IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図1
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図2
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図3
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図4
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図5
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図6
  • 特開-排気方法、および、ロボットシステム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021465
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】排気方法、および、ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124297
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 映史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 冬生
(72)【発明者】
【氏名】小針 佑貴
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CS08
3C707HS27
3C707KS18
3C707KT01
3C707KT04
3C707KW03
3C707KX10
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】ロボットコントローラーの筐体の内部で結露が発生することを抑制する。
【解決手段】自律移動ロボット1は、ロボット100と、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有するロボットコントローラー400と、車両700と、ロボットコントローラー400が備え、筐体110aの内部の空気を排出することができる排出装置600と、を備える。筐体110aの排気を行う排気方法は、車両700が第1温度である第1領域から、第1温度より低い第2温度である第2領域に移動する場合に、車両700が移動を開始してから第2領域に進入するまでに要する到達期間を排出装置600が算出する算出ステップと、排出装置600が、到達期間に基づいて排気開始時刻を設定する設定ステップと、排出装置600が、排気開始時刻までは排気を行わず、排気開始時刻に筐体110aの排気を開始する開始ステップと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、を備えるロボットシステムにおいて、前記筐体の排気を行う排気方法であって、
前記移動体が第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に移動する場合に、前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を前記排出装置が算出する算出ステップと、
前記排出装置が、前記到達期間に基づいて排気開始時刻を設定する設定ステップと、
前記排出装置が、前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する開始ステップと、
を含む排気方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排気方法であって、
前記筐体の内部の空気の圧力を測定する圧力センサーが前記筐体の内部に設けられており、
前記圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値以下となった場合、前記排出装置が、排気を停止する停止ステップ、
をさらに含む排気方法。
【請求項3】
請求項1に記載の排気方法であって、
前記筐体の内部の空気の圧力を測定する圧力センサーが前記筐体の内部に設けられており、
前記到達期間に基づいてあらかじめ設定された時において前記圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値を上回っている場合、前記排出装置が、前記移動体の移動を停止する指示を前記移動体に出力する移動停止ステップ、
をさらに含む排気方法。
【請求項4】
請求項1に記載の排気方法であって、
前記排気開始時刻は、前記到達期間から、前記ロボットコントローラーの前記筐体の内部の空気を排出するのに要する排出期間を引くことにより求められる、
排気方法。
【請求項5】
請求項4に記載の排気方法であって、
前記排出期間は、前記筐体の容量と、前記排出装置の単位時間あたりの気体の排出量と、に基づいて算出される、
排気方法。
【請求項6】
ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、
前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、
前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、
を備え、
第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に前記移動体が移動する場合において、前記排出装置が、
前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を算出し、
前記到達期間に基づいて、排気開始時刻を設定し、
前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する、
ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品の製造ラインといった、人が作業するには比較的過酷な環境である低温環境において、人の代わりにロボットに作業を行わせたいという要望がある。人と同様の作業を行うロボットの例として、特許文献1には、ロボットアームとロボットコントローラーとを無人搬送台車に搭載したロボットシステムが、あらかじめ決められた作業を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-071183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような、移動ロボットが、例えば、常温環境から低温環境へ移動した場合、ロボットコントローラーの内部の空気が冷却されることにより、ロボットコントローラーの筐体の内部で結露が発生する。発生した結露によりロボットコントローラーが備える電気回路の腐食、接触不良、短絡等が起きてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、ロボットアームと、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、を備えるロボットシステムにおいて、前記筐体の排気を行う排気方法が提供される。この排気方法は、前記移動体が第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に移動する場合に、前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を前記排出装置が算出する算出ステップと、前記排出装置が、前記到達期間に基づいて排気開始時刻を設定する設定ステップと、前記排出装置が、前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する開始ステップと、を含む。
【0006】
本開示の他の形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、ロボットアームと、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、を備える。第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に前記移動体が移動する場合において、前記排出装置が、前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を算出し、前記到達期間に基づいて、排気開始時刻を設定し、前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る自律移動ロボットを表す概略図である。
図2】自律移動ロボットの主要部を示すブロック図である。
図3】排出装置の外観図である。
図4】排出装置を取り付ける様子を表す図である。
図5】自律移動ロボットの移動処理を示すフローチャートである。
図6】移動処理に含まれる走行準備処理のフローチャートである。
図7】排出装置の排気処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A1.実施形態:
図1は、本実施形態に係る自律移動ロボット1を表す概略図である。なお、図1においては、技術の理解を容易にするため、後述する排出装置600を長方形で表している。自律移動ロボット1は、後述する管理装置900の指示を受けて自律的に動作する。実施形態において、自律移動ロボット1は、食品工場において食品の製造に関する作業を行う。自律移動ロボット1は、常温環境の領域と低温環境の領域とを移動する。自律移動ロボット1は、常温環境の領域と低温環境の領域とのうち少なくとも一方において作業を行う。
【0009】
常温環境とは、本明細書においては10℃以上25℃未満の範囲の環境をいう。本明細書において、低温環境とは、マイナス20℃以上10℃未満の環境をいう。常温環境の温度の範囲を第1範囲ともよび、第1範囲に属する温度を第1温度ともよぶ。低温環境の温度の範囲を第2範囲ともよび、第2範囲に属する温度を第2温度ともよぶ。実施形態においては、自律移動ロボット1は、常温環境と低温環境とを移動する。自律移動ロボット1が移動する環境においては、30℃以上の温度差が生じることがある。気温が低いほど、飽和水蒸気量、即ち、空気中に存在できる水蒸気の量が少なくなる。例えば、自律移動ロボット1の移動により、自律移動ロボット1の周囲温度が下がると、自律移動ロボット1の内部の空気の温度が露点に達する。この結果、自律移動ロボット1の内部で結露が発生する。また、自律移動ロボット1の空気の温度が氷点下となると、自律移動ロボット1の内部で発生した水が凍る。この場合、自律移動ロボット1の移動により、自律移動ロボット1の周囲温度が上がると、自律移動ロボット1の内部において氷が溶けて水となる。このため、実施形態においては、自律移動ロボット1は、結露の発生を抑制する構成を備える。なお、上記の温度範囲は一例であり、常温環境の温度の範囲の下限値が0℃以上であり、低温環境の温度の範囲の上限値が、常温環境の温度の範囲の下限値より低く設定されていればよい。自律移動ロボット1をロボットシステムともよぶ。
【0010】
図1において、技術の理解を容易にするため、基準座標系BCおよびロボット座標系RCを示す。基準座標系BCは、水平面に平行な面内において互いに直交するX軸およびY軸と、鉛直上向きを正方向とするZ軸とによって規定される3次元直交座標系である。ロボット座標系RCは、自律移動ロボット1が設置された空間を規定する座標系である。ロボット座標系RCの原点Orは、関節J1の回転軸上であって、基台110内に位置する点である。自律移動ロボット1の上方がZ軸正方向である。自律移動ロボット1の前方がX軸正方向である。Z軸とX軸に垂直な方向がY軸正方向である。
【0011】
自律移動ロボット1は、ロボット100と、エンドエフェクター300と、ロボットコントローラー400と、排出装置600と、車両700とを備える。
【0012】
ロボット100は、垂直多関節ロボットである。ロボット100は、基台110と、アーム130と、力覚センサー190とを備える。基台110は、アーム130を支持している。基台110は、車両700に固定されている。アーム130は、アーム130の先端部に取りつけられたエンドエフェクター300を移動させることができる。アーム130は、アーム要素130a~130fを含む。さらに、アーム130は、6個の関節J1~J6を備える。すなわち、ロボット100は、6個の関節J1~J6を備えたアーム130を有する6軸ロボットである。関節J1~J6は回転関節である。アーム130および力覚センサー190をロボットアームともよぶ。
【0013】
エンドエフェクター300は、力覚センサー190を介して、アーム要素130fに接続されている。エンドエフェクター300は、ロボットコントローラー400の制御に従って、例えば、作業の対象物であるワークを把持して、移動させる。
【0014】
