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特開2024-21366切削加工装置、切削工具および切削加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021366
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】切削加工装置、切削工具および切削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B23Q11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124149
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】517444230
【氏名又は名称】株式会社Growth
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】豊田 洋通
【テーマコード(参考)】
3C011
【Fターム(参考)】
3C011EE02
3C011EE08
(57)【要約】
【課題】切削油剤の存在下において、被削物を継続して好適に切削加工することが可能な切削工具を備えた切削加工装置を供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態では、炭素成分を含む切削油剤の存在下で、被削物を切削加工可能な切削工具と、切削加工時の前記切削工具へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出可能な酸化剤噴出部とを備える、切削加工装置が供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、被削物を切削加工可能な切削工具と、切削加工時の前記切削工具へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出可能な酸化剤噴出部とを備える、切削加工装置。
【請求項2】
前記切削工具と接する又は前記切削工具周縁の前記切削油剤と、前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方とが相互に接触可能となっている、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が前記炭素成分の酸化剤である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項4】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が、前記切削工具内への前記炭素成分の浸入抑制剤である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項5】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が、前記被削物から切削される切削材と前記炭素成分の合金化抑制剤である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項6】
前記酸化剤噴出部は蒸気状態の酸化剤噴出用である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項7】
前記蒸気状態の酸化剤噴出部から前記切削工具に対して90度以上3000度以下の蒸気状態の酸化剤が噴出される、請求項6に記載の切削加工装置。
【請求項8】
プラズマ発生部を更に備え、前記酸化剤噴出部は蒸気状態の酸化剤噴出用であり、
前記プラズマ発生部は、前記酸化剤噴出部から噴出される蒸気状態の酸化剤にプラズマを供給可能に構成される、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項9】
前記プラズマの供給により、前記蒸気状態の酸化剤の一部がプラズマ状態となり、前記一部がプラズマ状態の酸化剤と前記蒸気状態の酸化剤との混合型酸化剤が前記切削工具に対して噴出される、請求項8に記載の切削加工装置。
【請求項10】
前記プラズマがアルゴンプラズマである、請求項8に記載の切削加工装置。
【請求項11】
前記切削工具に対して90度以上3000度以下の前記混合型酸化剤が噴出される、請求項9に記載の切削加工装置。
【請求項12】
前記酸化剤噴出部は、蒸気状態の酸化剤を発生させる蒸気発生部と接続されている、請求項6または8に記載の切削加工装置。
【請求項13】
前記酸化剤噴出部はプラズマ状態の酸化剤噴出用である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項14】
前記切削工具からの前記プラズマ状態の酸化剤噴出部の位置調整が可能となっており、それにより、前記切削工具に対して30度以上20000度以下の前記プラズマ状態の酸化剤が噴出可能となっている、請求項13に記載の切削加工装置。
【請求項15】
前記蒸気状態の酸化剤が、水蒸気又は蒸気状態の過酸化水素である、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項16】
前記プラズマ状態の酸化剤が、水プラズマである、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項17】
