(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021432
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B60C11/13 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124254
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮和
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC19
3D131BC20
3D131EB14V
3D131EB14X
3D131EB19V
3D131EB19X
3D131EB20V
3D131EB20X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB89V
3D131EB89X
(57)【要約】
【課題】優れたウェット性能を発揮し得るタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2を有するタイヤである。トレッド部2は、タイヤ周方向に連続して延びる少なくとも1本の周方向溝3を含む。周方向溝3は、溝表面5と、溝表面5から凹む複数の細溝9とを含む。溝表面5は、第1溝壁6及び第2溝壁7と、溝底面8とを含む。細溝9は、溝底面8をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の溝底細溝10と、第1溝壁6をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第1溝壁細溝11と、溝底細溝10を第1溝壁細溝11に連通させる少なくとも1本の第1接続細溝16とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる少なくとも1本の周方向溝を含み、
前記周方向溝は、溝表面と、前記溝表面から凹む複数の細溝とを含み、
前記溝表面は、タイヤ半径方向に延びる第1溝壁及び第2溝壁と、前記第1溝壁と前記第2溝壁との間の溝底面とを含み、
前記細溝は、前記溝底面をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の溝底細溝と、前記第1溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第1溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第1溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第1接続細溝とを含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記細溝は、前記第2溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第2溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第2溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第2接続細溝とを含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記溝表面には、複数の前記第1接続細溝と複数の前記第2接続細溝とがタイヤ周方向に交互に設けられている、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1溝壁細溝は、タイヤ周方向の途切れ端部を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1接続細溝は、前記第1溝壁細溝の前記途切れ端部に連通している、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1溝壁細溝の最大の溝幅は、前記溝底細溝の最大の溝幅よりも小さい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1接続細溝の最大の溝幅は、前記第1溝壁細溝の最大の溝幅以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1溝壁細溝の最大の深さは、前記溝底細溝の最大の深さよりも小さい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1接続細溝の最大の深さは、前記第1溝壁細溝の最大の深さ以上である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1接続細溝は、前記溝底面において、タイヤ軸方向に対して傾斜している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記細溝は、複数の前記第1接続細溝を含み、
前記複数の第1接続細溝のそれぞれは、同じ向きに傾斜している、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記溝底面を平面視したときの前記第1接続細溝のタイヤ周方向に対する最大の角度θ1と、前記第1溝壁を平面視したときの前記第1接続細溝のタイヤ周方向に対する最大の角度θ2との差は、10°以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記細溝は、複数の前記第1接続細溝と、前記第2溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第2溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第2溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第2接続細溝とを含み、
