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  • 特開-塗料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021476
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240208BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 5/33 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240208BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240208BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240208BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20240208BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20240208BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20240208BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D5/33
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
C09D5/14
C09D133/04
C09D125/08
C09D7/43
C09D7/40
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124316
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】522309366
【氏名又は名称】田中 泰樹
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰樹
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG031
4J038CG032
4J038CJ031
4J038HA216
4J038HA276
4J038HA556
4J038JA64
4J038KA07
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA21
4J038MA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA02
4J038NA19
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】遮熱・断熱機能、更には消臭殺菌機能を有する塗料組成物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる塗料組成物は、塗料組成物を形成する水性エマルジョンと、遮熱性を有するルチル型酸化チタンと、断熱性を有するアクリル中空ビーズと、消臭、殺菌性を有するタンニンを含む水溶液と、シラスバルーンと、を少なくとも含み、前記水性エマルジョン中にタンニンが含まれると共に、シラスバルーンの内部にもタンニンが内包されることを特徴する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料組成物を形成する水性エマルジョンと、
遮熱性を有するルチル型酸化チタンと、
断熱性を有するアクリル中空ビーズと、
消臭、殺菌性を有するタンニンを含む水溶液と、
シラスバルーンと、
を少なくとも含み、
前記水性エマルジョン中にタンニンが含まれると共に、シラスバルーンの内部にもタンニンが内包されることを特徴する塗料組成物。
【請求項2】
塗料組成物の全重量に対して、
40重量%以上45重量%以下の前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、
18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、
7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズと、
6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンと、
2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液と、
を少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記シラスバルーンの平均粒径が35μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗料組成物。
【請求項4】