ロボットコントローラー400は、ロボット100およびエンドエフェクター300を制御する制御装置である。実施形態において、ロボットコントローラー400は、基台110の筐体110aの内部に備えられている。筐体110aをロボットコントローラー400が備える筐体ということがある。ロボットコントローラー400は、アーム130、力覚センサー190、および、エンドエフェクター300に不図示の信号線を介して接続されている。ロボットコントローラー400は、ロボット座標系RCにおいてロボット100の制御点の位置を制御する。ロボット100の制御点は、例えば、エンドエフェクター300が対象物に触れる点の中心に設定される。制御点をTCP(Tool Center Point)とよぶことがある。ロボットコントローラー400は、ロボット100の各関節を駆動することにより、ロボット100の位置および姿勢を変化させる。このようにして、ロボットコントローラー400は、アーム130の先端に取り付けられたエンドエフェクター300を、指定された位置に指定された姿勢で配することができる。また、ロボットコントローラー400は、後述する管理装置900と無線通信により通信可能である。
【0015】
図2は、自律移動ロボット1の主要部を示すブロック図である。ロボットコントローラー400は、CPU(Central Processing Unit)401と、メモリー402とを備える。CPU401は、メモリー402に格納されている各種のプログラムを実行することにより、様々な機能を実現する。例えば、CPU401は、ロボット100が対象物に対して作業する際のロボット100の作業姿勢を計算する。メモリー402には、ロボット100を制御するためのプログラム40aを含む各種のプログラムが格納されている。
【0016】
図3は、ロボットコントローラー400に取り付けられている状態における排出装置600の外観図である。図4は、排出装置600のエジェクター部610をロボットコントローラー400に取り付ける前の様子を表す図である。図3図4においては、技術の理解を容易にするため、基台110が支持するアーム130、車両700の図示を省略している。
【0017】
排出装置600は、筐体110aの内部の空気を排出する装置である。排出装置600は、自律移動ロボット1の内部で結露が発生することを抑制するため、筐体110aの内部の空気を排出する。筐体110aの内部の空気が排出されることにより、筐体110a内の空気に含まれる水蒸気が排出される。筐体110aの内部の空気に含まれる水蒸気の量が減らされることにより、自律移動ロボット1の周囲温度が下がった場合に、筐体110a内において発生する水または氷の量を、筐体110aの内部の空気を排出しない場合に比べて減らすことができる。
【0018】
実施形態において、ロボットコントローラー400が収容されている筐体110aは密閉性が確保されるように構成されている。筐体110a内に水蒸気が入り込むことを抑制するためである。なお、本明細書においては、密閉性が確保されるとは、筐体110aが完全に密閉されていることを意味しない。密閉性が確保されていても、筐体110aの内部の空気の一部が漏れること、外部から筐体110aの内部に空気が入ること、が発生しうる。図4に示すように、筐体110aには、ロボットコントローラー400の内部の冷却用ファンに外気を供給するための外気吸込口110bが備えられている。このため、筐体110aを完全に密閉することはできない。冷却用ファンは、外気を取り込み、CPU401等を冷却するためのものである。
【0019】
図3、4に示すように、排出装置600は、エジェクター部610と、制御部630とを備える。排出装置600は、不図示のバッテリーを備え、バッテリーに蓄えられた電力を動力として動作する。あるいは、排出装置600は、ロボットコントローラー400から電力の供給を受ける構成を備えていてもよい。エジェクター部610は、外気を取り込む外気取込口611と、外気を圧縮して圧縮空気を生成するポンプ613と、吸引対象の気体を取り込む吸引口615と、本体617と、排出口619とを備える。吸引口615は、ロボットコントローラー400の外気吸込口110bに取り付けられている。外気吸込口110bは、ロボットコントローラー400が備えるCPU401等の空冷のために、外気を取り込むために筐体110aに設けられている開口である。ポンプ613として、例えば、ベローズポンプを使用することができる。
【0020】
エジェクター部610は以下のように動作することにより、筐体110aの内部の空気を排出する。外気取込口611から取り込まれた外気は、ポンプ613で圧縮され、圧縮された空気は駆動流として本体617内部に噴射される。これにより、本体617内部の圧力が低下する。本体617内部の圧力が低下することにより、吸引口615から筐体110aの内部の空気が吸引流として本体617内に吸引される。本体617内で合流した駆動流と吸引流とは、排出口619から排出される。
【0021】
制御部630は、エジェクター部610を制御する。具体的には、制御部630は、エジェクター部610のポンプ613に信号線S1を介して接続されており、ポンプ613の駆動のオンとオフとを切り替え、エジェクター部610による筐体110aの排気を制御する。本明細書において、筐体110aの排気とは、筐体110aの内部の空気を排出することと同義であるものとする。制御部630は、筐体110aの天板上面に固定されている。
【0022】
図2に示すように、制御部630は、CPU631とメモリー632とを備える。CPU631は、メモリー632に格納されている各種のプログラムを実行することにより、エジェクター部610を制御する処理を実行する。メモリー632には、エジェクター部610を制御するためのプログラム60aが格納されている。また、メモリー632には、エジェクター部610の単位時間あたりの排出量と、筐体110aの容量とを示す定義データ60bがあらかじめ格納されている。
【0023】
図1に示すように、車両700は、ロボット100とロボットコントローラー400とを支持している。車両700は、ロボット100を床面上の任意の位置に移動させることができる。車両700を移動体ともよぶ。車両700は、1組の駆動輪DWと、2組の従動輪FW1,FW2と、第1駆動部710と、第2駆動部730と、カメラ750と、車両制御部770と、を備える。なお、図1においては、第2駆動部730の図示を省略している。
【0024】
第1駆動部710は、サーボモーター711と、エンコーダー712と、減速機713とを備える。サーボモーター711は、車両制御部770の制御に従って、その出力軸を回転させる。減速機713は、サーボモーター711の出力軸の回転を減速させて一方の駆動輪DWに伝達する。このようにして、第1駆動部710は、一方の駆動輪DWを駆動する。第2駆動部730は、第1駆動部710と同様の構成を備え、他方の駆動輪DWを駆動する。
