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特開2024-21406魚釣用リール及び魚釣用リールにおける着脱ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021406
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】魚釣用リール及び魚釣用リールにおける着脱ユニット
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/017 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A01K89/017
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124214
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】武智 邦生
(72)【発明者】
【氏名】大古瀬 広樹
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108GA18
2B108GA24
2B108GA37
(57)【要約】
【課題】ケーブルによる接続を行うことなく、魚釣用リールに電力を供給する。
【解決手段】魚釣用リールのリール本体に設けられ、外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電し、受電した電力を供給可能な電源部を備えて魚釣用リールを構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール本体に設けられ、外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電し、受電した電力を供給可能な電源部を備える魚釣用リール。
【請求項2】
前記電源部は、
前記外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電する受電部と、
前記リール本体に設けられた電気機器に給電する給電部と、を備える
請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記リール本体に設けられ、前記電源部から電力の供給を受けて所定の機能に応じた動作を行う動作部を備える請求項1または2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記動作部は、前記電源部が外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受けているときに動作する
請求項3に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記動作部は、外部通信機器と通信を行う通信部を有する
請求項4に記載の魚釣用リール。
【請求項6】
前記通信部は、前記外部通信機器と無線で通信を行う
請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項7】
前記動作部は、
前記通信部と通信可能に接続された外部通信機器から送信されたパラメータの設定内容を示すパラメータ設定情報を前記通信部から取得し、取得したパラメータ設定情報に基づいて、前記魚釣用リールにおける所定のパラメータを設定するパラメータ設定部を有する
請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項8】
前記動作部は、
記憶部に記憶されたデータを前記通信部と通信で接続された前記外部通信機器に送信させるデータ送信制御部を有する、請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項9】
前記リール本体は、着脱可能な着脱ユニットを有し、前記着脱ユニットは、前記電源部、前記動作部、及び、通信部を水密構造内に包含する
請求項5に記載の魚釣用リール。
【請求項10】
前記リール本体は、スプール軸の一端を回転可能に保持し、ハンドル軸が取り付けられる第1本体部と、前記スプール軸の他端を回転可能に保持する第2本体部とを有し、前記着脱ユニットは、前記第2本体部に設けられる
請求項9に記載の魚釣用リール。
【請求項11】
魚釣用リールのリール本体に対して着脱可能な着脱ユニットであって、
外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電可能な電源部と、前記電源部から電力の供給を受けて所定の機能に応じた動作を行う動作部と、外部通信機器と通信を行う通信部と、を水密構造内に包含する筐体を備える
