(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021370
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124155
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】広原 和門
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP05
4F215AP07
4F215AP11
4F215AR07
4F215VA11
4F215VL02
4F215VP18
4F215VQ07
4F215VR01
4F215VR03
(57)【要約】
【課題】タイヤの接合面の外観を向上させる。
【解決手段】タイヤ製造装置10は、帯状ゴム部材5を切断可能な平板状のカッター41と、帯状ゴム部材5の厚み方向に斜交する第1方向Zと帯状ゴム部材5の長手方向に交差する第2方向Yとに延びるようにカッター41を支持するとともに第1方向Zおよび第2方向Yにカッター41を動かすカッター支持装置42と、カッター支持装置42を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、カッター支持装置42を制御してカッター41を第1方向Zおよび第2方向Yに動かすことにより、カッター41に帯状ゴム部材5を切断させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状ゴム部材を切断可能な平板状のカッターと、
前記帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と前記帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるように前記カッターを支持するとともに、前記第1方向および前記第2方向に前記カッターを動かすカッター支持装置と、
前記カッター支持装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記カッター支持装置を制御して前記カッターを前記第1方向および前記第2方向に動かすことにより前記カッターに前記帯状ゴム部材を切断させる切断制御部を備えている、
タイヤ製造装置。
【請求項2】
前記カッター支持装置は、前記帯状ゴム部材の厚み方向に対する前記カッターの角度を変化させることが可能な第1角度調整機構を備え、
前記制御装置は、
前記帯状ゴム部材の厚み方向に対する前記カッターの角度と、当該角度に対応する前記第1方向とが登録された第1角度登録部と、
前記第1角度調整機構を制御して、前記第1角度登録部に登録された角度で前記カッターを支持させる第1角度制御部と、を備えている、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項3】
前記カッターは、前記帯状ゴム部材の側の端部に形成された刃部を備え、
前記第1角度調整機構は、前記刃部を軸として前記カッターを傾動させるように構成されている、
請求項2に記載のタイヤ製造装置。
【請求項4】
前記カッター支持装置は、前記帯状ゴム部材の幅方向に対する前記カッターの角度を変化させることが可能な第2角度調整機構を備え、
前記制御装置は、
前記帯状ゴム部材の幅方向に対する前記カッターの角度と、当該角度に対応する前記第2方向とが登録された第2角度登録部と、
前記第2角度調整機構を制御して、前記第2角度登録部に登録された角度で前記カッターを支持させる第2角度制御部と、を備えている、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項5】
前記カッターの移動方向を測定する測定装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記切断制御部の制御によって前記カッターが移動した方向のデータを前記測定装置から取得し保存するデータ取得部を備えている、
請求項1に記載のタイヤ製造装置。
【請求項6】
帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と前記帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるように平板状のカッターを支持し、前記カッターを前記第1方向および前記第2方向に動かして前記帯状ゴム部材を切断する工程を含む、
タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造装置およびタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、タイヤ用帯状ゴム部材を切断してタイヤのサイドウォール部材を製作する切断装置が開示されている。特許文献1には、サイドウォール部材の厚みが一定ではないため、サイドウォール部材の2つの切断面を重ね合わせても切断面が一致せず、バルジ(ジョイント量の過多による、とされる)やディフェクト(ジョイント量の不足による、とされる)の原因となることが記載されている。特許文献1に記載の切断装置は、主カッター刃と主カッター刃に重ねる補助カッター刃を備えている。特許文献1によれば、補助カッター刃によってカッター刃の傾斜角を部分的に大きくし、厚みの不均一な材料から均一な切断面を得ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、カッター刃の傾斜角度をできるだけ小さくしてジョイントの厚みを薄くし、均一なジョイントを行う提案が記載されている。しかし、カッター刃の傾斜角度を小さくすると、加硫後のタイヤにおいて接合面の外観がよくないものができやすくなる。ここでは、タイヤの接合面の外観を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示するタイヤ製造装置は、帯状ゴム部材を切断可能な平板状のカッターと、帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるようにカッターを支持するとともに第1方向および第2方向にカッターを動かすカッター支持装置と、カッター支持装置を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、カッター支持装置を制御してカッターを第1方向および第2方向に動かすことによりカッターに帯状ゴム部材を切断させる切断制御部を備えている。
【0006】
また、ここに開示するタイヤの製造方法は、帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるように平板状のカッターを支持し、カッターを第1方向および第2方向に動かして帯状ゴム部材を切断する工程を含む。
【0007】
上記タイヤ製造装置、または、タイヤの製造方法によれば、タイヤの接合面の外観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】タイヤの製造工程の一部を示す工程図である。
【
図3】カッターの傾動動作を示す切断装置の模式的な側面図である。
【
図4】カッターの旋回動作を示す切断装置の模式的な平面図である。
【
図6】帯状ゴム部材の切断動作を示すカッターの模式的な正面図である。
【
図7】帯状ゴム部材の切断動作を示すカッターの模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[タイヤ製造装置の構成]
図1は、一実施形態に係るタイヤ製造装置10の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ製造装置10は、押出成形装置20と、上流側搬送装置30と、切断装置40と、下流側搬送装置50と、成形装置60と、を備えている。タイヤの材料である帯状ゴム部材5は、押出成形装置20によって押出成形され、上流側搬送装置30によって切断装置40まで搬送された後、下流側搬送装置50によって切断装置40から搬出される。その後、帯状ゴム部材5は、成形装置60に搬送される。帯状ゴム部材5から形成されるタイヤの部品は、限定されない。帯状ゴム部材5から形成されるタイヤの部品は、例えば、サイドウォールパーツ、トレッドパーツ、ショルダパーツなどであってもよい。
【0011】
以下では、帯状ゴム部材5が搬送される搬送方向の下流側を前方と表す。前、後、左、右、上、下の向きは、図中、F、Rr、L、R、U、Dの矢印でそれぞれ表す。ただし、これらの方向は説明の便宜上のものに過ぎず、タイヤ製造装置10の設置向き等を限定しない。便宜上、帯状ゴム部材5の搬送方向である前方は1つの方向として表すが、帯状ゴム部材5の搬送方向は途中で変わってもよい。なお、
