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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021324
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】光学素子および装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20240208BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240208BHJP
   F21V 7/04 20060101ALI20240208BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240208BHJP
   G02B 30/56 20200101ALI20240208BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALN20240208BHJP
【FI】
G02B5/08 D
F21V7/00 100
F21V7/00 570
F21V7/04
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G02B30/56
G02B5/08 C
G06F3/0346 421
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124075
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】522310465
【氏名又は名称】株式会社ANOVA
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】江利川 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英春
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 正和
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕紹
(72)【発明者】
【氏名】陶山 史朗
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
5B087
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA05
2H042AA06
2H042AA08
2H042AA12
2H042AA16
2H042AA21
2H042AA26
2H199BA32
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB59
5B087AA07
5B087AB02
5B087BC01
5B087BC32
5B087DE03
5G435AA17
5G435EE49
5G435GG09
5G435KK07
(57)【要約】
【課題】
用途に合わせて透過率と反射率の調整が容易であって、製作コストを低く抑えることができ、大きなサイズの製品を作成することも容易であり、干渉縞やモアレ縞の発生を抑制したビームスプリッター(ハーフミラー)を提供し、当該ビームスプリッター(ハーフミラー)の製造方法を提供すること。
【解決手段】
透明基板21の一部に有色膜22および反射膜23を積層したビームスプリッターの製造方法であって、透明基板21上に透過部(開口部)Tと反射部Rをパターン形成する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層したビームスプリッターの製造方法であって、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成することを特徴とするビームスプリッターの製造方法。
【請求項2】
フォトリソ法もしくはマスク蒸着法によって有色膜を透明基板上にパターン形成することを特徴とする、請求項1記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項3】
エッチング処理もしくはリフトオフ法によって有色膜上の反射膜のみを残し、透明基板上にパターン形成することを特徴とする、請求項1記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項4】
ビームスプリッターの反射率が30%~70%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項5】
ビームスプリッターの透過率が30%~70%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項6】
ビームスプリッターの反射部分が占める割合が30%~70%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項7】
ビームスプリッターの透過部分(開口部分)が占める割合が30%~70%であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項8】
ビームスプリッターの反射部分の占める割合の増加に応じて、前記透明基板の厚みを厚くすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビームスプリッターの製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッター。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッターを含む表示装置。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッターを含む空中タッチスイッチ。
【請求項12】
透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層したビームスプリッターであって、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成されてなることを特徴とするビームスプリッター。
【請求項13】
透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層し、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成されてなるビームスプリッターであって、透過部(開口部)と反射部がランダムに配置されたパターン(ランダムパターン)よりなることを特徴とするビームスプリッター。
