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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021429
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】下部走行体及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   B60S 9/12 20060101AFI20240208BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60S9/12
E02F9/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124251
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】三浦 基良
(72)【発明者】
【氏名】本山 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 大二郎
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA06
3D026EA26
3D026EA38
(57)【要約】
【課題】本発明は、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定可能な下部走行体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る下部走行体は、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、上記カーボディを持ち上げるためのトランスリフタとを備え、上記トランスリフタが、上記カーボディに回動可能に取り付けられるアームと、平面視で上記アームを車幅方向に対して斜めに固定する固定機構とを有しており、上記固定機構が、上記カーボディを貫通し、上記アームの側縁を露出可能な貫通孔と、上記貫通孔に挿入され、かつ上記側縁に側方から当接する固定ピンとを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、
このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、
上記カーボディを持ち上げるためのトランスリフタと
を備え、
上記トランスリフタが、
上記カーボディに回動可能に取り付けられるアームと、
平面視で上記アームを車幅方向に対して斜めに固定する固定機構と
を有しており、
上記固定機構が、
上記カーボディを貫通し、上記アームの側縁を露出可能な貫通孔と、
上記貫通孔に挿入され、かつ上記側縁に側方から当接する固定ピンと
を有する下部走行体。
【請求項2】
上記固定ピンが、
上記貫通孔に嵌合する第1柱部と、
上記第1柱部から延出し、上記側縁に当接する第2柱部と
を有しており、
上記第1柱部と上記第2柱部との接続部分に段差が設けられている請求項1に記載の下部走行体。
【請求項3】
上記トランスリフタが、
上記アームを回動可能とする中心軸と、
この中心軸を上記カーボディに固定する抜け止めピンと
を有し、
上記固定ピンが上記貫通孔に嵌合した状態で、上記抜け止めピンが貫通する位置ずれ防止板を有する請求項1又は請求項2に記載の下部走行体。
【請求項4】
上記アームが、車幅方向に平行な格納位置と、走行方向に張り出した張出位置との間を回動可能に構成されており、
上記トランスリフタが、上記アームに設けられ、上記格納位置及び上記張出位置で上記アームを上記カーボディに固定するための位置決め貫通孔を有し、
上記カーボディが、
上記アームを上記格納位置とした際に上記位置決め貫通孔と連続する格納用貫通孔と、
上記アームを上記張出位置とした際に上記位置決め貫通孔と連続する張出用貫通孔と
を有し、
上記貫通孔が、上記格納用貫通孔及び上記張出用貫通孔のいずれか一方を兼ねている請求項1又は請求項2に記載の下部走行体。
【請求項5】
上記アームを上記格納位置とした際に上記アームの側縁が上記張出用貫通孔に露出しており、
上記固定ピンを上記張出用貫通孔に挿入可能に構成されている請求項4に記載の下部走行体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の下部走行体を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部走行体及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の建設機械では、例えばトレーラによる輸送時にはクローラユニットを取り外すものがある。このような建設機械として、クローラユニットを取り外した後のカーボディをトレーラに対して積み下ろしする際に、カーボディを持ち上げる手段として、カーボディの前方及び後方の左右に一つずつ合計で4つのトランスリフタが設けられたものが公知である(例えば特開2013-23849号公報参照)。
