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特開2024-21472フレキシブル回路基板、電動機、及びフレキシブル回路基板の製造方法
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  • 特開-フレキシブル回路基板、電動機、及びフレキシブル回路基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021472
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】フレキシブル回路基板、電動機、及びフレキシブル回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/26 20060101AFI20240208BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H02K3/26 E
H05K1/03 670
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124307
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末次 大貴
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CB23
5H603CC02
5H603CC18
5H603CC19
5H603CD02
5H603CD25
5H603CE06
(57)【要約】
【課題】電動機の軽量化と製造工程の簡素化を可能にするフレキシブル回路基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル回路基板1は、絶縁シート10の第1面2に、交互に並列に形成された複数の第1配線U1及び第3配線U3と、絶縁シート10の第2面3に、交互に並列に形成された複数の第2配線U2及び第4配線U4と、隣接する第1配線U1と第2配線U2の端部を、絶縁シート10を介して接続した第1連続配線Us1と、隣接する第3配線U3と第4配線U4の端部を、絶縁シート10を介して接続した第2連続配線Us2と、第1連続配線Us1と第2連続配線Us2の端部を接続する反転部Utと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、
前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、
隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、
前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、
前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、
を備えるフレキシブル回路基板。
【請求項2】
前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が電磁コイルを形成する
請求項1に記載のフレキシブル回路基板。
【請求項3】
前記配線接続部は、前記絶縁シートを貫通するビアホールにより、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端子、及び隣接する前記第3配線と前記第4配線の端子を接続する
請求項1又は請求項2に記載のフレキシブル回路基板。
【請求項4】
前記外部端子、及び前記反転接続部は、前記絶縁シートの同一の長辺側に配置されている
請求項1又は請求項2に記載のフレキシブル回路基板。
【請求項5】
電磁コイル配線が形成されたフレキシブル回路基板を円筒状に曲げて構成されたステータと、前記ステータの外周又は内周に配置されたローターと、有する電動機であって、
前記フレキシブル回路基板は、
柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、
前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、
隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、
前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、
前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、
を複数相分備え、
前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が、前記ステータのスロットの電磁コイルを形成する
電動機。
【請求項6】
柔軟性を有する絶縁シートの第1面に、所定方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線を形成する工程と、
前記絶縁シートの第2面に、前記所定方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線を形成する工程と、
隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する工程と、
前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子を形成する工程と、
前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部を形成する工程と、
を含むフレキシブル回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路基板、電動機、及びフレキシブル回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モーターのステータをフレキシブル回路基板により構成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、ステータコアが挿入される複数の孔が設けられた帯状の絶縁フィルムに各孔の周囲にコイルを形成した複数のシートコイルを、巻き型に重ねて巻き付け、各シートコイル間の対応するコイルを導通させてステータを構成する製法が開示されている。
また、絶縁シートに等間隔に折り曲げ部を設定し、折り曲げ部13によって区画された各単位片上に半円弧状の導電パターンを互い違いに形成して、巻き数に応じて折り曲げ部で切り離して使用できるようにした構成が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、シリコン基板上に絶縁層、第1ヘリカルコイル部、第2ヘリカルコイル部及び閉磁路を薄膜形成技術で形成した全体として直方体状の外形を有し、第1及び第2ヘリカルコイル部を、らせん軸がシリコン基板の基板面に対してほぼ平行になるように形成したチョークコイルが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、フレキシブル基板の片面に平行動体線群を形成して、各平行導体線群の両端に金属導体突起列群を露出させた基板2枚を、逆向きに重ね合わせて、相対する金属導体突起列群を接合した後に、円筒状に巻いた電機子を用いたコアレスモーターが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-067756号公報
【特許文献2】特開2004―014940号公報
【特許文献3】特開2007-103686号公報
【特許文献4】特開昭55-127852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機は小型・軽量であることが要求されるが、電動機の主要部品であるステータは、一般的には高密度にコイルが巻回される構成となっており、このようなスタータの構成が電動機の重量を増加させる要因となっている。そこで、比較的軽量なフレキシブル回路基板にコイルパターンを形成して、ステータを構成することにより、電動機の軽量化を図ることが有効である。
しなしながら、従来のフレキシブル回路基板によるステータの構成では、フレキシブル回路基板に形成された各コイルを導通させる工程や、コイルパターンが形成された複数のフレキシブル回路基板を重ね合わせる工程等が必要であるため、製造工程が複雑になると共にステータの構造が複雑になるという不都合がある。
本出願はかかる背景に鑑みてなされたものであり、電動機の軽量化と製造工程の簡素化を可能にするフレキシブル回路基板とその製造方法、及びそのフレキシブル回路基板により構成された電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、を備えるフレキシブル回路基板が挙げられる。
【0006】
上記フレキシブル回路基板において、前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が電磁コイルを形成する構成としてもよい。
【0007】
上記フレキシブル回路基板において、前記配線接続部は、前記絶縁シートを貫通するビアホールにより、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端子、及び隣接する前記第3配線と前記第4配線の端子を接続する構成としてもよい。
【0008】
上記フレキシブル回路基板において、前記外部端子、及び前記反転接続部は、前記絶縁シートの同一の長辺側に配置されている構成としてもよい。
【0009】
上記目的を達成するための第2態様として、電磁コイル配線が形成されたフレキシブル回路基板を円筒状に曲げて構成されたステータと、前記ステータの外周又は内周に配置されたローターと、有する電動機であって、前記フレキシブル回路基板は、柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、を複数相分備え、前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が、前記ステータのスロットの電磁コイルを形成する電動機が挙げられる。
【0010】
