(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021367
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】回転機械及び電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240208BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20240208BHJP
H02K 5/08 20060101ALI20240208BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240208BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20240208BHJP
F04B 39/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K5/20
H02K5/08 A
F04D29/58 P
F04B39/00 106C
F04B39/06 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124150
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
【テーマコード(参考)】
3H003
3H130
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
3H003AA06
3H003AC02
3H003BE06
3H003CE03
3H003CF04
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130AC11
3H130BA33A
3H130BA33G
3H130BA33H
3H130BA33J
3H130BA98A
3H130BA98J
3H130DD01X
3H130DG01Z
3H130EA06A
3H130EA06J
3H130EA07A
3H130EA07J
3H130EC17H
5H605AA01
5H605AA02
5H605BB07
5H605CC01
5H605DD13
5H609BB03
5H609BB14
5H609BB19
5H609PP05
5H609PP09
5H609QQ04
5H609QQ11
5H609RR37
5H609RR40
(57)【要約】
【課題】樹脂モールドにおける樹脂の使用量を抑えてコストの低廉化を図りつつ、コイルの冷却効果を高めた回転機械及びそのような回転機械を備えた電動圧縮機を提供する。
【解決手段】モータハウジング10は、ステータコア33が固定されたコア外周対向部41と、第2コイルエンド34bの外周に対向する第2エンド外周対向部43とを有する。第2コイルエンド34bは伝熱性の第2樹脂モールド62で覆われている。モータハウジング10の外側には、ステータ31を冷却するための冷却流路80をモータハウジング10との間に形成する外側ハウジング16が設けられている。第2エンド外周対向部43におけるモータハウジング10の内周面10fに第2樹脂モールド62の外周面62aが当接し、第2エンド外周対向部43はコア外周対向部41よりも内径が小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジング内に設けられ、駆動軸心周りに回転可能な駆動軸と、
前記モータハウジング内に設けられ、前記駆動軸を回転させる電動モータと、を備えた回転機械であって、
前記電動モータは、ステータと、前記ステータ内に配置されるとともに前記駆動軸が固定されたロータと、を有し、
前記ステータは、前記モータハウジングの内周面に固定された筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、を有し、
前記コイルは、前記ステータコアの一方側に突出する第1コイルエンドと、前記ステータコアの他方側に突出する第2コイルエンドと、を有し、
前記モータハウジングは、前記ステータコアが固定されるコア外周対向部と、前記第1コイルエンドの外周に対向する第1エンド外周対向部と、前記第2コイルエンドの外周に対向する第2エンド外周対向部と、を有し、
前記回転機械は、前記第1コイルエンド及び前記第2コイルエンドを覆うとともに、前記第1エンド外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と当接する伝熱性の樹脂モールドを有し、
前記ステータを冷却するための冷却液が供給される冷却流路が、前記第1エンド外周対向部、前記コア外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と、前記モータハウジングの外側に設けられた外側ハウジングとの間に形成され、
前記第2エンド外周対向部は、前記コア外周対向部よりも内径が小さいことを特徴する回転機械。
【請求項2】
前記第2エンド外周対向部における前記冷却流路の内周端は、前記ステータコアの外周端よりも前記ステータコアの内周側に位置している請求項1記載の回転機械。
【請求項3】
前記冷却流路は、前記コア外周対向部の領域及び前記第2エンド外周対向部の領域に亘って、前記駆動軸心方向に沿って螺旋状に延びて設けられ、
前記第2エンド外周対向部における前記冷却流路の前記駆動軸心方向の幅は、前記コア外周対向部における前記冷却流路の前記駆動軸心方向の幅よりも小さくされている請求項2記載の回転機械。
【請求項4】
前記モータハウジングは、前記第2コイルエンドと前記駆動軸心方向に対向する第2エンド軸心方向対向部をさらに有し、
前記外側ハウジングは、前記第2エンド軸心方向対向部との間にも前記冷却流路を形成し、
前記第2エンド軸心方向対向部と前記樹脂モールドとが当接している請求項2記載の回転機械。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の回転機械を備える電動圧縮機であって、
前記モータハウジング及び前記外側ハウジングを含むハウジングを備え、
前記駆動軸は、前記ロータを間に挟んで前記駆動軸心の一方側に延びる一端部及び他方側に延びる他端部を有し、
前記第1コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の一端部側に配置され、
前記第2コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の他端部側に配置され、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記一端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記ハウジング内に吸入された流体を圧縮する第1圧縮部と、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記他端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記第1圧縮部で圧縮された流体をさらに圧縮する第2圧縮部と、を備えることを特徴とする電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転機械及び電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の回転機械の一例が開示されている。この回転機械は、筒状のモータハウジングと、モータハウジング内に設けられ、駆動軸心周りに回転可能な駆動軸と、モータハウジング内に設けられ、駆動軸を回転させる電動モータとを備えている。