前記切削工具および前記被削物が遷移金属元素を含む、請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項18】
炭素成分を含む切削油剤の存在下で用いられ、かつ被削物を切削加工可能な切削工具であって、
前記炭素成分の内部への浸入が抑制されたまたは前記炭素成分を内部に有しない、切削工具。
【請求項19】
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、切削工具を用いて被削物を切削加工するための方法であって、
切削加工時に、前記切削工具に向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出する、方法。
【請求項20】
前記切削工具と接する又は前記切削工具周縁の前記切削油剤と、前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方とが相互に接触した状態で、前記被削物に対する切削加工を行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により前記炭素成分を酸化させる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により、前記切削工具内への前記炭素成分の浸入を抑制する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により、前記被削物から切削される切削材と前記炭素成分の合金化を抑制する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工装置、切削工具および切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、切削工具等を用いてワーク等の被削物を切削加工する態様が知られている。かかる切削工具を用いた切削加工時には工具摩擦等を減じるために切削油剤が用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-66824号公報
【特許文献2】WO2016/084835号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本願発明者らは、切削油剤の存在下で切削工具を用いて被削物を切削加工する際に、切削油剤に含まれる炭素成分が切削工具内に入り込み、この炭素成分と切削工具の構成成分である遷移金属成分とが結びついて、脆い金属炭化物が形成され得ることによることを見出した。かかる脆い金属炭化物の形成により、切削工具の破損につながる虞がある。そのため、被削物を継続して好適に切削加工することが困難となり得る。
【0005】
そこで、本発明は、切削油剤の存在下において、被削物を継続して好適に切削加工することが可能な切削工具、および同切削工具を備えた切削加工装置、ならびに切削加工方法を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、被削物を切削加工可能な切削工具と、切削加工時の前記切削工具へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出可能な酸化剤噴出部とを備える、切削加工装置が供される。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
炭素成分を含む切削油剤の存在下で用いられ、かつ被削物を切削加工可能な切削工具であって、
前記炭素成分の内部への浸入が抑制されたまたは前記炭素成分を内部に有しない、切削工具が供される。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、切削工具を用いて被削物を切削加工するための方法であって、
切削加工時に、前記切削工具に向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出する、方法が供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、切削油剤の存在下において、被削物を継続して好適に切削加工することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。
図2図2は、構成刃先を模式的に示した断面図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。
図4図4は、プラズマ発生部を模式的に示した断面図である。
図5図5は、本発明の更に別の実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。