図1では図示を省略するが、タイヤ製造装置10は、押出成形装置20に投入されるゴム材料を混錬する装置や、サイドウォールパーツ、トレッドパーツ、ショルダパーツ等のタイヤ材料を組み合わせてローカバーを形成する装置や、ローカバーを加硫する加硫機等を備えている。
【0012】
図2は、タイヤの製造工程の一部を示す工程図である。
図2に示すように、タイヤの製造工程には、押出成形工程S10と、切断工程S20と、成形工程S30と、加硫工程S40と、が含まれている。押出成形工程S10では、押出成形装置20の図示しないダイプレートからゴム材料が連続的に押し出され、切断前の帯状ゴム部材5が成形される。以下、帯状ゴム部材5が押し出される方向およびその逆方向であって、ここでは前後方向のことを、帯状ゴム部材5の長手方向とも呼ぶ。また、帯状ゴム部材5の長手方向に直交する方向、ここでは、左右方向のことを、帯状ゴム部材5の幅方向とも呼ぶ。帯状ゴム部材5は、幅方向とこれに直交する長手方向とに延びる帯状の部材である。
【0013】
切断工程S20では、切断装置40のカッター41によって帯状ゴム部材5を切断する。切断工程S20において、帯状ゴム部材5は、予め定められた長さに切断される。切断工程S20により、帯状ゴム部材5は、前端と後端とを備えた平板状に形成される。以下では、切断装置40で帯状ゴム部材5を切断することにより形成され、長手方向の両端部を有する状態となった帯状ゴム部材5のことを、切断後シート6、または単にシート6とも呼ぶ。また、切断工程S20により形成されたシート6の前端を前方側の切断面6Fと、シート6の後端を後方側の切断面6Rrとも呼ぶ。
【0014】
成形工程S30では、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く。シート6の前方側の切断面6Fと後方側の切断面6Rrとは、成形工程S30で接合される。これにより、円環状のタイヤ部品が成形される。前述したように、成形工程S30の後にはローカバーの成形工程等が行われ(
図2では図示省略)、さらに加硫工程S40が行われる。
【0015】
図1に示すように、帯状ゴム部材5の搬送装置は、切断装置40よりも搬送方向上流側に設けられた上流側搬送装置30と、切断装置40よりも搬送方向下流側に設けられた下流側搬送装置50と、を備えている。
図1に示すように、上流側搬送装置30は、無端状のベルト31と、複数のローラ32と、を備えている。ベルト31は、複数のローラ32に巻き掛けられている。この状態で複数のローラ32が前方に回転することにより、ベルト31は前方に向かって走行する。押出成形装置20から押し出された帯状ゴム部材5は、ベルト31上に載置されて前方に移動される。詳しい説明は省略するが、下流側搬送装置50も、上流側搬送装置30と同様に構成されている。
【0016】
切断装置40は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の上方および下方に設けられている。切断装置40は、カッター41により帯状ゴム部材5を切断して、長手方向の両端部6Fおよび6Rrを有する帯状ゴム部材のシート6を形成する。
図1に示すように、切断装置40は、カッター41と、カッター支持装置42と、測定装置43と、カッター加熱装置44と、カッター受台45と、受台旋回装置46と、を備えている。
【0017】
カッター41は、帯状ゴム部材5を切断可能に構成されている。カッター41は、平板状のカッターである。カッター41は、帯状ゴム部材5の側の端部(ここでは、下端)に形成された刃部41aを備えている。刃部41aは、直線状に構成されている。切断装置40は、いわゆる超音波カッターのように、カッター41を振動させて対象物を切断するように構成されていてもよい。ただし、カッター41は、振動するカッターには限定されない。
【0018】
カッター支持装置42は、カッター41を支持するとともに、カッター41を動かす装置である。カッター支持装置42は、帯状ゴム部材5の厚み方向(ここでは上下方向)に斜交するZ方向(
図1参照)と帯状ゴム部材5の長手方向(ここでは前後方向)に交差するY方向(
図4参照)とに延びるようにカッター41を支持している。Z方向は、好ましくは、帯状ゴム部材5の厚み方向に対して40度以上70度以下の角度で斜交する方向(帯状ゴム部材5の上面5Uに対して20度以上50度以下の角度で斜交する方向)である。Y方向は帯状ゴム部材5の幅方向(ここでは左右方向)に一致していてもよいが、ここでは、帯状ゴム部材5の幅方向に斜交しているものとする。
