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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021478
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】光学ガラス及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20240208BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124321
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健介
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062BB08
4G062CC10
4G062DA01
4G062DA02
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4G062KK10
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4G062NN01
4G062NN02
4G062NN40
(57)【要約】
【課題】
高屈折率でありながら、透過率が高く、汎用性に優れ、生産性の高い光学ガラス及び光学素子を提供する。
【解決手段】
酸化物基準のモル%で、La成分を15.0~30.0%、ZnO成分を0~8.0%、BaO成分を0~10.0%、RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が0%超10.0%以下、モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)が0.80以下、モル比(SiO+B)/Ln(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)が1.01以上2.00以下、モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)が0.10以上である光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%で、
La成分を15.0~30.0%、
ZnO成分を0~8.0%、
BaO成分を0~10.0%、
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が0%超10.0%以下、

モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)が0.80以下、
モル比(SiO+B)/Ln(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)が1.01以上2.00以下、
モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)が0.10以上
である光学ガラス。
【請求項2】
屈折率(n)が1.98000以上
である請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
【請求項4】
請求項3に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラス、光学素子は、異なる光学領域のレンズを組み合わせてカメラや映像装置などの光学特性を向上させる用途や、光学機器中に搭載し様々な光学設計を実現する用途などに用いることができる。最近では拡張現実デバイスや仮想現実デバイスを備えた光学機器の市場も拡大している。
【0003】
特に、屈折率が高く透過率がよい光学ガラスは使用用途の汎用性が高いが、屈折率を高めるためにはTiO成分、Nb成分、WO成分、Bi成分等の含有量を増加させる必要がある。しかし、これらの成分はガラスの熔解過程で生じる白金由来のガラスの着色を招く成分である。
【0004】
また、光学ガラスを安定供給し、生産性を高めるという点で、製造過程及び成形時の耐失透性が高いことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-040171公報
【特許文献2】特開2017-88482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2で開示されたガラスは、いずれも屈折率及び透過率のいずれかが十分とは言えず、汎用性の高い高屈折率及び高透過率のガラスであるとは言えない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、高屈折率でありながら、透過率が高く、汎用性に優れ、生産性の高い光学ガラス及び光学素子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、La成分及びRnO成分を含有し、ZnO成分、BaO成分の含有量を抑え、モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)、モル比(SiO+B)/Ln3、モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)を調整することによって、高屈折率でありながら、透過率が高く、汎用性に優れ、生産性の高い光学ガラス及び光学素子が得られることを見出した。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 酸化物基準のモル%で、
La成分を15.0~30.0%、
ZnO成分を0~8.0%、
BaO成分を0~10.0%、
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和が0%超10.0%以下、
モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)が0.80以下、
モル比(SiO+B)/Ln(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)が1.01以上2.00以下、
モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)が0.10以上
である光学ガラス。
【0010】
(2) 屈折率(n)が1.98000以上
である(1)に記載の光学ガラス。
【0011】
(3) (1)又は(2)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【0012】
(4)(3)に記載の光学素子を備える光学機器。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高屈折率でありながら、透過率が高く、汎用性に優れ、生産性の高い光学ガラス及び光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所について、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0015】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラスの総モル数に対するモル%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総モル数を100モル%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0016】
La成分は、他の高屈折率成分に比べてガラスの着色が生じ難く、また屈折率を高められる成分であるが、含有量が多いと安定性を損ない比重の増大を招く成分である。従って、La成分の含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%以上、さらに好ましくは17.0%以上を下限とする。一方、La成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは29.0%以下、さらに好ましくは28.0%以下を上限とする。
【0017】
成分はガラスの屈折率を高める成分であり、希土類酸化物の中で比重の小さい成分であるが、含有量が多いと安定性を損なってしまう。従って、Y成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上を下限とする。一方、Y成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下を上限とする。