【0003】
この建設機械に設けられたトランスリフタは、基端部がカーボディに取り付けられたアームと、このアームの先端に設けられたリフトシリンダとを備えている。上記アームは、カーボディの車幅方向に平行な格納位置と、カーボディの前方又は後方に張り出した張出位置との間を回動可能に構成され、必要に応じて上記格納位置又は上記張出位置で固定される。
【0004】
上記格納位置又は上記張出位置への固定は、上記アームに設けられた位置決め貫通孔と、上記カーボディに設けられ、この貫通孔と上記格納位置において連続する格納用貫通孔及びこの貫通孔と上記張出位置において連続する張出用貫通孔とを用いて行われる。つまり、上記格納位置では、上記位置決め貫通孔と上記格納用貫通孔とが連続するので、この連続する貫通孔に位置決めピンを差し込んで上記アームが回動しないように固定することができる。同様に、上記張出位置では、連続する上記位置決め貫通孔と上記張出用貫通孔とに位置決めピンを差し込んで固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-23849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の建設機械において、図2に示すように、トランスリフタ10を作業姿勢である張出位置に固定し、組立や日常のメインテナンス等を行う場合、例えばトランスリフタ10とクローラユニット8間のスペースSは、前後をステップ83とカーボディ9とに挟まれ、アクセスが難しくなる場合がある。また、上記従来の建設機械を台船に固縛して輸送する場合、固縛装置とトランスリフタ10とが干渉する場合がある。
【0007】
このような場合、図3に示すように、アーム11を上記格納位置と上記張出位置との中間位置に固定することが有効である。アーム11を中間位置に固定すると、トランスリフタ10とステップ83との間に空隙が生じ、この空隙から容易にスペースSにアクセスすることができるようになる。アーム11を中間位置に固定するためには、例えばカーボディ9にさらに中間位置用貫通孔を設けることが考えられるが、物理的にさらに貫通孔を設けることができない、あるいは強度が低下するといったおそれがある。先端をワイヤ等で固定する方法も考えられるが、建設機械の下部走行体に固定するための部品を取り付ける必要がある。また、いずれの方法のおいても下部走行体に対する加工が必要となるため、手間や加工費が高額となり易い。
【0008】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定可能な下部走行体及び建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る下部走行体は、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、上記カーボディを持ち上げるためのトランスリフタとを備え、上記トランスリフタが、上記カーボディに回動可能に取り付けられるアームと、平面視で上記アームを車幅方向に対して斜めに固定する固定機構とを有しており、上記固定機構が、上記カーボディを貫通し、上記アームの側縁を露出可能な貫通孔と、上記貫通孔に挿入され、かつ上記側縁に側方から当接する固定ピンとを有する。
【0010】
本発明の別の一態様に係る建設機械は、本発明の下部走行体を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の下部走行体及び建設機械は、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1に示す建設機械の下部走行体を示す模式的平面図であり、アームを張出位置とした状態を示す。
図3図3は、図2においてアームをトランスリフタが斜めに固定されている状態を示す。
図4図4は、図3に示すカーボディ及びトランスリフタの一部を拡大した模式的平面図である。
図5図5は、図4の模式的側面図である。
図6図6は、図4から固定ピンを抜き去った状態を示す模式的平面図である。
図7図7は、図4に示す固定ピンの模式的平面図である。
図8図8は、図7に示す固定ピンの模式的側面図である。
図9図9は、図4に示す固定ピンの模式的底面図である。
