(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002131
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】カップ水切り装置、カップ水切り方法及びカップ浮遊装置
(51)【国際特許分類】
A47L 17/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A47L17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101147
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】武枝 信喜
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 貴志
(57)【要約】
【課題】洗浄後のカップを安定して水切りできるカップ水切り装置及びカップ水切り方法を提供する。
【解決手段】テーパ状の胴部100と底部110とを備え、胴部100の開口端部100aにカップ径方向の外側に突出するカール部105が形成された有底テーパ状のカップPを水切りするカップ水切り装置10であって、上下方向に延びる筒体12と、筒体12の内部にエアを噴射するノズル13と、を備え、ノズル13は、開口端部100aが上側を向く姿勢とされたカップPを、エアにより筒体12の内部で浮遊させて水切りする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ状の胴部と底部とを備え、前記胴部の開口端部にカップ径方向の外側に突出するカール部が形成された有底テーパ状のカップを水切りするカップ水切り装置であって、
上下方向に延びる筒体と、
前記筒体の内部にエアを噴射するノズルと、を備え、
前記ノズルは、前記開口端部が上側を向く姿勢とされた前記カップを、エアにより前記筒体の内部で浮遊させて水切りする、
カップ水切り装置。
【請求項2】
前記筒体は、前記筒体の周壁を貫通する貫通孔を有し、
前記ノズルは、前記貫通孔を通して、前記筒体の内部にエアを噴射する、
請求項1に記載のカップ水切り装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、上下方向に延びるスリット状である、
請求項2に記載のカップ水切り装置。
【請求項4】
前記貫通孔の上下方向の寸法が、前記カップの上下方向の寸法よりも大きい、
請求項3に記載のカップ水切り装置。
【請求項5】
前記ノズルは、複数設けられ、
複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に等ピッチで配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカップ水切り装置。
【請求項6】
前記ノズルは、複数設けられ、
複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、
前記ノズルがエアを噴射する噴射方向は、前記中心軸と直交する径方向の内側へ向かうに従い、上側に向けて延び、
径方向から見て、前記噴射方向と前記中心軸との間に形成される角度が、20°以上45°以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカップ水切り装置。
【請求項7】
前記ノズルは、複数設けられ、
複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、
前記ノズルがエアを噴射する噴射方向は、前記中心軸と直交する径方向の内側へ向かうに従い、周方向一方側に向けて延びる、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカップ水切り装置。
【請求項8】
上下方向から見て、前記噴射方向は、前記カール部の外径寸法よりも直径が小さい仮想円の接線方向に沿って延びる、
請求項7に記載のカップ水切り装置。
【請求項9】
前記ノズルは、複数設けられ、
複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、
各前記ノズルから噴射されるエアの流量を調整する調整弁を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカップ水切り装置。
【請求項10】
前記ノズルにエアを供給する開閉弁と、
前記筒体の内部に配置された前記カップを検知する検知部と、
前記検知部が前記カップを検知し、所定時間が経過した後、前記開閉弁を閉じて前記ノズルへのエアの供給を停止させる制御部と、を備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカップ水切り装置。
【請求項11】
テーパ状の胴部と底部とを備え、前記胴部の開口端部にカップ径方向の外側に突出するカール部が形成された有底テーパ状のカップを水切りするカップ水切り方法であって、
上下方向に延びる筒体の内部にエアを噴射し、
前記開口端部が上側を向く姿勢とされた前記カップを、エアにより前記筒体の内部で浮遊させて水切りする、
カップ水切り方法。
【請求項12】
上下方向に延びる筒状をなし、内部を有底テーパ状のカップが通過する筒体と、
前記筒体の内部にエアを噴射し、エアにより前記筒体の内部で前記カップを浮遊させるノズルと、を備える、
カップ浮遊装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ水切り装置、カップ水切り方法及びカップ浮遊装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載の缶洗浄装置が知られている。この缶洗浄装置は、搬送路のコンベア部上に、有底円筒状の缶が密集して配置される。複数の缶は、コンベア部によって搬送されつつ、洗浄及び乾燥される。
また近年では、例えば特許文献2に記載されるような、胴部がテーパ状に形成された金属製カップへの需要がある。この種の金属製カップでは、飲み口となる胴部の開口端部に、唇を保護するためのカール部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5103317号公報
【特許文献2】特表2020-508874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のようなカップを洗浄する場合、カール部に水などの洗浄液が溜まり、カール部を水切りすることが難しい。
【0005】
本発明は、洗浄後のカップを安定して水切りできるカップ水切り装置及びカップ水切り方法を提供することを第1の目的とする。