【0018】
SiO成分は、安定なガラス形成を促しながらガラスの耐失透性を高める成分であるが、含有量が多いと屈折率が低下してしまう。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは28.0%以下、さらに好ましくは25.0%以下、さらに好ましくは23.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下を上限とする。一方、SiO成分の含有量は、0%でも良いが、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは4.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上を下限とする。
【0019】
成分は、安定なガラスの形成を促すことで耐失透性を高める成分であり、La成分と共に含有することで安定性を高めることができる。従って、B成分の含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下、さらに好ましくは32.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下を上限とする。一方、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは6.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上を下限とする。
【0020】
TiO成分は、ガラスの屈折率及びアッベ数を高める成分であるが、過剰に含有した場合ガラスの着色を招く成分である。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは55.0%以下、より好ましくは53.0%以下、さらに好ましくは50.0%以下、さらに好ましくは48.0%以下を上限とする。一方、TiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは15.0%以上、さらに好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上を下限とする。
【0021】
Nb成分は、ガラスの屈折率及びアッベ数を高められ、TiO成分とともに含有することで安定性を高められる成分であるが、過剰に含有した場合比重が大きくなってしまう。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは18.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%以下、最も好ましくは9.0%以下を上限とする。他方で、Nb成分の含有量は、安定性を高める観点から、好ましくは1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0022】
WO成分、Bi成分は、0%超含有する場合にガラスの屈折率を高める成分であるが、含有量が多いとガラスの着色を招き比重が大きくなってしまう。WO成分、Bi成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0023】
WO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0024】
Bi成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下、最も好ましくは0.1%以下を上限とする。
【0025】
ZrO成分は、屈折率を高めながら透過率を高めることができる成分であるが、過剰に含有した場合研磨・研削等によるガラスの加工性を悪化させてしまう。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは9.0%以下、さらに好ましくは8.5%以下を上限とする。他方で、ZrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0026】
LiO成分、KO成分、NaO成分は、ガラスの熔解温度を下げる成分であるが、含有量が多いと安定性を損ない失透しやすくなってしまう。LiO成分、KO成分、NaO成分中LiO成分が、La成分とともに含有した場合ガラスの安定性を最も高める成分である。LiO成分、KO成分、NaO成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0027】
LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下を上限とする。他方で、LiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.4%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0028】
O成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下を上限とする。他方で、KO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.4%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0029】
NaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下を上限とする。他方で、NaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.4%以上を下限とするが、0%であってもよい。
【0030】
BaO成分は、ガラスの安定性を高める成分であるが、屈折率及びアッベ数の維持、また比重が大きいため汎用性の高い光学ガラスとするためには含有量を減らすことが好ましい。また、耐酸性を維持する点でも含有量を減らすことが好ましい。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする
【0031】
CaO成分、MgO成分、SrO成分は、ガラスの耐失透性を高める成分であるが、含有量が多いと屈折率及びアッベ数の維持が難しくなる。CaO成分、MgO成分、SrO成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0032】
CaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする
【0033】
MgO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする
【0034】
SrO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする
【0035】
Gd成分、Yb成分は、ガラスの屈折率を高める成分であるが、含有量が多いと安定性を損ない比重が大きくなってしまう。Gd成分、Yb成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0036】
Gd成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とする。
【0037】
Yb成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とする。
【0038】
Al成分は、ガラスの化学的耐久性を向上しつつ、ガラス熔融時の粘度を高める成分である。特に、Al成分の含有量を5.0%以下にすることで、ガラスの熔融性を高めつつ、ガラスの失透傾向を弱めることができる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0039】
ZnO成分は、ガラスの液相温度を下げ、且つガラスの耐失透性を高める成分であるが、含有量が多いと屈折率及びアッベ数の維持が難しくなる。また、耐酸性を維持する点でも含有量を減らすことが好ましい。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは8.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0040】
Ta成分は、ガラスの屈折率を高められ、且つガラスの耐失透性を高める成分である。一方で、Ta成分の含有量を5.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、且つガラスがより低温で熔解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0041】