図6図6は、実施例1に関する付着物有り部分の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図7図7は、実施例1に関する付着物無し部分の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図8図8は、切削加工開始前における切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図9図9は、実施例2に関する切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図10図10は、比較例1に関する切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図11図11は、比較例1に関する別の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図12図12は、比較例2に関する切削工具の摩耗部分(領域001)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図13図13は、比較例2に関する切削工具の摩耗部分(領域003)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
図14図14は、比較例2に関する切削工具の非摩耗部分(領域002)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[切削加工装置]
以下、本発明の一実施形態に係る切削加工装置について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。まず、本発明の一実施形態に係る切削加工装置500の基本的構成について説明する。その後、本発明の特徴部分について説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る切削加工装置500は、被削物10を切削加工可能な切削工具20および被削物10を支持する支持部30を備える。切削工具20を用いて被削物10を切削加工することで、所定形状の被加工物を形成することができる。切削工具20を用いた切削加工時には工具摩擦等を減じるために切削油剤40が用いられ得る。
【0014】
被削物10としては、鉄と炭素以外の合金元素を一定量以上含む鋼(即ち合金鋼)であり得る。具体的には、被削物10は遷移金属元素の材料を含み得る。例えば、被削物10は、主成分の鉄と、副成分のクロム、ニッケル、銅、モリブデン、およびタングステンから成る群から選択される少なくとも1種の元素の材料を含み得る。
【0015】
一例として、被削物10は、主成分としての鉄と副成分としてのクロムを含むステンレス鋼、例えばSUS403、SUS430であり得る。別例としては、被削物10は、主成分としての鉄と副成分としてのクロム/ニッケルを含むステンレス鋼、例えばSUS304であり得る。また、被削物10は主成分の鉄と副成分の炭素を含む炭素鋼であり得る。
【0016】
切削工具20としては、超硬工具等を用いることができる。例えば、超硬エンドミルを用いることができる。切削工具20の構成材料は、WC(炭化タングステン)および/またはTiC(炭化チタン)、ならびにバインダーとしてのCo(コバルト)を含むことができる。
【0017】
支持部30としては、例えば卓上旋盤機を用いることができる。切削油剤40としては、少なくとも炭素成分を含むものを用いることができ、例えば不水溶性切削油剤を挙げることができる。
【0018】
(本発明の案出に至る契機)
ここで、切削油剤40の存在下で切削工具20を用いて被削物10を切削加工する場合、本願発明者らは、切削油剤40に含まれる炭素成分が切削工具20内に入り込み、この炭素成分と切削工具20の構成成分である遷移金属成分とが結びついて、脆い金属炭化物が形成され、それによって切削工具20が破損し得ることを見出した。
【0019】
(本発明の特徴部分)
本願発明者らは、上記の脆い金属炭化物の形成を抑制するための解決策について鋭意検討した。その結果、本願発明者らは、切削加工中において、切削工具20と接する又は切削工具20周縁の切削油剤40に含まれる炭素成分を意図的に酸化させるという技術的思想を案出するに至った。
【0020】
かかる技術的思想によれば、上記の炭素成分が酸化されて一酸化炭素等になり、ガス状形態に起因して一酸化炭素等を除去し得るため、遷移金属成分との化学的結合を抑制または回避することが可能である。これにより、炭素成分自体が切削工具20内へ浸入することが抑制され得る又は炭素成分自体が切削工具20内へ浸入しないようにすることができる。この事からも、本実施形態では、切削工具20は、内部への炭素成分の浸入が抑制されたまたは炭素成分を内部に有しない点に特徴を有する。
【0021】
以上により、脆い金属炭化物の形成が抑制または回避され得る。その結果、切削工具20の破損が抑制され得る。それ故、切削油剤40の存在下において、切削工具20を用いて被削物10を継続して好適に切削加工することが可能である。
【0022】
かかる技術的思想の実現のために、本発明の一実施形態に係る切削加工装置500は、炭素成分を含む切削油剤の存在下で、上記の切削工具20に加えて、切削油剤40中の炭素成分を酸化させるための酸化剤噴出部50を更に備える。
【0023】
酸化剤噴出部50は、切削加工時の切削工具20へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出可能なものである。即ち、切削油剤40の存在下での切削工具20を用いた被削物10の切削加工時に、切削工具20に向かって上記の少なくとも一方の酸化剤を噴出することが可能となる。
【0024】
本明細書において、蒸気状態の酸化剤および/またはプラズマ状態の酸化剤を総括して、活性状態の酸化剤と称することもできる。蒸気状態の酸化剤としては、水蒸気又は蒸気状態の過酸化水素を用いることができる。
