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特開2024-21411ロボットアーム、ロボットアームシステム、制御方法、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021411
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ロボットアーム、ロボットアームシステム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/06 20060101AFI20240208BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B25J9/06 B
B25J19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124224
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】井上 龍介
(72)【発明者】
【氏名】清水 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 玄
(72)【発明者】
【氏名】後藤 優斗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀治
(72)【発明者】
【氏名】木倉 宏成
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS27
3C707BS10
3C707CY22
3C707CY36
3C707HS27
3C707KS35
(57)【要約】
【課題】小型化及び軽量化を図ること。
【解決手段】ロボットアーム2は、複数の第1のリンク221及び第1の関節部222を有する第1のアーム22と、第1のアーム22を支持する長尺状の支持部材21と、支持部材21と第1のアーム22とを連結する第2の関節部23とを備える。第2の関節部23は、第1の回転軸Rx1を中心として支持部材21及び第1のアーム22の一方を他方に対して回転させることにより、支持部材21及び第1のアーム22が直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、第1のアーム22が支持部材21の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする。第1の関節部222は、第1の回転軸Rx1及び第1のアーム22の長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸Rx2を中心として隣接する2つの第1のリンク221の一方を他方に対して回転可能とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、
前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、
前記支持部材と前記第1のアームとを連結するとともに、前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とする第2の関節部とを備え、
前記第2の関節部は、
前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とし、
前記第1の関節部は、
前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とするロボットアーム。
【請求項2】
前記第2の関節部は、
前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とする請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結され、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整するための第2のアームをさらに備え、
前記第2のアームは、
前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、
前記アーム本体に取り付けられ、内部への液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備える請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項4】
前記第2の関節部は、
前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とし、
前記アーム本体及び前記カウンターウェイトの組は、
前記第1の回転軸に直交し、前記第1のアームを含む仮想平面を基準として対称に配置されるように2組設けられ、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、2つの前記カウンターウェイトの質量がそれぞれ変更されることにより、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとがそれぞれ調整される請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記アーム本体は、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第1の状態に設定されている際に、前記支持部材に重なり合う姿勢となり、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、前記第2の回転軸に直交する仮想平面に沿って延在する姿勢となる請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項6】
前記ロボットアームは、
構造物または自然物の内部空間で作業が行われるロボットアームであり、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第1の状態に設定されている際に、前記構造物の内外を貫通する貫通部を介して前記構造物または前記自然物の外部から前記内部空間に挿入され、
前記内部空間に挿入された際に、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定される請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項7】
前記第1のアームは、
第2のリンクと、
前記複数の第1のリンクのうち最も先端に位置する第1のリンク、及び前記第2のリンクを直列に連結するとともに、前記最も先端に位置する第1のリンク及び前記第2のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第3の関節部とをさらに有し、
前記第3の関節部は、
前記第2の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第4の回転軸を中心として前記最も先端に位置する第1のリンク及び前記第2のリンクの一方を他方に対して回転可能とする請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項8】
ロボットアームと、
液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置と、
前記ロボットアームの動作と前記供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置とを備え、
前記ロボットアームは、
複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、
前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、
前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、
前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、
前記第1の関節部は、
前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、
前記第2のアームは、
前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、
前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、
前記制御装置は、
前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を制御する関節制御部と、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定され、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とがそれぞれ制御されている際、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御部とを備えるロボットアームシステム。
【請求項9】
前記質量制御部は、
前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを座標軸とする1次元の座標系において、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを示す座標点が、前記1次元の座標系上の第1の範囲外に位置する場合に、前記1次元の座標系上の第2の範囲内に位置するまで、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更する請求項8に記載のロボットアームシステム。
【請求項10】
前記関節制御部は、
前記座標点が前記第1の範囲外に位置してから前記第2の範囲内に位置するまで、前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を停止させる請求項9に記載のロボットアームシステム。
【請求項11】
前記第2の関節部は、
前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とし、
前記アーム本体及び前記カウンターウェイトの組は、
前記第1の回転軸に直交し、前記第1のアームを含む仮想平面を基準として対称に配置されるように2組設けられ、
前記質量制御部は、
前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定され、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とがそれぞれ制御されている際、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して2つの前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとを調整する請求項8に記載のロボットアームシステム。
【請求項12】
前記質量制御部は、
互いに直交する第1の座標軸及び第2の座標軸により構成される2次元の座標系において、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを前記第1の座標軸における値とし、前記第2の関節部における前記第3の回転軸まわりのトルクを前記第2の座標軸における値とする座標点が、前記2次元の座標系上の第1の領域外に位置する場合に、前記2次元の座標系上の第2の領域内に位置するまで、前記供給回収装置の動作を制御して2つの前記カウンターウェイトの質量を変更する請求項11に記載のロボットアームシステム。
【請求項13】
前記関節制御部は、
前記座標点が前記第1の領域外に位置してから前記第2の領域内に位置するまで、前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を停止させる請求項12に記載のロボットアームシステム。
【請求項14】
前記支持部材の長手方向に沿う中心軸を中心として前記支持部材を回転させる移動装置をさらに備える請求項8に記載のロボットアームシステム。
【請求項15】
前記支持部材の長手方向に沿って前記支持部材を移動させる移動装置をさらに備える請求項8に記載のロボットアームシステム。
【請求項16】
ロボットアームの動作と、液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置が実行する制御方法であって、
前記ロボットアームは、
複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、
前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、
前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、