図4に示すように、刃部41aは、平面視においてY方向に延びている。Y方向は、好ましくは、帯状ゴム部材5の幅方向に対して5度以上15度以下の角度で斜交する方向である。カッター支持装置42は、Z方向およびY方向にカッター41を動かすことが可能に構成されている。
【0019】
Y方向およびZ方向は、例えば実験的に決められた好適な方向であり、帯状ゴム部材5の種類(例えば、サイズや材料が異なる)によって変わり得る。Y方向およびZ方向を決めることができるように、カッター支持装置42は、帯状ゴム部材5の厚み方向に対するカッター41の角度を変化させることが可能な傾動機構42A(
図3参照)と、帯状ゴム部材5の幅方向に対するカッター41の角度を変化させることが可能な旋回機構42B(
図4参照)と、を備えている。
図3は、カッター41の帯状ゴム部材5の厚み方向に対する角度を変える動作(以下、傾動動作とも呼ぶ)を示す切断装置40の模式的な側面図である。
図4は、カッター41の帯状ゴム部材5の幅方向に対する角度を変える動作(以下、旋回動作とも呼ぶ)を示す切断装置40の模式的な平面図である。傾動動作によればZ方向を変えることができ、旋回動作によればY方向を変えることができる。
【0020】
図3に示すように、傾動機構42Aは、ここでは、刃部41aを軸としてカッター41を傾動させるように構成されている。傾動機構42Aによってカッター41を傾けても、刃部41aの位置は不動である。傾動機構42Aは、例えば、カッター41の上端を軸にカッター41を回転させるロータリーアクチュエータと、ロータリーアクチュエータを上下方向および前後方向に移動または旋回させるアクチュエータと、を備えていてもよい。ただし、傾動機構42Aの構成は特に限定されない。
図3に示すように、以下、帯状ゴム部材5の上面5Uに対してZ方向がなす角度を押込角θ1とも呼ぶ(
図1も参照)。帯状ゴム部材5の厚み方向に対してZ方向がなす角度は、90度から押込角θ1を減じた角度である。
【0021】
旋回機構42Bは、例えば、カッター支持装置42の要部全体を、平面視において時計回りまたは反時計回りに回転させる機構であってもよい。ただし、旋回機構42Bの構成も特に限定されない。
図4に示すように、以下、帯状ゴム部材5の幅方向に対してY方向がなす角度を横行角θ2とも呼ぶ。
【0022】
図3および
図4に示すように、カッター支持装置42は、カッター41をZ方向に移動させる押込機構42Cと、カッター41をY方向に移動させる横行機構42Dと、をさらに備えている。押込機構42Cおよび横行機構42Dは、それぞれ、例えば、カッター41の傾動動作および旋回動作とともに傾動および旋回するガイド部材を備え、ガイド部材に沿ってカッター41を移動させるように構成されていてもよい。あるいは、押込機構42Cおよび横行機構42Dは、例えば、前後方向、左右方向、および上下方向の動きを組み合わせてカッター41をZ方向およびY方向に移動させるように構成されていてもよい。押込機構42Cおよび横行機構42Dの構成は特に限定されない。
【0023】
測定装置43(
図1参照)は、カッター41の移動方向を測定するように構成されている。測定装置43は、計算上は予め定められているカッター41の移動方向を実際に測定するためのものである。測定装置43の構成は、押込機構42Cおよび横行機構42Dの構成によって変わり得る。例えば、押込機構42Cおよび横行機構42Dが前後方向、左右方向、および上下方向の動きを組み合わせてカッター41をZ方向およびY方向に移動させる場合には、測定装置43は、押込機構42Cおよび横行機構42Dの座標を測定し、測定した座標からカッター41の移動方向を算出できる。例えば、押込機構42Cおよび横行機構42Dがカッター41の傾動動作および旋回動作とともにガイド部材を傾動および旋回させる場合には、測定装置43は、ガイド部材の角度を測定し、測定した角度からカッター41の移動方向を算出できる。なお、測定装置43は、カッター41の移動速度も測定するように構成されていてもよい。
【0024】
図1に示すように、切断装置40は、カッター41を所定の温度に加熱するカッター加熱装置44を備えている。カッター41を適切な温度に維持することにより、帯状ゴム部材5を良好に切断することができる。カッター41の温度は、温度センサ44a(