【0006】
また、特許文献2のようなカップを製造時に順次搬送するときに、搬送されるカップ同士が強く接触(衝突)して傷付いたり、変形したりするおそれがある。
【0007】
本発明は、搬送されるカップ同士が、互いの衝突により傷付いたり、変形したりすることを防止できるカップ浮遊装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、テーパ状の胴部と底部とを備え、前記胴部の開口端部にカップ径方向の外側に突出するカール部が形成された有底テーパ状のカップを水切りするカップ水切り装置であって、上下方向に延びる筒体と、前記筒体の内部にエアを噴射するノズルと、を備え、前記ノズルは、前記開口端部が上側を向く姿勢とされた前記カップを、エアにより前記筒体の内部で浮遊させて水切りする。
また、本発明の態様11は、テーパ状の胴部と底部とを備え、前記胴部の開口端部にカップ径方向の外側に突出するカール部が形成された有底テーパ状のカップを水切りするカップ水切り方法であって、上下方向に延びる筒体の内部にエアを噴射し、前記開口端部が上側を向く姿勢とされた前記カップを、エアにより前記筒体の内部で浮遊させて水切りする。
【0009】
本発明のカップ水切り装置及びカップ水切り方法では、洗浄後のカップを筒体の内部に投入し、ノズルから噴射されるエアによりカップを浮遊させることで、カップに付着する液滴(水滴)を除去し、カップを水切りする。ノズルから噴射されるエアは、カップの外周面と筒体の内周面との間を通過するときに、カップ径方向の外側に突出するカール部にも当てられる。これにより、カール部に溜まった洗浄液をエアによって効率よく吹き飛ばすことができる。
以上より本発明によれば、洗浄後のカップを安定して水切りできる。
【0010】
本発明の態様2において、前記筒体は、前記筒体の周壁を貫通する貫通孔を有し、前記ノズルは、前記貫通孔を通して、前記筒体の内部にエアを噴射する、態様1に記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0011】
この場合、筒体の外部にノズルを設けることができるため、筒体の内部の構造を簡素化できる。これにより、筒体の内部のエアの流れを安定させて、乱流の発生を抑制できる。よって、筒体の内部でカップをより安定して浮遊させることができる。
また、筒体の内部にカップを通過させる構成などを採用することが可能となり、水切り後の次工程へと、カップを搬送しやすくすることができる。
【0012】
本発明の態様3において、前記貫通孔は、上下方向に延びるスリット状である、態様2に記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0013】
この場合、上下方向に延びる貫通孔からエアが適度に流出するなどにより、筒体内でのエアの整流作用が得られやすくなる。このため、水切り中のカップの浮遊姿勢をより安定させることができる。
【0014】
本発明の態様4において、前記貫通孔の上下方向の寸法が、前記カップの上下方向の寸法よりも大きい、態様3に記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0015】
この場合、筒体の内部でカップが浮遊しつつ上下方向に多少移動しても、貫通孔による整流作用が安定して得られ、水切り中のカップの浮遊姿勢が良好に維持される。
【0016】
本発明の態様5において、前記ノズルは、複数設けられ、複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に等ピッチで配置される、態様1から4のいずれか1つに記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0017】
この場合、周方向に等ピッチで配列する複数のノズルから、カップに均等にエアを供給することができる。これらのノズルによって、筒体の内部でより安定してカップを浮遊させることができる。
【0018】
本発明の態様6において、前記ノズルは、複数設けられ、複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記ノズルがエアを噴射する噴射方向は、前記中心軸と直交する径方向の内側へ向かうに従い、上側に向けて延び、径方向から見て、前記噴射方向と前記中心軸との間に形成される角度が、20°以上45°以下である、態様1から5のいずれか1つに記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0019】
上記角度が20°以上であると、ノズルから噴射するエアがカップの外周面のほか底部などにも当たりやすくなり、筒体への投入直後からカップに適切な浮力を付与することができる。
上記角度が45°以下であると、ノズルから噴射するエアによってカップを上側へ押し上げる力(エア圧力の上側への分力)が、安定して確保される。
すなわち、上記角度の数値範囲であれば、筒体の内部でカップを安定して浮遊させつつ、カール部を効率よく水切りすることができる。
【0020】
本発明の態様7において、前記ノズルは、複数設けられ、複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、前記ノズルがエアを噴射する噴射方向は、前記中心軸と直交する径方向の内側へ向かうに従い、周方向一方側に向けて延びる、態様1から6のいずれか1つに記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0021】
この場合、複数のノズルから噴射されるエアが、中心軸回りの周方向のうち、周方向一方側へ向けた旋回流を発生させる。このため、カップが、筒体の内部で浮遊しつつ、中心軸回りに回転させられる。
これにより、カップに対して、周方向において均等にエアを供給することができる。また、カップ回転の遠心力によって、液滴をより吹き飛ばしやすくすることができる。したがって、カップの水切りをより効率よく行える。
【0022】
本発明の態様8において、上下方向から見て、前記噴射方向は、前記カール部の外径寸法よりも直径が小さい仮想円の接線方向に沿って延びる、態様7に記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0023】
この場合、エアの旋回流がカップの外周面に作用しやすくなり、カップに浮力及び回転力を安定して付与しやすい。カップをより安定的に浮遊状態で回転させることができ、水切りの効果がさらに高められる。
【0024】
