(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021484
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】液化装置、液化システム、水素ガス充填システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20240208BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
F17C5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124334
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜平
(72)【発明者】
【氏名】蓮仏 達也
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172EA35
3E172EA48
3E172EA51
3E172GA17
3E172HA04
3E172HA14
3E172JA01
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費を低減させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る再液化装置30は、液体水素を貯留する液体水素貯槽10から供給されるボイルオフガスが通流する低圧経路L1と、低圧経路L1のボイルオフガスを圧縮する圧縮部と、圧縮部から流出する高温のボイルオフガスが通流する高圧経路L2と、低圧経路L1の低温側のボイルオフガスと高圧経路L2の高温側のボイルオフガスとの間で熱交換を行う熱交換器HXと、熱交換器HXを通じて温度が低下した高圧経路L2のボイルオフガスの少なくとも一部を膨張により液化させるジュールトムソン弁JTと、低圧経路L1とは別に設けられ、熱交換器HXのうちの最も高温側の熱交換器HX1に対して、液体水素貯槽10から供給されるボイルオフガスを低温側の冷媒として通過させるBOG回収経路32Bと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素を貯留する貯留装置から供給されるボイルオフガスが通流する第1の経路と、
前記第1の経路のボイルオフガスを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部から流出する高温のボイルオフガスが通流する第2の経路と、
前記第1の経路の低温側のボイルオフガスと前記第2の経路の高温側のボイルオフガスとの間で熱交換を行う複数段の熱交換部と、
前記複数段の熱交換部を通じて温度が低下した前記第2の経路のボイルオフガスの少なくとも一部を膨張により液化させる液化部と、
前記第1の経路とは別に設けられ、前記複数段の熱交換部のうちの最も高温側の第1の熱交換部に対して、前記貯留装置から供給されるボイルオフガスを低温側の冷媒として通過させる第3の経路と、を備える、
液化装置。
【請求項2】
前記第3の経路は、前記第1の熱交換部と前記圧縮部との間で、前記第1の経路に接続される、
請求項1に記載の液化装置。
【請求項3】
前記複数段の熱交換部のうちの少なくとも一部の熱交換部の上流側で前記貯留装置から供給されるボイルオフガスを前記第1の経路に流入させる第4の経路を備える、
請求項2に記載の液化装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の液化装置と、
前記液化装置にボイルオフガスを供給し、前記液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる前記貯留装置と、を備える、
液化システム。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の液化装置と、
前記液化装置にボイルオフガスを供給し、前記液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる前記貯留装置と、
前記貯留装置から供給される液体水素から水素ガスを生成する生成装置と、
前記生成装置により生成される水素ガスを被充填対象に充填する充填装置と、を備える、
