IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝産業機器システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-回転電機、及び回転電機の軸受 図1
  • 特開-回転電機、及び回転電機の軸受 図2
  • 特開-回転電機、及び回転電機の軸受 図3
  • 特開-回転電機、及び回転電機の軸受 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021316
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】回転電機、及び回転電機の軸受
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20240208BHJP
   H02K 11/25 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
H02K11/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124057
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 真希子
(72)【発明者】
【氏名】辻永 成樹
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC04
5H605EB10
5H605EB40
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611PP03
5H611QQ04
(57)【要約】
【課題】温度変化に対する信頼性を向上することができる回転電機、及び回転電機の軸受を提供する。
【解決手段】回転電機は、中心軸周りに回転可能なシャフトと、シャフトを回転自在に支持する軸受と、を備え、軸受は、温度変化に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成された示温部を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸周りに回転可能なシャフトと、
前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、を備え、
前記軸受は、温度変化に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成された示温部を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪の外周と前記外輪の内周との間に配置される転動体と、を有し、
前記示温部は、前記内輪と前記外輪とにそれぞれ設けられ、
前記内輪と前記外輪とは、互いに異なる種類の前記示温塗料が塗布される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記内輪における前記示温部は、前記内輪の前記外周に設けられ、
前記外輪における前記示温部は、前記外輪の前記内周に設けられる、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記示温部は、前記軸受の周方向に沿って複数に分割されており、
各前記示温部には、それぞれ異なる種類の前記示温塗料が塗布される、
請求項1から3に記載の回転電機。
【請求項5】
回転電機のシャフトを回転自在に支持する軸受であって、
温度上昇に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成された示温部を有する、
回転電機の軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機、及び回転電機の軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機の内部構成例えばコイルの近傍に温度センサを設けて温度を測定する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-237056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、温度センサは、測定対象の形状や場所等によっては設置が制限され、この場合、シャフトを支持する軸受に対して温度センサを設置することが困難な場合があった。そのため、従来構成では、軸受の温度変化を確認する点において課題があった。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、温度変化に対する信頼性を向上することができる回転電機、及び回転電機の軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転電機は、中心軸周りに回転可能なシャフトと、前記シャフトを回転自在に支持する軸受と、を備え、前記軸受は、温度変化に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成された示温部を有する。
【0007】
実施形態の回転電機の軸受は、回転電機のシャフトを回転自在に支持する軸受であって、温度上昇に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成された示温部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による回転電機の一例について一部を破断して示す側面図
図2】第1実施形態による軸受について示温部の一例を概略的に示す断面図
図3】第1実施形態による軸受の一例について図2のX3-X3線に沿って示す断面図
図4】第2実施形態による軸受について示温部の一例を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各構成の寸法を適宜拡大している場合があり、各構成同士の寸法比は実際と同一であるとは限らない。