本発明の態様9において、前記ノズルは、複数設けられ、複数の前記ノズルは、前記筒体の中心軸回りの周方向に互いに間隔をあけて配置され、各前記ノズルから噴射されるエアの流量を調整する調整弁を備える、態様1から8のいずれか1つに記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0025】
この場合、調整弁によって、各ノズルから噴射されるエアの流量を調整できるため、筒体の内部でより安定してカップを浮遊させることができる。
【0026】
本発明の態様10は、前記ノズルにエアを供給する開閉弁と、前記筒体の内部に配置された前記カップを検知する検知部と、前記検知部が前記カップを検知し、所定時間が経過した後、前記開閉弁を閉じて前記ノズルへのエアの供給を停止させる制御部と、を備える、態様1から9のいずれか1つに記載のカップ水切り装置としてもよい。
【0027】
この場合、筒体内で浮遊するカップに対して、所定時間の水切りが行われた後、ノズルから噴射されるエアの供給が停止される。エアの供給が停止されることで、カップはその自重により落下し、筒体内から下側へ排出される。カップを自動的に次工程へ移送することが可能になり、カップの水切り処理の効率が高められて、カップの生産効率が向上する。
【0028】
本発明の態様12は、上下方向に延びる筒状をなし、内部を有底テーパ状のカップが通過する筒体と、前記筒体の内部にエアを噴射し、エアにより前記筒体の内部で前記カップを浮遊させるノズルと、を備える、カップ浮遊装置である。
【0029】
本発明のカップ浮遊装置では、カップが筒体の内部を自然落下によって通過するときに、ノズルから噴射されるエアによって、カップを一時的に筒体内で浮遊させることができる。これにより、筒体内でのカップの移送速度を調整したり、後工程に移送するタイミングを調整したりすることができる。したがって、搬送されるカップ同士が接触することを抑制できる。
本発明によれば、搬送されるカップ同士が、互いの衝突により傷付いたり、変形したりすることを防止できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の前記態様のカップ水切り装置及びカップ水切り方法によれば、洗浄後のカップを安定して水切りできる。
また、本発明の前記態様のカップ浮遊装置によれば、搬送されるカップ同士が、互いの衝突により傷付いたり、変形したりすることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、カップを示す側面図(半断面図)である。
【
図2】
図2は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)の一部を示す透過斜視図である。
【
図4】
図4は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)を示す横断面図である。
【
図5】
図5は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)を示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)を示す側面図である。
【
図7】
図7は、カップ水切り装置(カップ浮遊装置)の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態のカップ水切り装置10及びカップ水切り方法について、
図1~
図6を参照して説明する。なお本明細書では、カップ水切り装置10を単に装置と呼ぶ場合がある。
【0033】
本実施形態のカップ水切り装置10は、例えば、
図1に示すような有底テーパ状のカップPを、洗浄、水切り及び乾燥するカップ洗浄乾燥システムに設けられる。特に図示しないが、カップ洗浄乾燥システムは、カップ洗浄装置と、本実施形態のカップ水切り装置10と、カップ乾燥装置と、を備える。
【0034】
特に図示しないが、カップ洗浄装置は、カップPに水等の洗浄液を噴射し、カップPを洗浄する。この洗浄の後、カップPの表面などには、洗浄液の液滴が付着している。
図2に示すカップ水切り装置10は、カップ洗浄装置よりも搬送方向の下流側に配置され、カップPにエアを噴射し、カップPに付着した液滴をエアによって吹き飛ばし、除去する(すなわちカップPを水切りする)。
また上記洗浄の後、カップPの後述するカール部105内には、洗浄液の液滴が溜まっている。カップ水切り装置10は、カール部105に溜まった液滴をエアによって吹き飛ばし、除去する。
【0035】
特に図示しないが、カップ乾燥装置は、洗浄及び水切り処理後のカップPを乾燥させて、カップPに残留した水分等を除去する。カップ乾燥装置は、カップ水切り装置10よりも搬送方向の下流側に配置され、カップPに熱風を供給し、カップPを乾燥する。
【0036】
まず、
図1を参照して、カップPについて説明する。
カップPは、金属製であり、具体的には、アルミニウム製やアルミニウム合金製等である。カップPは、単一の部材により一体に形成されている。
【0037】
カップPは、カップ洗浄乾燥システムよりも前工程に設けられる図示しないボトルネッカー等のカップ製造装置(缶製造装置)において、所定のカップ形状に成形される。
詳しくは、カップ製造装置は、図示しない有底筒状のDI缶(中間成形体の缶)に対して、ダイ加工及び回転加工を含む複数種類の成形加工を施すことにより、所定形状のカップPを製造する。なお前記DI缶は、カップ製造装置よりも前工程において、アルミニウム製やアルミニウム合金製等の板材から打ち抜いた円板状のブランクに、カッピング工程(絞り工程)、DI工程(絞りしごき工程)、トリミング工程、印刷工程、塗装工程等を施すことにより、有底円筒状に形成されている。
【0038】
本実施形態では、カップPの中心軸をカップ軸Aと呼ぶ。カップPは、テーパ状の胴部100と、底部110と、を備える。カップPは、胴部100の開口端部100aの直径寸法が最も大きくされている。本実施形態では、開口端部100a(の後述するカール部105)の外径寸法が、例えばφ86mm程度である。また、開口端部100aの内径寸法は、例えばφ80mm程度である。
また本実施形態では、カップPのカップ軸Aに沿う高さ寸法(カップ高さ寸法)が、例えば、146mm程度である。なお、特に図示しないが、本実施形態の変形例のカップPでは、カップ高さ寸法が、例えば、116mm程度や85mm程度とされていてもよい。
【0039】
本実施形態では、カップ軸Aが延びる方向をカップ軸方向と呼ぶ。カップ軸方向のうち、底部110から胴部100の開口端部100aへ向かう方向を開口側と呼び、開口端部100aから底部110へ向かう方向を底部側と呼ぶ。