魚釣用リールにおける着脱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リール及び魚釣用リールにおける着脱ユニットに関するもので、特に、電子部品やマイクロコンピュータ(CPU)を含む回路基板に配置された複数の電気部品を内包する魚釣用リール及び魚釣用リールにおける着脱ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気部品やマイクロコンピュータ(CPU)を含む回路基板に配置された複数の電気部品を内包する魚釣用リールにおいては、内包される回路基板を電気部品とともに絶縁皮膜により覆うようにされた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、必要に応じて、CPU等の制御プログラムが正常に動作するか否かの確認や、バージョンアップやソフトウェアの設定変更により制御パターンを変更する等のために、外部機器と接続するための外部機器接続部が設けられたり、また、外部から電力を充電及び給電のための充給電端子が設けられたりしているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4384876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の魚釣用リールでは、特許文献1のように、包含される回路基板を電気部品とともに絶縁皮膜により覆うようにしたとしても、外部機器接続部としてのコネクタの部位に対してケーブルにより外部機器を接続するようにされているので、外部機器接続部から浸水したり、異物が混入したりして、故障の要因の一つとなっていた。
また、充給電のための充給電端子においても、同様に、充給電端子から浸水したり、異物が混入したりして、故障の要因の一つとなっていた。
【0005】
本発明は、ケーブルによる接続を行うことなく、電力を供給できるようにすることを目的とする。また、包含される電気部品やマイクロコンピュータ(CPU)を含む回路基板に電力の供給を受けて、所定の機能に応じた動作を行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決する本発明の一態様は、魚釣用リールのリール本体に設けられ、外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電し、受電した電力を供給可能な電源部を備える魚釣用リールである。
【0007】
(2)本発明の一態様は、(1)に記載の魚釣用リールであって、前記電源部は、前記外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電する受電部と、前記リール本体に設けられた電気機器に給電する給電部とを備えてよい。
【0008】
(3)本発明の一態様は、(1)または(2)に記載の魚釣用リールであって、前記リール本体に設けられ、前記電源部から電力の供給を受けて所定の機能に応じた動作を行う動作部を備えてよい。
【0009】
(4)本発明の一態様は、(3)に記載の魚釣用リールであって、前記動作部は、前記電源部が外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受けているときに動作してよい。
【0010】
(5)本発明の一態様は、(3)または(4)に記載の魚釣用リールであって、前記動作部は、外部通信機器と通信を行う通信部を有してよい。
【0011】
(6)本発明の一態様は、(5)に記載の魚釣用リールであって、前記通信部は、前記外部通信機器と無線で通信を行ってよい。
【0012】
(7)本発明の一態様は、(5)または(6)に記載の魚釣用リールであって、前記動作部は、前記通信部と通信可能に接続された外部通信機器から送信された前記パラメータの設定内容を示すパラメータ設定情報を前記通信部から取得し、取得したパラメータ設定情報に基づいて、前記魚釣用リールにおける所定のパラメータを設定するパラメータ設定部を有してよい。
【0013】
(8)本発明の一態様は、(5)から(7)のいずれか1つに記載の魚釣用リールであって、前記動作部は、記憶部に記憶されたデータを前記通信部と通信で接続された前記外部通信機器に送信させるデータ送信制御部を有してよい。
【0014】
(9)本発明の一態様は、(5)から(8)のいずれか1つに記載の魚釣用リールであって、前記リール本体は、着脱可能な着脱ユニットを有し、前記着脱ユニットは、前記電源部、前記動作部、及び、通信部を水密構造内に包含する。
【0015】
