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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021356
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】積層フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/09 20060101AFI20240208BHJP
   H03H 7/42 20060101ALI20240208BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240208BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H03H7/09 Z
H03H7/42
H01F27/00 S
H01G4/40 313A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124129
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】芦田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】澤口 修平
(72)【発明者】
【氏名】立松 雅大
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】照井 智理
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲三
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB03
5E070CB12
5E070DB08
5E070EA01
5E082DD07
5J024AA01
5J024CA02
5J024CA04
5J024CA06
5J024CA10
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】減衰極が所望の形状に形成され得る積層フィルタを提供する。
【解決手段】積層フィルタにおいて、第1から第4共振回路は、入出力部に接続されている。入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。第1から第4共振回路は、それぞれ、インダクタ導体と、第1及び第2キャパシタ導体とを含んでいる。インダクタ導体は、第1及び第2端部を含んでいる。第1キャパシタ導体は、第1端部に接続されている。第2キャパシタ導体は、第2端部に接続されている。第2及び第3共振回路とは、互いに磁気結合されている。第2及び第3共振回路は、第一方向において、第1共振回路と第4共振回路との間に配列されている。飛び越しキャパシタ導体の第1及び第2電極は、それぞれ、第1及び第4共振回路のインダクタ導体に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されている積層体と、
前記積層体の内部に設けられている導体部と、を備え、
前記導体部は、入出力部と、前記入出力部に接続されている第1、第2、第3、及び、第4共振回路と、前記第1共振回路と前記第4共振回路とを接続している飛び越しキャパシタと、を含んでおり、
前記入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1、第2、第3、及び第4共振回路は、それぞれ、第1及び第2端部を含んでいるインダクタ導体と、前記第1端部に接続されている第1キャパシタ導体と、前記第2端部に接続されている第2キャパシタ導体と、を含んでおり、
前記第1、第2、第3、及び、第4共振回路において、前記第2及び第3共振回路は、前記積層体の積層方向と交差する第一方向において互いに隣り合っており、かつ、互いに磁気結合されており、
前記飛び越しキャパシタの第1電極は、前記第1共振回路の前記インダクタ導体に接続されており、
前記飛び越しキャパシタの第2電極は、前記第4共振回路の前記インダクタ導体に接続されている、積層フィルタ。
【請求項2】
前記第1、第2、第3、及び第4共振回路は、前記積層体の積層方向と交差する第一方向に配列されており、
前記第2及び前記第3共振回路は、前記第一方向において、前記第1共振回路と前記第4共振回路との間に配置されている、請求項1に記載の積層フィルタ。
【請求項3】
前記飛び越しキャパシタは、第1飛び越しキャパシタと、第2飛び越しキャパシタとを含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタの第1電極は、前記第1共振回路の前記第1端部に接続され、
前記第1飛び越しキャパシタの第2電極は、前記第4共振回路の前記第1端部に接続され、
前記第2飛び越しキャパシタの第1電極は、前記第1共振回路の前記第2端部に接続され、
前記第2飛び越しキャパシタの第2電極は、前記第4共振回路の前記第2端部に接続されている、請求項1に記載の積層フィルタ。
【請求項4】
前記入出力部は、前記不平衡ポート及び前記一対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタの静電容量値と、前記第2飛び越しキャパシタの静電容量値とは、互いに異なる、請求項3に記載の積層フィルタ。
【請求項5】
前記入出力部は、前記二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタの静電容量値と、前記第2飛び越しキャパシタの静電容量値とは、互いに同等である、請求項3に記載の積層フィルタ。
【請求項6】
前記第2共振回路の前記インダクタ導体と前記第3共振回路の前記インダクタ導体とを接続するキャパシタ導体をさらに備える、請求項1に記載の積層フィルタ。
【請求項7】
前記第4共振回路の前記インダクタ導体は、互いに電気的に接続された第1及び第2インダクタ導体を含んでおり、
前記第1インダクタ導体は、前記第1端部と前記第2インダクタ導体に連結される第3端部とを含んでおり、
前記第2インダクタ導体は、前記第2端部と前記第1インダクタ導体の前記第3端部に連結される第4端部とを含んでおり、
前記入出力部に含まれる一対の前記平衡ポートは、前記第1端部に接続されている平衡ポートと、前記第2端部に接続されている平衡ポートとを含んでおり、
前記第3端部と前記第4端部とは、外部端子に接続されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層体と導体部とを備えた積層フィルタが知られている(例えば、特許文献1)。積層体は、複数の誘電体層が積層されている。導体部は、積層体の内部に設けられている。導体部は、入出力部と複数の共振回路とを含んでいる。入出力部は、複数のポートからなる入出力ポート群を含んでいる。特許文献1に示されている例において、入出力部は、不平衡ポートと平衡ポートとを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-175151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バランス型の積層フィルタは、例えば、平衡信号を処理するバンドパスフィルタとして用いられる。バランス型の積層フィルタは、上述した積層フィルタのようなアンバランス-バランスフィルタの他、バランス-バランスフィルタを含んでいる。バンドパスフィルタにおいて、急峻な減衰極が形成されれば、フィルタリング処理がより確実に行われ得る。しかしながら、複数の共振回路を含むバランス型の積層フィルタにおいて、減衰極の調整が困難であり、所望の形状を有する減衰極が形成され難かった。
【0005】
本発明の一つの態様は、減衰極が所望の形状に形成され得る積層フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における積層フィルタは、積層体と、導体部とを備えている。積層体には、複数の誘電体層が積層されている。導体部は、積層体の内部に設けられている。導体部は、入出力部と、第1、第2、第3、及び、第4共振回路と、飛び越しキャパシタとを含んでいる。第1、第2、第3、及び、第4共振回路は、入出力部に接続されている。飛び越しキャパシタは、第1共振回路と第4共振回路とを接続している。入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。第1、第2、第3、及び第4共振回路は、それぞれ、インダクタ導体と、第1キャパシタ導体と、第2キャパシタ導体とを含んでいる。インダクタ導体は、第1及び第2端部を含んでいる。第1キャパシタ導体は、第1端部に接続されている。第2キャパシタ導体は、第2端部に接続されている。第1、第2、第3、及び、第4共振回路において、第2及び第3共振回路は、積層体の積層方向と交差する第一方向において互いに隣り合っている。第2共振回路と第3共振回路とは、互いに磁気結合されている。飛び越しキャパシタの第1電極は、第1共振回路のインダクタ導体に接続されている。飛び越しキャパシタの第2電極は、第4共振回路のインダクタ導体に接続されている。
【0007】
この積層フィルタにおいて、入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいる。第2共振回路と第3共振回路とは、互い隣り合っており、かつ、互いに磁気結合されている。飛び越しキャパシタは、第1共振回路のインダクタ導体と第4共振回路のインダクタ導体とに接続されている。このように第2共振回路と第3共振回路とが磁気結合された構成によれば、急峻な減衰極が形成される。さらに、上記飛び越しキャパシタによって、より急峻な減衰極が形成される。
