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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002147
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ジャイロセンサ及び光ジャイロセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/64 20060101AFI20231228BHJP
   G02B 6/125 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01C19/64 Z
G02B6/125 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101177
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】平原 大地
【テーマコード(参考)】
2F105
2H147
【Fターム(参考)】
2F105AA05
2F105BB02
2F105BB13
2F105DD11
2F105DD13
2F105DE01
2F105DE06
2F105DE21
2H147AA03
2H147AB04
2H147AB05
2H147AB11
2H147BA01
2H147BD03
2H147BE04
2H147BE15
2H147EA13C
2H147EA14A
2H147EA14B
2H147EA35A
2H147EA36A
2H147EA38A
2H147EA39A
(57)【要約】
【課題】本発明は、ジャイロセンサ及び光ジャイロセンサの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るジャイロセンサは、電磁波伝搬経路が持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移とそれに伴う位相変化を、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングに応用し、電磁波伝送経路を変化させることで、伝搬する電磁波のサニャック効果を受ける伝搬経路長や周回数を増減させ、角運動量の検出能力を高め、小型集積化を可能とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波伝搬経路が持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移とそれに伴う位相変化を、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングに応用し、電磁波伝搬経路を変化させることで、伝搬する電磁波のサニャック効果を受ける伝搬経路長や周回数を増減させ、角運動量の検出能力を高め、小型集積化を可能とするジャイロセンサ。
【請求項2】
基板上に離間して設けた第1スラブ導波路および第2スラブ導波路と、
前記第1スラブ導波路の一方の導波面と前記第2スラブ導波路の一方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなる複数の第1導波路を備えた第1導波路アレイと、
前記第1スラブ導波路の他方の導波面と前記第2スラブ導波路の他方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなる複数の第2導波路を備えた第2導波路アレイと、
前記第1スラブ導波路の一部に接続された第1光入出力導波路と、前記第2スラブ導波路の一部に接続された第2光入出力導波路を備えたことを特徴とする光ジャイロセンサ。
【請求項3】
角運動を持つ前記導波路アレイに生じるサニャック効果を、前記スラブ導波路内を前記基板の面方向に沿って2次元に自由伝搬する光信号のビームフォーミングに適用し、前記複数の第1導波路あるいは前記複数の第2導波路から、前記第2スラブ導波路あるいは前記第1スラブ導波路に入力した光信号のビームを前記複数の第1導波路に対向する側のいずれかの任意の前記第2導波路に伝搬させるか、前記複数の第2導波路に対向する側のいずれかの任意の前記第1導波路に伝搬させるかを切り換える機能を有したことを特徴とする請求項2に記載の光ジャイロセンサ。
【請求項4】
前記複数の第1導波路と前記複数の第2導波路は、前記基板上に離間して設けた前記第1導波路アレイおよび前記第2導波路アレイの配置位置の中間に位置する線分に対し、線対称に配置されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光ジャイロセンサ。
【請求項5】
基板上に設けた導波路アレイと、
前記スラブ導波路の一方の導波面と前記スラブ導波路の他方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなるとともに、前記スラブ導波路を介し周回する形状とされた複数の周回導波路を備えた第1導波路アレイと、
前記スラブ導波路の一部に接続された第1光入出力導波路と、前記スラブ導波路の他の一部に接続された第2光入出力導波路を備えたことを特徴とする光ジャイロセンサ。
【請求項6】
角運動を持つ前記導波路アレイに生じるサニャック効果を、前記スラブ導波路内を前記基板の面方向に沿って2次元に自由伝搬する光信号のビームフォーミングに適用し、