前記第1接続細溝の前記溝底細溝側の端と、前記第2接続細溝の前記溝底細溝側の端とのタイヤ周方向の距離は、前記複数の第1接続細溝の1ピッチ長さの50%~70%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、トレッド部に設けられた主溝の溝底に、溝内溝が形成された空気入りタイヤが提案されている。この空気入りタイヤは、前記溝内溝によって、前記主溝の排水性の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の高性能化に伴い、タイヤにおいてもウェット性能のより一層の向上が求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、優れたウェット性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる少なくとも1本の周方向溝を含み、前記周方向溝は、溝表面と、前記溝表面から凹む複数の細溝とを含み、前記溝表面は、タイヤ半径方向に延びる第1溝壁及び第2溝壁と、前記第1溝壁と前記第2溝壁との間の溝底面とを含み、前記細溝は、前記溝底面をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の溝底細溝と、前記第1溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第1溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第1溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第1接続細溝とを含む、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れたウェット性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のタイヤのトレッド部の子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1の正規状態におけるトレッド部2の子午線断面図である。
図1に示されるように、本発明は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤに適用されるのが望ましい。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明は、例えば、自動二輪車用や重荷重用のタイヤに適用されても良い。
【0010】
前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって車両に未装着かつ無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、本明細書において、特に断りの無い限り、前記寸法の測定方法には、公知の方法を適宜適用することができる。
【0011】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
本実施形態のタイヤ1の内部には、カーカスやベルト層等のタイヤ構成部材が配されている(図示省略)。これらのタイヤ構成部材には、公知の態様が適宜採用される。
【0014】
トレッド部2には、2つのトレッド端Teの間でタイヤ周方向に連続して延びる少なくとも1本の周方向溝3が設けられている。本実施形態では、2つのトレッド端Teの間に4本の周方向溝3が設けられている。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0015】
2つのトレッド端Teは、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。また、この状態で前記平面に接地するトレッド部2の外面が、トレッド接地面2sに相当する。
【0016】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
周方向溝3の溝幅及び深さは、タイヤのカテゴリに応じて適宜決定される。本実施形態において、周方向溝3の溝幅W1(トレッド接地面2s上での溝幅である。)は、少なくとも3mm以上であり、例えば、5~20mmである。周方向溝3の深さd1(後述される細溝9を除いた最大の深さである。)は、少なくとも3mm以上であり、例えば、5~15mmである。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0018】
図2には、周方向溝3の拡大斜視図が示されている。
図3には、周方向溝3の拡大断面図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、周方向溝3は、溝表面5と、溝表面5から凹む複数の細溝9とを含む。溝表面5は、周方向溝3の2つの溝縁3eの間に形成される溝の内面を意味する。したがって、
図3に示されるように、溝表面5は、タイヤ半径方向に延びる第1溝壁6及び第2溝壁7と、第1溝壁6と第2溝壁7との間の溝底面8とを含む。
【0019】
本実施形態の第1溝壁6及び第2溝壁7は、例えば、周方向溝3の深さ方向に対して5~15°の角度で傾斜した平面状である。第1溝壁6及び第2溝壁7の溝縁側の端部には、傾斜面からなる面取り部が連なっても良い(図示省略)。溝底面8は、本体面20、第1湾曲面21及び第2湾曲面22を含む。本体面20は、周方向溝3の溝幅方向に平面状に延びている。第1湾曲面21は、本体面20と第1溝壁6との間に構成されており、円弧状に湾曲している。第2湾曲面22は、本体面20と第2溝壁7との間に構成されており、円弧状に湾曲している。
【0020】
細溝9は、長手方向を有する凹部であり、周方向溝3に対して十分に小さい溝幅及び深さを有している。細溝9の溝幅W2(周方向溝3の溝表面5での開口幅である)は、周方向溝3の溝幅W1(
図1に示す)の20%以下であり、具体的には1.0~3.0mmである。細溝9の深さは、周方向溝3の深さd1(
図1に示す)の20%以下であり、具体的には1.0~3.0mmである。細溝9の溝幅及び深さは、細溝9の長さ方向に一定であるのが望ましい。また、細溝9は、例えば、その横断面において、円弧状の輪郭を有している。但し、細溝9は、このような態様に限定されるものではない。
【0021】
図4には、周方向溝3の溝表面5を平面状に展開した展開図が示されている。
図4において、細溝9にはドットが施されている。また、第1仮想線23は、第1湾曲面21(
図3に示す)の湾曲の頂点を示しており、第2仮想線24は、第2湾曲面22(
図3に示す)の湾曲の頂点を示している。
図4に示されるように、細溝9は、少なくとも1本の溝底細溝10と、少なくとも1本の第1溝壁細溝11と、少なくとも1本の第1接続細溝16とを含む。溝底細溝10は、溝底面8をタイヤ周方向に延びている。第1溝壁細溝11は、第1溝壁6をタイヤ周方向に延びている。第1接続細溝16は、溝底細溝10を第1溝壁細溝11に連通させている。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れたウェット性能を発揮することができる。そのメカニズムは、以下の通りである。