水素ガス充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体水素から発生するボイルオフガス(BOG:Boil off Gas)を再液化する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボイルオフガスの再液化には、外部からのエネルギの供給が必要になる。そのため、ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費は、低減されることが望ましい。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費を低減させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
液体水素を貯留する貯留装置から供給されるボイルオフガスが通流する第1の経路と、
前記第1の経路のボイルオフガスを圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部から流出する高温のボイルオフガスが通流する第2の経路と、
前記第1の経路の低温側のボイルオフガスと前記第2の経路の高温側のボイルオフガスとの間で熱交換を行う複数段の熱交換部と、
前記複数段の熱交換部を通じて温度が低下した前記第2の経路のボイルオフガスの少なくとも一部を膨張により液化させる液化部と、
前記第1の経路とは別に設けられ、前記複数段の熱交換部のうちの最も高温側の第1の熱交換部に対して、前記貯留装置から供給されるボイルオフガスを低温側の冷媒として通過させる第3の経路と、を備える、
液化装置が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
上述の液化装置と、
前記液化装置にボイルオフガスを供給し、前記液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる前記貯留装置と、を備える、
液化システムが提供される。
【0008】
また、本開示の更に他の実施形態では、
上述の液化装置と、
前記液化装置にボイルオフガスを供給し、前記液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる前記貯留装置と、
前記貯留装置から供給される液体水素から水素ガスを生成する生成装置と、
前記生成装置により生成される水素ガスを被充填対象に充填する充填装置と、を備える、
水素ガス充填システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】液体水素貯留システムの一例を示す図である。
【
図2】再液化装置の構成の第1例を概略的に示す図である。
【
図3】再液化装置の構成の第2例を概略的に示す図である。
【
図4】水素ガス充填システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態では、ボイルオフガスには、発生原因に依らず、あらゆる液体水素の気化ガスが含まれる前提で説明を行う。例えば、ボイルオフガスには、液体水素の貯留中や移送中の外部からの入熱に伴うフラッシュにより発生するガスが含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、液体水素の移送時に移送流路や移送先の貯槽の予冷に伴う蒸発により生じるガスが含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、液体水素の移送中に発生する圧力差に伴うフラッシュにより発生するガスが含まれる。圧力差に伴うフラッシュには、例えば、移送中の圧力損失に伴うフラッシュ、移送中に通過する弁によるフラッシュ、移送流路から貯槽への流入時の膨張に伴うフラッシュ等が含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、水素の核スピン異性体であるオルト水素からパラ水素への平衡状態に向かう転換(以下、「オルト・パラ転換」)の転換熱に伴う蒸発により発生するガスが含まれる。以下、特に断らない限り、「平衡状態」は、オルト水素及びパラ水素の比率に関する平衡状態を意味する。
【0013】