カップ軸Aと直交する方向をカップ径方向と呼ぶ。カップ径方向のうち、カップ軸Aに近づく方向をカップ径方向の内側と呼び、カップ軸Aから離れる方向をカップ径方向の外側と呼ぶ。
カップ軸A回りに周回する方向をカップ周方向と呼ぶ。
【0040】
胴部100は、カップ軸Aを中心とする略テーパ筒状である。胴部100は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い直径寸法が大きくなる(拡径する)。
胴部100は、底部側円筒部101と、底部側段部102と、開口側円筒部103と、開口側段部104と、カール部105と、テーパ部106と、を有する。
【0041】
底部側円筒部101は、胴部100のうちカップ軸方向の底部側の端部に配置される。底部側円筒部101は、カップ軸Aを中心とする円筒状である。底部側円筒部101は、胴部100において最も小径とされている。底部側円筒部101の外径寸法は、例えば、φ66mm程度である。
【0042】
底部側段部102は、カップ軸Aを中心とするテーパ筒状である。底部側段部102は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い拡径する。底部側段部102は、底部側円筒部101のカップ軸方向の開口側に隣り合って配置される。底部側段部102は、底部側円筒部101のカップ軸方向の開口側の端部に接続する。
【0043】
開口側円筒部103は、胴部100の開口端部100aに配置される。開口側円筒部103は、カップ軸Aを中心とする円筒状である。開口側円筒部103の直径寸法は、底部側円筒部101の直径寸法よりも大きい。
【0044】
開口側段部104は、胴部100の開口端部100aに配置される。開口側段部104は、カップ軸Aを中心とするテーパ筒状である。開口側段部104は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い拡径する。開口側段部104は、開口側円筒部103のカップ軸方向の底部側に隣り合って配置される。開口側段部104は、開口側円筒部103のカップ軸方向の底部側の端部に接続する。
【0045】
カール部105は、胴部100の開口端部100aに配置される。カール部105は、開口端部100aに、カップ径方向の外側に突出して形成されている。カール部105は、カップ軸Aを中心とする円環状である。カール部105は、カップ周方向の全周にわたって延びている。カール部105は、胴部100において最も大径とされている。カール部105は、そのカップ径方向の内端部が、開口側円筒部103のカップ軸方向の開口側の端部に接続される。
【0046】
具体的に、カール部105は、開口端部100aにおけるカップ軸方向の開口側の端縁からカップ径方向の外側に向けて突出し、カップ軸方向の底部側からカップ径方向の内側に向けて折り返されている。カール部105は、カップ軸Aに沿う縦断面の形状が、略円形リング状をなす。カール部105は、その縦断面に表される円形リング形状のうち、カップ径方向の内端部に位置する円周の一部が開口されており、この開口部分を通して、カール部105の内部と外部とは連通している。カール部105の開口部分は、カップ径方向の内側かつ底部側へ向けて開口している。すなわち、カール部105は、少なくとも底部側に向けて開口している。
【0047】
カール部105の幅寸法(カップ径方向の寸法)は、例えば、3~5mm程度である。カール部105の高さ寸法(カップ軸方向の寸法)は、例えば、2~4mm程度である。開口側円筒部103の外周面と、カール部105との間に設けられる隙間の寸法は、例えば、1~2mm程度である。
【0048】
テーパ部106は、胴部100のうちカップ軸方向の両端部間に位置する中間部分に配置される。テーパ部106は、カップ軸Aを中心とするテーパ筒状である。テーパ部106は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い拡径する。テーパ部106は、カップ軸方向において、底部側段部102と開口側段部104との間に配置される。テーパ部106のカップ軸方向の底部側の端部は、底部側段部102のカップ軸方向の開口側の端部と接続される。テーパ部106のカップ軸方向の開口側の端部は、開口側段部104のカップ軸方向の底部側の端部と接続される。
【0049】
本実施形態では、テーパ部106のカップ軸方向に沿う単位長さあたりのカップ径方向へ向けた変位量(つまりカップ軸Aに対する傾き)が、底部側段部102の前記変位量及び開口側段部104の前記変位量よりも小さい。テーパ部106のカップ軸方向の寸法は、底部側円筒部101、底部側段部102、開口側円筒部103、開口側段部104及びカール部105の各カップ軸方向の寸法よりも、大きい。胴部100の開口端部100aに配置される開口側段部104、開口側円筒部103及びカール部105は、テーパ部106よりもカップ径方向の外側に突出する。
【0050】
底部110は、カップ軸Aを中心とする略円板状である。
底部110は、カップ軸方向の開口側へ向けて膨出するドーム部111と、ドーム部111の外周部に連なり、カップ軸方向の底部側へ向けて突出しカップ周方向に延びる環状凸部(リム部)112と、を有する。
【0051】
環状凸部112は、カップ軸Aを中心とする円形リング状である。環状凸部112は、ドーム部111のカップ径方向の外側に隣り合って配置される。環状凸部112は、胴部100のカップ軸方向の底部側に隣り合って配置される。
環状凸部112は、接地部(ノーズ部)115と、内周壁(カウンターシンク)113と、外周壁(ヒール部)114と、を有する。
【0052】
接地部115は、環状凸部112のうち最もカップ軸方向の底部側に位置する部分である。接地部115は、カップPが正立姿勢(胴部100の開口端部100aが鉛直方向の上側を向く姿勢)でテーブル上面等の載置面に載置されたときに、載置面と接触する。接地部115の直径寸法すなわち接地径は、例えば、φ55mm程度である。
【0053】
内周壁113は、接地部115のカップ径方向の内側に隣り合って配置される。内周壁113は、カップ軸Aを中心とするテーパ筒状である。具体的に、内周壁113は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い縮径するテーパ状である。内周壁113のカップ軸方向の開口側の端部は、ドーム部111のカップ径方向の外側の端部と接続される。
【0054】
外周壁114は、接地部115のカップ径方向の外側に隣り合って配置される。外周壁114は、カップ軸Aを中心とするテーパ筒状である。具体的に、外周壁114は、カップ軸方向の開口側へ向かうに従い拡径するテーパ状である。外周壁114のカップ軸方向の開口側の端部は、胴部100のカップ軸方向の底部側の端部と接続される。すなわち、外周壁114は、底部側円筒部101のカップ軸方向の底部側の端部に接続される。