【0022】
本発明の周方向溝3は、溝底細溝10と、第1溝壁細溝11と、これらを連通させる第1接続細溝16とを含んでいる。これらの細溝9は、周方向溝3の溝容積を拡大させ、ウェット性能を高めるのに役立つ。また、ウェット走行時、周方向溝3内の水は、これらの細溝9によって、第1溝壁6及び溝底面8に沿った方向に回転力が与えられて螺旋状の水流となり易く、ひいてはタイヤ外方に排出され易くなる。このような作用により、周方向溝3の排水性が向上し、ひいては優れたウェット性能が発揮される。
【0023】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0024】
本実施形態の周方向溝3の溝表面5には、上述の細溝9に加え、少なくとも1本の第2溝壁細溝12と、少なくとも1本の第2接続細溝17とが設けられている。第2溝壁細溝12は、第2溝壁7をタイヤ周方向に延びている。第2溝壁細溝12は、溝底細溝10を第2溝壁細溝12に連通させている。本実施形態では、1本の周方向溝3内に、溝底細溝10が1本設けられており、かつ、第1溝壁細溝11及び第2溝壁細溝12、並びに、第1接続細溝16及び第2接続細溝17が、それぞれ、周方向溝3の長さ方向に複数設けられている。
【0025】
溝底細溝10は、例えば、溝底面8を周方向溝3の溝幅方向に3等分したときの中央の領域に配置されており、周方向溝3の長さ方向に平行に延びている。より望ましい態様では、溝底細溝10は、タイヤ全周に亘って、タイヤ周方向に連続して延びている。このような溝底細溝10は、ウェット性能をより一層高めるのに役立つ。
【0026】
溝底細溝10の溝幅W3は、例えば、周方向溝3の溝幅W1(
図1に示す)の10%~15%である。溝底細溝10の深さd2(
図3に示す)は、例えば、周方向溝3の深さd1(
図1に示す)の5%~10%である。このような溝底細溝10は、周方向溝3周辺の剛性を維持してドライ路面での操縦安定性(以下、単に「操縦安定性」という)を確保しつつ、ウェット性能を高めることができる。
【0027】
図4に示されるように、第1溝壁細溝11は、例えば、第1溝壁6を周方向溝3の深さ方向に3等分したときの中央の領域に配置されており、周方向溝3の長さ方向に平行に延びている。周方向溝3の溝縁3eから第1溝壁細溝11の溝幅中心までの周方向溝3の深さ方向の距離L1は、周方向溝3の深さd1(
図1に示す)の35%~55%である。これにより、操縦安定性とウェット性能とがバランス良く向上する。
【0028】
第1溝壁細溝11は、タイヤ周方向の途切れ端部11aを含む。本実施形態の第1溝壁細溝11は、タイヤ周方向の両側に途切れ端部11aを含んでいる。また、本実施形態では、このような第1溝壁細溝11が、タイヤ周方向に複数配置されている。1本の第1溝壁細溝11のタイヤ周方向の長さL2は、例えば、周方向溝3の溝幅W1の50%~150%である。タイヤ周方向で隣り合う2本の第1溝壁細溝11の間隔は、1本の第1溝壁細溝11の前記長さL2の80%~120%である。このような第1溝壁細溝11の配置は、操縦安定性を維持しつつ、ウェット性能を高めることができる。なお、前記長さL2は、第1溝壁細溝11の溝中心線で測定される。本実施形態のように、第1溝壁細溝11の溝中心線と、第1接続細溝16の溝中心線とが連なっている場合、溝中心線のタイヤ周方向に対する角度が45°となる位置が、第1接続細溝16のタイヤ周方向の端となる。
【0029】
上述の効果を確実に発揮させるために、第1溝壁細溝11の最大の溝幅W4は、溝底細溝10の最大の溝幅W3よりも小さいのが望ましい。具体的には、第1溝壁細溝11の前記溝幅W4は、溝底細溝10の前記溝幅W3の30%~60%である。同様に、
図3に示されるように、第1溝壁細溝11の最大の深さd3は、溝底細溝10の最大の深さd2よりも小さい。具体的には、第1溝壁細溝11の前記深さd3は、溝底細溝10の前記深さd2の50%~90%である。
【0030】
図4に示されるように、第2溝壁細溝12は、第1溝壁細溝11とタイヤ周方向に位置ずれするように配置されている。これ以外の構成について、第2溝壁細溝12は、第1溝壁細溝11と実質的に同じ構成を備えている。このため、上述の第1溝壁細溝11の構成は、第2溝壁細溝12に適用することができる。
【0031】
第1接続細溝16は、溝底細溝10から傾斜して延び、第1溝壁細溝11の途切れ端部11aに連通している。また、第1接続細溝16は、溝底面8において、タイヤ軸方向に対して傾斜しており、この傾斜の向きを維持したまま、第1溝壁6において第1溝壁細溝11まで延びている。本実施形態では、1本の第1溝壁細溝11の両側の途切れ端部11aのそれぞれに、第1接続細溝16が連通している。また、1本の第1溝壁細溝11に連通した2本の第1接続細溝16は、互いに同じ向きに傾斜している。より望ましい態様では、複数の第1接続細溝16のそれぞれが、同じ向き(
図4では、右下がり)に傾斜している。このような第1接続細溝16の配置は、ウェット走行時、周方向溝3内の水に対してより積極的に回転力を与えることができ、ウェット性能をさらに高めることができる。
【0032】
溝底面8を平面視したときの、第1接続細溝16のタイヤ周方向に対する最大の角度θ1は、例えば、60~80°である。また、第1溝壁6を平面視したときの、第1接続細溝16のタイヤ周方向に対する最大の角度θ2は、例えば、60~80°である。より望ましい態様では、上述の角度θ1と角度θ2との差が、10°以下とされる。これにより、ウェット走行時、周方向溝3内の水が螺旋状の水流となり易くなる。なお、これらの角度θ1、θ2は、第1接続細溝16の溝中心線で測定される。
【0033】
第1接続細溝16の最大の溝幅W5は、第1溝壁細溝11の最大の溝幅W4以上である。具体的には、第1接続細溝16の前記溝幅W5は、第1溝壁細溝11の前記溝幅W4の100%~150%である。同様に、
図3に示されるように、第1接続細溝16の最大の深さd4は、第1溝壁細溝11の最大の深さd3以上である。具体的には、第1接続細溝16の前記深さd4は、第1溝壁細溝11の前記深さd3の100%~150%である。このような第1接続細溝16は、操縦安定性とウェット性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0034】
