(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021391
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】食品運搬容器へのシート掛け治具
(51)【国際特許分類】
B08B 17/04 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B08B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124185
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】592053778
【氏名又は名称】株式会社日本設計工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名倉 成之
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 歴労
(57)【要約】 (修正有)
【課題】番重などの食品運搬容器内に、簡単に、且つ、確実に柔軟性樹脂シートを押し込んで底面、内周面及び開口縁部を被うことができるシート掛け治具を提供する。
【解決手段】食品運搬容器1へのシート掛け治具10は、上方に開口した箱状の食品運搬容器1の開口縁部4及び内側空間3における底面3A及び内周面3Bを被うように柔軟性樹脂シート5を、相対的に上方から内側空間3に押し込むための箱形状の挿入部20と、ヒンジ部30と、把持部40とを有してなり、挿入部20は、上向に開口した箱状で同一形状の一対の分割挿入部21A、21Bからなり、ヒンジ部30は、分割挿入部21A、21Bを並べた状態で隣接する一対の側壁である対向側壁22A、22Bの上端縁である対向側壁上端縁を一定範囲で相対的に揺動自在に連結するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口した箱状の食品運搬容器の開口縁部及び内側空間における底面及び内周面を被うように柔軟性樹脂シートを、相対的に上方から前記内側空間に押し込むための箱形状の挿入部と、ヒンジ部と、把持部とを有してなり、
前記挿入部は、上向に開口した箱状で同一形状の一対の分割挿入部からなり、
前記ヒンジ部は、前記分割挿入部を並べた状態で隣接する一対の対向側壁の開口縁部である対向側壁上端縁を一定範囲で相対的に揺動自在に連結するように構成され、
前記把持部は前記ヒンジ部を介して前記挿入部を前記食品運搬容器に対して相対的に持ち上げ押下げ可能とされ、
前記分割挿入部は、水平面上におかれたとき隣接する前記対向側壁が、相互に隙間をもって平行状態となり、相対的に上方に持ち上げられたとき前記対向側壁における対向側壁下端縁が接触して、該対向側壁の外面が前記対向側壁下端縁で交わるV字形状となるように、前記対向側壁の上端が前記ヒンジ部により連結されていることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具。
【請求項2】
請求項1において、
前記分割挿入部は、前記柔軟性樹脂シートを介して前記内側空間に挿入されるときに、前記柔軟性樹脂シートとの間の空気を逃す脱気手段を備え、前記脱気手段は、挿入部底面、側壁をかご状としたときのかご目部の孔、又は、前記挿入部底面、側壁の外側面に設けられた外側溝部であることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具。
【請求項3】
請求項2において、
前記分割挿入部の前記側壁のうち、前記対向側壁は一枚板状に構成されていて、前記対向側壁以外の側壁及び前記挿入部底面に、前記脱気手段が設けられていることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記分割挿入部における前記対向側壁の反対側に離間している外側側壁の下側角部が円弧状とされ、且つ、少なくともその表面が前記柔軟性樹脂シートに対して滑動可能な材料から構成されていることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記ヒンジ部は、前記分割挿入部を水平面上に置いたとき、この水平面と直交し、且つ、前記対向側壁上端縁に沿って下平面内に設けられた板状の固定バーと、この固定バー下端縁の厚さ方向両側面と前記対向側壁上端縁との間にそれぞれ配置された一対のヒンジとを含んで構成され、
前記一対のヒンジにおける一対のヒンジピンは、前記固定バーの下端における固定バー厚さ方向両側角部に配置され、前記一対のヒンジにおけるヒンジ羽根の長さ、及び、前記一対のヒンジピン間の距離により前記対向側壁間の隙間を形成していることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば番重と称されるような食品運搬容器へのシート掛け治具に関する。
【背景技術】
【0002】
番重は、蓋の無い箱で、両端に運搬者が手を掛けられるように穴が空けられていることもあり、大きさは様々であるが、人一人が両手で持てることが基本とされている。
【0003】
特徴としては、薄型であること、厚板が用いられている事が挙げられるが、これは運搬容器としてまた積み重ねに耐えるために丈夫さが求められたためと考えられている。
【0004】
主に、製菓、製パンや製麺や餅などの製品の湿度管理が重要な製造業で用いられている。
