(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021323
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】消化器ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/90 20130101AFI20240208BHJP
【FI】
A61F2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124073
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】503439237
【氏名又は名称】ゼオンメディカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506286928
【氏名又は名称】地方独立行政法人 大阪府立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下野 哲治
(72)【発明者】
【氏名】中尾 祐司
(72)【発明者】
【氏名】上田 悦弘
(72)【発明者】
【氏名】池澤 賢治
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA47
4C267BB03
4C267BB26
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC22
4C267EE01
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG34
4C267HH08
4C267HH11
(57)【要約】
【課題】放射線治療時における放射線不透過マーカーの位置が高精度で検出可能となる消化器ステントを提供する。
【解決手段】本発明に係る消化器ステント1Aは、体内の消化器に留置可能な消化器ステント1Aであって、円筒状のステント本体10Aと、ステント本体10Aの周面において、ステント本体10Aの軸方向のそれぞれ異なる位置に設けられた3個以上の放射線不透過マーカー20Aと、を有し、ステント本体10Aの周方向に所定幅W1を有するとともにステント本体10Aの軸方向に細長く延びる所定領域R1内に、3個以上の放射線不透過マーカー20Aが配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の消化器に留置可能な消化器ステントであって、
円筒状のステント本体と、
前記ステント本体の周面において、前記ステント本体の軸方向のそれぞれ異なる位置に設けられた3個以上の放射線不透過マーカーと、を有し、
前記ステント本体の周方向に所定幅を有するとともに前記ステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に、前記3個以上の放射線不透過マーカーが配置されていることを特徴とする消化器ステント。
【請求項2】
前記3個以上の放射線不透過マーカーが前記所定領域内にのみ配置されており、前記所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されていないことを特徴とする請求項1に記載の消化器ステント。
【請求項3】
前記3個以上の放射線不透過マーカーが、前記ステント本体の軸方向に沿って略等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の消化器ステント。
【請求項4】
前記放射線不透過マーカーが、放射線治療時に放射線を照射する標的の位置を特定するためのマーカーとして用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の消化器ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の消化器に留置可能な消化器ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
狭窄化した消化器等の体内管腔の開存性を確保するために、消化器内の狭窄部または閉塞部(以下、これらを単に狭窄部という)にステントを留置する医療方法が知られている。ステントとしては種々の形態のものが使用されているが、自己拡張型のステントとして、線材(フィラメント)を織り込みまたは編み込んで形成される編み込みタイプのものと、円管状素材をレーザーカット加工して、多数の屈曲部を有する線材(ストラット)により構成される網目状筒体を形成するレーザーカットタイプのものとが使用されている。また、編み込みタイプおよびレーザーカットタイプの両方のステントにおいて、ステント本体の周面を合成樹脂等で被覆したカバードステントや、ステント本体の一端部または両端部が径方向に拡張したフレア部(ヘッド部)で構成されたステントも知られている。
【0003】
また、ステントを体内の所望位置に留置する際に、X線等を用いた放射線透視下でステントの位置を確認できるように、ステントに放射線不透過マーカーを設けた構成が多数存在している。
【0004】
特許文献1には、放射線不透過性を有する金属により形成されるマーカーが、ステント本体の軸方向両端部に配置されているステントが記載されている。特許文献1に記載のステントは、マーカーとステント本体との間に導電性を阻害可能なポリマーを有し、ステント本体を形成している金属、およびマーカーとステント本体との間に配置されたポリマーのうちの少なくとも一方が、生体内分解性材料であるように構成されている。
【0005】
特許文献2には、遠位端および/または近位端に、放射線不透過性材料で被覆された近位リングおよび/または遠位リングが設けられたインプラント(ステント)が記載されている。
【0006】
一方、近年、強度変調放射線治療(IMRT:Intensity Modulated Radiation Therapy)や定位放射線治療(SRT:Stereotactic Radiation Therapy)等に代表される、高精度の放射線治療の需要が高まっている。このような高精度の放射線治療では、体内に生じたがん組織等の病変に対して集中的に放射線を照射することで、病変周辺の正常な組織への放射線の照射線量をできるだけ抑えることができるようになっている。
【0007】
このような高精度の放射線治療では、病変の位置を精度良く特定することが不可欠であり、画像誘導放射線治療(IGRT:Image Guided Radiation Therapy)等に代表される、体内を撮影した画像を解析して病変等の放射線照射対象となる標的の位置を精度良く特定する技術が併用される。