【0055】
次に、カップ水切り装置10について、説明する。カップ水切り装置10は、前述した有底テーパ状のカップPを水切りする装置である。
図2~
図6に示すように、カップ水切り装置10は、装置ベース11と、上下方向に延びる筒体12と、筒体12の内部にエアを噴射するノズル13と、を備える。また特に図示しないが、カップ水切り装置10は、さらに、エアレギュレータと、開閉弁と、エアマニホールド(分岐管)と、チューブ(配管部材)と、検知部と、制御部と、を備える。
【0056】
ここで、カップ水切り装置10における「方向の定義」について説明する。
筒体12の中心軸Oは、鉛直方向に沿って上下方向に延びている。本実施形態では、中心軸Oが延びる方向を、上下方向と呼ぶ。各図に示すZ軸方向は、鉛直方向すなわち上下方向を表している。各図において、+Z側は上側に相当し、-Z側は下側に相当する。
【0057】
中心軸Oと直交する方向を、径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Oから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
中心軸O回りに周回する方向を、周方向と呼ぶ。周方向のうち、所定の方向を周方向一方側と呼び、これとは反対の方向を周方向他方側と呼ぶ。本実施形態では、
図4に示すように装置を上側から見て、中心軸Oを中心とする反時計回りの方向を周方向一方側と呼び、中心軸Oを中心とする時計回りの方向を周方向他方側と呼ぶ。
【0058】
図2に示すように、装置ベース11は、基台11aと、支柱11bと、を有する。
基台11aは、上下方向と垂直な方向に拡がる板状である。本実施形態では基台11aが、多角形板状であり、具体的には四角形板状である。なお基台11aは、円板状等であってもよい。
【0059】
支柱11bは、上下方向に延びる柱状である。本実施形態では支柱11bが、多角形柱状であり、具体的には四角形柱状である。なお支柱11bは、円柱状等であってもよい。支柱11bの下端部は、基台11aと固定される。
本実施形態では、支柱11bが複数設けられる。複数の支柱11bは、上下方向と直交する方向(水平方向)に互いに間隔をあけて配置される。図示の例では、支柱11bが2つ設けられる。
【0060】
筒体12は、中心軸Oを中心とする筒状である。具体的に、筒体12は、上下方向に延びる円筒状である。
図5に示すように、筒体12の上端部及び下端部は、それぞれ上下方向に開口されている。筒体12は、筒体12の上端部に配置される上部開口12aと、筒体12の下端部に配置される下部開口12bと、を有する。
【0061】
特に図示しないが、筒体12の上部開口12aには、カップ水切り装置10の前工程のカップ洗浄装置からカップPが搬送される搬送手段(上流側搬送手段)が接続される。なお、上流側搬送手段は、上部開口12aから上側に離れて設けられていてもよい。
また、筒体12の下部開口12bには、カップ水切り装置10の後工程のカップ乾燥装置へカップPを搬送する搬送手段(下流側搬送手段)が接続される。なお、下流側搬送手段は、下部開口12bから下側に離れて設けられていてもよい。
【0062】
筒体12の内径寸法Dは、カップPの外径寸法(カール部105の外径寸法)よりも大きい。具体的に、筒体12の内径寸法Dは、カップPの外径寸法(カール部105の外径寸法)に対して、例えば、105~115%とされる。本実施形態では、筒体12の内径寸法Dが、筒体12の上下方向の全長にわたって一定とされている。
【0063】
図2~
図6に示すように、筒体12は、貫通孔14と、リング15と、を有する。
貫通孔14は、筒体12の周壁を径方向に貫通する。貫通孔14は、上下方向に延びるスリット状である。このため貫通孔14は、スリット14と言い換えてもよい。貫通孔14は、筒体12の上端部と下端部との間の中間部分に配置される。
【0064】
図5及び
図6に示すように、貫通孔14の上下方向の寸法Hは、カップPの上下方向の寸法(つまりカップ高さ寸法)よりも大きい。また、貫通孔14の周方向の寸法(スリット幅寸法)Wは、例えば、20~25mmである。
【0065】
図3及び
図4に示すように、貫通孔14は、筒体12に複数設けられる。複数の貫通孔14は、筒体12の中心軸O回りの周方向において等ピッチで配置される。貫通孔14の数は、例えば3つ以上であり、本実施形態では4つである。なお、貫通孔14の数は、5つ以上であってもよい。
【0066】
図2に示すように、リング15は、中心軸Oを中心とする環状である。具体的に、本実施形態のリング15は、円形リング状である。リング15は、筒体12の周壁の外周面に設けられる。また、リング15は、各支柱11bと接続される。筒体12は、リング15を介して装置ベース11に固定される。
【0067】
リング15は、上下方向に並んで複数設けられる。
図2に示す例では、リング15が、上下方向に互いに間隔をあけて3つ設けられる。なお、リング15は、1つのみ設けられていてもよい。
【0068】
本実施形態では、複数のリング15が、固定リング15Aと、移動リング15Bと、を含む。
図2に示す例では、固定リング15Aが、筒体12の外周面に1つ設けられる。固定リング15Aは、筒体12の外周面のうち下端部に、ネジ止め等により固定される。
【0069】
移動リング15Bは、筒体12の外周面に2つ設けられる。2つの移動リング15Bは、上下方向に互いに間隔をあけて配置され、かつ固定リング15Aよりも上側に位置する。具体的に、各移動リング15Bは、筒体12の上端部と下端部との間の中間部分に配置されている。
【0070】
移動リング15Bは、支柱11bへの取り付け位置が上下方向に変化させられることにより、筒体12に対して上下方向に移動可能である。すなわち、移動リング15Bは、上下方向の位置が調整可能とされている。移動リング15Bには、後述するように、ノズル13が取り付けられる。このため、移動リング15Bは、ノズル位置調整リング15B等と言い換えてもよい。
【0071】
図3及び
図5に示すように、筒体12の内部には、カップPが配置される。カップPは、自然落下などにより、筒体12の上部開口12aから筒体12の内部に挿入(投入)される。カップPは、胴部100の開口端部100aが上側を向く姿勢(正立姿勢)とされて、図示しない上流側搬送手段から筒体12の内部に供給される。
【0072】
図2に示すように、ノズル13は、複数のリング15のうち、少なくとも1つのリング15に取り付けられる。図示の例では、ノズル13が、2つの移動リング15Bにそれぞれ設けられる。なおノズル13は、1つの移動リング15Bにのみ設けられてもよい。