前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、
前記第1の関節部は、
前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、
前記第2のアームは、
前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、
前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、
前記制御方法は、
前記支持部材及び前記第1のアームを前記第2の状態に設定するとともに、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とを制御する関節制御ステップと、
前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御ステップとを含む制御方法。
【請求項17】
ロボットアームの動作と、液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置に実行させる制御プログラムであって、
前記ロボットアームは、
複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、
前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、
前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、
前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、
前記第1の関節部は、
前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、
前記第2のアームは、
前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、
前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、
前記制御装置に、
前記支持部材及び前記第1のアームを前記第2の状態に設定するとともに、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とを制御する関節制御ステップと、
前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御ステップとを実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアーム、ロボットアームシステム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の立ち入りが困難な高放射線環境下である構造物の内部空間の調査等を行うためのロボットアームが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のロボットアームは、複数のリンク及び当該複数のリンクを直列に連結する関節部を有する展開可能なアームと、当該アームを支持する長尺状の支持部材とを備える。ここで、支持部材は、アームを内部に配置可能とするフレームを有する。フレームの内部にアームが配置された状態では、支持部材及びアームは、当該支持部材の長手方向に沿って直線状に延在した状態となる。そして、ロボットアームは、フレームの内部にアームが配置された状態で、構造物の内外を貫通する貫通部を介して、当該構造物の内部空間に挿入される。この後、アームが展開され、当該アームの先端に設けられたカメラ等のエンドエフェクタを用いて、当該内部空間の調査等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0242660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のロボットアームでは、アームを構成する関節部の回転軸は、当該アームの長手方向に沿う回転軸や、当該アームの長手方向と支持部材の長手方向とにそれぞれ直交する回転軸である。このため、アームの先端に設けられたエンドエフェクタの重量が当該アームを構成する関節部の駆動トルクに大きく作用することとなる。そして、当該駆動トルクが大きくなる結果、アームを構成する関節部の小型化及び軽量化を阻害してしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化及び軽量化を図ることができるロボットアーム、ロボットアームシステム、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るロボットアームは、複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、前記支持部材と前記第1のアームとを連結するとともに、前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とする第2の関節部とを備え、前記第2の関節部は、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とし、前記第1の関節部は、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする。
【0007】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記第2の関節部は、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とする。
【0008】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結され、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整するための第2のアームをさらに備え、前記第2のアームは、前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体に取り付けられ、内部への液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備える。
【0009】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記第2の関節部は、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とし、前記アーム本体及び前記カウンターウェイトの組は、前記第1の回転軸に直交し、前記第1のアームを含む仮想平面を基準として対称に配置されるように2組設けられ、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、2つの前記カウンターウェイトの質量がそれぞれ変更されることにより、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとがそれぞれ調整される。
【0010】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記アーム本体は、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第1の状態に設定されている際に、前記支持部材に重なり合う姿勢となり、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定されている際に、前記第2の回転軸に直交する仮想平面に沿って延在する姿勢となる。
【0011】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記ロボットアームは、構造物の内部空間で作業が行われるロボットアームであり、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第1の状態に設定されている際に、前記構造物の内外を貫通する貫通部を介して前記構造物の外部から前記内部空間に挿入され、前記内部空間に挿入された際に、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定される。
【0012】
また、本発明に係るロボットアームでは、上記発明において、前記第1のアームは、第2のリンクと、前記複数の第1のリンクのうち最も先端に位置する第1のリンク、及び前記第2のリンクを直列に連結するとともに、前記最も先端に位置する第1のリンク及び前記第2のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第3の関節部とをさらに有し、前記第3の関節部は、前記第2の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第4の回転軸を中心として前記最も先端に位置する第1のリンク及び前記第2のリンクの一方を他方に対して回転可能とする。
【0013】
また、本発明に係るロボットアームシステムは、ロボットアームと、液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置と、前記ロボットアームの動作と前記供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置とを備え、前記ロボットアームは、複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、前記第1の関節部は、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、前記第2のアームは、前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、前記制御装置は、前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を制御する関節制御部と、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定され、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とがそれぞれ制御されている際、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御部とを備える。
【0014】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記質量制御部は、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを座標軸とする1次元の座標系において、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを示す座標点が、前記1次元の座標系上の第1の範囲外に位置する場合に、前記1次元の座標系上の第2の範囲内に位置するまで、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更する。
【0015】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記関節制御部は、前記座標点が前記第1の範囲外に位置してから前記第2の範囲内に位置するまで、前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を停止させる。
【0016】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記第2の関節部は、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第2の回転軸の延在方向のそれぞれに直交し、前記第1のアームの長手方向に沿う第3の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転可能とし、前記アーム本体及び前記カウンターウェイトの組は、前記第1の回転軸に直交し、前記第1のアームを含む仮想平面を基準として対称に配置されるように2組設けられ、前記質量制御部は、前記支持部材及び前記第1のアームが前記第2の状態に設定され、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とがそれぞれ制御されている際、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して2つの前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクと前記第3の回転軸まわりのトルクとを調整する。