【0025】
上記の酸化剤の噴出により、切削工具20と接する又は切削工具20周縁の切削油剤40と、上記の蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方とが相互に接触することが可能となる。即ち、切削加工時にこれらが相互に接触した状態で、被削物10に対する切削加工を行うことが可能となる。
【0026】
上記の少なくとも一方の酸化剤は水酸基ラジカルを発生させることができる。そのため、上記の少なくとも一方の酸化剤は炭素成分を酸化させるための炭素成分の酸化剤として機能することができる。即ち、切削加工時に、上記の少なくとも一方の酸化剤により炭素成分を酸化させる。
【0027】
炭素成分が酸化されるため、炭素成分自体の切削工具20内への浸入が抑制されるため、蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方は炭素成分の浸入抑制剤として機能することができる。即ち、切削加工時に、上記の少なくとも一方の酸化剤により、切削工具20内への炭素成分の浸入を抑制することができる。
【0028】
また、切削工具20を用いた被削物10の切削加工時において、主として被削物10の切削屑由来のいわゆる構成刃先600が切削工具20の先端21に付着することが知られている(図2参照)。切削屑は、遷移金属、例えば主成分としての鉄成分を含む被削物10に基づく。そのため、炭素成分を含む切削油40の存在下で被削物10の切削加工を行うと、切削屑に含まれる鉄成分と切削油剤に含まれる炭素成分とが結びついて、切削工具20内部で生じ得るものと同じ脆い金属炭化物が形成される可能性がある。
【0029】
この点につき、本実施形態では、切削加工時の切削工具20へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出させて、切削油剤に含まれる上記の炭素成分が酸化されて一酸化炭素等になり、ガス状形態に起因して一酸化炭素等を除去し得る。これにより、炭素成分自体が切削工具20に接触するまたはその周縁に位置する切削屑の構成材である遷移金属、例えば主成分としての鉄成分との化学的結合を抑制可能となる。
【0030】
この事は、蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が、被削物10から切削される切削屑又は切削材と炭素成分の合金化抑制剤として機能することを意味する。即ち、切削加工時に、上記の少なくとも一方の酸化剤により、被削物10から切削される切削材と炭素成分の合金化を抑制することが可能となる。
【0031】
その結果、構成刃先600が脆い金属炭化物から構成されにくくなるため、切削加工中に、一部が欠けた構成刃先600の切削工具20への繰り返し接触が抑制され得る。以上の事から、切削工具20内へ炭素成分自体の浸入抑制に加え、切削屑の構成材との炭素成分自体との結合抑制によって、切削工具20の破損が抑制され得る。具体的には、構成刃先600の一部が欠ける、即ち脱落すると、いわゆる逃げ面摩耗部分(すくい面の裏側に潜りこんだ摩耗部分)が生じ、構成刃先600の全てが欠ける、即ち全脱落すると、いわゆるすくい面が剥ぎ取られてクレーター摩耗が生じ得る。本発明の一実施形態では、切削工具20内へ炭素成分自体の浸入抑制および切削屑の構成材との炭素成分自体との結合抑制により、構成刃先の(一部/全部の)脱落を抑制可能となる。その結果として、上記の逃げ面摩耗、クレーター摩耗の発生を抑制可能となる。
【0032】
なお、従前の態様(特許文献1に対応)において、切削油を用いない前提下で、上記でいう蒸気状態の酸化剤に対応する圧縮空気を利用する技術的アプローチであるのに対して、本実施形態では、切削油剤を用いる前提下で同切削油剤に含まれる炭素成分に起因する問題を解決するための技術的アプローチである点で異なる。
【0033】
別の従前の態様(特許文献2に対応)において、切削加工中では、上記でいう切削油剤に対応するクーラントを供せず、かつ上記でいう蒸気状態の酸化剤に対応する加熱流体を切削工具に通常供しないことが前提であるのに対して、本実施形態では、切削油剤を用いる前提下で、切削加工時における同切削油剤に含まれる炭素成分に起因する問題を解決するための技術的アプローチである点で異なる。
【0034】
上記の切削加工時の切削工具20へと向かって蒸気状態および/またはプラズマ状態の酸化剤を噴出させるための具体的態様としては、例えば以下の3つの態様を挙げることができる。
【0035】
(1.酸化剤噴出部50:蒸気状態の酸化剤噴出部)
以下では、まず、酸化剤噴出部50が蒸気状態の酸化剤噴出部51である場合、即ち酸化剤噴出部50が蒸気状態の酸化剤噴出用である場合の一例について説明する(図1参照)。
【0036】
この場合、蒸気状態の酸化剤噴出部51は蒸気発生部60と連絡管70を介して接続されている。蒸気発生部60は蒸気状態の酸化剤を発生させるためのものである。連絡管70は、蒸気発生部60にて発生した蒸気状態の酸化剤を蒸気状態の酸化剤噴出部51へと供給可能に構成されている。連絡管70の途中には、蒸気状態の酸化剤の供給制御のためにバルブ80が設置されている。
【0037】
以上の構成により、蒸気状態の酸化剤噴出部51から切削加工時の切削工具20へと向かって蒸気状態の酸化剤を噴出可能となる。一例としては、切削工具20に対して噴出され得る蒸気状態の酸化剤の温度は、90度以上3000度以下、例えば約100度であることができる。