ノズル13は、リング15の上面に固定される。具体的に、ノズル13は、移動リング15Bの上面から上側に突出した状態で、移動リング15Bに固定されている。
【0073】
図4及び
図5に示すように、ノズル13は、筒体12の径方向外側に配置される。ノズル13は、貫通孔14を通して、筒体12の内部にエア(圧縮エア)を噴射する。ノズル13は、筒体12の内部に配置され開口端部100aが上側を向く姿勢とされたカップPを、エアにより筒体12の内部で浮遊させて水切りする。すなわち、ノズル13は、噴射するエアの圧力によって、筒体12の内部においてカップPを一時的に浮遊状態で保持する。
【0074】
ノズル13は、径方向から見て、貫通孔14の下端部と重なって配置される。
図5に示すように、ノズル13がエアを噴射する噴射方向Iは、中心軸Oと直交する径方向の内側へ向かうに従い、上側に向けて延びる。径方向から見て、噴射方向Iと中心軸Oとの間に形成される角度αは、例えば、20°以上45°以下である。
【0075】
また
図4に示すように、ノズル13がエアを噴射する噴射方向Iは、中心軸Oと直交する径方向の内側へ向かうに従い、周方向一方側(
図4においては中心軸Oを中心とする反時計回りの方向)に向けて延びる。
より詳しくは、
図4に示すように上下方向から見て、噴射方向Iは、筒体12の内部に配置されるカップPの、カール部105の外径寸法よりも直径が小さい仮想円VCの接線方向に沿って延びる。
【0076】
図3及び
図4に示すように、ノズル13は、複数設けられる。複数のノズル13は、筒体12の中心軸O回りの周方向に互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では複数のノズル13が、周方向に等ピッチで配置される。周方向に並んで配置されるノズル13の数は、周方向に並んで配置される貫通孔14の数と、同じである。ノズル13の数(ここでは、1つの移動リング15Bに取り付けられるノズル13の数)は、例えば3つ以上であり、本実施形態では4つである。なお、ノズル13の数は、5つ以上であってもよい。
【0077】
複数のノズル13からエアが噴射方向Iに噴射されることにより、これらのノズル13から供給されるエアは、中心軸Oを中心として周方向一方側に旋回する旋回流を生じさせる。具体的に、この旋回流は、筒体12の内部で周方向一方側に旋回しつつ上側に向かう、螺旋状の上昇気流を形成する。旋回流は、カップPの周囲を旋回しつつ、カップPに対して上側へ向けた浮力を付与する。また旋回流は、カップPに対して周方向一方側へ向けた回転力を付与する。旋回流の一部は、貫通孔14を通して、筒体12の外部に適宜流出させられる。
【0078】
また本実施形態では、ノズル13のエアの噴射方向Iが、調整可能である。具体的に、ノズル13のエアの噴射方向Iは、
図5に示すように径方向から見て、ノズル13を中心とする所定の角度範囲において調整可能である。また、ノズル13のエアの噴射方向Iは、
図4に示すように上下方向から見て、ノズル13を中心とする所定の角度範囲において調整可能である。
【0079】
図6に示すように、ノズル13の先端(上端)から筒体12の上端までの上下方向の寸法Lは、カップPの上下方向の寸法(カップ高さ寸法)よりも大きい。具体的に、ノズル13の先端から筒体12の上端までの上下方向の寸法Lは、カップPの上下方向の寸法(カップ高さ寸法)に対して、例えば、120%以上とされる。
【0080】
特に図示しないが、本実施形態では、エアコンプレッサ等のエア供給手段から供給されるエア(圧縮エア)が、エアレギュレータ、開閉弁、エアマニホールド(分岐管)及び複数のチューブ(配管部材)等をこの順に通って、各ノズル13に供給される。また、エアレギュレータと開閉弁、及び、開閉弁とエアマニホールドは、それぞれ、連結チューブ(配管部材)等により接続される。なお前記チューブは、連結チューブと区別してノズルチューブ等と言い換えてもよい。
【0081】
エアレギュレータ、開閉弁及びエアマニホールドは、例えば、装置ベース11の支柱11bなどに取り付けられる。複数のチューブ(ノズルチューブ)は、エアマニホールドと、各ノズル13とを接続する。なお本実施形態では、エアが、前記チューブから移動リング15B(リング15)の内部流路を通って、ノズル13に供給される(
図5を参照)。
また、エアレギュレータで設定されるエアの圧力は、例えば、0.2~0.5MPaである。
【0082】
開閉弁は、例えば電磁弁等である。開閉弁は、ノズル13にエアを供給するための配管の一部を構成する。開閉弁は、その弁を開く(開状態とされる)ことでノズル13にエアを供給する。また開閉弁は、その弁を閉じる(閉状態とされる)ことでノズル13へのエアの供給を遮断する。すなわち、開閉弁は、ノズル13へのエアの供給と遮断とを切り替える。
【0083】
検知部は、例えばセンサ等である。検知部は、筒体12の内部に配置されたカップPを検知する。具体的に、検知部は、例えば筒体12の径方向外側に設けられ、貫通孔14を通して、筒体12の内部のカップPを検知する。
【0084】
制御部は、少なくとも開閉弁及び検知部と電気的に接続される。制御部は、タイマー機能を有する。制御部は、検知部がカップPを検知し、所定時間が経過した後、開閉弁を閉じてノズル13へのエアの供給を停止させる。ノズル13からのエアの噴射が停止されることで、筒体12内で浮遊していたカップPは自重により落下し、筒体12の下部開口12bから下側へ(後工程へ)と排出される。
【0085】
また制御部は、開閉弁を閉じて所定時間が経過した後、再び開閉弁を開けてノズル13にエアを供給する。ノズル13からのエアの噴射が再開された状態で、上部開口12aから筒体12の内部に、新たなカップPが投入される。
【0086】
また特に図示しないが、カップ水切り装置10は、さらに、調整弁を備えていてもよい。調整弁は、各ノズル13から噴射されるエアの流量を調整する。すなわち、調整弁は、個々のノズル13に対して、エア流量を調整可能である。
【0087】
次に、カップ水切り方法について、説明する。本実施形態のカップ水切り方法は、前述したカップ水切り装置10を用いて、有底テーパ状のカップPを水切りする方法である。
【0088】
図3~
図5に示すように、本実施形態のカップ水切り方法では、上下方向に延びる筒体12の内部にエアを噴射し、胴部100の開口端部100aが上側を向く姿勢(正立姿勢)とされたカップPを、エアにより筒体12の内部で浮遊させて水切りする。
【0089】