(10)本発明の一態様は、(9)に記載の魚釣用リールであって、前記リール本体は、スプール軸の一端を回転可能に保持し、ハンドル軸が取り付けられる第1本体部と、前記スプール軸の他端を回転可能に保持する第2本体部とを有し、前記着脱ユニットは、前記第2本体部に設けられてよい。
【0016】
(11)本発明の一態様は、魚釣用リールのリール本体に対して着脱可能な着脱ユニットであって、外部の無線給電機器から無線で伝送される電力を受電可能な電源部と、前記電源部から電力の供給を受けて所定の機能に応じた動作を行う動作部と、外部通信機器と通信を行う通信部と、を水密に包含する筐体を備える魚釣用リールにおける着脱ユニットである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ケーブルによる接続を行うことなく、魚釣用リールに電力を供給することが可能となる。また、魚釣用リールが電力の供給を受けて、所定の機能に応じた動作を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る魚釣用リールの外観例を示す図である。
図2】本実施形態に係る魚釣用リールの主本体部から着脱ユニットを取り外した状態の外観例を示す図である。
図3】本実施形態に係る着脱ユニットにおける回路ユニットの配置態様例を示す図である。
図4】本実施形態に係る着脱ユニットと、無線給電機器と、ユーザ端末300とを示す図である。
図5】本実施形態に係る着脱ユニットの機能構成例を示す図である。
図6】本実施形態に係る回路ユニット部とユーザ端末とが、制動制御パラメータの設定とキャストログの転送に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2は、本実施形態の魚釣用リール1の外観例を示している。図1は、本体10に着脱ユニット20が取り付けられた状態の魚釣用リール1の外観例を示している。図2は、本体10(リール本体の一例)から着脱ユニット20が取り外された状態の魚釣用リール1の外観例を示している。
図1及び図2は、両軸受けリールである魚釣用リール1の例を示している。
同図の魚釣用リール1は、本体10、ハンドル30、スプール40、及びクラッチ操作部50を備える。
【0020】
本体10は、本体10と着脱ユニット20とを含む。本体10は、側板部11とフレーム部12とサムレスト13とを含む。
フレーム部12は、スプール40のスプール軸の一端を回転可能に保持し、ハンドル軸が取り付けられるハンドル側フレーム部12A(第1本体部の一例)と、スプール40のスプール軸の他端側にて、当該スプール40を回転可能に保持するホールド側フレーム部12B(第2本体部の一例)を含む。
【0021】
着脱ユニット20は、本体10に対して着脱可能である。具体的には、着脱ユニット20は、本体10においてハンドル30とは反対の側となるホールド側フレーム部12Bに設けられる。
同図のように着脱ユニット20が本体10に装着されている状態では、本体10と着脱ユニット20のカバー21とにより魚釣用リール1の外形を形成する。
【0022】
同図に示されるように、着脱ユニット20は、カバー21の裏側に制動ユニット部22が一体となるように設けられている。制動ユニット部22は、キャスト時にフリーの状態で回転するスプール40に制動を与える制動部材を収納する部位である。制動ユニット部22は、カバー21を含む着脱ユニット20の筐体と一体化されるようにして設けられる。
【0023】
制動ユニット部22は、着脱ユニット20が本体10に装着されているときには、スプール40の側面におけるスプール軸41とスプール周縁部42との間の円状のスプール空間部43に挿入される状態となる。
つまり、本体10がスプール軸41の一端を回転可能に保持し、着脱ユニット20がスプール軸41の他端を回転可能に保持するようにされている。
【0024】
スプール軸41には制動磁石が設けられている。スプール軸41はスプール40と一体となって回転する。制動ユニット部22内の制動ユニットは、着脱ユニット20が本体10に装着されて制動ユニット部22がスプール空間部43内に挿入されている状態では、スプール軸41の外周を取り巻くように複数のコイルが配置される状態となる。複数のコイルは直列接続されている。
【0025】
図3は、着脱ユニット20の筐体内部に収容される回路ユニット部23(電気機器の一例)の配置態様例を示している。
回路ユニット部23は、受電コイル23a(受電部の一例)、回路基板23b、及び通信モジュール23c(通信部の一例)を備える。回路ユニット部23は、受電コイル23a、回路基板23b、及び通信モジュール23cが互いに固定されることで1つの部品として形成されてよい。
【0026】
