(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021330
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】回転子ロック機構および回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H02K15/02 A
H02K15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124081
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰之
(72)【発明者】
【氏名】大崎 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】宮地 雄太
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏之
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA05
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP28
5H615SS10
5H615SS20
5H615SS59
(57)【要約】
【課題】回転子ロック機構の誤取り付けおよび取り外しの手間を低減可能とする。
【解決手段】実施形態によれば回転子ロック機構100は、回転電機の回転子10を軸受装置30に代えて支持する。回転子ロック機構100は、軸方向に移動可能であり円錐台部を有しその細径側の先端面にロータシャフト11に設けられた支持受け15と係合するテーパ面111aが形成されたロック板110と、軸方向の第1の先端部はロック板110との軸方向の相対位置が固定されており第2の先端部側にはおねじが形成されベアリングブラケット40を貫通するボルト120とを具備する。ボルト120の回転またはさらに設けられたナット130の回転によりボルト120が軸方向の前後に移動可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の2つの支持受けが取り付けられたロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、2つの軸受装置と、前記軸受装置を支持するベアリングブラケットを備える回転電機の前記回転子を前記軸受装置に代えて支持する回転子ロック機構であって、
軸方向に移動可能であり円錐台部を有しその細径側の先端面に前記支持受けと係合するテーパ面が形成されたロック板と、
軸方向の第1の先端部は前記ロック板との軸方向の相対位置が固定されており、第2の先端部側にはおねじが形成され、前記ベアリングブラケットに形成された貫通孔を貫通するボルトと、
を具備し、
前記ボルトの回転またはさらに設けられて前記ボルトと螺合するナットの回転により、前記ボルトが軸方向の前後に移動可能である、
ことを特徴とする回転子ロック機構。
【請求項2】
前記第1の先端部は前記ロック板と周方向にも相対位置が固定され、
前記ナットは、軸方向を固定されかつ回転可能に設置され、当該ナットの前記ロック板に対向する第1の面の側に前記ボルトと螺合するめねじが形成され、
前記ベアリングブラケットには、前記ナットの軸方向の固定用のストッパが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子ロック機構。
【請求項3】
前記ナットは、当該ナットの回転操作を容易にするための操作補助部を有することを特徴とする請求項2に記載の回転子ロック機構。
【請求項4】
前記操作補助部は、前記ナットの表面に形成されたローレット加工であることを特徴とする請求項3に記載の回転子ロック機構。
【請求項5】
前記操作補助部は、前記第1の面と反対側の第2の面側に形成されたナット回転用の六角穴であることを特徴とする請求項3に記載の回転子ロック機構。
【請求項6】
前記操作補助部は、前記第1の面と反対側の第2の面側に設けられたナット回転用のハンドルであることを特徴とする請求項3に記載の回転子ロック機構。
【請求項7】
前記第1の先端部と前記ロック板と周方向の相対位置の固定は、ねじロックまたは締まり嵌めによることを特徴とする請求項2に記載の回転子ロック機構。
【請求項8】
前記第1の先端部は前記ロック板に対して周方向に回転可能であり、
前記貫通孔には、前記ボルトと螺合するめねじが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転子ロック機構。
【請求項9】
前記第1の先端部は前記ロック板に対して周方向に回転可能であり、
前記ナットは、軸方向および周方向に固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の回転子ロック機構。
【請求項10】
前記ベアリングブラケットと、前記ロック板との間には、皿ばねが介設されていることを特徴とする請求項1に記載の回転子ロック機構。
【請求項11】
前記回転子と、
前記固定子と、
2つの前記軸受装置と、
前記ベアリングブラケットと、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の回転子ロック機構と、