[液体水素貯留システム]
図1を参照して、本実施形態に係る液体水素貯留システム100について説明する。
【0014】
図1は、液体水素貯留システム100の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、液体水素貯留システム100は、液体水素貯槽10と、液体水素供給ライン20と、再液化装置30と、BOG回収ライン40と、液体水素供給ライン50とを含む。
【0016】
液体水素貯槽10は、液体水素供給ライン20を通じて外部から供給される液体水素を貯留する。
【0017】
液体水素貯槽10は、液体水素が貯留される内槽11と、内槽11の外側を覆う外槽12とを含む。
【0018】
外槽12は、内槽11の内部の液体水素への入熱を抑制する断熱構造を有する。例えば、外槽12と内槽11との間には、真空断熱層が設けられる。
【0019】
液体水素供給ライン20は、一端が液体水素貯槽10(内槽11)と接続され、外部(他端)から液体水素貯槽10に液体水素を供給するために用いられる。
【0020】
液体水素供給ライン20は、主供給ライン21と、予冷ライン22とを含む。
【0021】
主供給ライン21は、液体水素貯槽10(内槽11)が液体水素を貯留可能な極低温の状態に冷却済の状態で利用される。主供給ライン21には、その開閉状態や開度を調整可能な開閉弁21Vが設けられる。
【0022】
予冷ライン22は、液体水素貯槽10(内槽11)が液体水素を貯留可能な極低温状態に冷却されていない状態で利用される。予冷ライン22には、その開閉状態や開度を調整可能な開閉弁22Vが設けられる。
【0023】
例えば、液体水素貯槽10(内槽11)が極低温状態にない場合、予冷ライン22によって供給される液体水素によって、液体水素貯槽10(内槽11)が予冷され、その後、主供給ライン21によって供給される液体水素が液体水素貯槽10に貯留される。
【0024】
再液化装置30は、液体水素貯槽10の上部に溜まっているボイルオフガスを回収して液化させ、ボイルオフガスが液化された液体水素を液体水素貯槽10(内槽11)に戻す。
【0025】
BOG回収ライン40は、液体水素貯槽10(内槽11)と再液化装置30との間を接続し、内槽11の中の上部に溜まっているボイルオフガスを液体水素貯槽10に回収するために用いられる。
【0026】
BOG回収ライン40は、一端が液体水素貯槽10(内槽11)に接続され、他端がBOG回収ライン41,42に分岐している。BOG回収ライン41,42の先端は、再液化装置30に接続される。
【0027】
BOG回収ライン40の一端と分岐箇所との間には、その間の開閉状態や開度を調整可能な開閉弁40Vが設けられる。
【0028】
BOG回収ライン42には、その開閉状態や開度を調整可能な開閉弁42Vが設けられる。これにより、例えば、BOG回収ライン41のみで再液化装置30にボイルオフガスを回収する場合と、BOG回収ライン41,42の双方で再液化装置30にボイルオフガスを回収する場合とを切り換えることができる。
【0029】
液体水素供給ライン50は、再液化装置30と液体水素貯槽10(内槽11)との間を接続し、再液化装置30でボイルオフガスが再液化されることにより生成される液体水素を液体水素貯槽10(内槽11)に供給するために用いられる。
【0030】
液体水素供給ライン50には、その開閉状態や開度を調整可能な開閉弁50Vが設けられる。
【0031】
このように、本例では、液体水素貯留システム100は、再液化装置30を用いて、液体水素貯槽10(内槽11)のボイルオフガスを再液化し、液体水素として液体水素貯槽10に戻すことができる。そのため、例えば、液体水素貯槽10(内槽11)の内部の圧力上昇に応じたボイルオフガスの大気への放出の機会を抑制し、その結果、エネルギロスを抑制することができる。
【0032】
[再液化装置]
次に、
図2、
図3を参照して、再液化装置30について説明する。
【0033】
<第1例>
図2は、再液化装置30の構成の第1例を概略的に示す図である。
【0034】
図2に示すように、再液化装置30は、液化循環回路31と、BOG回収経路32と、液体水素供給経路33とを含む。
【0035】
