(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021427
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電気式ディーゼル動車
(51)【国際特許分類】
B60L 50/13 20190101AFI20240208BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240208BHJP
B60K 6/20 20071001ALI20240208BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20240208BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240208BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60L50/13
F02D29/06 D
F02D29/06 N
B60K6/20
B60L7/24 D
B60L15/20 A
B60T8/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124244
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】野嵜 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠貴
【テーマコード(参考)】
3D202
3D246
3G093
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB54
3D202DD18
3D202DD24
3D246BA03
3D246DA01
3D246EA03
3D246GA22
3D246GB39
3D246GC14
3D246JB10
3D246LA12Z
3G093AA07
3G093AB01
3G093BA19
3G093CA09
3G093DA01
3G093EA01
3G093EA03
5H125AA05
5H125AC08
5H125AC14
5H125BA00
5H125BD17
5H125CA01
5H125CB02
5H125CB07
5H125EE08
5H125EE09
5H125EE13
5H125EE31
5H125EE41
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】液体式ディーゼル動車からの転換のコスト増大を抑制しつつ、より高効率で乗り心地の良い動作点でエンジンを動作させる。
【解決手段】電気式ディーゼル動車1は、エンジン21と、エンジン21を動力源とする発電機31と、発電機から出力された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータ32と、コンバータ32から出力された直流電力を三相電力に変換する推進用インバータ37と、推進用インバータ37から出力された三相電力により駆動される推進用モータ39と、コンバータ出力電力値CnvPと、推進用モータ39の回転数MMnと、加減速トルク指令T*とに基づき、加減速トルク指令T*に応じたエンジン21の回転数を演算し、エンジン21の回転数-出力特性に基づき、演算した回転数21に応じたエンジン21の出力を指示するエンジンノッチ指令EgN*を生成する統合制御部10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気式ディーゼル動車であって、
エンジンと、
前記エンジンを動力源とする発電機と、
前記発電機から出力された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータと、
前記コンバータから出力された直流電力を三相電力に変換して出力する推進用インバータと、
前記推進用インバータから出力された三相電力により駆動され、前記電気式ディーゼル動車を推進する推進用モータと、
前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部と、