【0010】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
図1に示す実施形態の回転電機1は、例えば全閉形の外被構造による保護方式で構成された全閉外扇形で構成されている。回転電機1は、例えばポンプや送風機等の図示しない負荷機械を回転駆動させるためのものである。回転電機1は、図1に示すように、筐体10、固定子21、回転子22、シャフト23、及びファン24を備えている。なお、以下の説明において、回転子22の回転中心軸Оに対して平行な方向を軸方向と称する。回転中心軸Oを中心に回転子22を回転させたとき、回転子22の外周面が回転する方向を周方向と称する。回転中心軸Oに対して直交する方向を径方向と称する。また、図1の紙面における右側を回転電機1が負荷機械とつながる側つまり負荷側と称し、図1の紙面における左側を反負荷側と称する。
【0011】
筐体10は、回転電機1の外郭を構成している。筐体10は、フレーム11、ブラケット12、13、軸受30、及びファンカバー14を有している。フレーム11は、例えば円筒形状に形成されており、軸方向の両端部が開口して構成されている。フレーム11は、放熱用の図示しないフィンを複数有している。フィンは、フレーム11の径方向に突出し、軸方向に沿って延びている。ブラケット12、13は、フレーム11の両端部の開口に設けられている。ブラケット12、13は、筐体10の軸方向の外周を覆っている。
【0012】
軸受30は、ブラケット12、13にそれぞれ設けられ、シャフト23を回転自在に支持する。ファンカバー14は、フレーム11の反負荷側の端部に設けられている。ファンカバー14は、ファン24を覆っており、ファン24を保護している。ファンカバー14は、図示しない吸気口を有しており、吸気口から外部の空気が回転電機1内に取り込まれる。固定子21は、筐体10の内側に固定されている。固定子21は、固定子鉄心211及び固定子巻線212を有している。固定子鉄心211は、例えば円筒形状に構成され、円形状の電磁鋼板を複数枚積層して形成されている。固定子巻線212は、固定子鉄心211に巻かれている。
【0013】
回転子22は、固定子21の内側に設けられ、固定子21に対して隙間を介して回転可能に設けられている。つまり、回転電機1は、例えばインナーロータ型の回転電機として構成されている。回転子22は、詳細は図示しないが、例えば円板形状の電磁鋼板を複数枚積層して構成された回転子鉄心と、この回転子鉄心に埋め込まれた永久磁石と、を有して構成されている。
【0014】
シャフト23は、回転子22の中心を貫いて設けられており、回転子22と一体的に回転中心軸O周りに回転可能に構成されている。つまり、シャフト23の回転中心軸は、回転子22の回転中心軸Oと一致している。そして、シャフト23の軸方向の両端部側は、それぞれ軸受30を介して筐体10に対して回転可能に支持されている。ファン24は、シャフト23の反負荷側の端部に設けられ、シャフト23の回転に伴って回転する。ファン24が回転することによって筐体10の外周へ向かって送風が行われ、フィンとの熱交換によって回転電機1が冷却される。
【0015】
また、軸受30は、例えば転がり軸受又は滑り軸受等によって構成することができる。本実施形態では、軸受30は、転がり軸受で構成されている。この場合、軸受30は、図2及び図3に示すように、内輪31、外輪32、転動体33、及び示温部34を有している。内輪31及び外輪32は、例えば円筒形状に形成されている。内輪31と外輪32とは、所定の間隔をあけて配置されており、内輪31は、外輪32の内側に位置している。つまり、内輪31の外径は、外輪32の外径よりも小さく設定されている。
【0016】
転動体33は、例えば球やころ等で構成されており、内輪31の外周312と外輪32の内周321との間に軸受30の周方向に沿って複数配置されている。複数の転動体33は、図示しない保持器によって相互に接触しないように保持されている。示温部34は、例えば軸受30の外面又は内面の一部又は全部に設けることができる。本実施形態では、示温部34は、軸受30の内面の一部この場合内輪31の外周312又は外輪32の内周321のいずれか一方又は両方に設けられている。つまり、示温部34は、軸受30における軸受30の周辺の他の部材と接触しない領域に設けられている。示温部34は、内輪31の内周311又は外輪32の外周322のいずれか一方又は両方に設けても良い。
【0017】
示温部34は、温度変化に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成されている。示温塗料とは、例えばコバルト、ニッケル、鉛、鉄、及び銅等の重金属が用いられ、熱分解等により組成が変化する結果、変色するものを示す。示温塗料の変色が始まる温度つまり変色温度は、例えば60℃~120℃の範囲内で設定することができる。また、示温塗料は、例えば所定の厚さで均一に塗布されている。示温塗料の厚さは、均一に限らず、不均一であっても良い。
【0018】
ここで、軸受30の内輪31と外輪32とには、例えば回転電機1の駆動時の発熱や放熱等の影響により温度差が生じる。そのため、本実施形態では、内輪31側の内輪側示温部341と外輪32側の外輪側示温部342とは、互いに異なる種類の示温塗料が塗布されている。異なる種類とは、例えば変色温度が異なることを意味する。すなわち、示温塗料が塗布される箇所この場合軸受30の内輪31と外輪32との温度変化の傾向の違いに応じて、変色温度が異なる示温塗料を各示温部341、342に適用することができる。
【0019】
この場合、内輪31側の内輪側示温部341は、外輪32側の外輪側示温部342よりも変色温度が高い示温塗料が塗布されている。なお、内輪31側の内輪側示温部341と外輪32側の外輪側示温部342とは、同一の示温塗料を塗布しても良い。また、内輪31側の内輪側示温部341は、外輪32側の外輪側示温部342よりも変色温度が低い示温塗料を塗布しても良い。