液化循環回路31は、BOG回収ライン40を通じて液体水素貯槽10から回収されるボイルオフガスを液化する。液化循環回路31の大部分(圧縮機CPを除く箇所)は、断熱構造を有するコールドボックスCBに覆われている。
【0036】
液化循環回路31は、低圧経路L1と、圧縮機CPと、高圧経路L2と、熱交換器HXと、タービンバイパス経路L3と、膨張タービンEP1,EP2と、オルト・パラ変換器OTCと、バイパス経路L4と、ジュールトムソン弁JTと、貯槽STとを含む。
【0037】
低圧経路L1は、液体水素貯槽10から回収された、極低温のボイルオフガスを含む水素ガスを圧縮機CPに送るための経路である。低圧経路L1の水素ガスは、高圧経路L2の水素ガスに比して温度が常に低い状態にある。低圧経路L1は、その一端が貯槽STに接続され、他端が圧縮機CPの吸入側に接続される。
【0038】
圧縮機CPは、低圧経路L1から吸入される水素ガスを圧縮し、圧縮された水素ガスを高圧経路L2に吐出する。
【0039】
高圧経路L2は、圧縮機CPから吐出された水素ガスが通流する経路である。高圧経路L2の水素ガスは、低圧経路L1の水素ガスに比して温度が常に高い状態にある。高圧経路L2は、その一端が圧縮機CPの吐出側に接続され、他端が貯槽STに接続される。
【0040】
熱交換器HXは、低圧経路L1の水素ガスと、高圧経路L2の水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、高圧経路L2の水素ガスの温度を低下させることができると共に、低圧経路L1の水素ガスの温度を圧縮機CPが吸入可能な温度域まで回復させることができる。
【0041】
熱交換器HXは、複数段の熱交換器を含む。コールドボックスCBの内部の熱交換器の構成数は、再液化装置30ごとの最適設計によって任意に選択されうる。例えば、
図2に示すように、熱交換器HXは、熱交換器HX1~HX6を含む。
【0042】
例えば、低圧経路L1は、上流(貯槽ST側)から下流(圧縮機CP側)に向かって、熱交換器HX6、熱交換器HX5、熱交換器HX4、熱交換器HX3、熱交換器HX2、及び熱交換器HX1の順に通過する。
【0043】
例えば、高圧経路L2は、上流(圧縮機CP側)から下流(貯槽ST側)に向かって、熱交換器HX1、熱交換器HX2、熱交換器HX3、熱交換器HX4、熱交換器HX5、及び熱交換器HX6の順に通過する。
【0044】
例えば、熱交換器HX1によって、圧縮機CPにより圧縮された水素ガスの温度は、約80K(ケルビン)まで低下する。そして、更に、熱交換器HX2~HX6によって、水素ガスの温度が順次低下し、熱交換器HX(熱交換器HX6)の下流の高圧経路L2には、約21K(ケルビン)まで温度が低下した水素ガスが流出する。
【0045】
タービンバイパス経路L3は、高圧経路L2における熱交換器HX2と熱交換器HX3との間の箇所から水素ガスを分岐させ、熱交換器HX5と熱交換器HX6との間の箇所で低圧経路L1に合流させる経路である。タービンバイパス経路L3は、熱交換器HX4を通過する。
【0046】
膨張タービンEP1は、タービンバイパス経路L3における熱交換器HX4よりも上流側に設けられる。膨張タービンEP1は、タービンバイパス経路L3の水素ガスを膨張させることにより、圧力及び温度が低下した水素ガスを下流側に流出させる。これにより、熱交換器HX(熱交換器HX4)は、低温側の冷媒としてタービンバイパス経路L3の水素ガスを利用することができる。そのため、高圧経路L2の水素ガスの温度をより確実に低下させることができる。
【0047】
膨張タービンEP2は、タービンバイパス経路L3における熱交換器HX4よりも下流側に設けられる。膨張タービンEP2は、タービンバイパス経路L3の水素ガスを膨張させることにより、圧力及び温度が低下した水素ガスを下流側に流出させる。これにより、膨張タービンEP2によって温度を低下させた水素ガスを低圧経路L1に還流させて、熱交換器HX(熱交換器HX1~HX5)の低温側の冷媒として寒冷利用することができる。そのため、熱交換器HX(熱交換器HX1~HX6)の低温側(低圧経路L1)で必要な寒冷量を確実に達成することができる。
【0048】
タービンバイパス経路L3には、水素ガスのバイパスの有無やバイパス量を調整可能な開閉弁L3Vが膨張タービンEP1の上流側に設けられる。
【0049】