【0003】
電動モータは、ステータと、ステータ内に配置されるとともに駆動軸が固定されたロータとを有している。
【0004】
ステータは、ステータコアと、コイルとを有している。ステータコアは、モータハウジングの内周面に固定され、駆動軸心方向に延びる筒状をなしている。コイルは、ステータコアに巻回され、ステータコアから駆動軸心方向に突出するコイルエンドを有している。
【0005】
モータハウジングは、ステータコアが固定されるコア外周対向部と、コイルエンドの外周に対向するエンド外周対向部とを有している。
【0006】
この回転機械は、筒状の外側ハウジングをさらに備えている。外側ハウジングは、モータハウジングの外周側に設けられ、ステータを冷却するための冷却液が供給される冷却流路をモータハウジングとの間に形成する。冷却流路は、コア外周対向部の領域及びエンド外周対向部の領域に亘って、駆動軸心方向に沿って螺旋状に延びて設けられている。
【0007】
この回転機械では、コイルエンドを効率的に冷却すべく、コア外周対向部における冷却流路の相当直径よりもエンド外周対向部における冷却流路の相当直径を小さく設定している。これにより、エンド外周対向部における冷却流路の熱伝達率を向上させて、コイルエンドを効率的に冷却するようにしている。
【0008】
また、特許文献2に開示された他の従来の回転機械では、コイルと共にコイルとステータコアとの間隙を伝熱性の樹脂でモールドしている。コイルで発生した熱を樹脂モールドを介してステータコアに伝え、ステータコアを固定するモータハウジングの外周に設けられた放熱フィンから、ステータコアの熱を空気中に放散する。これにより、コイルの冷却効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2019-201521号公報
【特許文献2】実開平03-40860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に開示の回転機械では、コイルエンドがモータハウジングに当接していないので、エンド外周対向部における冷却流路の熱伝達率を向上させたとしても、コイルエンドの冷却効果を高めることには限界がある。
【0011】
また、特許文献2に開示の回転機械では、コイルから樹脂モールドに伝わった熱をステータコアを介してモータハウジングに伝えているので、ステータコアを介する分だけ伝熱効率が悪い。伝熱効率を高めてコイルエンドの冷却効果をより高める上では、コイルから樹脂モールドに伝わった熱を直接モータハウジングに伝える方が有利である。しかしそのためには、樹脂モールドをモータハウジングに当接させる必要があり、その場合高価な樹脂材料の使用量が多くなり、製造コストの高騰化を招く。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、樹脂モールドにおける樹脂の使用量を抑えてコストの低廉化を図りつつ、コイルの冷却効果を高めた回転機械及びそのような回転機械を備えた電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の回転機械は、筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジング内に設けられ、駆動軸心周りに回転可能な駆動軸と、
前記モータハウジング内に設けられ、前記駆動軸を回転させる電動モータと、を備えた回転機械であって、
前記電動モータは、ステータと、前記ステータ内に配置されるとともに前記駆動軸が固定されたロータと、を有し、
前記ステータは、前記モータハウジングの内周面に固定された筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、を有し、
前記コイルは、前記ステータコアの一方側に突出する第1コイルエンドと、前記ステータコアの他方側に突出する第2コイルエンドと、を有し、
前記モータハウジングは、前記ステータコアが固定されるコア外周対向部と、前記第1コイルエンドの外周に対向する第1エンド外周対向部と、前記第2コイルエンドの外周に対向する第2エンド外周対向部と、を有し、
前記回転機械は、前記第1コイルエンド及び前記第2コイルエンドを覆うとともに、前記第1エンド外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と当接する伝熱性の樹脂モールドを有し、
前記ステータを冷却するための冷却液が供給される冷却流路が、前記第1エンド外周対向部、前記コア外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と、前記モータハウジングの外側に設けられた外側ハウジングとの間に形成され、
前記第2エンド外周対向部は、前記コア外周対向部よりも内径が小さいことを特徴する。
【0014】
本発明の回転機械では、第1コイルエンドを覆う伝熱性の樹脂モールドがモータハウジングの第1エンド外周対向部に当接している。同様に、第2コイルエンドを覆う伝熱性の樹脂モールドがモータハウジングの第2エンド外周対向部に当接している。このため、第1コイルエンドから樹脂モールドに伝わった熱は、ステータコアを介することなく直接モータハウジングに伝わる。同様に、第2コイルエンドから樹脂モールドに伝わった熱は、ステータコアを介することなく直接モータハウジングに伝わる。また、ステータコアの熱はステータコアからモータハウジングに直接伝わる。モータハウジングに伝わった熱は、第1エンド外周対向部、コア外周対向部及び第2エンド外周対向部における冷却流路を流れる冷却液に奪われる。こうして、冷却流路を流れる冷却液によってステータを効果的に冷却することができる。
【0015】
そして、この回転機械では、モータハウジングの第2エンド外周対向部の内径がコア外周対向部の内径よりも小さくされている。そして、この第2エンド外周対向部におけるモータハウジングの内周面に、第2コイルエンドを覆う樹脂モールドの外周面が当接している。
【0016】
この場合、第2エンド外周対向部の内径が小さくなった分だけ、第2コイルエンドと第2エンド外周対向部との間の樹脂モールドの樹脂の使用量を減少させることができる。
【0017】
また、第2エンド外周対向部の内径が小さくなった分だけ、樹脂モールドにおける第2コイルエンドからモータハウジングへの伝熱距離が短くなる。第2コイルエンドと第2エンド外周対向部との間の樹脂モールドにおける伝熱距離が短くなれば、第2コイルエンドから樹脂モールドを介してモータハウジングの第2エンド外周対向部に熱が伝わり易くなるので、第2コイルエンドの冷却効果が高まる。第2コイルエンドの冷却効果が高まれば、コイル全体の冷却効果も高まる。
【0018】
したがって、本発明の回転機械では、樹脂モールドにおける樹脂の使用量を減少させてコストの低廉化を図りつつ、コイルの冷却効果を高めることができる。
【0019】
第2エンド外周対向部における冷却流路の内周端は、ステータコアの外周端よりもステータコアの内周側に位置していることが好ましい。