【0008】
上記一つの態様において、第1、第2、第3、及び第4共振回路は、積層体の積層方向と交差する第一方向に配列されていてもよい。第2及び第3共振回路は、第一方向において、第1共振回路と第4共振回路との間に配置されている。この場合、積層フィルタの特性が確保されつつ、積層フィルタがコンパクトに構成され得る。
【0009】
上記一つの態様において、飛び越しキャパシタは、第1飛び越しキャパシタと、第2飛び越しキャパシタとを含んでいてもよい。第1飛び越しキャパシタの第1電極は、第1共振回路の第1端部に接続されていてもよい。第1飛び越しキャパシタの第2電極は、第4共振回路の第1端部に接続されていてもよい。第2飛び越しキャパシタの第1電極は、第1共振回路の第2端部に接続されていてもよい。第2飛び越しキャパシタの第2電極は、第4共振回路の第2端部に接続されていてもよい。この場合、さらに急峻な減衰極が形成される。特に、低域の減衰極が急峻に形成される。バランス特性も向上し得る。
【0010】
上記一つの態様において、入出力部は、不平衡ポート及び一対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいてもよい。第1飛び越しキャパシタの静電容量値と、第2飛び越しキャパシタの静電容量値とは、互いに異なっていてもよい。この場合、減衰極がより確実に調整され得る。
【0011】
上記一つの態様において、入出力部は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでいてもよい。第1飛び越しキャパシタの静電容量値と、第2飛び越しキャパシタ体の静電容量値とは、互いに同等であってもよい。この場合、減衰極がより確実に調整され得る。
【0012】
上記一つの態様において、積層フィルタは、第2共振回路のインダクタ導体と第3共振回路のインダクタ導体とを接続するキャパシタ導体をさらに備える。この場合、減衰極がさらに容易に調整され得る。
【0013】
上記一つの態様において、第4共振回路のインダクタ導体は、互いに電気的に接続された第1及び第2インダクタ導体を含んでいてもよい。第1インダクタ導体は、第1端部と第3端部とを含んでいてもよい。第3端部は、第2インダクタ導体に連結される。第2インダクタ導体は、第2端部と第4端部とを含んでいてもよい。第4端部は、第1インダクタ導体の第3端部に連結されてもよい。入出力部に含まれる一対の平衡ポートは、第1端部に接続されている平衡ポートと、第2端部に接続されている平衡ポートとを含んでいてもよい。第3端部と第4端部とは、外部端子に接続されていてもよい。この場合、たとえば、グラウンド端子又はRFグラウンド端子が外部端子に接続され得る。この結果、減衰極がより確実に調整され得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様は、減衰極が所望の形状に形成され得る積層フィルタを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における積層フィルタの斜視図である。
図2】積層フィルタの斜視図である。
図3】積層フィルタの回路図である。
図4】本実施形態の変形例における積層フィルタの斜視図である。
図5】本実施形態の変形例における積層フィルタの斜視図である。
図6】本実施形態の変形例における積層フィルタの回路図である。
図7】本実施形態における積層フィルタの特性を示す図である。
図8】積層フィルタの特性を示す図である。
図9】積層フィルタの特性を示す図である。
図10】積層フィルタの特性を示す図である。
図11】積層フィルタの特性を示す図である。
図12】積層フィルタの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
まず、図1から図3を参照して、本実施形態における積層フィルタを説明する。図1及び図2は、本実施形態における積層フィルタの斜視図である。X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに交差する方向である。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。図3は、積層フィルタの回路図である。本明細書において、「直交」は、製造公差の範囲でズレた構成を含んでいる。
【0018】
積層フィルタ1は、バランス型のフィルタである。積層フィルタ1は、複数のLC共振回路を含んでいる。積層フィルタ1は、たとえば、アンバランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる。積層フィルタ1は、たとえば、平衡信号を処理する。信号伝送方式において平衡信号が用いられる場合、平衡信号が用いられない場合に比べてノイズが低減される。積層フィルタ1は、たとえば、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含んでいる。積層フィルタ1は、積層体3と、導体部5,6とを備えている。
【0019】
積層体3は、たとえば、絶縁性を有する。積層体3は、たとえば磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、及び、Ni-Cu系フェライト材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。積層体3を構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。積層体3は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料、及び、誘電体材料から選択された少なくとも一つを含んでいる。
【0020】
積層体3は、たとえば、直方体形状を呈している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含んでいる。積層体3の形状は、直方体形状に限定されない。本実施形態において、Z軸方向は積層体3の高さ方向に相当し、X軸方向及びY軸方向は積層体3の短手方向及び長手方向に相当する。たとえば、積層体3の高さ方向の長さは、積層体3の短手方向の長さよりも短い。
【0021】
積層体3は、その外表面として、一対の主面2a,2bと、一対の端面2c,2dと、一対の側面2e,2fとを有している。一対の主面2a,2bは、Z軸方向において互いに対向している。一対の端面2c,2dは、Y軸方向において互いに対向している。一対の側面2e,2fは、X軸方向において互いに対向している。一対の主面2a,2b、一対の端面2c,2d、及び、一対の側面2e,2fは、たとえば、それぞれ平面である。一対の主面2aは、たとえば、X軸方向及びY軸方向に沿っている。一対の端面2c,2dは、たとえば、X軸方向及びZ軸方向に沿っている。一対の側面2e,2fは、たとえば、Y軸方向及びZ軸方向に沿っている。
【0022】
主面2bは、たとえば他の電子機器に実装する際、他の電子機器と対向する実装面として規定される。主面2aは、Z軸方向において、Z軸方向において主面2bと対向している対向面に相当する。
【0023】
積層体3は、複数の誘電体層を含んでいる。積層体3において、複数の誘電体層はZ軸方向に積層されている。換言すれば、Z軸方向は、複数の誘電体層の積層方向に相当する。各誘電体層は、絶縁体層に相当する。各誘電体層は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。誘電体材料は、たとえば、BaTiO系材料、Ba(Ti,Zr)O系材料、(Ba,Ca)TiO系材料、ガラス材料、又はアルミナ材料から選択された少なくとも1つを含んでいる。
【0024】
本実施形態に示す例において、X軸方向における積層体3の長さは、1.25mmである。Y軸方向における積層体3の長さは、2.00mmである。Z軸方向における積層体3の長さは、0.95mmである。
【0025】
導体部5は、積層体3の外表面に設けられている。導体部5は、既知の手法によって形成される。導体部5は、たとえば、金属材料から構成されている。金属材料は、たとえば、銅、銀、金、ニッケル、又はクロムである。導体部5は、たとえば、電極層にめっき処理が施されることによって形成されている。電極層は、たとえば、導電性ペーストからなる。導電性ペーストは、たとえば、印刷法、又は転写法によって付与されている。めっき処理は、たとえば、電解めっき又は無電解めっきである。このめっき処理によって、導電性ペーストの外表面にめっき層が形成される。
【0026】
導体部5は、互いに離間している複数の外部電極5a,5b,5c,5d,5e,5f,5g,5h,5iを含んでいる。外部電極5a~5iは、それぞれ、導体部6に連結されている。外部電極5a~5iは、それぞれ、主面2bに設けられている。外部電極5a~5iは、それぞれ、矩形状を呈している。本明細書において、「連結」とは、直接的に接した状態において接続されていることを意味する。「直接的に接する」とは、本明細書において示した他の部材を介することなく、互いに接続されることを意味する。「直接的に接する」は、本明細書に明示されていない部材を介して接続されることを除外しない。
【0027】