前記コンバータの出力電力を示すコンバータ出力電力値と、前記推進用モータの回転数と、前記電気式ディーゼル動車の加減速に応じて前記推進用モータから出力するトルクを指示する加減速トルク指令とに基づき、前記加減速トルク指令に応じた前記エンジンの回転数を演算し、前記エンジンの回転数-出力特性に基づき、前記演算した回転数に応じた前記エンジンの出力を指示するエンジンノッチ指令を生成して前記エンジン制御部に出力する統合制御部と、を備える電気式ディーゼル動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電気式ディーゼル動車において、
前記統合制御部は、前記コンバータ出力電力値と、前記推進用モータの回転数と、前記加減速トルク指令とに基づき、前記エンジンに要求される出力を演算し、前記エンジンの回転数-出力特性に基づき、前記エンジンに要求される出力を得られる最小の前記エンジンの回転数を決定し、前記決定した回転数を指示するエンジンノッチ指令を前記エンジン制御部に出力する、電気式ディーゼル動車。
【請求項3】
請求項1に記載の電気式ディーゼル動車において、
前記推進用インバータの動作を制御する推進用インバータ制御部をさらに備え、
前記統合制御部は、前記加減速トルク指令で指示されるトルクを、前記エンジンノッチ指令で指示される前記エンジンの回転数で得られる前記エンジンの出力に応じて制限した、前記推進用モータの出力トルクを指示する推進用モータトルク指令を生成し、前記推進用インバータ制御部に出力する、電気式ディーゼル動車。
【請求項4】
請求項3に記載の電気式ディーゼル動車において、
補助電源と、
前記推進用モータの回転に制動力を付与する空気制動装置と、
前記空気制動装置を制御する空気制動制御部と、をさらに備え、
前記統合制御部は、前記電気式ディーゼル動車の減速による回生電力のうち、前記補助電源に供給する電力を超える電力が、前記エンジンのブレーキで消費される電力を超えないように、前記推進用モータトルク指令を制限し、前記加減速トルク指令と前記制限した推進用モータトルク指令との差分が負である場合、前記差分に応じた前記推進用モータの回転への制動力を指示する空気制動ブレーキ指令を生成し、前記空気制動制御部に出力する、電気式ディーゼル動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式ディーゼル動車に関する。
【背景技術】
【0002】
液体式変速機を用いた液体式ディーゼル動車に対して、可変電圧可変周波数制御の採用により高効率な電気式ディーゼル動車が実用化されている。電気式ディーゼル動車は、液体式ディーゼル動車と比べて、始動トルクの高さ、および、メンテナンスの容易さなどで利点がある。
【0003】
電気式ディーゼル動車は、車両の速度の影響を受けることなく、ディーゼルエンジンの回転数を決めることができる。特許文献1には、車両推進に必要な出力を得られる、排出ガスおよび燃料消費量の低減などの観点から所望の動作点でディーゼルエンジンを回転させる技術が記載されている。この技術によれば、電気式ディーゼル動車は液体式ディーゼル動車と比べて、高効率な運転が可能である。
【0004】
ディーゼルエンジンの出力は、電気式ディーゼル動車の運転台から入力されるノッチ指令に応じたエンジンの回転数により決定される。ディーゼルエンジンを動力源とする発電機で発電する電力がディーゼルエンジンの出力を上回るとエンジンストールするおそれがあるため、エンジンの出力と負荷との協調制御に関する技術が特許文献2および特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5476237号
【特許文献2】特開平6-98412号公報
【特許文献3】特開2000-115907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、ディーゼルエンジンの制御に介入することで所望の動作点での動作を可能としているため、従来の液体式ディーゼル動車からの転換およびディーゼルエンジンを制御するエンジン制御部の流用が困難であり、コストがかかるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2,3に記載の技術では、車両のノッチ指令に対してディーゼルエンジンの回転数が一意的に決定されるため、ディーゼルエンジンを所望の動作点で動作させることが困難であるという問題がある。