【0008】
画像誘導放射線治療には様々な方法が存在しているが、例えば、体内の病変周辺に小さな金属製マーカー等を事前に留置しておき、当該金属製マーカーの位置を放射線透視下で観察することで、金属製マーカーの位置を基準として病変等の放射線照射対象となる標的の位置を精度良く特定する方法が用いられている。
【0009】
例えば特許文献3には、画像誘導放射線治療に関連する技術として、放射線写真画像形成技術を利用して放射線治療を行う手技で用いられる画像処理装置(イメージング装置)を備えた放射線治療用臨床処置装置が記載されている。
【0010】
また、例えば特許文献4には、体内に留置されて放射線透視下で撮影可能な金属製マーカーに関連する技術として、放射線不透過性の金属からなり多数の曲げ手段が設けられたワイヤによって構成された位置決めマーカーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2019-150077号公報
【特許文献2】特許第6324371号公報
【特許文献3】特許第5068426号公報
【特許文献4】特許第5162238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来のステントに設けられた放射線不透過マーカーは、ステントを安全に留置するために、ステントの位置を確認するために用いられている。このため、ステントの位置を確認できればよいことから、例えば放射線不透過マーカーがステントの端部にのみ設けられた構成や、複数の放射線不透過マーカーが周方向に配列された構成等が一般的であるが、画像誘導放射線治療用イメージング装置にて放射線不透過マーカーの位置を高精度で検出できるような工夫は施されていない。
【0013】
また、従来、画像誘導放射線治療に係る技術を利用して放射線治療を行う手技が存在しているが、例えば特許文献4に記載されている多数の曲げ手段が設けられたワイヤにより構成された位置決めマーカー等が用いられているものの、ステントに設けられた放射性不透過マーカーを位置決めマーカーとして使用することは行われていないのが現状である。これは、ステントに設けられている放射性不透過マーカーが、主にステントの位置を確認するための用途で用いられており、マーカーの位置を高精度に検出する必要がある画像誘導放射線治療への適用が不向きなものであったという一因もある。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、放射線治療時における放射線不透過マーカーの位置が高精度で検出可能となる消化器ステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明に係る消化器ステントは、体内の消化器に留置可能な消化器ステントであって、円筒状のステント本体と、前記ステント本体の周面において、前記ステント本体の軸方向のそれぞれ異なる位置に設けられた3個以上の放射線不透過マーカーと、を有し、前記ステント本体の周方向に所定幅を有するとともに前記ステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に、前記3個以上の放射線不透過マーカーが配置されていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、所定幅を有して軸方向に細長く延びる所定領域内に、軸方向の異なる位置に3個以上の放射線不透過マーカーが配置されるので、3個以上の放射線不透過マーカーを消化器ステントに設けた場合であっても、体内に留置された消化器ステントに放射線を照射して得られる放射線透視画像内において各放射線不透過マーカーの重なりが少なくなり、消化器ステントに設けられた各放射線不透過マーカーを個別に、かつ高い精度で特定することができるようになる。
【0017】
本発明に係る消化器ステントは、上記の構成において、前記3個以上の放射線不透過マーカーが前記所定領域内にのみ配置されており、前記所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されていなくてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、所定幅を有して軸方向に細長く延びる所定領域内にのみ3個以上の放射線不透過マーカーが配置されるので、消化器ステントを側方から見た場合に各放射線不透過マーカーが重なりなく見えるようになり、消化器ステントに設けられた各放射線不透過マーカーを個別に、かつより高い精度で特定することができるようになる。
【0019】
本発明に係る消化器ステントは、上記の構成において、前記3個以上の放射線不透過マーカーが、前記ステント本体の軸方向に沿って略等間隔に配置されていてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、3個以上の放射線不透過マーカーが軸方向に略等間隔で離隔するように配置されるので、放射線不透過マーカーの重なりがより少なくなり、消化器ステントに設けられた各放射線不透過マーカーを個別に、かつより高い精度で特定することができるようになる。
【0021】
本発明に係る消化器ステントは、上記の構成において、前記放射線不透過マーカーが、放射線治療時に放射線照射対象となる標的の位置を特定するためのマーカーとして用いられてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、所定幅を有して軸方向に細長く延びる所定領域内に配置された3個以上の放射線不透過マーカーによって、体内に留置された消化器ステントの位置を特定するとともに、放射線不透過マーカーの位置を基準として、消化器ステントの留置位置近傍に位置する病変等の放射線照射対象となる標的の位置を高い精度で特定することができ、標的周辺の組織および臓器への影響を最小限としつつ、標的に対して最大限の放射線を的確に照射することができるようになる。
【0023】
特に、画像誘導放射線治療に係る技術を利用して放射線治療を行う際に、相互の重なりが少なくなるように3個以上の放射線不透過マーカーが配置された本発明に係る消化器ステントを用いることで、各放射線不透過マーカーを個別に特定することができるようになるため、放射線不透過マーカーが検出できないエラーの発生頻度を低減させて放射線不透過マーカーの位置を少ない誤差で特定することができるとともに、標的の位置を高い精度で特定することができ、標的に対して放射線を効率良く照射することができるようになる。