成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0042】
F成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0043】
TeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0044】
Ga成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0045】
GeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0046】
CeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0047】
Er成分、Pr成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは実質的に含有しない。
【0048】
SnO成分の含有量は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0049】
Sb成分は、ガラスを熔融する際に清澄や脱泡を促す成分であり、任意成分である。ここで、Sb成分の含有量を0.1%以下にすることで、特に高屈折率ガラスにおける着色を抑えることが可能となる。また、0.1%以下とすることにより、ガラス熔融時における過度の発泡が生じ難くなるため、Sb成分を熔解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.05%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0050】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0051】
C成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、C成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、C成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0052】
S成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、S成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、S成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0053】
スクロース等の有機物成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、スクロース等の有機物成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、スクロース等の有機物分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0054】
なお、ガラスを還元する成分は上記C成分、S成分、スクロース等の有機物成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の還元剤あるいはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0055】
Ln成分(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、ガラスの屈折率を高めることができるが、過剰に含有した場合ガラスの失透性を高めてしまう。従って、Ln成分の含有量の和は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは19.0%以上を下限とする。他方で、Ln成分の含有量の和は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下を上限とする。
【0056】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、ガラスの熔融性を高められる成分であるが、過剰に含有した場合加工時の耐失透性を悪化させてしまう。ガラスの熔融性を高めることで生産性の良いガラスを得ることができる。従って、RnO成分の含有量の和は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.8%以下を上限とする。他方で、RnO成分の含有量の和は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%以上、さらに好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.4%以上を下限とする。
【0057】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(モル和)は、ガラスの安定性を高める成分であるが、過剰に含有した場合屈折率の低下を招く成分である。従って、RO成分の含有量の和は、10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0058】
TiO成分、ZrO成分、Nb成分の合計含有量に対するSiO成分及びB成分の合計含有量であるモル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)は、0.80以下とすることで、比重の増大を抑制しながら所望の屈折率を得ることができる。従って、モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)は、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.79以下、さらに好ましくは0.78以下を上限とする。他方で、モル比(SiO+B)/(TiO+ZrO+Nb)は、好ましくは0超、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.30以上を下限とする。
【0059】
Ln成分の合計含有量に対するSiO成分及びB成分の合計含有量であるモル比(SiO+B)/Lnは、1.01以上とすることで、耐失透性悪化を抑制することができる。従って、モル比(SiO+B)/Lnは、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.02以上、さらに好ましくは1.03以上、さらに好ましくは1.04以上を下限とする。他方で、モル比(SiO+B)/Lnは、2.00以下とすることで、所望の屈折率を得られながら透過率を高めることができる。従って、モル比(SiO+B)/Lnは、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.95以下、さらに好ましくは1.90以下、さらに好ましくは1.85以下を上限とする。
【0060】
TiO成分、Nb成分、WO成分、Bi成分の合計含有量に対するNb成分のモル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)は0.10以上とすることで、屈折率を高めることができる。Nb成分はTiO成分、WO成分、Bi成分の高屈折率成分の中で屈折率を最も高める成分である。高屈折率成分の総量とNb成分の含有量を調整することによって、ガラスの着色を抑えながら屈折率を高めることが可能となる。従って、モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)は好ましくは0.10以上、より好ましくは0.11以上、さらに好ましくは0.12以上を下限とする。他方で、モル比Nb/(TiO+Nb+WO+Bi)は過剰な含有による失透や着色を抑制する観点から、好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下、さらに好ましくは0.23以下としてもよい。
【0061】
Ln成分の合計含有量に対するY成分のモル比Y/Lnは0.05以上とすることで、ガラスの比重を小さくすることができる。Y成分は、他の希土類酸化物の中で比重が小さい成分であるため、希土類酸化物とY成分の割合を調整することによって、着色を抑制しながら屈折率を高める効果も得られる。従って、モル比Y/Lnは、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、さらに好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.13以上を下限とする。