上記目的を達成するための第3態様として、柔軟性を有する絶縁シートの第1面に、所定方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線を形成する工程と、前記絶縁シートの第2面に、前記所定方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線を形成する工程と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する工程と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子を形成する工程と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部を形成する工程と、を含むフレキシブル回路基板の製造方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
上記フレキシブル回路基板によれば、電動機の軽量化と製造工程の簡素化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、電動機のステータを構成するフレキシブル回路基板の構成を示す説明図である。
図2図2は、フレキシブル回路基板によるステータを備えた電動機の説明図である。
図3図3は、電磁コイルを形成する配線を二重にしたフレキシブル回路基板の構成を示す説明図である。
図4】フレキシブル回路基板の製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.フレキシブル回路基板の構成]
図1図2を参照して、本実施形態のフレキシブル回路基板1の構成について説明する。フレキシブル回路基板1は、図2に示した3相のブラシレスモーター50(本開示の電動機に相当する)のステータ70の構成要素として用いられる。図1に示したように、フレキシブル回路基板1は、U,V,Wの3相分のスロットを構成する電磁コイルの配線を、柔軟性を有する絶縁シート10の両面(第1面2、第2面3)に形成して構成されている。
【0014】
図2に示したように、永久磁石61が貼付け或いは埋め込まれたローター60の外周に、フレキシブル回路基板1を円筒状に曲げて配置したステータ70を用いることにより、一般的なステータのように導線を巻回してコイルを形成する構成に対して、ステータの軽量化を図ることができる。なお、ステータ70をローター60の内周側に配置する構成としてもよい。
【0015】
また、フレキシブル回路基板1によれば、ステータ70のスロットSの配置密度を高めることが容易であり、スロットSの配置密度を高めることにより、各スロットSの電磁コイルに発生する磁力の磁路を短くして、ステータ70の金属部分51を薄くすることができる。これにより、ブラシレスモーター50の体積あたりの重力を減少させることができる。
【0016】
図1を参照して、絶縁シート10の第1面2には、U相の電磁コイルを構成するための複数の第1配線U1(U1a,U1b,U1c,U1d)が、絶縁シート10の長手方向であるX方向に並列に連続して形成されている。また、絶縁シート10の第2面3には、U相の電磁コイルを構成するための複数の第2配線U2(U2a,U2b,U2c,U2d)が、絶縁シート10のX方向に並列に形成されている。
【0017】
隣接する第1配線U1と第2配線U2の端部は、ビアホールhにより、絶縁シート10を介して導通している。これにより、第1配線U1a→第2配線U2a→第1配線U1b→第2配線U2b→第1配線U1c→第2配線U2c→第1配線U1d→第2配線U2dの順に、絶縁シート10を介して、第1配線U1と第2配線U2が交互に接続された第1連続配線Us1が形成されている。
【0018】
さらに、絶縁シート10の第1面2には、U相の電磁コイルを構成するための複数の第3配線U3(U3a,U3b,U3c,U3d)が、絶縁シート10のX方向に並列に連続して形成されている。また、絶縁シート10の第2面3には、U相の電磁コイルを構成するための複数の第4配線U4(U4a,U4b,U4c,U4d)が、絶縁シート10のX方向に並列に連続して形成されている。
【0019】
隣接する第3配線U3と第4配線U4の端部は、ビアホールhにより、絶縁シート10を介して導通している。これにより、第3配線U3a→第4配線U4a→第3配線U3b→第4配線U4b→第3配線U3c→第4配線U4c→第3配線U3d→第4配線U4dの順に、絶縁シート10を介して、第3配線U3と第4配線4が交互に接続された第2連続配線Us2が形成されている。
【0020】
第1連続配線Us1の一端(図1では左側の端部、本開示の第1連続配線第1端部に相当する)は、U相の外部端子Ucに接続されている。第1連続配線Us1の他端(図1では右側の端部、本開示の第1連続配線第2端部に相当する)は、第2連続配線Us2の一端(図1では右側の端部、本開示の第2連続配線第2端部に相当する)と、反転部Utにより接続されて導通している。第2連続配線の他端(図1では左側の端部)は、共通接続部Ccに接続されている。このように接続されることにより、外部端子Uc→第1連続配線Us1→反転部Ut→第2連続配線Us2→共通接続部Ccと導通する回路が形成されている。
【0021】
同様に、V相について、複数の第1配線V1(V1a,V1b,V1c,V1d)と第2配線V2(V2a,V2b,V2c,V2d)が、絶縁シート10を介して交互に接続された第1連続配線Vs1が形成されている。また、複数の第3配線V3(V3a,V3b,V3c,V3d)と第4配線V4(V4a,V4b,V4c,V4d)が、絶縁シート10を介して交互に接続された第2連続配線Vs2が形成されている。そして、外部端子Vc→第1連続配線Vs1→反転部Vt→第2連続配線Vs2→共通接続部Ccと導通する回路が形成されている。