【0025】
2組の従動輪FW1,FW2は、1組の駆動輪DWとともに車両700を支持する。従動輪FW1,FW2は、外力を加えられて回転する。従動輪FW1,FW2は、原動機によって駆動されない。1組の従動輪FW1の回転軸と、1組の従動輪FW2の回転軸と、1組の駆動輪DWの回転軸とは、互いに平行である。
【0026】
カメラ750は、車両700の前方、すなわち、ロボット座標系RCのX軸方向の所定の角度範囲の画像を取得する。カメラ750が取得した画像のデータは、車両制御部770に出力される。
【0027】
車両制御部770は、車両700の動作を制御する制御装置である。車両制御部770は、後述する管理装置900と無線通信により通信可能である。図2に示すように、車両制御部770は、CPU771とメモリー772とを備える。CPU771がメモリー772に記憶されたプログラムを実行することによって、各種の機能が実現される。メモリー772には、車両700を制御するためのプログラム70aが格納されている。また、メモリー772には、自律移動ロボット1が移動する食品工場内の地図データ70bが格納されている。地図データ70bには、低温環境の領域と常温環境の領域との境界の情報が含まれている。さらに、メモリー772には、車両700の走行速度の指定値を示す速度データ70cが格納されている。移動データ70d、位置データ70e、ルートデータ70fは、後述する移動処理において生成されるデータである。なお、地図データ70bには、低温環境の領域と常温環境の領域との境界の情報に加えて車両700の一時停止情報が含まれていてもよい。一時停止情報は、少なくとも、車両700が一時停止する位置の情報および一時停止する期間の情報を含む。一時停止する位置の情報は、例えば、自動扉の位置座標のデータであり、一時停止する期間の情報は、例えば、自動扉が開くまでにかかる時間のデータである。
【0028】
管理装置900は、自律移動ロボット1に指示を与え、自律移動ロボット1の移動を管理する。管理装置900は、1つ以上の自律移動ロボット1を管理することができる。管理装置900は、ロボットコントローラー400および車両700の車両制御部770と無線通信により通信可能である。例えば、管理装置900は、管理テーブル90aに基づいて、作業位置と、作業位置に向けて移動を開始する移動開始時刻とを、車両700に通知する。
【0029】
管理装置900は、CPU901と、メモリー902とを備える。CPU901は、メモリー902に記憶されたプログラムを実行することによって、様々な機能を実現する。メモリー902には、複数の自律移動ロボット1を制御するための制御プログラムが格納されている。また、メモリー902には、対象物に対する作業に関する作業情報を管理するための管理テーブル90aが格納されている。作業情報は、自律移動ロボット1が対象物に対して作業を行う位置である作業位置を示す情報、対象物の位置を示す情報等を含む。管理装置900は、ユーザーからの指示を受け付けるため、マウス、キーボード等の入力装置をさらに備えていてもよい。また、管理装置900は、ユーザーに各種の情報を出力するため、ディスプレイ、スピーカー等の出力装置をさらに備えていてもよい。
【0030】
図5は、自律移動ロボット1の移動処理を示すフローチャートである。図6は、移動処理に含まれる走行準備処理を示すフローチャートである。まず、上記の構成を備える自律移動ロボット1の移動にかかる一連の流れを説明する。
【0031】
図5に示すように、ステップS101において、車両制御部770は、管理装置900から作業位置についての通知を受けるまで(ステップS101;NO)、待機する。ステップS101において、車両制御部770に、作業位置と移動を開始する移動開始時刻とが管理装置900から通知されると(ステップS101;YES)、ステップS102の走行準備処理が実行される。
【0032】
図6に示すように、ステップS1021において、車両制御部770は、管理装置900から通知された作業位置と移動開始時刻とを示す移動データ70dを、メモリー772に格納する。ステップS1022において、車両制御部770は、ロボットコントローラー400に移動を開始することを通知する。
【0033】
ステップS1023において、ロボットコントローラー400は、車両制御部770から移動を開始する旨の通知を受けると、排出装置600に移動を開始することを通知する。ステップS1024において、ロボットコントローラー400は、アーム130を制御して、アーム130をあらかじめ決められた姿勢に変化させる。あらかじめ決められた姿勢とは、移動時にアーム130が周囲の物体に接触することを回避できるような姿勢である。例えば、図1に示す姿勢から、関節J3だけを曲げ、エンドエフェクター300を基台110に近づけた姿勢である。
【0034】
ステップS1025において、車両制御部770は、車両700が走行するルートを選択する。具体的には、まず、車両制御部770は、カメラ750が生成した画像のデータに基づいて、車両700の現在位置を計算する。車両制御部770は、現在位置を示す位置データ70eをメモリー772に格納する。そして、車両制御部770は、通知された作業位置と、車両700の現在位置と、地図データ70bとに基づいて、ルートを選択する。ステップS1026において、車両制御部770は、選択したルートをルートデータ70fとしてメモリー772に格納する。なお、選択したルートに一時停止情報が含まれている場合には、車両制御部770は、一時停止情報についてもメモリー772に格納する。ステップS1026が実行されると、走行準備処理が終了する。その後、図5に示すステップS103が実行される。
【0035】
図5に示すように、ステップS103において、車両制御部770は、第1駆動部710および第2駆動部730を制御することにより、走行を開始する。車両制御部770は、選択したルートを走行するよう、第1駆動部710および第2駆動部730の駆動を制御する。このとき、車両制御部770は、車両700の走行速度が、速度データ70cにより指定された範囲内となるように、第1駆動部710および第2駆動部730の駆動を制御する。
【0036】
ステップS104において、車両制御部770は作業位置に到着したか否かを判別する。具体的には、車両制御部770は、カメラ750が生成した画像のデータに基づいて、車両700の現在位置を計算する。車両制御部770は、現在位置が、移動データ70dに含まれている作業位置に一致する場合、作業位置に到着したと判別する。ステップS104において、車両制御部770は、作業位置に到着したと判別した場合(ステップS104;YES)、ステップS105の処理を実行する。