受電コイル23aは、無線給電機器2の給電コイルから伝送される電力を受けるコイルである。受電コイル23aが受けた電力は直流化されて、回路基板23bにおける所定の回路部や通信モジュール23cに供給される。
【0027】
通信モジュール23cは、外部の通信機器と所定の近距離無線通信方式による通信を行う機能を有するモジュールである。通信モジュール23cが対応する近距離無線通信方式は特に限定されないが、BLE(Bluetooth Low Energy)、NFC(Near Field Communication)等であってよい。
【0028】
回路基板23bは、制動ユニットによる制動制御に対応する回路(制動回路)が実装された基板である。回路基板23bにおいては、制動回路を構成するCPU(Central Processing Unit)、メモリ等が実装されている。また、回路基板23bには、受電コイル23aが受けた交流の電力を直流化して出力可能な電源部に対応する回路の部品も実装されてよい。
回路基板23bに実装された制動制御に関する回路(制動回路)は、スプール40の回転に応じて制動ユニット部22内の制動ユニットのコイルに発生された電力により動作することができる。キャストに際して制動制御を行う際には、回路基板23bの制動制御に対応する回路は、制動ユニットのコイルに発生された電力により動作する。
また、回路基板23bに実装された制動回路は、受電コイル23aを元とする電力により動作することもできる。ユーザ端末との通信を介して、制動制御に関するパラメータの変更や、メモリに記憶されたキャストログのユーザ端末への送信等を行う際には、回路基板23bの制動制御に対応する回路は、受電コイル23aを元として供給される電力により動作する。
【0029】
通信モジュール23cは、本実施例においては、上記のように受電コイル23aから供給された電力を元とする電源により動作する。なお、通信モジュール23cは、キャストによるスプール40の回転に応じて発生する電力よっては、動作するように構成されてもよい。
【0030】
本実施形態において着脱ユニット20の筐体は水密性を有するように形成されている。このように水密性を有する着脱ユニット20の筐体内に回路ユニット部23が収容(包含)されていることで、回路ユニット部23が浸水することがないようにされている。
【0031】
本実施形態の魚釣用リール1の制動ユニットによる制動制御について説明する。
釣り人がクラッチを解放してスプール40の回転が自在なようにした状態で仕掛けのキャスティングを行う。キャスティングに応じてスプール40は、巻回された釣り糸を繰り出す方向に回転する。
【0032】
スプール40が回転することに応じて、制動ユニットにおけるコイルが発電し、発電された電力が回路基板23bに供給される。回路基板23bにおける制動回路は、このように供給された電力により起動する。
【0033】
メモリには、釣り人により設定された制動モードと制動強度とが記憶されている。制動制御として、制動回路は、設定された制動モードと制動強度との組み合わせに基づいて、制動ユニットのコイルに流れる電流の経路に設けられる制動スイッチについて、所定周期によるPWM信号のデューティ比を設定してオン・オフ制御を行う。
【0034】
制動モードは、PWM信号のデューティ比についての時間経過に応じた変化について定めたパターンを示すパラメータである。制動モードは、それぞれ、時間経過に応じてデューティ比が減少するが、制動モードごとに、デューティ比の変更範囲における最大値及び最小値や、時間経過に応じたデューティ比の減少のパターンが異なる。
制動強度は、設定された制動モードのもとでの制動の強度の調整を行うパラメータである。
設定において選択可能な制動モードの数と制動強度の数とについては特に限定されない。一例として、選択可能な制動モードの数が4で選択可能な制動強度の数が8である場合には、32(4×8)の制動モードと制動強度の組み合わせが得られる。32の制動モードと制動強度との組み合わせごとにスプール40の回転を制動させるための時間経過に応じたデューティ比の変化するパターンが異なってくることになる。
【0035】
制動回路は、設定された制動モードと制動強度の組み合わせにより定まる時間ごとのデューティ比に従って、時間経過に応じてPWM信号のデューティ比を変更していく。
このように制動回路がPWM信号のデューティ比を変更して制動スイッチのオン・オフを制御することで、スプール40から繰り出される釣り糸の張力を適切に保ち、バックラッシュを防止することができる。
【0036】
上記のように、本実施形態の魚釣用リール1は、キャスト時のバックラッシュ防止のための制動制御に対応する制動制御パラメータとして、制動モードと制動強度とを有する。