【0022】
同様に、W相について、複数の第1配線W1(W1a,W1b,W1c,W1d)と第2配線W2(W2a,W2b,W2c,W2d)が、絶縁シート10を介して交互に接続された第1連続配線Ws1が形成されている。また、複数の第3配線W3(W3a,W3b,W3c,W3d)と第4配線(V4a,V4b,V4c,V4d)が、絶縁シート10を介して交互に接続された第2連続配線Ws2が形成されている。そして、外部端子Wc→第1連続配線Ws1→反転部Wt→第2連続配線W2s→共通接続部Ccと導通する回路が形成されている。
【0023】
このように、フレキシブル回路基板1には、U,V,Wの3相分の複数のスロットの電磁コイルを構成する鎖状に交差した回路が形成され、外部端子Uc,Vc,Wcにモーター駆動回路から駆動電力を供給することによって、各スロットに生じる磁力によって回転磁界を発生させることができる。
【0024】
この場合、一般的なブラシレスモーターのステータのように、導線を巻回した電磁コイルにより各スロットを形成する工程やコイル間を導通させる接続工程が不要となるので、ステータの製造工程を簡素化することができる。また、各スロットの電磁コイル間を接続する工程の不良等により、ブラシレスモーターの不良が生じることを回避して、ブラシレスモーターの製造品質を向上させることができる。なお、図1では、第1配線U1、V1,W1と、第2配線U2,V2,W2を、4本ずつ形成した例を示したが、第1配線U1、V1,W1と、第2配線U2,V2,W2の数を増減することにより、ステータのスロット数を任意に設定することができる。
【0025】
[2.配線を二重にした構成]
次に、図3を参照して、U相に対応した第1連続配線Us1と第2連続配線Us2を二重にした構成例について説明する。図3では、説明の便宜のため、U相の配線についてのみ示しているが、V相、W相の配線も同様となる。
【0026】
図3の例では、2つの第1連続配線Us1(Us11,Us12)と、2つの第2連続配線Us2(Us21,Us22)が形成されている。1つめの第1連続配線Us11は、絶縁シート10の第1面2に形成された複数の第1配線U11(U11a,U11b,U11c,U11d)と、絶縁シートの第2面3形成された複数の第2配線U21(U21a,U21b,U21c,U21d)を、ビアホールhを介して交互に接続することによって形成されている。
【0027】
また、1つめの第2連続配線Us21は、絶縁シート10の第2面3に形成された複数の第3配線U31(U31a,U31b,U31c,U31d)と、絶縁シート10の第1面2に形成された複数の第4配線U41(U41a,U41b,U41c,U41d)を、ビアホールhにより絶縁シート10を介して交互に接続することによって形成されている。
【0028】
2つめの第1連続配線Us12は、絶縁シート10の第1面2に形成された複数の第1配線U12(U12a,U12b,U12c,U12d)と、絶縁シート10の第2面3に形成された複数の第2配線U22(U22a,U22b,U22c,U22d)を、ビアホールhにより絶縁シート10を介して、交互に接続することによって形成されている。
【0029】
また、2つめの第2連続配線Us22は、絶縁シート10の第2面3に形成された複数の第3配線U32(U32a,U32b,U32c,U32d)と、絶縁シート10の第1面2に形成された第4配線U42(U42a,U42b,U42c,U42d)を、ビアホールhにより絶縁シート10を介して、交互に接続することによって形成されている。
【0030】
第1連続配線Us11の一端(図3では左側の端部)は、外部端子Ucに接続され、第1連続配線Us11の他端(図3では右側の端部)と第2連続配線Us21の一端(図3では右側の端部)が反転部Ut1で接続されている。また、第1連続配線Us12の一端(図3では左側の端部)は、第2連続配線Us21の他端(図3では左側の端部)と、中継部Urと接続されている。さらに、第1連続配線Us12の他端(図3では右側の端部)と、第2連続配線Us22の一端(図3では右側の端部)が、反転部Ut2により接続されて導通している。また、第2連続配線Us22の他端(図3では左側の端部)が、共通接続部Ccに接続されている。
【0031】
これにより、外部端子Uc→第1連続配線Us11→反転部Ut1→第2連続配線Us21→中継部Ur→第1連続配線Us12→反転部Ut2→第2連続配線Us22→共通接続部Ccと導通する回路が形成される。そして、図3のLで示したように、第1連続配線Us11と第2連続配線Us21による交差部と、第1連続配線Us12と第2連続配線Us22による交差部との二重の配線による電磁コイルが形成される。
【0032】
このように、二重の配線とすることにより、フレキシブル回路基板1によりステータを構成したときに、スロットの電磁コイルに生じる磁力を高めることができる。なお、配線を3重以上にしてもよい。
【0033】
[3.フレキシブル回路基板の製造]