【0020】
以上説明した実施形態によれば、回転電機1は、シャフト23と、軸受30と、を備える。シャフト23は、中心軸周りに回転可能である。軸受30は、シャフトを回転自在に支持する。そして、軸受30は、示温部34を有する。示温部34は、温度変化に伴って不可逆的に変色する示温塗料を塗布して形成されている。
【0021】
これによれば、例えばサーミスタや熱電対等の温度検出装置の設置が困難な軸受30の温度変化の確認を精度良く行うことができる。これにより、軸受30の取付け不良や軸受30に対する異常荷重等の不具合の発生等を正確に把握することができる。結果として、温度変化に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0022】
また、軸受30は、内輪31と、外輪32と、内輪31の外周312と外輪32の内周321との間に配置される転動体33と、を有している。示温部34は、内輪31と外輪32とにそれぞれ設けられ、内輪31と外輪32とは、互いに異なる種類の示温塗料が塗布される。
【0023】
これによれば、回転電機1の内部における軸受30の周囲の部品から受ける温度の影響等により、内輪31と外輪32とでは温度変化の傾向が異なる場合がある。そこで、内輪31と外輪32とは、互いに例えば変色の始まる温度の異なる塗料を塗布することで、内輪31と外輪32との温度変化の傾向の違いに柔軟に対応することができる。これにより、温度変化に対する信頼性の向上をより一層図ることができる。
【0024】
更に、内輪31における内輪側示温部341は、内輪31の外周312に設けられる。外輪32における外輪側示温部342は、外輪32の内周321に設けられる。これによれば、内輪31及び外輪32の各示温部341、342つまり示温塗料が塗布される塗布領域を軸受30の内部側に設けることができる。これにより、例えば回転電機1の組立時において、示温塗料が軸受30の周囲の他の部材と接触して、示温塗料が剥がれてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図4を参照して説明する。この第2実施形態の構成は、示温部34の構成が上記第1実施形態と異なる。具体的には、本実施形態において、示温部34は、軸受30の周方向に沿って複数この場合4つに分割されている。この場合、示温部34は、軸受30の周方向において90度ごとに分割されている。また、本実施形態では、示温部34は、内輪31の外周312及び外輪32の内周321に設けられている。
【0026】
この場合、軸受30の内輪31と外輪32とにおいて、軸受30を軸方向から見た場合に径方向で重なる領域には、同じ種類示温塗料が塗布されている。内輪31と外輪32とにおいて、軸受30を軸方向から見た場合に径方向で重なる領域には、異なる種類の示温塗料が塗布されても良い。以下の説明において、複数の示温部34のそれぞれを特定する必要がある場合、内輪31側の内輪側示温部341を第1内輪側示温部341a、第2内輪側示温部341b、第3内輪側示温部341c、及び第4内輪側示温部341dとして区別し、外輪32側の外輪側示温部342を第1外輪側示温部342a、第2外輪側示温部342b、第3外輪側示温部342c、及び第4外輪側示温部342dとして区別する。
【0027】
そして、分割された各示温部341a~341d、342a~342dには、それぞれ異なる種類の示温塗料が塗布される。この場合、各示温部341a~341d、342a~342dには、例えば変色温度が異なる示温塗料をそれぞれ塗布することができる。つまり、各示温部341a~341d、342a~342dには、変色温度が重複しない範囲で設定された複数の示温塗料を用いることができる。なお、各示温部341a~341d、342a~342dの一部には、互いに同じ種類の示温塗料を塗布しても良い。
【0028】
第1示温部341a、342aの変色温度は、40℃~60℃の範囲内で設定することができる。第2示温部341b、342bの変色温度は、60℃~80℃の範囲内で設定することができる。第3示温部341c、342cの変色温度は、80℃~100℃の範囲内で設定することができる。第4示温部341d、342dの変色温度は、100℃~120℃の範囲内で設定することができる。具体的には、各示温部341a~341d、342a~342dの変色が始まる温度としては、60℃、80℃、100℃、120℃の値に設定することができる。
【0029】
このような第2実施形態によれば、示温部34を複数に分割して、各示温部341a~341d、342a~342dに、例えば変色温度の異なる示温塗料をそれぞれ塗布することで、軸受30の温度上昇の変化を段階的に確認することができる。これにより、軸受30の温度変化をより精度良く確認することができる。
【0030】
また、示温部34の分割の数は、4つに限らず、2つや3つあるいは5つ以上の任意の数に設定することができる。示温部34を例えば5つ以上に細かく分割し、当該分割箇所にそれぞれ変色温度の異なる示温塗料を塗布することで、軸受30に不均一な温度上昇が生じていることつまり軸受30の局所的な温度上昇を把握することができる。そして、局所的な温度上昇が把握できることで、軸受30に異常が発生しているか否かの確認を精度良く行うことができる。
【0031】
なお、上記した各実施形態では、示温塗料の変色温度や示温部の分割の数等について、具体的な数値を挙げながら説明したが、それら具体的な数値は一例を示したに過ぎず、適宜変更が可能であることは勿論である。また、上記各実施形態は、相互に組み合わせることができる。
以上、本発明の複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
図面中、1は回転電機、23はシャフト、30は軸受、31は内輪、32は外輪、33は転動体、34は示温部、を示す。
図1
図2
図3
図4