釣り人は、自身がユーザとして所持するユーザ端末を利用して、制動制御パラメータの設定を行うことが可能とされる。以下に、釣り人がユーザ端末を利用して行う制動制御パラメータの設定手順について図4を参照して説明する。図4は、無線給電機器2に載せ置かれた状態の着脱ユニット20と、当該着脱ユニット20と通信するユーザ端末300を示している。
【0037】
釣り人は、制動制御パラメータの設定を変更するにあたり、例えば魚釣用リール1の本体10から着脱ユニット20を取り外し、無線給電機器2の給電面部2aに対して載せ置くようにする。このように着脱ユニット20が無線給電機器2に載せ置かれることで、無線給電機器2の内部の給電コイル2bから着脱ユニット20の受電コイル23aに電力が伝送される。
【0038】
電力伝送が良好に行われるようにするには、無線給電機器2の給電コイルと着脱ユニット20の受電コイル23aとは互いに対向するような位置関係とすることが好ましい。
具体的に、図3に示したように着脱ユニット20の内部にて受電コイル23aが配置されている場合には、図4に示すように、着脱ユニット20のカバー21が本体10に取り付けられている状態で側面となる面を下側に向けた姿勢で着脱ユニット20を給電面部2aに載せ置くことが好ましい。
図4には、上記の着脱ユニット20の姿勢が維持されるように、無線給電機器2の給電面部2aにおいて、着脱ユニット20の形状に対応させた位置決め部材2c、2cが設けられた例が示されている。
【0039】
また、着脱ユニット20は水密性を有する構造により内部に回路ユニット部23を収容している。このため、着脱ユニット20のカバー21の裏面カバー部21aは、内部が露出しないように裏面側を覆う状態となっている。
【0040】
着脱ユニット20内の受電コイル23aは、無線給電機器2から伝送された電力を、例えば回路基板23bや通信モジュール23cに供給する。
【0041】
着脱ユニット20に収容される回路ユニット部23において、通信モジュール23cは、スプール40の回転により発生された電力を元とする電源(スプール回転由来電源:以下、単に「スプール電源」という)によっては動作せず、受電コイル23aを介して無線給電機器から伝送された電力を元とする電源(給電機器由来電源:以下、単に「給電電源」という)により動作するようにされている。従って、通信モジュール23cは、図4のように着脱ユニット20が無線給電機器2に載せおかれて給電を受けている状態では、通信モジュール23cが継続的に動作することができる。
なお、本実施例においては、通信モジュール23cは、スプール電源によって動作しないようにしたが、スプール電源の余剰分で動作するようにしても良いし、また、スプール電源の余剰分を蓄電して動作するようにしてもよい。
【0042】
なお、図4では、魚釣用リール1の本体10から取り外した着脱ユニット20を無線給電機器2に対して載せ置くようにあてがった例が示されているが、例えば本体10から取り外さない状態で魚釣用リール1の着脱ユニット20側を無線給電機器2の給電面部2aにあてがうようにしもよい。また、本体10から取り外さない状態の着脱ユニット20を無線給電機器2にあてがう場合において、魚釣用リール1自体が釣竿に装着されているままの状態であってもよい。
【0043】
ユーザ端末300(外部通信機器の一例)には、制動制御パラメータ設定機能を有する管理アプリケーションがインストールされている。
釣り人は、図4のように着脱ユニット20を無線給電機器2に載せ置いて通信モジュール23cを動作させた状態において、ユーザ端末300を操作して管理アプリケーションを動作させる。
【0044】
管理アプリケーションが動作するユーザ端末300は、着脱ユニット20における通信モジュール23cと近距離無線通信を行う。ユーザ端末300は、このように通信モジュール23cと近距離無線通信により接続された状態のもとで、釣り人の操作により指定された制動制御パラメータ(制動モード、制動強度)を、着脱ユニット20内の回路基板23bに実装されるメモリに記憶させる。このようにして、釣り人は、ユーザ端末300を操作して制動制御パラメータを設定することができる。
【0045】
図5を参照して、本実施形態の着脱ユニット20の機能構成例について説明する。同図に示される機能構成例は、着脱ユニット20に収容される制動ユニットと回路ユニット部23とにより実現される。
【0046】
同図に示される着脱ユニット20においては、制動ユニット221が備えられる。制動ユニット221は、制動ユニット部22内に収容されており、制動制御部231の制御(PWM制御)に応じて、キャスト時のスプール40を制動する。