【0020】
この場合、冷却流路と、第2コイルエンドと第2エンド外周対向部との間の樹脂モールドとの距離が短くなるので、第2コイルエンドの冷却効果をより高めることができる。
【0021】
冷却流路は、コア外周対向部の領域及び第2エンド外周対向部の領域に亘って、駆動軸心方向に沿って螺旋状に延びて設けられていることが好ましい。そして、第2エンド外周対向部における冷却流路の駆動軸心方向の幅は、コア外周対向部における冷却流路の駆動軸心方向の幅よりも小さくされていることが好ましい。
【0022】
第2エンド外周対向部における冷却流路の内周端がステータコアの外周端よりステータコアの内周側に位置する場合、第2エンド外周対向部における冷却流路は、コア外周対向部における冷却流路よりも、駆動軸心方向に対して直角な方向である軸心直角方向における冷却流路の長さが長くなり得る。冷却流路の軸心直角方向における長さが長くなると、その分だけ冷却流路の流路断面積が増大する。冷却流路の流路断面積が増大すれば、冷却流路を流れる冷却液の流速が低下して、冷却液による冷却効果が低下する。このため、第2エンド外周対向部における冷却流路の内周端がステータコアの外周端よりステータコアの内周側に位置する場合、第2エンド外周対向部における冷却流路を流れる冷却液による冷却効果が、コア外周対向部における冷却流路を流れる冷却液による冷却効果よりも低下し得る。
【0023】
この点、冷却流路の駆動軸心方向の幅が小さくされていれば、その分だけ冷却流路の流路断面積が減少する。このため、第2エンド外周対向部における冷却流路の内周端がステータコアの外周端より内周側に位置する場合であっても、第2エンド外周対向部における冷却流路の駆動軸心方向の幅が、コア外周対向部における冷却流路の駆動軸心方向の幅よりも小さくされていれば、流路断面積の増大によって冷却効果が低下してしまうことを抑えることができる。
【0024】
モータハウジングは、第2コイルエンドと駆動軸心方向に対向する第2エンド軸心方向対向部をさらに有することが好ましい。そして、外側ハウジングは、第2エンド軸心方向対向部との間にも冷却流路を形成することが好ましい。また、第2エンド軸心方向対向部と樹脂モールドとが当接していることが好ましい。
【0025】
この場合、第2コイルエンドを覆う樹脂モールドの駆動軸心方向の端面が第2エンド軸心方向対向部におけるモータハウジングの第2コイルエンド側の端面に当接している。このため、第2コイルエンドから樹脂モールドに伝わった熱が駆動軸心方向にも移動して直接モータハウジングに伝わる。モータハウジングに伝わった熱は、第2エンド軸心方向対向部における冷却流路を流れる冷却液に奪われる。このため、第2コイルエンドをより一層効果的に冷却することができる。
【0026】
本発明の電動圧縮機は、本発明の回転機械を備え、
前記モータハウジング及び前記外側ハウジングを含むハウジングを備え、
前記駆動軸は、前記ロータを間に挟んで前記駆動軸心の一方側に延びる一端部及び他方側に延びる他端部を有し、
前記第1コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の一端部側に配置され、
前記第2コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の他端部側に配置され、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記一端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記ハウジング内に吸入された流体を圧縮する第1圧縮部と、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記他端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記第1圧縮部で圧縮された流体をさらに圧縮する第2圧縮部と、を備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の電動圧縮機では、第1圧縮部で圧縮された流体が第2圧縮機でさらに圧縮される。このため、ハウジング内において、第1圧縮部よりも第2圧縮部の方が高温になる。その結果、駆動軸心方向において、第1圧縮部側に位置する第1コイルエンドよりも、第2圧縮部側に位置する第2コイルエンドの方が高温になり易い。この点、この電動圧縮機では、第2コイルエンドを効果的に冷却することができるため、コイルを効果的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の回転機械は、樹脂モールドにおける樹脂の使用量を減少させてコストの低廉化を図りつつ、コイルの冷却効果を高めることができる。
【0029】
本発明の電動圧縮機は、本発明の回転機械を備えるので、樹脂モールドにおける樹脂の使用量を減少させてコストの低廉化を図りつつ、コイルの冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例の回転機械を備えたターボ式流体機械の断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の回転機械を備えたターボ式流体機械に係り、要部を拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例のターボ式流体機械は、本発明の電動圧縮機の具体的態様の一例である。このターボ式流体機械は、本発明の回転機械の具体的態様の一例である回転機械100を備えている。このターボ式流体機械は、燃料電池車に搭載されており、燃料電池スタックと接続している。なお、燃料電池車及び燃料電池スタックの図示は省略する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、実施例のターボ式流体機械は、ハウジング1と、電動モータ3と、駆動軸5と、第1インペラ7と、第2インペラ9と、を備えている。
【0033】
本実施例では、
図1及び
図2に示す実線矢印によって、ターボ式流体機械の前後方向を規定している。この前後方向は、本発明における「駆動軸心方向」の一例である。なお、ターボ式流体機械は、搭載される車両に応じて、自己の姿勢を適宜変更可能である。
【0034】
ハウジング1はアルミニウム合金製である。
図1に示すように、ハウジング1は、モータハウジング10と、第1プレート11と、第2プレート12と、第3プレート13と、第1コンプレッサハウジング14と、第2コンプレッサハウジング15と、外側ハウジング16とからなる。
【0035】
モータハウジング10は、端壁10aと、第1周壁10bと、第2周壁10cとを有している。モータハウジング10は、アルミニウム合金製とされている。
【0036】
端壁10aは、モータハウジング10の後端に位置しており、モータハウジング10の径方向に延びている。この径方向は、後述する駆動軸心O方向に対して直角な方向である軸心直角方向に一致する。
【0037】
端壁10aは、前方に面する第1端面101と、第1端面101の反対側に位置して後方に面する第2端面102とを有している。第2端面102は、モータハウジング10の後端面を構成している。
【0038】