前記複数の周回導波路の一方端が前記スラブ導波路の一方の導波面に接続された部分から、前記複数の周回導波路の他方端が前記スラブ導波路の他方の導波面に接続された部分のいずれかに、前記光信号のビームを伝搬させるか、
前記複数の周回導波路の他方端が前記スラブ導波路の他方の導波面に接続された部分から、前記複数の周回導波路の一方端が前記スラブ導波路の一方の導波面に接続された部分のいずれかに、前記光信号のビームを伝搬させるかを切り換える機能を有したことを特徴とする請求項5に記載の光ジャイロセンサ。
【請求項7】
方向性結合器を備えることを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれか一項に記載の光ジャイロセンサ。
【請求項8】
前記導波路の偏波依存性を各導波路の形状並びに材料もしくは複屈折に対し偏波無依存となるように設定したことを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれか一項に記載の光ジャイロセンサ。
【請求項9】
請求項2、3、5、6のいずれか一項に記載の光ジャイロセンサが、耐放射線性に優れた材料からなることを特徴とする光ジャイロセンサ。
【請求項10】
請求項4に記載の光ジャイロセンサが、耐放射線性に優れた材料からなることを特徴とする光ジャイロセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャイロセンサ及び光ジャイロセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転する物体の角速度を検出する角速度検出装置(ジャイロセンサ)として、光平面回路を用いた光ジャイロが知られている。サニャック効果を得るために光導波路を用いることで集積性が高く小型化が可能とされ、リング状に配置された光導波路に双方向から入出力されたレーザ光のドップラー偏移からなる周波数差を用いて角速度を検出することができる。
【0003】
特許文献1には、基板上にリング状の光路を構成する光導波路を形成し、この光導波路に隣接させて光取り出し部を有する検出路を設けた光ジャイロセンサが開示されている。この光ジャイロセンサは、光導波路から光取り出し部に移行した第1レーザ光と第2レーザ光のそれぞれの一部を合波させて発生するビート信号を信号検出部で検出する。特許文献1の構成では、信号検出部がビート信号を検出することで角速度を検出し、光ジャイロセンサとして機能する。
特許文献2には、第1の固体導波路と利得媒体相互作用領域と媒体励起器と光検出器を備えたリングレーザジャイロスコープが開示されている。特許文献2の構成では、媒体励起器から第1の固体導波路内に反時計回り方向に進行する第1のレーザ場と第2のレーザ場を誘導し、第1の固体導波路に通信可能に結合された光検出器を有する。特許文献2の構成では、光検出器が第1および第2のレーザ場の一部を検出し、ジャイロスコープとして機能する。
特許文献3には、信号用のN本の入力導波路に加えて、信号光が分岐して入力される波長監視用のN本の入力導波路を信号用の入力導波路からずれた位置に配置したアレイ導波路回折格子光合分波器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-164504号公報
【特許文献2】特開2016-085215号公報
【特許文献3】特開平09-049937号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D. Hirahara, et al., “Large birefringence in SOI layer and its application to polarization-insensitive AWG,” in IEEE International Conference on Group IV Photonics, July. 2008. DOI: 10.1109/GROUP4.2008.4638216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ジャイロセンサの精度を向上させるためには双方向のレーザ光の間でより多くの角速度による周波数差を生じさせる必要がある。従来から、特許文献1、2の構成に見られるように、リング径を大きくするためにリング状の光導波路、方向性結合器、低損失な交差回路等の基礎回路を用いた多くの方法が提案されているが、いずれの方法も組み合わせの域を出ていない。
【0007】
また、光平面回路では偏波依存性が報告されており、入出力されるレーザ光の全電力を用いるには、偏波回転素子や偏波分離器といった構成も必要となる課題がある。偏波無依存化の手法として回路の形状や材質から複屈折を定義し、設計上で両偏波の動作を一致させる手法が非特許文献1に記載のように提案され、実証されている。
また、その応用先として、従来から偏波依存性が課題とされていた特許文献3に記載のアレイ導波路回折格子が考えられるが、特許文献3に記載の技術は、波長多重通信に関する技術に過ぎない。
【0008】