【0008】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、液体式ディーゼル動車からの転換のコスト増大を抑制しつつ、より高効率で乗り心地の良い動作点でエンジンを動作させることができる電気式ディーゼル動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る電気式ディーゼル動車は、エンジンと、前記エンジンを動力源とする発電機と、前記発電機から出力された交流電力を直流電力に変換して出力するコンバータと、前記コンバータから出力された直流電力を三相電力に変換して出力する推進用インバータと、前記推進用インバータから出力された三相電力により駆動され、前記電気式ディーゼル動車を推進する推進用モータと、前記エンジンの動作を制御するエンジン制御部と、前記コンバータの出力電力を示すコンバータ出力電力値と、前記推進用モータの回転数と、前記電気式ディーゼル動車の加減速に応じて前記推進用モータから出力するトルクを指示する加減速トルク指令とに基づき、前記加減速トルク指令に応じた前記エンジンの回転数を演算し、前記エンジンの回転数-出力特性に基づき、前記演算した回転数に応じた前記エンジンの出力を指示するエンジンノッチ指令を生成して前記エンジン制御部に出力する統合制御部と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る電気式ディーゼル動車において、前記統合制御部は、前記コンバータ出力電力値と、前記推進用モータの回転数と、前記加減速トルク指令とに基づき、前記エンジンに要求される出力を演算し、前記エンジンの回転数-出力特性に基づき、前記エンジンに要求される出力を得られる最小の前記エンジンの回転数を決定し、前記決定した回転数を指示するエンジンノッチ指令を前記エンジン制御部に出力する。
【0011】
また、本発明に係る電気式ディーゼル動車において、前記推進用インバータの動作を制御する推進用インバータ制御部をさらに備え、前記統合制御部は、前記加減速トルク指令で指示されるトルクを、前記エンジンノッチ指令で指示される前記エンジンの回転数で得られる前記エンジンの出力に応じて制限した、前記推進用モータの出力トルクを指示する推進用モータトルク指令を生成し、前記推進用インバータ制御部に出力する。
【0012】
また、本発明に係る電気式ディーゼル動車において、補助電源と、前記推進用モータの回転に制動力を付与する空気制動装置と、前記空気制動装置を制御する空気制動制御部と、をさらに備え、前記統合制御部は、前記電気式ディーゼル動車の減速による回生電力のうち、前記補助電源に供給する電力を超える電力が、前記エンジンのブレーキで消費される電力を超えないように、前記推進用モータトルク指令を制限し、前記加減速トルク指令と前記制限した推進用モータトルク指令との差分が負である場合、前記差分に応じた前記推進用モータの回転への制動力を指示する空気制動ブレーキ指令を生成し、前記空気制動制御部に出力する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電気式ディーゼル動車によれば、液体式ディーゼル動車からの転換のコスト増大を抑制しつつ、より高効率で乗り心地の良い動作点でエンジンを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気式ディーゼル動車の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す統合制御部の構成例を示す図である。
【
図3】
図2に示すノッチ・トルク変換部の構成例を示す図である。
【
図4】
図2に示すエンジン指令部の構成例を示す図である。
【
図5】
図1に示すエンジンの回転数-出力特性の一例を示す図である。
【
図6】
図2に示すインバータ指令部の構成例を示す図である。
【
図7】
図2に示す空気制動指令部の構成例を示す図である。
【
図8】従来の液体式ディーゼル動車の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気式ディーゼル動車1の構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電気式ディーゼル動車1は、統合制御部10と、エンジン21と、エンジン制御部22と、発電機31と、コンバータ32と、コンバータ制御部33と、コンデンサ34と、補助電源35と、補助電源制御部36と、推進用インバータ37と、推進用インバータ制御部38と、複数の推進用モータ39と、車輪41と、機械式ブレーキ42と、空気制動装置43と、空気制動制御部44と、運転台51を備える。