導体部6は、積層体3の内部に設けられている。導体部6は、入出力部10と、外部端子15と、複数の電気回路20と、を含んでいる。複数の電気回路20は、積層体3の内部において互いに電磁的に接続され、1つのフィルタ回路を構成している。本明細書において、「電磁的な接続」とは、電気的な接続、及び、磁気的な接続を含んでいる。「電気的な接続」とは、直流成分が伝達されるような接続、及び、直流成分を伝達せずに交流成分のみが伝達される接続を含んでいる。本明細書において、電気的な接続を、単に「接続」ともいう。
【0028】
入出力部10は、入力された信号を複数の電気回路20を伝達し、複数の電気回路20から伝達された信号を出力する。入出力部10は、たとえば、積層フィルタ1の外部から信号が入力され、積層フィルタ1の外部へ信号を出力する。入出力部10は、不平衡ポート11と、一対の平衡ポート13,14とからなる入出力ポート群を含んでいる。一対の平衡ポート13,14は、平衡信号を入出力する。換言すれば、平衡ポート13に入出力される信号と平衡ポート14に入出力される信号とは、互いに極性が逆である。
【0029】
複数の電気回路20は、入出力部10に接続されている。複数の電気回路20は、互いに電磁的に接続されている。複数の電気回路20は、複数の共振回路を含んでいる。複数の電気回路20は、電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30を含んでいる。電気回路21,22,23,24とは、共振回路を含んでいる。電気回路21,22,23,24とは、たとえば、LC共振回路である。各電気回路21,22,23,24は、インダクタとキャパシタとを形成している。電気回路21,22,23,24において、電気回路22,23は、積層体3の積層方向と交差する方向において互いに隣り合っており、かつ、互いに磁気結合されている。本実施形態に示されている例において、複数の電気回路21,22,23,24は、積層体3の積層方向と交差する方向に配列されている。複数の電気回路21,22,23,24は、X軸方向に配列されている。電気回路22,23は、X軸方向において、電気回路21と電気回路24との間に配列されている。複数の電気回路21,22,23,24は、互いに電磁的に接続されている。
【0030】
電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30は、互いに離隔している。本明細書において、電気回路に関して「離隔」を用いる場合には、「離隔」は、導体によって物理的に接続されておらず、直流成分が伝達されない状態をいう。電気回路21,22,23,24,25,26,27,28,29,30は、互いに電気的に接続されている。
【0031】
各電気回路20は、複数の導体によって構成されている。各電気回路20を構成する導体は、たとえば、Ag及びPdから選択された少なくとも1つを含んでいる。各端子電極の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。めっき層は、Cuめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層からなる層構造、又は、Niめっき層及びSnめっき層からなる層構造などを有する。
【0032】
図3に示されているように、電気回路21は、インダクタ導体41と、キャパシタ導体51a,51b,51c,51d,51e,51fとを含んでいる。インダクタ導体41は、コイルに相当する。インダクタ導体41は、一対の端部41a,41bを含んでいる。インダクタ導体41は、インダクタを形成する。キャパシタ導体51a,51b,51c,51d,51e,51fは、キャパシタを形成する。電気回路21において、端部41aとキャパシタ導体51a,51b,51cとは、互いに電気的に接続されている。不平衡ポート11と端部41aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路21において、端部41bとキャパシタ導体51d,51e,51fとは、互いに電気的に接続されている。
【0033】
積層フィルタ1において、電気回路21は、第1共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体51a,51bは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体51cは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体51cは、第1飛び越しキャパシタを形成する第1飛び越しキャパシタ導体に相当する。第1飛び越しキャパシタ導体は、第1飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第1電極に相当する。
【0034】
キャパシタ導体51d,51eは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体51fは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体51fは、第2飛び越しキャパシタを形成する第2飛び越しキャパシタ導体に相当する。第2飛び越しキャパシタ導体は、第2飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第1電極に相当する。
【0035】
電気回路22は、インダクタを形成するインダクタ導体42と、キャパシタを形成するキャパシタ導体52a,52b,52c,52d,52e,52fとを含んでいる。インダクタ導体42は、コイルに相当する。インダクタ導体42は、一対の端部42a,42bを含んでいる。インダクタ導体42は、インダクタを形成する。電気回路21と電気回路22とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51bとキャパシタ導体52bとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体52a,52b,52c,52d,52e,52fは、キャパシタを形成する。電気回路22において、端部42aとキャパシタ導体52a,52b,52cとは、互いに電気的に接続されている。電気回路22において、端部42bとキャパシタ導体52d,52e,52fとは、互いに電気的に接続されている。積層フィルタ1において、電気回路22は、第2共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体52a,52b,52cは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体52d,52e,52fは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。
【0036】
電気回路23は、インダクタを形成するインダクタ導体43と、キャパシタを形成するキャパシタ導体53a,53b,53c,53d,53e,53fとを含んでいる。インダクタ導体43は、コイルに相当する。インダクタ導体43は、一対の端部432a,43bを含んでいる。インダクタ導体43は、インダクタを形成する。キャパシタ導体53a,53b,53c,53d,53e,53fは、キャパシタを形成する。電気回路23において、端部43aとキャパシタ導体53a,53b,53cとは、互いに電気的に接続されている。電気回路23において、端部43bとキャパシタ導体53d,53e,53fとは、互いに電気的に接続されている。
【0037】
積層フィルタ1において、電気回路23は、第3共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体53a,53b,53cは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体53d,53e,53fは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。
【0038】
電気回路24は、インダクタを形成するインダクタ導体44と、キャパシタを形成するキャパシタ導体54a,54b,54c,54d,54e,54fとを含んでいる。インダクタ導体44は、互いに電気的に接続されたインダクタ導体45とインダクタ導体46とを含んでいる。インダクタ導体45,46は、コイルに相当する。インダクタ導体45は、一対の端部45a,45bを含んでいる。インダクタ導体46は、一対の端部46a,46bを含んでいる。インダクタ導体45の端部45bと、インダクタ導体46の端部46bとは、互いに連結されている。
【0039】
インダクタ導体45,46は、インダクタを形成する。キャパシタ導体54a,54b,54c,54d,54e,54fは、キャパシタを形成する。電気回路24において、端部45aとキャパシタ導体54a,54b,54cとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート13と端部45aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路24において、端部45bと端部46bと外部端子15とは、互いに電気的に接続されている。電気回路24において、端部46aとキャパシタ導体54d,54e,54fとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート14と端部46aとは、互いに電気的に接続されている。
【0040】