【0017】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記質量制御部は、互いに直交する第1の座標軸及び第2の座標軸により構成される2次元の座標系において、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを前記第1の座標軸における値とし、前記第2の関節部における前記第3の回転軸まわりのトルクを前記第2の座標軸における値とする座標点が、前記2次元の座標系上の第1の領域外に位置する場合に、前記2次元の座標系上の第2の領域内に位置するまで、前記供給回収装置の動作を制御して2つの前記カウンターウェイトの質量を変更する。
【0018】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記関節制御部は、前記座標点が前記第1の領域外に位置してから前記第2の領域内に位置するまで、前記第1の関節部及び前記第2の関節部の動作を停止させる。
【0019】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記支持部材の長手方向に沿う中心軸を中心として前記支持部材を回転させる移動装置をさらに備える。
【0020】
また、本発明に係るロボットアームシステムでは、上記発明において、前記支持部材の長手方向に沿って前記支持部材を移動させる移動装置をさらに備える。
【0021】
また、本発明に係る制御方法は、ロボットアームの動作と、液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置が実行する制御方法であって、前記ロボットアームは、複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、前記第1の関節部は、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、前記第2のアームは、前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、前記制御方法は、前記支持部材及び前記第1のアームを前記第2の状態に設定するとともに、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とを制御する関節制御ステップと、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御ステップとを含む。
【0022】
また、本発明に係る制御プログラムは、ロボットアームの動作と、液体の供給と前記液体の回収とをそれぞれ行う供給回収装置の動作とをそれぞれ制御する制御装置に実行させる制御プログラムであって、前記ロボットアームは、複数の第1のリンク、及び前記複数の第1のリンクを直列に連結するとともに、隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とする第1の関節部を有する第1のアームと、前記第1のアームを支持する長尺状の支持部材と、前記支持部材と前記第1のアームとを連結し、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記支持部材の長手方向に直交する第1の回転軸を中心として前記支持部材及び前記第1のアームの一方を他方に対して回転させることにより、前記支持部材及び前記第1のアームが直線状に延在する姿勢となる第1の状態と、前記第1のアームが前記支持部材の長手方向に交差する方向に延在する姿勢となる第2の状態とにそれぞれ設定可能とする第2の関節部と、前記第2の関節部を介して前記支持部材及び前記第1のアームに連結される第2のアームとを備え、前記第1の関節部は、前記制御装置からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、前記第1の回転軸の延在方向及び前記第1のアームの長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸を中心として隣接する2つの前記第1のリンクの一方を他方に対して回転可能とし、前記第2のアームは、前記第2の関節部に取り付けられるアーム本体と、前記アーム本体に取り付けられ、内部への前記液体の流入と前記内部からの前記液体の流出とにより質量を可変とするカウンターウェイトとを備え、前記制御装置に、前記支持部材及び前記第1のアームを前記第2の状態に設定するとともに、前記第1の関節部の動作と前記第2の関節部の動作とを制御する関節制御ステップと、前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクに基づいて、前記供給回収装置の動作を制御して前記カウンターウェイトの質量を変更することにより前記第2の関節部における前記第1の回転軸まわりのトルクを調整する質量制御ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るロボットアーム、ロボットアームシステム、制御方法、及び制御プログラムによれば、小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施の形態に係るロボットアームシステムの構成を示す図である。
図2図2は、ロボットアームの構成を示す図である。
図3図3は、図2の一部を拡大した図であって、第2のアームを説明する図である。
図4図4は、移動装置の構成を示す図である。
図5図5は、制御装置の構成を示すブロック図である。
図6図6は、MSIV室へのロボットアームの設置方法を説明する図である。
図7図7は、MSIV室へのロボットアームの設置方法を説明する図である。
図8図8は、MSIV室へのロボットアームの設置方法を説明する図である。
図9図9は、制御装置が実行する制御方法を示すフローチャートである。
図10図10は、制御方法を説明する図である。
図11図11は、実施の形態の変形例1に係るロボットアームの構成を示す図である。
図12図12は、実施の形態の変形例1に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
図13図13は、実施の形態の変形例1に係る制御装置が実行する制御方法を示すフローチャートである。
図14図14は、実施の形態の変形例1に係る制御方法を説明する図である。
図15図15は、実施の形態の変形例2に係る移動装置の構成を示す図である。
図16図16は、実施の形態の変形例3に係るMSIV室へのロボットアームの設置方法を説明する図である。
図17図17は、実施の形態の変形例4に係る第1のアームの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0026】
〔ロボットアームシステムの概略構成〕
図1は、実施の形態に係るロボットアームシステム1の構成を示す図である。なお、図1では、ロボットアーム2が後述する第2の状態に設定されている場合を示している。
ロボットアームシステム1は、ロボットアーム2(図1)を利用することによって、人間の立ち入りが困難な高放射線環境下である構造物の内部空間の調査等を行うシステムである。以下では、当該構造物の内部空間として、主蒸気隔離弁(MSIV:Main Steam Isolation Valve)室SP(図1)を例に説明する。なお、当該構造物の内部空間としては、MSIV室SPに限らず、その他の構造物や自然界の洞窟等の自然物の内部空間を採用しても構わない。
【0027】
ここで、MSIV室SPの調査等を行う場合には、図1に示すように、当該MSIV室SP上の部屋の床面に、当該MSIV室SPに貫通する貫通部HOを設ける。この貫通部HOは、直径250mm程度の穴である。そして、ロボットアームシステム1では、MSIV室SP上の部屋の床面から貫通部HOを介して、ロボットアーム2を当該MSIV室SPに挿入することにより、当該MSIV室SPの調査等を行う。
このロボットアームシステム1は、図1に示すように、ロボットアーム2と、移動装置3と、供給回収装置4と、制御装置5とを備える。
【0028】
〔ロボットアームの構成〕
図2は、ロボットアーム2の構成を示す図である。なお、図2では、図1と同様に、ロボットアーム2が後述する第2の状態に設定されている場合を示している。
ロボットアーム2は、図1及び図2に示すように、吊り下げパイプ21と、第1のアーム22と、第2の関節部23と、第2のアーム24とを備える。
吊り下げパイプ21は、本発明に係る支持部材に相当する。この吊り下げパイプ21は、直線状に延在する長尺状のパイプによって構成され、図1に示すように、MSIV室SPにおいて、第1のアーム22、第2の関節部23、及び第2のアーム24を吊り下げた状態で支持する。なお、吊り下げパイプ21としては、1部材によって構成してもよいし、複数のパイプを直列に連結することによって構成しても構わない。
【0029】
第1のアーム22は、図1及び図2に示すように、複数のリンク221と、当該複数のリンク221を直列に連結する第1の関節部222を有する。そして、第1のアーム22を展開した状態では、当該第1のアーム22は、直線状に延在する。
なお、図1及び図2では、鉛直方向に沿う軸をZ軸(ヨー軸)としている。また、Z軸に直交し、ロボットアーム2を第2の状態に設定するとともに第1のアーム22を展開した状態での当該第1のアーム22の延在方向に沿う軸をX軸(ロール軸)としている。さらに、Z軸及びX軸にそれぞれ直交する軸をY軸(ピッチ軸)としている。その他の図面も同様である。
【0030】
本実施の形態では、リンク221は、4つ設けられている。そして、これら4つのリンク221は、本発明に係る第1のリンクに相当する。以下では、4つのリンク221を先端側(図1図2中、+X軸側)から順に、リンク2211~2214(図1図2)と記載する。また、第1の関節部222は、3つ設けられている。以下では、3つの第1の関節部222を先端側から順に、第1の関節部2221~2223(図1図2)と記載する。
【0031】
4つのリンク2211~2214は、直線状に延在する長尺状のパイプによってそれぞれ構成されている。
3つの第1の関節部222は、第2の回転軸Rx2(図2)を中心として隣接する2つのリンク221の一方を他方に対して回転可能とする。以下では、第1の関節部2221における第2の回転軸Rx2を第2の回転軸Rx23(図2)と記載する。また、第1の関節部2222における第2の回転軸Rx2を第2の回転軸Rx22と記載する。さらに、第1の関節部2223における第2の回転軸Rx2を第2の回転軸Rx21と記載する。ここで、第2の回転軸Rx2は、後述する第1の回転軸Rx1(図2)の延在方向(図1図2中、Y軸)、及び第1のアーム22の長手方向(図1図2中、X軸)のそれぞれに直交する回転軸である。
【0032】
そして、リンク2211の先端には、MSIV室SPの調査等を行うためのエンドエフェクタEE(図1)が設けられる。なお、図1では、エンドエフェクタEEとして、MSIV室SPを撮影するカメラを例示している。また、図2では、エンドエフェクタEEの図示を省略している。ここで、エンドエフェクタEEとしては、カメラの他、MSIV室SPを調査する超音波センサや線量計、MSIV室SPでの止水作業等を行う作業ツール等を採用しても構わない。
【0033】
第2の関節部23は、吊り下げパイプ21の一端(図1図2中、-Z軸側の端部)に接続されている。また、第2の関節部23には、第1のアーム22(リンク2214)の基端が接続されている。さらに、第2の関節部23には、第1のアーム22に対向する位置に、第2のアーム24が接続されている。すなわち、第2の関節部23は、吊り下げパイプ21と、第1のアーム22と、第2のアーム24とを連結する。
【0034】
この第2の関節部23は、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転可能とする。ここで、第1の回転軸Rx1は、吊り下げパイプ21の長手方向に直交するY軸に沿う回転軸(ピッチ軸)である。
また、第2の関節部23は、第3の回転軸Rx3(図2)を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転可能とする。ここで、第3の回転軸Rx3は、第1の回転軸Rx1の延在方向及び第2の回転軸Rx2の延在方向のそれぞれに直交し、第1のアーム22の長手方向に沿うX軸に沿う回転軸(ロール軸)である。
【0035】
そして、第2の関節部23は、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させることにより、ロボットアーム2を第1の状態と第2の状態とにそれぞれ設定可能とする。
ここで、第1の状態は、吊り下げパイプ21及び第1のアーム22が直線状に延在する姿勢となり、第2のアーム24における後述するアーム本体241(図1図2)が吊り下げパイプ21に重なり合う姿勢となる状態である(図7図8参照)。
また、第2の状態は、図1及び図2に示すように、第1のアーム22が吊り下げパイプ21の長手方向に交差する方向(図1及び図2では吊り下げパイプ21の長手方向に直交する方向)に延在する姿勢となり、アーム本体241が第2の回転軸Rx2に直交する仮想平面(図2ではXY平面)に沿って延在する姿勢となる状態である。
【0036】