【0024】
また、本発明に係る消化器ステントは、消化器内の狭窄部の開存性を確保する機能と、病変等の標的周辺に放射性不透過マーカーを配置する機能とを兼ね備えている。通常知られているステント留置術を用いて本発明に係る消化器ステントを消化器内に留置するだけで、消化器の開存性の確保、および放射線不透過マーカーの配置の両方の処置が可能となるため、消化器ステントの留置および放射線不透過マーカーの配置をそれぞれ別の処置で行う必要がある従来技術と比べて、医療従事者および患者の負担を大幅に軽減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態における消化器ステントを示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態における別例である消化器ステントを示す展開図である。
【
図4】本発明の実施形態における消化器ステントへの放射線の照射を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0027】
<消化器ステント1Aの構成>
図1および
図2を参照しながら、本発明の実施形態における消化器ステント1Aの構成について説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態における消化器ステント1Aを示す正面図であり、
図2は、
図1に示す消化器ステント1Aの展開図である。
【0029】
図2には、
図1に示す消化器ステント1Aの周面の一部を軸方向に切り開いて平面となるように展開した状態が図示されており、横方向(X方向)および縦方向(Y方向)に格子状の補助線が引かれている。
図2の横方向(X方向)は、消化器ステント1Aの周方向に対応し、
図2の縦方向(Y方向)は、消化器ステント1Aの周方向に対応している。また、
図2に示す展開図において、消化器ステント1Aは左右両端部で繋がった状態となっている。
【0030】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aは、体内の消化器の1つである胆管内に留置するために用いられる胆管ステントである。ただし、本発明に係る消化器ステントは胆管内に留置されるものに限定されず、例えば食道、十二指腸、小腸、大腸、膵管等の種々の消化器内に留置されるものであってもよい。
【0031】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aは、ステント本体10Aと、複数の放射線不透過マーカー20Aとを概略備えて構成されている。
【0032】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aは、円筒状に細長く延びる外形をなしている。本明細書では、円筒状に細長く延びる方向を「軸方向」と記載し、軸方向に対して略垂直な断面内で消化器ステント1Aの周面に沿った方向を「周方向」と記載する。また、消化器ステント1Aの側方とは、軸方向に対して略垂直な方向を意味する。
【0033】
<ステント本体10Aの構成>
ステント本体10Aは、消化器ステント1Aの基材となる部材である。ステント本体10Aは、
図1および
図2に示すように、線材11Aが交差または折り返されて網目状に編み込まれており、ステント本体10Aの周面に略菱形状のセル12Aが形成され、全体として略筒状となるように構成されている。ステント本体10Aを構成する線材11Aは、継ぎ目のない1本の線材であってもよく、複数本の線材が繋がって構成された線材であってもよい。
【0034】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aは、本発明に係る消化器ステントの好適な一例として、ニッケルチタン(Ni-Ti)合金等の超弾性合金からなる線材11Aが網目状に編み込まれた編み込みステントである。本実施形態における消化器ステント1Aは、径方向に拡張可能な自己拡張性を有するステント本体10Aで構成されており、消化器内に留置された際には、ステント本体10Aが径方向に拡張しようとする自己弾性力によって壁面に押し当たり、消化器ステント1Aの軸方向へのズレ(移動)に対する抵抗力が増すため、消化器ステント1Aのマイグレーションを防止することができるようになっている。
【0035】
ステント本体10Aの寸法は、消化器ステント1Aの寸法と略同一である。ステント本体10Aの寸法は、消化器ステント1Aが留置される消化器に適合した寸法に設定することができ、例えば外径が2~40mm、内径が1~39mm、軸方向の寸法が5~200mmである。一例として、胆管ステントとして用いられる消化器ステント1Aの場合、ステント本体10Aの寸法は、外径が5~20mm、内径が4~19mm、軸方向の寸法が10~120mmであることが好ましい。なお、本実施形態における消化器ステント1Aは自己拡張型のステントであり、ステントデリバリー装置等によって体内の留置位置まで消化器ステント1Aを搬送する際には、消化器ステント1Aの外径は上述の値の数分の1程度まで径方向に収縮された状態で搬送される。
【0036】
ステント本体10Aを構成する線材11Aの線径は特に限定されないが、例えば0.05~1mm程度であることが好ましい。
【0037】
ステント本体10Aを構成する線材11Aの材料は、特に限定されるものでない。ステント本体10Aを構成する線材11Aの材料としては、上述したニッケルチタン(Ni-Ti)合金以外に、例えばステンレス鋼、タンタル、チタン、コバルトクロム合金、マグネシウム合金等の金属が用いられてもよく、ポリエチレン等の合成樹脂が用いられてもよい。
【0038】
<放射線不透過マーカー20Aの構成>
図1および
図2に示すように、消化器ステント1Aには、複数の放射線不透過マーカー20Aが設けられている。本発明に係る消化器ステントでは、少なくとも3個の放射線不透過マーカーが、ステント本体の周面の相互に離隔した位置に配置される。本実施形態における消化器ステント1Aは一例として、
図1および
図2に示すように、ステント本体10Aの周面に設けられた4個の放射線不透過マーカー20Aを備えている。
【0039】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aでは、放射線不透過マーカー20Aは、放射線不透過性を有する金属線材がコイル状に巻回された構成を有しており、コイル状の放射線不透過マーカー20Aの内腔にステント本体10Aを構成する線材11Aを挿通した状態で放射線不透過マーカー20Aをかしめることでステント本体10Aを構成する線材11Aに固定されている。