第1周壁10bは、端壁10aと一体をなしており、端壁10aから前方に向かって筒状に延びている。第2周壁10cは、第1周壁10bと一体をなしており、第1周壁10bから前方に向かって筒状に延びている。第1周壁10bは、第2周壁10cよりも小径に形成されている。第2周壁10cは、前方が開口している。これらの端壁10a、第1周壁10b及び第2周壁10cにより、モータハウジング10は有底の筒状をなしている。また、第2周壁10cの前端にはフランジ部10dが形成されている。フランジ部10dは、第2周壁10cの外周面よりもモータハウジング10の径方向に突出している。
【0039】
ここに、第1周壁10bの内径は、第2周壁10cの内径、すなわち後述するステータコア33の外径よりも小さくされている。
【0040】
外側ハウジング16は、外側ハウジング端壁16aと、外側ハウジング周壁16bとを有している。外側ハウジング16は、鉄鋼製とされている。
【0041】
外側ハウジング端壁16aは、モータハウジング10よりも後方に位置しており、モータハウジング10の径方向に延びている。外側ハウジング端壁16aは、前方に面する第1外側ハウジング端面161と、第1外側ハウジング端面161の反対側に位置して後方に面する第2外側ハウジング端面162とを有している。第2外側ハウジング端面162は、外側ハウジング16の後端面を構成している。
【0042】
外側ハウジング周壁16bは、外側ハウジング端壁16aと一体をなしており、外側ハウジング端壁16aから前方に向かって一定の内径で筒状に延びている。外側ハウジング周壁16bは、前方が開口している。これらの外側ハウジング端壁16a及び外側ハウジング周壁16bにより、外側ハウジング16は有底の筒状をなしている。
【0043】
第1プレート11はモータハウジング10の前方に位置している。第1プレート11は、前方に位置する第1前面11aと、後方に位置する第1後面11bとを有している。第1プレート11は、第1後面11bをフランジ部10d及び外側ハウジング16と当接させつつ、フランジ部10d及び外側ハウジング16と連結されている。これにより、第1プレート11は、第2周壁10c及び外側ハウジング16の開口を閉塞している。第2周壁10cの前端面と第1プレート11の第1後面11bとの間は、Oリング20により封止されている。こうして、端壁10a、第1周壁10b、第2周壁10c及び第1後面11bによって、モータハウジング10の内部にモータ室30が区画されている。
【0044】
第1プレート11には、第1ボス部11cと、第1凹部11dと、第1軸孔11eとが形成されている。第1ボス部11cは、第1後面11bから後方に向かって円筒状に突出しており、モータ室30内に延びている。第1ボス部11cの内部には、第1ラジアル軸受21aが設けられている。
【0045】
第1凹部11dは、第1前面11aから後方に向かって凹設されている。第1凹部11dの内部には、第1スラスト軸受23a及び第2スラスト軸受23bが設けられている。第1軸孔11eは、第1プレート11の中央部に位置しており、第1プレート11を前後方向に貫通している。これにより、第1軸孔11eは、前端で第1凹部11dと連通しており、後端で第1ボス部11cと連通している。これらの第1ボス部11c、第1凹部11d及び第1軸孔11eは、互いに同軸をなしている。
【0046】
また、外側ハウジング16の外側ハウジング端壁16aには、第1外側ハウジングボス部16cと、第2外側ハウジングボス部16dと、第2軸孔16eとが形成されている。第1外側ハウジングボス部16cは、第1外側ハウジング端面161の内周端から前方に向かって円筒状に突出しており、モータ室30内に延びている。第2外側ハウジングボス部16dは、第1外側ハウジングボス部16cからさらに前方に向かって円筒状に突出している。第2外側ハウジングボス部16dは、第1外側ハウジングボス部16cよりも小径に形成されている。第2外側ハウジングボス部16dの内部には、第2ラジアル軸受21bが設けられている。第2軸孔16eは、外側ハウジング端壁16aの中央部に位置しており、外側ハウジング端壁16aを前後方向に貫通している。これにより、第2軸孔16eは、前端で第2外側ハウジングボス部16dと連通している。第1外側ハウジングボス部16c、第2外側ハウジングボス部16d及び第2軸孔16eは、第1ボス部11c、第1凹部11d及び第1軸孔11eと同軸をなしている。
【0047】
第2プレート12は第1プレート11の前方に位置している。第2プレート12は、前方に位置する第2前面12aと、後方に位置する第2後面12bとを有している。第2プレート12は、第2後面12bを第1前面11aに当接させつつ、第1プレート11と連結されている。
【0048】
第2プレート12には、第2凹部12cと第3軸孔12dとが形成されている。第2凹部12cは、第2前面12aから後方に向かって凹設されている。第2凹部12cは第1凹部11dよりも小径に形成されている。第2凹部12cの内部には、第1シール部材25aが設けられている。第3軸孔12dは、第2プレート12の中央部に位置しており、第2プレート12を前後方向に貫通している。これにより、第3軸孔12dは、前端で第2凹部12cと連通しており、後端で第1凹部11dと連通している。第2凹部12c及び第3軸孔12dは、第1ボス部11c、第1凹部11d及び第1軸孔11eと同軸をなしている。
【0049】
第3プレート13は外側ハウジング16の後方に位置している。第3プレート13は、前方に位置する第3前面13aと、後方に位置する第3後面13bとを有している。第3プレート13は、第3前面13aを外側ハウジング端壁16aの第2外側ハウジング端面162に当接させつつ、外側ハウジング16と連結されている。
【0050】
第3プレート13には、第3凹部13cと第4軸孔13dとが形成されている。第3凹部13cは、第3後面13bから前方に向かって凹設されている。第3凹部13cは第2凹部12cと同径に形成されている。第3凹部13cの内部には、第2シール部材25bが設けられている。第4軸孔13dは、第3プレート13の中央部に位置しており、第3プレート13を前後方向に貫通している。これにより、第4軸孔13dは、前端で第2軸孔16eと連通しており、後端で第3凹部13cと連通している。第3凹部13c及び第4軸孔13dは、第2外側ハウジングボス部16d及び第2軸孔16eと同軸をなしている。つまり、第3凹部13c及び第4軸孔13dは、第1ボス部11c、第1凹部11d、第1軸孔11e、第2凹部12c及び第3軸孔12dと同軸をなしている。
【0051】
第1コンプレッサハウジング14は第2プレート12の前方に位置している。第1コンプレッサハウジング14は筒状をなしており、第2プレート12の第2前面12aと当接しつつ第2プレート12に連結されている。これにより、第1コンプレッサハウジング14は、ハウジング1の前端部を構成している。また、第1コンプレッサハウジング14には、第1吸入口14aと、第1吐出口14bとが形成されている。
【0052】
第1吸入口14aは、第3軸孔12dと同軸をなしており、第1コンプレッサハウジング14の内部を前後方向に延びている。第1吸入口14aは、前端が第1コンプレッサハウジング14の前端面140に開口している。第1吸入口14aには、吸入配管17が接続されている。第1吸入口14aには、吸入配管17を通じてハウジング1の外部から、酸素を含む空気が吸入される。空気は本発明における「流体」の一例である。