【請求項14】
前記透明基板上に形成される透過部(開口部)と反射部のパターンについてフーリエ変換を行ったときのパワースペクトルに、原点付近を除いて、局在領域が少ないランダムパターンであることを特徴とする、請求項13記載のビームスプリッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に関し、特に、ビームスプリッター(ハーフミラー)に関し、さらに、これらを含む表示装置または空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子通信技術の発展を通じて多様な電子機器が作られており、このような電子機器は次第に使用者の操作便宜性とともにデザインの美観を強調する傾向にある。このような傾向につれて強調されるのは、キーパッドなどに代表される入力装置の多角化である。
最近では電子機器の発展とともに操作キー、ダイヤルなどを利用して入力する方法の他にタッチを利用して命令信号を入力する方法が用いられている。
【0003】
タッチセンサーは、各種ディスプレイを利用する情報通信機器と使用者間のインターフェースを構成する入力装置の一つであって、使用者が指やタッチペンなどの入力道具を利用してタッチパッドまたはタッチスクリーンに直接接触するかまたはこれに近接することによって、情報通信機器と使用者間のインターフェースを可能とさせる。
【0004】
タッチセンサーは、指またはタッチペンなどの入力道具で接触するだけで老若男女を問わず誰しも容易に使用することができるため、ATM(Automated Teller Machine)、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話などの多様な機器で活用されており、その分野も、銀行、官公庁、観光および交通案内などの広い分野で多用されている。
【0005】
最近では、健康または医療関連製品などにタッチセンサーを適用しようとする試みが続いている。特に、タッチパネルはタッチスクリーンとともに使用されるかディスプレイシステムに独自に使用され得るため、その活用度が高まっている。
特に近年、健康、衛生上の観点から、直接接触することなく命令信号を入力することができる、非接触型の空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)の適用が望まれている。
【0006】
近年、通信・放送、エンターテインメント、アート、医療等をはじめとする分野において、環境や空間を利用し、特殊なメガネ等をかけなくても見える像を三次元空間内に表示可能な空中表示技術が注目されている。前述のように三次元空間内に像を表示する方法の一つとして、再帰反射を用いた空中表示(Aerial Imaging by Retro-Reflection:AIRR)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
非接触型の空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)として、結像手段と元絵との間にハーフミラーを設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
そして、ハーフミラーと再帰反射シートを用いた、空中映像に対する人の操作をより高精度に検知する手段が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
このような、空中映像を表示する装置または空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)に用いられるビームスプリッター(ハーフミラー)を製造する方法としては、透明基板へ金属薄膜を成膜して製造する方法、または透明基板へ誘電体多層膜を成膜して製造する方法などが知られている。
しかし、透明基板へ金属薄膜を成膜して製造する方法の場合には、比較的安価に製造することが可能ではあるが、金属膜の膜厚によって透過・反射特性を制御するため、金属膜のみでは吸収が大きく光の反射効率が低くなってしまい、反射率を高くするために膜厚を厚くすると透過率が低くなってしまうという問題がある。
また、透明基板へ誘電体多層膜を成膜して製造する方法の場合には、薄膜を数層~数十層積層させて製造することから、数nmの薄膜を均一に成膜する必要があり、成膜時の膜厚均一性の問題が生じる。また、数層~数十層を成膜するための時間と材料の種類が多くなり、製作コストが高くなるという問題がある。
さらに、透明基板へ金属薄膜を成膜して製造する方法、透明基板へ誘電体多層膜を成膜して製造する方法のいずれにおいても、透明基板の全面に対して成膜を行うことから、透明基板へ成膜された膜の応力により基板の変形・たわみが発生するため、大きなサイズの製品を作成することが困難であるという問題がある。
そして、透明基板の全面に対して成膜を行うことから、膜厚の均一性を維持したまま、透明基板の面内における透過率と反射率に変化を加えることができない、などの課題を有している。
【0009】
また、従来法のスクリーン印刷やインクジェットプリントなどは細かく規則性をもったドットパターンを反射部に持つが、反射膜に規則性を持ったスリットをパターニングするだけでは透過部(開口部)を通過する光は回折を起こし、干渉縞やモアレ縞を発生させるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-067030号公報
【特許文献2】特開2018-088027号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】H.Yamamoto,Y.Tomiyama,S.Suyama,“Floating aerial LED signage based on aerial imaging by retro-reflection (AIRR)”,Optics Express,Vol.22,No.22,pp.26919-26924(2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、用途に合わせて透過率と反射率の調整が容易であって、かつ光の吸収を大幅に抑制でき、反射効率と透過効率の低減を抑え、製作コストを低く抑えることができ、大きなサイズの製品を作成することも容易であり、干渉縞やモアレ縞の発生を抑制したビームスプリッター(ハーフミラー)を提供し、当該ビームスプリッター(ハーフミラー)の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)は以下の特徴を有するビームスプリッター(ハーフミラー)であり、当該ビームスプリッター(ハーフミラー)の製造方法である。