また、制動ユニット221は、内部のコイルがキャスト時のスプール40の回転に応じて発生した電力を、制動制御部231と記憶部234とのそれぞれに対応する回路等を動作させる電源(スプール電源Pw1)として供給することができる。
【0047】
また、着脱ユニット20においては、回路ユニット部23に実装された部品等により実現される機能部として制動制御部231、電源部232、動作部233、及び記憶部234を備える。
【0048】
制動制御部231は、制動制御を実行する。回路ユニット部23において制動制御部231に対応する回路は、スプール電源Pw1の供給を受けて動作可能となる。制動制御部231としての機能は、例えば回路ユニット部23に実装されたCPUがプログラムを実行することにより実現される。
【0049】
制動制御部231は、スプール電源Pw1の供給を受けて起動すると、同じキャスト対応電源の供給を受けて起動したパラメータ記憶部2341において設定値として記憶される制動制御パラメータ(制動モード、制動強度)を読み出す。制動制御部231は、読み出した制動制御パラメータに従って時間ごとのデューティ比を設定し、設定したデューティ比により制動ユニット221における制動スイッチをオン・オフ制御することにより、スプール40の回転に制動を与える。
【0050】
電源部232は、無線給電機器2から受電コイル23aに伝送された電力から生成した電源(給電電源Pw2)を出力する。電源部232は、受電コイル23aと電源供給部2321(給電部の一例)とを含む。
電源供給部2321には、無線給電機器2から受電コイル23aに伝送された電力が入力される。電源供給部2321は入力された電力を直流に変換して給電電源Pw2を生成する。電源供給部2321は、生成した給電電源Pw2を、回路ユニット部23において動作部233と記憶部234とに対応する回路に供給する。
【0051】
動作部233は、電源部232からの給電電源Pw2の供給を受けて動作し、管理アプリケーションが動作するユーザ端末300との通信を伴って実現される機能(アプリケーション対応機能)に応じた処理を実行する。本実施形態におけるアプリケーション対応機能は、制動制御パラメータ設定とキャストログ転送である。
制動制御パラメータ設定は、通信可能に接続されたユーザ端末300の制御に応じて、制動制御に用いる制動制御パラメータを設定する機能である。キャストログ転送は、キャストログ記憶部2342に記憶されるキャストログのデータを、通信可能に接続されたユーザ端末300に転送する機能である。
【0052】
動作部233は、通信モジュール23cとパラメータ設定部2331とデータ送信制御部2332とを備える。
パラメータ設定部2331は、通信モジュール23cによる通信を介して接続されるユーザ端末300の指定に応じて、制動制御に用いる制動制御パラメータを設定する。パラメータ設定部2331は、ユーザ端末300から指定された制動制御パラメータを、パラメータ記憶部2341に記憶させることで、制動制御に用いる制動制御パラメータを設定する。
【0053】
データ送信制御部2332は、通信モジュール23cによる通信を介して接続されるユーザ端末300からの要求に応じて、キャストログ記憶部2342に記憶されているキャストログのデータを、通信モジュール23cによりユーザ端末300に送信させる。
【0054】
記憶部234は、所定の情報を記憶する。記憶部234が対応するハードウェアは、例えば回路基板23bにおいて実装されたフラッシュメモリ等の記憶装置であってよい。
記憶部234は、キャスト時には制動ユニット221からのスプール電源Pw1により動作し、受電コイル23aが無線給電機器2から給電を受けているときには、給電電源Pw2により動作することが可能とされている。
【0055】
記憶部234は、パラメータ記憶部2341とキャストログ記憶部2342とを備える。パラメータ記憶部2341は、制動制御部231が制動制御に用いるものとして設定された制動制御パラメータ(制動モード、制動強度)を記憶する。
キャストログ記憶部2342は、キャストログのデータを記憶する。キャストログは、釣り人により行われたキャストについての履歴である。1回のキャストに対応するキャストログは、例えばキャストが行われた日時、飛距離、キャスト時の張力変化、キャスト時に設定されていた制動制御パターン等であってよい。
【0056】
図6のフローチャートを参照して、着脱ユニット20における回路ユニット部23とユーザ端末300とが、制動制御パラメータの設定とキャストログの転送に関連して実行する処理手順例について説明する。
【0057】
まず、回路ユニット部23が実行する処理手順例について説明する。
ステップS100:回路ユニット部23においては、無線給電機器2から受電コイル23aに電力が伝送されたことに応じて、電源供給部2321から給電電源Pw2が出力される。動作部233と記憶部234は、給電電源Pw2の供給に応じて起動する。