本発明は、以上説明の事情を考慮してなされたものであり、平面回路で構成されるジャイロを超高集積化し、サニャック効果を大幅に向上させてセンサとしての機能を高めることができるジャイロセンサ及び光ジャイロセンサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)本形態に係るジャイロセンサは、電磁波伝搬経路が持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移とそれに伴う位相変化を、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングに応用し、電磁波伝送経路を変化させることで、伝搬する電磁波のサニャック効果を受ける伝搬経路長や周回数を増減させ、角運動量の検出能力を高め、小型集積化を可能とする。
【0010】
本形態によれば、従来技術で用いられているリング形状の大きな導波路を実装するタイプではなく、サニャック効果を電磁波伝搬経路に作用させることで、電磁波伝搬経路ごとに異なる角速度の慣性力による光信号の位相変化を、電磁波伝搬経路での集束点シフトに応用し、周回を続ける電磁波伝搬経路の変化に適用できる。
従って、このジャイロセンサは、従来構成より各段に小型化が可能となる。また、電磁波伝搬経路を電磁波の繰り返し経路として利用できるので、ジャイロセンサ全体の素子サイズを大幅に小型化できる効果も奏する。
【0011】
(2)本形態に係る光ジャイロセンサは、基板上に離間して設けた第1スラブ導波路および第2スラブ導波路と、前記第1スラブ導波路の一方の導波面と前記第2スラブ導波路の一方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなる複数の第1導波路を備えた第1導波路アレイと、前記第1スラブ導波路の他方の導波面と前記第2スラブ導波路の他方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなる複数の第2導波路を備えた第2導波路アレイと、前記第1スラブ導波路の一部に接続された第1光入出力導波路と、前記第2スラブ導波路の一部に接続された第2光入出力導波路を備えたことを特徴とする。
【0012】
本形態によれば、従来技術で用いられているリング形状の大きな導波路を実装するタイプではなく、サニャック効果を導波路アレイに作用させることで、アレイされた導波路ごとに異なる角速度の慣性力による光信号の位相変化を、スラブ導波路での集光点シフトに応用し、周回を続ける回路伝送経路の変化に適用できる。
従って、光ジャイロセンサは、従来構成より各段に小型化が可能となる。また、導波路アレイを光信号の繰り返し経路として利用できるので、光ジャイロセンサ全体の素子サイズを大幅に小型化できる効果も奏する。
【0013】
(3)本形態に係る光ジャイロセンサにおいて、角運動を持つ前記導波路アレイに生じるサニャック効果を、前記スラブ導波路内を前記基板の面方向に沿って2次元に自由伝搬する光信号のビームフォーミングに適用し、前記複数の第1導波路あるいは前記複数の第2導波路から、前記第2スラブ導波路あるいは前記第1スラブ導波路に入力した光信号のビームを前記複数の第1導波路に対向する側のいずれかの任意の前記第2導波路に伝搬させるかを切り換え、前記複数の第2導波路に対向する側のいずれかの任意の前記第1導波路に伝搬させるかを切り換える機能を有したことが好ましい。
【0014】
(4)本形態に係る光ジャイロセンサにおいて、前記複数の第1導波路と前記複数の第2導波路は、前記基板上に離間して設けた前記第1導波路アレイおよび前記第2導波路アレイの配置位置の中間に位置する線分に対し、線対称に配置されていることが好ましい。
【0015】
(5)本形態に係る光ジャイロセンサは、基板上に設けた導波路アレイと、前記スラブ導波路の一方の導波面と前記スラブ導波路の他方の導波面を接続し、所定の導波路長で順次長くなるとともに、前記スラブ導波路を介し周回する形状とされた複数の周回導波路を備えた第1導波路アレイと、前記スラブ導波路の一部に接続された第1光入出力導波路と、前記スラブ導波路の他の一部に接続された第2光入出力導波路を備えたことが好ましい。
【0016】
(6)本形態に係る光ジャイロセンサにおいて、角運動を持つ前記導波路アレイに生じるサニャック効果を、前記スラブ導波路内を前記基板の面方向に沿って2次元に自由伝搬する光信号のビームフォーミングに適用し、前記複数の周回導波路の一方端が前記スラブ導波路の一方の導波面に接続された部分から、前記複数の周回導波路の他方端が前記スラブ導波路の他方の導波面に接続された部分のいずれかに、前記光信号のビームを伝搬させるか、前記複数の周回導波路の他方端が前記スラブ導波路の他方の導波面に接続された部分から、前記複数の周回導波路の一方端が前記スラブ導波路の一方の導波面に接続された部分のいずれかに、前記光信号のビームを伝搬させるかを切り換える機能を有したことが好ましい。
【0017】
(7)本形態に係る(2)~(6)のいずれかに記載の光ジャイロセンサにおいて、方向性結合器を備えることが好ましい。
(8)本形態に係る(2)~(7)のいずれかに記載の光ジャイロセンサにおいて、前記導波路の偏波依存性を各導波路の形状並びに材料もしくは複屈折に対し偏波無依存となるように設定したことが好ましい。
(9)本形態に係る光ジャイロセンサにおいて、(2)~(5)のいずれかに記載の光ジャイロセンサが、耐放射線性に優れた材料からなることが好ましい。
(10)本形態に係る光ジャイロセンサにおいて、(6)~(8)のいずれかに記載の光ジャイロセンサが、耐放射線性に優れた材料からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、これまで以上に集積化を進めることができ、超小型化が可能なジャイロセンサ及び光ジャイロセンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る光ジャイロセンサの要部を示す構成図である。