(1)透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層したビームスプリッターの製造方法であって、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成することを特徴とするビームスプリッターの製造方法。
(2)フォトリソ法もしくはマスク蒸着法によって有色膜を透明基板上にパターン形成することを特徴とする、上記(1)記載のビームスプリッターの製造方法。
(3)エッチング処理もしくはリフトオフ法によって有色膜上の反射膜のみを残し、透明基板上にパターン形成することを特徴とする、上記(1)記載のビームスプリッターの製造方法。
(4)ビームスプリッターの反射率が30%~70%であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載のビームスプリッターの製造方法。
(5)ビームスプリッターの透過率が30%~70%であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載のビームスプリッターの製造方法。
(6)ビームスプリッターの反射部分が占める割合が30%~70%であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載のビームスプリッターの製造方法。
(7)ビームスプリッターの透過部分(開口部分)が占める割合が30%~70%であることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載のビームスプリッターの製造方法。
(8)ビームスプリッターの反射部分の占める割合の増加に応じて、前記透明基板の厚みを厚くすることを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれかに記載のビームスプリッターの製造方法。
(9)上記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッター。
(10)上記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッターを含む表示装置。
(11)上記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法によって製造された、ビームスプリッターを含む空中タッチスイッチ。
(12)透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層したビームスプリッターであって、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成されてなることを特徴とするビームスプリッター。
(13)透明基板の一部に有色膜および反射膜を積層し、透明基板上に透過部(開口部)と反射部をパターン形成されてなるビームスプリッターであって、透過部(開口部)と反射部がランダムに配置されたパターン(ランダムパターン)よりなることを特徴とするビームスプリッター。
(14)前記透明基板上に形成される透過部(開口部)と反射部のパターンについてフーリエ変換を行ったときのパワースペクトルに、原点付近を除いて、局在領域が少ないランダムパターンであることを特徴とする、上記(13)記載のビームスプリッター。
【発明の効果】
【0014】
反射膜と有色膜を積層することによって透明基板へ透過部(開口部)と反射部をパターン形成することで、透明基板の一方からは反射して見え、別のもう一方からは透過して見える、用途に合わせた透過率と反射率の調整がなされた、低コストで、パターン形成することによって積層膜の応力が解放されることから大型化が容易であって、特定のパターン(形状)にすることによって干渉縞やモアレ縞の発生を抑制したビームスプリッター(ハーフミラー)を提供することができる。
また、反射膜と有色膜を積層することによって透明基板へ透過部(開口部)と反射部をパターン形成することで、透明基板の一方からは有色膜パターンが見え、別のもう一方からは反射膜パターンが見える、意匠性に優れた模様を有するビームスプリッター(ハーフミラー)を提供することができる。
また、反射膜と有色膜を積層することによって透明基板へ透過部(開口部)と反射部をパターン形成することで、導電性を有する材料を使用した反射膜は表示器等の配線として使用可能であり、反射膜や有色膜はビームスプリッター(ハーフミラー)内の当該配線を隠す効果をも有し得る。
また、本発明においては、パターン化することにより応力を大きく開放できるため、通常では応力の発生が危惧される金属の厚膜であっても使用することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)の積層構造の断面の一例を示した図。
図2】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)の製造方法の一例を示した説明図。
図3】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の一例を示した模式図。
図4】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(1))を示した図。
図5】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(2))を示した図。
図6】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(3))を示した図。
図7】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(4))を示した図。
図8】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(5))を示した図。
図9】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(6))を示した図。
図10】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(7))を示した図。
図11】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(8))を示した図。
図12】本発明において好ましくないパターンの一例(パターン図(9))を示した図。
図13】本発明において好ましいパターンの一例(パターン図(10))を示した図。
図14】本発明において好ましいパターンの一例(パターン図(11))を示した図。