図10図10は、図4においてアームを格納位置とした状態を示す模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、トランスリフタのアームを回動する際、中間位置において、例えば格納用貫通孔にアームの側縁が露出することに着目した。具体的には、格納用貫通孔の下方をアームが回動する際、アームの側縁の一部が平面視で上記格納用貫通孔内を通り、この側縁の一部と上記格納用貫通孔とで画定される隙間が生じる。本発明者らは、上記アームが所望の中間位置にある際に形成される上記隙間に、この隙間と嵌合する固定ピンを差し込むと、トランスリフタを中間位置、すなわち斜めに固定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明の一態様に係る下部走行体は、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニットと、このクローラユニットが着脱可能に取り付けられるカーボディと、上記カーボディを持ち上げるためのトランスリフタとを備え、上記トランスリフタが、上記カーボディに回動可能に取り付けられるアームと、平面視で上記アームを車幅方向に対して斜めに固定する固定機構とを有しており、上記固定機構が、上記カーボディを貫通し、上記アームの側縁を露出可能な貫通孔と、上記貫通孔に挿入され、かつ上記側縁に側方から当接する固定ピンとを有する。
【0015】
当該下部走行体では、カーボディを貫通する貫通孔にアームの側縁が露出するので、上記アームの側縁と上記貫通孔とで画定される隙間に固定ピンを挿入できる。そして、上記固定ピンを上記アームの側縁に側方から当接させることで、平面視で上記アームを車幅方向に対して斜めに固定することができる。当該下部走行体では、上述のようにして上記アームを斜めに固定するので、下部走行体自体への加工を必要としない。従って、当該下部走行体は、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定できる。
【0016】
上記固定ピンが、上記貫通孔に嵌合する第1柱部と、上記第1柱部から延出し、上記側縁に当接する第2柱部とを有しており、上記第1柱部と上記第2柱部との接続部分に段差が設けられているとよい。このように固定ピンを構成することで、上記固定ピンが、上記貫通孔と上記隙間との両方に嵌合するので、トランスリフタをより確実に中間位置に固定できる。
【0017】
上記トランスリフタが、上記アームを回動可能とする中心軸と、この中心軸を上記カーボディに固定する抜け止めピンとを有し、上記固定ピンが上記貫通孔に嵌合した状態で、上記抜け止めピンが貫通する位置ずれ防止板を有するとよい。このように位置ずれ防止板を設けることで、トランスリフタをより確実に中間位置に固定できる。
【0018】
上記アームが、車幅方向に平行な格納位置と、走行方向に張り出した張出位置との間を回動可能に構成されており、上記トランスリフタが、上記アームに設けられ、上記格納位置及び上記張出位置で上記アームを上記カーボディに固定するための位置決め貫通孔を有し、上記カーボディが、上記アームを上記格納位置とした際に上記位置決め貫通孔と連続する格納用貫通孔と、上記アームを上記張出位置とした際に上記位置決め貫通孔と連続する張出用貫通孔とを有し、上記貫通孔が、上記格納用貫通孔及び上記張出用貫通孔のいずれか一方を兼ねているとよい。本発明者らは、格納用貫通孔及び張出用貫通孔においてアームの側縁が露出しやすいことを知得している。つまり、上記貫通孔を、上記格納用貫通孔及び上記張出用貫通孔のいずれか一方とすることで、トランスリフタを容易に所望の中間位置に固定することができる。
【0019】
上記アームを上記格納位置とした際に上記アームの側縁が上記張出用貫通孔に露出しており、上記固定ピンを上記張出用貫通孔に挿入可能に構成されているとよい。このように格納位置において上記固定ピンを上記張出用貫通孔に挿入可能に構成することで、輸送時に固定ピンを収納できるので、固定ピンの紛失等を抑止し、作業効率を高めることができる。
【0020】
本発明の別の一態様に係る建設機械は、本発明の下部走行体を備える。
【0021】
当該建設機械は、本発明の下部走行体を備えるので、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定できる。
【0022】
ここで、「アームの側縁が貫通孔に露出する」とは、平面視において、アームの位置とは反対側から貫通孔を覗いた際、アームの側縁が貫通孔内に視認できることを意味する。
【0023】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、本発明の一実施形態に係る建設機械及び下部走行体について、適宜図面を参照しつつ説明する。
【0024】
〔建設機械〕
図1に示す建設機械1は、下部走行体2と、この下部走行体2上に水平方向に旋回可能に搭載される上部旋回体3と、上部旋回体3に起伏可能に取り付けられるブーム4と、フック5と、ブーム4の先端からフック5を垂下するワイヤロープ6とを備える。