添加剤として造膜助剤、可塑剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、炭酸カルシウム、調整水、凍結防止剤が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料組成物に関し、遮熱・断熱効果のほか、消臭、殺菌効果を有する塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁や内壁に塗布して遮熱性塗膜や断熱性塗膜を形成する塗料として、例えば、特許文献1には、スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物又はアクリル酸ブチルスチレン共重と、白色顔料と、アクリル中空ビーズとを含む断熱性塗膜において、前記アクリル中空ビーズは、前記断熱性塗膜全体に対し60~80容積%の容積を占め、かつ、10~40μmの平均粒子径を備え、前記白色顔料はルチル型二酸化チタンであって、前記スチレンアクリル酸アルキルエステル共重合物又は前記アクリル酸ブチルスチレン共重100重量部に対し、前記ルチル型二酸化チタン74~143重量部を含み、前記ルチル型二酸化チタンは0.1~10μmの平均粒子径を備える断熱性塗膜が示されている。
この特許文献1によれば、前記ルチル型二酸化チタンは日射反射用材として、前記アクリル中空ビーズは断熱材として含有され、塗膜を形成したときに断熱性が得られるとされている。
【0003】
また、特許文献2には、(1)アクリル系合成樹脂(2)着色顔料(3)珪砂(4)真空バルーン(5)塗膜添加剤(6)水を含む上塗り塗料が開示され、更に、この上塗り塗料にシラスバルーンが含まれていると、断熱性を向上できるため、好ましいことが示されている。
【0004】
また、天然物系の消臭剤が配合された塗料として、特許文献3には、柿タンニン又は茶カテキンと、多孔質の無機粉体と、コロイダルシリカが配合された水性系合成樹脂と、を含有する消臭塗料において、前記コロイダルシリカが前記水性系合成樹脂のポリマー間、及び、前記柿タンニン又は茶カテキンの分子と前記ポリマーとの間に入り込むことにより隙間を構成し、前記水性系合成樹脂が前記多孔質の無機粉体の周囲を覆う消臭塗料が示されている。尚、前記多孔質の無機粉体は、珪藻土、ゼオライト、金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6746609号公報
【特許文献2】特開2020-18983号公報
【特許文献3】特開2019-73610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2の塗料にあっては、日射反射用材としてルチル型二酸化チタン、断熱材としてアクリル中空ビーズあるいはシラスバルーンが用いられているため、遮熱性や断熱性を得ることができる。
しかしながら、特許文献1、2の塗料にあっては、特許文献3の塗料のように消臭、殺菌効果を得ることができないという課題があった。
【0007】
一方、特許文献3の塗料にあっては、柿タンニン又は茶カテキンと、多孔質の無機粉体と、コロイダルシリカが配合された水性系合成樹脂とを含有する消臭塗料であり、消臭、殺菌効果を得ることができる。
しかしながら、特許文献1、2の塗料のように、遮熱性や断熱性を得ることができず、また塗膜が風雨にされると塗膜表面風化によってタンニン効果が減少するという課題があった。
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、遮熱性や断熱性を有し、しかも消臭殺菌効果が長く続く塗料について鋭意研究をした。
その結果、シラスバルーン内部に、タンニン水溶液を含む塗料組成物が取り込まれることにより、塗膜表面風化によるタンニンの消臭殺菌効果の減少が抑制され、タンニンの消臭殺菌効果が長く続くことを知見し、本発明を想到した。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、遮熱・断熱機能、更には消臭殺菌機能を有する塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた、本発明にかかる塗料組成物は、塗料組成物を形成する水性エマルジョンと、遮熱性を有するルチル型酸化チタンと、断熱性を有するアクリル中空ビーズと、消臭、殺菌性を有するタンニンを含む水溶液と、シラスバルーンと、を少なくとも含み、前記水性エマルジョン中にタンニンが含まれると共に、シラスバルーンの内部にもタンニンが内包されることを特徴する。
【0011】
このように、本発明にかかる塗料組成物は、ルチル型酸化チタンとアクリル中空ビーズを含んでいるため、遮熱性や断熱性を有している。また、タンニン水溶液を含んでいるため、消臭殺菌等の効果を有する。
また、シラスバルーンは中空多孔質(多泡質)であるため、シラスバルーン内部にタンニン水溶液を混合した塗料組成物が取り込まれる。そして、塗料組成物に含まれるタンニン成分に悪臭成分が接触、あるいはまた悪臭成分が塗膜内を還流し、シラスバルーン内部に内包されたタンニン成分とも接触する。これにより、消臭殺菌等の効果を奏する。
このように、本発明にかかる塗料組成物は、タンニン成分がシラスバルーン内部に内包されているため、消臭殺菌効果の減少が抑制され、タンニンの消臭殺菌効果を長期間にわたって得ることができる。
【0012】
ここで、前記塗料組成物は、塗料組成物の全重量に対して、40重量%以上45重量%以下の前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズと、6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンと、2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液と、を少なくとも含むことが望ましい。
【0013】