積層フィルタ1において、電気回路24は、第4共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体54a,54bは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体54cは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体53cは、第1飛び越しキャパシタを形成する第1飛び越しキャパシタ導体に相当する。第1飛び越しキャパシタ導体は、第1飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第2電極に相当する。
【0041】
キャパシタ導体54d,54eは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体54fは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体54fは、第2飛び越しキャパシタを形成する第2飛び越しキャパシタ導体に相当する。第2飛び越しキャパシタ導体は、第2飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第2電極に相当する。
【0042】
電気回路25は、キャパシタを形成するキャパシタ導体55a,55bを含んでいる。電気回路22と電気回路25とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体52cとキャパシタ導体55aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23と電気回路25とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体53bとキャパシタ導体55bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路25において、キャパシタ導体55aとキャパシタ導体55bとは、互いに電気的に接続されている。
【0043】
電気回路26は、キャパシタを形成するキャパシタ導体56a,56bを含んでいる。電気回路21と電気回路26とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51cとキャパシタ導体56aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24と電気回路26とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体54cとキャパシタ導体56bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路26において、キャパシタ導体56aとキャパシタ導体56bとは、互いに電気的に接続されている。
【0044】
電気回路26とキャパシタ導体51c,54cとによって、飛び越しキャパシタが形成されている。たとえば、電気回路26とキャパシタ導体51c,54cとによって、第1飛び越しキャパシタが形成されている。当該第1飛び越しキャパシタは、X軸方向において互いに隣り合って配置されている電気回路22と電気回路23とを飛び越えて、電気回路21と電気回路24とを接続している。換言すれば、当該第1飛び越しキャパシタは、X軸方向において、互いに磁気結合する電気回路22と電気回路23とを挟むように配置された電気回路21と電気回路24とを互いに接続する。
【0045】
電気回路27は、キャパシタを形成するキャパシタ導体57a,57bを含んでいる。電気回路21と電気回路27とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体51fとキャパシタ導体57aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24と電気回路27とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体54fとキャパシタ導体57bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路27において、キャパシタ導体57aとキャパシタ導体57bとは、互いに電気的に接続されている。
【0046】
電気回路27とキャパシタ導体51f,54fとによって、飛び越しキャパシタが形成されている。たとえば、電気回路27とキャパシタ導体51f,54fとによって、第2飛び越しキャパシタが形成されている。当該第2飛び越しキャパシタは、X軸方向において互いに隣り合って配置されている電気回路22と電気回路23とを飛び越えて、電気回路21と電気回路24とを接続している。換言すれば、当該第2飛び越しキャパシタは、X軸方向において、互いに磁気結合する電気回路22と電気回路23とを挟むように配置された電気回路21と電気回路24とを互いに接続する。積層フィルタ1において、第1飛び越しキャパシタの静電容量と第2飛び越しキャパシタの静電容量とは、互いに異なっている。
【0047】
電気回路28は、キャパシタを形成するキャパシタ導体58a,58bを含んでいる。電気回路22と電気回路28とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体52fとキャパシタ導体58aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23と電気回路28とは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体53eとキャパシタ導体58bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路28において、キャパシタ導体58aとキャパシタ導体58bとは、互いに電気的に接続されている。
【0048】
電気回路29は、キャパシタを形成するキャパシタ導体59a,59b,59c,59dを含んでいる。電気回路21と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路22と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24と電気回路29とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路29において、キャパシタ導体59a,59b,59c,59dは、グラウンドに接続されている。キャパシタ導体51aとキャパシタ導体59aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体52aとキャパシタ導体59bとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53aとキャパシタ導体59cとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体54aとキャパシタ導体59dとによって、キャパシタが形成されている。
【0049】
電気回路30は、キャパシタを形成するキャパシタ導体60a,60b,60c,60dを含んでいる。電気回路21と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路22と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路23と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路24と電気回路30とは、互いにAC結合によって接続されている。電気回路30において、キャパシタ導体60a,60b,60c,60dは、グラウンドに接続されている。キャパシタ導体51dとキャパシタ導体60aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体52dとキャパシタ導体60bとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体53dとキャパシタ導体60cとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体54dとキャパシタ導体60dとによって、キャパシタが形成されている。
【0050】
図2に示されているように、インダクタ導体41,42,43,45,46は、積層体3の内部に配置されている。インダクタ導体41,42,43,45,46は、積層方向と直交する方向に沿ったコイル軸を有している。インダクタ導体41,42,43,45,46は、X軸方向に沿ったコイル軸を有している。
【0051】
本実施形態において、インダクタ導体41,42,43,45,46は、一回巻のコイルである。インダクタ導体41,42,43,45,46の各々は、たとえば、少なくとも1つの導体層71と複数の接続導体72とを含んでいる。導体層71は、積層体3の誘電体層に沿って延在している。導体層71は、一対の誘電体層に挟まれている。導体層71は、互いに反対側に位置する一対の端部71a,71bを含んでいる。
【0052】
複数の接続導体72の各々は、導体層71に連結されている。各接続導体72は、Z軸方向に延在している。各接続導体72は、誘電体層を貫通する複数のビア79によって形成されている。換言すれば、インダクタ導体41,42,43,45,46は、それぞれ、導体層71と、複数のビア79とを含んでいる。複数のビア79は、複数の導体層71のうち対応する導体層に電気的に接続されている。複数のビア79は、積層方向に配列されている。複数の接続導体72は、端部71aに連結されている接続導体72と、端部71bに連結されている接続導体72とを含んでいる。
【0053】