図2図2は、第1実施形態に係る光ジャイロセンサにおいてサニャック効果がない場合の光導波経路の一例を示すもので、(A)は第1光入出力導波路から第1スラブ導波路に導入したレーザ光が第1導波路アレイと第2スラブ導波路と第2導波路アレイに至る状態を示す説明図であり、(B)は第2導波路アレイを通過したレーザ光が再度第1スラブ導波路と第1導波路アレイと第2スラブ導波路を通過して第2光入出力導波路から出力される状態を示す説明図である。
図3図3は、第1実施形態に係る光ジャイロセンサにおいてサニャック効果により光導波経路を切り換える場合の一例を示すもので、(A)は第1光入出力導波路から第1スラブ導波路に導入したレーザ光が第1導波路アレイと第2スラブ導波路と第2導波路アレイにサニャック効果を受けつつ至る状態を示す説明図であり、(B)は第2導波路アレイを通過したレーザ光が再度第1スラブ導波路と第1導波路アレイと第2スラブ導波路をサニャック効果を受けつつ通過して第2光入出力導波路から出力される状態を示す説明図である。
図4図4は、第2実施形態に係る光ジャイロセンサの要部を示す構成図である。
図5図5は、スラブ導波路におけるレーザ光集光状態の一例を示す構成図である。
図6図6は、方向性結合器を備えた光ジャイロセンサの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
「第1実施形態」
以下、本発明の第1実施形態を挙げて本発明の詳細について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ジャイロセンサの要部を示す説明図である。
本実施形態の光ジャイロセンサAは、平面視矩形状の基板1と、この基板1上に図1の左右方向に離間して形成された平面視樽型輪郭の第1スラブ導波路2aおよび第2スラブ導波路2bを備えている。第1スラブ導波路2aと第2スラブ導波路2bは、平面視樽型輪郭の平端面2a、2bを左右に向けて図1に示すように横倒しした形状が採用されている。
光ジャイロセンサAは、図1に示すように第1スラブ導波路2aおよび第2スラブ導波路2bの配列方向に沿う中心線となる線分aを挟んで線対称に配置された複数の第1導波路3a~3aと、第2導波路3b~3bを備えている。
複数の第1導波路3a~3aから第1導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)3aが構成され、複数の第2導波路3b~3bから第2導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)3bが構成されている。従って、第1導波路アレイ3aおよび第2導波路アレイ3bの配置位置の中間に位置する線分aに対し、第1導波路アレイ3aと第2導波路アレイ3bは線対称に配置されている。
また、第1スラブ導波路2aの一部にレーザ光などの検知光のための第1光入出力導波路1aが形成され、第2スラブ導波路2bの一部にレーザ光などの検知光のための第2光入出力導波路1bが形成されている。
【0021】
第1スラブ導波路2aおよび第2スラブ導波路2b、第1導波路3a~3a、第2導波路3b~3b、第1光入出力導波路1a、第2光入出力導波路1bは、基本構造として、基板1上に積層された上下のクラッド層の間に光導波路となるコア層を設けて構成されている。
例えば、Si基板上に火炎堆積法によりSiOの下部クラッド層を堆積後、GeOなどのドーパントを添加したSiOガラスのコア層を形成し、電気炉等で透明ガラス化した後、図1に示す各導波路の概形にコア層をパターン化し、その後、SiOの上部クラッド層を堆積することで各導波路を備えた光ジャイロセンサAを作製できる。
図1は説明の簡略化のため、基板1上のコア層の部分のみを示し、クラッド層については記載を略している。
【0022】
なお、本実施形態において用いるコア層やクラッド層、ならびに必要に応じて同時集積される発光受光素子や変調器は、宇宙空間などの放射線が存在する環境下で光ジャイロセンサAを用いることを想定し、耐放射線性に優れた材料から構成されていることが望ましい。
耐放射線性に優れた材料の一例として以下に説明する材料を適用することができる。
コア層の構成材料には、例えば、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)のいずれか1種または2種以上を含むシリカ組成物を用いることができる。また、これらの元素に加え、セリウム(Se)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)のいずれか1種または2種以上を含んでいても良い。
クラッド層は、コア層より屈折率の低い材料であれば、その材料に特に制限はない。クラッド層の構成材料として例えば、シリカ(石英ガラス)を使用することができる。
【0023】
以下、図1に示す平面視矩形状の基板1の横辺1Aと平行な方向を±X方向、縦辺1Bと平行な方向を±Y方向と定義し、適宜、これらの方向を用いて光ジャイロセンサAの詳細構造について説明する。
第1スラブ導波路2aは、平面視樽型であり、+Y方向側と-Y方向側にそれぞれ外側に膨出するような湾曲面(導波面)2a、2aが形成されている。第2スラブ導波路2bは、第1スラブ導波路2aと同一の平面視形状であり、+Y方向側と-Y方向側にそれぞれ外側に膨出するような湾曲面(導波面)2b、2bが形成されている。