このように、18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、7重量%以上12重量%以下のアクリル中空ビーズを含んでいるため、遮熱性や断熱性を有している。また、2重量%以上5重量%以下のタンニン水溶液を含んでいるため、消臭殺菌等の効果を有する。特に、6重量%以上10重量%以下のシラスバルーンを含んでいるため、タンニンの消臭殺菌効果の減少が抑制され、タンニンの消臭殺菌効果を持続させることができる。
【0014】
ここで、前記シラスバルーンの平均粒径が35μm以上70μm以下であることが望ましい。シラスバルーンの平均粒径が35μm未満になると、シラスバルーンは単泡の中空球体となる傾向があり、シラスバルーン内部にタンニン水溶液が混入し難いため、好ましくない。
また、シラスバルーンの平均粒径が70μmを超えると、シラスバルーンが崩壊することがあり、シラスバルーン内部にタンニンを内包することができないため、好ましくない。
【0015】
また、添加剤として造膜助剤、可塑剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、炭酸カルシウム、調整水、凍結防止剤が含まれることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遮熱・断熱機能、更には消臭殺菌機能を有する塗料組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明にかかる塗料組成物によって形成された塗膜を模式的に表した図である。
図2図2は、本発明にかかる塗料組成物に含まれるシラスバルーンの形状を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかる塗料組成物は、塗料組成物を形成する水性エマルジョンと、遮熱性を有するルチル型酸化チタンと、断熱性を有するアクリル中空ビーズと、消臭、殺菌性を有するタンニンを含む水溶液と、シラスバルーンと、を少なくとも含み、前記タンニンがシラスバルーンに内包されている。
【0019】
本発明にかかる塗料組成物は、アクリル中空ビーズと、シラスバルーンと、タンニン水溶液を少なくとも含む塗料組成物であるため、住宅の外壁、内壁等の基材の表面に塗布することにより、遮熱・断熱機能、更には消臭殺菌等の機能を有する。
【0020】
本発明にかかる塗料組成物を塗布することにより形成された塗膜は、図1に示すように、例えば、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物のような水性エマルジョン1と、遮熱性を有するルチル型酸化チタン2と、断熱性を有するアクリル中空ビーズ3と、消臭、殺菌性を有するタンニン4と、シラスバルーン5と、を少なくとも含み、シラスバルーン5の内部に、前記タンニンが内包されている。
【0021】
特に、本発明にかかる塗料組成物にあっては、シラスバルーン5を含んでいる。シラスバルーン5の内部は、図2に示すように、中空状の多孔質(多泡質)5aであるため、シラスバルーン5の内部に、タンニン水溶液を含有する塗料組成物が取り込まれる。
そして、塗料組成物に含まれるタンニン成分に悪臭成分が接触、あるいは悪臭成分がシラスバルーン5の内部に内包されているタンニンと接触するため、タンニンの消臭殺菌効果が持続する。
また、塗膜表面風化によって、塗膜が風化により削られたとしても、悪臭成分が塗膜内部に内包されているタンニンに接触、あるいは悪臭成分がシラスバルーン5の内部に内包されているタンニンと接触するため、タンニンの消臭殺菌効果が持続する。
更に、悪臭成分が塗膜内に侵入し、前記したように、シラスバルーン5に内包されたタンニン成分とも接触する。これによっても消臭殺菌等の効果を奏する。
【0022】
ここで、シラスバルーンとは、火山噴出物であるシラスを800~1200℃で急速に加熱処理し、発泡させることにより製造される外観形状は球状を呈している。図2に示すように、その内部は多くの孔が存在している多孔質体5aである。
言い換えれば、多くの泡が重なりあったような多泡質体であるため、シラスバルーン内部に、タンニン水溶液を含有する塗料組成物を収容することができる。
【0023】
前記シラスバルーンの内部に空気が内包されている場合には、断熱材としても機能する。
また、塗料組成物を製造する工程において、球状のシラスバルーンが崩壊し、円弧状のシラスバルーン、あるいは破片(細片)となる場合がある。前記シラスバルーンが崩壊した円弧状のシラスバルーン、あるいは破片(細片)は、タンニン成分を担持する基体として機能する。
尚、本発明は住宅の内壁の基材の表面に塗布する塗料組成物に限定されるものではなく、住宅の外壁の基材や床等の表面に塗布する塗料組成物であっても良い。また断熱マット等に応用できる。
【0024】
また、本発明にかかる塗料組成物としては、塗料組成物の全重量に対して、40重量%以上45重量%以下の前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズと、6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンと、2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液と、を少なくとも含むものが好ましい。
【0025】
アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物は、バインダーとして機能する。塗料組成物には、40重量%以上45重量%以下のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンを含むものが好ましい。尚、本発明にあっては、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンに限定されるものではなく、バインダーとして機能する他の水性エマルジョンであっても良い。
アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンは、固形分として40~60重量%の範囲、例えば、48重量%のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物を含むものが好ましい。
【0026】
ここで、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンが40重量%未満の場合、塗料組成物から形成される塗膜の基材に対する塗膜強度、付着性が不十分になるため、好ましくない。
一方、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンが45重量%を超える場合には、ルチル型二酸化チタンと、アクリル中空ビーズとの配合量が相対的に少なくなり、塗料組成物から形成される塗膜の遮熱断熱性が不十分になるため、好ましくない。
前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンとして、例えば、BASF社製 商品名YJ2716Dap、BASF社製 商品名295DHap、イーテック社製 商品名EX304、三井化学株式会社製 商品名マルマテックス等を用いることができる。
【0027】
本発明にかかる塗料組成物は、18重量%以上20重量%以下のルチル型酸化チタンを含むものが好ましい。前記ルチル型二酸化チタンとしては、赤外線遮蔽二酸化チタン、白色顔料用二酸化チタンを用いることができる。
赤外線遮蔽二酸化チタンとしては、例えば、平均粒子径が0.8~1.2μmの範囲、比重4.2のものを好適に用いることができる。
このような赤外線遮蔽二酸化チタンとして、例えば、テイカ株式会社製 商品名JR1000、JR603、石原産業株式会社製 商品名タイペークT-42、商品名Technical T-200、HUNTSMAN社製 商品名ALTIRS-800等を用いることができる。
【0028】
また、白色顔料用二酸化チタンとしては、例えば、平均粒子径が0.2~0.3μmの範囲、比重4.0のものを好適に用いることができる。
このような色顔料用二酸化チタンとして、例えば、テイカ株式会社製 商品名JR603、石原産業株式会社製 商品名 TTO-51、HUNTSMAN社製 商品名TR―93等を用いることができる。
尚、赤外線遮蔽二酸化チタン、白色顔料用二酸化チタンのいずれかを用いても良く、あるいは両者を混合して用いても良い。
【0029】
前記ルチル型酸化チタンの含有量が、塗料組成物の全重量に対して18重量%未満の場合、この塗料組成物から形成される塗膜の日射反射性が不十分となり、好ましくない。
一方、塗料組成物の全重量に対して20重量%を超える場合、塗料組成物の全量に対する前記アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンの含有量が相対的に少なくなり、塗料組成物から形成される塗膜の基材に対する塗膜強度、付着性が不十分となり、好ましくない。
【0030】
本発明にかかる塗料組成物としては、7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズを含むものが好ましい。
前記アクリル中空ビーズとしては、平均粒子径が20μm以上30μm以下のものが用いられる。前記アクリル中空ビーズの真比重は、36kg/m±4kg/mであり、内部に0.01~0.04W/m・Kの熱伝導率を備える炭化水素ガスを内蔵し、高い遮熱断熱性を有している。
このようなアクリル中空ビーズとして、日本フェライト株式会社製 商品名 EMCW-20、松本油脂製薬株式会社製 商品名マツモトマイクロスフェアーMFL-100MCA等を用いることができる。
【0031】
本発明にかかる塗料組成物は、6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンを含む。
シラスバルーンの含有量は、塗料組成物の全重量に対して、6重量%以上10重量%以下である。シラスバルーンの含有量が6重量部未満であると、タンニンの保持効果が薄れ、タンニンの消臭殺菌効果が少なくなり、塗料の吸放湿活性も低下する。
ここで、シラスバルーンは、空気中の湿度が高いと空気中の湿気を吸収し、空気が乾燥するとシラスバルーンが吸収した湿気を放出する。このように、湿気を吸収、放出することを塗料の吸放湿活性といい、吸放湿活性が高い場合には、シラスバルーンに取り込まれたタンニン成分が、臭いや菌を含んだ空気に触れて、消臭、殺菌効果を奏する。
一方、シラスバルーンの含有量が10重量部を超えると塗膜強度の観点から好ましくない。
【0032】
シラスバルーンの平均粒径は35~70μmが好ましい。
シラスバルーンの平均粒径が35μm未満になると、シラスバルーンは単泡の中空球体となる傾向があり、シラスバルーン内部にタンニン水溶液が混入し難いため、好ましくない。また、シラスバルーンの平均粒径が70μmを超えると、シラスバルーンが崩壊することがあり、シラスバルーン内部にタンニン水溶液を内包することができないため、好ましくない。
また、平均粒径が35μm未満では塗料組成物の吸放湿活性が低下し、平均粒径が70μmを超えると吹付け塗装する場合に吹付け部材の孔部で詰まりやすくなる傾向がある。
【0033】
このようなシラスバルーンとして、豊和直株式会社製 商品名トワナライトSYB-2000、株式会社サンワーズ社製 商品名シラスファイン ISM-M035、巴工業株式会社社製 商品名マールライト等を用いることができる。