図5参照)によって測定されている。
【0025】
カッター受台45は、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間の空間の下方に設けられ、上流側搬送装置30と下流側搬送装置50との間で帯状ゴム部材5を支持している。カッター受台45には、帯状ゴム部材5を貫通した(帯状ゴム部材5を切り終えた)カッター41を避けるための溝45aが設けられている。
【0026】
受台旋回装置46は、カッター41の旋回動作に応じてカッター受台45を旋回させる。
図4に示すように、受台旋回装置46は、カッター受台45を平面視において時計回りまたは反時計回りに回転させ、溝45aをカッター41の刃部41aに略平行とする。旋回機構42Bが切断装置40の要部全体を回転させるような場合には、受台旋回装置46は旋回機構42Bであってもよい。
【0027】
図1に示すように、成形装置60は、下流側搬送装置50よりもさらに帯状ゴム部材5の搬送方向下流側に設けられている。成形装置60は、下流側搬送装置50と連続するように設けられていなくてもよい。下流側搬送装置50により搬出された後、シート6は、例えば内部応力緩和のために保管されていてもよい。
【0028】
成形装置60は、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとを合わせるようにシート6を巻く装置である。
図1に示すように、成形装置60は、ドラム61と、巻取装置62と、を備えている。ドラム61は、円筒状に構成されている。巻取装置62は、ドラム61を円筒の中心軸周りに回転させる。ドラム61にシート6が装着された状態でドラム61を回転させることにより、シート6がドラム61に巻き付く。これにより、シート6が円環状に成形される。成形装置60により、シート6の長手方向の両端部6Fと6Rrとは重ね合わされ、接合される。
【0029】
図5は、タイヤ製造装置10のブロック図である。タイヤ製造装置10は、押出成形装置20と、上流側搬送装置30と、切断装置40のカッター支持装置42(より詳しくは、傾動機構42A、旋回機構42B、押込機構42C、および横行機構42D)、カッター加熱装置44、および受台旋回装置46と、下流側搬送装置50と、成形装置60と、に接続された制御装置70を備えている。制御装置70は、それらの動作を制御している。また、制御装置70は、切断装置40の測定装置43およびカッター加熱装置44の温度センサ44aに接続されている。制御装置70は、カッター41が移動した方向のデータを測定装置43から取得し、カッター41の温度を温度センサ44aから取得している。制御装置70は、例えば、コンピュータやプログラマブルコントローラである。制御装置70の構成は特に限定されない。制御装置70は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置70の処理部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置70の処理部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。
【0030】
図5に示すように、制御装置70は、切断装置40を制御するための制御部として、押込角登録部71と、押込角制御部72と、横行角登録部73と、横行角制御部74と、切断制御部75と、加熱制御部76と、データ取得部77と、を備えている。制御装置70は、成形装置60等の切断装置40以外の装置を制御する制御部も備えているが、ここでは、図示および説明を省略する。
【0031】
押込角登録部71には、帯状ゴム部材5の厚み方向に対するカッター41の角度(押込角θ1)と、押込角θ1に対応するZ方向とが登録されている。押込角θ1は、例えば、押込角θ1を振って行った実験の結果に基づいて決められたものである。押込角制御部72は、傾動機構42Aを制御して、押込角登録部71に登録された押込角θ1でカッター41を支持させる。
【0032】
横行角登録部73には、帯状ゴム部材5の幅方向に対するカッター41の角度(横行角θ2)と、横行角θ2に対応するY方向とが登録されている。横行角θ2も、例えば、横行角θ2を振って行った実験の結果に基づいて決められている。横行角制御部74は、旋回機構42Bを制御して、横行角登録部73に登録された横行角θ2でカッター41を支持させる。