【0025】
<上部旋回体>
上部旋回体3は、ブーム4の取り付け部に隣接する操縦者用キャビン7や、ブーム4を起伏させるブーム起伏ウインチ(不図示)等を有する。
【0026】
このうち、操縦者用キャビン7は、操縦者が乗り込み、当該建設機械1の操作を行う場所である。
【0027】
<ブーム>
ブーム4は、上部旋回体3に前後に揺動可能に取り付けられる。ブーム4は、先端部にワイヤロープ6を案内するシーブを有する。
【0028】
<フック>
フック5は、ワイヤロープ6の下端部に固定され、吊り荷の吊り上げあるいは吊り下ろしをするためのものである。
【0029】
<ワイヤロープ>
ワイヤロープ6は、ブーム4の先端部のシーブを経由して、上部旋回体3に設置されているウィンチ(不図示)に巻回されている。なお、上記ウィンチは、ブーム4の背側(ブーム4を倒伏した状態で上になる側)に設置してもよい。
【0030】
〔下部走行体〕
下部走行体2は、それ自体が本発明の一態様である。当該下部走行体2は、図2に示すように、車幅方向に離間して配設される一対のクローラユニット8と、このクローラユニット8が着脱可能に取り付けられるカーボディ9と、4つのトランスリフタ10とを備える。
【0031】
<クローラユニット>
クローラユニット8は、当該下部走行体2の走行装置であり、図1に示すように、クローラフレーム81と、このクローラフレーム81に配設されるクローラ82とを有する。
【0032】
クローラフレーム81から車幅方向内側、つまり一対のクローラフレーム81の間に向かって突出するステップ83が設けられている。作業車はこのステップ83を利用して上部旋回体3に搭乗することができる。
【0033】
当該下部走行体2では、ステップ83は一対のクローラフレーム81に対して、カーボディ9の前方及び後方のそれぞれに設けられている。つまり、当該下部走行体2は、4つのステップ83を有している。後述するトランスリフタ10は、カーボディ9とステップ83との間で回動可能に設けられている。また、ステップ83を介して容易に上部旋回体3に搭乗できるように、トランスリフタ10が走行方向に平行な張出位置とされた際に、トランスリフタ10とステップ83との間は最小間隔(トランスリフタ10とステップ83とが接触しないことが保証される間隔)とされる。
【0034】
<カーボディ>
カーボディ9は、上部旋回体3を支持し、上部旋回体3を回転させるための旋回ベアリング91と、一対のクローラユニット8間に架け渡されるフレーム92とを有する。また、カーボディ9には、図2に示すように、前後にカーボディウェイト95が設けられていてもよい。
【0035】
フレーム92は、カーボディ9の前方に位置する前方フレーム92aと、カーボディ9の後方に位置する後方フレーム92bとから構成されている。
【0036】
<トランスリフタ>
トランスリフタ10は、カーボディ9を持ち上げるためのリフタであり、カーボディ9の前方及び後方のそれぞれに左右1つずつ、合計で4つ設けられている。なお、「左右」とは、この下部走行体2の前進方向(前方)を基準とした左右を意味する。
【0037】
トランスリフタ10は、カーボディ9に回動可能に取り付けられるアーム11と、アーム11の先端に固定されるシリンダ12と、アーム11をカーボディ9に固定するための位置決め貫通孔13と、平面視でアーム11を車幅方向に対して斜めに固定する固定機構14とを有している(図2図5参照)。また、トランスリフタ10は、アーム11を回動可能とする中心軸15と、この中心軸15をカーボディ9に固定する抜け止めピン16とを有している。
【0038】
(アーム)
アーム11は、中心軸15を介してその基端側がカーボディ9に取り付けられている。アーム11は、車幅方向に平行な格納位置と、走行方向に平行な張出位置との間を回動可能に構成されている。さらに詳細には、カーボディ9の前方に設けられている一対のトランスリフタ10は、下部走行体2の前方に張り出すように構成されており、カーボディ9の後方に設けられている一対のトランスリフタ10は、下部走行体2の後方(前進方向とは反対側)に張り出すように構成されている。
【0039】
本実施形態において、アーム11は上記格納位置と上記張出位置との間で90度回転する。なお、アーム11の回転角度は90度に限定されるものではなく、90度未満あるいは90度超であってもよい。この場合、上記張出位置においてアーム11が上記走行方向と必ずしも平行になるとは限らない。
【0040】
(シリンダ)
シリンダ12は、上記張出位置においてアーム11と地面との間に位置し、カーボディ9をジャッキアップ可能とする。シリンダ12は、例えばアーム11の先端部から下方に延びるシリンダ本体と、シリンダ本体に対して上下方向にスライド可能なロッドとを含む油圧シリンダによって構成することができる。
【0041】
(位置決め貫通孔)