たとえば、外部電極5aは、不平衡ポート11に連結されており、不平衡ポート11を通してインダクタ導体41の端部41aの接続導体72に連結されている。外部電極5bは、平衡ポート13Aに連結されており、平衡ポート13を通してインダクタ導体45の端部45aの接続導体72に連結されている。外部電極5cは、平衡ポート14に連結されており、平衡ポート14を通してインダクタ導体46の端部41bの接続導体72に連結されている。外部電極5dは、電気回路24の外部端子15に相当する。外部電極5e,5f,5g,5h,5iは、キャパシタ導体59a,59b,59c,59d、及び、キャパシタ導体60a,60b,60c,60dに接続されている。
【0054】
次に、図4から図6を参照して、本実施形態の変形例における積層フィルタについて説明する。図4は、本実施形態の変形例における積層フィルタの斜視図である。図5は、本変形例における積層フィルタの斜視図である。図6は、本変形例における積層フィルタの回路図である。本変形例は、概ね、上述した実施形態と類似又は同じである。本変形例は、積層フィルタがバランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる点に関して、上述した実施形態と相違する。以下、上述した実施形態と変形例との相違点を主として説明する。
【0055】
本変形例において、積層フィルタ1Aは、バランス-バランス特性を有するバンドパスフィルタを含んでいる。積層フィルタ1Aは、導体部5,6の代わりに、導体部5A,6Aを備えている。図4に示されているように、導体部5Aは、互いに離間している三対の外部電極85a,85b,85cを含んでいる。三対の外部電極85a,85b,85cは、それぞれ、導体部6Aに連結されている。
【0056】
一対の外部電極85a,85b,85cの一方は、それぞれ、側面2e、及び、主面2a,2bに設けられており、Y軸方向に配列されている。一対の外部電極85a,85b,85cの一方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。一対の外部電極85a,85b,85cの他方は、それぞれ、側面2f、及び、主面2a,2bに設けられており、X軸方向に配列されている。一対の外部電極85a,85b,85cの他方は、それぞれ、主面2aと主面2bとの間を、Z軸方向に延在している。
【0057】
導体部6Aは、積層体3の内部に設けられている。導体部6Aは、入出力部10Aと、複数の電気回路20Aと、を含んでいる。複数の電気回路20Aは、積層体3の内部において互いに電磁的に接続され、1つのフィルタ回路を構成している。
【0058】
入出力部10Aは、入力された信号を複数の電気回路20Aを伝達し、複数の電気回路20Aから伝達された信号を出力する。入出力部10Aは、たとえば、積層フィルタ1Aの外部から信号が入力され、積層フィルタ1Aの外部へ信号を出力する。入出力部10Aは、二対の平衡ポート11A,12A,13A,14Aとからなる入出力ポート群を含んでいる。一対の平衡ポート13A,14Aは、平衡信号を出力する。換言すれば、平衡ポート13Aに入出力される信号と平衡ポート14Aに入出力される信号とは、互いに極性が逆である。
【0059】
複数の電気回路20Aは、入出力部10に接続されている。複数の電気回路20Aは、互いに電磁的に接続されている。複数の電気回路20は、複数の共振回路を含んでいる。複数の電気回路20は、電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aを含んでいる。電気回路21A,22A,23A,24Aとは、共振回路を含んでいる。電気回路21A,22A,23A,24Aとは、たとえば、LC共振回路である。各電気回路21A,22A,23A,24Aは、インダクタとキャパシタとを形成している。電気回路21A,22A,23A,24Aにおいて、電気回路22A,23Aは、積層体3の積層方向と交差する方向において互いに隣り合っており、かつ、互いに磁気結合されている。本変形例において、複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、積層体3の積層方向と交差する方向に配列されている。複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、X軸方向に配列されている。電気回路22A,23Aは、X軸方向において、電気回路21Aと電気回路24Aとの間に配列されている。複数の電気回路21A,22A,23A,24Aは、互いに電磁的に接続されている。
【0060】
電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aは、互いに離隔している。電気回路21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A,29A,30A,31A,32Aは、互いに電気的に接続されている。
【0061】
各電気回路20Aは、複数の導体によって構成されている。各電気回路20Aを構成する導体は、たとえば、Ag及びPdから選択された少なくとも1つを含んでいる。各端子電極の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。めっき層は、Cuめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層からなる層構造、又は、Niめっき層及びSnめっき層からなる層構造などを有する。
【0062】
図6に示されているように、電気回路21Aは、インダクタ導体41Aと、キャパシタ導体91a,91b,91c,91d,91e,91fとを含んでいる。インダクタ導体41Aは、コイルに相当する。インダクタ導体41Aは、一対の端部41a,41bを含んでいる。インダクタ導体41Aは、インダクタを形成する。キャパシタ導体91a,91b,91c,91d,91e,91fは、キャパシタを形成する。電気回路21Aにおいて、端部41aとキャパシタ導体91a,91b,91cとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート11Aと端部41aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路21において、端部41bとキャパシタ導体91d,91e,91fとは、互いに電気的に接続されている。
【0063】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路21Aは、第1共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体91a,91bは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体91cは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体91cは、第1飛び越しキャパシタを形成する第1飛び越しキャパシタ導体に相当する。第1飛び越しキャパシタ導体は、第1飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第1電極に相当する。
【0064】
キャパシタ導体91d,91eは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体91fは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体91fは、第2飛び越しキャパシタを形成する第2飛び越しキャパシタ導体に相当する。第2飛び越しキャパシタ導体は、第2飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第1電極に相当する。
【0065】
電気回路22Aは、インダクタを形成するインダクタ導体42Aと、キャパシタを形成するキャパシタ導体92a,92b,92c,92d,92e,92fとを含んでいる。インダクタ導体42Aは、コイルに相当する。インダクタ導体42Aは、一対の端部42a,42bを含んでいる。インダクタ導体42Aは、インダクタを形成する。電気回路21Aと電気回路22Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91aとキャパシタ導体92aとによって、キャパシタが形成されている。キャパシタ導体92a,92b,92c,92d,92e,92fは、キャパシタを形成する。
【0066】
電気回路22Aにおいて、端部42aとキャパシタ導体92a,92b,92cとは、互いに電気的に接続されている。電気回路22Aにおいて、端部42bとキャパシタ導体92d,92e,92fとは、互いに電気的に接続されている。積層フィルタ1において、電気回路22Aは、第2共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体92a,92b,92cは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体92d,92e,92fは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。
【0067】
電気回路23Aは、インダクタを形成するインダクタ導体43Aと、キャパシタを形成するキャパシタ導体93a,93b,93c,93d,93e,93fとを含んでいる。インダクタ導体43Aは、コイルに相当する。インダクタ導体43Aは、一対の端部432a,43bを含んでいる。インダクタ導体43Aは、インダクタを形成する。キャパシタ導体93a,93b,93c,93d,93e,93fは、キャパシタを形成する。電気回路23Aにおいて、端部43aとキャパシタ導体93a,93b,93cとは、互いに電気的に接続されている。電気回路23Aにおいて、端部43bとキャパシタ導体93d,93e,93fとは、互いに電気的に接続されている。