【0034】
本発明にかかる塗料組成物は、塗料組成物の全重量に対して、2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液を含む。
タンニン水溶液は、例えば、天然物系の消臭剤として用いる柿タンニンを用いても良い。タンニン水溶液の濃度は、90%以上が好ましい。
【0035】
ここで、タンニン水溶液が、塗料組成物の全重量に対して、2重量%未満の場合には、十分な消臭、殺菌効果がなく、好ましくない。また、タンニン水溶液が、塗料組成物の全重量に対して、5重量%を超える場合には、コストが嵩み、好ましくない。
タンニン水溶液としては、エイプルエンジニアリング株式会社製 タンニン水溶液KT-70、富士ケミカル株式会社 粉体タイプFC-V205を用いることができる。
【0036】
本発明に係る塗料組成物は、塗膜の性能を損なわない範囲で、さらに添加物を含有してもよい。添加物としては、例えば、消泡剤、分散材、可塑剤、造膜助剤、防腐剤、凍結防止剤、架橋剤、増粘剤、水等がある。
【0037】
消泡剤としては、例えば、サンノブコ社製 商品名ノブタム8034F、楠本化成株式会社製 商品名アルタナBYK-028、ダウ・東レ株式会社 商品名DOWSIL SH200FLUID等を用いることができる。
分散材としては、例えば、三井化学株式会社製 商品名リューブマー、株式会社テツタニ製 商品名BYK―028、楠本化成株式会社製 商品名AQ-340等を用いることができる。
【0038】
可塑剤としては、例えば、石井化学産業株式会社製 商品名DBP、BASF社製 商品名Loxanol PL5060、日信化学工業株式会社 ゼニブラン100等を用いることができる。
造膜助剤としては、例えば、EASTMAN CHEMICAL製 商品名 TEXANOL、KHネオケム株式会社製 商品名 キョーワノールM、三井化学株式会社製、ミペロン等を用いることができる。
防腐剤としては、例えば、三愛石油株式会社製 商品名 サンアイバックM-30、ケイ・アイ化成株式会社製 商品名 バイオホープ等を用いることができる。
【0039】
凍結防止剤としては、大塚化学株式会社製 商品名ADH-S、古川薬品株式会社製 商品名メタブルー、日本アルコール販売製 商品名イソプロパノール等を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、大塚化学株式会社製 商品名ヒドランド ADH-S等を用いることができる。
増粘剤としては、例えば、楠本化成株式会社製 商品名AQ-610、株式会社ADEKA 商品名アデカノールUH-450VF、サンノブコ株式会社製 商品名SHシックナー等を用いることができる。
【0040】
また、本発明にかかる塗料組成物の製造は、一般的な塗料組成物の製造と同様な方法によって製造することができる。
即ち、一般的な混合装置を用いて、この混合装置に、バインダー材、水、消泡剤、分散剤、赤外線遮蔽二酸化チタン、白色顔料用二酸化チタン、アクリル中空ビーズ、シラスバルーン、可塑剤、造膜助剤、防腐剤、凍結防止剤、架橋剤、タンニン水溶液、増粘剤を投入し、攪拌、混合することにより、製造することができる。
【0041】
尚、シラスバルーンを投入し、混合装置を減圧した状態で攪拌、混合し、その後大気圧に戻すことにより、シラスバルーン内部にタンニン水溶液等の塗料組成物を十分に取り込むことができる。
また、予め、タンニン水溶液中にシラスバルーンを浸漬して、シラスバルーン内部にタンニン水溶液を取り込んだものを、塗料組成物の製造工程中の混合装置内に投入しても良い。
ここで、タンニン水溶液中にシラスバルーンを浸漬して、シラスバルーン内部にタンニン水溶液を取り込む際、シラスバルーンをタンニン水溶液中に浸漬して、減圧下で攪拌、混合し、その後大気圧に戻すことにより、シラスバルーン内部にタンニン水溶液を十分に取り込むことができる。
【実施例0042】
次に、本発明の実施例を説明する。尚、本発明にかかる塗料組成物は、実施例に示す組成に限定されるものではない。
(実施例)
塗料組成物の全重量に対して、バインダー材として、アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョン(BASF社製Acronal(登録商標)YJ2716Dap(商品名、固形分48.0重量%))45重量%と、水6.8重量%と、消泡剤ALTANA社製ALTANA BYK-028(商品名)0.4重量%と、分散剤楠本化成株式会社製デスパロン AQ-380(商品名)0.4重量%を、混合装置に投入する。
そして、温度5℃~常温下、大気圧下で、5分間攪拌し、混合した。
尚、混合装置としは、攪拌翼を備えた一般的な混合装置を用いることができる。
【0043】
その後、前記混合装置に、赤外線遮蔽二酸化チタンとしてテイカ株式会社製JR-1000(商品名)7.8重量%と、前記白色顔料用二酸化チタンとしてテイカ株式会社製JR-603(商品名)11.7%とを投入し、温度5℃~常温下、大気圧下で、30分間攪拌し、混合した。
【0044】
更にその後、前記混合装置に、前記アクリル中空ビーズとして、日本フェライト株式会社製アクリル中空ビーズ EMCW-20(商品名)9.7重量%、シラスバルーンとして、豊和直株式会社 トワラナライト SYB-2000(商品名)7.8重量%を投入し、温度5℃~常温下、大気圧下で、15分間攪拌し、混合した。
【0045】