図15】本発明において好ましいパターンの一例(パターン図(12))を示した図。
図16】本発明において好ましいパターンの一例(パターン図(13))を示した図。
図17】本発明において好ましいパターンの一例(パターン図(14))を示した図。
図18】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図19】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図20】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図21】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図22】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図23】本発明の空中映像装置に使用したビームスプリッター(ハーフミラー)のパターンと空中映像の一例を示した図。
図24】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の一例(空中映像表示装置1A)を示した模式図。
図25】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の一例(空中映像表示装置1B)を示した模式図。
図26】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の一例(空中映像表示装置1C)を示した模式図。
図27】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)の一例を示した図。
図28】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)の機器構成ブロック図の一例を示した図。
図29】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の応用例を示した模式図。
図30】本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して作製した空中映像装置の応用例を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一側面に係るビームスプリッター(ハーフミラー)と、その製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)の積層構造を示す断面図であり、各種パターンを例示するものである。また、図2は本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)の製造工程の断面図を示すものである。以下、必要に応じ、図面に基づき説明する。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)に好適に用いられる透明基板の材料としては、ガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透過率に優れた材料であれば、特に限定されるものではないが、透過率に優れたガラスが好ましい。また、応用場面によっては、色付きの透明基板を用いることも可能である。
透明基板の厚みを厚くすると耐衝撃性に優れたビームスプリッター(ハーフミラー)を製造することができるが、その場合、透過率が減少するのでより透過率の優れた材料を用いる必要がある。また、透明基板の厚みを厚くすると、反射材料の割合が大きい場合に、その応力により基板が変形することを抑制する効果が期待できる。
また、透明基板の厚みを薄くすると、湾曲しやすくなり、曲面状のビームスプリッター(ハーフミラー)を製造することができる。本発明においては、パターン形成することにより、応力を大きく緩和できるため、このような薄い基板を用いた場合でも、所望の曲面を得やすい効果が期待できる。
【0018】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)に好適に用いられる有色膜の材料としては、低反射率の材料であれば特に限定されるものではないが、樹脂材料、インキ、金属酸化膜などが好ましい。本発明において、有色膜の材料の光学濃度(OD値)は2.0%以上であることが好ましく、3.0%以上であることがより好ましく、3.85以上であることがさらに好ましい。
低反射率の材料は透明基板表面の反射を抑える効果を有し、さらにはビームスプリッター(ハーフミラー)表面に意匠性を持たせることもできるという効果も有する。
有色膜の色は、黒色のみならず、赤色、青色、緑色など特に限定されるものではなく、複数の色を用いたパターン形成することもでき(例えば、図1(3)、(4)、(8)、(9)参照)、意匠性に優れたビームスプリッター(ハーフミラー)を作製できる。
【0019】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、有色膜22は、図2(A)に示すように、透明基板21の表面側の全面に真空スパッタリング法または蒸着法などの常法によって有色膜22を成膜した後、図2(B)に示されるように、フォトリソ法とエッチングなどの常法によって不要部を取り除いてパターン形成する方法によって形成できる。あるいは、有色膜22は、直接透明基板21の表面側に、マスク蒸着法、スクリーン印刷、インクジェット印刷などによりるパターン形成する方法によって形成できる。
なお、有色膜22は透明基板21の表面側に設けても(図1(1)、(2)、(3)、(4)、(8)、(9)参照)、裏面側に設けてもよい(図1(5)、(6)、(7)参照)。
【0020】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)に好適に用いられる反射膜の材料としては、反射率の高い材料であれば特に限定されるものではないが、アルミニウム、銀などの反射率の高い材料が好ましい。本発明において、反射膜の材料の反射率は50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、反射膜の材料として、導電性の高い材料を用いることによって、反射膜を本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を装着した電子装置等の配線として使用することが可能となる(例えば、後記詳述する図30参照)。
また、本発明においては、パターン化することにより応力を大きく開放できるため、通常では応力の発生が危惧される金属の厚膜であっても使用することができる効果を有する。