図4に示されるように、溝表面5には、複数の第1接続細溝16と複数の第2接続細溝17とがタイヤ周方向に交互に設けられている。また、複数の第2接続細溝17は、第1接続細溝16と同じ向きに傾斜(
図4では右下がり)している。また、第2接続細溝17は、第1接続細溝16と実質的に同じ構成を備えている。このため、上述の第1接続細溝16の構成は、第2接続細溝17に適用することができる。
【0035】
第1接続細溝16の溝底細溝10側の端と、第2接続細溝17の溝底細溝10側の端とのタイヤ周方向の距離L3は、複数の第1接続細溝16の1ピッチ長さP1の50%~70%である。
【0036】
本実施形態では、上述の細溝9の配置により、溝表面5に、複数の第1細溝グループ31と、複数の第2細溝グループ32とが設けられている。第1細溝グループ31は、1本の第1溝壁細溝11と、これに連なる2本の第1接続細溝16とからなり、略C字状に構成されている。第2細溝グループ32は、1本の第2溝壁細溝12と、これに連なる2本の第2接続細溝17とからなり、略C字状に構成されている。望ましい態様では、第1細溝グループ31と第2細溝グループ32とが、タイヤ周方向で重複している。すなわち、
図4で示される周方向溝3の展開図において、第1細溝グループ31をタイヤ軸方向に延長した仮想の領域が、第2細溝グループ32の一部と重複している。さらに望ましい態様では、複数の第1細溝グループ31と、複数の第2細溝グループ32とが、タイヤ周方向に交互に設けられている。このような細溝9の配置により、ウェット走行時、周方向溝3内の水がさらに螺旋状の水流となり易く、ウェット性能がより一層向上する。
【0037】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0038】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0039】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる少なくとも1本の周方向溝を含み、
前記周方向溝は、溝表面と、前記溝表面から凹む複数の細溝とを含み、
前記溝表面は、タイヤ半径方向に延びる第1溝壁及び第2溝壁と、前記第1溝壁と前記第2溝壁との間の溝底面とを含み、
前記細溝は、前記溝底面をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の溝底細溝と、前記第1溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第1溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第1溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第1接続細溝とを含む、
タイヤ。
[本発明2]
前記細溝は、前記第2溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第2溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第2溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第2接続細溝とを含む、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記溝表面には、複数の前記第1接続細溝と複数の前記第2接続細溝とがタイヤ周方向に交互に設けられている、本発明2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記第1溝壁細溝は、タイヤ周方向の途切れ端部を含む、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記第1接続細溝は、前記第1溝壁細溝の前記途切れ端部に連通している、本発明4に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記第1溝壁細溝の最大の溝幅は、前記溝底細溝の最大の溝幅よりも小さい、本発明1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記第1接続細溝の最大の溝幅は、前記第1溝壁細溝の最大の溝幅以上である、本発明1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記第1溝壁細溝の最大の深さは、前記溝底細溝の最大の深さよりも小さい、本発明1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記第1接続細溝の最大の深さは、前記第1溝壁細溝の最大の深さ以上である、本発明1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記第1接続細溝は、前記溝底面において、タイヤ軸方向に対して傾斜している、本発明1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明11]
前記細溝は、複数の前記第1接続細溝を含み、
前記複数の第1接続細溝のそれぞれは、同じ向きに傾斜している、本発明1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明12]
前記溝底面を平面視したときの前記第1接続細溝のタイヤ周方向に対する最大の角度θ1と、前記第1溝壁を平面視したときの前記第1接続細溝のタイヤ周方向に対する最大の角度θ2との差は、10°以下である、本発明1ないし11のいずれか1項に記載のタイヤ。
[本発明13]
前記細溝は、複数の前記第1接続細溝と、前記第2溝壁をタイヤ周方向に延びる少なくとも1本の第2溝壁細溝と、前記溝底細溝を前記第2溝壁細溝に連通させる少なくとも1本の第2接続細溝とを含み、
前記第1接続細溝の前記溝底細溝側の端と、前記第2接続細溝の前記溝底細溝側の端とのタイヤ周方向の距離は、前記複数の第1接続細溝の1ピッチ長さの50%~70%である、本発明1ないし12のいずれか1項に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0040】
2 トレッド部
3 周方向溝
5 溝表面
6 第1溝壁
7 第2溝壁
8 溝底面
9 細溝
10 溝底細溝
11 第1溝壁細溝
16 第1接続細溝