更にその後、前記混合装置に、前記可塑剤としてBASF社製LOXANOL pL5060(商品名)0.5重量%、造膜助剤としてKHネオケム株式会社製キョウワノールM(商品名)2.9重量%、防腐剤として日本曹達株式会社製ベストサイド 750(商品名)0.1重量%、凍結防止剤として日本アルコール販売株式会社製イソプロバノール2.9重量%、架橋剤として大塚化学株式会社製ヒドランドADH-S 1.9%重量%、タンニン水溶液1.9重量%を投入し、温度5℃~常温下、大気圧下で、10分間攪拌し、混合した。
【0046】
その後、前記混合装置に、前記増粘剤として株式会社アデカ製アデカノール UH-450VF 0.2重量%を投入し、温度5℃~常温下、大気圧下で、15分間攪拌し、混合し、塗料組成物を製作した。
【0047】
このように製作された塗料組成物を試験片に塗布し、JIS A6909:2014に基づいて、付着強さを検証した。
その結果、付着強さが2.7N/mmであり、好ましいとされている0.5N/mm以上の付着強さを備えていることが確認された。
【0048】
このように製作された塗料組成物を試験片に塗布し、JIS K 5602:2008に基づいて、日射反射率(遮熱性)を検証した。
その結果、全波長88.4%以上であり、遮熱性が高いことが確認された。
【0049】
また、サンプリングバッグに、塗料組成物が塗布された試験片と測定対象ガスを入れ、2時間後のガス濃度を検知管で測定、減少率を算出した(SEKマーク繊維製品認証基準準用)。測定対象ガスとしては、アンモニアガス、酢酸ガス、硫化水素ガス、イソ吉草酸ガス、ノネナネールガスを用いた。
【0050】
その結果、アンモニアガスについては、初発濃度100ppmであったものが、59ppmとなった。このとき、ブランク(空試験)のガス濃度が81ppmであったため、減少率は27%となった。
酢酸ガスについては、初発濃度30ppmであったものが、9.5ppmとなった。このとき、ブランク(空試験)のガス濃度が24ppmであったため、減少率は60%となった。
硫化水素ガスについては、初発濃度4.0ppmであったものが、3.8ppmとなった。このとき、ブランク(空試験)のガス濃度が4ppmであったため、減少率は5%となった。
イソ吉草酸ガスについての減少率は97%、ノネナネールガスの減少率は98%であった。
【0051】
また、タンニン水溶液を混入した上記塗料組成物を試験片に塗布し、試験方法ISO21702:2019、ウィルス力値の定量方法:プラーク法、供試ウィルス:A型インフルエンザウィルス、ネコカリシウィルスについて、殺菌機能の検証を行った。尚、タンニン水溶液を混入していない塗料組成物を塗布した試験片を比較例とした。
その結果、塗料組成物を塗布した試験片にあっては、A型インフルエンザウィルスの24時間後のウィルス力値(PFU/cm)の常用対数の平均値が0.8以下、タンニン水溶液を混入していない塗料組成物を塗布した試験片にあっては、A型インフルエンザウィルスの24時間後のウィルス力値(PFU/cm)の常用対数の平均値が5.19であり、84.6%の減少が認められた。
【0052】
このように、本発明にかかる塗料組成物は、遮熱・断熱機能を有し、更には消臭機能を有することが確認された。尚、殺菌機能については、タンニン水溶液が有する性質であるため、消臭機能が発揮されているため、殺菌機能も発揮されている。
【符号の説明】
【0053】
1 塗料組成物を形成する水性エマルジョン
2 ルチル型酸化チタン
3 アクリル中空ビーズ
4 タンニン
5 シラスバルーン
5a 多孔質体(多泡質体)
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
ここで、前記塗料組成物は、塗料組成物の全重量に対して、40重量%以上45重量%以下のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズと、6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンと、2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液と、を少なくとも含むことが望ましい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料組成物を形成する水性エマルジョンと、
遮熱性を有するルチル型酸化チタンと、
断熱性を有するアクリル中空ビーズと、
消臭、殺菌性を有するタンニンを含む水溶液と、
シラスバルーンと、
を少なくとも含み、
前記水性エマルジョン中にタンニンが含まれると共に、シラスバルーンの内部にもタンニンが内包されることを特徴する塗料組成物。
【請求項2】
塗料組成物の全重量に対して、
40重量%以上45重量%以下のアクリル酸エステル-メタクリル酸エステル-スチレン共重合物の水性エマルジョンと、
18重量%以上20重量%以下の前記ルチル型酸化チタンと、
7重量%以上12重量%以下の前記アクリル中空ビーズと、
6重量%以上10重量%以下の前記シラスバルーンと、
2重量%以上5重量%以下の前記タンニン水溶液と、
を少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記シラスバルーンの平均粒径が35μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗料組成物。
【請求項4】
添加剤として造膜助剤、可塑剤、消泡剤、分散剤、増粘剤、炭酸カルシウム、調整水、凍結防止剤が含まれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗料組成物。