【0040】
ただし、ステント本体10Aの周面に放射線不透過マーカー20Aを設ける方法は特に限定されず、例えば、ステント本体10Aを構成する線材11Aに接合または一体化されたリング状部材(アイレット)に嵌め込み可能な、放射線不透過性を有する金属からなる円板状の放射線不透過マーカーが用いられてもよい。
【0041】
放射線不透過マーカー20Aは、放射線治療時に用いられる放射線に対して不透過性を有している。放射線治療時に用いられる放射線の種類は特に限定されないが、例えば、X線およびγ線等の電磁波、中性子線、重粒子線、陽子線等の粒子線等が挙げられる。放射線不透過マーカー20Aは、放射線に対して不透過性を有することで放射線透視画像に写り込む造影性を有し、放射線透視画像上で放射線不透過マーカー20Aを検出することができるようになる。
【0042】
放射線不透過マーカー20Aを構成する材料は、放射線治療時に用いられる放射線に対して不透過性を有する材料が適宜選定されればよい。放射線不透過マーカー20Aとして使用可能な材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナイリジウム合金、白金、銀、ステンレス等が挙げられる。また、放射線不透過マーカー20Aは、放射線に対して不透過な材料の粉末を含有する樹脂成形物によって構成されていてもよい。放射線に対して不透過な材料の粉末としては、硫酸バリウム粉末、次炭酸ビスマス粉末、タングステン粉末、および上述した各種金属の粉末等を用いることができる。
【0043】
放射線不透過マーカー20Aは、消化器ステント1Aが留置される体内管腔およびステント本体10Aに適合した寸法に設定されればよい。具体的には、放射線不透過マーカー20Aの寸法は、放射線透視画像内で確認可能な程度の寸法より大きく、かつ、消化器ステント1Aの開存性および拡張性を妨げない程度の寸法より小さいことが好ましい。一例として、胆管ステントとして用いられる消化器ステント1Aの場合には、放射線不透過マーカー20Aの最大寸法は5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがさらに好ましく、2mmまたは1mmであることが特に好ましい。寸法が短い方が様々な角度で撮影した際に、放射線不透過マーカー20Aの位置を高精度に特定しやすい。
【0044】
なお、「放射線不透過マーカーの最大寸法」とは、上述したコイル状の放射線不透過マーカー20Aの場合には、当該コイルの軸方向と一致する放射線不透過マーカー20Aの長手方向の寸法を意味し、また、リング状部材(アイレット)に嵌め込まれる円板状の放射線不透過マーカーの場合には、当該円板の直径を意味する。
【0045】
本発明に係る消化器ステントでは、少なくとも3個以上の放射線不透過マーカーが、ステント本体の周方向に所定幅を有するとともにステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に配置される。
【0046】
なお、所定領域の周方向の寸法である「所定幅」とは、ステント本体10Aが拡径している状態で放射線不透過マーカーの最大寸法の3倍、およびステント本体の周方向全周の20%のいずれか大きいほうの寸法を意味する。また、「所定領域内に配置」とは、放射線不透過マーカーの一部または全体が所定領域内に含まれることを意味する。
【0047】
図1および
図2に示す消化器ステント1Aでは、消化器ステント1Aの周面に、ステント本体10Aの周方向に所定幅W1を有するとともにステント本体10Aの軸方向に細長く延びる所定領域R1が規定され、ステント本体10Aの周面に設けられた4個の放射線不透過マーカー20Aが当該所定領域R1内に配置されている。
【0048】
本実施形態における消化器ステント1Aでは、ステント本体の周方向に所定幅を有するとともにステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に3個以上の放射線不透過マーカーが配置された構成の好適な一例として、
図1および
図2に示すように、4個の放射線不透過マーカー20Aが軸方向に延びる略同一直線上(
図1および
図2に示す直線L1上)に配置されている。このように放射線不透過マーカー20Aを略同一直線上に配置することで、放射線不透過マーカー20Aが所定領域R1内に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0049】
なお、ここでいう「略同一直線上に配置」とは、所定領域内の各放射線不透過マーカーの一部が軸方向に延びる直線と重なるように配置されることを意味する。
【0050】
本発明に係る消化器ステントでは、3個以上の放射線不透過マーカーが所定領域内にのみ配置され、所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されないようにしてもよい。本実施形態における消化器ステント1Aでは、3個以上の放射線不透過マーカーが所定領域内にのみ配置され、所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されない構成の好適な一例として、
図1および
図2に示すように、所定領域R1内にのみ4個の放射線不透過マーカー20Aが配置されており、所定領域R1外には放射線不透過マーカー20Aが配置されていない構成となっている。
【0051】
また、本発明に係る消化器ステントでは、所定領域内に配置される少なくとも3個以上の放射線不透過マーカーに関して、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー同士の軸方向の間隔が略等間隔となるように配置されてもよい。
【0052】
なお、ここでいう「略等間隔」とは、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20A同士の軸方向の間隔すべての平均値と、隣接する任意の放射線不透過マーカー20A同士の軸方向の間隔との差が、-20%以上20%以下であることを意味する。
【0053】
本実施形態における消化器ステント1Aでは、
図1および
図2に示すように、所定領域R1内に配置されている4個の放射線不透過マーカー20Aが略等間隔となるように設定されている。具体的には、
図1および
図2に示すように、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20Aの間隔D11、D12、D13が略同一となるように設定されている。