【0053】
第1吐出口14bは、第1コンプレッサハウジング14の内部を径方向に延びており、第1コンプレッサハウジング14の外周面141に開口している。第1吐出口14bには、後述する連絡配管8が接続されている。
【0054】
また、第1コンプレッサハウジング14と第2前面12aとの間には、第1インペラ室27aと、第1吐出室27bと、第1ディフューザ流路27cとが形成されている。第1インペラ室27aは第1吸入口14aに連通している。第1吐出室27bは、第1インペラ室27aの周囲で第1吸入口14aの軸心周りに延びている。第1吐出室27bは第1吐出口14bと連通している。第1ディフューザ流路27cは、第1インペラ室27aと第1吐出室27bとを連通している。これにより、第1インペラ室27aは、第1ディフューザ流路27c及び第1吐出室27bを通じて第1吐出口14bと連通している。第1インペラ室27a、第1吐出室27bと、第1ディフューザ流路27c及び第1インペラ7は、本発明における「第1圧縮部」の一例である。
【0055】
第2コンプレッサハウジング15は第3プレート13の後方に位置している。第1コンプレッサハウジング14と同様、第2コンプレッサハウジング15も筒状をなしている。第2コンプレッサハウジング15は、第3プレート13の第3後面13bと当接しつつ第3プレート13に連結されている。これにより、第2コンプレッサハウジング15は、ハウジング1の後端部を構成している。また、第2コンプレッサハウジング15には、第2吸入口15aと、第2吐出口15bとが形成されている。
【0056】
第2吸入口15aは、第1吸入口14aと同軸をなしており、第2コンプレッサハウジング15の内部を前後方向に延びている。また、第2吸入口15aは、後端が第2コンプレッサハウジング15の後端面150に開口している。第2吸入口15aには、後述する連絡配管8が接続されている。
【0057】
第2吐出口15bは第2コンプレッサハウジング15の内部を第2コンプレッサハウジング15の径方向に延びており、第2コンプレッサハウジング15の外周面151に開口している。第2吐出口15bには、吐出配管18が接続している。この吐出配管18を通じて、ターボ式流体機械は、燃料電池スタックと接続している。
【0058】
また、第2コンプレッサハウジング15と第3後面13bとの間には、第2インペラ室29aと、第2吐出室29bと、第2ディフューザ流路29cとが形成されている。第2インペラ室29aは第2吸入口15aに連通している。第2吐出室29bは、第2インペラ室29aの周囲で第2吸入口15aの軸心周りに延びている。第2吐出室29bは第2吐出口15bと連通している。第2ディフューザ流路29cは、第2インペラ室29aと第2吐出室29bとを連通している。これにより、第2インペラ室29aは、第2ディフューザ流路29c及び第2吐出室29bを通じて第2吐出口15bと連通している。第2インペラ室29a、第2吐出室29bと、第2ディフューザ流路29c及び第2インペラ9は、本発明における「第2圧縮部」の一例である。
【0059】
このように、ハウジング1では、第1インペラ室27aと第2インペラ室29aとが前後方向に離隔しており、第1インペラ室27aと第2インペラ室29aとの間にモータ室30が配置されている。
【0060】
電動モータ3は、モータ室30内に収容されて駆動軸5を回転させる。電動モータ3は、ステータ31と、ロータ32とを有している。ステータ31は、モータハウジング10に固定されている。ステータ31は、ハウジング1の外部に設けられた給電装置(図示略)と接続されている。
【0061】
ステータ31は、ステータコア33と、コイル34とを有している。ステータコア33は、前後方向に円筒状に延びて形成されており、モータハウジング10の内周面に固定されている。詳しくは、ステータコア33の外周面33aが第2周壁10cの内周面10eに固定されている。
【0062】
コイル34は、ステータコア33に巻回されている。コイル34は、ステータコア33から前方に突出する第1コイルエンド34aと、ステータコア33から後方に突出する第2コイルエンド34bとを有している。
【0063】
このステータ31は、ステータコア33の内周面33b、ステータコア33の前後の両端面、第1コイルエンド34a及び第2コイルエンド34bの全体が伝熱性を有する樹脂によって覆われるように、コイル34と共にコイル34とステータコア33との間隙が伝熱性を有する樹脂によりモールドされている。こうして、第1コイルエンド34aの外面全体及びステータコア33の前端面が第1樹脂モールド61により覆われている。同様に、第2コイルエンド34bの外面全体及びステータコア33の後端面が第2樹脂モールド62により覆われている。また、ステータコア33の内周面33bが第3樹脂モールド63で覆われている。
【0064】
これらの第1樹脂モールド61、第2樹脂モールド62及び第3樹脂モールド63は、樹脂の射出成形により一体的に形成されている。すなわち、ステータ31を第2周壁10cの開口から挿入するとともにステータコア33をモータハウジング10の内周面10eに圧入により固定した後、この一体品を所定の成形型にセットして樹脂を射出成形することにより、第1樹脂モールド61、第2樹脂モールド及び第3樹脂モールド63が形成されている。第1樹脂モールド61、第2樹脂モールド及び第3樹脂モールド63に用いる樹脂としては、伝熱性の高いエポキシ樹脂やポリエステル樹脂等を採用することができる。また、これらの樹脂に、アルミナやシリカ等の樹脂よりも伝熱性の高い粉末を混入したものを採用してもよい。第1樹脂モールド61、第2樹脂モールド62及び第3樹脂モールド63は、本発明における「樹脂モールド」の一例である。
【0065】
ロータ32は、ステータ31よりも小径をなして前後方向に延びる円筒状に形成されている。ロータ32は、ステータ31内に配置されている。ロータ32には、駆動軸5が固定されている。
【0066】
駆動軸5は、軸方向、すなわち前後方向に延びる円柱状に形成されており、前方から後方に向かって順に、第1軸部5a、第2軸部5b、第3軸部5c、第4軸部5d及び第5軸部5eを有している。第1軸部5aと第5軸部5eとは同径に形成されており、駆動軸5において最も小径に形成されている。第2軸部5bと第4軸部5dとは同径に形成されており、第1、5軸部5a、5eよりも大径に形成されている。第2軸部5bは前端で第1軸部5aと接続している。第4軸部5dは後端で第5軸部5eと接続している。第3軸部5cは駆動軸5において最も大径に形成されている。第3軸部5cは前端で第2軸部5bと接続しており、後端で第4軸部5dと接続している。
【0067】
駆動軸5はハウジング1内に挿通されており、駆動軸心O周りで回転可能となっている。また、駆動軸5では、第1軸部5aが第1インペラ室27a内に延びている。なお、駆動軸心Oは、ターボ式流体機械の前後方向と平行に延びている。
【0068】