【0058】
ステップS102:起動後において、ユーザ端末300が通信モジュール23cの通信範囲内に位置したことに応じて、通信モジュール23cがユーザ端末300と接続を確立させる。
【0059】
ステップS104:接続が確立されている状態のもとで、回路ユニット部23のパラメータ設定部2331は、ユーザ端末300から送信されたパラメータ設定要求が通信モジュール23cにて受信されたか否かを判定する。
【0060】
ステップS106:パラメータ設定要求が通信モジュール23cにて受信されると、パラメータ設定部2331は、パラメータ記憶部2341に記憶されている制動制御パラメータを、受信されたパラメータ設定要求に含まれるパラメータ設定情報が示す制動制御パラメータにより更新する。このように制動制御パラメータが更新されることで、制動制御パラメータが変更されるようにして設定が行われたことになる。
【0061】
ステップS108:ステップS104にてパラメータ設定要求が受信されなかったと判定された場合、データ送信制御部2332は、キャストログ転送要求が受信されたか否かを判定する。キャストログ転送要求が受信されないと判定された場合には、ステップS104に処理が戻される。
【0062】
ステップS110:ステップS108にてキャストログ転送要求が受信されたと判定された場合、データ送信制御部2332は、キャストログ記憶部2342からキャストログのデータの読み出しを行う。この際、データ送信制御部2332は、キャストログ転送要求により読み出し対象とするキャストログの条件が指定されていた場合には、条件に合致するキャストログをキャストログ記憶部2342から読み出してよい。
【0063】
ステップS112:データ送信制御部2332は、ステップS110によりキャストログ記憶部2342から読み出したキャストログを通信モジュール23cからユーザ端末300に送信させる。当該ステップS112の処理の後は、ステップS104に処理が戻される。
【0064】
次に、ユーザ端末300が実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:ユーザ端末300は、自己が備える通信モジュールの通信範囲内に位置する回路ユニット部23と通信を確立させる。
ステップS202:ユーザ端末300は、釣り人の操作に応じて管理アプリケーションを起動させる。なお、管理アプリケーションの起動後にステップS200としての接続の確立が行われてもよい。
【0065】
ステップS204:ユーザ端末300は、管理アプリケーションが動作している状態のもとで、制動制御パラメータの設定に遷移させる操作(パラメータ設定遷移操作)が行われたか否かを判定する。
【0066】
ステップS206:ステップS204にてパラメータ設定遷移操作が行われたと判定された場合、ユーザ端末300は、ユーザ端末300における表示部において、アプリケーション画面としてパラメータ設定画面を表示させる。パラメータ設定画面は、制動制御パラメータを設定する操作(パラメータ設定操作)が行われる画面である。
【0067】
ステップS208:ユーザ端末300は、ステップS206により表示されたパラメータ設定画面に対するパラメータ設定操作を受け付ける。
パラメータ設定操作は、制動制御パラメータにおける制動モードと制動強度のうちの少なくともいずれか一方について、予め用意された所定数の選択肢のうちから選択する操作であってよい。具体的に、前述のように、選択可能な制動モードの数が4で選択可能な制動強度の数が8である場合、パラメータ設定操作は、4つの制動モードの選択肢のうちから1つを選択する操作と、8つの制動強度の選択肢のうちから1つを選択する操作を含む。
【0068】
ステップS210:ユーザ端末300は、制動制御パラメータの設定(変更)を指示するパラメータ設定要求を回路ユニット部23の通信モジュール23cに送信する。パラメータ設定要求は、ステップS208のパラメータ設定操作により選択された制動制御パラメータを示すパラメータ設定情報を含む。
【0069】
ステップS212:ステップS204にてパラメータ設定遷移操作が行われなかったと判定された場合、ユーザ端末300は、キャストログ転送遷移操作が行われたか否かを判定する。キャストログ転送遷移操作は、回路ユニット部23にキャストログを転送させるための操作が可能なキャストログ転送画面を表示させるための操作である。
【0070】
ステップS214:キャストログ転送遷移操作が行われた場合、ユーザ端末300は、キャストログ転送操作画面を表示部に表示させる。
【0071】