なお、ロボットアーム2を第2の状態に設定し、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21に対して第1,第2のアーム22,24を回転させた場合には、第1,第2のアーム22,24は、互いの相対的な位置関係を維持しつつ、当該第1の回転軸Rx1まわりに同一の角度だけ回転する。同様に、ロボットアーム2を第2の状態に設定し、第3の回転軸Rx3を中心として吊り下げパイプ21に対して第1,第2のアーム22,24を回転させた場合には、第1,第2のアーム22,24は、互いの相対的な位置関係を維持しつつ、当該第3の回転軸Rx3まわりに同一の角度だけ回転する。
【0037】
なお、上述した第2の関節部23としては、以下に示す第1の構成や第2の構成を採用することができる。
第1の構成は、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させる機構と、第3の回転軸Rx3を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させる機構とが独立した構成である。
第2の構成は、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させる機構と、第3の回転軸Rx3を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させる機構とが一体的に構成された差動歯車機構を採用した構成である。
【0038】
以上説明した3つの第1の関節部222及び第2の関節部23は、制御装置5からの制御指令に応じて動作する能動関節によってそれぞれ構成されている。すなわち、3つの第1の関節部222及び第2の関節部23には、制御装置5からの制御指令に応じて動作するスマートアクチュエータがそれぞれ設けられている。ここで、スマートアクチュエータは、回転角センサ、トルクセンサ、減速機、電動モータ、モータドライバ、及び制御回路が一体となったアクチュエータであり、トルク制御、位置制御、及び速度制御を可能とする。このスマートアクチュエータとしては、HEBI Robotics社製のスマートアクチュエータを例示することができる。
【0039】
以下では、上述したスマートアクチュエータのうち、第2の関節部23に設けられ、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させるスマートアクチュエータを第1のスマートアクチュエータ251(図5参照)と記載する。また、第2の関節部23に設けられ、第3の回転軸Rx3を中心として吊り下げパイプ21と第1,第2のアーム22,24との一方を他方に対して回転させるスマートアクチュエータを第2のスマートアクチュエータ252(図5参照)と記載する。さらに、第1の関節部2223に設けられ、第2の回転軸Rx21を中心として隣接する2つのリンク2213,2214の一方を他方に対して回転させるスマートアクチュエータを第3のスマートアクチュエータ253(図5参照)と記載する。また、第1の関節部2222に設けられ、第2の回転軸Rx22を中心として隣接する2つのリンク2212,2213の一方を他方に対して回転させるスマートアクチュエータを第4のスマートアクチュエータ254(図5参照)と記載する。さらに、第1の関節部2221に設けられ、第2の回転軸Rx23を中心として隣接する2つのリンク2211,2212の一方を他方に対して回転させるスマートアクチュエータを第5のスマートアクチュエータ255(図5参照)と記載する。
【0040】
図3は、図2の一部を拡大した図であって、第2のアーム24を説明する図である。
第2のアーム24は、ロボットアーム2が第2の状態に設定されている際に、第2の関節部23における第1の回転軸Rx1まわりのトルク(以下、ピッチトルクと記載)と第3の回転軸Rx3まわりのトルク(以下、ロールトルクと記載)とをそれぞれ調整するために用いられる。この第2のアーム24は、図2及び図3に示すように、第2の関節部23を挟んで第1のアーム22に対向する位置に配置されている。また、第2のアーム24は、アーム本体241及びカウンターウェイト242の組が第1の回転軸Rx1に直交し、第1のアーム22を含む仮想平面(図2及び図3ではXZ平面)を基準として対称に配置されるように2組設けられた構成を有する。
【0041】
以下では、2つのアーム本体241のうち、図2及び図3中、+Y軸側に位置するアーム本体241を第1のアーム本体2411と記載し、-Y軸側に位置するアーム本体241を第2のアーム本体2412と記載する。また、2つのカウンターウェイト242のうち、図2及び図3中、+Y軸側に位置するカウンターウェイト242を第1のカウンターウェイト2421と記載し、-Y軸側に位置するカウンターウェイト242を第2のカウンターウェイト2422と記載する。
【0042】
第1,第2のアーム本体2411,2412は、直線状に延在する長尺状のパイプによってそれぞれ構成されている。そして、第1のアーム本体2411の一端は、図3に示すように、第2の関節部23に対して、第4の関節部2431を介して接続されている。同様に、第2のアーム本体2412の一端は、第2の関節部23に対して、第4の関節部2432を介して接続されている。これら2つの第4の関節部2431,2432は、第5の回転軸Rx5(図2図3)を中心として、第2の関節部23に対して第1,第2のアーム本体2411,2412をそれぞれ回転可能とする。ここで、第5の回転軸Rx5は、第1の回転軸Rx1の延在方向及び第3の回転軸Rx3の延在方向にそれぞれ直交する回転軸である。言い換えれば、第5の回転軸Rx5は、第2の回転軸Rx2の延在方向に平行となる回転軸である。また、第1のアーム本体2411と第2の関節部23との間には、両端にボールジョイント2441が設けられたロッド2451が架設されている。同様に、第2のアーム本体2412と第2の関節部23との間には、両端にボールジョイント2442が設けられたロッド2452が架設されている。
【0043】
以上説明した2つの第4の関節部2431,2432は、受動関節によってそれぞれ構成されている。そして、第1,第2のアーム本体2411,2412は、ロボットアーム2が第2の状態に設定されると、ロッド2451,2452によって位置がそれぞれ拘束されているため、第2の関節部23に対して第5の回転軸Rx5を中心として互いに離間する方向にそれぞれ回転する。これにより、第1,第2のアーム本体2411,2412は、図2及び図3に示すように、第2,第4の回転軸Rx2,Rx4に直交する仮想平面(図2図3ではXY平面)に沿って全体としてV字状に展開する。一方、第1,第2のアーム本体2411,2412は、ロボットアーム2が第1の状態に設定されると、ロッド2451,2452によって位置がそれぞれ拘束されているため、第2の関節部23に対して第5の回転軸Rx5を中心として互いに近接する方向にそれぞれ回転する。これにより、第1,第2のアーム本体2411,2412は、全体としてI字状に収縮するとともに、吊り下げパイプ21に重なり合う。
【0044】
第1のカウンターウェイト2421は、図2及び図3に示すように、第1のアーム本体2411の他端側に取り付けられている。また、第2のカウンターウェイト2422は、第2のアーム本体2412の他端側に取り付けられている。これら第1,第2のカウンターウェイト2421,2422は、内部に液体を保持可能な袋状の部材によってそれぞれ構成されている。なお、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422としては、それぞれ1つの袋状の部材によって構成してもよく、あるいは、それぞれ複数の袋状の部材によって構成しても構わない。そして、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422は、内部への液体の流入と当該内部からの当該液体の流出とにより質量を可変とする。
【0045】
〔移動装置の構成〕
図4は、移動装置3の構成を示す図である。
移動装置3は、ロボットアーム2が貫通部HOを介してMSIV室SPに設置された状態において、制御装置5による制御の下、以下に示すように、ロボットアーム2全体の回転及び移動を行う。
具体的に、移動装置3は、吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心としてロボットアーム2全体を回転させる。また、移動装置3は、吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿ってロボットアーム2全体を移動させる。
この移動装置3は、図4に示すように、基部31と、回転テーブル32と、第1の電動モータ33と、複数の第2の電動モータ34とを備える。
【0046】
基部31は、中央に表裏を貫通する貫通孔311(図4)が設けられた板体によって構成されている。そして、基部31は、図4に示すように、貫通孔311が貫通部HOに連通する姿勢で、MSIV室SP上の部屋の床面に固定される。
回転テーブル32は、中央に表裏を貫通する貫通孔321(図4)が設けられた板体によって構成されている。そして、回転テーブル32は、図4に示すように、貫通孔321が貫通孔311に連通する姿勢で、基部31上に設置される。ここで、回転テーブル32は、外縁に歯322(図4)が設けられ、歯車として機能する。また、回転テーブル32は、基部31上にベアリング323(図4)を介して設置され、吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心として、基部31に対して回転可能に構成されている。なお、吊り下げパイプ21は、ロボットアーム2がMSIV室SPに設置された状態では、貫通孔311,321及び貫通部HOに挿通された状態となる。
【0047】
第1の電動モータ33は、図4に示すように、基部31上に設置される。また、第1の電動モータ33のモータ軸に設けられた歯車331は、回転テーブル32の歯322に噛合する。
複数の第2の電動モータ34は、図4に示すように、回転テーブル32上にそれぞれ設置される。ここで、吊り下げパイプ21の外周面において、第2の関節部23から離間した基端側には、当該吊り下げパイプ21の長手方向に沿ってそれぞれ延在する複数のラック211(図4)が設けられている。そして、複数の第2の電動モータ34のモータ軸にそれぞれ設けられた歯車341は、複数のラック211にそれぞれ噛合する。当該複数のラック211と当該複数の歯車341との噛合により、ロボットアーム2は、移動装置3に支持される。
【0048】
そして、制御装置5による制御の下、第1の電動モータ33が駆動し、歯車331及び回転テーブル32が回転することにより、ロボットアーム2全体は、吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心として回転する。また、制御装置5による制御の下、第2の電動モータ34が駆動し、歯車341の回転運動がラック211の直線運動に変換されることにより、ロボットアーム2全体は、吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿って移動する。
【0049】
〔供給回収装置の構成〕
供給回収装置4は、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422内への水や水銀等の液体の供給と当該第1,第2のカウンターウェイト2421,2422内からの当該液体の回収とをそれぞれ行う。ここで、当該液体としては、水や水銀に限らず、その他の液体を採用しても構わない。また、当該液体としては、ゲルを含んでもよい。
この供給回収装置4は、液体供給源41と、第1の電磁弁42と、第2の電磁弁43と、第1のポンプ44と、第2のポンプ45とを備える(図5参照)。
【0050】
液体供給源41は、チューブ等にて構成された流路T11,T21(図5参照)を介して、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422内とそれぞれ接続されている。そして、液体供給源41は、制御装置5による制御の下、流路T11,T21を介して、水や水銀等の液体を第1,第2のカウンターウェイト2421,2422内にそれぞれ供給する。
【0051】
第1の電磁弁42は、液体供給源41と第1のカウンターウェイト2421内とを接続する流路T11中に設けられている。そして、第1の電磁弁42は、制御装置5による制御の下、「ON」となることで弁が開き、流路T11を介した液体供給源41から第1のカウンターウェイト2421内への液体の流通を許容する。一方、第1の電磁弁42は、制御装置5による制御の下、「OFF」となることで弁が閉じ、流路T11を介した液体供給源41から第1のカウンターウェイト2421内への液体の流通を禁止する。
【0052】