【0017】
エンジン21は、ディーゼルエンジンである。エンジン21の出力軸には発電機31が固定される。発電機31は、エンジン21を動力源として駆動され、交流電力を生成し、生成した交流電力をコンバータ32に出力する。エンジン制御部22は、エンジン21の動作を制御する。
【0018】
コンバータ32は、発電機31から出力された交流電力を直流電力に変換して出力する。コンバータ32から出力された直流電力は、コンデンサ34を介して、補助電源35および推進用インバータ37に供給される。コンバータ制御部33は、コンバータ32の動作を制御する。
【0019】
補助電源35は、コンバータ32から出力された直流電力を、車内電源用の直流電力および/または交流電力に変換して、電気式ディーゼル動車1の各部に出力する。補助電源制御部36は、補助電源35の動作を制御する。
【0020】
推進用インバータ37は、コンバータ32から出力された直流電力を三相電力に変換して、複数の推進用モータ39それぞれに出力する。推進用インバータ制御部38は、推進用インバータ37の動作を制御する。
【0021】
推進用モータ39は、推進用インバータ37から出力された三相電力により駆動され、電気式ディーゼル動車1を推進する。具体的には、推進用モータ39の出力軸は、歯車45を介して、車輪41の回転軸と連結される。車輪41が推進用モータ39により回転することで、電気式ディーゼル動車1が推進される。
【0022】
機械式ブレーキ42は、車輪41に接触することで、車輪41を制動する。空気制動装置43は、空気制動制御部44の制御に従い、機械式ブレーキ42を駆動する。機械式ブレーキ42を駆動する(機械式ブレーキ42を車輪41に接触させる)ことで、空気制動装置43は、推進用モータ39の回転に制動力を付与することができる。
【0023】
統合制御部10は、エンジン制御部22、コンバータ制御部33、補助電源制御部36、推進用インバータ制御部38および空気制動制御部44を制御する。運転台51は、電気式ディーゼル動車1の加減速を指示する加減速ノッチ指令N*が入力される。運転台51に入力された加減速ノッチ指令N*は、統合制御部10に入力される。統合制御部10は、加減速ノッチ指令N*に従い電気式ディーゼル動車1を駆動するように、上述した各部を制御する。
【0024】
図1に示す電気式ディーゼル動車1の動作について説明する。まず、加速時の電気式ディーゼル動車1の動作について説明する。
【0025】
統合制御部10は、加減速ノッチ指令N*として、電気式ディーゼル動車1の加速を指示する加速ノッチ指令が入力されると、加速ノッチ指令から要求される推進用モータ39の加速トルクに必要なエンジン21の出力を得られるエンジンノッチを演算する。具体的には、統合制御部10は、コンバータ32の出力電力を示すコンバータ出力電力値CnvPと、推進用モータ39の回転数MMnと、加減速ノッチ指令N*(加速ノッチ指令)とに基づき、加減速ノッチ指令N*から要求される推進用モータ39の加速トルクに必要なエンジン21の回転数を演算する。コンバータ出力電力値CnvPは、コンバータ制御部33から統合制御部10に入力される。推進用モータ39の回転数MMnは、推進用インバータ制御部38から統合制御部10に入力される。統合制御部10は、演算した回転数に応じたエンジン21の出力を指示するエンジンノッチ指令EgN*を生成し、エンジン制御部22に出力する。
【0026】
また、統合制御部10は、加減速ノッチ指令N*(加速ノッチ指令)から要求される推進用モータ39の加速トルクに必要な三相電力を推進用インバータ37から出力するための、推進用モータ39の出力トルクを指示する推進用モータトルク指令InvT*を生成し、推進用インバータ制御部38に出力する。具体的には、統合制御部10は、発電機31の回転数Gnと、コンバータ出力電力値CnvPと、補助電源35の出力電力を示す補助電源出力電力値SivPとに基づき、推進用モータトルク指令InvT*を生成する。推進用モータトルク指令InvT*で指示されるトルクが推進用モータ39から出力されるように、推進用インバータ制御部38は、推進用インバータ37から出力される三相電力を制御する。なお、発電機31の回転数Gnは、コンバータ制御部33から統合制御部10に入力される。補助電源出力電力値SivPは、補助電源制御部36から統合制御部10に入力される。