ステップS216:ユーザ端末300は、ステップS214により表示されたキャストログ転送操作画面に対してユーザが行う、ユーザ端末300へのキャストログの転送指示に関する操作(転送指示操作)を受け付ける。転送指示操作において、例えば転送対象とするキャストログの条件が指定可能とされてよい。転送対象とするキャストログの条件としては、例えば、転送対象とするキャスト日時や、設定されていた制動制御パラメータ等を挙げることができる。
【0072】
ステップS218:ユーザ端末300は、ステップS216により受け付けた転送指示操作に応じたキャストログ転送要求を回路ユニット部23の通信モジュール23cに送信する。送信されるキャストログには、キャストログの条件について転送指示操作により転指定された内容が含まれてよい。
【0073】
ステップS220:ステップS218によるキャストログ転送要求の送信に応じて回路ユニット部23は、ステップS112によりキャストログを送信する。ユーザ端末300は、送信されたキャストログを受信し、受信されたキャストログをユーザ端末300が備える記憶部に記憶させる。
【0074】
本実施形態の魚釣用リール1は、上記のように無線給電機器2による無線給電を着脱ユニット20が受けている状態のときに、回路ユニット部23における動作部233(通信モジュール23c、パラメータ設定部2331、及びデータ送信制御部2332)が動作するようにされている。これにより、本実施形態では、回路ユニット部23が無線給電機器2から無線給電を受けている状態でありさえすれば、ユーザ端末300を通信モジュール23cと通信可能に接続して、制動制御パラメータの設定やキャストログの転送などを行うことが可能とされる。
この場合、制動制御パラメータの設定やキャストログの転送などに際して、回路ユニット部23に電源を供給するためのバッテリは不要とすることができる。つまり、着脱ユニット20内にバッテリを内蔵させる必要がない。これにより、着脱ユニット20の重量の増加や大型化を抑制することが可能になる。このことは、着脱ユニット20が装着された魚釣用リール1としての重量の増加や大型化の抑制が図られることにつながる。
【0075】
また、無線給電とすることで、着脱ユニット20には外部から電力を取り込むための端子等を設ける必要がなくなる。これにより、着脱ユニット20を容易に水密構造とすることが可能となる。また、無線給電が行われているときに限定してユーザ端末300と着脱ユニット20内の通信モジュール23cとが通信し、制動制御パラメータの設定やキャストログの転送などが可能なようにすることで、着脱ユニット20内にバッテリを内蔵させる必要もなくなる。これにより、例えばバッテリの故障や劣化に応じてバッテリを交換できるように着脱ユニット20の筐体を構成する必要もなくなる。この点も、着脱ユニット20の水密性の担保に寄与している。
【0076】
なお、本実施形態において、着脱ユニット20は水密性を有さない構造であってもよい。
なお、上記実施形態においては、魚釣用リール1の本体10に対して着脱可能な着脱ユニット20内に回路ユニット部23を設けた例を挙げていた。しかしながら、回路ユニット部23は、上記実施形態の着脱ユニット20のように着脱可能な本体部分を有さない魚釣用リールの本体内に収容される態様であってよい。
【0077】
なお、上述の回路ユニット部23やユーザ端末300等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の回路ユニット部23やユーザ端末300等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるHDDやSSD等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 魚釣用リール、2 無線給電機器、2a 給電面部、2b 給電コイル、2c 位置決め部材、10 本体、11 側板部、12 フレーム部、12A ハンドル側フレーム部、12B ホールド側フレーム部、13 サムレスト、20 着脱ユニット、21 カバー、21a 裏面カバー部、22 制動ユニット部、23 回路ユニット部、23a 受電コイル、23b 回路基板、23c 通信モジュール、30 ハンドル、40 スプール、41 スプール軸、42 スプール周縁部、43 スプール空間部、50 クラッチ操作部、221 制動ユニット、231 制動制御部、232 電源部、233 動作部、234 記憶部、300 ユーザ端末、2321 電源供給部、2331 パラメータ設定部、2332 データ送信制御部、2341 パラメータ記憶部、2342 キャストログ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6