第2軸部5bは、第3軸孔12d及び第1軸孔11eに挿通されつつ、第2凹部12c内及び第1凹部11d内に延びている。また、第2軸部5bは、第2凹部12c内において第1シール部材25aに挿通されている。これにより、第1シール部材25aは、第1インペラ室27aと第1凹部11d及びモータ室30との間を封止している。さらに、第2軸部5bは、第1凹部11d内において、第1、2スラスト軸受23a、23bに挿通されている他、支持プレート51に圧入されている。支持プレート51は、第1スラスト軸受23aと第2スラスト軸受23bとの間に位置している。これにより、支持プレート51は、第2後面12bとの間で第1スラスト軸受23aを前後方向に挟持しているとともに、第1凹部11dの壁面との間で第2スラスト軸受23bを前後方向に挟持している。
【0069】
第3軸部5cはモータ室30内に延びており、ロータ32に挿通されつつロータ32に固定されている。また、第3軸部5cは、第1ボス部11c内において第1ラジアル軸受21aに支承されているとともに、第2外側ハウジングボス部16d内において第2ラジアル軸受21bに支承されている。
【0070】
第4軸部5dは、第2軸孔16e及び第4軸孔13dに挿通されつつ、第3凹部13cに延びている。また、第4軸部5dは、第3凹部13c内において第2シール部材25bに挿通されている。これにより、第2シール部材25bは、第2インペラ室29aとモータ室30との間を封止している。そして、第5軸部5eは第2インペラ室29a内に延びている。
【0071】
モータハウジング10、第1プレート11、駆動軸5、電動モータ3、第1樹脂モールド61及び第2樹脂モールド6等により、回転機械100が構成される。
【0072】
第1インペラ7は第1インペラ室27a内に収容されている。第1インペラ7は、前方から後方に向かうにつれて次第に拡径する略円錐形状に形成されている。一方、第2インペラ9は第2インペラ室29a内に収容されている。第2インペラ9は、第1インペラ7と前後方向に対称の形状をなしている。つまり、第2インペラ9は、前方から後方に向かうにつれて次第に縮径する略円錐形状に形成されている。第1インペラ7はアルミニウム合金製とされており、第2インペラ9は鉄鋼製とされている。
【0073】
第1インペラ7は駆動軸5の第1軸部5aに固定されている。そして、第2インペラ9は駆動軸5の第5軸部5eに固定されている。こうして駆動軸5は、第1、2インペラ7、9と電動モータ3とを連結している。第1吐出室14bと第2吸入口15aとは、連絡配管8により連通されている。第1軸部5aは、本発明における「第1端部」の一例である。第5軸部5eは、本発明における「第2端部」の一例である。
【0074】
モータハウジング10は、ステータコア33が固定されてステータコア33の外周に対向するコア外周対向部41と、第1コイルエンド34aの外周に対向する第1エンド外周対向部42と、第2コイルエンド34bの外周に対向する第2エンド外周対向部43と、第2コイルエンド34bの駆動軸心O方向に対向する第2エンド軸心方向対向部44とを有している。第2周壁10cのうちステータコア33の外周に対応する領域がコア外周対向部41に相当する。第2周壁10cのうちコア外周対向部41以外の領域が第1エンド外周対向部42に相当する。第1周壁10bが第2エンド外周対向部43に相当する。端壁10aが第2エンド軸心方向対向部44に相当する。このため、コア外周対向部41と第1エンド外周対向部42とは同一の内径とされている。第2エンド外周対向部43は、コア外周対向部41よりも小さい内径及び外径とされている。
【0075】
第2周壁10cのうちフランジ部10d以外の領域及び第1周壁10bの外周面には螺旋溝81が設けられている。螺旋溝81は、第1エンド外周対向部42の領域、コア外周対向部41の領域及び第2エンド外周対向部43の領域に亘って、駆動軸心O方向に沿って螺旋状に延びている。
【0076】
端壁10aの第2端面102には、渦巻溝82が設けられている。渦巻溝82は、端壁10aの外周端から内周端に向かって駆動軸心O周りに渦巻状に延びている。螺旋溝81の後端と渦巻溝82の外周端とは連通している。
【0077】
モータハウジング10の外側は、外側ハウジング16により囲われている。フランジ部10dの外周面と外側ハウジング周壁16bの内周面とが当接するとともに、端壁10aの内周端面と第1外側ハウジングボス部16cの外周面とが当接している。フランジ部10dの外周面と外側ハウジング周壁16bの内周面との間はOリング21により封止されている。端壁10aの内周端面と第1外側ハウジングボス部16cの外周面との間はOリング22により封止されている。
【0078】
こうして、モータハウジング10の外側には、外側ハウジング16との間に冷却流路80が形成されている。冷却流路80は、第1エンド外周対向部42の領域、コア外周対向部41の領域及び第2エンド外周対向部43の領域に亘って、駆動軸心O方向に沿って螺旋状に延びている。また、冷却流路80は、端壁10aの外周端から内周端に向かって駆動軸心O周りに渦巻状に延びている。冷却流路80は、第1エンド外周対向部42の領域に設けられた第1エンド流路部80aと、コア外周対向部41の領域に設けられたコア流路部80bと、第2エンド外周対向部43の領域に設けられた第2エンド流路部80cと、第2エンド軸心方向対向部44の領域に設けられた渦巻流路部80dとからなる。第1エンド流路部80aとコア流路部80bとは連通し、コア流路部80bと第2エンド流路部80cとは連通し、第2エンド流路部80cと渦巻流路部80dとは連通している。
【0079】
冷却流路80には、ステータ31を冷却するための冷却水が供給される。冷却水は、本発明における「冷却液」の一例である。外側ハウジング16には、冷却流路80に冷却水を供給・排出するための図示しない給・排水口及び給・排水流路が設けられている。給水流路は、冷却流路80の第1エンド流路部80aの前方端に連通している。また、排水流路は、冷却流路80の渦巻流路部80dの内周端に連通している。給水口には、ハウジング1の外部に設けられた図示しない給水装置から冷却水が供給される。
【0080】
上述のとおり、モータハウジング10の第2エンド外周対向部43は、コア外周対向部41よりも内径及び外径が小さくされている。すなわち、第2エンド外周対向部43の内径は、ステータコア33の外径よりも小さくされている。
【0081】
そして、第1樹脂モールド61の外周面61aは、第1エンド外周対向部42におけるモータハウジング10の内周面10eに当接している。また、第1樹脂モールド61の前端面61bは第1プレート11の第1後面11bに当接している。同様に、第2樹脂モールド62の外周面62aは、第2エンド外周対向部43におけるモータハウジング10の内周面10fに当接している。また、第2樹脂モールド62の後端面62bは端壁10aの第1端面101に当接している。
【0082】
ここに、冷却流路80が駆動軸心Oを含む平面により切断された流路軸心方向断面を想定する。
図2に示すように、この流路軸心方向断面において、冷却流路80は略矩形をなしている。そして、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における第2エンド流路部80cの内周端は、コア外周対向部41におけるコア流路部80bの内周端よりもモータハウジング10の内周側に位置している。さらに言えば、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における第2エンド流路部80cの内周端は、ステータコア33の外周端である外周面33aよりもステータコア33の内周側に位置している。
【0083】