【0027】
次に、減速時の電気式ディーゼル動車1の動作について説明する。
【0028】
統合制御部10は、加減速ノッチ指令N*として、電気式ディーゼル動車1の減速を指示する減速ノッチ指令が入力されると、減速ノッチ指令と、コンバータ出力電力値CnvPとに基づき、エンジン21が備える排気ブレーキのON/OFFを指示する排気ブレーキ指令ExBr*を生成し、エンジン制御部22に出力する。
【0029】
また、統合制御部10は、加減速ノッチ指令N*(減速ノッチ指令)から要求される推進用モータ39の減速トルクに必要な三相電力を推進用インバータ37から出力するための、推進用モータ39の出力トルクを指示する推進用モータトルク指令InvT*を生成し、推進用インバータ制御部38に出力する。
【0030】
また、統合制御部10は、減速ノッチ指令で指示される減速トルクのうち、推進用モータ39で得られないトルクを演算し、演算したトルクに応じた、推進用モータ39の回転への制動力を指示する空気制動ブレーキ指令BrT*を生成して空気制動制御部44に出力する。
【0031】
次に、統合制御部10の構成について説明する。
図2は、統合制御部10の構成例を示す図である。
【0032】
図2に示すように、統合制御部10は、コンバータ制御部33から、コンバータ出力電力値CnvPと、発電機31の回転数Gnとが入力される。また、統合制御部10は、補助電源制御部36から、補助電源出力電力値SivPが入力される。また、統合制御部10は、推進用インバータ制御部38から、コンデンサ34の両端の電圧(補助電源35および推進用インバータ37に入力される電圧)を示す直流電圧値VDCと、推進用モータ39の回転数MMnとが入力される。統合制御部10は、エンジンノッチ指令EgN*と、排気ブレーキ指令ExBr*とを生成し、エンジン制御部22に出力する。また、統合制御部10は、推進用モータトルク指令InvT*を生成し、推進用インバータ制御部38に出力する。また、統合制御部10は、空気制動ブレーキ指令BrT*を生成し、空気制動制御部44に出力する。
【0033】
統合制御部10は、ノッチ・トルク変換部11と、エンジン指令部12と、インバータ指令部13と、空気制動指令部14とを備える。
【0034】
ノッチ・トルク変換部11は、運転台51を介して入力された加減速ノッチ指令N*を、加減速ノッチ指令N*に対応する加減速トルク指令T*に変換する。
図3は、ノッチ・トルク変換部11の構成例を示す図である。
【0035】
図3に示すように、ノッチ・トルク変換部11は、選択部111を備える。選択部111は、加減速ノッチ指令N*が入力され、加減速ノッチ指令N*に対応する加減速トルク指令T*を選択して出力する。例えば、運転台51におけるノッチ段数が、加速5段・減速4段である場合、5段階の加速のそれぞれに対応するトルク指令(P5トルク指令~P1トルク指令)、0トルクを指示するNトルク指令、および、4段階の減速のそれぞれに対応するトルク指令(B1トルク指令~B4トルク指令)の中から、加減速ノッチ指令N*に対応する加減速トルク指令T*を選択する。
【0036】
図2を再び参照すると、ノッチ・トルク変換部11は、加減速トルク指令T*を、エンジン指令部12と、インバータ指令部13と、空気制動指令部14とに出力する。
【0037】
エンジン指令部12は、ノッチ・トルク変換部11から出力された加減速トルク指令T*と、コンバータ出力電力値CnvPと、発電機31の回転数Gnと、推進用モータ39の回転数MMnとが入力され、エンジンノッチ指令EgN*と、排気ブレーキ指令ExBr*とを生成する。エンジン指令部12は、生成したエンジンノッチ指令EgN*を、エンジン制御部22と、インバータ指令部13とに出力する。また、エンジン指令部12は、生成した排気ブレーキ指令ExBr*を、エンジン制御部22に出力する。
【0038】
図4は、エンジン指令部12の構成例を示す図である。
図4に示すように、エンジン指令部12は、エンジン出力指令演算部121と、エンジンノッチ指令演算部122と、排気ブレーキ指令部123とを備える。
【0039】