第2の電磁弁43は、液体供給源41と第2のカウンターウェイト2422内とを接続する流路T21中に設けられている。そして、第2の電磁弁43は、制御装置5による制御の下、「ON」となることで弁が開き、流路T21を介した液体供給源41から第2のカウンターウェイト2422内への液体の流通を許容する。一方、第2の電磁弁43は、制御装置5による制御の下、「OFF」となることで弁が閉じ、流路T21を介した液体供給源41から第2のカウンターウェイト2422内への液体の流通を禁止する。
【0053】
第1のポンプ44は、チューブ等にて構成された流路T12(図5参照)を介して、第1のカウンターウェイト2421内と接続されている。そして、第1のポンプ44は、制御装置5による制御の下、「ON」となることで、流路T12を介して、第1のカウンターウェイト2421内の液体を吸引する。一方、第1のポンプ44は、制御装置5による制御の下、「OFF」となることで、当該液体の吸引を停止する。
【0054】
第2のポンプ45は、チューブ等にて構成された流路T22(図5参照)を介して、第2のカウンターウェイト2422内と接続されている。そして、第2のポンプ45は、制御装置5による制御の下、「ON」となることで、流路T22を介して、第2のカウンターウェイト2422内の液体を吸引する。一方、第2のポンプ45は、制御装置5による制御の下、「OFF」となることで、当該液体の吸引を停止する。
【0055】
〔制御装置の構成〕
図5は、制御装置5の構成を示すブロック図である。
制御装置5は、ロボットアームシステム1全体の動作を制御する。この制御装置5は、図5に示すように、入力部51と、記憶部52と、制御部53とを備える。
入力部51は、ユーザによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、タッチパネル等で構成され、当該操作に応じた信号を制御部53に出力する。
記憶部52は、制御部53が実行する各種のプログラム(本発明に係る制御プログラムを含む)の他、当該制御部53が処理を行うときに必要なデータ等を記憶する。
【0056】
制御部53は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコントローラによって、記憶部52に記憶された各種のプログラムが実行されることにより実現され、ロボットアームシステム1全体の動作を制御する。なお、制御部53は、CPUやMPUに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されても構わない。この制御部53は、図5に示すように、軌道生成部531と、関節制御部532と、トルク判断部533と、質量制御部534と、移動制御部535とを備える。
【0057】
軌道生成部531は、公知の手法を用いて、ロボットアーム2が動作する軌道を生成する。なお、軌道の生成方法の詳細については、後述する「制御装置が実行する制御方法」において説明する。
関節制御部532は、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御する。例えば、関節制御部532は、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御することにより、軌道生成部531にて生成された軌道に従ってロボットアーム2を動作させる軌道追従制御を実行する。ここで、軌道追従制御としては、PD制御(Proportional-Derivative Control)等のフィードバック制御を例示することができる。
【0058】
トルク判断部533は、第1のスマートアクチュエータ251を構成するトルクセンサにて測定されたピッチトルクと、第2のスマートアクチュエータ252を構成するトルクセンサにて測定されたロールトルクとが特定の条件を満たしたか否かを判断する。なお、当該特定の条件の詳細については、後述する「制御装置が実行する制御方法」において説明する。
【0059】
質量制御部534は、トルク判断部533の判断結果に応じて、供給回収装置4の動作を制御することにより、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を制御する質量制御を実行する。なお、質量制御の詳細については、後述する「制御装置が実行する制御方法」において説明する。
移動制御部535は、第1,第2の電動モータ33,34の動作を制御することにより、ロボットアーム2全体の回転及び上下移動を実行する。
【0060】
〔MSIV室へのロボットアームの設置方法〕
次に、MSIV室SPへのロボットアーム2の設置方法について説明する。
図6ないし図8は、MSIV室SPへのロボットアーム2の設置方法を説明する図である。具体的に、図7は、図6の(a)に対応し、第1の状態に設定されたロボットアーム2を示す図である。図7の上下方向は、鉛直方向に平行な方向である。図8は、図7の一部を拡大した図である。なお、図6ないし図8では、吊り下げパイプ21として、互いに着脱可能とする4つのパイプ212~215を備えた構成を採用している。また、図7及び図8では、第1のカウンターウェイト2421として、5つの第1の袋状部材2421a~2421eを備えた構成を採用している。第2のカウンターウェイト2422も同様に、5つの第2の袋状部材2422a~2422eを備えた構成を採用している。このように第1,第2のカウンターウェイト2421,2422として、それぞれ複数の袋状の部材によって構成することで、1つ当りの袋状の部材を小さくし、貫通部HOを通過し易い構成を実現することができる。
【0061】
先ず、作業者は、入力部51に対して、ロボットアーム2を第1の状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御する。これにより、第2の関節部23にそれぞれ接続するパイプ212及び第1のアーム22は、図6の(a)及び図7に示すように、直線状に延在する姿勢となる。また、第2のアーム24は、図7及び図8に示すように、パイプ212に重なり合う姿勢となる。なお、図6の(a)では、第2のアーム24は、パイプ212に重なり合っているため、図示されていない。図6の(b)も同様である。
【0062】
そして、作業者は、MSIV室SP上の部屋において、図6の(a)に示すように、第1の状態に設定されたパイプ212、第1のアーム22、第2の関節部23、及び第2のアーム24をリンク2211から順に、Z軸に略平行な貫通部HOを介して当該MSIV室SPに挿入していく。また、作業者は、図6の(b)に示すように、MSIV室SPへの挿入を行いつつ、パイプ212~215を順次、連結していく。
【0063】
次に、作業者は、入力部51に対して、第1のアーム22を最も短くなる状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第3~第5のスマートアクチュエータ253~255の動作を制御する。これにより、第1のアーム22は、図6の(b)に示すように、リンク2214がZ軸に沿う姿勢を維持しつつ、当該リンク2214に対して他のリンク2211~2213が折り畳まれ、互いに重なり合う姿勢となる。
【0064】
次に、作業者は、入力部51に対して、ロボットアーム2を第2の状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御する。これにより、第1,第2のアーム22,24は、図6の(c)及び図6の(d)に示すように、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21に対して回転し、当該吊り下げパイプ21の長手方向に対して略直交する姿勢となる。そして、第1,第2のアーム本体2411,2412は、ロッド2451,2452によって位置がそれぞれ拘束されているため、第2の関節部23に対して第5の回転軸Rx5を中心として互いに離間する方向にそれぞれ回転し、全体としてXY平面と略平行なV字状に展開する。また、第1のアーム22は、図6の(e)に示すように、全体としてXY平面と略平行な直線状に展開する。
【0065】
〔制御装置が実行する制御方法〕
次に、制御装置5が実行する制御方法について説明する。
図9は、制御装置5が実行する制御方法を示すフローチャートである。図10は、制御方法を説明する図である。具体的に、図10は、ピッチトルクを縦軸(第1の座標軸)とし、ロールトルクを横軸(第2の座標軸)とする2次元の座標系を示している。なお、図10に示す+Y方向のピッチトルクを生じる回転方向は、図3に示すように、+Y軸側から見て反時計回りの回転方向APである。また、図10に示す+X方向のロールトルクを生じる回転方向は、図3に示すように、+X軸側から見て反時計回りの回転方向ARである。
【0066】
なお、以下では、上述した「MSIV室へのロボットアームの設置方法」において説明した設置方法が行われ、MSIV室SPにロボットアーム2が既に設置されているものとする。また、ユーザによる入力部51への操作により、第1~第3の回転軸Rx1,Rx21~Rx23,Rx3まわりの最終目標とする各回転角度である各最終到達角度が既に入力されているものとする。
【0067】
先ず、制御部53は、初期値の設定を行う(ステップS1)。
具体的に、制御部53は、ステップS1において、以下の回転角度(1)~(5)を初期回転角度(初期値)として設定する。
回転角度(1):第1のスマートアクチュエータ251を構成する回転角センサにて測定された第1の回転軸Rx1まわりの現在の回転角度。
回転角度(2):第2のスマートアクチュエータ252を構成する回転角センサにて測定された第3の回転軸Rx3まわりの現在の回転角度。
回転角度(3):第3のスマートアクチュエータ253を構成する回転角センサにて測定された第2の回転軸Rx21まわりの現在の回転角度。
回転角度(4):第4のスマートアクチュエータ254を構成する回転角センサにて測定された第2の回転軸Rx22まわりの現在の回転角度。
回転角度(5):第5のスマートアクチュエータ255を構成する回転角センサにて測定された第2の回転軸Rx23まわりの現在の回転角度。
【0068】
また、制御部53は、ステップS1において、第1~第3の回転軸Rx1,Rx21~Rx23,Rx3まわりの各初期回転速度(初期値)をそれぞれ0に設定する。
【0069】
ステップS1の後、制御部53は、ユーザによる入力部51への制御開始操作が行われたか否かを常時、監視する(ステップS2)。
制御開始操作が行われたと判断された場合(ステップS2:Yes)には、軌道生成部531は、公知の手法を用いて、始点が現在時刻で各初期回転角度、終点が自動的に計算された終了時刻で各最終到達角度となる軌道を生成する(ステップS3)。そして、軌道生成部531は、当該生成した軌道のデータと最新の軌道であることを示すフラグ「ON」とを関連付けて記憶部52に記憶させる。
【0070】
ステップS3の後、制御部53は、ロボットアームシステム1のモードを0に設定する(ステップS4)。
ステップS4の後、制御部53は、ロボットアームシステム1のモードが0であるか否かを判断する(ステップS5)。
【0071】
ロボットアームシステム1のモードが0であると判断された場合(ステップS5:Yes)には、関節制御部532は、記憶部52に記憶されているフラグ「ON」が関連付けられた最新の軌道のデータを参照し、当該最新の軌道の現在時刻に対応する目標回転角度及び目標回転速度を送信する(ステップS6)。具体的には、関節制御部532は、ステップS6において、以下の処理(1)~(5)を略同時に実行する。
【0072】
処理(1):関節制御部532は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する第1の回転軸Rx1まわりの第1の目標回転角度及び第1の目標回転速度を第1のスマートアクチュエータ251に送信する。
そして、処理(1)により、第1のスマートアクチュエータ251は、吊り下げパイプ21に対して第1,第2のアーム22,24を当該第1の目標回転角度となるまで当該第1の目標回転速度で第1の回転軸Rx1を中心として回転させる。
【0073】
処理(2):関節制御部532は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する第3の回転軸Rx3まわりの第2の目標回転角度及び第2の目標回転速度を第2のスマートアクチュエータ252に送信する。
そして、処理(2)により、第2のスマートアクチュエータ252は、吊り下げパイプ21に対して第1,第2のアーム22,24を当該第2の目標回転角度となるまで当該第2の目標回転速度で第3の回転軸Rx3を中心として回転させる。
【0074】
処理(3):関節制御部532は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する第2の回転軸Rx21まわりの第3の目標回転角度及び第3の目標回転速度を第3のスマートアクチュエータ253に送信する。
そして、処理(3)により、第3のスマートアクチュエータ253は、リンク2214に対してリンク2213を当該第3の目標回転角度となるまで当該第3の目標回転速度で第2の回転軸Rx21を中心として回転させる。
【0075】