【0038】
(2.酸化剤噴出部50:蒸気状態の酸化剤噴出部+プラズマアシスト有り)
以下では、酸化剤噴出部50が蒸気状態の酸化剤噴出部51である場合、即ち酸化剤噴出部50が蒸気状態の酸化剤噴出用である場合の別例について説明する(図3参照)。
【0039】
図3は、本発明の別の実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。図4は、プラズマ発生部を模式的に示した断面図である。
【0040】
図3に示すように、酸化剤噴出部50が蒸気状態の酸化剤噴出部51である場合の別例としては、プラズマアシスト型を用いることができる。
【0041】
この場合、プラズマ発生部120が供される。プラズマ発生部120は、先端側にノズル121を有する。このノズル121は、銅から構成され、陽極ノズルとして機能する。また、ノズル121の中心には棒状のタングステンからなる陰極122が配置される。なお、ノズル121の溶融を防ぐために端部にはタングステン管123が挿入されている(図4参照)。
【0042】
プラズマ発生部120は直流電源部140と電気的に接続される。直流電源140としては、例えばTIG溶接機を用いることができる。プラズマ発生部120は、バルブ110付きの連絡管100を介してアルゴンガスタンク90と接続されている。
【0043】
連絡管100は、アルゴンガスタンク90より供給されたアルガンガスをプラズマ発生部120へと供給可能に構成されている。バルブ110は、連絡管100の内部を通るアルゴンガスの供給制御のために設置されている。
【0044】
プラズマ発生部120が上記構成を有することで、直流電源140を用いて陽極のノ
ズル121と陰極122との間でアーク放電を起こすことができ、このアーク放電によるプラズマを高速の作動ガスによって狭さくさせることで、ノズル121中心に開けられた小孔から噴出させることが可能となっている。
【0045】
なお、プラズマ発生時のノズル121の溶融を防ぐため、プラズマ発生時にエアコンプレッサー150によってノズル121を空冷することが好ましい。
【0046】
本実施形態では、プラズマ発生部120は、蒸気状態の酸化剤噴出部51から噴出される蒸気状態の酸化剤にプラズマを供給可能に構成される。即ち、本実施形態では、プラズマは被削物10に直接供されない。プラズマはアルゴンプラズマであり得る。
【0047】
また、蒸気状態の酸化剤噴出部51は、バルブ80付きの連絡管70を介して蒸気発生部60と接続されている。連絡管70は、蒸気発生部60にて発生した蒸気状態の酸化剤を蒸気状態の酸化剤噴出部51へと供給可能に構成されている。バルブ80は、連絡管70の内部を通る蒸気状態の酸化剤の供給制御のために設置されている。
【0048】
以上の構成により、蒸気状態の酸化剤噴出部51から噴出される蒸気状態の酸化剤にプラズマが供給されるため、蒸気状態の酸化剤の一部がプラズマ状態となり得る。これにより、一部がプラズマ状態の酸化剤と蒸気状態の酸化剤との混合型酸化剤が切削工具20に対して噴出され得る。一例としては、切削工具20に対して噴出され得る混合型酸化剤の温度は、90度以上3000度以下、例えば約500度であることができる。
【0049】
(3.酸化剤噴出部50:プラズマ状態の酸化剤噴出部)
以下では、酸化剤噴出部50がプラズマ状態の酸化剤噴出部52である場合、即ち酸化剤噴出部50がプラズマ状態の酸化剤噴出用である場合の一例について説明する(図1参照)。
【0050】
図5は、本発明の更に別の実施形態に係る切削加工装置を模式的に示した断面図である。
【0051】
この場合、プラズマ状態の酸化剤噴出部52は、プラズマ発生を要するためプラズマ発生部120Bのノズル121Bであることができる。プラズマ発生部120Bは、バルブ80付きの連絡管70を介して蒸気発生部60と接続されている。
【0052】
蒸気発生部60は蒸気状態の酸化剤を発生させるためのものである。蒸気状態の酸化剤としては、水蒸気が挙げられる。連絡管70は、蒸気発生部60にて発生した蒸気状態の酸化剤をプラズマ状態の酸化剤噴出部52へと供給可能に構成されている。
【0053】
プラズマ発生部120Bは直流電源部140と電気的に接続される。ノズル121Bは、上記のノズル121と同様に、銅から構成され、陽極ノズルとして機能する。また、ノズル121Bの中心には棒状のタングステンからなる陰極が配置される。なお、ノズル121Bの溶融を防ぐために端部にはタングステン管が挿入されている。
【0054】
プラズマ発生部120Bが上記構成を有することで、直流電源140を用いて陽極のノ
ズル121Bと陰極との間でアーク放電を起こすことができ、このアーク放電によるプラズマを高速の作動ガスによって狭さくさせることで、ノズル121B中心に開けられた小孔から噴出させることが可能となっている。
【0055】
本実施形態では、プラズマ発生の際に用いられるガスが蒸気状態の酸化剤(例えば水蒸気)であるため、プラズマは水プラズマ、アルコールによるプラズマであり得る。かかるプラズマは水酸基ラジカルを多量に発生させることができる。なお、上記同様に、プラズマ発生時のノズル121Bの溶融を防ぐため、プラズマ発生時にエアコンプレッサー150によってノズル121を空冷することが好ましい。
【0056】