【0005】
実際に用いられる時は、多くは、シートで番重の内側(底面、内周面)から開口縁にかけて覆い、その上に、麺や餅、パン、菓子等を載せて運搬するようにされている。
【0006】
このシートを掛ける過程は、特に自動化されてはいない。又、シートとしては、市販の袋をそのまま用いている。即ち、シートとして用いられる場合は、二枚構造となっている。
【0007】
「番重」については特許文献1、「シート」については特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-187620号公報
【特許文献2】特開2007-131285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、近年、コンビニエンスストア向けなどの菓子やパンなどは、食品工場で大量に生産され、これを運搬するために番重が用いられているが、シートを番重の内側に敷く作業は時間が掛かって、食品の生産に追いつけないこともあるという問題点があった。
【0010】
この発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、袋状ではない一枚のシートを、容易に、且つ確実に、番重のような食品運搬容器の内側に敷いて、且つ、開口縁部に掛けることが出来るようにしたシート掛け治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上方に開口した箱状の食品運搬容器の開口縁部及び内側空間における底面及び内周面を被うように柔軟性樹脂シートを、相対的に上方から前記内側空間に押し込むための箱形状の挿入部と、ヒンジ部と、把持部とを有してなり、前記挿入部は、上向に開口した箱状で同一形状の一対の分割挿入部からなり、前記ヒンジ部は、前記分割挿入部を並べた状態で隣接する一対の対向側壁の開口縁部である対向側壁上端縁を一定範囲で相対的に揺動自在に連結するように構成され、前記把持部は前記ヒンジ部を介して前記挿入部を前記食品運搬容器に対して相対的に持ち上げ押下げ可能とされ、前記分割挿入部は、水平面上におかれたとき隣接する前記対向側壁が、相互に隙間をもって平行状態となり、相対的に上方に持ち上げられたとき前記対向側壁における対向側壁下端縁が接触して、該対向側壁の外面が前記対向側壁下端縁で交わるV字形状となるように、前記対向側壁の上端が前記ヒンジ部により連結されていることを特徴とする食品運搬容器へのシート掛け治具により前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明による食品運搬容器へのシート掛け治具によれば、一枚の柔軟性樹脂シートを食品運搬容器の開口縁部を被うようにして掛けて、その上から、柔軟性樹脂シートを垂直に押下げることによって、柔軟性樹脂シートを食品運搬容器の内側空間における底面及び内周面と開口縁部を一動作で覆うことが出来る、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例1に係るシート掛け治具により食品運搬容器に柔軟性樹脂シートを押し込む直前の状態を示す斜視図
【
図2】
図1に示されるシート掛け治具及び食品運搬容器を示す
図1のII-II線に沿う断面図
【
図3】シート掛け治具により柔軟性樹脂シートを食品運搬容器の内側及び開口の上端縁に掛ける作業を終了した状態を示す
図2と同様の断面図
【
図4】同終了状態で、柔軟性樹脂シートを取り除いた状態で示す斜視図
【
図5】分割挿入部の側壁に、脱気部の一例として外側溝部を設けた実施態様を示す斜視図
【
図6】本発明のシート掛け治具の実施例2を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示されるように、本発明の実施例1に係る食品運搬容器1へのシート掛け治具10は、上方に開口した箱状の食品運搬容器1の開口縁部4及び内側空間3における底面3A及び内周面3Bを被うように柔軟性樹脂シート5を上方から内側空間3に押し込むための箱形状の挿入部20と、ヒンジ部30と、把持部40とを有する構成となっている。
【0015】
挿入部20は、上向に開口した箱状で同一形状の一対の分割挿入部21A、21Bからなり、ヒンジ部30は、分割挿入部21A、21Bを並べた状態で隣接する一対の側壁である対向側壁22A、22Bの上端縁である対向側壁上端縁23A、23B(
図3参照)を一定範囲で相対的に揺動自在に連結するように構成されている。
【0016】
把持部40は、ヒンジ部30及び、挿入部20を持ち上げて、移動させたり押し込んだり、引き出し可能に構成されている。
【0017】
ヒンジ部30は、分割挿入部21A、21Bの対向側壁22A、22Bが、分割挿入部21A、21Bを水平面上においたとき、相互に隙間をもって平行状態となり、上方に持ち上げられたとき、対向側壁22A、22Bにおける対向側壁下端縁24A、24B(
図2参照)が接触して、対向側壁22A、22BがV字形状となるように、対向側壁22A、22Bの上端を連結している。
【0018】
分割挿入部21A、21Bは、内側空間3に挿入されるときに、柔軟性樹脂シート5との間の空気を逃すために脱気手段として、かご状とされ、分割挿入部21A、21Bを押下げて行くと、そのかご目部36A、36Bの孔から、分割挿入部21A、21Bの分割内側空間28A、28B側に逃すことが出来るようにされている。
【0019】