を備えることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子ロック機構および回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用の回転電機の場合、軸受交換はメンテナンス作業として必須である。その軸受部品の取り外しのため、回転子の解体を行うことは、作業の負担を大きくすることとなり、好ましくない。
【0003】
このため、回転子の解体を行うことなしに軸受部品の交換を可能とする方法が提案されている。このような技術としては、たとえば、フレームあるいは軸受ブラケットで支持された回転子支持装置により回転子を支持して、軸受部品の交換を可能とする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-099491号公報
【特許文献2】特許第4939894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法では、フレームあるいは軸受ブラケットに、回転子支持装置の取り付け用の穴および回転子支持装置ボルトによる固定用の穴をそれぞれ設ける必要があり、構造が複雑となっていた。
【0006】
また、回転子の固定・解除の際には、二種類のねじ穴に対応するボルトを固定・解除に応じて使い分ける必要があり、誤取り付けの可能性や取り外しの手間が発生するという課題があった。
【0007】
本発明の実施形態は、回転子ロック機構の誤取り付けの可能性および取り外しの手間を低減可能とする回転電機を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る回転子ロック機構は、環状の2つの支持受けが取り付けられたロータシャフトおよび回転子鉄心を有する回転子と、固定子と、2つの軸受装置と、前記軸受装置を支持するベアリングブラケットを備える回転電機の前記回転子を前記軸受装置に代えて支持する回転子ロック機構であって、軸方向に移動可能であり円錐台部を有しその細径側の先端面に前記支持受けと係合するテーパ面が形成されたロック板と、軸方向の第1の先端部は前記ロック板との軸方向の相対位置が固定されており、前記第2の先端部側にはおねじが形成され、前記ベアリングブラケットを貫通するボルトと、を具備し、前記ボルトの回転またはさらに設けられて前記ボルトと螺合するナットの回転により、前記ボルトが軸方向の前後に移動可能である、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る回転子ロック機構およびそれを用いた回転電機の構成を示す概念的な縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す軸方向の正面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る回転子ロック機構により回転子がロックされた状態を示す縦断面図である。
【
図5】第2の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。
【
図7】第4の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。
【
図8】第4の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す軸方向の正面図である。
【
図9】第5の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。
【
図10】第5の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す軸方向の正面図である。
【
図11】第6の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ボルトで皿ばねを圧縮した状態を示す縦断面図である。
【
図12】第6の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ボルトを外して皿ばねを開放した状態を示す縦断面図である。
【
図13】第7の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ロック状態を示す縦断面図である。
【
図14】第7の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ロックを解除した状態を示す縦断面図である。
【
図15】第8の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ロック状態を示す縦断面図である。
【
図16】第8の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ロックを解除した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る回転子ロック機構について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る回転子ロック機構100およびそれを用いた回転電機1の構成を示す概念的な縦断面図である。
【0012】
