図14においては、1回目の赤外線の照射による温度を測定した。
【0106】
図13に示す測定温度の各ピークP1は、
図14に示す温度の各ピークP2よりも大きい。
図13に示す例において、各ピークP1は120度~140度の間に位置し、
図14に示す例において、各ピークP2は80度~100度の間に位置している。すなわち、開口部73の大きさを小さくすることにより、測定温度が低下した。
【0107】
開口部73の大きさを小さくことで、延出部82とベース70の第2面72とが重なる面積は大きくなる。延出部82とベース70の第2面72とが重なる面積が大きくなることで、延出部82からベース70を介して熱が放熱されやすくなる。ベース70を介して熱が放熱されすぎると、ワークWに赤外線を照射した場合と比較して、温度測定器50を用いた場合の測定温度が低くなるおそれがある。
【0108】
そのため、上述の通り、開口部73の大きさは、領域Aの大きさよりも大きいことが好ましい。例えば、延出部82と開口部73とが重なる面積は、延出部82とベース70の第2面72とが重なる面積よりも大きい。このような開口部73を形成することで、ワークWに赤外線を照射した場合と同等の測定温度を得ることが可能である。
【0109】
図15乃至
図17は、時間と測定温度との関係を示す図である。
図15乃至
図17の横軸は時間[s]を示している。
図15乃至
図17の縦軸は、測定温度[Deg/C]を示している。
図15乃至
図17においては、測定温度のうち、温度上昇部T1および温度下降部T2の一部を示している。
【0110】
図15および
図16においては温度測定器50を用いた場合の測定温度を示し、
図17においてはワークWを用いた場合の測定温度を示している。
図15はアルミニウム合金によって形成されたベース70を使用した場合であり、
図16はPEEKによって形成されたベース70を使用した場合である。
【0111】
図示されていないが、
図15乃至
図17が示す測定温度のピークは、実質的に同等である。
図15乃至
図17の温度上昇部T1を比較すると、温度上昇部T1は、それぞれ同等であることがわかる。
【0112】
図15および
図16の温度下降部T2を比較すると、アルミニウム合金によって形成されたベース70の方が、PEEKによって形成されたベース70よりも温度の低下が早いことがわかる。他の観点からは、アルミニウム合金によって形成されたベース70の方が、PEEKによって形成されたベース70よりも放熱されやすい。
【0113】
時間と測定温度との関係(温度プロファイル)の観点から、
図15および
図16を
図17とそれぞれ比較すると、PEEKによって形成されたベース70を使用することで、
図17に示された温度プロファイルと同等の温度プロファイルを得ることできた。
【0114】
以上のように構成された温度測定器50であれば、開口部73を有するベース70と、開口部73と重なる本体部81と、複数の延出部82と、を有する支持部材80と、開口部73に挿入されるとともに、本体部81に位置する測定部55を有する熱電対51と、を備えている。
【0115】
例えば、ワークWを用いて照射位置RPにおける温度を測定するためには、
図12を用いて説明したように、一対のアクチュエータ搭載部13,14の間に熱電対51の測定部55を固定する必要がある。
【0116】
この場合、ワークWに対して熱電対51を接触させるため、ワークWが変形する恐れがある。さらに、ワークWを用いた場合の測定温度は、
図12を用いて説明したように、ばらつきやすく、安定した測定温度が得られにくい。
【0117】
また、ワークWの代替品として、金属製のメッシュを使用することもできるが、金属製のメッシュは、放熱量が大きいため、ワークWに赤外線を照射した場合と比較して、測定温度が低くなる傾向があった。
【0118】
図12を用いて説明したように、本実施形態の温度測定器50であれば、ワークWを用いた場合と同等の測定温度を得ることが可能であるとともに、測定温度のばらつきがほとんどなく、安定した測定温度を得ることが可能である。したがって、本実施形態であれば、照射位置RPに照射される赤外線に対して、熱電対51を用いた温度測定を精度良く行うことが可能である。
【0119】
本実施形態の熱電対51の測定部55は、支持部材80の本体部81に形成された開口部84に位置している。このように支持部材80に対して測定部55を設けることで、熱電対ユニット60を照射位置RPに配置させた際、測定部55を領域Aの中央に配置しやすくなる。これにより、測定部55と照射ヘッド131との位置関係を適切に管理し、熱電対51を用いた温度測定をより精度良く行うことが可能である。
【0120】
本実施形態の延出部82は、本体部81から離れるに従い、幅が小さくなる先細り状に形成されているため、延出部82とベース70の第2面72とが重なる面積は、径方向Drに沿って小さくなっている。
【0121】
これにより、延出部82からベース70を介して熱が放熱されにくくなる。その結果、本実施形態の温度測定器50であれば、ワークWを用いた場合と同等の測定温度を得ることができるため、熱電対51を用いた温度測定をより精度良く行うことが可能である。
【0122】
本実施形態の支持部材80は、メタルベース24を形成する材料と同じ材料によって形成されている。本実施形態の支持部材80は、メタルベース24の厚さと同等の厚さを有している。このように支持部材80を形成することによって、ワークWを用いた場合と同等の測定温度をより得られやすい。
【0123】
本実施形態に係るサスペンション10の製造装置100であれば、温度測定器50を備えている。上述の通り、温度測定器50であれば、ワークWを用いた場合と同等の測定温度を得ることができる。当該測定温度に基づき赤外線照射装置130の制御パラメータを調整することで、赤外線照射装置130による赤外線の照射条件を適切に管理することが可能である。
【0124】
適切に照射条件が管理された赤外線照射装置130であれば、塗布された接着剤の状態を適切に制御し、圧電素子15,16をアクチュエータ搭載部13,14の所定位置に正確に搭載することが可能である。その結果、安定した品質を有するサスペンション10を提供することが可能である。以上説明した他にも、本実施形態からは種々の好適な作用が得られる。
【0125】