以上の構成により、プラズマ状態の酸化剤噴出部52から切削加工時の切削工具20へと向かってプラズマ状態の酸化剤を噴出可能となる。
【0057】
ノズルから噴出開始時のプラズマ状態の酸化剤自体は非常に高温(約10万度)であるため、切削工具20からのプラズマ状態の酸化剤噴出部52の位置を調整することが好ましい。これにより、一例として、切削工具20に対して噴出され得るプラズマ状態の酸化剤の温度を、30度以上20000度以下、例えば約500度とすることができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。従って、本発明はこれに限定されず、種々の改変がなされ得ることを当業者は容易に理解されよう。
【実施例0059】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0060】
実施例1
下記の切削加工装置を用いて、被削物の切削加工を行った。
【0061】
(条件)
●被削物10:SUS304
(Ni:0.08%、Cr:0.18%)の丸棒(φ16 mm)
●切削工具20:超硬工具(株)東洋アソシエイツ製、製品番号66716
(切削条件)送り速度 0.5mm/s、切り込み量0.2mm、材料の周速度 39.8~40.9m/min(ディジタルハンディタコメータ (小野測器 HT-3200により測定)、切削時間 50s
●支持部30:卓上旋盤 (NEW ALTO、YD2500、株式会社アルト製)
●切削油剤40:不水溶性切削油剤(ユシロンカットアーバス KZ522)
●酸化剤噴出部50:ノズル出口の温度が約100度である水蒸気の噴射
●蒸気発生部60:耐圧タンク内の水を加熱して、 圧力 1.0~2.0 MPa、温度 190度の水蒸気を生成。耐圧タンクであるポータブルアクター、圧力計、3つのバルブから構成され、高温水蒸気の開閉、流量調整が可能。
【0062】
(手順)
まず、卓上旋盤にSUS304(Ni:0.08%、Cr:0.18%)の丸棒(φ16 mm)を取付け、切削油剤の存在下で、洗浄された新品の超硬工具で切削加工を行った。工具使用前には、アセトンを用いて10分間、メタノールを用いて10分間、計20分間超音波洗浄した。
【0063】
切削加工時には、超硬工具に水蒸気を噴射した。具体的には、ノズルを通してノズル出口の温度が約100度である水蒸気を10~20L/min の速度で超硬工具に噴射した。
【0064】
切削加工後、走査電子顕微鏡(SEM、JEOL、JSM-6060)およびエネルギー分散型エックス線分析装置(EDS)を用いて、切削加工後の工具表面の形態観察および成分分析を行った。
【0065】
(測定結果)
図6に、実施例1に関する付着物有り部分の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図7に、実施例1に関する付着物無し部分の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図8に、切削加工開始前における切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
【0066】
図6に示す超硬工具表面への付着物のEDS分析結果から、付着物の主成分はFe、CrおよびCであることがわかった。図7に示す付着物無し部分および図8に示す切削加工前のEDS分析では、Fe、CrおよびC成分はほとんど観察されなかった。被削物自体の主成分はFeおよびCrであることから、C成分が切削油剤由来であり得ることが示唆された。
【0067】
また、図6および図7より、同じ切削工具において、付着物無し部分と比べて、付着物有り部分では、C成分およびO成分の割合が少なくなっていると解された。この事から、付着物有り部分では、付着物無し部分と比べて、切削油剤由来の炭素成分が酸化されていることが示唆された。
【0068】
切削油剤の存在下でSUS304の丸棒を切削加工した超硬工具表面には、摩耗(すくい面摩耗および逃げ面摩耗)がより少ないことが分かった。この事から、超硬工具の破損がより少ないことが分かった。また、切削加工した超硬工具表面への付着物がより少ないことが分かった、この事から、構成刃先の形成がより少ないことが分かった。
【0069】
また、切削加工時に、切削油剤と超硬工具に向かって供された水蒸気とが混合されて、乳化物が生成されていることが分かった。この乳化物は切削加工時のみ形成される瞬間的な乳化物であり、乳化物自体を取り出して時間経過すると、水と切削油に分離することが分かった。
【0070】
実施例2
実施例2は、実施例1と比べて、切削油剤の存在下で用いる水蒸気にアルゴンプラズマを噴射した点で異なる。アルゴンプラズマについては、プラズマ発生部直流電源(定格出力200V)を用いて60Aで発生させ、15L/minで水蒸気に噴射した。プラズマ発生部直流電源としては、TIG溶接機(MT-200WA、マイト工業株式会社製)を用いた。その他条件および手順については、実施例1と基本的に同様であるため、説明の重複を避けるために記載を省略または割愛する。
【0071】
(測定結果)
図9に、実施例2に関する切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図9より、工具の表面に付着物があることが分かった。図8に示す切削加工前のEDS分析と比べて、図9に示すEDS分析結果では、C成分の割合が少なくなっていると解された。この事から、切削油剤の存在下で水蒸気とアルゴンプラズマを併用する場合、切削油剤由来の炭素成分が酸化されていることが示唆された。