オルト・パラ変換器OTCは、高圧経路L2における熱交換器HX(熱交換器HX6)の下流に配置され、熱交換器HX(熱交換器HX1~HX6)によって冷却された水素ガスに含まれるオルト水素をパラ水素に変換(転換)させるために用いられる。オルト・パラ変換器OTCにはオルト水素からパラ水素への転換を促進する触媒が内蔵される。触媒は、例えば、鉄系やクロム系の常磁性物質により形成される。これにより、熱交換器HXにより冷却された非常に低温の水素ガスにおけるオルト水素とパラ水素との比率を平衡状態に近づけることができる。そのため、オルト・パラ転換の際の転換熱に伴って生じる、貯槽STや液体水素貯槽10の中での液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0050】
バイパス経路L4は、オルト・パラ変換器OTCの中の水素ガスを低圧経路L1に還流させる経路である。バイパス経路L4は、一端がオルト・パラ変換器OTCに接続され、他端が低圧経路L1における熱交換器HX(熱交換器HX6)の上流側の箇所に接続される。これにより、低圧経路L1の水素ガスのオルト水素とパラ水素の比率を平衡状態に近づけることができる。
【0051】
ジュールトムソン弁JTは、高圧経路L2におけるオルト・パラ変換器OTCの下流に配置され、オルト・パラ変換器OTCから供給される水素ガスを等エンタルピ膨張(断熱膨張)させる。熱交換器HXは、ジュールトムソン弁JTに供給される水素ガスの温度が逆転温度以下になるように構成されている。そのため、ジュールトムソン弁JTにおける等エンタルピ膨張によって温度降下が生じ、水素ガスの少なくとも一部を液化させて、その液化分を再液化の液体水素として貯槽STに戻すことができる。
【0052】
貯槽STには、液体水素が貯留される。また、貯槽ST内の上部には、平衡した水素ガスが溜まっている。
【0053】
BOG回収経路32は、外部から回収される水素ガス(ボイルオフガス)を液化循環回路31の中に回収するために用いられる。
【0054】
BOG回収経路32は、BOG回収経路32A,32Bを含む。
【0055】
BOG回収経路32Aは、BOG回収ライン40,41を通じて回収されるボイルオフガスを液化循環回路31の中に回収するために用いられる。BOG回収経路32Aは、その一端がBOG回収ライン41と接続され、他端が低圧経路L1における熱交換器HX(熱交換器HX6)の上流側の箇所に接続される。これにより、液体水素貯槽10から回収されるボイルオフガスを低圧経路L1に回収することができる。
【0056】
尚、BOG回収経路32Aは、液体水素貯槽10から供給(回収)されるボイルオフガスの温度によっては、熱交換器HX(熱交換器HX1~HX6)の上流側ではなく、熱交換器HX1~HX6のうちの一部の熱交換器の上流側に接続されてもよい。また、BOG回収経路32Aは、液体水素貯槽10から供給(回収)されるボイルオフガスの温度条件の変化に合わせて、熱交換器HX1~HX6との相対的な位置関係において、低圧経路L1にボイルオフガスを回収する箇所を変更可能に構成されてもよい。
【0057】
BOG回収経路32Bは、BOG回収ライン40,42を通じて回収されるボイルオフガスを液化循環回路31の中に回収するために用いられる。BOG回収経路32Bは、その一端がBOG回収ライン42と接続され、他端が低圧経路L1における熱交換器HX(熱交換器HX1)の下流側の箇所と接続される。これにより、液体水素貯槽10から回収されるボイルオフガスを低圧経路L1に回収することができる。
【0058】
また、BOG回収経路32Bは、熱交換器HX1を通過する。これにより、熱交換器HX(熱交換器HX1)は、液体水素貯槽10から回収される極低温のボイルオフガスを低温側の冷媒として利用することができる。そのため、例えば、通常用いられている液体窒素等の外部からの補助冷媒を導入することなく、高圧経路L2の水素ガスの温度を確実に低下させることができる。また、熱交換器HX1を通過させることによって、ボイルオフガスの温度を上昇させ、圧縮機CPに吸入可能な温度域まで回復させることができる。そのため、例えば、圧縮機CPの吸入側に外部から常温の水素ガスを導入する必要がなくなる。
【0059】
BOG回収経路32Bには、BOG回収経路32Bの開閉状態や開度を調整可能な開閉弁32BVが設けられる。