位置決め貫通孔13は、アーム11に設けられ、上記格納位置及び上記張出位置にアーム11を固定する際に用いられる。具体的には、図4に示すように、カーボディ9が、アーム11を上記格納位置とした際に位置決め貫通孔13と連続する格納用貫通孔93と、アーム11を上記張出位置とした際に位置決め貫通孔13と連続する張出用貫通孔94とを有している。アーム11を上記格納位置に回動させると、位置決め貫通孔13と格納用貫通孔93とが連続するので、この連続する貫通孔に位置決めピン19(図4図5では不図示、図10参照)を差し込むことで、アーム11を上記格納位置に固定することができる。同様に、アーム11を上記張出位置に回動させると、位置決め貫通孔13と張出用貫通孔94とが連続するので、この連続する貫通孔に位置決めピン19を差し込むことで、アーム11を上記張出位置に固定することができる。
【0042】
(固定機構)
固定機構14は、カーボディ9を貫通する貫通孔17と、貫通孔17に挿入され、かつアーム11の側縁11aに側方から当接する固定ピン18とを有する。
【0043】
貫通孔17は、図6に示すように、アーム11の側縁11aを露出可能である。アーム11を上記格納位置及び上記張出位置の中間位置、すなわち平面視でアーム11を車幅方向に対して斜めとした際に、アーム11の側縁11aの一部が貫通孔17と平面視で重なる。そして、図6に示すように、貫通孔17には、側縁11aの一部と貫通孔17の周縁17aとで画定される隙間17bが生じる。
【0044】
本実施形態では、貫通孔17が格納用貫通孔93を兼ねている。本発明者らは、格納用貫通孔93においてアーム11の側縁11aが露出しやすいことを知得している。つまり、貫通孔17を、格納用貫通孔93とすることで、トランスリフタ10を容易に所望の中間位置に固定することができる。
【0045】
(固定ピン)
固定ピン18は、図7及び図8に示すように、貫通孔17に嵌合する第1柱部18aと、第1柱部18aから延出し、アーム11の側縁11aに当接する第2柱部18bと、固定ピン18が貫通孔17に嵌合した状態で抜け止めピン16が貫通する第1位置ずれ防止板18cと、固定ピン18が張出用貫通孔94に挿入された状態で抜け止めピン16が貫通する第2位置ずれ防止板18dと、第1柱部18aの頂面に立設し、第1位置ずれ防止板18c及び第2位置ずれ防止板18dを支持する支持板18eとを有する。
【0046】
第1柱部18aの断面は、貫通孔17の断面と同じ形状及び大きさとされ、第2柱部18bの断面は、隙間17bの断面と同じ形状及び大きさとされる。また、図8に示すように、第1柱部18aと第2柱部18bとの接続部分に段差18fが設けられている。このように固定ピン18を構成することで、固定ピン18が、貫通孔17と隙間17bとの両方に嵌合するので、トランスリフタ10をより確実に中間位置に固定できる。
【0047】
貫通孔17の断面が円形状であり、かつ第1柱部18aの断面が円形状であるとよい。この場合、隙間17bは弓形状となり、第2柱部18bの断面も弓形状となる。例えば、アーム11を固定する角度を大きくしたい場合、隙間17bは弓形状を維持したまま円弧が中心側に移動するから、これに対応させて第2柱部18bの円弧部18gも中心側に移動する(図9の→)。従って、固定位置を変更したい場合は、この円弧部18gの移動量に対応させて、例えばプレート18hを貼り付ける等して調整することができる。
【0048】
第1位置ずれ防止板18cは、図8に示すように、抜け止めピン16が貫通するピン貫通孔18iを有している。第1位置ずれ防止板18cは、固定ピン18が貫通孔17に嵌合した状態で、抜け止めピン16が垂直に貫通するように配置される(図6参照)。例えば貫通孔17の断面が円形である場合、固定ピン18自体が回転するとトランスリフタ10を中間位置に十分に固定できない場合が生じ得る。そこで、このように第1位置ずれ防止板18cを設けることで、トランスリフタ10をより確実に中間位置に固定できる。
【0049】
第2位置ずれ防止板18dは、第1位置ずれ防止板18cと所定の角度をもって配置されている点以外は、第1位置ずれ防止板18cと同様に構成される。上記所定の角度は、アーム11の上記格納位置と上記張出位置との間での回転角度に等しく、本実施形態の場合90度である。
【0050】
支持板18eは、固定ピン18の抜け止めを兼ねている。すなわち支持板18eは、平面視で第1柱部18aの直径よりも長く、第1柱部18aから一部が外方向に突出している。
【0051】
アーム11を上記格納位置とした際には、図10に示すように、位置決め貫通孔13と格納用貫通孔93とが連続するので、この連続する貫通孔に位置決めピン19を差し込むことで、アーム11を上記格納位置に固定する。このアーム11を上記格納位置とした際にアーム11の側縁11aが張出用貫通孔94に露出しており、固定ピン18を張出用貫通孔94に挿入可能に構成されているとよい。このように上記格納位置において固定ピン18を張出用貫通孔94に挿入可能に構成することで、輸送時に固定ピン18を収納できるので、固定ピン18の紛失等を抑止し、作業効率を高めることができる。