【0072】
比較例1
比較例1は、実施例1と比べて、切削油剤の存在下で超硬工具に対して水蒸気を噴射することなく、SUS304の丸棒の切削加工を行った点で異なる。その他条件および手順については、実施例1と同様であるため、説明の重複を避けるために記載を省略または割愛する。
【0073】
(測定結果)
図10に、比較例1に関する切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。また、図11に、比較例1に関する別の切削工具のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図10および図11より、切削工具の表面に付着物があることが分かった。また、この付着物の主たる成分として、Fe成分、Cr成分およびC成分が含まれることが分かった。また、図11では、切削油剤の存在下で切削加工した工具表面には、逃げ面摩耗があることが分かった。
【0074】
ここで、付着物(被削材に相当)の構成成分である「遷移金属成分」と切削油剤由来の「炭素成分」とは結びつきやすく、脆い金属炭化物が形成され得る。以上の事から、水蒸気を噴射することなく切削加工を行う場合、脆い金属炭化物から構成される構成刃先が形成され得ることが示唆された。
【0075】
比較例2
比較例2では、実施例1と比べて、切削油剤の存在下で超硬工具(AlTiNコーティング付き)に対して水蒸気を噴射することなく、ハステロイの丸棒に対して切削加工を行った。切削加工後、走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型エックス線分析装置(EDS)を用いて、ハステロイ加工後の工具表面の摩耗部分と非摩耗部分の形態観察および成分分析を行った。
【0076】
(測定結果)
図12に、比較例2に関する切削工具の摩耗部分(領域001)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図13に、比較例2に関する切削工具の摩耗部分(領域003)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。図14に、比較例2に関する切削工具の非摩耗部分(領域002)のSEM画像およびEDS元素分析結果を示す。
【0077】
切削工具の摩耗部分(図12および図13)と非摩耗部分(図14)のEDS分析結果の比較により、前者の摩耗部分では、被削材のハステロイの構成成分(主成分:ニッケル)と切削油剤の構成成分である炭素成分の割合が高くなっているのに対して、後者の非摩耗部分では、切削工具のコーティングであるAlTiNの成分の割合が高くなっていることが分かった。
【0078】
この事から、切削加工の実施により工具の摩耗部分において、切削油剤の炭素成分の存在が確認された。また、非摩耗部分と比べて、摩耗部分では、工具表面のコーティングが少なく、工具の構成成分(遷移金属元素:タングステン、コバルト等)が露出しやすい状態となっていることが分かった。
【0079】
ここで、工具の構成成分である「遷移金属成分」と切削油剤に含まれる「炭素成分」とは結びつきやすく、脆い金属炭化物が形成され得る。以上の事から、工具の摩耗部分では、脆い金属炭化物が形成され、それによって工具の破損が発生しうることが分かった。
【0080】
[評価]
以上の事から、切削油存在下で、蒸気状態の酸化剤または蒸気状態およびプラズマ状態の混合型酸化剤を切削工具に噴出させながら、切削工具を用いて被削物を切削加工すると、切削油剤に含まれる炭素成分が酸化され、工具破損の原因となる工具摩耗に直接つながる同炭素成分と工具材料の遷移金属成分との化学的結合を抑制することが可能となることが分かった。
【0081】
また、工具破損に間接的につながる、同炭素成分と被削物由来の切削屑材の遷移金属成分との化学的結合物からなる構成刃先の形成を抑制することが可能となることが分かった。更に、切削油剤の潤滑効果により、構成刃先自体の形成を抑制することが可能となることが分かった。
【0082】
上記の3つの効果は、切削加工時にのみ形成される上記の乳化物(実施例1参照)が、切削加工時にて切削油剤由来の潤滑作用と水蒸気由来の水酸基ラジカルの酸化作用を合わせもったものであることによると考えられる。
【0083】
なお、工具への被削材の付着抑制および工具摩耗抑制は、被削物を溶かさない程度の温度で、上記の蒸気状態の酸化剤または蒸気状態およびプラズマ状態の混合型酸化剤を工具に供することで実現可能となり得ると考えられる。また、実施例1および実施例2の態様は一例であり、これらに限定されることなく、プラズマ状態の酸化剤(例えば水プラズマ)を切削加工時の切削工具へと向かって噴出する態様を採ることも可能であり得る。
【0084】
本発明の態様は、以下のとおりである。
<1>
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、被削物を切削加工可能な切削工具と、切削加工時の前記切削工具へと向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出可能な酸化剤噴出部とを備える、切削加工装置。
<2>