なお、脱気手段としては、かご目部の他に、
図5に示されるように、分割挿入部21A、21Bの側壁及び底面に、例えば外側溝部37A、37Bを形成してもよい。
【0020】
又、上記ヒンジ部30の下側の、対向側壁22A、22Bを、
図6に示される実施例2のように、脱気部35を設けることなく、平板状対向側壁27A、27Bとして、かご目部36A、36Bは、あるいは、外側溝部37A、37Bは他の部分にのみ設けるようにしてもよい。
【0021】
ヒンジ部30を介して持ち上げられる時の、あるいは押下げるときの力が対向側壁22A、22Bに強く加わるが、平板状対向側壁27A、27Bとすることにより耐久性を増大できる。
【0022】
又、この実施例1に係るシート掛け治具10は、
図1、
図2に示されるように、分割挿入部21A、21Bの特に
図2に示されるように、ヒンジ部30から外側に離れた底面及び側壁の角部である下側角部26A、26Bを円弧状として、柔軟性樹脂シート5に対して滑りやすく構成されている。この下側角部26A、26Bに、特に柔軟性樹脂シートとの摩擦係数が小さくなるような樹脂や、コーティングをするとよい。
【0023】
次に、上記実施例1に係るシート掛け治具10により柔軟性樹脂シート5を食品運搬容器1の開口2から下方に押し込んで内側空間3の底面3A、内周面3B、及び開口縁部4を被うように装着する作業について説明する。
【0024】
なお、シート掛け治具10の持ち上げ、押し込みは人手に限らず、ロボット、専用機によって行い、また、食品運搬容器1及び/又はシート掛け治具10を固定し、食品運搬容器1を専用機により上下させる場合を含むものとする。
【0025】
まず、
図1に示されるように、柔軟性樹脂シート5が、食品運搬容器1の、開口縁部4を含む開口2に被った状態とする。
【0026】
次に、シート掛け治具10を、その把持部40に手を掛けて持ち上げて、
図1に示されるような状態とする。即ち、分割挿入部21A、21Bの対向側壁22A、22Bにおける、その対向側壁下端縁24A、24Bが接触した状態とする。この状態では、対向側壁22A、22Bは、横から見たときV字形状となっている。
【0027】
次に、分割挿入部21A、21Bを、食品運搬容器1の開口2に合わせて真上に位置させ、そのまま下ろす。その過程で、
図2に示されるように、分割挿入部21A、21Bにおける外側側壁25A、25Bの下側角部26A、26Bは、柔軟性樹脂シート5を押下げる状態となる。
【0028】
この時、下側角部26A、26Bが柔軟性樹脂シート5との摩擦係数が少なくなるような素材あるいはコーティングされ、且つ、該下側角部26A、26Bは円弧状とされているので、柔軟性樹脂シート5に強い摩擦によって傷をつけたりすることなく、シート掛け治具10を降下させるに従って、柔軟性樹脂シート5は食品運搬容器1の底面3Aに向かって押し下げられることになる。
【0029】
その状態のまま、シート掛け治具10を押し下げると、
図3に示されるように、2つの分割挿入部21A、21Bの底面が柔軟性樹脂シート5を介して、食品運搬容器1の底面3Aに上方から接触することになる。
【0030】
その途中では、把持部40を、押下げると、
図2の状態のまま、分割挿入部21A、21Bの下側角部26A、26Bが柔軟性樹脂シート5を押し広げていくが、この下側角部26A、26Bが、食品運搬容器1の底面3Aに、柔軟性樹脂シート5を介して接触した時、該下側角部26A、26Bは、
図2において左右方向に拡がっていき、対向側壁22A、22Bの対向側壁下端縁24Aと24Bは徐々に離間していく。即ち、把持部40によって押下げていくと、その下向きの力が下側角部26A、26Bが外側に拡がる力に変換されて、柔軟性樹脂シート5は、確実に内側空間3内で押下げられ、且つ、
図2において左右方向に広げられることになる。
【0031】
最終的には、
図3に示されるような状態となる。このとき、分割挿入部21A、21Bにおける対向側壁22A、22B以外の側壁、及び底面は、柔軟性樹脂シート5に接触して、その間の空気が、かご目部36A、36Bの孔から、分割挿入部21A、21Bの分割内側空間28A、28B内に押し出されるので、分割挿入部21A、21Bと、押下げられた柔軟性樹脂シート5との間に空気だまりが生じたりすることはない。
【0032】
なお、
図6の実施例2のように、実施例1における分割挿入部21A、21Bの側壁のうち、対向側壁22A、22Bを平板状対向側壁27A、27Bとして、対向側壁22A、22B以外の側壁及び挿入部底面に、脱気部35を設けるようにしてもよい。
【0033】
このようにすると、把持部40を介して伝達される押下げ力に対する剛性が増加され、耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0034】
1…食品運搬容器
2…開口
3…内側空間
3A…底面
3B…内周面
4…開口縁部
5…柔軟性樹脂シート
10…シート掛け治具
20…挿入部
21A、21B…分割挿入部
22A、22B…対向側壁
23A、23B…対向側壁上端縁
24A、24B…対向側壁下端縁
25A、25B…外側側壁
26A、26B…下側角部
27A、27B…平板状対向側壁
28A、28B…分割内側空間
30…ヒンジ部
31…固定バー
32A、32B…ヒンジ
33A、33B…ヒンジピン
34A、34B…ヒンジ羽根
35…脱気部
36A、36B…かご目部
37A、37B…外側溝部
40…把持部