【0052】
〔利点〕
当該下部走行体2では、カーボディ9を貫通する貫通孔17にアーム11の側縁11aが露出するので、アーム11の側縁11aと貫通孔17とで画定される隙間17bに固定ピン18を挿入できる。そして、固定ピン18をアーム11の側縁11aに側方から当接させることで、平面視でアーム11をカーボディ9に対して斜めに固定することができる。当該下部走行体2では、上述のようにしてアーム11を斜めに固定するので、下部走行体2自体への加工を必要としない。従って、当該下部走行体2は、下部走行体2自体への加工を必要とせず、トランスリフタ10を中間位置に固定できる。
【0053】
当該建設機械1は、本発明の下部走行体2を備えるので、下部走行体2自体への加工を必要とせず、トランスリフタ10を中間位置に固定できる。
【0054】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0055】
上記実施形態では、ブーム及びフックを備える建設機械を例に取り説明したが、本発明の建設機械はブーム及びフックを備えるものに限定されるわけではなく、本発明の下部走行体を備える限り他の種類の建設機械であってもよい。
【0056】
上記実施形態では、トランスリフタを合計で4つ備える建設機械を例に取り説明したが、トランスリフタの数は4に限定されるものではない。また、全てのトランスリフタが平面視でアームを車幅方向に対して斜めに固定する固定機構を有している必要はなく、その一部が固定機構を有している場合も本発明の意図するところである。すなわち、アームを車幅方向に対して斜めに固定する必要があるトランスリフタに対して選択的に固定機構を設けることを妨げるものではない。
【0057】
上記実施形態では、トランスリフタが中心軸と、上記中心軸をカーボディに固定する抜け止めピンとを有している場合を説明したが、例えば中心軸が挿抜不可能に構成されている場合、抜け止めピンは省略できる。
【0058】
上記実施形態では、貫通孔が格納用貫通孔を兼ねる場合を説明したが、貫通孔は張出用貫通孔を兼ねても同様の効果を奏する。すなわち、上記貫通孔が、上記格納用貫通孔及び上記張出用貫通孔のいずれか一方を兼ねているとよい。あるいは、上記貫通孔は、カーボディを貫通し、アームの側縁を露出可能な他の貫通孔と兼ねることもできる。
【0059】
上記実施形態では、固定ピンが第1位置ずれ防止板及び第2位置ずれ防止板を有する場合を説明したが、このうちの一方又は両方を有さない固定ピンを用いることもできる。また、上記実施形態では、第1位置ずれ防止板及び第2位置ずれ防止板として、抜け止めピンが貫通する構成を示したが、他の部材が貫通あるいは結合することで位置ずれを防止してもよい。さらに上記固定ピンの形状は、上記実施形態の形状には限定されず、貫通孔に挿入され、かつアームの側縁に側方から当接できるものであれば、他の形状を採用することもできる。
【0060】
上記実施形態では、下部走行体がカーボディの前後に4つのステップを有する場合を説明したが、ステップの数や位置はこれに限定されるものではない。また、ステップを有さない下部走行体も本発明の意図するところである。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明の下部走行体及び建設機械は、下部走行体自体への加工を必要とせず、トランスリフタを中間位置に固定できる。
【符号の説明】
【0062】
1 建設機械
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 ブーム
5 フック
6 ワイヤロープ
7 操縦者用キャビン
8 クローラユニット
81 クローラフレーム
82 クローラ
83 ステップ
9 カーボディ
91 ベアリング
92 フレーム
92a 前方フレーム
92b 後方フレーム
93 格納用貫通孔
94 張出用貫通孔
95 カーボディウェイト
10 トランスリフタ
11 アーム
11a 側縁
12 シリンダ
13 位置決め貫通孔
14 固定機構
15 中心軸
16 抜け止めピン
17 貫通孔
17a 周縁
17b 隙間
18 固定ピン
18a 第1柱部
18b 第2柱部
18c 第1位置ずれ防止板
18d 第2位置ずれ防止板
18e 支持板
18f 段差
18g 円弧部
18h プレート
18i ピン貫通孔
19 位置決めピン
S スペース
図1
図2
図3
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図10