前記切削工具と接する又は前記切削工具周縁の前記切削油剤と、前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方とが相互に接触可能となっている、<1>に記載の切削加工装置。
<3>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が前記炭素成分の酸化剤である、<1>又は<2>に記載の切削加工装置。
<4>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が、前記切削工具内への前記炭素成分の浸入抑制剤である、<1>~<3>のいずれかに記載の切削加工装置。
<5>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方が、前記被削物から切削される切削材と前記炭素成分の合金化抑制剤である、<1>~<4>のいずれかに記載の切削加工装置。
<6>
前記酸化剤噴出部は蒸気状態の酸化剤噴出用である、<1>~<5>のいずれかに記載の切削加工装置。
<7>
前記蒸気状態の酸化剤噴出部から前記切削工具に対して90度以上3000度以下の蒸気状態の酸化剤が噴出される、<6>に記載の切削加工装置。
<8>
プラズマ発生部を更に備え、前記酸化剤噴出部は蒸気状態の酸化剤噴出用であり、
前記プラズマ発生部は、前記酸化剤噴出部から噴出される蒸気状態の酸化剤にプラズマを供給可能に構成される、<6>又は<7>に記載の切削加工装置。
<9>
前記プラズマの供給により、前記蒸気状態の酸化剤の一部がプラズマ状態となり、前記一部がプラズマ状態の酸化剤と前記蒸気状態の酸化剤との混合型酸化剤が前記切削工具に対して噴出される、<8>に記載の切削加工装置。
<10>
前記プラズマがアルゴンプラズマである、<8>又は<9>に記載の切削加工装置。
<11>
前記切削工具に対して90度以上3000度以下の前記混合型酸化剤が噴出される、<9>又は<10>に記載の切削加工装置。
<12>
前記酸化剤噴出部は、蒸気状態の酸化剤を発生させる蒸気発生部と接続されている、<6>~<11>のいずれかに記載の切削加工装置。
<13>
前記酸化剤噴出部はプラズマ状態の酸化剤噴出用である、<1>~<12>のいずれかに記載の切削加工装置。
<14>
前記切削工具からの前記プラズマ状態の酸化剤噴出部の位置調整が可能となっており、それにより、前記切削工具に対して30度以上20000度以下の前記プラズマ状態の酸化剤が噴出可能となっている、<13>に記載の切削加工装置。
<15>
前記蒸気状態の酸化剤が、水蒸気又は蒸気状態の過酸化水素である、<1>~<14>のいずれかに記載の切削加工装置。
<16>
前記プラズマ状態の酸化剤が、水プラズマである、<1>~<15>のいずれかに記載の切削加工装置。
<17>
前記切削工具および前記被削物が遷移金属元素を含む、<1>~<16>のいずれかに記載の切削加工装置。
<18>
炭素成分を含む切削油剤の存在下で用いられ、かつ被削物を切削加工可能な切削工具であって、
前記炭素成分の内部への浸入が抑制されたまたは前記炭素成分を内部に有しない、切削工具。
<19>
炭素成分を含む切削油剤の存在下で、切削工具を用いて被削物を切削加工するための方法であって、
切削加工時に、前記切削工具に向かって蒸気状態の酸化剤およびプラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方を噴出する、方法。
<20>
前記切削工具と接する又は前記切削工具周縁の前記切削油剤と、前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方とが相互に接触した状態で、前記被削物に対する切削加工を行う、<19>に記載の方法。
<21>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により前記炭素成分を酸化させる、<19>又は<20>に記載の方法。
<22>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により、前記切削工具内への前記炭素成分の浸入を抑制する、<19>~<21>のいずれかに記載の方法。
<23>
前記蒸気状態の酸化剤および前記プラズマ状態の酸化剤の少なくとも一方により、前記被削物から切削される切削材と前記炭素成分の合金化を抑制する、<19>~<22>のいずれかに記載の方法。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の一実施形態に係る切削加工装置については、切削油剤の存在下にて切削工具を用いて被削物を継続的に好適に切削加工するために用いることが可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 被削物
20 切削工具
30 支持部
40 切削油剤
50 酸化剤噴出部
51 蒸気状態の酸化剤
52 プラズマ状態の酸化剤
60 蒸気発生部
70 連絡管
80 バルブ
90 アルゴンガスタンク
100 連絡管
110 バルブ
120、120B プラズマ発生部
121、121B ノズル
140 直流電源
150 エアコンプレッサーバルブ
500、500A、500B 切削加工装置
600 構成刃先
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14