【0037】
ステップ105において、作業が開始される。具体的には、まず、車両制御部770は、ロボットコントローラー400に作業位置に到着したことを通知する。ロボットコントローラー400は、車両制御部770から到着した旨の通知を受けると、プログラム40aに基づいた動作を行わせるよう、アーム130を制御する。ロボットコントローラー400は、アーム130の作業が完了すると、そのことを車両制御部770に通知する。
【0038】
ステップS106において、車両制御部770は、作業が完了したか否かを判別する。具体的には、車両制御部770は、ロボットコントローラー400から作業が完了したことの通知を受けると作業が完了したと判別し(ステップS106;NO)、ステップS107の処理を実行する。また、車両制御部770は、ロボットコントローラー400から作業が完了したことの通知を受けるまで、すなわち、作業が完了していない間(ステップS106;NO)、待機する。ステップS107において、車両制御部770は、管理装置900に作業が完了したことを通知する。
【0039】
ステップS108において、車両制御部770は、管理装置900から、移動および作業を終了する指示が通知されると(ステップS108;YES)、例えば、車両制御部770は、あらかじめ設定されている待機位置に移動し、その後、処理が終了される。一方、ステップS108において、管理装置900から、移動および作業を終了する指示が通知されない場合(ステップS108;NO)、再び、ステップS101の処理が実行される。以上が、自律移動ロボット1の移動処理である。
【0040】
図7は、筐体110aの排気処理のフローチャートである。以下、基台110の筐体110a内での結露の発生を抑制するための筐体110aの排気処理を説明する。排出装置600の制御部630は、ロボットコントローラー400から車両700が移動を開始することを通知されると、排気処理を開始する。
【0041】
ステップS301において、排出装置600の制御部630は、車両制御部770が備えるメモリー772に格納されている地図データ70bと、移動データ70dと、位置データ70eと、速度データ70cと、ルートデータ70fとを読み出す。以下の説明において、排出装置600の制御部630が、車両制御部770が備えるメモリー772に格納されているデータを読み出す場合、ロボットコントローラー400を介してデータの授受が行われるものとする。具体的には、排出装置600の制御部630が、ロボットコントローラー400に必要なデータの読み出しを要求する。ロボットコントローラー400は、車両制御部770が備えるメモリー772から要求されたデータを読み出し、読み出したデータを排出装置600の制御部630に供給する。
【0042】
ステップS302において、制御部630は、車両700が常温環境の領域から低温環境の領域に移動するか否かを判別する。実施形態において、制御部630は、車両700が常温環境にいる場合、車両700が常温環境から移動すると判別する。車両700が常温環境にいるか否かは、地図データ70bと位置データ70eが示す車両700の現在位置とに基づいて、判別される。また、制御部630は、移動データ70dに含まれる作業位置と、地図データ70bとに基づいて、作業位置、すなわち、車両700の移動先が、低温環境の領域であるか否かを判別する。常温環境の領域を第1領域ともよぶ。低温環境の領域を第2領域ともよぶ。制御部630は、車両700が常温環境の領域から低温環境の領域に移動すると判別した場合(ステップS302;YES)、ステップS303の処理を実行する。一方、ステップS302において、制御部630は、車両700が常温環境の領域から低温環境の領域へ移動しないと判別した場合(ステップS302;NO)、排気処理が終了される。
【0043】
ステップS303において、制御部630は、排気開始時刻を設定する。具体的には、まず、制御部630は、地図データ70bとルートデータ70fが示す選択されたルートと車両700の現在位置とに基づいて、車両700の現在位置から、低温環境の領域に進入するまでの距離を算出する。ここで、現在位置から低温環境の領域までの距離とは、車両700が、選択されたルートを走行した場合における、現在位置から、低温環境の領域に進入するまでの距離のことである。また、選択したルートに一時停止情報が含まれている場合には、制御部630は、ロボットコントローラー400から供給されたデータから一時停止情報、すなわち、一時停止する位置および一時停止する期間の情報を取得する。次に、制御部630は、算出した現在位置から低温環境の領域までの距離と、速度データ70cが示す走行速度の指定値と、現在位置から低温環境の領域までの一時停止する期間とに基づき、車両700が現在位置から移動を開始してから低温環境の領域に進入するまでに要する到達期間を算出する。すなわち、制御部630が、車両700が移動を開始してから低温環境の領域に進入するまでに要する到達期間を算出する算出ステップを実行する。車両700が現在位置から移動を開始してから低温環境の領域に進入するまでの期間は、自律移動ロボット1が常温環境の領域内にいる期間である。この期間を非冷却期間ともよぶ。
【0044】
その後、制御部630は、メモリー632に格納されているデータが示す筐体110aの容量と、エジェクター部610の単位時間あたりの気体の排出量とに基づいて、筐体110aの内部の空気を排出するのに要する排出期間を算出する。このようにして、筐体110aの内部の空気を排出するように要する排出期間を正確に求めることができるので、効率的に排気を行うことができる。
【0045】
制御部630は、到達期間から排出期間を引いた時間t1を求める。制御部630は、移動開始時刻から時間t1が経過した時刻を、排気開始時刻として設定する。すなわち、制御部630が、到達期間に基づいて排気開始時刻を設定する設定ステップを実行する。なお、技術の理解を容易にするため、実施形態においては、到達期間が排出期間より長いことを前提とする。制御部630は、排気開始時刻をメモリー632に格納する。このように、自律移動ロボット1が常温環境の領域にいる期間と、排気に要する期間とに基づいて、排気開始時刻が求められるので、効率的に排気を行うことができる。
【0046】
ステップS304において、制御部630は、移動データ70dが示す移動開始時刻になると、移動開始時刻からの経過時間を計測し、排気開始時刻になるまで(ステップS304;NO)、待機する。制御部630は、排気開始時刻となると(ステップS304;YES)、ステップS305の処理を実行する。
【0047】