【0054】
このように、本実施形態における消化器ステント1Aでは、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー同士の軸方向の間隔が略等間隔となるように配置された構成の好適な一例として、
図1および
図2に示すように、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20Aの間隔D11、D12、D13が略同一となるように設定されている。放射線不透過マーカー20Aの間隔D11、D12、D13を略同一として、すべての間隔D11、D12、D13が、間隔D11、D12、D13の平均値D1=(D11+D12+D13)/3に対して、-20%以上20%以下(0.8×D1~1.2×D1)の範囲内に収まるようにすることで、所定領域R1内の放射線不透過マーカー20Aが軸方向に沿って略等間隔に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0055】
本実施形態における消化器ステント1Aは、下記の具体的な数値により特定される構成を有するように設計されている。ただし、下記の具体的な数値はあくまでも一例であり、本発明を限定するものではない。
【0056】
本実施形態における消化器ステント1Aでは、
図2に示すように、ステント本体10Aの軸方向の寸法(消化器ステント1Aの全長)が、約82.05mmに設定されている。
【0057】
略菱形状の各セル12Aの頂点は、ステント本体10Aの端部の外側を向く頂点を除いて、線材11Aが交差または折り返されて形成されている。
【0058】
ステント本体10Aの周面には、軸方向に沿って頂点を共有するように12個の略菱形状のセル12Aが配列されており、周方向に沿って頂点を共有するように5個の略菱形状のセル12Aが配列されている。
図2に示すように、各セル12Aの軸方向の寸法は約6.5mmに設定されており、各セル12Aの周方向の寸法は約6.28mmに設定されている。
【0059】
また、
図2の右側には、軸方向(Y方向)に隣接する補助線間の範囲に番号1~25が割り当てられている。
【0060】
本実施形態における消化器ステント1Aには、4個の放射線不透過マーカー20Aが設けられている。
図2に示す4個の放射線不透過マーカー20Aは、全長約2mmのコイル状の放射線不透過マーカー20Aであり、番号1、番号9、番号17、番号25でそれぞれ特定される範囲に位置する線材11Aの外周にかしめられて固定されている。
【0061】
4個の放射線不透過マーカー20Aは、
図2に示すように、所定幅W1を有して軸方向に沿って細長く延在する所定領域R1内に配置されており、好適な配置として、軸方向に延びる直線L1上に配置されている。所定幅W1は、放射線不透過マーカー20Aの最大寸法の3倍(約2mm×3=約6mm)、およびステント本体10Aの周方向全周の20%(約6.28mm×5×0.2=6.28mm)のいずれか大きいほうの寸法であり、この場合、所定幅W1は約6.28mmである。
【0062】
また、軸方向に隣接する4つの放射線不透過マーカー20Aは、
図2に示すように、間隔D11、D12、D13で軸方向に離隔している。間隔D11、D12、D13は、すべての間隔の平均値D1に対して±20%のずれの範囲内に収まるように設定されており、好適な配置として、間隔D11、D12、D13は略同一であり、セル12Aの軸方向の寸法の4倍(=約6.5mm×4=約26.0mm)に設定されている。
【0063】
<消化器ステント1Bの構成>
図3を参照しながら、本発明の実施形態における消化器ステント1Bの構成について説明する。
【0064】
図3は、本発明の実施形態における別例である消化器ステント1Bの展開図である。
図3には、
図2に示す展開図と同様に、消化器ステント1Bの周面の一部を軸方向に切り開いて平面となるように展開した状態が図示されている。
【0065】
図3に示す消化器ステント1Bは、消化器ステント1Aとは別例であるが、軸方向の寸法および放射線不透過マーカー20Bの個数および配置位置が異なる点を除いて、上述した消化器ステント1Aと同様の構成を有している。
【0066】
図3に示す消化器ステント1Bは、ステント本体10Bと、複数の放射線不透過マーカー20Bとを概略備えて構成されている。
図3に示す消化器ステント1Bは、円筒状に細長く延びる外形をなしている。
図3に示す消化器ステント1Bのステント本体10Bは、
図1および
図2に示す消化器ステント1Aと同様に、線材11Bが交差または折り返されて網目状に編み込まれており、ステント本体10Bの周面に略菱形状のセル12Bが形成され、全体として略筒状となるように構成されている。
【0067】
図3に示すように、消化器ステント1Bには、複数の放射線不透過マーカー20Bが設けられている。本発明に係る消化器ステントでは、少なくとも3個の放射線不透過マーカーが、ステント本体の周面の相互に離隔した位置に配置される。本実施形態における消化器ステント1Bは一例として、
図3に示すように、ステント本体10Bの周面に設けられた3個の放射線不透過マーカー20Bを備えている。
【0068】
図3に示す消化器ステント1Bにおいても、
図1および
図2に示す消化器ステント1Aと同様に、放射線不透過マーカー20Bは、放射線不透過性を有する金属線材がコイル状に巻回された構成を有しており、コイル状の放射線不透過マーカー20Bの内腔にステント本体10Bを構成する線材11Bを挿通した状態で放射線不透過マーカー20Bをかしめることでステント本体10Bを構成する線材11Bに固定されている。ただし、放射線不透過マーカー20Bの構成はこれに限定されるものではない。また、放射線不透過マーカー20Bの材料は、放射線治療時に用いられる放射線に対して不透過性を有する材料が適宜選定されればよく、その寸法も消化器ステント1Bが留置される体内管腔およびステント本体10Bに適合した寸法に設定されればよい。
【0069】
本発明に係る消化器ステントでは、少なくとも3個以上の放射線不透過マーカーが、ステント本体の周方向に所定幅を有するとともにステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に配置される。
【0070】
図3に示す消化器ステント1Bでは、消化器ステント1Bの周面に、ステント本体10Bの周方向に所定幅W2を有するとともにステント本体10Bの軸方向に細長く延びる所定領域R2が規定され、ステント本体10Bの周面に設けられた3個の放射線不透過マーカー20Bが当該所定領域R2内に配置されている。