具体的には、ノズル13から噴射されるエアの圧力により、筒体12の内部においてカップPを一時的に浮遊状態で保持しつつ、カップPの表面やカール部105などに付着した液滴等を吹き飛ばして、水切りを行う。
【0090】
より詳しくは、本実施形態では、複数のノズル13から噴射されるエアによって、中心軸Oを中心として周方向一方側に旋回する旋回流を生じさせる。この旋回流は、筒体12の内部で周方向一方側に旋回しつつ上側へ向かう、螺旋状の上昇気流を形成する。この旋回流によってカップPを上側へ押し上げ、カップPの浮遊状態を維持しつつ、カール部105を含めカップPの周囲にエアを旋回させて、水切りを行う。またこの旋回流は、カップPの開口端部100aと、筒体12の内周面との隙間を上側に向けて高速で流れることで、カール部105を含めた開口端部100a付近の液滴を効率よく吹き飛ばす。また本実施形態では、旋回流によって、浮遊状態のカップPを周方向一方側に回転させる。これにより、遠心力の作用によってもカップPの水切りを行う。
【0091】
以上説明した本実施形態のカップ水切り装置10及びカップ水切り方法では、洗浄後のカップPを筒体12の内部に投入し、ノズル13から噴射されるエアによりカップPを浮遊させることで、カップPに付着する液滴(水滴)を除去し、カップPを水切りする。ノズル13から噴射されるエアは、カップPの外周面と筒体12の内周面との間を通過するときに、カップ径方向の外側に突出するカール部105にも当てられる。これにより、カール部105に溜まった洗浄液をエアによって効率よく吹き飛ばすことができる。
以上より本実施形態によれば、洗浄後のカップPを安定して水切りできる。
【0092】
なお本実施形態では、カール部105が少なくとも底部側(下側)に向けて開口しているため、ノズル13から上側へ噴射されるエアが、カール部105の開口部分を通してカール部105内に流入しやすい。このため、カップPに上向きの力(揚力)をより付与しやすく、カップPを筒体12内で安定して浮遊させやすい。また、カール部105に溜まった液滴をより排出させやすい。
【0093】
また本実施形態では、筒体12が、筒体12の周壁を貫通する貫通孔14を有しており、ノズル13は、貫通孔14を通して筒体12の内部にエアを噴射する。
この場合、筒体12の外部にノズル13を設けることができるため、筒体12の内部の構造を簡素化できる。これにより、筒体12の内部のエアの流れを安定させて、乱流の発生を抑制できる。よって、筒体12の内部でカップPをより安定して浮遊させることができる。
また、本実施形態のように筒体12の内部にカップPを通過させる構成などを採用することが可能となり、水切り後の次工程へと、カップPを搬送しやすくすることができる。
【0094】
また本実施形態では、貫通孔14が、上下方向に延びるスリット状である。
この場合、上下方向に延びる貫通孔14からエアが適度に流出するなどにより、筒体12内でのエアの整流作用が得られやすくなる。このため、水切り中のカップPの浮遊姿勢をより安定させることができる。
【0095】
また本実施形態では、貫通孔14の上下方向の寸法Hが、カップPの上下方向の寸法(カップ高さ寸法)よりも大きい。
この場合、筒体12の内部でカップPが浮遊しつつ上下方向に多少移動しても、貫通孔14による整流作用が安定して得られ、水切り中のカップPの浮遊姿勢が良好に維持される。
【0096】
また本実施形態では、複数のノズル13が、筒体12の中心軸O回りの周方向に等ピッチで配置される。
この場合、周方向に等ピッチで配列する複数のノズル13から、カップPに均等にエアを供給することができる。これらのノズル13によって、筒体12の内部でより安定してカップPを浮遊させることができる。
【0097】
また本実施形態では、ノズル13がエアを噴射する噴射方向Iは、径方向内側へ向かうに従い上側に向けて延びており、
図5に示すように径方向から見て、噴射方向Iと中心軸Oとの間に形成される角度αが、20°以上45°以下である。
上記角度αが20°以上であると、ノズル13から噴射するエアがカップPの外周面のほか底部110などにも当たりやすくなり、筒体12への投入直後からカップPに適切な浮力を付与することができる。
上記角度αが45°以下であると、ノズル13から噴射するエアによってカップPを上側へ押し上げる力(エア圧力の上側への分力)が、安定して確保される。
すなわち、上記角度αの数値範囲であれば、筒体12の内部でカップPを安定して浮遊させつつ、カール部105を効率よく水切りすることができる。
【0098】
また本実施形態では、ノズル13がエアを噴射する噴射方向Iは、
図4に示すように、径方向内側へ向かうに従い周方向一方側(
図4においては反時計回りの方向)に向けて延びる。
この場合、複数のノズル13から噴射されるエアが、中心軸O回りの周方向のうち、周方向一方側へ向けた旋回流を発生させる。このため、カップPが、筒体12の内部で浮遊しつつ、中心軸O回りに回転させられる。
これにより、カップPに対して、周方向において均等にエアを供給することができる。また、カップ回転の遠心力によって、液滴をより吹き飛ばしやすくすることができる。したがって、カップPの水切りをより効率よく行える。
【0099】
また本実施形態では、
図4に示すように上下方向から見て、エアの噴射方向Iが、カール部105の外径寸法よりも直径が小さい仮想円VCの接線方向に沿って延びている。
この場合、エアの旋回流がカップPの外周面に作用しやすくなり、カップPに浮力及び回転力を安定して付与しやすい。カップPをより安定的に浮遊状態で回転させることができ、水切りの効果がさらに高められる。
【0100】
また本実施形態では、調整弁によって、各ノズル13から噴射されるエアの流量を調整できる。このため、筒体12の内部でより安定してカップPを浮遊させることができる。
【0101】
また、本実施形態のカップ水切り装置10は、開閉弁と、検知部と、制御部と、を備えており、制御部は、検知部が筒体12内に投入されたカップPを検知し、所定時間が経過した後、開閉弁を閉状態としてノズル13へのエアの供給を停止させる。
この場合、筒体12内で浮遊するカップPに対して、所定時間の水切りが行われた後、ノズル13から噴射されるエアの供給が停止される。エアの供給が停止されることで、カップPはその自重により落下し、筒体12内から下側へ排出される。カップPを自動的に次工程へ移送することが可能になり、カップPの水切り処理の効率が高められて、カップPの生産効率が向上する。
【0102】
また本実施形態では、筒体12の内径寸法Dが、カップPの外径寸法(カール部105の外径寸法)に対して、105~115%である。