【0021】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、反射膜23は、図2(C)に示されるように、透明基板21、および有色膜22上の全体に、真空スパッタリング法、蒸着法、メッキなどの常法によって成膜した後、図2(D)に示されるように、フォトリソ法とエッチングなどの常法によって不要部を取り除いてパターン形成する方法によって形成できる。あるいは、反射膜23は、透明基板21の表面側にパターン形成された有色膜22の上に、直接マスク蒸着法、スクリーン印刷、インクジェット印刷、あるいはリフトオフ法などによってパターン形成する方法によって形成できる(図1(1)、(2)、(3)、(4)、(8)参照)。
ここで、反射膜23は透明基板21の有色膜22上に積層して形成される場合に限らず、透明基板21上に直接形成することができる。また、透明基板21の有色膜22が形成された面の、同一面側にも、反対面側にも形成できる。例えば、図1に示されるパターンに基づき説明すると、透明基板11にパターン形成された有色膜12、13、14の透明基板11の反対面側全体に、真空スパッタリング法、蒸着法、メッキなどの常法によって、反射膜15を成膜した後に、フォトリソ法とエッチングなどの常法によって不要部を取り除いてパターン形成する方法によって形成することができる。あるいは、透明基板11の有色膜12、13、14の反対面側に直接、マスク蒸着法、スクリーン印刷、インクジェット印刷、あるいはリフトオフ法などによるパターン形成することもできる(図1(5)~(7)、(9)参照)。また、パターン形成された有色膜12、13、14の透明基板11上の同一面に、直接マスク蒸着法、スクリーン印刷、インクジェット印刷、あるいはリフトオフ法などによるパターン形成することもできる(図1(2)、(7)参照)。
また、有色膜12、13、14の材料として異なる色調の材料を複数用いることによって、透明基板11の一方から見える有色膜12、13、14のパターンが、複数の色調で彩られ、より意匠性に優れた模様を有するビームスプリッター(ハーフミラー)を提供することができる(例えば、図1(3)、(4)、(8)、(9)参照)。
なお、本発明においては、パターン化することにより応力を大きく開放できるため、通常では応力の発生が危惧される成膜方法であっても使用することができる効果を有する。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)においては、図1に示されるように、有色膜12、13、14のパターン上、または有色膜12、13、14のパターンの透明基板11を挟んだ反対側の透明基板11上に、反射膜15のパターンが形成され、透明基板11の反射膜15が形成された方向からは有色膜12、13、14が目視できないようになっているのが好ましい(例えば、図1(1)~(9)参照)。
なお、図1(2)、(6)、(7)のように透明基板11の有色膜12、13、14が設けられていない位置(透明基板11における同一面、あるいは反対側の面)に、反射膜15を設けてもよい。
このように、反射膜15によって反射部Rが形成され、反射膜15が形成されていない部分に透過部Tが形成されることとなる。
また、反射膜15のパターンが形成された部分(反射部R)は光が反射され、光は透過しないので、反射膜15に反射率の高い材料を用いることにより、反射膜15を本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を装着した電子装置等の配線を隠す目的でパターン形成することが可能となる(例えば、後記詳述する図29参照)。
【0022】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)に好適に用いられる透明保護膜の材料としては、SiO膜、樹脂オーバーコート材などの、表示装置の表示部分に通常用いられる材料が用いられ、図2(E)に示されるように、通常用いられる方法によって透明保護膜24は形成される。
透明保護膜は透明基板上に形成された膜を、キズ・腐食等から保護する役割を持ち、反射膜の反射率低下や腐食・断線などを防止する機能を有する。
また、透明基板の材料としてガラスを用いた場合、高温高湿環境下ではガラスに含まれるアルカリ成分の析出などによって白濁、透過率の低下を引き起こされるが、有色膜や反射膜がパターニングされていない光を透過する透過部(開口部)Tにおける白濁、透過率の低下を抑制する機能を有する。
【0023】
透明基板上に形成するパターンについては、スリット形状など規則性を持ったパターンの場合(図4~12のパターン図(1)~(9)参照)、規則性に起因する回折光が発生し、干渉縞やモアレ縞の原因となる。そのため、本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)においては、ある程度の規則性を有するものの小さな円を配列したようなパターン(例えば、図13のパターン図(10)および図14のパターン図(11)参照)が好ましく、特に、ボロノイ図の様なパターン(例えば、図15のパターン図(12)および図16のパターン図(13)参照)、または葉脈の様なパターン(例えば、図17のパターン図(14)参照)、などの透過部(開口部)Tと反射部Rがランダムに配置されたパターン(ランダムパターン)が好ましい。
具体的には、フーリエ変換を行ったときにパワースペクトルの局在が、原点付近を除いて、できるだけ少ないようなランダムパターンが好ましい(図13~17のパターン図(10)~(14)参照)。
但し、このパターンの選択については、これと重なる空中像などのパターンとの関係で、回折像やモアレ像が出にくくできるパターンを選択することを除外するものではない。
【0024】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、透明基板上に形成するパターンにおける透過部(開口部)Tの幅は、0.01mm~4.6mmであることが好ましい。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、透明基板上に形成するパターンにおける反射部Rの幅は、0.02mm~3.5mmであることが好ましい。
【0025】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)における反射率(平均)は、30%~70%であることが好ましく、35%~65%であることがより好ましく、40%~60%であることがさらに好ましい。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)における透過率(平均)は、30%~70%であることが好ましく、35%~65%であることがより好ましく、40%~60%であることがさらに好ましい。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、反射部分が占める割合は30%~70%であることが好ましく、35%~65%であることがより好ましく、40%~60%であることがさらに好ましい。