【0071】
本実施形態における消化器ステント1Bでは、ステント本体の周方向に所定幅を有するとともにステント本体の軸方向に細長く延びる所定領域内に3個以上の放射線不透過マーカーが配置された構成の好適な一例として、
図3に示すように、3個の放射線不透過マーカー20Bが軸方向に延びる略同一直線上(
図3に示す直線L2上)に配置されている。このように放射線不透過マーカー20Bを略同一直線上に配置することで、放射線不透過マーカー20Bが所定領域R2内に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0072】
本発明に係る消化器ステントでは、3個以上の放射線不透過マーカーが所定領域内にのみ配置され、所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されないようにしてもよい。本実施形態における消化器ステント1Bでは、3個以上の放射線不透過マーカーが所定領域内にのみ配置され、所定領域外に放射線不透過マーカーが配置されない構成の好適な一例として、
図3に示すように、所定領域R2内にのみ3個の放射線不透過マーカー20Bが配置されており、所定領域R2外には放射線不透過マーカー20Bが配置されていない構成となっている。
【0073】
また、本発明に係る消化器ステントでは、所定領域内に配置される少なくとも3個以上の放射線不透過マーカーに関して、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー同士の軸方向の間隔が略等間隔となるように配置されてもよい。
【0074】
本実施形態における消化器ステント1Bでは、
図3に示すように、所定領域R2内に配置されている3個の放射線不透過マーカー20Bが略等間隔となるように設定されている。具体的には、
図3に示すように、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20Bの間隔D21、D22が略同一となるように設定されている。
【0075】
このように、本実施形態における消化器ステント1Bでは、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20B同士の軸方向の間隔が略等間隔となるように配置された構成の好適な一例として、
図3に示すように、軸方向に隣接する放射線不透過マーカー20Bの間隔D21、D22が略同一となるように設定されている。放射線不透過マーカー20Bの間隔D21、D22を略同一として、すべての間隔D21、D22が、間隔D21、D22の平均値D2=(D21+D22)/2に対して、-20%以上20%以下(0.8×D2~1.2×D2)の範囲内に収まるようにすることで、所定領域R2内の放射線不透過マーカー20Bが軸方向に沿って略等間隔に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0076】
本実施形態における消化器ステント1Bは、下記の具体的な数値により特定される構成を有するように設計されている。ただし、下記の具体的な数値はあくまでも一例であり、本発明を限定するものではない。
【0077】
図3に示す消化器ステント1Bは、
図1および
図2に示す消化器ステント1Aに比べて軸方向の寸法が短く、ステント本体10Bの軸方向の寸法(消化器ステント1Bの全長)が、約42.5mmに設定されている。
【0078】
略菱形状の各セル12Bの頂点は、ステント本体10Bの端部の外側を向く頂点を除いて、線材11Bが交差または折り返されて形成されている。
【0079】
ステント本体10Bの周面には、軸方向に沿って頂点を共有するように6個の略菱形状のセル12Bが配列されており、周方向に沿って頂点を共有するように5個の略菱形状のセル12Bが配列されている。
図3に示すように、各セル12Bの軸方向の寸法は約6.5mmに設定されており、各セル12Bの周方向の寸法は約6.28mmに設定されている。
【0080】
また、
図3の右側には、軸方向(Y方向)に隣接する補助線間の範囲に番号1~13が割り当てられている。
【0081】
本実施形態における消化器ステント1Bには、3個の放射線不透過マーカー20Bが設けられている。
図3に示す3個の放射線不透過マーカー20Bは、全長約2mmのコイル状の放射線不透過マーカー20Bであり、番号1、番号7、番号13でそれぞれ特定される範囲に位置する線材11Bの外周にかしめられて固定されている。
【0082】
3個の放射線不透過マーカー20Bは、
図3に示すように、所定幅W2を有して軸方向に沿って細長く延在する所定領域R2内に配置されており、好適な配置として、軸方向に延びる直線L2上に配置されている。所定幅W2は、放射線不透過マーカー20Bの最大寸法の3倍(約2mm×3=約6mm)、およびステント本体10Bの周方向全周の20%(約6.28mm×5×0.2=6.28mm)のいずれか大きいほうの寸法であり、この場合、所定幅W2は約6.28mmである。
【0083】
また、軸方向に隣接する3つの放射線不透過マーカー20Bは、
図3に示すように、間隔D21、D22で軸方向に離隔している。間隔D21、D22は、すべての間隔の平均値D2に対して±20%のずれの範囲内に収まるように設定されており、好適な配置として、間隔D21、D22は略同一(すなわち、略等間隔)であり、セル12Bの軸方向の寸法の3倍(=約6.5mm×3=約19.5mm)に設定されている。
【0084】
なお、上述した
図1~
図3に示す消化器ステント1A、1Bはいずれも、線材11A、11Bが編み込まれたステント本体10A、10Bを有する編み込みタイプのステントであるが、本発明に係る消化器ステントは、例えば金属製の円管状素材をレーザーカット加工して形成されたステント本体を有するレーザーカットタイプのステントであってもよい。
【0085】
上述した
図1~
図3に示す消化器ステント1A、1Bはいずれも、ステント本体10A、10Bの弾性力によって径方向に拡張する自己拡張型のステントであるが、本発明に係る消化器ステントは、例えばバルーンを用いて径方向に拡張されるバルーン拡張型のステントであってもよい。また、本発明に係る消化器ステントは、例えばチューブ状に形成された合成樹脂からなる可撓性のチューブステントであってもよい。
【0086】