筒体12の内径寸法Dが、カール部105の外径寸法を基準(100%)として上記数値範囲であると、筒体12とカップPとの間の隙間、すなわちエアが上下方向に通過する隙間の径方向寸法が適正な値となり、カップPを筒体12内で安定して浮遊状態に維持することができる。
【0103】
また本実施形態では、周方向に並ぶノズル13の数が、3つ以上である。
周方向に並ぶノズル13の数が3つ以上であると、周方向においてエアのバランスをとりやすくなり、カップPを筒体12内でより安定して浮遊させることができる。
【0104】
また本実施形態では、ノズル13のエアの噴射方向Iが、調整可能である。
この場合、ノズル13から噴射するエアの噴射方向Iを適宜調整することにより、筒体12内でのカップPの浮遊姿勢をより安定させることができる。
【0105】
また本実施形態では、ノズル13の先端から筒体12の上端までの上下方向の寸法Lが、カップPの上下方向の寸法(カップ高さ寸法)に対して、120%以上である。
上記寸法Lが、カップ高さ寸法を基準(100%)として上記数値範囲とされると、筒体12内で浮遊するカップPが上下方向に多少移動しても、カップPの浮遊状態が良好に維持される。
【0106】
また本実施形態では、貫通孔14が、上下方向に延びるスリット状である。また貫通孔14は、筒体12に複数設けられ、これらの貫通孔14は、筒体12の中心軸O回りの周方向に等ピッチで配置されている。
この場合、貫通孔14によるエアの整流作用が安定して得られ、旋回流が安定して生じやすくなる。
【0107】
また本実施形態では、貫通孔14の周方向の寸法(スリット幅寸法)Wが、20~25mmである。
貫通孔14の周方向の寸法Wが上記数値範囲であると、貫通孔14によるエアの整流作用が安定して得られやすくなり、カップPを筒体12内で安定して浮遊させることができる。
【0108】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態であるカップ浮遊装置20について、説明する。カップ浮遊装置20は、カップPの搬送タイミングや搬送速度などを調整する装置である。
【0109】
図2~
図6に示すように、カップ浮遊装置20は、上下方向に延びる筒状をなし、内部を有底テーパ状のカップPが通過する筒体12と、筒体12の内部にエアを噴射し、エアにより筒体12の内部でカップPを浮遊させるノズル13と、を備える。
【0110】
カップPは、前述の第1実施形態で説明したカップPと、同一の構成を備えている。また、カップ浮遊装置20は、前述の第1実施形態で説明したカップ水切り装置10と、同一の構成を備えている。そのため、カップP及びカップ浮遊装置20の詳細な構成の説明については、省略する。
また、本実施形態の「方向の定義」は、前述の第1実施形態で説明した方向の定義と、同一である。
【0111】
カップPは、筒体12の上部開口12aから下部開口12bへと、筒体12内を上下方向に通過する。具体的に、カップPは、筒体12の上側から筒体12内に投入され、筒体12の内部でエアにより一時的に浮遊状態に維持された後、自然落下により筒体12の下側へと排出される。
カップ浮遊装置20は、カップPの搬送経路の一部を構成している。
【0112】
以上説明した本実施形態のカップ浮遊装置20では、カップPが筒体12の内部を自然落下によって通過するときに、ノズル13から噴射されるエアによって、カップPを一時的に筒体12内で浮遊させることができる。これにより、筒体12内でのカップPの移送速度を調整したり、後工程に移送するタイミングを調整したりすることができる。したがって、搬送されるカップP同士が接触することを抑制できる。
本実施形態によれば、搬送されるカップP同士が、互いの衝突により傷付いたり、変形したりすることを防止できる。
【0113】
本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0114】
前述の実施形態では、
図4に示すように装置を上側から見て、中心軸Oを中心とする反時計回りの方向を周方向一方側とし、中心軸Oを中心とする時計回りの方向を周方向他方側としたが、これに限らない。すなわち、
図4に示す装置の上面視で、中心軸Oを中心とする時計回りの方向を周方向一方側とし、中心軸Oを中心とする反時計回りの方向を周方向他方側としてもよい。
【0115】
図7は、前述の実施形態で説明したカップ水切り装置10及びカップ浮遊装置20の変形例を示す。
この変形例では、リング15が、筒体12の外周面に2つ設けられており、そのうちの一つが固定リング15Aであり、他の一つが移動リング15Bである。固定リング15Aは、筒体12の外周面のうち上端部に、ネジ止め等により固定される。移動リング15Bは、固定リング15Aよりも下側に、固定リング15Aと間隔をあけて配置される。
【0116】
またこの変形例では、筒体12が、投入ガイド16を有する。投入ガイド16は、上下方向に延びる柱状である。投入ガイド16は、筒体12の上部開口12a及び固定リング15Aよりも、上側に配置されている。投入ガイド16は、固定リング15Aの上面から上側に突出するように延びる。投入ガイド16は、複数設けられており、好ましくは3つ以上設けられる(図示の例では3つ)。複数の投入ガイド16は、上側から見て、筒体12の上部開口12aを径方向外側から囲うように、周方向に並んで配置される。図示の例では、複数の投入ガイド16が、周方向に等ピッチで配列する。
【0117】
この変形例によっても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。またこの変形例では、投入ガイド16が設けられているため、筒体12に投入されるカップPを、安定して筒体12の内部に案内することができる。なお、特に図示しないが、このような投入ガイドとして、例えば、上側へ向かうに従い内径寸法が大きくなるテーパ筒状の構成などを採用してもよい。
【0118】
本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態及び変形例等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のカップ水切り装置及びカップ水切り方法によれば、洗浄後のカップを安定して水切りできる。また、本発明のカップ浮遊装置によれば、搬送されるカップ同士が、互いの衝突により傷付いたり、変形したりすることを防止できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0120】
10…カップ水切り装置、12…筒体、13…ノズル、14…貫通孔、20…カップ浮遊装置、100…胴部、100a…開口端部、105…カール部、110…底部、H…貫通孔の上下方向の寸法、I…噴射方向、O…中心軸、P…カップ、VC…仮想円、α…角度