処理(4):関節制御部532は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する第2の回転軸Rx22まわりの第4の目標回転角度及び第4の目標回転速度を第4のスマートアクチュエータ254に送信する。
そして、処理(4)により、第4のスマートアクチュエータ254は、リンク2213に対してリンク2212を当該第4の目標回転角度となるまで当該第4の目標回転速度で第2の回転軸Rx22を中心として回転させる。
【0076】
処理(5):関節制御部532は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する第2の回転軸Rx23まわりの第5の目標回転角度及び第5の目標回転速度を第5のスマートアクチュエータ255に送信する。
そして、処理(5)により、第5のスマートアクチュエータ255は、リンク2212に対してリンク2211を当該第5の目標回転角度となるまで当該第5の目標回転速度で第2の回転軸Rx23を中心として回転させる。
【0077】
そして、関節制御部532は、処理(1)~(5)において第1~第5のスマートアクチュエータ251~255に送信した第1~第5の目標回転角度及び第1~第5の目標回転速度を記憶部52に記憶させる。なお、記憶部52に第1~第5の目標回転角度及び第1~第5の目標回転速度が既に記憶されている場合には、最新の第1~第5の目標回転角度及び第1~第5の目標回転速度として上書き(更新)する。
【0078】
ステップS6の後、トルク判断部533は、第1のスマートアクチュエータ251を構成するトルクセンサにピッチトルクを測定させるとともに、第2のスマートアクチュエータ252を構成するトルクセンサにロールトルクを測定させる(ステップS7)。なお、トルクセンサにて測定されるピッチトルク及びロールトルクは、第1のアーム22が第2の関節部23に作用するトルクの反トルクである。
【0079】
ステップS7の後、トルク判断部533は、ステップS7にて測定されたピッチトルク及びロールトルクが特定の条件である第1の条件を満たしているか否かを判断する(ステップS8)。
具体的に、第1の条件は、図10に示す2次元の座標系において、ステップS7にて測定されたピッチトルク及びロールトルクの座標点CP(X(ロールトルク),Y(ピッチトルク))が第1の領域Ar1内に位置するという条件である。
ここで、第1の領域Ar1は、図10に示す2次元の座標系において、原点(0(ロールトルク),0(ピッチトルク))を中心とし、4つの座標点(0(ロールトルク),YP1(ピッチトルク))、(0(ロールトルク),-YP1(ピッチトルク))、(XP1(ロールトルク),0)、(-XP1(ロールトルク),0)を頂角とする正方形の領域である。
【0080】
そして、ピッチトルク及びロールトルクが第1の条件を満たしていると判断された場合(ステップS8:Yes)には、制御部53は、ステップS5に戻る。
一方、ピッチトルク及びロールトルクが第1の条件を満たしていないと判断された場合(ステップS8:No)には、制御部53は、記憶部52に記憶されている軌道のデータに関連付けられているフラグを「OFF」に設定する(ステップS9)。なお、既にフラグ「OFF」が関連付けられている軌道のデータが記憶部52に記憶されている場合には、当該軌道のデータを消去する。そして、制御部53は、ロボットアームシステム1のモードを1に設定(ステップS10)した後、ステップS5に戻る。
【0081】
ステップS5において、ロボットアームシステム1のモードが1であると判断された場合(ステップS5:No)には、関節制御部532は、直前のループで第1~第5のスマートアクチュエータ251~255にそれぞれ送信し、記憶部52に記憶させた第1~第5の目標回転角度及び第1~第5の目標回転速度を改めて第1~第5のスマートアクチュエータ251~255にそれぞれ送信する(ステップS11)。すなわち、ステップS11により、第1,第2の関節部222,23は、動作を停止する。
【0082】
ステップS11の後、トルク判断部533は、ステップS7と同様に、第1のスマートアクチュエータ251を構成するトルクセンサにピッチトルクを測定させるとともに、第2のスマートアクチュエータ252を構成するトルクセンサにロールトルクを測定させる(ステップS12)。
【0083】
ステップS12の後、トルク判断部533は、ステップS12にて測定されたピッチトルク及びロールトルクが特定の条件である第2の条件を満たしているか否かを判断する(ステップS13)。
具体的に、第2の条件は、図10に示す2次元の座標系において、ステップS12にて測定されたピッチトルク及びロールトルクの座標点CP(X(ロールトルク),Y(ピッチトルク))が第2の領域Ar2内に位置するという条件である。
ここで、第2の領域Ar2は、図10に示す2次元の座標系において、原点(0(ロールトルク),0(ピッチトルク))を中心とし、4つの座標点(0(ロールトルク),YP2(ピッチトルク))、(0(ロールトルク),-YP2(ピッチトルク))、(XP2(ロールトルク),0)、(-XP2(ロールトルク),0)を頂角とする正方形の領域である。なお、XP2は、XP1よりも小さい値である。また、YP2は、YP1よりも小さい値である。
【0084】
そして、ピッチトルク及びロールトルクが第2の条件を満たしていないと判断された場合(ステップS13:No)には、質量制御部534は、質量制御を実行する(ステップS14)。この後、制御部53は、ステップS5に戻る。
具体的に、質量制御部534は、ステップS14において、ステップS12にて測定されたピッチトルク及びロールトルクの座標点CP(X(ロールトルク),Y(ピッチトルク))を示す偏角θを算出する。
ここで、偏角θは、図10に示すように、正方向の横軸と座標点CP及び原点を結ぶ線分とのなす角度であって、当該横軸から見て反時計回りを正とする角度を意味する。図10において、直線L1は、θ=π/8である時の当該線分を示している。直線L2は、θ=3π/8である時の当該線分を示している。直線L3は、θ=5π/8である時の当該線分を示している。直線L4は、θ=7π/8である時の当該線分を示している。直線L5は、θ=-7π/8である時の当該線分を示している。直線L6は、θ=-5π/8である時の当該線分を示している。直線L7は、θ=-3π/8である時の当該線分を示している。直線L8は、θ=-π/8である時の当該線分を示している。
【0085】
次に、質量制御部534は、ステップS14において、算出した偏角θの値に応じて、以下の質量制御(1)~(8)を実行する。
質量制御(1):質量制御部534は、π/8≧θ>-π/8の場合には、第1の電磁弁42を「OFF」、第2の電磁弁43を「ON」、第1のポンプ44を「ON」、第2のポンプ45を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(1)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が低下し、第2のカウンターウェイト2422の質量が増加する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する負の方向のロールトルクがかなり大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを大幅に低減することが可能となる。
【0086】
質量制御(2):質量制御部534は、3π/8≧θ>π/8の場合には、第1の電磁弁42を「OFF」、第2の電磁弁43を「OFF」、第1のポンプ44を「ON」、第2のポンプ45を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(2)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が低下し、第2のカウンターウェイト2422の質量が維持される。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する負の方向のロールトルクが少し大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを少し低減することが可能となる。
【0087】
質量制御(3):質量制御部534は、5π/8≧θ>3π/8の場合には、第1の電磁弁42を「OFF」、第2の電磁弁43を「OFF」、第1のポンプ44を「ON」、第2のポンプ45を「ON」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(3)により、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量がそれぞれ低下する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する負の方向のピッチトルクがかなり大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ピッチトルクを大幅に低減することが可能となる。
【0088】
質量制御(4):質量制御部534は、7π/8≧θ>5π/8の場合には、第1の電磁弁42を「OFF」、第2の電磁弁43を「OFF」、第1のポンプ44を「OFF」、第2のポンプ45を「ON」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(4)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が維持され、第2のカウンターウェイト2422の質量が低下する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する正の方向のロールトルクが少し大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを少し低減することが可能となる。
【0089】
質量制御(5):質量制御部534は、θ>7π/8または-7π/8≧θの場合には、第1の電磁弁42を「ON」、第2の電磁弁43を「OFF」、第1のポンプ44を「OFF」、第2のポンプ45を「ON」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(5)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が増加し、第2のカウンターウェイト2422の質量が低下する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する正の方向のロールトルクがかなり大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを大幅に低減することが可能となる。
【0090】
質量制御(6):質量制御部534は、-5π/8≧θ>-7π/8の場合には、第1の電磁弁42を「ON」、第2の電磁弁43を「OFF」、第1のポンプ44を「OFF」、第2のポンプ45を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(6)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が増加し、第2のカウンターウェイト2422の質量が維持される。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する正の方向のロールトルクが少し大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを少し低減することが可能となる。
【0091】
質量制御(7):質量制御部534は、-3π/8≧θ>-5π/8の場合には、第1の電磁弁42を「ON」、第2の電磁弁43を「ON」、第1のポンプ44を「OFF」、第2のポンプ45を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(7)により、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量がそれぞれ増加する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する正の方向のピッチトルクがかなり大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ピッチトルクを大幅に低減することが可能となる。
【0092】
質量制御(8):質量制御部534は、-π/8≧θ>-3π/8の場合には、第1の電磁弁42を「OFF」、第2の電磁弁43を「ON」、第1のポンプ44を「OFF」、第2のポンプ45を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(8)により、第1のカウンターウェイト2421の質量が維持され、第2のカウンターウェイト2422の質量が増加する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する負の方向のロールトルクが少し大きい場合に、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量を上記のように変更することで、当該ロールトルクを少し低減することが可能となる。