図4を参照して、フレキシブル回路基板1の製造工程について説明する。製造工程には、(1)CCL(Cupper Clad Lamination、銅箔)作製、(2)ビアホールあけ、(3)ビアめっき、(4)ドライフィルム貼付、(5)露光、(6)現像、(7)エッチング、(8)ドライフィルム除去、(9)CL(Cover Lay)貼付合せ&キュア、(10)表面処理、(11)外形抜き、(12)検査、の各工程が含まれる。
【0034】
(1)CCL作製…絶縁シート10の両面(図1,3の第1面2、第2面3に相当)に、接着剤11a,11bにより銅箔12a、12bを貼り付ける。
(2)ビアホールあけ…銅箔12aと銅箔12bを、絶縁シート10を介して導通させるためのビアホール13a,13bをあける。
【0035】
(3)ビアめっき…ビアホール13a,13bと銅箔12a,12bにめっきを施して、絶縁シート10の両面の銅箔12a,12bを導通させる。
(4)ドライフィルム貼付…第1面2側及び第2面3側に、感光性樹脂をフィルム状に加工したドライフィルム15a,15bを貼り付ける。
【0036】
(5)露光…ドライフィルム15a,15bに、回路パターンが描かれたネガフィルム16a,16bを載せて紫外線(UV)を照射し、回路部分を硬化させる。17a~17fが回路部分以外の箇所である。図1の例では、第1面2側のネガフィルム16bに、第1配線U1,V1,W1と第4配線U4,V4,W4が描かれ、第2面3側のネガフィルム16aに、第2配線U2,V2,W2と第3配線U3,V3,W3が描かれる。
【0037】
(6)現像…回路パターン以外の部分に対応する、ドライフィルム15a,15bの硬化部分を溶解して除去する。
(7)エッチング…反応性ガス或いはプラズマ等によるドライエッチングにより、銅箔12a,12b及びめっき14a,14b,14cのドライフィルム15a,15bが除去された部分19a~19fのみを除去する。
【0038】
(8)ドライフィルム除去…ドライフィルム15a,15bを、薬液によって除去する。
(9)CL貼合せ&キュア…絶縁層を形成するために第1面2及び第2面3側からカバーレイ21a~21dを圧着して貼合せる。
(10)表面処理…銅箔12a,12bの露出部に、金めっき処理を行う(防錆)。
【0039】
(11)外形抜き…シートからの外形抜きにより、図1に示したフレキシブル回路基板1が完成する。
(12)検査…フレキシブル回路基板1について、導通、断線、短絡等の検査を行う。この場合、フレキシブル回路基板1をブラシレスモーター50に組み込む前に、フレキシブル回路基板1単体での検査を行うことができる。そのため、導線を巻回した電磁コイルを組み込んでステータを組み立てる一般的なブラシレスモーターのように、ブラシレスモーターを組み立てた後の検査で、ステータの配線不良等が見つかって、ステータの交換や修理が必要となることを回避することができる。
【0040】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、本開示のフレキシブル回路基板1を、ブラシレスモーター50のステータの構成要素として用いる例を示したが、電磁コイルによりステータを構成する他の種類の電動機についても、フレキシブル回路基板1を用いてステータを構成することができる。
【0041】
また、電動機のステータ以外の用途に、本開示のフレキシブル回路基板を適用することも可能である。例えば、電磁コイルではなく、チョークコイル等のノイズ除去用途に、本開示のフレキシブル回路基板を用いてもよい。また、図1に示した反転部Ut,Vt,Wtのように、配線の通電方向を反転させる反転部を形成することにより、回路基板における通電方向を規定する用途に、フレキシブル回路基板1を適用することも可能である。
【0042】
上記実施形態では、図4に示したように、フレキシブル回路基板1を、ドライエッチングにより製造する例を説明したが、ウェットエッチングにより製造してもよい。また、エッチングによるサブトラクティブ法ではなく、配線部分にのみ銅を無電解めっきで析出させるアディティブ法等の他の製造方法を用いて、フレキシブル回路基板1を製造してもよい。
【0043】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0044】
(構成1)柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、を備えるフレキシブル回路基板。
構成1のフレキシブル回路基板によれば、絶縁シートに形成される第1配線、第2配線、第3配線、及び第4配線の接続が、配線接続部によって完了している。また、第1連続配線と前記第2連続配線の通電方向を反転させる反転接続部、第1連続配線に通電するための外部端子も形成済みである。そのため、追加の接続を行う工程を不要として、製造工程を簡素化することができる共に、絶縁シートに配線を形成することによる高密度化によって回路基板が軽量化される。よって、構成1のフレキシブル回路基板を用いて電動機を構成することにより、電動機の軽量化と製造工程の簡素化が可能となる。
【0045】
(構成2)前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が電磁コイルを形成する構成1に記載のフレキシブル回路基板。