【0062】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない
成分について説明する。
【0063】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、Nd、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0064】
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0065】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0066】
[物性]
本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.98000以上、より好ましくは1.99000以上、さらに好ましくは2.00000以上を下限とする。他方で、この屈折率(n)は、好ましくは2.50000以下、より好ましくは2.30000以下、さらに好ましくは2.20000以下、さらに好ましくは2.10000以下としてもよい。本発明のアッベ数(ν)は、好ましくは18.00以上、より好ましくは20.00以上、さらに好ましくは23.00以上を下限とする。他方で、このアッベ数(ν)は、好ましくは35.00未満、より好ましくは33.00以下、さらに好ましくは30.00以下を上限とする。
【0067】
また、本発明のガラスは、着色が少ないことが好ましい。特に、本発明のガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ70)は、好ましくは480nm以下、より好ましくは470nm以下、さらに好ましくは460nm以下、さらに好ましくは450nm以下を上限とする。また、分光透過率5%を示す波長(λ)は、好ましくは390nm以下であり、より好ましくは385nm以下であり、さらに好ましくは380nm以下を上限とする。
【0068】
屈折率が高く透過率がよい光学ガラスはカメラや映像装置、拡張現実デバイスや仮想現実デバイスを備えた光学機器など様々な使用用途への展開が可能であるため、本発明の光学ガラスは汎用性が高い。
【0069】
本発明の光学ガラスの比重(d)は、5.50以下、5.40以下、5.30以下、5.20以下、5.10以下の順に好ましい。
比重を小さくすることで、ガラスが軽くなるため、光学機器の軽量化をはかることが可能となる。
【0070】
本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1250℃以下、より好ましくは1230℃以下、さらに好ましくは1210℃以下を上限とする。
液相温度を小さくすることで、安定性に優れ、生産性の良いガラスを得ることができる。
【0071】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1500℃の温度範囲で2~5時間熔解させて攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。ガラス原料と共に適宜還元剤や脱泡剤を使用してもよい。
【0072】
[ガラスの成形]
本発明のガラスは、公知の方法によって、熔解成形することが可能である。なお、ガラス熔融体を成形する手段は限定されない。
【0073】
[光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製することができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0074】
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用であり、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。また、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)及び複合現実(MR)といった画像表示装置の構成部材となる導光板に用いることで、広視野角化、高輝度化を実現できる。
【実施例0075】
本発明のガラスの実施例及び比較例の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ、λ70)、比重(d)、液相温度を表1に示す。
【0076】
本発明の光学ガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、弗化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して、均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1500℃の温度範囲で30分~2時間熔解させた後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷して作製される。
【0077】
実施例及び比較例のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、JIS B 7071-2:2018に規定されるVブロック法に準じて測定した。ここで、屈折率(n)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線に対する屈折率(n)と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。これらの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
【0078】
実施例及び比較例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS02-2019 光学ガラスの着色度の測定方法)に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~700nmの分光透過率を測定し、λ70(透過率70%時の波長)とλ(透過率5%時の波長)を求めた。
【0079】
実施例のガラス中の比重は、JISZ8807:2012の液中ひょう量法による密度及び比重の測定方法に基づいて行った。
【0080】
実施例のガラスの液相温度は、50mlの容量の白金製坩堝に5ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1400℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して1時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察したときに、結晶が認められない一番低い温度を表す。ここで降温する際の所定の温度は、1350℃~800℃の間の10℃刻みの温度である。
【0081】
【表1】
【0082】
表に表されるように、本発明の実施例のガラスは、いずれも屈折率(n)が1.98000以上、より詳細には2.00000以上であり、所望の範囲内であった。
【0083】
本発明の実施例のガラスは、いずれもアッベ数(ν)が20.00以上、より詳細には23.00以上であるとともに、このアッベ数(ν)は35.00以下、より詳細には30.00以下であり、所望の範囲内であった。
【0084】
本発明の実施例のガラスは、いずれも波長(λ70)が480nm以下、より詳細には460nm以下であるとともに、波長(λ)は390nm以下、より詳細には380nm以下であり、所望の範囲内であった。
一方で、特許請求の範囲を満たさない比較例1は屈折率及び透過率が十分な値であるとはいえなかった。
【0085】
本発明の実施例のガラスは、いずれも比重(d)が、5.50以下、より詳細には5.10以下であり、所望の範囲内であった。
【0086】
本発明の実施例のガラスは、いずれも安定性の高いガラスであった。
【0087】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、高屈折率でありながら、透過率が高く、さらに安定性の高いガラスであることが明らかになった。
【0088】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。