【0093】
なお、本実施の形態では、質量制御として、上述したように、所謂バンバン制御を採用したが、これに限らず、その他のフィードバック制御等を採用しても構わない。
【0094】
ステップS13において、ピッチトルク及びロールトルクが第2の条件を満たしていると判断された場合(ステップS13:Yes)には、軌道生成部531は、公知の手法を用いて、新たな軌道を生成する(ステップS15)。
具体的に、軌道生成部531は、ステップS15において、記憶部52に記憶されているフラグ「OFF」が関連付けられた従前の軌道のデータを参照する。そして、軌道生成部531は、当該軌道のデータの現在時刻に対応する各目標回転角度を始点、終点が自動的に計算された終了時刻で各最終到達角度となる軌道を生成する。また、軌道生成部531は、当該生成した軌道のデータと最新の軌道であることを示すフラグ「ON」とを関連付けて記憶部52に記憶させる。
【0095】
ステップS15の後、制御部53は、ロボットアームシステム1のモードを0に設定する(ステップS16)。
ステップS16の後、質量制御部534は、質量制御を停止する(ステップS17)。すなわち、質量制御部534は、第1,第2の電磁弁42,43及び第1,第2のポンプ44,45を「OFF」にそれぞれ設定する。この後、制御部53は、ステップS5に戻る。
【0096】
以上説明した本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態に係るロボットアーム2は、上述した吊り下げパイプ21、第1のアーム22、及び第2の関節部23を備える。
このため、第1,第2の関節部222,23を動作させることにより、MSIV室SPにおいて、第1のアーム22の先端に設けたエンドエフェクタEEを広範囲に移動させ、広範囲に調査等を行うことができる。
【0097】
特に、第1の関節部222は、第1の回転軸Rx1の延在方向及び第1のアーム22の長手方向のそれぞれに直交する第2の回転軸Rx2を中心として隣接する2つのリンク221の一方を他方に対して回転可能とする。
このため、第1のアーム22の先端に設けられたエンドエフェクタEEの重量が第1の関節部222の駆動トルクに大きく作用しない。すなわち、第1の関節部222の駆動トルクを小さく抑えることができるため、当該第1の関節部222の小型化及び軽量化を図ることができ、ひいては、ロボットアーム2の小型化及び軽量化を図ることができる。また、エンドエフェクタEEの重量が第1の関節部222の駆動トルクに大きく作用しないため、可搬重量(エンドエフェクタEEの重量)を大きくすることも可能となる。
【0098】
また、第2の関節部23は、第1の回転軸Rx1を中心として吊り下げパイプ21及び第1のアーム22の一方を他方に対して回転させることにより、ロボットアーム2を第1の状態と第2の状態とにそれぞれ設定可能とする。
このため、ロボットアーム2を第1の状態に設定すれば、穴径の小さい貫通部HOを介して、当該ロボットアーム2をMSIV室SPに挿入することが可能となる。また、ロボットアーム2をMSIV室SPに挿入した後、当該ロボットアーム2を第2の状態に設定すれば、エンドエフェクタEEを用いて、当該MSIV室SPの調査等を行うことが可能となる。
【0099】
また、本実施の形態に係るロボットアームシステム1では、ロボットアーム2は、上述した第2のアーム24を備える。そして、制御装置5は、ピッチトルクとロールトルクとで示される座標点CPが図10に示す2次元の座標系上の第1の領域Ar1外に位置してから第2の領域Ar2内に位置するまで、第1,第2の関節部222,23の動作を停止しながら、供給回収装置4の動作を制御して質量制御を実行する。また、制御装置5は、当該座標点CPが第2の領域Ar2内に位置すると、第1,第2の関節部222,23の動作を再開する。
このため、第1のアーム22が第2の関節部23に作用するピッチトルク及びロールトルクを小さくすることができ、当該第2の関節部23の小型化及び軽量化を図ることができる。したがって、第1の関節部222の小型化及び軽量化に加えて、第2の関節部23の小型化及び軽量化を図ることができるため、ロボットアーム2の小型化及び軽量化をさらに図ることができる。
【0100】
また、例えば、エンドエフェクタEEとして止水作業等を行う作業ツールを採用している場合には、質量制御によりカウンターウェイト242の質量を変更することで、当該エンドエフェクタEEから止水作業等を行う作業部位に与える力を調整することができる。このため、当該止水作業等を効率的に行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態に係るロボットアームシステム1は、ロボットアーム2全体を吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心として回転可能とするとともに、当該ロボットアーム2全体をZ軸に沿って移動可能とする移動装置3を備える。
このため、移動装置3を動作させて、ロボットアーム2全体を吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心として回転させることにより、当該Z軸を中心とする回転方向全体に亘って調査等を行うことが可能となる。また、移動装置3を動作させて、ロボットアーム2全体をZ軸に沿って移動させることにより、MSIV室SPの上下方向全体に亘って調査等を行うことが可能となる。
特に、上述したように、質量制御により第1のアーム22が第2の関節部23に作用するピッチトルク及びロールトルクを小さくすることができる。このため、吊り下げパイプ21に大きな曲げモーメントが付加されず、当該吊り下げパイプ21が湾曲して貫通部HOの内周面に引っ掛かることがない。このため、移動装置3を利用したロボットアーム2全体の移動や回転を円滑に行うことができる。
【0102】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
例えば、以下に示す変形例1~3を採用しても構わない。
(変形例1)
図11ないし図14は、実施の形態の変形例1を説明する図である。具体的に、図11は、図2に対応した図であり、本変形例1に係るロボットアーム2の構成を示す図である。図12は、図5に対応した図であり、本変形例1に係る制御装置5の構成を示すブロック図である。図13は、図9に対応した図であり、制御装置5が実行する制御方法を示すフローチャートである。図14は、図10に対応した図であり、制御方法を説明する図である。ここで、図14は、ピッチトルクを座標軸とした1次元の座標系を示している。なお、図14に示した正方向のピッチトルクを生じる回転方向は、上述した実施の形態と同様の回転方向AP(図3)である。
【0103】
上述した実施の形態では、質量制御として、第1,第2のカウンターウェイト2421,2422の質量をそれぞれ変更することで、ピッチトルクとロールトルクとの双方を調整していたが、これに限らず、ピッチトルクのみを調整しても構わない。
本変形例1では、質量制御によりピッチトルク及びロールトルクのうち、当該ピッチトルクのみを調整する構成を採用している。具体的に、本変形例1では、上述した実施の形態において説明したロボットアームシステム1において、第2のアーム24の構成、供給回収装置4の構成、トルク判断部533の機能、及び質量制御部534の機能を変更している。以下では、本変形例1に係る第2のアーム24、供給回収装置4、トルク判断部533、及び質量制御部534をそれぞれ第2のアーム24A(図11図12)、供給回収装置4A(図12)、トルク判断部533A、及び質量制御部534A(図12)と記載する。
【0104】
第2のアーム24Aは、ロボットアーム2が第2の状態に設定されている際に、ピッチトルクを調整するために用いられる。この第2のアーム24Aは、図11に示すように、アーム本体241Aと、カウンターウェイト242Aとを備える。
アーム本体241Aは、直線状に延在する長尺状のパイプによって構成され、第2の関節部23を挟んで第1のアーム22に対向する位置に配置されている。また、アーム本体241Aは、当該アーム本体241Aの長手方向に沿う中心軸がリンク2214の長手方向に沿う中心軸と略一致する姿勢で、一端が第2の関節部23に固定されている。すなわち、上述した実施の形態において説明した第4の関節部2431,2432、ボールジョイント2441,2442、及びロッド2451,2452は、設けられていない。
【0105】
カウンターウェイト242Aは、上述した実施の形態において説明した第1,第2のカウンターウェイト2421,2422と同様の構成であり、図11に示すように、アーム本体241Aの他端側に取り付けられている。
【0106】
供給回収装置4Aは、上述した実施の形態において説明した供給回収装置4と同様に、水や水銀等の液体の供給と回収とをそれぞれ行う装置である。この供給回収装置4Aは、図12に示すように、液体供給源41Aと、電磁弁46と、ポンプ47とを備える。
液体供給源41Aは、チューブ等にて構成された流路T3(図12)を介して、カウンターウェイト242A内と接続されている。そして、液体供給源41Aは、質量制御部534Aによる制御の下、流路T3を介して、水や水銀等の液体をカウンターウェイト242A内に供給する。
【0107】
電磁弁46は、液体供給源41Aとカウンターウェイト242A内とを接続する流路T3中に設けられている。そして、電磁弁46は、質量制御部534Aによる制御の下、「ON」となることで弁が開き、流路T3を介した液体供給源41Aからカウンターウェイト242A内への液体の流通を許容する。一方、電磁弁46は、質量制御部534Aによる制御の下、「OFF」となることで弁が閉じ、流路T3を介した液体供給源41Aからカウンターウェイト242A内への液体の流通を禁止する。
【0108】
ポンプ47は、チューブ等にて構成された流路T4(図12)を介して、カウンターウェイト242A内と接続されている。そして、ポンプ47は、質量制御部534Aによる制御の下、「ON」となることで、流路T4を介して、カウンターウェイト242A内の液体を吸引する。一方、ポンプ47は、質量制御部534Aによる制御の下、「OFF」となることで、当該液体の吸引を停止する。
【0109】
次に、トルク判断部533A及び質量制御部534Aの各機能について、本変形例1に係る制御装置5が実行する制御方法を説明しつつ、説明する。
本変形例1に係る制御装置5が実行する制御方法では、図13に示すように、上述した実施の形態において説明した制御方法に対して、ステップS7,S8,S12~S14,S17の代わりにステップS7A,S8A,S12A~S14A,S17Aが採用されている点が異なるのみである。このため、以下では、ステップS7A,S8A,S12A~S14A,S17Aについてのみ主に説明する。
【0110】
ステップS7Aは、ステップS6の後に実行される。
具体的に、トルク判断部533Aは、ステップS7Aにおいて、第1のスマートアクチュエータ251を構成するトルクセンサにピッチトルクを測定させる。なお、トルクセンサにて測定されるピッチトルクは、上述した実施の形態と同様に、第1のアーム22が第2の関節部23に作用するトルクの反トルクである。
【0111】
ステップS7Aの後、トルク判断部533Aは、ステップS7Aにて測定されたピッチトルクが特定の条件である第3の条件を満たしているか否かを判断する(ステップS8A)。
具体的に、第3の条件は、図14に示す1次元の座標系において、ステップS7Aにて測定されたピッチトルクの座標点CPが第1の範囲Ra1内に位置するという条件である。
ここで、第1の範囲Ra1は、図14に示す1次元の座標系において、原点(0)を中心とし、座標点(YP3)から座標点(-YP3)までの範囲である。
【0112】
そして、ピッチトルクが第3の条件を満たしていると判断された場合(ステップS8A:Yes)には、制御部53は、ステップS5に戻る。
一方、ピッチトルクが第3の条件を満たしていないと判断された場合(ステップS8A:No)には、ステップS9に移行する。
【0113】
ステップS12Aは、ステップS11の後に実行される。
具体的に、トルク判断部533Aは、ステップS12Aにおいて、ステップS7Aと同様に、第1のスマートアクチュエータ251を構成するトルクセンサにピッチトルクを測定させる。
【0114】
ステップS12Aの後、トルク判断部533Aは、ステップS12Aにて測定されたピッチトルクが特定の条件である第4の条件を満たしているか否かを判断する(ステップS13A)。
具体的に、第4の条件は、図14に示す1次元の座標系において、ステップS12Aにて測定されたピッチトルクの座標点CPが第2の範囲Ra2内に位置するという条件である。