【0024】
第1スラブ導波路2aの湾曲面2aと第2スラブ導波路2bの湾曲面2bに接続するように第1導波路3a、3a、3a、3a、3aが設けられている。第1導波路3a、3a、3a、3a、3aは、いずれも、平面視±Y方向に若干細長い楕円の円周の半分程度を型取る形状とされ、それらの一端から他端までほぼ同じ幅に形成されている。また、第1導波路3a、3a、3a、3a、3aは略同心楕円状に等間隔で配置されており、それらの一端が第1スラブ導波路2aの湾曲面2aに接続され、それらの他端が第2スラブ導波路2bの湾曲面2bに接続されている。
【0025】
第1スラブ導波路2aの湾曲面2aと第2スラブ導波路2bの湾曲面2bに接続するように第2導波路3b、3b、3b、3b、3bが設けられている。第2導波路3b、3b、3b、3b、3bは、いずれも、平面視±Y方向に若干細長い楕円の円周の半分程度を型取る形状とされ、それらの一端から他端までほぼ同じ幅に形成されている。また、第2導波路3b、3b、3b、3b、3bは、略同心楕円状にほぼ等間隔で配置されており、それらの一端が第1スラブ導波路2aの湾曲面2aに接続され、それらの他端が第2スラブ導波路2bの湾曲面2bに接続されている。
【0026】
第1導波路3a、3a、3a、3a、3aと第2導波路3b、3b、3b、3b、3bは、線分aを挟んで線対称に配置されている。このため、第1導波路3aと第2導波路3bは、図1に示すように第1スラブ導波路2aと第2スラブ導波路2bを挟んで1つの楕円の円周の大部分を構成するように配置されている。
同様に、第1導波路3aと第2導波路3bは、図1に示すように第1スラブ導波路2aと第2スラブ導波路2bを挟んで1つの楕円の円周の大部分を構成するように配置されている。以下、第1導波路3aと第2導波路3bも同様に、1つの楕円の円周の大部分を構成するように、第1導波路3aと第2導波路3bも同様に、1つの楕円の円周の大部分を構成するように、第1導波路3aと第2導波路3b5も同様に、1つの楕円の円周の大部分を構成するように配置されている。
換言すると、第1スラブ導波路2aおよび第2スラブ導波路2bの一側(+Y方向側)に第1導波路3a~3aが形成され、第1スラブ導波路2aおよび第2スラブ導波路2bの他側(-Y方向側)に第2導波路3b~3bが形成されている。また、第1導波路3a、3a、3a、3a、3aの各線路長はこれらの順に順次長くなるように形成されている。第2導波路3b、3b、3b、3b、3bの各線路長はこれらの順に順次長くなるように形成されている。
なお、第1導波路と第2導波路の本数は複数であれば任意の本数で良く、図1に示す形態は1つの例示に過ぎない。第1導波路と第2導波路の平面視形状は楕円ではなく、円あるいは円に近似する形状であっても良い。あるいは、第1導波路と第2導波路の平面視形状は角の丸い矩形型であっても良い。
【0027】
第1スラブ導波路2aの湾曲面2aにおいて第2導波路3bを接続した部分より、湾曲面2aの-X方向の端部よりの位置に、第1光入出力導波路1aが接続されている。
第2スラブ導波路2bの湾曲面2bにおいて第2導波路3bを接続した部分より、湾曲面2bの+X方向の端部よりの位置に、第2光入出力導波路1bが接続されている。
なお、図1では記載を略したが、第2光入出力導波路1bは図2(A)あるいは図3(A)に示すように信号検出器4に接続され、該信号検出器4には角速度算出回路5が電気的に接続されている。
【0028】
次に、光ジャイロセンサAの動作について説明する。
例えば、第1光入出力導波路1aから入力されたレーザ光は、第1スラブ導波路2aによる平面回路内で2次元の自由伝搬を経て第1導波路アレイ3aの各導波路3a~3aに特定の位相差をもって入力される。第1導波路アレイ3aの各導波路3a~3aを伝搬するレーザ光は、さらに各光導波路長差によって位相差が与えられ、第2スラブ導波路2bへ出力される。
【0029】
「角速度が存在しない場合」
角速度が存在しない場合、第2スラブ導波路2bへの出力時に同位相となるように設計されていれば、レーザ光は図2(A)に示すように第2導波路アレイ3bにおいて、X方向に配列されている中央の導波路3bに集光され、入力される(図2(A)の(2)参照)。
中央の導波路3bを経たレーザ光は、第1スラブ導波路2aに再び入力される(図2(B)の(3)参照)。
第2導波路アレイ3bの中央の導波路3bを経たレーザ光は、第1スラブ導波路2aを経て、再び第1導波路アレイ3aの各光導波路に同相で入力される。第1導波路アレイ3aを経て各光導波路において位相差を持ったレーザ光は、第2スラブ導波路2bに出力される。
第2スラブ導波路2bでは、第1光入出力導波路1aからの入力時と対象的に集光するため、レーザ光は第2光入出力導波路1bに集光され出力される(図2(B)の(4)参照)。
この際、逆方向からのレーザ光とは光ジャイロセンサAにおいて同相となる。角速度が無い場合、第2導波路アレイ3bへの集光位置に関し、導波路アレイの回折次数等で任意に設計できる。
【0030】
導波路アレイの回折次数について以下に説明する。
図5は、樽型モデル形状のスラブ導波路10に対し、スラブ導波路10の左側の湾曲面(導波面)10aに導波路11a、11a、11a、11a、11a、11a、11aを接続し、右側の湾曲面(導波面)10bに導波路11b、11b、11b、11b、11b、11b、11bを接続した構成を示している。