回転電機1は、回転子10、固定子20、軸受装置30、ベアリングブラケット40およびフレーム50を有する。
【0013】
回転子10は、回転軸方向に延びたロータシャフト11、ロータシャフト11に取り付けられた回転子鉄心12、ロータシャフト11に取り付けられた内扇15を有する。回転子鉄心12には、たとえば、かご型誘導機の場合は複数のローターバー、同期機の場合は2次巻線などの2次導体あるいは永久磁石が設けられているが、図示は省略している。以下、ロータシャフト11の回転軸に平行な方向を軸方向、回転軸から遠ざかる方向を見た方向を径方向、回転軸が回転する方向を周方向と呼ぶものとする。
【0014】
ロータシャフト11は、軸方向の両端近傍でそれぞれ軸受装置30により回転可能に支持される。ロータシャフト11の一方の端部には、回転電機1が電動機であれば負荷側とのカップリング11aが設けられている。
【0015】
ロータシャフト11の、回転子鉄心12の軸方向の両外側の部分には、それぞれ環状の支持受け15が取り付けられている。支持受け15は、直接にロータシャフト11に取り付けられていなくとも、回転部分でたとえば軸受装置30であっても分解時に取り外さない部分であればその部分に取り付けられていてもよい。したがって、支持受け15は、回転子10の一部である。なお、以降、軸方向外側とは、回転子鉄心12に向かう方向とは反対側を指すものとする。
【0016】
固定子20は、回転子鉄心12を囲むように径方向外側に設けられた円筒状の固定子鉄心21、および固定子鉄心21に形成された固定子ティース(図示省略)に巻回された固定子巻線22を有する。
【0017】
フレーム50は、固定子20の径方向外側を覆うように設けられ、筒状である。
【0018】
ベアリングブラケット40は、フレーム50の軸方向の両端を塞ぐようにフレーム50に取り付けられる。なお、フレーム50は、少なくとも一方の端部が、筒状の部分から径方向内側に延びていてもよい。ベアリングブラケット40およびフレーム50は、軸受装置30とともに、回転子鉄心12、固定子20および内扇13を内包する内部空間60aを形成する。このため、ベアリングブラケット40およびフレーム50を総称して外殻構造60と呼ぶものとする。
【0019】
ベアリングブラケット40は、その径方向内側部分が環状円板状に形成されており、この部分を軸受箱支持環状板部41と呼ぶものとする。
【0020】
軸受装置30は、軸受本体31および軸受本体31を覆う軸受箱32を有する。軸受本体31は、ロータシャフト11とともに回転する軸受回転部31aと、軸受箱32に固定支持される軸受固定部31bを有する。軸受箱32は、その径方向外側部分が環状円板状に形成されている。この環状円板状に形成された部分を軸受箱環状板33と呼ぶものとする。軸受装置30の軸受箱環状板33は、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41と軸方向に隣接し、軸受箱環状板33が軸受箱支持環状板部41の軸方向外側に配されている。軸受箱環状板33は、周方向に互いに間隔をおいて配された複数ボルトにより軸受箱支持環状板部41に結合されている。すなわち、軸受装置30は、軸受箱環状板33においてベアリングブラケット40により支持されている。
【0021】
回転子ロック機構100は、ロック板110および軸方向駆動機構161を有する。軸方向駆動機構161は、ロック板110を軸方向の前後に移動させて、ロック板110の支持受け15への押し付け、および押し付けの解除を行う機能を有する機構である。
【0022】
軸方向駆動機構161は、後述するように、その一部が、軸受装置30の軸受箱環状板33またはベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41と結合、係合あるいは螺合している。この結果、回転子ロック機構100は、外殻構造60であるベアリングブラケット40により静止支持されている。
【0023】
軸方向駆動機構161により回転子10の支持受け15にロック板110が押し付けられると、回転子10は、外殻構造60であるベアリングブラケット40により間接的に静止支持されることになる。この結果、軸受装置30は回転子10からの荷重を担わないことになり、軸受装置30の分解が可能な状態を実現することができる。回転子ロック機構100の詳細については、
図2以降を参照しながら説明する。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る回転子ロック機構100の構成を示す縦断面図である。また、
図3は、第1の実施形態に係る回転子ロック機構100の構成を示す軸方向の正面図である。すなわち、
図3は、
図2において軸受装置30とカップリング11a(
図1)の間の切断面から軸受装置30の方向を見た矢視図である。
【0025】
まず、軸受装置30およびその周辺の構成について説明する。
【0026】
軸受装置30は、軸受本体31および軸受箱32を有する。軸受本体31は、ロータシャフト11に取り付けられた軸受回転部31aと、軸受回転部31aの径方向外側に複数の回転要素(図示を省略)を挟んで軸受回転部31aを囲むように配された静止側の軸受固定部31bを有する。軸受固定部31bは、軸受箱32に収納され、周方向に互いに間隔を空けて配された複数の軸受保持ボルト35により軸受箱32に結合されている。