【0068】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路23Aは、第3共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体93a,93b,93cは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体93d,93e,93fは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。
【0069】
電気回路24Aは、インダクタを形成するインダクタ導体44Aと、キャパシタを形成するキャパシタ導体94a,94b,94c,94d,94e,94fとを含んでいる。インダクタ導体44Aは、一対の端部44a,44bを含んでいる。インダクタ導体44Aは、インダクタを形成する。キャパシタ導体94a,94b,94c,94d,94e,94fは、キャパシタを形成する。電気回路24Aにおいて、端部44aとキャパシタ導体94a,94b,94cとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート13Aと端部44aとは、互いに電気的に接続されている。電気回路24Aにおいて、端部44bとキャパシタ導体94d,94e,94fとは、互いに電気的に接続されている。平衡ポート14Aと端部44bとは、互いに電気的に接続されている。
【0070】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路24Aは、第4共振回路の少なくとも一部に相当する。キャパシタ導体94a,94bは、第1キャパシタを形成する第1キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体94cは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体94cは、第1飛び越しキャパシタを形成する第1飛び越しキャパシタ導体に相当する。第1飛び越しキャパシタ導体は、第1飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第2電極に相当する。
【0071】
キャパシタ導体94d,94eは、第2キャパシタを形成する第2キャパシタ導体に相当する。キャパシタ導体94fは、飛び越しキャパシタを形成する飛び越しキャパシタ導体に相当する。たとえば、キャパシタ導体94fは、第2飛び越しキャパシタを形成する第2飛び越しキャパシタ導体に相当する。第2飛び越しキャパシタ導体は、第2飛び越しキャパシタを形成する一対の電極のうちの第2電極に相当する。
【0072】
電気回路25Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体95a,95bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路25Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91cとキャパシタ導体95aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23Aと電気回路25Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91eとキャパシタ導体95bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路25Aにおいて、キャパシタ導体95aとキャパシタ導体95bとは、互いに電気的に接続されている。
【0073】
電気回路26Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体96a,96bを含んでいる。電気回路21Aと電気回路26Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92bとキャパシタ導体96aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24Aと電気回路26Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92eとキャパシタ導体96bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路26Aにおいて、キャパシタ導体96aとキャパシタ導体96bとは、互いに電気的に接続されている。
【0074】
電気回路27Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体97a,97bを含んでいる。電気回路21Aと電気回路27Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93bとキャパシタ導体97aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24Aと電気回路27Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93fとキャパシタ導体97bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路27Aにおいて、キャパシタ導体97aとキャパシタ導体97bとは、互いに電気的に接続されている。
【0075】
電気回路28Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体98a,98bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路28Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体94bとキャパシタ導体98aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23Aと電気回路28Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体94eとキャパシタ導体98bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路28Aにおいて、キャパシタ導体98aとキャパシタ導体98bとは、互いに電気的に接続されている。
【0076】
電気回路29Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体99a,99bを含んでいる。電気回路21Aと電気回路29Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91cとキャパシタ導体99aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24Aと電気回路28Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体94cとキャパシタ導体99bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路29Aにおいて、キャパシタ導体99aとキャパシタ導体99bとは、互いに電気的に接続されている。
【0077】
電気回路29Aとキャパシタ導体91c,94cとによって、飛び越しキャパシタが形成されている。たとえば、電気回路29Aとキャパシタ導体91c,94cとによって、第1飛び越しキャパシタが形成されている。当該第1飛び越しキャパシタは、X軸方向において互いに隣り合って配置されている電気回路22Aと電気回路23Aとを飛び越えて、電気回路21Aと電気回路24Aとを接続している。換言すれば、当該第1飛び越しキャパシタは、X軸方向において、互いに磁気結合する電気回路22Aと電気回路23Aとを挟むように配置された電気回路21Aと電気回路24Aとを互いに接続する。
【0078】
電気回路30Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体100a,100bを含んでいる。電気回路21Aと電気回路30Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体91fとキャパシタ導体100aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路24Aと電気回路30Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体94fとキャパシタ導体100bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路30Aにおいて、キャパシタ導体100aとキャパシタ導体100bとは、互いに電気的に接続されている。
【0079】