さらに、本発明に係る消化器ステントは、ステント本体の軸方向の端部等に、ステント本体の径方向に膨らむように形成された拡径部(フレア部またはヘッド部とも呼ばれる)が設けられた構成であってもよく、ステント本体の周面がシリコン、ポリウレタン、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の合成樹脂からなるコーティング膜またはフィルム膜で被覆されたカバードステントであってもよい。
【0087】
<消化器ステントの製造方法>
本発明に係る消化器ステントは、従来技術に係る消化器ステントと同様の方法で製造することができる。
【0088】
例えば本発明に係る消化器ステントが、
図1~
図3に示すような編み込みタイプのステントの場合には、製造するステントの径寸法に適合した太さを有し側面に複数の掛合ピンが設けられた円柱部材を用いて、複数の掛合ピンに線材11A、11Bを引っ掛けながら円柱部材の円周面に巻き付けることで、所望の網目状表面を有するステント本体10A、10Bを形成することができる。そして、ステント本体10A、10Bを構成する線材11A、11Bの所定位置に、コイル状の放射線不透過マーカー20A、20Bを外嵌してかしめることで、所望の位置に放射線不透過マーカー20A、20Bを備えた消化器ステント1A、1Bを製造することができる。
【0089】
また、例えば本発明に係る消化器ステントが、レーザーカットタイプのステントの場合には、まず、ステント本体を形成するための円管状素材(パイプ)を準備し、当該円環状素材に対してYAGレーザー等を用いたレーザーカット加工を施すことによって、所望の形状のステント本体を形成することができる。そして、所定の熱処理や電界研磨等の研磨を行い、さらに、ステント本体を構成する周面上の所定位置に放射線不透過マーカーを取り付けることで、所望の位置に放射線不透過マーカーを備えた消化器ステントを製造することができる。
【0090】
<消化器ステントの留置方法>
また、本発明に係る消化器ステントは、従来技術に係る消化器ステントと同様のステント留置術を用いて、いわゆるステントデリバリー装置によって体内の消化器内に留置することができる。
【0091】
例えば本発明に係る消化器ステントが、
図1~
図3に示すようなステント本体10A、10Bが超弾性合金等の材料で構成された自己拡張型のステントの場合には、内管(インナーシース)と、内管がスライド可能に挿通された外管(アウターシース)とを有するカテーテル部を有するステントデリバリー装置を用い、ステントデリバリー装置の内管の遠位端近傍に設けられたステント配置部に消化器ステント1A、1Bを配置して、外管の遠位端近傍の内側で消化器ステント1A、1Bを径方向に縮径させた状態で保持し、カテーテル部の遠位端を目的とする留置部位に導く。この際、カテーテル部は、内管内に挿通され先行して管腔内に挿入されたガイドワイヤに沿って進行され、その遠位端を消化器ステント1A、1Bの留置部位まで導入する。そして、ステント配置部がその留置部位に達したら、カテーテル部の近位端側において外管を内管に対して近位端側にスライドさせることにより、消化器ステント1A、1Bが外管から露出してその場で拡径し、留置される。
【0092】
また、本発明に係る消化器ステントが、ステント本体をバルーンによって拡径するバルーン拡張型のステントの場合には、ステントデリバリー装置のカテーテル部の遠位端近傍のステント配置部に設けられたバルーンに外嵌されるように消化器ステントを配置して、バルーンに外嵌された状態でステント配置部を、消化器ステントの留置部位まで導入する。そして、留置部位において、バルーンを拡張させることによって消化器ステントを拡張し、その後、消化器ステントからバルーンを抜き取ることで消化器ステントが留置される。
【0093】
<消化器ステントの作用>
以下、本実施形態における消化器ステント1A、1Bの作用について説明する。
【0094】
本実施形態では、
図1~
図3に示すように、放射線不透過マーカー20A、20Bを備えた消化器ステント1A、1Bを使用し、当該消化器ステント1A、1Bを病変等の標的近傍の消化器内に留置することで、従来のステント留置術を利用して標的周辺に放射線不透過マーカー20A、20Bを配置することができる。
【0095】
従来、消化器ステントは消化器内の狭窄部近傍に留置されて消化器の開存性を確保するために用いられるが、本実施形態に係る消化器ステント1A、1Bは、消化器内の狭窄部近傍に留置されて消化器の開存性を確保する機能を有するとともに、標的周辺に放射線不透過マーカー20A、20Bを配置する機能を兼ね備えている。すなわち、本実施形態における消化器ステント1A、1Bを消化器内の狭窄部近傍に留置するだけで、消化器の開存性の確保、および放射線不透過マーカー20A、20Bの配置の両方の処置が可能となり、消化器ステント1A、1Bの留置、および放射線不透過マーカー20A、20Bの配置をそれぞれ別の処置で行う従来技術と比べて、医療従事者および患者の負担を大幅に軽減することができるようになる。
【0096】
また、本実施形態における消化器ステント1A、1Bは、高精度の放射線治療に不可欠な病変の高精度の位置特定に係る画像誘導放射線治療に対応するために、放射線不透過マーカー20A、20Bの配置に工夫を施している。
【0097】
図4は、本発明の実施形態における消化器ステント1A、1Bへの放射線の照射を説明するための図である。
図4は、放射線不透過マーカー20A、20Bが所定幅W1、W2を有する所定領域R1、R2に配置されている消化器ステント1A、1Bを軸方向から見た図であり、消化器ステント1A、1Bの側方から放射線(点線で図示)が照射される様子が模式的に図示されている。
【0098】
画像誘導放射線治療では、例えば
図4に示すように、放射線照射源Sから所定角度毎に全周方向(例えば10°毎に360°方向)にわたって放射線を照射して放射線透視画像を撮影し、コンピュータからなる画像処理装置を用いて放射線透視画像を再構成することで、病変およびその周辺に留置された金属製マーカーを含む画像を生成する。そして、生成された画像内から放射線不透過マーカー20A、20Bを検出して体内における放射線不透過マーカー20A、20Bの位置を特定し、さらに詳細な位置誤差の補正等を行って病変と放射線不透過マーカー20A、20Bとの相対位置を高精度に特定して、強度変調放射線治療や定位放射線治療に係る技術を用いて、病変等の放射線照射対象となる標的に対して高い精度で効率良く放射線を放射する。なお、
図4に模式的に示すシステムは一例であり、本発明に係る放射線不透過マーカー20A、20Bの位置を特定するシステムは、これに限定されるものではない。
【0099】