導波路11a~11aは放射状にスラブ導波路10に接続されているので、これらからの出射光は一点に集中する。スラブ導波路10中の導波路の長さは一定量、例えば、ΔLずつ増加するように設計する。
【0031】
各導波路のスラブ導波路10に対する接続部における導波路間隔をd、スラブ導波路10の湾曲面10aの曲率半径(すなわち焦点距離)をf、スラブ導波路10中でのレーザビームの回折角をθ、出力側の導波路11b~11bの出力導波路間隔をΔx、導波路の実効屈折率をn、スラブ導波路10の実効屈折率をnとすると、複数の導波路からのレーザ光が焦点に同位相で到達する条件より、回折角θと波長λと回折次数(整数)mは基本原理として以下の(1)式で表示できる。
×ΔL+n×dsinθ=mλ …(1)式
また、θ<<1の近傍において、回折角θの波長λに対する微係数より、波長と出力位置の関係(線分散)は、以下の(2)式で表示できる。
(dx/dλ)={(f・m)/(n・d)}・(n/n) …(2)式
ただし、n=n-λ(dn/dλ)は導波路の群屈折率を示す。
従ってこれの各式に合致するような各値の条件で図5に示すスラブ導波路10の形状と導波路を設計すると、上述のように角速度が無い場合、第2導波路アレイ3bへの集光位置に関し、任意に設計できる。
【0032】
「角速度が存在する場合」
角速度が存在する場合、図3(A)に示すように第1光入出力導波路1aからレーザ光を第1スラブ導波路2aに入力すると(図3(A)の(5)参照)、第2スラブ導波路2bへの出力時(図3(A)の(6)参照)に、角速度の大きさや方向に従ってサニャック効果による正負の位相差がさらに加わる。このため、レーザ光は第2導波路アレイ3bの中央の第2導波路3bから左右いずれかの第2導波路にシフトされて集光され、入力される。図3(A)の場合、一例として第2導波路3bに入力される状態を示している。
ここでは、先の角速度が存在しない場合に図2(A)の(2)に示したように、第2導波路3bにレーザ光がビームフォーミングされていた状態から変更され、レーザ光が第2導波路3bに入力されるようにビームフォーミングされる状態に変更されたこととなる。
従って、角速度を利用し、レーザ光のビームフォーミング状態を変更し、異なる第2導波路にビームフォーミングした状態に変更したこととなる。
また、レーザ光を電磁波の一種として解釈した場合、電磁波伝搬経路としての導波路アレイ3aが持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移と位相変化により、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングを変更したこととなる。また、各導波路3a~3aを湾曲させて設けることで電磁波の伝搬経路長を長くしてサニャック効果を受ける経路長を確保し、角運動量の検出能力を高めている。
第2導波路アレイ3bの中央でない第2導波路3bを経たレーザ光は、角速度の大きさや方向によって径と線路長の異なる第2導波路3bを経てさらに角速度によって大小異なるサニャック効果を受け、第1スラブ導波路2aに再び入力される(図3(B)の(7)参照)。
【0033】
第2導波路3bを経て第1スラブ導波路2aに入力されるレーザ光は、再び第1導波路アレイ3aの各光導波路に入力される際に位相差をもつ。
第1導波路アレイ3aを経て各光導波路でさらに位相差とサニャック効果を受けたレーザ光は、再度第2のスラブ導波路2bに出力される(図3(B)の(8)参照)。
ここでも、レーザ光を電磁波の一種として解釈した場合、電磁波伝搬経路としての導波路アレイ3aが持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移と位相変化により、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングを変更したこととなる。
第2スラブ導波路2bに再び入力されたレーザ光は、第1光入出力導波路1aからの入力時と対象的な集光とはならずに、第2導波路アレイ3aのいずれかの第2導波路(図3(B)では第2導波路3b)に入力される。
ここでは、先の角速度が存在しない場合に図2(B)の(4)に示したように、第2光入出力導波路1bにレーザ光がビームフォーミングされていた状態から変更され、レーザ光が第2導波路3bに入力されるようにビームフォーミングされる状態に変更されたこととなる。従って、角速度を利用し、レーザ光のビームフォーミング状態を変更し、異なる第2導波路にビームフォーミングした状態に変更したこととなる。
【0034】
これにより角速度の大きさと方向によってレーザ光は、第1導波路アレイ3aと第2導波路アレイ3bを周回し続け、徐々にスラブ導波路における集光点がシフトしていき、いずれ第2スラブ導波路2bにおいて第2光入出力導波路1bに集光され、出力される(図3(B)の第2スラブ導波路2b内に描いた鎖線が示す状態を参照)。第1導波路アレイ3aと第2導波路アレイ3bを周回する回数が増えるほど、サニャック効果による角速度検出能力が高くなる。換言すると、周回する回数の増減に応じた角速度検出能力の調整ができる。
この際、逆方向からのレーザ光と光ジャイロセンサAにおいて異なる位相差となったレーザ光を信号検出器4が検出する(図3参照)。
【0035】
第1光入出力導波路1aから入力したレーザ光の周波数と第2光入出力導波路1bから出力したレーザ光の周波数を角速度算出回路5で比較する。これらレーザ光の間に周波数差が存在する場合には、周波数差に応じ、基板1に作用している角速度を検出することができる。