【0027】
軸受箱32の軸受箱環状板33は、その軸方向内側に隣接するように配されたベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41に、周方向に互いに間隔を空けて配された複数の軸受箱保持ボルト36(
図3)によって結合されている。
【0028】
ロータシャフト11の、軸受装置30の軸方向内側の位置にそれぞれ、支持受け15が設けられている。支持受け15は、ロータシャフト11に取り付けられた環状の部材である。支持受け15の径方向外側には、支持受けテーパ面15aが形成されている。支持受けテ―パ面15aは、軸方向外側になるにつれて先端部の径が単調に小さくなる方向、すなわち、径方向外側に向かった端面が軸方向外側に傾く方向に形成されている。すなわち、支持受けテーパ面15aは、円錐表面に沿った形状に形成されている。
【0029】
次に、回転子ロック機構100について説明する。
【0030】
回転子ロック機構100は、ロック板110、複数のボルト120、および各ボルト120に対応する複数のナット130を有する。
【0031】
ロック板110は、円錐台部111および円錐台部111の大径側に接続する環状板部112を有する。円錐台部111は、小径側を軸方向内側に向けて配されている。円錐台部111の小径側の先端部にはテーパ面111aが形成されている。テーパ面111aは、支持受け15の支持受けテーパ面15aと係合するように、支持受けテーパ面15aの傾きに対応する傾きに形成されている。なお、テーパ面111aの傾きは、支持受けテーパ面15aの傾きと同じ、あるいは公差としては、支持受けテーパ面15aの傾きΘに対して、これに等しいあるいは大きい側に設定することが好ましい。ロック板110の環状板部112は、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41と隣接するようにその軸方向内側に配されている。
【0032】
それぞれのボルト120は、軸受装置30の軸受箱環状板33に形成された貫通孔34、およびベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41に形成された貫通孔42を、軸方向外側から軸方向内側に貫通している。貫通孔34および貫通孔42の内径は、ボルト120が移動可能なように、ボルト120の外径より微小ギャップ分だけ大きく形成されている。ボルト120の軸方向内側の端部は、ロック板110の環状板部112とその垂直方向に結合している。ボルト120とロック板110の環状板部112との結合は、ねじロックによる。ただし、これに限定されず、たとえば、締り嵌め嵌合によってもよい。これにより、ボルト120は、軸方向にロック板110と一体で移動する。また、ボルト120は、回転方向にもロック板110に拘束され、回転できない状態となっている。
【0033】
ボルト120の軸方向外側端部すなわちロック板110との結合側と反対側の端部の近傍には、おねじが形成されている。
【0034】
それぞれのナット130は、軸受箱環状板33の軸方向の外表面に接するように配されている。ナット130の軸方向の内側の第1面131には、ねじ穴であるボルト螺合部132が形成され、ボルト120のおねじと螺合する。また、ナット130の軸方向の外側の第2面133には操作補助部162としての六角穴134が形成されている。
【0035】
ナット130を、軸受箱環状板33の軸方向の外表面に密着させるように、周方向に互いに間隔を置いて複数の突起状ストッパ151が設けられている。この結果、ナット130は、軸受箱環状板33の軸方向の外表面の位置から軸方向外側に移動しないように突起状ストッパ151に軸方向の移動を拘束される。
【0036】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る回転子ロック機構100の作用を説明する。
【0037】
図4は、第1の実施形態に係る回転子ロック機構100により回転子10がロックされた状態を示す縦断面図である。一方、
図3は、回転子10がロックされていない状態を示している。
【0038】
まず、それぞれのナット130の第2面133側に形成された操作補助部162である六角穴134を用いて、ナット130を回転させる。
【0039】
ボルト120は、ロック板110に結合しており、回転しない。また、ボルト120は、そのおねじ形成部122でナット130の第1面131側に形成されたボルト螺合部132のめねじと螺合している。この結果、ボルト120は、ナット130の回転に伴い軸方向に移動する。この操作を、周方向に配された各ナット130についてほぼ均等になるように順次行っていく。
【0040】
ボルト120の軸方向の移動により、ロック板110が軸方向に支持受け15に近づき、ロック板110のテーパ面111aが、支持受け15の支持受けテーパ面15aに密着する。この段階でたとえばトルク管理のもとにナット130を増し締めしてもよい。
【0041】
この結果、ロック板110が支持受け15に押しつけられた状態となり、回転子ロック機構100を介して外殻構造60であるベアリングブラケット40が回転子10の荷重を負担する状態に移行する。
【0042】