具体的には、本実施形態における消化器ステント1A、1Bは、ステント本体10A、10Bの周方向に所定幅W1、W2を有するとともにステント本体10A、10Bの軸方向に細長く延びる所定領域R1、R2内に、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが配置された構成を有している。
【0100】
この構成によれば、消化器ステント1A、1Bの周面の一側面側(周方向に所定幅W1、W2の範囲)に偏るように、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが所定領域R1、R2内に配置される。
【0101】
例えば所定領域R1、R2内に配置された放射線不透過マーカー20A、20Bの裏側(周方向に沿って反対側)に別の放射線不透過マーカー20A、20Bが重なるように配置された場合、画像誘導放射線治療では、その重なりによって放射線不透過マーカー20A、20Bの存在が検出されない(エラーと判定されてしまう)ことがある。しかしながら、本実施形態における消化器ステント1A、1Bでは、当該消化器ステント1A、1Bの周面の一側面側(周方向に所定幅W1、W2の範囲)に偏るように、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが配置されている。これにより、全周方向(360°方向)から消化器ステント1A、1Bを放射線透視下で観察した場合、所定領域R1、R2内に配置された放射線不透過マーカー20A、20Bの裏側(周方向に沿って反対側)に別の放射線不透過マーカー20A、20Bが重なって見えることが少なくなり、放射線不透過マーカー20A、20Bの検出エラーを低減させて放射線不透過マーカー20A、20Bを確実に検出することができるようになる。
【0102】
なお、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが配置される所定領域R1、R2は、消化器ステント1A、1Bの全周方向(360°方向)のどの角度から放射線が照射された場合であっても、放射線不透過マーカー20A、20Bを正しく検出できる領域であることが好ましい。本実施形態における消化器ステント1A、1Bでは、具体的な数値として、所定領域R1、R2の周方向に延びる所定幅W1、W2を、放射線不透過マーカー20A、20Bの最大寸法の3倍、およびステント本体10A、10Bの周方向全周の20%のいずれか大きいほうの寸法に設定することで、画像誘導放射線治療において放射線不透過マーカー20A、20Bが正しく検出できるようにしている。
【0103】
さらに、
図1~
図3に示すように、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bを所定領域R1、R2内で略同一直線(直線L1、L2)上に配置することで、放射線不透過マーカー20A、20Bが所定領域R1、R2内に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0104】
また、本実施形態における消化器ステント1A、1Bは、好適には、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが所定領域R1、R2内にのみ配置され、放射線不透過マーカー20A、20Bが所定領域R1、R2外に配置されていない構成を有している。
【0105】
この構成によれば、全周方向(360°方向)から消化器ステント1A、1Bを放射線透視下で観察した場合、所定領域R1、R2内に配置された放射線不透過マーカー20A、20Bの裏側(周方向に沿って反対側)に別の放射線不透過マーカー20A、20Bが配置されることなく、その結果、放射線不透過マーカー20A、20Bが重なって見えることがより少なくなり、放射線不透過マーカー20A、20Bの検出エラーをより低減させて、放射線不透過マーカー20A、20Bをより確実に検出することができるようになる。
【0106】
また、本実施形態における消化器ステント1A、1Bは、好適には、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bがステント本体10A、10Bの軸方向に沿って略等間隔(間隔D11、D12、D13が略等間隔、または、間隔D21、D22が略等間隔)に配置された構成を有している。
【0107】
この構成によれば、消化器ステント1A、1Bの軸方向に沿って、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bが軸方向に沿って均等に分散するように配置されるので、軸方向においても放射線不透過マーカー20A、20Bが重なって見えることが少なくなり、放射線不透過マーカー20A、20Bの検出エラーをより低減させて、放射線不透過マーカー20A、20Bをより確実に検出することができるようになる。
【0108】
なお、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bの軸方向の間隔(間隔D11、D12、D13、または、間隔D21、D22)は、消化器ステント1A、1Bの全周方向(360°方向)のどの角度から放射線が照射された場合であっても、放射線不透過マーカー20A、20Bを正しく検出できる間隔に設定されることが好ましい。本実施形態における消化器ステント1A、1Bでは、具体的な数値として、放射線不透過マーカー20A、20Bの間隔(間隔D11、D12、D13、または、間隔D21、D22)を、これらの平均値D1、D2に対して-20%以上20%以下の範囲内に収まるように設定することで、画像誘導放射線治療において放射線不透過マーカー20A、20Bが正しく検出できるようにしている。
【0109】
さらに、
図1~
図3に示すように、3個以上の放射線不透過マーカー20A、20Bの軸方向の間隔(間隔D11、D12、D13、または、間隔D21、D22)をそれぞれ略同一とすることで、放射線不透過マーカー20A、20Bが軸方向に沿って略等間隔に配置されるという条件を確実に満たすようにしてもよい。
【0110】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属するすべての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0111】
1A、1B 消化器ステント
10A、10B ステント本体
11A、11B 線材
12A、12B セル
20A、20B 放射線不透過マーカー
L1、L2 直線
R1、R2 所定領域
S 放射線照射源
W1、W2 所定幅