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、透過部分(開口部分)が占める割合は30%~70%であることが好ましく、35%~65%であることがより好ましく、40%~60%であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)において、有色膜は反射膜の反射を遮ることを目的の一つとして製膜する。そのため、透明基板を挟んで反射膜の反対側からは、有色膜が反射膜を隠し、有色膜の色が観察者の目に届くこととなる。
この場合、有色膜に使用する材料の色の選択によっては、表示する空中映像とコントラストを高めることが可能となる。
【0027】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を用いた(空中映像)表示装置では、有色膜に使用する材料の色の選択によっては、表示される空中映像と有色膜のパターンが観察者の目に届くこととなり、意匠性に優れた(空中映像)表示となる。
【0028】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)は、再帰反射方式による空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)に使用されるハーフミラーとして、好適に使用され得る。有色膜に使用する材料の色の選択によっては、表示される空中映像と有色膜のパターンが観察者の目に届くこととなり、意匠性に優れた(空中映像)表示となるとともに、ハーフミラーの存在(位置)を使用者(観察者)が視認することができるので、装置(ハーフミラー)に誤って接触することを防ぐことができる。
【0029】
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)は、建造物のガラス部分に使用することもできる。ガラス部分を挟んで片側からは、意匠性のあるデザイン(有色膜のパターン)を施すことができ、ガラスを挟んだ逆の面は鏡として使用することができる。
【実施例0030】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0031】
[ビームスプリッター(ハーフミラー)の作製-1]
フォトリソ法によって図2に示したような手順に従って、本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を作製した。
まず、透明基板21上に有色膜22を製膜した(図2(A))。透明基板21として1.1mm、SODAガラスを使用した。有色膜22は黒色樹脂レジスト材を使用し、膜厚は1.15μmとした。製膜した有色膜22の光学濃度(OD値)は3.85以上(550nm)であった。
続いて、フォトリソ法によって有色膜22をパターニングした(図2(B))。
続いて、パターニングされた有色膜22上、および透明基板21上に、スパッタリング法によって反射膜23を製膜した(図2(C))。反射膜23にはアルミ合金を使用し、膜厚は260~300nmとした。反射率は90%以上であった。
続いて、フォトリソ法によって反射膜23をパターニングした(図2(D))。
続いて、スパッタリング法によって透明保護膜24を製膜した(図2(E))。透明保護膜24にはSiO膜を使用した。膜厚は20nmとした。
【実施例0032】
[ビームスプリッター(ハーフミラー)の作製-2]
マスク蒸着法、およびリフトオフ法によって、本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を次のようにして作製した。
まず、透明基板21上にマスク蒸着法によって有色膜22をパターニングした(図2(B)参照)。透明基板21として厚み1.1mm、SODAガラスを使用した。有色膜22は黒色樹脂レジスト材を使用し、膜厚は1.15μmとした。パターニングした有色膜22の光学濃度(OD値)は3.85以上(550nm)であった。
続いて、パターニングされた有色膜22上に、リフトオフ法によって反射膜23をパターニングした(図2(D)参照)。反射膜23にはアルミ合金を使用し、膜厚は260~300nmとした。反射率は90%以上であった。
続いて、スパッタリング法によって透明保護膜24を製膜した(図2(E)参照)。透明保護膜24にはSiO膜を使用した。膜厚は20nmとした。
【実施例0033】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-1]
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)を使用して、空中映像表示装置を作製した。作製した空中映像表示装置の模式図を図3に示した。
図示の空中映像表示装置1は、水平方向に配置されたビームスプリッター31の一端に表示器32を配し、他端に再帰反射材33を配する構成とした。
表示器32は、市販のLEDネームプレートを使用した(表示は「A」)。
再帰反射材33は、日本カーバイド工業株式会社製(型番:RF-Ax)を使用した。
ビームスプリッター(ハーフミラー)31と表示器32のなす角度(θ)、およびビームスプリッター(ハーフミラー)31と再帰反射材33のなす角度(θ)は、いずれも45°とした。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、りんごと青森県の地図をかたちどったもの(大)を使用した(図18の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は0.040mm、反射部Rの幅は0.040mmであった(図18の(B))。
空中映像は、図18の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図18の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図18の(E)に示されるものであった。
【実施例0034】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-2]
使用したビームスプリッター(ハーフミラー)を、以下のパターンのものに代えて、実施例3と同様に空中映像表示装置を作製した。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、りんごと青森県の地図をかたちどったもの(小)を使用した(図19の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は0.020mm、反射部Rの幅は0.020mmであった(図19の(B))。