エンジン出力指令演算部121は、加減速トルク指令T*と、コンバータ出力電力値CnvPと、推進用モータ39の回転数MMnとに基づき、加減速トルク指令T*に応じて推進用モータ39から出力が要求されるトルク(加速トルク)を、推進用モータ39が出力するために必要となるエンジン21の出力を演算する。エンジン出力指令演算部121は、コンバータ32から推進用モータ39および補助電源35への出力の合計値であるコンバータ出力電力値CnvPと、推進用モータ39の回転数MMnおよび加減速トルク指令T*から演算された推進用モータ39が要求する電力と、に基づき必要なエンジン出力を演算してエンジン出力指令EgP*を生成する。エンジン出力指令演算部121は、演算したエンジン21の出力を示すエンジン出力指令EgP*を、エンジンノッチ指令演算部122に出力する。
【0040】
エンジンノッチ指令演算部122は、エンジン出力指令演算部121から出力されたエンジン出力指令EgP*で示されるエンジン出力を出力可能な、エンジン21の最小の回転数を決定する。
図5は、エンジン21の回転数-出力特性を示す図である。
図5において一点鎖線で示すエンジン21の回転数-出力特性が予め保持されており、エンジンノッチ指令演算部122は、この特性に基づき、エンジン出力指令EgP*で示されるエンジン出力を出力可能であり、回転数が最も小さいエンジンノッチを特定する。エンジン21の出力は、複数段のエンジンノッチ(
図5に示す例では、5段階(5ノッチ))が設定されている。エンジンノッチ指令演算部122は、
図5において太実線で示されるように、エンジン出力指令EgP*で示されるエンジン出力が高くなるほど、高い段階のエンジンノッチに従い、エンジン21の回転数を決定する。エンジンノッチ指令演算部122は、決定した回転数を指示するエンジンノッチ指令EgN*を、エンジン制御部22と、インバータ指令部13とに出力する。
【0041】
このように、統合制御部10(エンジン出力指令演算部121およびエンジンノッチ指令演算部122)は、コンバータ出力電力値nvPCと、推進用モータ39の回転数MMnと、加減速トルク指令T*とに基づき、エンジン21に要求される出力を演算する。そして、統合制御部10は、エンジン21の回転数-出力特性に基づき、エンジン21に要求される出力を得られる最小のエンジン21の回転数を決定し、決定した回転数を指示するエンジンノッチ指令EgN*をエンジン制御部22に出力する。こうすることで、コンバータ32および推進用インバータ37の状態も考慮して、エンジン21の動作を制御することができるので、より無駄の少ない適切な動作点でエンジン21を動作させることができる。
【0042】
図4を再び参照すると、排気ブレーキ指令部123は、加減速トルク指令T*と、発電機31の回転数Gnとに基づき、排気ブレーキ指令ExBr*を生成し、エンジン制御部22に出力する。具体的には、排気ブレーキ指令部123は、加減速トルク指令T*で指示されるトルクが減速トルクであり(加減速トルク指令T*が負であり(T*<0))、かつ、発電機31の回転数Gnが排気ブレーキ回転数ExBrnを超えている場合、排気ブレーキをONとする排気ブレーキ指令ExBr*を生成する。排気ブレーキ指令部123は、加減速トルク指令T*が負でない場合、排気ブレーキをOFFとする排気ブレーキ指令ExBr*を生成する。また、排気ブレーキ指令部123は、加減速トルク指令T*が負であり、かつ、発電機31の回転数Gnが排気ブレーキ回転数ExBrnを超えていない場合、排気ブレーキをOFFとする排気ブレーキ指令ExBr*を生成する。
【0043】
図2を再び参照すると、インバータ指令部13は、ノッチ・トルク変換部11から出力された加減速トルク指令T*と、エンジン指令部12から出力されたエンジンノッチ指令EgN*と、コンバータ出力電力値CnvPと、発電機31の回転数Gnと、推進用モータ39の回転数MMnと、直流電圧値VDCとが入力され、推進用モータトルク指令InvT*を生成する。インバータ指令部13は、生成した推進用モータトルク指令InvT*を、推進用インバータ制御部38と、空気制動指令部14とに出力する。
【0044】
図6は、インバータ指令部13の構成例を示す図である。
図6に示すように、インバータ指令部13は、力行トルクリミッタ部131と、回生トルクリミッタ部132とを備える。
【0045】
力行トルクリミッタ部131は、エンジンノッチ指令EgN*と、発電機31の回転数Gnとに基づき、