また、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における第2エンド流路部80cの駆動軸心O方向の幅d1は、コア外周対向部41におけるコア流路部80bの駆動軸心O方向の幅d2よりも小さくされている。なお、流路軸心方向断面において、第2エンド流路部80cの軸心直角方向の長さは、コア流路部80bの軸心直角方向の長さよりも長くされている。
【0084】
以上のように構成されたこのターボ式流体機械では、給電装置から
図1に示す電動モータ3に給電が行われることで、電動モータ3が作動し、駆動軸5が駆動軸心O周りで回転する。このため、第1インペラ室27a内で第1インペラ7が駆動軸心O周りで回転するとともに、第2インペラ室29a内で第2インペラ9が駆動軸心O周りで回転する。
【0085】
これにより、このターボ式流体機械では、第1吸入口14aから吸入された空気を第1インペラ7及び第2インペラ9によって2段階で圧縮する。すなわち、第1吸入口14aから吸入された空気は第1インペラ室27a内で第1インペラ7によって圧縮されて第1圧縮空気となり、第1吐出室27bに吐出される。この第1圧縮空気は第1インペラ室27a内に吸入された際の空気よりも高温高圧となっている。そして、第1吐出室27から連絡配管8に吐出された第1圧縮空気は、第2吸入口15aから第2インペラ室29a内に供給される。第2インペラ室29a内に供給された第1圧縮空気は第2インペラ9によってさらに圧縮されて第2圧縮空気となり、第2吐出室29bに吐出される。この第2圧縮空気は、第1圧縮空気よりも高温高圧となっている。そして、この第2圧縮空気は、第2吐出口15bから吐出配管18内に吐出され、吐出配管18内を経て燃料電池スタックのカソードに供給される。
【0086】
このターボ式流体機械の作動中、給水装置から給水口に冷却水が供給される。給水口に供給された冷却水は、給水流路を介して冷却流路80に流入し、冷却流路80内を流れた後、排水流路を介して排水口からハウジング1の外部に排出される。
【0087】
本実施例の回転機械100では、第1コイルエンド34aを覆う伝熱性の第1樹脂モールド61の外周面61aが第1エンド外周対向部42におけるモータハウジング10の内周面10eに当接している。同様に、第2コイルエンド34bを覆う伝熱性の第2樹脂モールド62の外周面62aが第2エンド外周対向部43におけるモータハウジング10の内周面10fに当接している。このため、第1コイルエンド34aから第1樹脂モールド61に伝わった熱は、ステータコア33を介することなく直接モータハウジング10の第1エンド外周対向部42に伝わる。同様に、第2コイルエンド34bから第2樹脂モールド62に伝わった熱は、ステータコア33を介することなく直接モータハウジング10の第2エンド外周対向部43に伝わる。さらに、第2コイルエンド34bから第2樹脂モールド62に伝わった熱は、モータハウジング10の第2エンド軸心方向対向部44に直接伝わる。また、ステータコア33の熱はステータコア33からモータハウジング10のコア外周対向部41に直接伝わる。モータハウジング10に伝わった熱は、第1エンド外周対向部42、コア外周対向部41、第2エンド外周対向部43及び第2エンド軸心方向対向部44における冷却流路80を流れる冷却水に奪われる。すなわち、モータハウジング10に伝わった熱は、第1エンド流路部80a、コア流路部80b、第2エンド流路部80c及び渦巻流路部80dを流れる冷却水に奪われる。こうして、冷却流路80を流れる冷却水によってステータ31を効果的に冷却することができる。
【0088】
特に、この回転機械100では、第2樹脂モールド62の後端面62bからモータハウジング10の端壁10aに駆動軸心O方向に熱が伝わるとともに、端壁10aに伝わった熱が渦巻流路部80dを流れる冷却水に奪われる。このため、第2コイルエンド34bをより一層効果的に冷却することができる。
【0089】
そして、この回転機械100では、モータハウジング10の第2エンド外周対向部43の内径がコア外周対向部41の内径よりも小さくされている。そして、この第2エンド外周対向部43におけるモータハウジング10の内周面10fに、第2コイルエンド34bの外周を覆う第2樹脂モールド62の外周面62aが当接している。
【0090】
この場合、第2エンド外周対向部43の内径が小さくなった分だけ、第2樹脂モールド62の樹脂の使用量を減少させることができる。
【0091】
また、第2エンド外周対向部43の内径が小さくなった分だけ、第2樹脂モールド62における第2コイルエンド34bからモータハウジング10への伝熱距離が短くなる。第2樹脂モールド62における伝熱距離が短くなれば、第2コイルエンド34bから第2樹脂モールド62を介してモータハウジング10の第2エンド外周対向部43に熱が伝わり易くなるので、第2コイルエンド34bの冷却効果が高まる。第2コイルエンド34bの冷却効果が高まれば、コイル34全体の冷却効果も高まる。
【0092】
したがって、本実施例の回転機械100及びこの回転機械100を備えた本実施例のターボ式流体機械では、樹脂モールドにおける樹脂の使用量を減少させてコストの低廉化を図りつつ、コイル34の冷却効果を高めることができる。
【0093】
また、このターボ式流体機械では、第1インペラ7で圧縮した空気を第2インペラ9によってさらに圧縮する。このため、ハウジング1内において、第1インペラ7の周辺よりも第2インペラ9の周辺の方が高温になる。その結果、駆動軸心O方向において、第1インペラ7側に位置する第1コイルエンド34aよりも、第2インペラ9側に位置する第2コイルエンド34bの方が高温になり易い。
【0094】
この点、このターボ式流体機械では、第2コイルエンド34bをより効果的に冷却することができるため、コイル34全体を効果的に冷却することができる。
【0095】
特に、この回転機械100では、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における冷却流路80の内周端、すなわち第2エンド流路部80cの内周端は、ステータコア33の外周端である外周面33aよりもステータコア33の内周側に位置している。
【0096】
この構成により、第2エンド流路部80cと第2樹脂モールド62との距離が短くなるので、第2コイルエンド34bの冷却効果をより高めることができる。
【0097】
また、この回転機械100では、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における第2エンド流路部80cの内周端がステータコア33の外周面33aよりステータコア33の内周側に位置しており、第2エンド流路部80cの軸心直角方向の長さがコア流路部80bの軸心直角方向の長さよりも長くなっている。この場合、流路軸心方向断面において、仮に第2エンド流路部80cの駆動軸心O方向の幅d1とコア流路部80bの駆動軸心O方向の幅d2とが同一ならば、軸心直角方向の長さが長い分だけ、コア流路部80bの流路断面積よりも第2エンド流路部80cの流路断面積の方が大きくなる。その結果、第2エンド流路部80cを流れる冷却水の流速が低下して、第2エンド流路部80cにおける冷却効果が低下する。
【0098】