【0033】
切断制御部75は、カッター支持装置42(より詳しくは、押込機構42Cおよび横行機構42D)を制御してカッター41をZ方向およびY方向に動かすことにより、カッター41に帯状ゴム部材5を切断させる。すなわち、カッター41は、カッター41を刃部41aの伸長方向に滑らせながら押し込むようにして、帯状ゴム部材5を切断する。
【0034】
加熱制御部76は、カッター加熱装置44を制御して、カッター41の温度を所定の温度に制御する。データ取得部77は、切断制御部75の制御によってカッター41が移動した方向のデータを測定装置43から取得し保存する。データ取得部77は、切断制御部75の制御によってカッター41が移動した速度のデータを測定装置43から取得し保存してもよい。データ取得部77は、さらに、帯状ゴム部材5を切断しているときのカッター41の温度のデータを温度センサ44aから取得し保存している。
【0035】
[切断工程]
以下では、切断工程S20の詳細を説明する。切断工程S20では、1回前の切断が終わって前方側の切断面6Fが形成された帯状ゴム部材5を、上流側搬送装置30によって予め定められた距離だけ前方に搬送する。上流側搬送装置30によって搬送される距離は、切断後シート6の長手方向の長さに相当する。その後、カッター41によって帯状ゴム部材5を切断する。これにより、シート6の後方側の切断面6Rrが形成される。切断後シート6は、下流側搬送装置50により搬送される。以下、帯状ゴム部材5を切断時のカッター41の動きを説明する。
【0036】
図6は、帯状ゴム部材5の切断動作を示すカッター41の模式的な正面図である。
図7は、帯状ゴム部材5の切断動作を示すカッター41の模式的な側面図である。
図6および
図7に示すように、帯状ゴム部材5の切断動作において、カッター41は、押込角θ1で帯状ゴム部材5に突入し、Z方向への突入とともにY方向への横滑りをしながら帯状ゴム部材5を切断する。帯状ゴム部材5の切断動作におけるカッター41の移動方向は、Z方向への速度とY方向への速度との合成速度の方向である。正面視におけるカッター41の移動方向を、
図6の矢印Aで示す。かかる切断方法によって、帯状ゴム部材5の切断、特に押込角θ1が小さい(浅い)場合の帯状ゴム部材5の切断を良好に行うことができる。実施例と、そのようになる理由については後述する。図示は省略するが、平面視において、カッター41は、帯状ゴム部材5をY方向に横断するように切断する。
【0037】
[実施例]
以下では、実施例および比較例について説明する。表1は、上記したような方法によって帯状ゴム部材を切断した実施例、および、カッター41を横行方向(実施形態のY方向)にだけ移動させて帯状ゴム部材を切断した比較例の加硫工程後の評価結果を示す表である。実施例および比較例の「バルジ評点」は、複数のタイヤの「バルジ評点」の平均値を、比較例を「1」として標準化した値を示している。「バルジ評点」は、検査員が接合部の凹凸について触指官能検査を行った評点であり、接合部の凹凸が少ない方が評点が高い。すなわち、タイヤの品質が高い。「ディフェクト」は接合部の傷等の外観の問題であり、ない方がよい。
【0038】
【0039】
表1に示すように、実施例では押込角(カッターの横行のみ行う比較例との間で用語を整合するため、以下では、カッターの傾斜角と呼ぶ、表1も同じ)は20度である。比較例ではカッターの傾斜角は45度である。帯状ゴム部材の厚みは均一ではないため、傾斜角が大きいと、帯状ゴム部材の切断面同士を接合したときに接合部のゴムボリュームが局所的に集中しやすく、ゴムボリュームが集中した箇所は凸(バルジ)になりやすいことが知られている。また、バルジの両端は、凹み(デント)になりやすい。そのため、接合部の凹凸に関しては、傾斜角は小さいことが望ましい。
【0040】
一方、傾斜角が小さいと、接合部の外観の問題(加硫後のタイヤでは、接合部のディフェクト)が多くなる傾向が知られている。これは、傾斜角が小さいと、帯状ゴム部材の切断面端部の形状(例えば、潰れやうねり)が接合後の形状に影響しやすいためである。そのため、接合部の凹凸とディフェクトとをともに解決するためには、傾斜角を適切な角度にするとともに、切断面端部の潰れやうねりが小さくなるように、帯状ゴム部材をシャープに切断する必要がある。なお、特許文献1にも記載されているように、傾斜角が小さいとカット不良が発生しやすいことが知られている。