図5に示すエンジン21の回転数-出力特性上での、エンジン21の出力を特定する。具体的には、力行トルクリミッタ部131は、エンジン21の出力軸に直結され、エンジン21の回転数と等しい発電機32の回転数Gnと、エンジンノッチ指令EgN*と、エンジン21の回転数-出力特性とに基づき、エンジン21の出力を特定する。
【0046】
力行トルクリミッタ部131は、コンバータ出力電力値CnvPと、補助電源出力電力値SivPと、推進用モータ39の回転数MMnとに基づき、現在のエンジン21の出力から得られる力行トルクに、加減速トルク指令T*を制限した力行トルクリミット加減速トルク指令InvT*1を生成する。具体的には、力行トルクリミッタ部131は、コンバータ出力電力値CnvPから補助電源出力電力値SivPを減じた電力と、現在の推進用モータ39の回転数MMnとに基づき、力行トルクリミット加減速トルク指令InvT*1を生成する。このように、力行トルクリミッタ部131は、加減速トルク指令T*で指示されるトルクを、エンジンノッチ指令EgN*で指示されるエンジン21の回転数で得られるエンジンの出力に応じて制限する。力行トルクリミッタ部131は、生成した力行トルクリミット加減速トルク指令InvT*1を回生トルクリミッタ部132に出力する。
【0047】
回生トルクリミッタ部132は、推進用モータ39の回転数MMnと、補助電源出力電力値SivPと、直流電圧値VDCとに基づき、電気式ディーゼル動車1の減速による回生電力のうち、補助電源35に供給する電力を超える電力が、エンジン21のエンジンブレーキおよび排気ブレーキで消費される電力を超えない大きさに、力行トルクリミッタ部131から出力された力行トルクリミット加減速トルク指令InvT*1を制限し、推進用モータトルク指令InvT*として推進用インバータ制御部38に出力する。具体的には、回生トルクリミッタ部132は、直流電圧VDCが予め決められた制限値を超えないよう、推進用モータ39の回転数MMnから、推進用モータ39から回生電力が補助電源出力電力値SivP以上とならないような推進用モータトルク指令InvT*に制限する。
【0048】
図2を再び参照すると、空気制動指令部14は、ノッチ・トルク変換部11から出力された加減速トルク指令T*と、インバータ指令部13から出力された推進用モータトルク指令InvT*とが入力され、加減速トルク指令T*と、推進用モータトルク指令InvT*とに基づき、機械式ブレーキ42により車輪41(推進用モータ39の回転力)に付与する制動力を指示する空気制動ブレーキ指令BrT*を生成する。空気制動指令部14は、生成した空気制動ブレーキ指令BrT*を空気制動制御部44に出力する。
図7は、空気制動指令部14の構成例を示す図である。
【0049】
図7に示すように、空気制動指令部14は、減算器141と、制動トルクリミッタ部142とを備える。
【0050】
減算器141は、加減速トルク指令T*から、推進用モータトルク指令InvT*を減算し、加減速トルク指令T*と推進用モータトルク指令InvT*とのトルク差分T*Defを制動トルクリミッタ部142に出力する。
【0051】
制動トルクリミッタ部142は、0未満の値のみを通過させるフィルタに、減算器141から出力されたトルク差分T*Defを通して、制動トルクを取り出す。そして、制動トルクリミッタ部142は、取り出した制動トルクに応じた制動力を指示する空気制動ブレーキ指令BrT*を生成し、空気制動制御部44に出力する。
【0052】
このように、統合制御部10(回生トルクリミッタ部132)は、電気式ディーゼル動車1の減速による回生電力のうち、補助電源35に供給する電力を超える電力が、エンジン21のブレーキで消費される電力を超えないように、推進用モータトルク指令InvT*を制限する。そして、統合制御部10(回生トルクリミッタ部132)は、加減速トルク指令T*と制限した推進用モータトルク指令InvT*との差分が負である場合、差分に応じた推進用モータ39の回転への制動力を指示する空気制動ブレーキ指令BrT*を生成し、空気制動制御部44に出力する。
【0053】
次に、従来の液体式ディーゼル動車から本実施形態に係る電気式ディーゼル動車1への転換について説明する。
図8は、従来の液体式ディーゼル動車2の構成例を示す図である。
図8において、
図1と同様の構成には同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