この点、この回転機械100では、第2エンド流路部80cの幅d1がコア流路部80bの幅d2よりも小さくされているので、その分だけ第2エンド流路部80cの流路断面積が減少している。このため、第2コイルエンド34bの冷却効果をより高めるべく、第2エンド流路部80cの内周端を第2樹脂モールド62の外周面62aにより近づけて第2エンド流路部80cの軸心直角方向長さをより長くしたとしても、流路断面積の増大によって冷却効果が低下してしまうことを抑えることができる。
【0099】
また、この回転機械100では、ステータ31は、ステータコア33の外周面33aがモータハウジング10の内周面10eに圧入され、ステータコア33の内周面33bが第3樹脂モールド63で覆われ、第1コイルエンド34aが第1樹脂モールド61で覆われ、第2コイルエンド34bが第2樹脂モールド62で覆われている。すなわち、ステータ31において、モータハウジング10の内周面10eに当接するステータコア33の外周面33a以外の外面が、第1樹脂モールド61、第2樹脂モールド62及び第3樹脂モールド63の一体物により覆われている。このため、ステータ31の密封性が高く、ステータ31の耐食性が高い。
【0100】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0101】
実施例では、流路軸心方向断面において、第2エンド外周対向部43における第2エンド流路部80cの内周端がステータコア33の外周面33aよりステータコア33の内周側に位置しているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、流路軸心方向断面において、第2エンド流路部80cの内周端は、コア外周対向部41におけるコア流路部80bの内周端とステータコア33の外周面33aとの間に位置していたり、コア流路部80bの内周端とモータハウジング10の径方向における同じ位置にあったりしてもよい。要は、第2エンド外周対向部43におけるモータハウジング10の内径がコア外周対向部41におけるモータハウジング10の内径よりも小さければよい。
【0102】
実施例では、外側ハウジング16の外側ハウジング周壁16bが一定の内径で前後方向に筒状に延びているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、外側ハウジング周壁16bにおいて、第2エンド外周対向部43に対応する部分の内径をコア外周対向部41に対応する部分の内径よりも小さくしてもよい。
【0103】
実施例では、回転機械100を備えるターボ式流体機械としているが、本発明の回転機械は、空調用の圧縮機、タービン、発電機や送風機等に適用してもよい。
【0104】
実施例のターボ式流体機械では、本発明における「流体」を空気としているが、これに限らず、空調に用いる冷媒等を本発明における「流体」としてもよい。また、本発明における「冷却液」として、冷却水以外の冷却液体を用いてもよい。
【0105】
(付記1)
筒状のモータハウジングと、
前記モータハウジング内に設けられ、駆動軸心周りに回転可能な駆動軸と、
前記モータハウジング内に設けられ、前記駆動軸を回転させる電動モータと、を備えた回転機械であって、
前記電動モータは、ステータと、前記ステータ内に配置されるとともに前記駆動軸が固定されたロータと、を有し、
前記ステータは、前記モータハウジングの内周面に固定された筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻回されたコイルと、を有し、
前記コイルは、前記ステータコアの一方側に突出する第1コイルエンドと、前記ステータコアの他方側に突出する第2コイルエンドと、を有し、
前記モータハウジングは、前記ステータコアが固定されるコア外周対向部と、前記第1コイルエンドの外周に対向する第1エンド外周対向部と、前記第2コイルエンドの外周に対向する第2エンド外周対向部と、を有し、
前記回転機械は、前記第1コイルエンド及び前記第2コイルエンドを覆うとともに、前記第1エンド外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と当接する伝熱性の樹脂モールドを有し、
前記ステータを冷却するための冷却液が供給される冷却流路が、前記第1エンド外周対向部、前記コア外周対向部及び前記第2エンド外周対向部と、前記モータハウジングの外側に設けられた外側ハウジングとの間に形成され、
前記第2エンド外周対向部は、前記コア外周対向部よりも内径が小さいことを特徴する回転機械。
(付記2)
前記第2エンド外周対向部における前記冷却流路の内周端は、前記ステータコアの外周端よりも前記ステータコアの内周側に位置している付記1記載の回転機械。
(付記3)
前記冷却流路は、前記コア外周対向部の領域及び前記第2エンド外周対向部の領域に亘って、前記駆動軸心方向に沿って螺旋状に延びて設けられ、
前記第2エンド外周対向部における前記冷却流路の前記駆動軸心方向の幅は、前記コア外周対向部における前記冷却流路の前記駆動軸心方向の幅よりも小さくされている付記2記載の回転機械。
(付記4)
前記モータハウジングは、前記第2コイルエンドと前記駆動軸心方向に対向する第2エンド軸心方向対向部をさらに有し、
前記外側ハウジングは、前記第2エンド軸心方向対向部との間にも前記冷却流路を形成し、
前記第2エンド軸心方向対向部と前記樹脂モールドとが当接している付記1乃至3のいずれか1項記載の回転機械。
(付記5)
付記1乃至4のいずれか1項記載の回転機械を備える電動圧縮機であって、
前記モータハウジング及び前記外側ハウジングを含むハウジングを備え、
前記駆動軸は、前記ロータを間に挟んで前記駆動軸心の一方側に延びる一端部及び他方側に延びる他端部を有し、
前記第1コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の一端部側に配置され、
前記第2コイルエンドは、前記ハウジング内における前記駆動軸の他端部側に配置され、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記一端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記ハウジング内に吸入された流体を圧縮する第1圧縮部と、
前記ハウジング内に設けられるとともに前記他端部に連結され、前記駆動軸の回転により前記第1圧縮部で圧縮された流体をさらに圧縮する第2圧縮部と、を備えることを特徴とする電動圧縮機。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、燃料電池システムや空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
1…ハウジング
3…電動モータ
5…駆動軸
5a…第1軸部(第1端部)
5e…第5軸部(第2端部)
7…第1インペラ(第1圧縮部)
9…第2インペラ(第2圧縮部)
10…モータハウジング
16…外側ハウジング
27a…第1インペラ室(第1圧縮部)
29a…第2インペラ室(第2圧縮部)
31…ステータ
32…ロータ
33…ステータコア
34…コイル
34a…第1コイルエンド
34b…第2コイルエンド
41…コア外周対向部
42…第1エンド外周対向部
43…第2エンド外周対向部
44…第2エンド軸心方向対向部
61…第1樹脂モールド(樹脂モールド)
62…第2樹脂モールド(樹脂モールド)
80…冷却流路
100…回転機械