空中映像は、図19の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図19の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図19の(E)に示されるものであった。
【実施例0035】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-3]
使用したビームスプリッター(ハーフミラー)を、以下のパターンのものに代えて、実施例3と同様に空中映像表示装置を作製した。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、六角形の組み合わせとしたものを使用した(図20の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は0.0140mm、反射部Rの幅は0.020mm、および0.185mmであった(図20の(B))。
空中映像は、図20の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図20の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図20の(E)に示されるものであった。
【実施例0036】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-4]
使用したビームスプリッター(ハーフミラー)を、以下のパターンのものに代えて、実施例3と同様に空中映像表示装置を作製した。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、葉脈のパターンとしたものを使用した(図21の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は3.74mm、反射部Rの幅は1.56mmであった(図21の(B))。
空中映像は、図21の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図21の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図21の(E)に示されるものであった。
【実施例0037】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-5]
使用したビームスプリッター(ハーフミラー)を、以下のパターンのものに代えて、実施例3と同様に空中映像表示装置を作製した。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、細い効果線パターンとしたものを使用した(図22の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は4.54mm、反射部Rの幅は0.10mmであった(図22の(B))。
空中映像は、図22の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図22の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図22の(E)に示されるものであった。
【実施例0038】
[ビームスプリッターを使用した空中映像表示装置-6]
使用したビームスプリッター(ハーフミラー)を、以下のパターンのものに代えて、実施例3と同様に空中映像表示装置を作製した。
透過部(開口部)Tと反射部Rのパターンは、太い効果線パターンとしたものを使用した(図23の(A))。
透過部(開口部)Tの幅は2.96mm、反射部Rの幅は3.43mmであった(図23の(B))。
空中映像は、図23の(C)に示されるものであった。
パターンを3mm×3mmで抜き出したものを、図23の(D)に示した。二次元フーリエ変換後は図23の(E)に示されるものであった。
【実施例0039】
[空中映像表示装置-1A]
実施例3の図3で示される空中映像表示装置と同様に、図24に模式図として示した空中映像表示装置1Aを作製した。
空中映像表示装置1Aでは、ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23上に表示器32を配置した。その配置により、空中映像表示装置1Aでは、使用したビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23によって表示器32が観察者Oから隠され、表示器32は視認できない構成となっている。
空中映像表示装置1Aでは、表示器32より射出された光がミラー36で反射(反射光38)し、反射光38がビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23でさらに反射され、その反射光38がさらに再帰反射材33で反射(再帰反射光39)される。ミラー36からの反射光38が再帰反射材33からの再帰反射光39として結像し、空中像34として観察される。
作製した空中映像表示装置1Aにおいて、表示器32で「A」の文字を表示すると「A」の文字の空中像34が観察された。
【実施例0040】
[空中映像表示装置-1B]
実施例9の図24で示される空中映像表示装置1Aと同様に、図25に模式図として示した空中映像表示装置1Bを作製した。
空中映像表示装置1Bでは、ミラー36の表示器32とは反対側に、再帰反射材33を表示器32と平行に配置した。
空中映像表示装置1Bでも、空中映像表示装置1Aと同様に、ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23上に表示器32を配置しているので、使用したビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23によって表示器32が観察者Oから隠され、表示器32は視認できない構成となっている。
空中映像表示装置1Bでは、表示器32より射出された光がミラー36で反射(反射光38)し、反射光38がビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23でさらに反射され、その反射光38がさらに再帰反射材33で反射(再帰反射光39)される。ミラー36からの反射光38が再帰反射材33からの再帰反射光39として結像し、空中像34として観察される。