ステップS305において、制御部630は、エジェクター部610を駆動する。よって、エジェクター部610は、筐体110aの内部の空気の排出を開始する。すなわち、制御部630が、排気開始時刻までは排気を行わず、排気開始時刻に筐体110aの排気を開始する開始ステップを実行する。
【0048】
ステップS306において、制御部630は、排気開始時刻からの経過時間を計測し、排出期間が経過するまで(ステップS306;NO)、待機する。制御部630は、排出期間が経過すると(ステップS306;YES)、ステップS307において、エジェクター部610の駆動を停止する。その後、排気処理が終了される。
【0049】
以上説明したように、実施形態にかかる排気方法により、自律移動ロボット1が低温環境の領域に移動する前に、密閉性が確保されるように構成された筐体110a内の空気が排出されることにより、筐体110a内の空気に含まれる水蒸気が排出される。よって、自律移動ロボット1が低温環境の領域に移動したときに、筐体110a内で結露が発生することを抑制できる。これにより、筐体110a内に備えられているロボットコントローラー400の電気回路の腐食、接触不良、短絡等の問題の発生を予防することができる。本明細書において、ロボットコントローラー400の電気回路は、電子回路を含む得るとする。
【0050】
また、実施形態にかかる排気方法では、低温環境の領域に進入するまでに要する到達期間に基づいて設定された排気開始時刻に、排出装置600が排気を開始するので、自律移動ロボット1が低温環境の領域に移動する前に無駄な排気を行うことがない。排気を継続する態様に比べ、排気のためのエネルギーの消費量を抑えることができる。
【0051】
実施形態において、車両700が低温環境の領域に進入するまでにかかる到達期間から、筐体110aの排気にかかる排出期間をひいた時間t1を求め、移動開始時刻から時間t1が経過した時刻を、排気開始時刻として算出した。このように、自律移動ロボット1が、常温範囲内にいる非冷却期間と、排気に要する排出期間とに基づいて、求められた排気開始時刻に、排気が開始される。よって、自律移動ロボット1が、低温環境の領域に進入する直前に排気を完了することができる。
【0052】
前述のように、筐体110aは完全に密閉されていないため、自律移動ロボット1が低温環境の領域に進入する直前まで、筐体110aの排気を行うことが望ましい。自律移動ロボット1が、低温環境の領域に進入する直前に排気を完了することにより、効率的に排気を行うことができる。
【0053】
B1.他の実施形態1
実施形態においては、到達期間が排出期間より長いことを前提とした例を説明した。よって、自律移動ロボット1が、低温環境の領域に進入する前に排気が完了する。しかし、自律移動ロボット1の現在位置と低温環境の領域との距離や一時停止する時間によっては、到達期間より排出期間が長くなる、即ち、自律移動ロボット1が、低温環境の領域に進入する前に、排気が完了しない場合がある。このため、筐体110aの内部に、筐体110aの内部の空気の圧力を測定する圧力センサーを設けてもよい。ロボットコントローラー400のCPU401は、決められた時間ごとに、圧力センサーの測定値をメモリー402に記録する。排出装置600の制御部630は、例えば、移動開始時刻から決められた時間t2が経過したとき、メモリー402の測定値を読み出す。
【0054】
時間t2は、到達期間と同じ時間、あるいは、到達期間より短い時間として設定される必要がある。例えば、時間t2を、到達期間から2分を引いた時間としてもよい。到達期間が10分である場合、時間t2は8分となる。
【0055】
制御部630は、車両700が低温環境に進入する前であってあらかじめ決められたタイミングで、筐体110aの内部の空気の圧力の測定値があらかじめ設定された基準値を上回っているか否かを判別する。制御部630は、筐体110aの内部の空気の圧力の測定値があらかじめ設定された基準値を上回っている場合、車両700を停止する指示をロボットコントローラー400に送信する。すなわち、制御部630が、到達期間に基づいてあらかじめ設定された時において圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値を上回っている場合、車両700の移動を停止する指示を車両700に出力する移動停止ステップを実行する。指示を受信すると、ロボットコントローラー400は、車両制御部770に車両700の走行を停止する指示を通知する。ロボットコントローラー400からの通知を受けると、車両700は停止する。このように、筐体110aの内部の空気の測定値が基準値を上回っている状態で、自律移動ロボット1が低温環境の領域に進入しないように車両700が制御される。
【0056】
その後、制御部630は、筐体110aの内部の空気の圧力の測定値があらかじめ設定された基準値以下となると、排気を停止する。すなわち、制御部630が、圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値以下となった場合、排気を停止する停止ステップを実行する。さらに、制御部630は、車両700の走行が可能であることをロボットコントローラー400に通知する。これに応答して、ロボットコントローラー400は、車両制御部770に車両700の走行を再開する支持を通知する。ロボットコントローラー400からの通知を受けると、車両700は再び走行を開始する。
【0057】
このように、車両700は、筐体110aの内部の空気の圧力の測定値が基準値以下となってから、低温環境の領域に進入する。言い換えると、自律移動ロボット1が低温環境の領域に移動する前に、筐体110aの内部の空気の圧力が基準値以下となるように筐体110aの空気が排出される。充分に排気できていない状態で、自律移動ロボット1が低温環境の領域に進入しないので、筐体110aの内部で結露が発生することを防止することができる。
【0058】
また、圧力センサーの測定値が基準値以下となった場合、制御部630は、排出期間が経過していなくても、排気を停止するようにしてもよい。筐体110aの内部の空気の圧力が基準値以下となると排気を停止するので、無駄な排気を行うことがない。よって、排気のためのエネルギーの消費量を抑えることができる。
【0059】
B2.他の実施形態2
実施形態においては、排気開始時刻を、低温環境の領域に進入するまでに要する到達期間と、筐体110aの容量と、排出装置600の単位時間あたりの気体の排出量とに基づいて算出する例を説明した。しかしながら、排気開始時刻の求め方はこれに限られない。
【0060】