【0041】
表1に示すように、実施例では「ディフェクト」が発生していない。比較例では「ディフェクト」が発生している。これは、実施例では、比較例よりも帯状ゴム部材をシャープに切断できたことを示している。実施例の「バルジ評点」が比較例よりも高いのは、実施例の傾斜角が比較例よりも小さいためであると考えられる。しかし、前述したように、傾斜角が小さいとディフェクトが発生しやすい。従って、実施例では、比較例よりもかなり良好な切断面が形成されていることが推測される。少なくとも、表1に示されているように、実施例では、比較例よりもディフェクトが抑制されている。
【0042】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係るタイヤ製造装置10およびタイヤの製造方法が奏する作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係るタイヤ製造装置10は、帯状ゴム部材5を切断可能な平板状のカッター41と、帯状ゴム部材5の厚み方向に斜交するZ方向と帯状ゴム部材5の長手方向に交差するY方向とに延びるようにカッター41を支持するとともにZ方向およびY方向にカッター41を動かすカッター支持装置42と、カッター支持装置42を制御する制御装置70と、を備えている。制御装置70は、カッター支持装置42を制御してカッター41をZ方向およびY方向に動かすことによりカッター41に帯状ゴム部材5を切断させる切断制御部75を備えている。かかるタイヤ製造装置10によれば、実施例の説明に記載したように、帯状ゴム部材5を良好に切断することができる。これにより、加硫後のタイヤにおいて接合面の外観を改善することができる。
【0044】
本実施形態では、カッター支持装置42は、帯状ゴム部材5の厚み方向に対するカッター41の角度(押込角θ1)を変化させることが可能な傾動機構42Aを備えている。制御装置70は、押込角θ1と押込角θ1に対応するZ方向とが登録された押込角登録部71と、傾動機構42Aを制御して押込角登録部71に登録された押込角θ1でカッター41を支持させる押込角制御部72と、を備えている。かかるタイヤ製造装置10によれば、押込角θ1を変化させることができるため、適切な押込角θ1を知ることができる。押込角θ1を適切な角度とすることの利点については、前述した通りである。なお、複数種類の帯状ゴム部材5を切断装置40で切断する場合には、帯状ゴム部材5の種類に応じて押込角θ1およびZ方向を変えることも可能である。
【0045】
本実施形態では、カッター41は、帯状ゴム部材5の側の端部に形成された刃部41aを備え、傾動機構42Aは、刃部41aを軸としてカッター41を傾動させるように構成されている。かかるタイヤ製造装置10によれば、押込角θ1を変えても刃部41aの位置は不動である。そのため、押込角θ1を変えても、帯状ゴム部材5の切断面を同じ場所に形成することができる。
【0046】
本実施形態では、カッター支持装置42は、帯状ゴム部材5の幅方向に対するカッターの角度(横行角θ2)を変化させることが可能な旋回機構42Bを備えている。制御装置70は、横行角θ2と横行角θ2に対応するY方向とが登録された横行角登録部73と、旋回機構42Bを制御して、横行角登録部73に登録された横行角θ2でカッター41を支持させる横行角制御部74と、を備えている。かかるタイヤ製造装置10によれば、横行角θ2を変化させることができるため、適切な横行角θ2を知ることができる。複数種類の帯状ゴム部材5を切断装置40で切断する場合には、帯状ゴム部材5の種類に応じて横行角θ2およびY方向を変えることも可能である。
【0047】
本実施形態に係るタイヤ製造装置10は、カッター41の移動方向を測定する測定装置43を備えている。制御装置70は、切断制御部75の制御によってカッター41が移動した方向のデータを測定装置43から取得し保存するデータ取得部77を備えている。かかるタイヤ製造装置10によれば、実際にカッター41が移動した方向のデータを取得しているため、切断工程S20の工程管理や、不具合が発生したときの原因解析にデータを役立てることができる。例えば、実際にカッター41が移動した方向が予め定められた管理値から外れた場合には、切断工程S20を止めることができる。なお、データ取得部77によって取得される他のデータ、例えばカッター41の温度データや移動速度のデータ等についても同様である。