【0060】
尚、熱交換器HX1には、例えば、液体窒素等の他の補助冷媒が更に導入されてもよい。
【0061】
液体水素供給経路33は、貯槽STの液体水素を外部に供給するために用いられる。液体水素供給経路33は、その一端が貯槽STに接続され、他端が液体水素供給ライン50に接続される。これにより、液化循環回路31によってボイルオフガスが再液化された液体水素を液体水素貯槽10に戻すことができる。
【0062】
このように、再液化装置30は、外部から回収される極低温のボイルオフガスを熱交換器HX1の補助冷媒として利用することができる。これにより、液体窒素等の専用の補助冷媒の使用量を減らしたり、その使用自体を止めたりすることができる。そのため、専用の補助冷媒を生成するためのエネルギを低減し、ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費を低減させることができる。
【0063】
<第2例>
図3は、再液化装置30の構成の第2例を概略的に示す図である。
【0064】
以下、上述の第1例と同じ或いは対応する構成には同一の符号を付すと共に、上述の第1例と異なる部分を中心に説明する。
【0065】
図3に示すように、再液化装置30は、上述の第1例と同様、液化循環回路31と、BOG回収経路32と、液体水素供給経路33とを含む。
【0066】
液化循環回路31は、上述の第1例と同様、低圧経路L1と、圧縮機CPと、高圧経路L2と、熱交換器HXと、タービンバイパス経路L3と、膨張タービンEP1,EP2と、オルト・パラ変換器OTCと、バイパス経路L4と、ジュールトムソン弁JTと、貯槽STとを含む。また、液化循環回路31は、上述の第1例と異なり、超臨界膨張タービンSCを含む。
【0067】
熱交換器HXは、上述の第1例と異なり、熱交換器HX1~HX6に加えて、熱交換器HX7を含む
【0068】
低圧経路L1は、上流(貯槽ST側)から下流(圧縮機CP側)に向かって、熱交換器HX7、熱交換器HX6、熱交換器HX5、熱交換器HX4、熱交換器HX3、熱交換器HX2、及び熱交換器HX1の順に通過する。
【0069】
高圧経路L2は、上流(圧縮機CP側)から下流(貯槽ST側)に向かって、熱交換器HX1、熱交換器HX2、熱交換器HX3、熱交換器HX4、熱交換器HX5、熱交換器HX6、及び熱交換器HX7の順に通過する。
【0070】
超臨界膨張タービンSCは、高圧経路L2における熱交換器HX6と熱交換器HX7との間に設けられ、熱交換器HX6を通過した水素ガスを断熱膨張させることで更に温度を低下させ、熱交換器HX7に供給する。
【0071】
このように、本例では、再液化装置30は、超臨界膨張タービンSCを用いて、高圧経路L2の水素ガスを更に冷却することができる。そのため、水素ガス(ボイルオフガス)の液化効率を向上させることができる。
【0072】
[液体水素貯留システムの適用例]
次に、
図4を参照して、液体水素貯留システム100の適用例について説明する。
【0073】
図4は、液体水素貯留システム100の適用例を示す図である。具体的には、
図4は、水素ガス充填システム1の一例を示す図である。
【0074】
図4に示すように、水素ガス充填システム1は、液体水素貯留システム100と、液体水素気化設備200と、水素ガス圧縮設備300と、高圧水素ガス貯蔵設備400と、ディスペンサ500とを含む。
【0075】
液体水素貯留システム100は、ローリRLにより運び込まれる液体水素を、液体水素供給ライン20を通じて液体水素貯槽10に受け入れて、貯留する。
【0076】
液体水素気化設備200は、例えば、精留塔を中心に構成され、液体水素貯槽10から供給される液体水素を気化させて水素ガスを生成する。
【0077】
水素ガス圧縮設備300は、液体水素気化設備200から供給される水素ガスを圧縮する。
【0078】
水素ガス圧縮設備300は、低圧水素ガス貯蔵タンク310と、圧縮機320とを含む。
【0079】
低圧水素ガス貯蔵タンク310は、液体水素気化設備200から供給される、相対的に低い圧力の水素ガスを貯蔵する。
【0080】
圧縮機320は、低圧水素ガス貯蔵タンク310から供給される水素ガスを圧縮し、相対的に高い圧力に昇圧された水素ガスを生成する。
【0081】