電気回路30Aとキャパシタ導体91f,94fとによって、飛び越しキャパシタが形成されている。たとえば、電気回路30Aとキャパシタ導体91f,94fとによって、第2飛び越しキャパシタが形成されている。当該第2飛び越しキャパシタは、X軸方向において互いに隣り合って配置されている電気回路22Aと電気回路23Aとを飛び越えて、電気回路21Aと電気回路24Aとを接続している。換言すれば、当該第2飛び越しキャパシタは、X軸方向において、互いに磁気結合する電気回路22Aと電気回路23Aとを挟むように配置された電気回路21Aと電気回路24Aとを互いに接続する。積層フィルタ1Aにおいて、第1飛び越しキャパシタの静電容量と第2飛び越しキャパシタの静電容量とは、互いに同等である。ここで、本明細書において、「静電容量が同等」とは、一方の静電容量の値が他方の静電容量の値の±20%の範囲にあることをいう。
【0080】
電気回路31Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体101a,101bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92cとキャパシタ導体101aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23Aと電気回路31Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93cとキャパシタ導体101bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路31Aにおいて、キャパシタ導体101aとキャパシタ導体101bとは、互いに電気的に接続されている。電気回路31Aにおいて、キャパシタ導体101a,101bは、グラウンドに接続されている。
【0081】
電気回路32Aは、キャパシタを形成するキャパシタ導体102a,102bを含んでいる。電気回路22Aと電気回路32Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体92fとキャパシタ導体102aとによって、キャパシタが形成されている。電気回路23Aと電気回路32Aとは、互いにAC結合によって接続されている。キャパシタ導体93fとキャパシタ導体102bとによって、キャパシタが形成されている。電気回路32Aにおいて、キャパシタ導体102aとキャパシタ導体102bとは、互いに電気的に接続されている。電気回路32Aにおいて、キャパシタ導体102a,102bは、グラウンドに接続されている。
【0082】
図4及び図5に示されているように、インダクタ導体41A,42A,43A,44Aは、積層体3の内部に配置されている。インダクタ導体42A,43Aは、積層方向と直交する方向に沿ったコイル軸を有している。インダクタ導体42A,43Aは、X軸方向に沿ったコイル軸を有している。インダクタ導体41A,44Aは、積層方向に沿ったコイル軸を有している。インダクタ導体41A,44Aは、Z軸方向に沿ったコイル軸を有している。
【0083】
本実施形態において、インダクタ導体42A,43Aは、一回巻のコイルである。インダクタ導体41A,44Aは、二回巻のコイルである。インダクタ導体41A,42A,43A,44Aの各々は、たとえば、少なくとも1つの導体層71と複数の接続導体72とを含んでいる。インダクタ導体41A,42A,43A,44Aは、それぞれ、導体層71と、複数のビア79とを含んでいる。
【0084】
一対の外部電極85aは、それぞれ、例えば、電気回路21Aに連結されている。たとえば、一対の外部電極85aの一方は、平衡ポート11Aに連結されており、平衡ポート11Aを通してインダクタ導体41Aの端部41aの接続導体72に連結されている。たとえば、一対の外部電極85aの他方は、平衡ポート12Aに連結されており、平衡ポート12Aを通してインダクタ導体41Aの端部41bの接続導体72に連結されている。
【0085】
一対の外部電極85bは、それぞれ、電気回路31A,32Aに連結されている。一対の外部電極85bの一方は、キャパシタ導体101a,101bに接続されている。一対の外部電極85bの他方は、キャパシタ導体102a,102bに接続されている。
【0086】
一対の外部電極85cは、それぞれ、電気回路24Aに連結されている。たとえば、一対の外部電極85cの一方は、平衡ポート13Aに連結されており、平衡ポート13Aを通してインダクタ導体43Aの端部43aの接続導体72に連結されている。たとえば、一対の外部電極85cの他方は、平衡ポート14Aに連結されており、平衡ポート14Aを通してインダクタ導体44Aの端部41bの接続導体72に連結されている。
【0087】
次に、図7から図12を参照して、本実施形態及び変形例における積層フィルタ1,1Aの作用効果について説明する。
【0088】
積層フィルタ1において、入出力部10は、不平衡ポート11と一対の平衡ポート13,14とからなる入出力ポート群を含んでいる。積層フィルタ1Aにおいて、電気回路22と電気回路23とは、互いに磁気結合されている。電気回路22及び電気回路23は、方向Aにおいて、電気回路21と電気回路24との間に配列されている。電気回路21,22,23,24は、共振回路に相当する。飛び越しキャパシタは、電気回路21のインダクタ導体41と電気回路24のインダクタ導体44とに接続されている。このように電気回路22と電気回路23とが磁気結合された構成によれば、急峻な減衰極が形成される。さらに、上記飛び越しキャパシタによって、より急峻な減衰極が形成される。積層フィルタ1Aは、入出力部10の代わりに入出力部10Aを含んでいる。入出力部10Aは、二対の平衡ポート11A,12A,13A,14Aとからなる入出力ポート群を含んでいる。この場合も、積層フィルタ1Aは、積層フィルタ1と同様の作用効果が実現され得る。
【0089】
たとえば、図7から図12は、積層フィルタ1の各種特性を示している。図7及び図8において、データD1,D3は、4つの共振器回路を含んでいる積層フィルタ1の特性を示している。データD2,D4は、3つの共振器回路を含んでいる積層フィルタの特性を含んでいる。換言すれば、データD1,D3は4ポールの積層フィルタの特性を示しており、データD2,D4は3ポールの積層フィルタの特性を示している。
【0090】
データD1及びデータD2は、積層フィルタを通過する周波数と減衰量との関係を示している。図7に示されているように、データD1は、データD2に比べて急峻な減衰が生じることが確認された。換言すれば、データD1は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD2よりも優れていることが確認された。
【0091】
データD3及びデータD4は、積層フィルタを通過する周波数と、同相信号除去比(CMRR:Common Mode Rejection Ratio)との関係を示している。図8に示されているように、データD3は、通貨帯域6000~7000Hzにおいて、データD4に比べてCMRRが低減されていることが確認された。この点においても、データD1は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD2よりも優れていることが確認された。
【0092】
図9及び図10において、データD5,D7は、第1及び第2飛び越しキャパシタを含んでいる積層フィルタ1の特性を示している。データD6,D8は、飛び越しキャパシタを含んでいない積層フィルタの特性を含んでいる。
【0093】
データD5及びデータD6は、積層フィルタを通過する周波数と減衰量との関係を示している。図9に示されているように、データD5は、データD6に比べて急峻な減衰が生じることが確認された。換言すれば、データD5は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD6よりも優れていることが確認された。
【0094】
データD7及びデータD8は、積層フィルタを通過する周波数と、CMRRとの関係を示している。図10に示されているように、データD7は、通貨帯域6000~7000Hzにおいて、データD8に比べてCMRRが低減されていることが確認された。この点においても、データD7は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD8よりも優れていることが確認された。
【0095】
積層フィルタ1において、第1飛び越しキャパシタのキャパシタ導体51cは、電気回路21のインダクタ導体42の端部42aに接続されている。第1飛び越しキャパシタのキャパシタ導体54cは、電気回路24のインダクタ導体45の端部45aに接続されている。第2飛び越しキャパシタのキャパシタ導体51fは、電気回路21のインダクタ導体42の端部42bに接続されている。第2飛び越しキャパシタのキャパシタ導体54fは、電気回路24のインダクタ導体46の端部46aに接続されている。この場合、さらに急峻な減衰極が形成される。特に、低域の減衰極が急峻に形成される。バランス特性も向上し得る。積層フィルタ1Aも、積層フィルタ1と同様の構成を有している。
【0096】
図11及び図12において、データD9,D11は、第1及び第2飛び越しキャパシタを含んでいる積層フィルタ1の特性を示している。データD10,D12は、第1飛び越しキャパシタを含んでおり、第2飛び越しキャパシタを含んでいない積層フィルタの特性を含んでいる。
【0097】
データD9及びデータD10は、積層フィルタを通過する周波数と減衰量との関係を示している。図11に示されているように、データD9は、データD10に比べて急峻な減衰が生じることが確認された。換言すれば、データD9は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD10よりも優れていることが確認された。
【0098】