例えば、排出装置600は、移動開始時刻と、算出した到達期間とから、低温環境の領域に進入する到達時刻を算出する。排出装置600は、到達時刻から、あらかじめ決められた固定値V1を引いた時刻を、排出開始時刻として設定してもよい。例えば、到達時刻から10分間を引いた時刻が、排出開始時刻として設定される。
【0061】
この場合、固定値V1を、筐体110aの容量と排出装置600の排出速度とから見積もることができる排出にかかる時間以上の値とすることが望ましい。他の実施形態2にかかる構成においては、到達期間と、筐体110aの容量と単位時間あたりの気体の排出量とに基づいて排出開始時刻を算出する処理が不要となる。
【0062】
B3.他の実施形態3
実施形態においては、排出装置600は、筐体110aの容量と、エジェクター部610の単位時間あたりの気体の排出量とに基づいて、排出期間を算出した(図7のS303を参照)。あるいは、排出装置600は、排気処理において排出期間を算出しなくてもよい。例えば、排出装置600のメモリー632に、あらかじめ算出された排出期間のデータが格納されており、排出装置600は、このデータから排出期間の値を読み出してもよい。
【0063】
また、あるいは、排出期間として一律の値が設定されていてもよい。例えば、排出期間として10分が設定されている。例えば、常温環境の領域がある程度の大きさを有しており、自律移動ロボット1が低温環境の領域に進入するまでにある程度の時間を要する場合には、一律の値を設定しても問題ないと考えられる。この場合、排出装置600は、排出開始時刻になると、排気を開始し、排出期間が経過すると排気を停止する。排出装置600から低温環境の領域までの距離と、設定されている排出期間とによっては、排気が停止する前に、自律移動ロボット1が、低温環境の領域に進入することもある。しかし、自律移動ロボット1が低温環境の領域に進入する前に、筐体110aの排気がある程度行われていると考えられる。さらに、排出期間が経過するまで、排気を継続しながら低温環境の領域を走行することになる。よって、筐体110aの排気を行わない態様に比べ、筐体110a内で結露が発生することを抑制できる。
【0064】
B4.他の実施形態4
実施形態においては、制御部630は、車両700が常温環境の領域から低温環境の領域に移動するかと判別した場合に、筐体110aの排気を行う例を説明した。あるいは、制御部630は、移動先が低温環境の領域であるか否かにかかわらず、車両700が常温環境の領域から移動する場合に、筐体110aの排気を行ってもよい。移動先が常温環境の領域であっても、筐体110aの内部の湿度と周囲温度の低下の度合いとによっては、筐体110aの内部に結露が発生する可能性があるからである。
【0065】
なお、車両700が常温環境の領域から移動する場合にのみ、筐体110aの排気を行うのは以下のような理由による。例えば、車両700が移動する場合、筐体110aの排気を常に行うこともできるが、例えば、車両700の周囲温度が0℃以下である場合、筐体110aの内部の空気に含まれる水分が凍結していると考えられる。このような場合、排気を行ったとしても、筐体110aの内部の空気に含まれる水分を排出することは困難であり、排気に使用される電力が無駄となる。よって、車両700が常温環境の領域から移動する場合にのみ、筐体110aの排気を行うことが望ましい。
【0066】
B5.他の実施形態5
また、断熱のため、筐体110aを、空気層または断熱材を挟んだ二重壁を有するように形成してもよい。これにより、自律移動ロボット1の周囲温度が下がった場合であっても、筐体110a内において結露が発生することを抑制できる。
【0067】
B6.他の実施形態6
また、実施形態にかかる構成に加え、以下のような構成を設けてもよい。筐体110aの内部に冷却器とタンクとを設けて、筐体110aの内部の空気が、冷却器により冷やされ、発生した水滴がタンクに溜まるように構成してもよい。筐体110aの内部の空気に含まれる水蒸気が水滴になったものがタンクに溜まるので、ロボットコントローラー400が備える電気回路の腐食、接触不良、短絡等の問題の発生を予防することができる。
【0068】
また、ロボットコントローラー400の筐体110aの内部に配置されている電気回路が腐食することを防止するため、電気回路が配置されている基板全体を樹脂で覆うこともできる。あるいは、電気回路が配置されている基板の近傍に、吸水スポンジを配置して、電気回路の腐食を防止することもできる。
【0069】
B7.他の実施形態7
また、実施形態においては、筐体110aの容量に基づいて排出期間を算出した。筐体110aは、完全に密閉されていないため、筐体110aに、例えば、通信ケーブルのコネクター部分から外部からの空気が進入することも想定される。よって、実際の筐体110aの容量より大きい容量に基づいて排出期間を算出してもよい。具体的には、排出期間の算出の際に、実際の筐体110aの容量にあらかじめ決められた値を加えた容量を、筐体110aの容量とすることができる。
【0070】
実施形態においては、ロボットコントローラー400が基台110の内部に配置されることにより、ロボットコントローラー400とロボット100とが一体である例を説明した。しかしながら、ロボットコントローラー400は、個別の筐体の内部に配置され、基台110の筐体の内部に配置されなくてよい。このように、ロボットコントローラー400とロボット100とは、別体として構成されてもよい。
【0071】
実施形態においては、自律移動ロボット1の例を説明したが、ロボット100とロボットコントローラー400とを備え、車両を備えず、移動することができないロボット(以下、据え置き型ロボット)においても、実施形態と同様に、ロボットコントローラー400の筐体の排気を行うことができる。例えば、据え置き型ロボットを、低温環境に設置するとする。この場合、据え置き型ロボットは常温環境から低温環境に搬入される。よって、ロボットコントローラー400の筐体110aの内部で結露が発生することが想定される。このため、搬入前に、ロボットコントローラー400の筐体110aに取り付けられた排出装置600により、筐体110aの排気を行うことができる。また、例えば、工場内のレイアウトの変更に伴って、据え置き型ロボットを移動することもある。このような場合も、周囲温度の変化によってロボットコントローラー400の筐体110aの内部で結露が発生することが想定される。このため、移動前に、排出装置600により筐体110aの排気を行うことができる。
【0072】
実施形態では垂直多関節ロボットの例を説明したが、ロボット100は、スカラロボットであってもよい。