ここで、第2の範囲Ra2は、図14に示す1次元の座標系において、原点(0)を中心とし、座標点(YP4)から座標点(-YP3)までの範囲である。なお、YP4は、YP3よりも小さい値である。
【0115】
そして、ピッチトルクが第4の条件を満たしていないと判断された場合(ステップS13A:No)には、質量制御部534Aは、質量制御を実行する(ステップS14A)。この後、制御部53は、ステップS5に戻る。
具体的に、質量制御部534Aは、ステップS12Aにて測定されたピッチトルクの座標点CPに応じて、以下の質量制御(9),(10)を実行する。
【0116】
質量制御(9):質量制御部534Aは、ピッチトルクの座標点CPがYP3よりも大きい場合には、電磁弁46を「OFF」、ポンプ47を「ON」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(9)により、カウンターウェイト242Aの質量が低下する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する負の方向のピッチトルクが大きい場合に、カウンターウェイト242Aの質量を上記のように変更することで、当該ピッチトルクを低減することが可能となる。
【0117】
質量制御(10):質量制御部534Aは、ピッチトルクの座標点CPが-YP3よりも小さい場合には、電磁弁46を「ON」、ポンプ47を「OFF」にそれぞれ設定する。
そして、質量制御(10)により、カウンターウェイト242Aの質量が増加する。すなわち、第1のアーム22が第2の関節部23に対して作用する正の方向のピッチトルクが大きい場合に、カウンターウェイト242Aの質量を上記のように変更することで、当該ピッチトルクを低減することが可能となる。
【0118】
一方、ピッチトルクが第4の条件を満たしていると判断された場合(ステップS13A:Yes)には、制御部53は、ステップS15に移行する。
【0119】
ステップS17Aは、ステップS16の後に実行される。
具体的に、質量制御部534Aは、ステップS17Aにおいて、質量制御を停止する。すなわち、質量制御部534Aは、電磁弁46及びポンプ47を「OFF」にそれぞれ設定する。この後、制御部53は、ステップS5に戻る。
【0120】
以上説明した本変形例1によれば、上述した実施の形態と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本変形例1では、質量制御によりピッチトルク及びロールトルクのうち、当該ピッチトルクのみを調整するため、第2のアーム24Aの構成、供給回収装置4Aの構成、トルク判断部533Aの機能、及び質量制御部534Aの機能を簡素化することができる。
【0121】
(変形例2)
本変形例2では、上述した実施の形態において説明したロボットアームシステム1において、移動装置3の構成を変更している。以下では、本変形例2に係る移動装置3を移動装置3Bと記載する。
図15は、実施の形態の変形例2を説明する図である。具体的に、図15は、図4に対応した図であり、本変形例2に係る移動装置3Bの構成を示す図である。
移動装置3Bは、図15に示すように、基部35と、第3,第4の電動モータ361,362とを備える。
【0122】
基部35は、筒形状を有し、MSIV室SP上の部屋の床面において、貫通部HOを囲む姿勢で固定される。
第3,第4の電動モータ361,362の組は、複数組、設けられている。なお、図15では、第3,第4の電動モータ361,362の組を1組のみ示している。
第3,第4の電動モータ361,362の組は、図15に示すように、互いのモータ軸の延在方向が交差する姿勢で、基部35の内面に固定される。また、第3,第4の電動モータ361,362のモータ軸には、オムニホイール3611,3621がそれぞれ設けられている。ここで、吊り下げパイプ21は、ロボットアーム2がMSIV室SPに設置された状態では、基部35内及び貫通部HOに挿通された状態となるとともに、外周面がオムニホイール3611,3621に当接する。そして、オムニホイール3611,3621が吊り下げパイプ21の外周面に当接することにより、ロボットアーム2は、移動装置3Bに支持される。
【0123】
そして、移動制御部535による制御の下、第3,第4の電動モータ361,362の回転数がそれぞれ制御される。これにより、ロボットアーム2全体における吊り下げパイプ21の長手方向(Z軸)に沿う中心軸を中心とした回転や、当該長手方向に沿う移動が行われる。
【0124】
以上説明した本変形例2に係る移動装置3Bを採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0125】
(変形例3)
図16は、実施の形態の変形例3を説明する図である。具体的に、図16は、図6に対応した図であり、本変形例3に係るMSIV室SPへのロボットアーム2の設置方法を説明する図である。
上述した実施の形態では、MSIV室SPにロボットアーム2を設置する際、当該MSIV室SP上の部屋から貫通部HOを介して当該ロボットアーム2を当該MSIV室SPに挿入していたが、これに限らない。
例えば、図16に示した本変形例3のように、MSIV室SPの隣の部屋の壁に、当該MSIV室SPにXY平面と略平行に貫通する貫通部HOを設ける。この貫通部HOは、直径250mm程度の穴である。そして、MSIV室SPの隣の部屋から貫通部HOを介して、ロボットアーム2を当該MSIV室SPに挿入しても構わない。このような構成を採用する場合には、吊り下げパイプ21の構成を変更する。なお、以下では、本変形例3に係る吊り下げパイプ21を吊り下げパイプ21C(図16)と記載する。
【0126】
具体的に、先ず、作業者は、入力部51に対して、ロボットアーム2を第1の状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御する。これにより、第2の関節部23にそれぞれ接続するパイプ212及び第1のアーム22は、図16の(a)に示すように、直線状に延在する姿勢となる。また、第2のアーム24は、パイプ212に重なり合う姿勢となる。なお、図16の(a)では、第2のアーム24は、パイプ212に重なり合っているため、図示されていない。
【0127】
そして、作業者は、MSIV室SPの隣の部屋において、図16の(a)に示すように、第1の状態に設定されたパイプ212、第1のアーム22、第2の関節部23、及び第2のアーム24をリンク2211から順に貫通部HOを介して当該MSIV室SPに挿入していく。また、作業者は、図16の(b)に示すように、MSIV室SPへの挿入を行いつつ、パイプ212~215を順次、連結していく。
【0128】
ここで、吊り下げパイプ21Cにおいて、パイプ212とパイプ213との間は、図16の(b)に示すように、第5の関節部216にて連結されている。この第5の関節部216は、関節制御部532からの制御指令に応じて動作する能動関節であり、第1の回転軸Rx1の延在方向に平行となる回転軸(図示略)を中心としてパイプ212,213の一方を他方に対して回転可能とする。
【0129】
次に、作業者は、入力部51に対して、第1,第2のアーム22,24及び第2の関節部23を吊り下げる状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第5の関節部216の動作を制御する。これにより、パイプ212は、図16の(b)に示すように、パイプ213に対して回転し、Z軸に沿う姿勢となる。すなわち、パイプ212は、本発明に係る支持部材に相当する。
【0130】
次に、作業者は、入力部51に対して、第1のアーム22を最も短くなる状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第3~第5のスマートアクチュエータ253~255の動作を制御する。これにより、第1のアーム22は、図16の(b)に示すように、リンク2214がZ軸に沿う姿勢を維持しつつ、当該リンク2214に対して他のリンク2211~2213が重なり合う姿勢となる。
【0131】
次に、作業者は、入力部51に対して、ロボットアーム2を第2の状態に設定する操作を実行する。そして、関節制御部532は、当該操作に応じて、第1~第5のスマートアクチュエータ251~255の動作を制御する。これにより、第1,第2のアーム22,24は、図16の(c)及び図16の(d)に示すように、第1の回転軸Rx1を中心としてパイプ212に対して回転し、当該パイプ212の長手方向に対して略直交する姿勢となる。そして、第1,第2のアーム本体2411,2412は、ロッド2451,2452によって位置がそれぞれ拘束されているため、第2の関節部23に対して第5の回転軸Rx5を中心として互いに離間する方向にそれぞれ回転し、全体としてXY平面と略平行なV字状に展開する。また、第1のアーム22は、図16の(e)に示すように、全体としてXY平面と略平行な直線状に展開する。
【0132】
以上説明した本変形例3に係る構成を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【0133】
(変形例4)
本変形例4では、上述した実施の形態において説明したロボットアーム2において、第1のアーム22の構成を変更している。以下では、本変形例4に係る第1のアーム22を第1のアーム22Dと記載する。
図17は、実施の形態の変形例4を説明する図である。具体的に、図17は、本変形例4に係る第1のアーム22Dの構成を示す図である。
第1のアーム22Dは、上述した実施の形態において説明した第1のアーム22に対して、2つのリンク2211,2212を第1の関節部2221とは異なる第3の関節部223(図17)にて連結している。ここで、4つのリンク2211~2214のうち、3つのリンク2212~2214は、本発明に係る第1のリンクに相当する。また、リンク2211は、本発明に係る第2のリンクに相当する。
【0134】
第3の関節部223は、第4の回転軸Rx4(図17)を中心として2つのリンク2211,2212の一方を他方に対して回転可能とする。ここで、第4の回転軸Rx4は、第2の回転軸Rx2の延在方向(図17中、Z軸)、及び第1のアーム22Dの長手方向(図17中、X軸)のそれぞれに直交する回転軸である。
また、第3の関節部223は、第1の関節部222及び第2の関節部23と同様に、制御装置5からの制御指令に応じて動作する能動関節によって構成されている。
【0135】
以上説明した本変形例4のように、モーメントアームの小さい先端の関節として、第4の回転軸Rx4を中心として2つのリンク2211,2212を相対的に回転させる第3の関節部223を採用した場合であっても、上述した実施の形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0136】
1 ロボットアームシステム
2 ロボットアーム
3,3B 移動装置
4,4A 供給回収装置
5 制御装置
21,21C 吊り下げパイプ
22,22D 第1のアーム
23 第2の関節部
24,24A 第2のアーム
31 基部
32 回転テーブル
33 第1の電動モータ
34 第2の電動モータ
35 基部
361 第3の電動モータ
362 第4の電動モータ
41,41A 液体供給源
42 第1の電磁弁
43 第2の電磁弁
44 第1のポンプ
45 第2のポンプ
46 電磁弁
47 ポンプ
51 入力部
52 記憶部
53 制御部
211 ラック
212~215 パイプ
216 第5の関節部
221,2211~2214 リンク
222,2221~2223 第1の関節部
223 第3の関節部
241,241A アーム本体
242,242A カウンターウェイト
251 第1のスマートアクチュエータ
252 第2のスマートアクチュエータ
253 第3のスマートアクチュエータ
254 第4のスマートアクチュエータ
255 第5のスマートアクチュエータ
311,321 貫通孔
322 歯
323 ベアリング
331,341 歯車
531 軌道生成部
532 関節制御部
533,533A トルク判断部
534,534A 質量制御部
535 移動制御部
2411 第1のアーム本体
2412 第2のアーム本体
2421 第1のカウンターウェイト
2421a~2421e 第1の袋状部材
2422a~2422e 第2の袋状部材
2422 第2のカウンターウェイト
2431,2432 第4の関節部
2441,2442 ボールジョイント
2451,2452 ロッド
3611,3621 オムニホイール
AP,AR 回転方向
Ar1 第1の領域
Ar2 第2の領域
CP 座標点
EE エンドエフェクタ
HO 貫通部
L1~L8 直線
Ra1 第1の範囲
Ra2 第2の範囲
Rx1 第1の回転軸
Rx2,Rx21~Rx23 第2の回転軸
Rx3 第3の回転軸
Rx4 第4の回転軸
Rx5 第5の回転軸
SP MSIV室
T11,T12,T21,T22,T3,T4 流路
θ 偏角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17