データD11及びデータD12は、積層フィルタを通過する周波数と、CMRRとの関係を示している。図11に示されているように、データD11は、通貨帯域6000~7000Hzにおいて、データD12に比べてCMRRが低減されていることが確認された。この点においても、データD11は、通過帯域6000~7000Hz近傍の減衰量において、データD12よりも優れていることが確認された。
【0099】
積層フィルタ1において、入出力部10は、不平衡ポート11及び一対の平衡ポート13,14からなる入出力ポート群を含んでいる。キャパシタ導体51c,56a,56b,54cから構成される第1飛び越しキャパシタの静電容量値と、キャパシタ導体52c,55a,55b,53bから構成される第2飛び越しキャパシタ導体の静電容量値とは、互いに異なっている。この場合、減衰極がより確実に調整され得る。
【0100】
積層フィルタ1Aにおいて、入出力部10Aは、二対の平衡ポート11A,12A,13A,14Aからなる入出力ポート群を含んでいる。キャパシタ導体91c,99a,99b,94cから構成される第1飛び越しキャパシタ導体の静電容量値と、キャパシタ導体91f,100a,100b,94fから構成される第2飛び越しキャパシタ導体の静電容量値とは、互いに同等であってもよい。この場合、減衰極がより確実に調整され得る。
【0101】
積層フィルタ1において、電気回路24のインダクタ導体44は、互いに電気的に接続されたインダクタ導体45,46を含んでいる。インダクタ導体45は、端部45aと端部45bとを含んでいる。端部45bは、インダクタ導体46に連結される。インダクタ導体46は、端部46aと端部46bとを含んでいてもよい。端部46bは、インダクタ導体45の端部45bに連結されている。入出力部10に含まれる一対の平衡ポート13,14は、端部45aに接続されている平衡ポート13と、端部46aに接続されている平衡ポート14とを含んでいる。端部45bと端部46bとは、外部端子15に接続されている。この場合、たとえば、グラウンド端子又はRFグラウンド端子が外部端子15に接続され得る。この結果、減衰極がより確実に調整され得る。
【0102】
積層フィルタ1は、電気回路22のインダクタ導体42と電気回路23のインダクタ導体43とを接続するキャパシタ導体52c,55a,55b,53bとキャパシタ導体52f,58a,58b,53eとさらに備える。この場合、減衰極がさらに容易に調整され得る。積層フィルタ1Aも、これと同様の構成を有している。
【0103】
積層フィルタ1において、インダクタ導体41は、導体層71と、複数のビア79とを含んでいる。導体層71は、積層方向と交差する方向に延在している。複数のビア79は、導体層71に電気的に接続されている。複数のビア79は、積層方向に配列されている。この構成によれば、コンパクトな積層フィルタにおいて、インダクタ導体41における導電経路の長さが確保され得る。積層フィルタ1Aも同様の構成を有している。
【0104】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路21は、インダクタ導体41とキャパシタ導体51a,51b,51cとキャパシタ導体51d,51e,51fと、を含んでいる。インダクタ導体41は、端部41a,41bを有している。キャパシタ導体51a,51b,51cは、端部41aに接続されている。キャパシタ導体51d,51e,51fは、端部41bに接続されている。この場合、バランス-バランス特性を有する積層フィルタ1Aにおいて、高域のスプリアスが低減され得る。
【0105】
積層フィルタ1Aにおいて、電気回路21Aと電気回路24Aとは、互いに鏡像対称な構成を有している。この場合、バラツキが抑制されると共に、所望のインピーダンスが確保された積層フィルタが実現され得る。
【0106】
積層フィルタ1Aにおいて、インダクタ導体41A及びインダクタ導体44Aのコイル軸と、インダクタ導体42A及びインダクタ導体43Aのコイル軸とは、互いに交差している。この場合、インダクタ導体41A,42Aと、インダクタ導体43A,44Aとの磁気結合が抑制される。
【0107】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0108】
たとえば、上述した実施形態及び変形例において、電気回路21,24は、コイル軸を中心に1又は3回以上巻かれたコイルであってもよい。電気回路22,23は、コイル軸を中心に複数回以上巻かれたコイルであってもよい。
【0109】
上述した実施形態の記載から把握されるとおり、本明細書は、以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
複数の誘電体層が積層されている積層体と、
前記積層体の内部に設けられている導体部と、を備え、
前記導体部は、入出力部と、前記入出力部に接続されている第1、第2、第3、及び、第4共振回路と、前記第1共振回路と前記第4共振回路とを接続している飛び越しキャパシタと、を含んでおり、
前記入出力部は、不平衡ポートと一対の平衡ポートとからなる入出力ポート群、又は、二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1、第2、第3、及び第4共振回路は、それぞれ、第1及び第2端部を含んでいるインダクタ導体と、前記第1端部に接続されている第1キャパシタ導体と、前記第2端部に接続されている第2キャパシタ導体と、を含んでおり、
前記第1、第2、第3、及び、第4共振回路において、前記第2及び第3共振回路は、前記積層体の積層方向と交差する第一方向において互いに隣り合っており、かつ、互いに磁気結合されおり、
前記第1共振回路と前記第4共振回路との間に配列されており、
前記飛び越しキャパシタの第1電極は、前記第1共振回路の前記インダクタ導体に接続されており、
前記飛び越しキャパシタの第2電極は、前記第4共振回路の前記インダクタ導体に接続されている、積層フィルタ。
(付記2)
前記第1、第2、第3、及び第4共振回路は、前記積層体の積層方向と交差する第一方向に配列されており、
前記第2及び前記第3共振回路は、前記第一方向において、前記第1共振回路と前記第4共振回路との間に配置されている、請求項1に記載の積層フィルタ。
(付記3)
前記飛び越しキャパシタ導体は、第1飛び越しキャパシタ導体と、第2飛び越しキャパシタ導体とを含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタ導体の第1電極は、前記第1共振回路の前記第1端部に接続され、
前記第1飛び越しキャパシタ導体の第2電極は、前記第4共振回路の前記第1端部に接続され、
前記第2飛び越しキャパシタ導体の第1電極は、前記第1共振回路の前記第2端部に接続され、
前記第2飛び越しキャパシタ導体の第2電極は、前記第4共振回路の前記第2端部に接続されている、付記1又は付記2に記載の積層フィルタ。
(付記4)
前記入出力部は、前記不平衡ポート及び前記一対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタ導体の静電容量値と、前記第2飛び越しキャパシタ導体の静電容量値とは、互いに異なる、付記3に記載の積層フィルタ。
(付記5)
前記入出力部は、前記二対の平衡ポートからなる入出力ポート群を含んでおり、
前記第1飛び越しキャパシタ導体の静電容量値と、前記第2飛び越しキャパシタ導体の静電容量値とは、互いに同等である、付記3に記載の積層フィルタ。
(付記6)
前記第2共振回路の前記インダクタ導体と前記第3共振回路の前記インダクタ導体とを接続するキャパシタ導体をさらに備える、付記1から付記5のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
(付記7)
前記第4共振回路の前記インダクタ導体は、互いに電気的に接続された第1及び第2インダクタ導体を含んでおり、
前記第1インダクタ導体は、前記第1端部と前記第2インダクタ導体に連結される第3端部とを含んでおり、
前記第2インダクタ導体は、前記第2端部と前記第1インダクタ導体の前記第3端部に連結される第4端部とを含んでおり、
前記入出力部に含まれる一対の前記平衡ポートは、前記第1端部に接続されている平衡ポートと、前記第2端部に接続されている平衡ポートとを含んでおり、
前記第3端部と前記第4端部とは、外部端子に接続されている、付記1から付記6のいずれか一項に記載の積層フィルタ。
【符号の説明】
【0110】
1,1A…積層フィルタ、3…積層体、5,5A,6,6A…導体部、15…外部端子、10,10A…入出力部、11…不平衡ポート、11A,12A,13,13A,14,14A…平衡ポート、41,41A,42,42A,43,43A,44,44A,45,46…インダクタ導体、51a,51b,51c,51d,51e,51f,52a,52b,52c,52d,52e,52f,53a,53b,53c,53d,53e,53f,54a,54b,54c,54d,54e,54f,55a,55b,56a,56b,57a,57b,58a,58b,59a,59b,59c,59d,60a,60b,60c,60d,91a,91b,91c,91d,91e,91f,92a,92b,92c,92d,92e,92f,93a,93b,93c,93d,93e,93f,94a,94b,94c,94d,94e,94f,95a,95b,96a,96b,97a,97b,98a,98b,99a,99b,100a,100b,101a,101b,102a,102b…キャパシタ導体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12