【0073】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替え、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0074】
C.他の形態:
(1)本開示の一形態によれば、ロボットアームと、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、を備えるロボットシステムにおいて、前記筐体の排気を行う排気方法が提供される。この排気方法は、前記移動体が第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に移動する場合に、前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を前記排出装置が算出する算出ステップと、前記排出装置が、前記到達期間に基づいて排気開始時刻を設定する設定ステップと、前記排出装置が、前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する開始ステップと、を含む。
上記の形態によれば、ロボットコントローラーの筐体の内部の空気が排出されることにより、筐体の内部の空気に含まれる水蒸気が排出される。よって、移動体が第2領域に移動したときに、ロボットコントローラーの筐体の内部で結露が発生することを抑制できる。これにより、ロボットコントローラーが備える電気回路の腐食、接触不良、短絡等の問題の発生を予防することができる。また、第2領域に進入するまでに要する到達期間に基づいて設定された排気開始時刻に、排出装置が排気を開始するので、ロボットシステムが第2領域に移動する前に無駄な排気を行うことがない。よって、排気のためのエネルギーの消費量を抑えることができる。
【0075】
(2)上記形態において、前記筐体の内部の空気の圧力を測定する圧力センサーが前記筐体の内部に設けられており、前記圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値以下となった場合、前記排出装置が、排気を停止する停止ステップ、がさらに含まれてもよい。
上記の形態によれば、ロボットコントローラーの筐体の内部の空気の圧力が基準値以下となると排気を停止するので、無駄な排気を行うことがない。よって、排気のためのエネルギーの消費量を抑えることができる。
【0076】
(3)上記形態において、前記筐体の内部の空気の圧力を測定する圧力センサーが前記筐体の内部に設けられており、前記到達期間に基づいてあらかじめ設定された時において前記圧力センサーによる測定値があらかじめ設定された基準値を上回っている場合、前記排出装置が、前記移動体の移動を停止する指示を前記移動体に出力する移動停止ステップ、がさらに含まれてもよい。
上記の形態によれば、ロボットコントローラーの筐体の内部の空気の測定値が基準値を上回っている状態で、ロボットシステムが第2領域に進入することがない。よって、充分に排気できていない状態で、ロボットシステムが第2領域に進入しないので、ロボットコントローラーの筐体の内部で結露が発生することを防止することができる。
【0077】
(4)上記形態の排気方法において、前記排気開始時刻は、前記到達期間から、前記ロボットコントローラーの前記筐体の内部の空気を排出するのに要する排出期間を引くことにより求められてもよい。
上記の形態によれば、ロボットシステムが第1領域内にいる非冷却期間と排気に要する期間とに基づいて、排気開始時刻が求められるので、効率的に排気を行うことができる。
【0078】
(5)上記形態の排気方法において、前記排出期間は、前記筐体の容量と、前記排出装置の単位時間あたりの気体の排出量と、に基づいて算出されてもよい。
上記の形態によれば、ロボットコントローラーの筐体の内部の空気を排出するのに要する排出期間を正確に求めることできるので、効率的に排気を行うことができる。
【0079】
(6)本開示の他の形態によれば、ロボットシステムが提供される。このロボットシステムは、ロボットアームと、密閉性が確保されるように構成されている筐体を有し前記ロボットアームを制御するロボットコントローラーと、前記ロボットアームと前記ロボットコントローラーとを支持し、移動することができる移動体と、前記筐体の内部の空気を排出することができる排出装置と、を備える。第1温度である第1領域から、前記第1温度より低い第2温度である第2領域に前記移動体が移動する場合において、前記排出装置が、前記移動体が移動を開始してから前記第2領域に進入するまでに要する到達期間を算出し、前記到達期間に基づいて、排気開始時刻を設定し、前記排気開始時刻までは排気を行わず、前記排気開始時刻に前記筐体の排気を開始する。
上記の形態によれば、ロボットコントローラーの筐体の内部の空気が排出されることにより、筐体の内部の空気に含まれる水蒸気が排出される。よって、移動体が第2領域に移動したときに、ロボットコントローラーの筐体の内部で結露が発生することを抑制できる。これにより、ロボットコントローラーが備える電気回路の腐食、接触不良、短絡等の問題の発生を予防することができる。また、第2領域に進入するまでに要する到達期間に基づいて設定された排気開始時刻に、排出装置が排気を開始するので、ロボットシステムが第2領域に移動する前に無駄な排気を行うことがない。よって、排気のためのエネルギーの消費量を抑えることができる。
【符号の説明】
【0080】
1…自律移動ロボット、40a…プログラム、60a…プログラム、60b…定義データ、70a…プログラム、70b…地図データ、70c…速度データ、70d…移動データ、70e…位置データ、70f…ルートデータ、90a…管理テーブル、100…ロボット、110…基台、110a…筐体、110b…外気吸込口、130…アーム、130a,130b,130c,130d,130e…アーム要素、190…力覚センサー、300…エンドエフェクター、400…ロボットコントローラー、401…CPU、402…メモリー、600…排出装置、610…エジェクター部、611…外気取込口、613…ポンプ、615…吸引口、617…本体、619…排出口、630…制御部、631…CPU、632…メモリー、700…車両、710…第1駆動部、711…サーボモーター、712…エンコーダー、713…減速機、730…第2駆動部、750…カメラ、770…車両制御部、771…CPU、772…メモリー、900…管理装置、901…CPU、902…メモリー、BC…基準座標系、DW…駆動輪、FW1,FW2…従動輪、J1,J2,J3,J4,J5,J6…関節、RC…ロボット座標系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7