【0048】
以上、一実施形態に係るタイヤ製造装置およびタイヤの製造方法について、種々説明した。しかし、本発明のタイヤの製造装置および製造方法は、特に言及されない限り、上述した実施形態に限定されない。例えば、タイヤ製造装置は、切断工程を全て自動で行うように構成されていなくてもよい。タイヤの製造方法は、一部に手動の工程を含んでいてもよいが、帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向(上記した実施形態ではZ方向)と帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向(上記した実施形態ではY方向)とに延びるように平板状のカッターを支持し、カッターを第1方向および第2方向に動かして帯状ゴム部材を切断する工程を含んでいればよい。
【0049】
切断工程において測定され管理される項目は、上記したものには限定されない。切断工程では、上記した以外の項目が管理されてもよく、上記した項目の管理が省略されてもよい。
【0050】
種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。本明細書は以下の発明を含んでおり、以下の発明は、上記した実施形態には限定されない。
【0051】
本発明(1)は、帯状ゴム部材を切断可能な平板状のカッターと、帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるようにカッターを支持するとともに第1方向および第2方向にカッターを動かすカッター支持装置と、カッター支持装置を制御する制御装置と、を備えたタイヤ製造装置であり、制御装置は、カッター支持装置を制御してカッターを第1方向および第2方向に動かすことによりカッターに帯状ゴム部材を切断させる切断制御部を備えている。
【0052】
本発明(2)は、本発明(1)に記載のタイヤ製造装置であり、カッター支持装置は、帯状ゴム部材の厚み方向に対するカッターの角度を変化させることが可能な第1角度調整機構を備えている。制御装置は、帯状ゴム部材の厚み方向に対するカッターの角度と当該角度に対応する第1方向とが登録された第1角度登録部と、第1角度調整機構を制御して第1角度登録部に登録された角度でカッターを支持させる第1角度制御部と、を備えている。
【0053】
本発明(3)は、本発明(2)に記載のタイヤ製造装置であり、カッターは、帯状ゴム部材の側の端部に形成された刃部を備えている。第1角度調整機構は、刃部を軸としてカッターを傾動させるように構成されている。
【0054】
本発明(4)は、本発明(1)~(3)のいずれか一つに記載のタイヤ製造装置であり、カッター支持装置は、帯状ゴム部材の幅方向に対するカッターの角度を変化させることが可能な第2角度調整機構を備えている。制御装置は、帯状ゴム部材の幅方向に対するカッターの角度と当該角度に対応する第2方向とが登録された第2角度登録部と、第2角度調整機構を制御して第2角度登録部に登録された角度でカッターを支持させる第2角度制御部と、を備えている。
【0055】
本発明(5)は、本発明(1)~(4)のいずれか一つに記載のタイヤ製造装置であり、カッターの移動方向を測定する測定装置をさらに備えている。制御装置は、切断制御部の制御によってカッターが移動した方向のデータを測定装置から取得し保存するデータ取得部を備えている。
【0056】
本発明(6)は、タイヤの製造方法であり、帯状ゴム部材の厚み方向に斜交する第1方向と帯状ゴム部材の長手方向に交差する第2方向とに延びるように平板状のカッターを支持し、カッターを第1方向および第2方向に動かして帯状ゴム部材を切断する工程を含む。
【符号の説明】
【0057】
5 帯状ゴム部材
10 タイヤ製造装置
40 切断装置
41 カッター
41a 刃部
42 カッター支持装置
42A 傾動機構(第1角度調整機構)
42B 旋回機構(第2角度調整機構)
43 測定装置
70 制御装置
71 押込角登録部(第1角度登録部)
72 押込角制御部(第1角度制御部)
73 横行角登録部(第2角度登録部)
74 横行角制御部(第2角度制御部)
75 切断制御部
77 データ取得部
Z 第1方向
Y 第2方向
θ1 押込角(厚み方向に対する角度)
θ2 横行角(幅方向に対する角度)