また、ロック板110の支持受け15への押し付け状態を解除するのは、ナット130を反対方向に回転するのみで可能であり、別の箇所での操作を必要としない。
【0043】
このように、ナット130、ボルト120およびロック板110の組合せが、ナット130の回転をロック板110の軸方向の前後の移動に変換する軸方向駆動機構161を形成する。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、常設された一種類の機構のみで、ロック板110の軸方向前後の移動を可能とする。
【0045】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る回転子ロック機構100aの構成を示す縦断面図である。
【0046】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態においては、第1の実施形態におけるナット130の六角穴134に代えて、ナット130の側面に形成されたローレット加工面135が、操作補助部162として用いられる。
【0047】
すなわち、ナット130の側面にローレット加工が施されていることにより、滑りを防止し、ナット130の回転操作がしやすくなる。
【0048】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係る回転子ロック機構100bの構成を示す縦断面図である。
【0049】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態においては、第1の実施形態におけるナット130の六角穴134に代えて、ナット130の第2面133側に取り付けられたハンドル136が、操作補助部162として用いられる。
【0050】
すなわち、ハンドル136により、ナット130の回転操作がしやすくなる。
【0051】
[第4の実施形態]
図7は、第4の実施形態に係る回転子ロック機構100cの構成を示す縦断面図である。また、
図8は、第4の実施形態に係る回転子ロック機構100cの構成を示す軸方向の正面図である。
【0052】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。第1の実施形態における軸方向拘束部150としての突起状ストッパ151は、ナット130の第2面133を抑える方式であった。
【0053】
一方、本実施形態においては、ナット130が、その根本側にフランジ137を有する。フランジ137は、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41に密着している。突起状ストッパ151は、ナット130のフランジ137の一部を覆うように配され、ナット130の軸方向の移動を拘束している。
【0054】
本実施形態によって、軸方向拘束部150の方式のバリエーションを確保することができる。
【0055】
[第5の実施形態]
図9は、第5の実施形態に係る回転子ロック機構の構成を示す縦断面図である。また、
図10は、第5の実施形態に係る回転子ロック機構100cの構成を示す軸方向の正面図である。
【0056】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態における軸方向拘束部150は、第1の実施形態における突起状ストッパ151に代えて、環状ストッパ152が用いられている。
【0057】
環状ストッパ152は、環状板部152aと複数の突起部152bを有する。環状板部152aは、複数のボルト153cにより、ベアリングブラケット40に取り付けられる。突起部152bは、環状板部152bの内縁から径方向内側に突出し、ナット130の頭部を拘束するように折り曲げられている。
【0058】
このように形成された本実施形態の軸方向拘束部150は、取り付けが容易であり作業性の向上を図ることができる。
【0059】
本実施形態によって、軸方向拘束部150の方式のバリエーションを確保することができる。
【0060】
[第6の実施形態]
図11は、第6の実施形態に係る回転子ロック機構100eの構成において、ボルトで皿ばねを圧縮した状態を示す縦断面図である。
図12は、第6の実施形態に係る回転子ロック機構の構成において、ボルトを外して皿ばねを開放した状態を示す縦断面図である。
【0061】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態における軸方向駆動機構161は、ボルト120e、皿ばね140およびロック板110に形成されたボルト螺合穴114を有する。
【0062】
ここで、ボルト120eは、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41に形成された貫通孔42を貫通している。
【0063】
ボルト120eがボルト螺合穴114においてロック板110と結合し、
図11に示すように、皿ばね140を軸方向に締め付けている状態では、ロック板110は、支持受け15から離れている。
【0064】
図12に示すように、ボルト120eとロック板110との縁を切って、ボルト120eを外した状態では、ロック板110は皿ばね140の付勢力により支持受け15に押し付けられた状態となる。
【0065】