作製した空中映像表示装置1Bにおいて、表示器32で「A」の文字を表示すると「A」の文字の空中像34が観察された。
【実施例0041】
[空中映像表示装置-1C]
実施例10の図25で示される空中映像表示装置1Bと同様に、図26に模式図として示した空中映像表示装置1Cを作製した。
空中映像表示装置1Cでは、有色膜22を反射膜23より大きくすることによって、特定方向からの視野を制限することができるようにした。
空中映像表示装置1Cでも、空中映像表示装置1Bと同様に、ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23上に表示器32を配置しているので、使用したビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23によって表示器32が観察者Oから隠され、表示器32は視認できない構成となっている。
空中映像表示装置1Cでは、表示器32より射出された光がミラー36で反射(反射光38)し、反射光38がビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23でさらに反射され、その反射光38がさらに再帰反射材33で反射(再帰反射光39)される。ミラー36からの反射光38が再帰反射材33からの再帰反射光39として結像し、空中像34として観察される。
作製した空中映像表示装置1Cにおいて、表示器32で「A」の文字を表示すると「A」の文字の空中像34が観察された。
【実施例0042】
[ビームスプリッター(ハーフミラー)31を使用した空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)-40]
本発明のビームスプリッター(ハーフミラー)31を使用して、空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)を作製した。
作製した空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)の模式図を図27に、機器構成のブロック図を図28に示した。
空中タッチセンサー40は実施例3の図3で示される空中映像表示装置と同様に、ビームスプリッター31の一端に表示器32を配し、他端に再帰反射材33を配する構成とした。ただし、ビームスプリッター31は垂直に配置した。
空中タッチセンサー40では、表示器32より射出された光がビームスプリッター31の反射膜で反射(反射光38)し、反射光38が再帰反射材33で反射(再帰反射光39)される。ビームスプリッター31の反射膜からの反射光38が再帰反射材33からの再帰反射光39として結像し、空中像34として観察される。
図示の装置ではIRセンサー35をビームスプリッター31の上方近傍に配置して、ビームスプリッター31を透過した再帰反射光39が結像した空中像34に指が近づくとその近接状態を検知できるようにした。
図示の空中タッチセンサー40では、コントロールPC41に接続される表示器32の表示内容(空中像(34))をコントロールPC41で制御できるようにした。IRセンサー35は前記コントロールPC41に接続され、指が空中像34に近づくとその近接状態をコントロールPC41で検知できるようにした。図中42は電源ユニットを示し、コントロールPC41と表示器32に接続され、表示器32と、コントロールPC41と、さらにコントロールPC41に接続されるIRセンサー35を駆動できるようにした。
空中タッチセンサー40(空中タッチスイッチ)において、コントロールPC41によって表示器32で「A」の文字を表示するように指示すると「A」の文字の空中像34が観察され、空中像34に指を近づけるとIRセンサー35によって検知することができた。
【実施例0043】
[ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23によって表示器32の配線37が隠される例]
図29に、反射膜23によって表示器32の配線37を隠すように配置した、ビームスプリッター(ハーフミラー)31と表示器32の配置例の横面図(A)、および、平面図(B)を模式図として示した。
図29の配置例では、ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23の上に表示器32を、その中央付近に配置している。そして、表示器32の配線37は反射膜23の上を這うように配置されている。そのため、透明基板21側から見た観察者Oからは、表示器32の配線37は視認できないようになっている。
【実施例0044】
[ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23を表示器32の配線37として利用する例]
図30に、反射膜23の一部を表示器32の配線37として利用するように配置した、ビームスプリッター(ハーフミラー)31と表示器32の配置例の横面図(A)および、平面図(B)を模式図として示した。
図30の配置例では、ビームスプリッター(ハーフミラー)31の反射膜23の上に表示器32を、その中央付近に配置している。そして、表示器32の配線37は反射膜23の一部を構成している。そのため、透明基板21側から見た観察者Oからは、表示器32の配線37は視認できないようになっている。
この場合、反射膜23の表示器32の配線37として利用する部分と、その他の部分とは、接続されることのないようにパターニングする必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
このように本発明によれば、用途に合わせた透過率と反射率の調整がなされた、低コストで大型化も容易であって、干渉縞やモアレ縞の発生を抑制したビームスプリッター(ハーフミラー)を提供することができ、該ビームスプリッター(ハーフミラー)を含む、意匠性にも優れた、(空中映像)表示装置または空中タッチセンサー(空中タッチスイッチ)を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1~6 空中映像表示装置
1A~1C 空中映像表示装置
11 透明基板
12 有色膜(有色膜(1))
13 有色膜(有色膜(2))
14 有色膜(有色膜(3))
15 反射膜
21 透明基板
22 有色膜
23 反射膜
24 透明保護膜
31 ビームスプリッター(ハーフミラー)
32 表示器
33 再帰反射材
34 空中像
35 IRセンサー
36 ミラー
37 配線
38 反射光
39 再帰反射光
40 空中タッチセンサー
41 コントロールPC
42 電源ユニット
R 反射部
T 透過部
O 観察者
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30