【0036】
ここで、逆方向のレーザ光の動作としては、角速度がある場合は各部で加わるサニャック効果による位相差正負が逆となるため、導波路アレイへの入力時に集光点が左右逆にシフトし続け、それぞれ第1あるいは第2光入出力導波路1a、1bから取り出された時には周回分のサニャック効果倍増が得られ、角速度検出能力が顕著となる効果がある。
この場合、第1光入出力導波路1aに接続するように、信号検出器4を更に設け、第1あるいは第2光入出力導波路1a、1bの両方からレーザ光検出可能としておくことが好ましい。
【0037】
角速度算出回路5は、第1光入出力導波路1aから入力したレーザ光と第2光入出力導波路1bから出力したレーザ光を比較し、それらの周波数に差異がある場合は、周波数差の情報から、角速度を検出できる。
なお、上述のように周回分のサニャック効果倍増効果を受けることは、レーザ光を電磁波の一種として解釈した場合、電磁波の伝送経路長や周回数を増加したこととなり、電磁波の角速度検出能力を高め、光ジャイロセンサとしての小型集積化を推進できることになる。
【0038】
本実施形態に係る光ジャイロセンサAは、宇宙機(例えば、ロケット、人工衛星、宇宙船)に搭載することができる。そして、宇宙機が航行している場合に、宇宙機に作用する角速度を測定することができる。
宇宙機は、長期間放射線に晒される環境で航行するため、本形態の光ジャイロセンサAに設けられる各導波路のコア層を構成する材料は、上述した如く耐放射線性に優れた材料を選択することが望ましい。
上述の構成の光ジャイロセンサAは、特許文献1、2等に記載されているリング形状の大きな導波路を実装するタイプではなく、サニャック効果を導波路アレイ3a、3bにおいて作用させ、慣性力による光信号の位相変化をスラブ導波路2a、2bにおける集光点シフトに応用することで回路伝送経路の変化にも拡張している。従って、光ジャイロセンサAは、特許文献1、2に記載された構成より各段に小型化が可能となる。また、導波路アレイ3a、3bを光信号の繰り返し経路として利用できるので、サニャック効果を増大させ、検出感度を高めることができるとともに、光ジャイロセンサAの全体の素子サイズを大幅に小型化できる効果も得ることができる。
【0039】
なお、光ジャイロセンサAでは、基板1の面方向に沿う2次元方向の角速度のみ計測できる。従って、宇宙機が航行する場合に3次元的に作用する角速度を測定するためには、光ジャイロセンサAを3組用意し、3組の光ジャイロセンサAの基板をそれぞれ、X方向とY方向とZ方向(X方向とY方向とZ方向は互いに90゜異なる向きとする)に向けて配置し、3組の光ジャイロセンサAの加速度を把握すると、3次元方向の加速度を計測できるようになる。
【0040】
また、平面光回路で問題となる偏波依存性の解消方法として、非特許文献1にあるように、偏波ごとに異なる等価屈折率ならびに群屈折率を、推定もしくは仮定される材料複屈折からなる理論で表現することで偏波ごとの回路設計が可能となる。
これらを応用することで、偏波ごとに異なる材料屈折率と回折次数を用いた偏波ごとの設定結果が、回路上の波長と出力位置の関係(線分散)で一致するように構造複屈折の調整で最適化することができる。
偏波無依存回路となることで、偏波回転回路や偏波分離合成回路などを省略することができさらなる小型化や光損失の低減が可能となる。
【0041】
「第2実施形態」
図4は、本発明に係る光ジャイロセンサの第2実施形態の構成を示す説明図である。
本第2実施形態の光ジャイロセンサBは、平面視矩形状の基板1と、この基板1上に形成された平面視樽型の1つのスラブ導波路2aを備えている。
このスラブ導波路2aの形状と基板1に対し形成されている位置は、先に説明した第1スラブ導波路2aと同じである。本第2実施形態の光ジャイロセンサBでは、第2スラブ導波路2bが略され、代わりに、スラブ導波路2aの+Y方向側の湾曲面(導波面)2aと-Y方向側の湾曲面(導波面)2aを接続し、スラブ導波路2aを介してスラブ導波路2aの周囲を周回する平面視逆C字型の周回導波路15a~15aが、略同心円状に設けられている。周回導波路15a~15aから、導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)15aが形成されている。
【0042】
周回導波路15aは、図4に示すようにスラブ導波路2aを挟んで1つの楕円あるいは円の円周の大部分を構成するように配置されている。
同様に、周回導波路15aは、図4に示すようにスラブ導波路2aを挟んで1つの楕円または円の円周の大部分を構成するように配置されている。以下、周回導波路15a、周回導波路15a、周回導波路15b5も同様に、それぞれ1つの楕円または円の円周の大部分を構成するように配置されている。
なお、周回導波路の本数は複数であれば任意の本数で良く、図4に示す形態は1つの例示に過ぎない。周回導波路の平面視形状は、円あるいは円に近似する形状を採用できるが平面視角を丸くした矩形状に近い形状の周回導波路であっても良い。
【0043】
また、スラブ導波路2aの湾曲面2aにおいて-X方向の端部側であって、周回導波路15aとの接続部から離間した位置に、レーザ光などの検知光のための第1光入出力導波路1aが形成されている。更に、スラブ導波路2aの湾曲面2aにおいて-X方向の端部側であって、周回導波路15aとの接続部から離間した位置に、レーザ光などの検知光のための第2光入出力導波路1bが形成されている。