水素ガス圧縮設備300(圧縮機320)で生成される高圧の水素ガスは、高圧水素ガス貯蔵設備400及びディスペンサ500の少なくとも一方に供給される。
【0082】
高圧水素ガス貯蔵設備400は、水素ガス圧縮設備300から供給される高圧の水素ガスを貯蔵すると共に、ディスペンサ500に高圧の水素ガスを供給する。例えば、高圧水素ガス貯蔵設備400は、非常に高い耐圧性能を有し、高圧の水素ガスを貯蔵可能な複数の水素ガス貯蔵タンクを含む。
【0083】
ディスペンサ500は、水素ガス圧縮設備300及び高圧水素ガス貯蔵設備400の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを車両VCLの水素タンクTNKに充填する。車両VCLは、例えば、水素ガスを燃料として発電可能な燃料電池を搭載する燃料電池車である。
【0084】
ディスペンサ500は、プレクーラ510を含む。
【0085】
プレクーラ510は、水素ガス圧縮設備300及び高圧水素ガス貯蔵設備400の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを、水素タンクTNKへの充填前に冷却する。これにより、加圧によって充填される際の水素タンクに充填される水素ガスの温度の上昇によって、水素タンクTNKの温度が所定の基準温度(例えば、85℃)超えてしまうような事態を抑制することができる。
【0086】
プレクーラ510は、冷却部511と、冷凍機512とを含む。
【0087】
冷却部511は、水素ガス圧縮設備300及び高圧水素ガス貯蔵設備400の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを冷却する。
【0088】
冷凍機512は、冷却部511に水素ガスを冷却するための冷熱エネルギを供給する。
【0089】
尚、液体水素気化設備200の水素ガスをディスペンサ500にバイパスさせる経路を設けて、ディスペンサ500から水素タンクTNKに充填される水素ガスに対して、液体水素気化設備200の水素ガスが直接混合されてもよい。これにより、液体水素気化設備200の極低温の水素ガスによって、ディスペンサ500から水素タンクTNKに充填される水素ガスの温度を低下させることができる。この場合、プレクーラ510は省略されてもよい。
【0090】
このように、液体水素貯留システム100を水素ガス充填システム1に適用することができる。
【0091】
尚、液体水素貯留システム100は、水素ガス充填システム1以外のシステムや設備等に適用されてもよい。例えば、液体水素貯留システム100は、他の液体水素貯槽との間で液体水素を移送するための液体水素移送システムに適用されてもよい。他の液体水素貯槽は、例えば、同じ液体水素の貯留施設に設置される液体水素貯槽である。また、他の液体水素貯槽は、液体水素貯留システム100が設置される地上の施設に隣接する港に接岸する船に搭載される液体水素貯槽であってもよい。
【0092】
[作用]
次に、本実施形態に係る液化装置の作用について説明する。
【0093】
本実施形態では、液化装置は、第1の経路と、圧縮部と、第2の経路と、複数段の熱交換部と、液化部と、第3の経路と、を備える。液化装置は、例えば、上述の再液化装置30である。第1の経路は、例えば、上述の低圧経路L1である。圧縮部は、例えば、上述の圧縮機CPである。第2の経路は、例えば、上述の高圧経路L2である。複数段の熱交換部は、例えば、上述の熱交換器HX(熱交換器HX1~HX6或いは熱交換器HX1~HX7)である。液化部は、例えば、上述のジュールトムソン弁JTである。第3の経路は、例えば、BOG回収経路32Bである。具体的には、第1の経路は、液体水素を貯留する貯留装置から供給されるボイルオフガスが通流する。貯留装置は、例えば、上述の液体水素貯槽10である。また、圧縮部は、第1の経路のボイルオフガスを圧縮する。また、第2の経路は、圧縮部から流出する高温のボイルオフガスが通流する。また、複数段の熱交換部は、第1の経路の低温側のボイルオフガスと第2の経路の高温側のボイルオフガスとの間で熱交換を行う。また、液化部は、複数段の熱交換部を通じて温度が低下した第2の経路のボイルオフガスの少なくとも一部を膨張により液化させる。そして、第3の経路は、第1の経路とは別に設けられ、複数段の熱交換部のうちの最も高温側の第1の熱交換部に対して、貯留装置から供給されるボイルオフガスを低温側の冷媒として通過させる。第1の熱交換部は、例えば、上述の熱交換器HX1である。