構成2のフレキシブル回路基板によれば、交差部の第1連蔵配線及び第2連続配線への通電により生じる磁界により、磁力を高めたステータとしてフレキシブル回路基板を機能させることができる。
【0046】
(構成3)前記配線接続部は、前記絶縁シートを貫通するビアホールにより、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端子、及び隣接する前記第3配線と前記第4配線の端子を接続する構成1又は構成2に記載のフレキシブル回路基板。
構成3のフレキシブル回路基板によれば、ビアホールによる接続を行うことにより、第1配線と第2配線の端子間、及び第3配線と第4配線の端子間の接続を別途行うことを不要として、フレキシブル回路基板の製造を簡素化することができる。
【0047】
(構成4)前記外部端子、及び前記反転接続部は、前記絶縁シートの同一の長辺側に配置されている構成1から構成3のうちいずれか一つの構成に記載のフレキシブル回路基板。
構成4のフレキシブル回路基板によれば、外部端子と反転接続部の配置効率を高めて、フレキシブル回路基板のサイズを減少させることができる。
【0048】
(構成5)電磁コイル配線が形成されたフレキシブル回路基板を円筒状に曲げて構成されたステータと、前記ステータの外周又は内周に配置されたローターと、有する電動機であって、前記フレキシブル回路基板は、柔軟性を有する帯状の絶縁シートの第1面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線と、前記絶縁シートの第2面に、前記絶縁シートの長手方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する配線接続部と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部と、を複数相分備え、前記第1連続配線と前記第2連続配線は、前記絶縁シートを介して鎖状に交差した形状を有し、前記第1連続配線と前記第2連続配線との交差部が、前記ステータのスロットの電磁コイルを形成する電動機。
構成5の電動機によれば、フレキシブル回路基板にステータの回路配線が形成されているため、導線を巻回したコイルを組み込んでステータを構成する工程、及び組み込まれたステータの検査を行うことを不要として、電動機の製造工程を簡素化することができる。また、フレキシブル回路基板を用いてステータを構成することによって、電動機を軽量化することができる。
【0049】
(構成6)柔軟性を有する絶縁シートの第1面に、所定方向に交互に並列に形成された複数の第1配線及び第3配線を形成する工程と、前記絶縁シートの第2面に、前記所定方向に交互に並列に、前記第1配線及び前記第3配線からずらして形成された複数の第2配線及び第4配線を形成する工程と、隣接する前記第1配線と前記第2配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第1配線と前記第2配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第1連続配線を形成すると共に、隣接する前記第3配線と前記第4配線の端部を、前記絶縁シートを介して接続することにより、複数の前記第3配線と前記第4配線が前記絶縁シートを介して交互に接続された第2連続配線を形成する工程と、前記第1連続配線の一方の端部である第1連続配線第1端部に接続された外部端子を形成する工程と、前記第1連続配線の他方の端部である第1連続配線第2端部と、前記第2連続配線の前記第1連続配線第1端部側の端部である第2連続配線第2端部とを、接続する反転接続部を形成する工程と、を含むフレキシブル回路基板の製造方法。
構成6の製造方法の実施により、構成1のフレキシブル回路基板を製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…フレキシブル回路基板、2…絶縁シートの第1面、3…絶縁シートの第2面、10絶縁シート、U1(U1a~U1d)…U相の第1配線、V1(V1a~V1d)…V相の第1配線、W1(W1a~W1d)…W相の第1配線、U2(U2a~U2d)…U相の第2配線、V2(V2a~V2d)…V相の第2配線、W2(W2a~W2d)…W相の第2配線、U3(U3a~U3d)…U相の第3配線、V3(U3a~V3d)…V相の第3配線、W3(W3a~W3d)…W相の第3配線、U4(U4a~U4d)…U相の第4配線、Us1…U相の第1連続配線、Vs1…V相の第1連続配線、Ws1…W相の第1連続配線、Us2…U相の第2連続配線、Vs2…V相の第2連続配線、Ws2…W相の第2連続配線、Ut…U相の反転部、Vt…V相の反転部、Wt…W相の反転部、Uc…U相の外部端子、Vc…V相の外部端子、Wc…W相の外部端子、Cc…共通接続部、U11(U11a~U11d),U12(U12a~U12d)…U相の2重の第1配線、U21(U21a~U21d),U22(U22a~U22d)…U相の2重の第2配線、Us11,Us12…U相の2重の第1連続配線、Us21,Us22…U相の2重の第2連続配線、Ut1,Ut2…U相の2重の反転部、50…ブラシレスモーター(電動機)、51…金属部、60…ローター、61…永久磁石、70…ステータ。
図1
図2
図3
図4