【0044】
第2実施形態の光ジャイロセンサBであっても、第1実施形態の光ジャイロセンサAと同じように、第1光入出力導波路1aからレーザ光をスラブ導波路2aに導入し、周回導波路15a~15aに入力して再度、周回導波路15a~15aからスラブ導波路2aに導入し、このスラブ導波路2aに導入したレーザ光を再度スラブ導波路2aに導入するという操作を繰り返すことができる。
角速度が存在する場合、スラブ導波路2aに出力する際に、角速度の大きさや方向に沿ってサニャック効果による正負の位相差が加わり、レーザ光はスラブ導波路2aに繋がる周回導波路15a~15aの中央の周回導波路15aから左右のいずれかの周回導波路にシフトして集光され、入力される。
この左右いずれかにシフトして入力されたレーザ光は、更にスラブ導波路2aを通過する際にサニャック効果を受けて位相差が付加されるので、周回導波路15a~15aのいずれかを周回する間にいずれ第2光入出力導波路1bから出力される。
【0045】
第2光入出力導波路1bからのレーザ光を信号検出器4が検出し、入射したレーザ光と信号検出器4が検出したレーザ光を対比することで角速度算出回路5が角速度を算出できる。このため、光ジャイロセンサBは、先の第1実施形態の光ジャイロセンサAと同様にジャイロセンサとして利用できる。
【0046】
図6は、図1に示す構成の光ジャイロセンサAに方向性結合器を備えた第3実施形態の構成を示す。
第1光入出力導波路1aは第1延長導波路20に接続され、第2光入出力導波路1bは第2延長導波路21に接続され、第1延長導波路20の一端側の直線状部分と第2光入出力導波路1bの一端側の直線状部分が距離W離間した平行部分に信号検出領域22が策定されている。信号検出領域22において第1延長導波路20の直線状部分と第2延長導波路21の直線状部分が近接配置された部分により方向性結合器23が構成されている。
信号検出領域22において、第1延長導波路20と第2延長導波路21に周波数差を有するレーザ光が導波されると、周波数差に応じたビート信号が発生し、このビート信号を光強度として信号検出器4で検出できる。従って、角速度算出回路5はビート信号の光強度を用いて角速度を算出できる。
なお、図6に示す方向性結合器23を用いた信号検出手段と方向性結合器23の構成は一つの例であって、図6に示す構成に限らず、一般的に光回路において用いられている他の構成の方向性結合器や信号検出手段を採用しても良いのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る光ジャイロセンサは、宇宙機(例えば、ロケット、人工衛星、宇宙船)に搭載し、宇宙機の角速度を測定することができる。
【0048】
本発明に係る光ジャイロセンサは、宇宙機(例えば、ロケット、人工衛星、宇宙船)に搭載し、宇宙機の角速度を測定することができる。
【0049】
以上説明した本発明に係る実施形態は、サニャック効果による周波数遷移とそれに伴う位相変化をビームフォーミングに応用したジャイロセンサの一形態にすぎず、本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、周回する光路をプリズム配置やミラー配置によって形成し、サニャック効果による周波数偏移と位相変化を、プリズムの屈折角やミラーの反射角の変化に応用しても良い。以上の構成により光の伝搬方向をシフトさせながら各プリズムやミラーによる入射角の変化に対応させ、入出射までの光路長を角運動量に対応して周回させることで、サニャック効果を向上させる構成を採用し、光ジャイロセンサを小型化しても良い。
【0050】
また、上述の周回する光路は電磁波伝搬経路とみなすことができ、この場合、光以外の電磁波の伝搬経路とみなすことができる。
この場合のジャイロセンサは、電磁波伝搬経路が持つ角運動量によってサニャック効果で生じる周波数遷移とそれに伴う位相変化を、電磁波の位相面に伴うビームフォーミングに応用し、電磁波伝搬経路を変化させる。これにより、伝搬する電磁波のサニャック効果を受ける伝搬経路長や周回数を増減させ、角運動量の検出能力を高め、小型集積化を可能とするジャイロセンサであると説明できる。
前述のプリズムやミラーは、電磁波を反射する電磁波反射体に変更し、電磁波の周波数遷移と位相変化を電磁波のビームフォーミングに適用し、電磁波伝搬経路を変化させ、伝搬経路長を変化させることができる。
以上の構成を採用することにより、実施形態において説明した光ジャイロセンサに代えて同等の特徴を有するジャイロセンサを提供できる。
【符号の説明】
【0051】
A、B…光ジャイロセンサ、1…基板、1a…第1光入出力導波路、1b…第2光入出力導波路、2a…第1スラブ導波路、2a、2a…湾曲面(導波面)、2b…第2スラブ導波路、2b、2b…湾曲面(導波面)、3a…第1導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)、3b…第2導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)、3a~3a…第1導波路、3b~3b…第2導波路、4…信号検出器、5…角速度算出回路、15a…導波路アレイ(アレイ導波路回折格子)、15a~15a…周回導波路、23…方向性結合器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6