【0094】
これにより、液化装置は、貯留装置から供給される極低温のボイルオフガスを第1の熱交換部の低温側の冷媒として利用することができる。そのため、例えば、外部から補助冷媒を導入する量を減らしたり、外部からの補助冷媒の導入自体を止めたりすることができる。よって、液化装置は、ボイルオフガスの再液化の際のエネルギ消費を低減させることができる。
【0095】
また、本実施形態では、第3の経路は、第1の熱交換部と圧縮部との間で、第1の経路に接続されてもよい。
【0096】
これにより、第1の熱交換部を通過することによって、圧縮部に導入可能な温度域までボイルオフガスの温度を回復させて、圧縮部に導入することができる。そのため、例えば、常温の水素ガスを外部から導入する必要がなくなる。
【0097】
また、本実施形態では、液化装置は、第4の経路を備えてもよい。第4の経路は、例えば、上述のBOG回収経路32Aである。具体的には、第4の経路は、複数段の熱交換部のうちの少なくとも一部の熱交換部の上流側で貯留装置から供給されるボイルオフガスを第1の経路に流入させる。
【0098】
これにより、液化装置は、第3の経路を通じて第1の経路の下流側で回収するボイルオフガスとは別に、貯留装置から回収されるボイルオフガスを第1の経路の上流側に回収することができる。
【0099】
また、本実施形態では、液化システムは、上述の液化装置と、液化装置にボイルオフガスを供給し、液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる貯留装置と、を備えてもよい。液化システムは、例えば、上述の液体水素貯留システム100である。
【0100】
また、本実施形態では、水素ガス充填システムは、上述の液化装置と、貯留装置と、生成装置と、充填装置と、を備えてもよい。水素ガス充填システムは、例えば、上述の水素ガス充填システム1である。生成装置は、例えば、上述の液体水素気化設備200である。充填装置は、例えば、上述のディスペンサ500である。具体的には、貯留装置は、液化装置にボイルオフガスを供給し、液化装置からボイルオフガスが液化された液体水素を受け入れる。また、生成装置は、貯留装置から供給される液体水素から水素ガスを生成する。そして、充填装置は、生成装置により生成される水素ガスを被充填対象に充填する。被充填対象は、車両VCLの水素タンクTNKである。
【0101】
これにより、液化システムや水素ガス充填システムは、液化装置を用いて、貯留装置のボイルオフガスを再液化し、再液化された液体水素を貯留装置に戻すことができる。そのため、ボイルオフガスによって貯留装置の圧力が上昇し、ボイルオフガスを大気へ放出するような事態を抑制しエネルギロスを抑制することができる。
【0102】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 水素ガス充填システム
10 液体水素貯槽
11 内槽
12 外槽
20 液体水素供給ライン
21 主供給ライン
21V 開閉弁
22 予冷ライン
22V 開閉弁
30 再液化装置
31 液化循環回路
32 BOG回収経路
32A BOG回収経路
32B BOG回収経路
32BV 開閉弁
33 液体水素供給経路
40 BOG回収ライン
40V 開閉弁
41 BOG回収ライン
42 BOG回収ライン
42V 開閉弁
50 液体水素供給ライン
50V 開閉弁
100 液体水素貯留システム
200 液体水素気化設備
300 水素ガス圧縮設備
310 低圧水素ガス貯蔵タンク
320 圧縮機
400 高圧水素ガス貯蔵設備
500 ディスペンサ
510 プレクーラ
511 冷却部
512 冷凍機
CB コールドボックス
CP 圧縮機
EP1,EP2 膨張タービン
HX 熱交換器
HX1~HX7 熱交換器
JT ジュールトムソン弁
L1 低圧経路
L2 高圧経路
L3 タービンバイパス経路
L3V 開閉弁
L4 バイパス経路
OTC オルト・パラ変換器
RL ローリ
SC 超臨界膨張タービン
ST 貯槽
TNK 水素タンク
VCL 車両