以上のように、本実施形態では、ボルト120の操作のみによりロック板110と支持受け15との関係を切り替えることができる。
【0066】
[第7の実施形態]
図13は、第7の実施形態に係る回転子ロック機構100fの構成において、ロック状態を示す縦断面図である。また、
図14は、第7の実施形態に係る回転子ロック機構100fの構成において、ロックを解除した状態を示す縦断面図である。
【0067】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態におけるボルト120fは、先端に回転先端部125を有する。ボルト120fにおいて、回転先端部125とそれを貫通する軸とは互いに周方向に回転可能である。また、ボルト120fの回転先端部125以外の部分にはおねじが形成されている。
【0068】
また、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41にはねじ孔43が形成されており、ボルト120fのおねじ部分と螺合している。
【0069】
ボルト120fの回転先端部125の外表面は、ロック板110のボルト結合穴113と嵌合し、回転先端部125はロック板110に対して回転しないようになっている。
【0070】
このような構成において、ボルト120fは回転先端部125を介してロック板110と係合しているので、ボルト120f自体を回転させることが可能である。
【0071】
ボルト120fは回転によりベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41に対して軸方向に移動する。ロック板110に対して回転しないようになっている。
【0072】
ロック板110とボルト120fは軸方向には固定されていることから、ボルト120fを回転させることにより、ロック板110を軸方向に移動させることができる。
【0073】
[第8の実施形態]
図15は、第8の実施形態に係る回転子ロック機構100gの構成において、ロック状態を示す縦断面図である。また、
図16は、第8の実施形態に係る回転子ロック機構100gの構成において、ロックを解除した状態を示す縦断面図である。
【0074】
本実施形態は、第7の実施形態と同様に、先端に回転先端部125を有するボルト120gを用いるものである。
【0075】
ボルト120gの回転先端部125の外表面は、ロック板110のボルト結合穴113と嵌合し、回転先端部125はロック板110に対して回転しないようになっている。また、ボルト120gとロック板110との間の軸方向の相対的な移動はない。これらの点で第7の実施形態と同様である。
【0076】
本実施形態では、さらに、ナット130aが設けられている。ナット130aは、ベアリングブラケット40の軸受箱支持環状板部41の軸方向外側表面に固定されている。ボルト120gとナット130aは螺合している。また、ボルト120gは、軸受箱支持環状板部41に形成された貫通孔42を貫通している。
【0077】
このような構成において、ボルト120gは回転先端部125を介してロック板110と係合しているので、ボルト120g自体を回転させることが可能である。
【0078】
ボルト120gは回転により軸受箱支持環状板部41に固定されたナット130aは螺合しているので、ボルト120gの回転により軸受箱支持環状板部41に対して軸方向に移動する。ロック板110とボルト120gは軸方向には固定されていることから、ボルト120gを回転させることにより、ロック板110を軸方向に移動させることができる。
【0079】
以上、説明した実施形態によれば、回転子ロック機構の誤取り付けの可能性および取り外しの手間を低減することが可能となる。
【0080】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。さらに、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1…回転電機、10…回転子、11…ロータシャフト、11a…カップリング、12…回転子鉄心、13…内扇、15…支持受け、15a…支持受けテーパ面、20…固定子、21…固定子鉄心、22…固定子巻線、30…軸受装置、31…軸受本体、31a…軸受回転部、31b…軸受固定部、32…軸受箱、33…軸受箱環状板、34…貫通孔、34a…めねじ、35…軸受保持ボルト、36…軸受箱保持ボルト、40…ベアリングブラケット(外殻構造)、41…軸受箱支持環状板部、42…貫通孔、42a…貫通孔、43…ねじ孔、50…フレーム(外殻構造)、60…外殻構造、100、100a、100b、100c、100d、100e、100f、100g、100h…回転子ロック機構、110…ロック板、111…円錐台部、111a…テーパ面、112…環状板部、113…ボルト結合穴、114…ボルト螺合穴、120、120e、120f…ボルト、121…第1の先端部、122…おねじ形成部、122a…おねじ、125…回転先端部、130、130a…ナット、131…第1面、132…ボルト螺合部、133…第2面、134…六角穴、135…ローレット加工面、136…ハンドル、137…フランジ、140…皿ばね、150…軸方向拘束部、151…突起状ストッパ、152…環状ストッパ、152a…環状板部、152b…突起部、153c…ボルト、161…軸方向駆動機構、162…操作補助部