次に、他の実施形態について説明する。なお、以下に述べる他の実施形態において、上述した第1実施形態と同様の構成要素には、第1実施形態と同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略あるいは簡略化する場合がある。
【0126】
[第2実施形態]
図18は、本実施形態に係る温度測定器50を示す概略的な平面図である。
図19は、
図18に示されたXIX-XIX線に沿う温度測定器50の一部を示す概略的な断面図である。本実施形態に係る温度測定器50は、第1実施形態と比較して、支持部材80が固定部83に形成された開口部88を有している点で相違している。
【0127】
支持部材80は、固定部83を貫通する複数の開口部88(第3開口部)を有している。
図18に示す例においては、開口部88は、固定部83の各々に1つ設けられている。複数の開口部88は、第2面72と重なっている。開口部88は、例えば、円形状である。なお、開口部88の形状は、多角形状など他の形状であってもよい。
【0128】
図19に示すように、接着剤34は、ベース70と固定部83との間に位置する第4部分341と、開口部88に位置する第5部分342と、開口部88よりも上方に位置する第6部分343と、を有している。接着剤34は、第6部分343を有さなくてもよい。
図18においては、接着剤33,34にドットを付して示している。
【0129】
本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。本実施形態に係る温度測定器50は、支持部材80の固定部83が開口部88を有している。固定部83に開口部88が形成されることで、ベース70に対して支持部材80を固定する際、ベース70に支持部材80を重ね、位置決めした状態で、第3方向D3と反対の方向から開口部88を介して、ベース70と固定部83との間に未硬化の接着剤34を注入することができる。
【0130】
これにより、ベース70に支持部材80を固定する際、支持部材80がずれにくくなる。ベース70に対して支持部材80を重ねた状態で接着剤を注入することができるため、温度測定器50を製作する際の作業性が向上する。
【0131】
[第3実施形態]
図20は、本実施形態に係る温度測定器50を示す概略的な平面図である。本実施形態に係る温度測定器50は、第1実施形態と比較して、支持部材80が枠部89を有している点で相違している。
【0132】
支持部材80は、複数の延出部82に接続された枠部89を有している。枠部89は、先端部86よりも径方向Dr外側に位置している。枠部89は、第2面72と重なっている。枠部89は、平面視において、環状に形成されている。枠部89の形状は、この例に限られない。
【0133】
本実施形態において、接着剤34は、ベース70と枠部89との間に設けられている。接着剤は、例えば、周方向Dθにおいて枠部89全体に設けられている。接着剤34は、ベース70と先端部86との間にさらに設けられてもよい。
【0134】
本実施形態に係る温度測定器50は、支持部材80が枠部89を有している。これにより、支持部材80が変形しにくくなるとともに、ベース70に対して支持部材80を安定して固定することが可能である。枠部89の有無によって温度測定器50による測定温度はほとんど変化しないため、本実施形態の構成においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0135】
[第4実施形態]
図21および
図22は、本実施形態に係る温度測定器50を示す概略的な平面図である。本実施形態に係る温度測定器50は、第3実施形態と比較して、支持部材80が枠部89に形成された開口部88を有している点で相違している。本実施形態の開口部88は、第2実施形態の開口部88と同様の形状を有している。
【0136】
支持部材80は、枠部89を貫通する複数の開口部88を有している。複数の開口部88は、第2面72と重なっている。開口部88は、例えば、円形状である。複数の開口部88は、周方向Dθにおいて、実質的に均等に枠部89に配置されている。
【0137】
図21に示す例において、枠部89には、3つの開口部88が形成されている。
図22に示す例において、枠部89には、6つの開口部88が形成されている。
図21および
図22における複数の開口部88の位置は一例であり、これらの例に限られない。
【0138】
本実施形態においては、接着剤34は、ベース70と枠部89との間において、周方向Dθに等間隔に設けられている。本実施形態の構成は、第2実施形態の構成、および第4実施形態の構成を組み合わせた構成である。本実施形態の構成においても、上述の第2実施形態および第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0139】
以上の実施形態にて開示した発明を実施するにあたっては、サスペンションの具体的な形態をはじめとして、圧電素子や、接着剤などアクチュエータ搭載部を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また、搬送装置、塗布装置、赤外線照射装置、および素子供給装置なども種々の形態で実施することが可能である。
【0140】
なお、本実施形態においては、熱電対51の測定部55を開口部84に接着剤33によって固定するが、測定部55を開口部84にはんだによって固定してもよい。延出部82は、先細り状に形成されているが、径方向Drに沿って、一定の幅を有するように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1…ディスク装置、10…サスペンション、13,14…アクチュエータ搭載部、15,16…圧電素子、50…温度測定器、51…熱電対、52…測定モジュール、55…測定部、60…熱電対ユニット、61…固定台、63…開口部、70…ベース、71…第1面、72…第2面、73…開口部(第1開口部)、80…支持部材、81…本体部、82…延出部、84…開口部(第2開口部)、85…基部、86…先端部、88…開口部(第3開口部)、89…枠部、100…製造装置、110…搬送装置、120…塗布装置、130…赤外線照射装置、140…素子供給装置、160…制御装置、A…領域、RP…照射位置、W…ワーク。