図8に示すように、従来の液体式ディーゼル動車2は、エンジン21と、エンジン制御部22と、補助電源35と、複数の推進用モータ39と、車輪41と、機械式ブレーキ42と、空気制動装置43と、空気制動制御部44と、トルクコンバータ61と、変速機62と、発電機71と、運転台81とを備える。
【0055】
トルクコンバータ61は、エンジン21に出力軸と連結され、エンジン21から得られた駆動力を負荷状態に応じて断続する。変速機62は、液体式ディーゼル動車2の速度に応じて、トルクコンバータ61から得られた駆動力を適切な変速比で出力する。エンジン制御部22は、運転台81を介して入力されたエンジンノッチ信号をエンジンに出力し、液体式ディーゼル動車2の速度に応じた速度信号を変速機62に出力する。変速機62から出力された駆動力は、歯車63を介して車輪41に伝達され、液体式ディーゼル動車2が推進される。
【0056】
空気制動制御部44は、運転台81を介して入力されたブレーキ指令に従い空気制動装置43を制御することで、機械式ブレーキ42を作動させ、車輪41の回転力を抑える。これにより、液体式ディーゼル動車2は減速する。
【0057】
発電機71は、動力伝達装置を介してエンジン21から得られた駆動力により回転し、電力を発生して、補助電源35に出力する。
【0058】
図8に示す従来の液体式ディーゼル動車2を本実施形態に係る電気式ディーゼル動車1に転用する場合、エンジン21およびエンジン制御部22からなるエンジンユニット、および、複数の推進用モータ39、車輪41、機械式ブレーキ42、空気制動装置43および空気制動制御部44などからなる駆動装置はそのままでよい。そして、トルクコンバータ61、変速機62および発電機71を取り除いて、統合制御部10、発電機31、コンバータ32、コンバータ制御部33、コンデンサ34、補助電源制御部36、推進用インバータ37、推進用インバータ制御部38などを追加すればよい。すなわち、従来の液体式ディーゼル動車2を本実施形態に係る電気式ディーゼル動車1に転用する場合、エンジンユニットには変更を加える必要がないため、従来の液体式ディーゼル動車2からの転換のコスト増大を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る電気式ディーゼル動車1によれば、コンバータ出力電力値nvPCと、推進用モータ39の回転数MMnと、加減速トルク指令T*とに基づき、エンジン21に要求される出力を演算し、エンジン21の回転数-出力特性に基づき、エンジン21の回転数を決定し、決定した回転数を指示するエンジンノッチ指令EgN*をエンジン制御部22に出力する。こうすることで、燃費消費が少なく、回転数の低い(振動騒音)の小さい動作点でエンジン21を動作させることができるので、より高効率で乗り心地の良い動作点でエンジン21を動作させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、運転台51のノッチ段数が加速5段・減速4段であり(
図3)、エンジンノッチの段数が5段である(
図5)例を用いて説明したが、これに限られるものではなく、それぞれの段数には特に制限はない。
【0061】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換が可能であることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 電気式ディーゼル動車
2 液体式ディーゼル動車
10 統合制御部
11 ノッチ・トルク変換部
12 エンジン指令部
13 インバータ指令部
14 空気制動指令部
21 エンジン
22 エンジン制御部
31,71 発電機
32 コンバータ
33 コンバータ制御部
34 コンデンサ
35 補助電源
36 補助電源制御部
37 推進用インバータ
38 推進用インバータ制御部
39 推進用モータ
41 車輪
42 機械式ブレーキ
43 空気制動装置
44 空気制動制御部
45,63 歯車
51,81 運転台
61 トルクコンバータ
62 変速機
111 選択部
121 エンジン出力指令演算部
122 エンジンノッチ指令演算部
123 排気ブレーキ指令部
131 力行トルクリミッタ部
132 回生トルクリミッタ部
141 減算器
142 制動トルクリミッタ部