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▶ 山家 孝志の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021528
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】爪楊枝およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/24 20060101AFI20240208BHJP
   A61C 15/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B27M3/24 Z
A61C15/02 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124411
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】721002163
【氏名又は名称】山家 孝志
(72)【発明者】
【氏名】山家孝志
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250AA17
2B250FA25
(57)【要約】
【課題】歯間に入りやすく、持ちやすく、折れにくく、安価な爪楊枝を提供する
【解決手段】
爪楊枝1は棒状の持ち手部2とそれに連続する先端領域3とからなり、先端領域3は爪楊枝1の長手方向の中心軸に対して対称な2つの扁平面31とその側面32からなり、持ち手部2と反対側の先端部33と、持ち手部側の付け根部34がある。先端領域3は、予め加工された扁平面をさらに圧縮加工して形成され、前記持ち手部の圧縮加工されていない領域よりも密度が高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に持ち手部を備え、他端に先端部を備えた、棒状体よりなる爪楊枝であって、前記先端部を含み前記持ち手部に連続する部分を先端領域とするとき、前記先端領域は、前記先端部から前記持ち手部の方向に、前記先端部を起点として幅が徐々に大きくなり、かつ厚みが徐々に大きくなる所定領域を備え、前記所定領域のいずれにおいても、前記厚みが前記幅よりも小さく、かつ、前記持ち手部よりも密度が高いことを特徴とする爪楊枝。
【請求項2】
前記先端領域は圧縮加工されており、圧縮加工されていない領域に対し実質的な圧縮率から計算される密度の増加が、10%以上50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の爪楊枝
【請求項3】
前記持ち手部は、前記先端領域の厚み方向と直交する扁平面か、または幅方向と直交する扁平面の少なくともいずれか一方または両方を1以上有することを特徴とする請求項1に記載の爪楊枝。
【請求項4】
一端に持ち手部を備え、他端に先端部を備えた、棒状体よりなる爪楊枝であって、前記先端部を含み前記持ち手部に連続する部分を先端領域とするとき、前記先端領域が、前記先端部から前記持ち手部の方向に、前記先端部を起点として幅が徐々に大きくなり、かつ厚みが徐々に大きくなる所定領域を備え、前記所定領域の長手方向のいずれにおいても、厚みが幅よりも小さくなるように、前記先端領域を圧縮加工することを特徴とする爪楊枝の製造方法。
【請求項5】
前記先端領域は予め扁平面となるよう加工した後に、さらに圧縮加工することを特徴とする請求項4に記載の爪楊枝の製造方法。
【請求項6】
前記先端領域の実質的な圧縮率は10%以上50%以下であることを特徴とする、請求項4に記載の爪楊枝の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯と歯のすき間を掃除する爪楊枝に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に歯間清掃用の爪楊枝は、持ち手となる棒状の円柱部と、それに連続して先細りとなる先端領域とからなるものが多い。ここで先端領域の先端部は尖っているというイメージがあるが、実際は直径0.5mmほどの平坦部があり、言い換えると円錐状ではなく円錐台的な形状をしているものが多い。その理由の一つとしては、針のように尖らせすぎると先端部が容易に歯ぐきに刺さり歯ぐきを傷つけてしまう虞があり、それを防止するためであることが考えられる。
【0003】
また、爪楊枝の外形は棒状の円柱部に対し先端領域で先細りとなるが、先端部に向かって直線的に小さくなるのではなく、例えば弾丸の先端部の様に先端部に近づくほど急激に小さくなるため、歯間に入りやすい細い部分は相対的に短くなる。つまり先端領域は奥行のある歯間の奥には入りにくいものとなってしまう。このような形状が多く採用される理由の一つとしては、爪楊枝の長手方向の軸に直交する断面は円であるため、断面係数はπ×直径の三乗÷32であり、直径の3乗に依存するため、できるだけ直径の小さい部分を短くして、折れにくくするためであることが考えられる。
【0004】
このように、歯間の小さなすき間に対し、存外に先端領域が太い爪楊枝に満足できず、先端部が円錐台状の市販の爪楊枝を斜めに折り、その破断面を扁平として歯間に差し込みやすくする例も散見されるが、木目がちょうどよく斜めに折れる個体の確率は高くないため経済的ではない上に、折ってできる扁平面は1面だけであり、その反対面はもともとの円断面のままなので、十分に目的を満足する手段とは言えない。
【0005】
このような問題を解消するため、先端領域を切削して扁平化しテーパー形状とする技術も知られている。(例えば、特許文献1の第4ページ3行目から10行目、第4図、第5図、第6図)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】公開実用昭和51-7168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、歯と歯のすき間に入りやすく、もちやすく、折れにくく、精度の高い加工装置や方法を必要としない安価な爪楊枝を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の爪楊枝には以下の問題がある。
第一は、材料の異方性と扁平化による強度の低下である。本発明者の検討によれば、歯間に入り込みやすい扁平面間の距離である厚みは、基本的に0.5mm以下で望ましくは0.3mm以下、より望ましくは0.1mm程度であるが、この厚みは木材や発泡プラスチックなど気泡を含む素材の気泡のサイズに近くなるため、複数の大きな気泡が厚み方向に連なってしまうと強度が低下する虞がある。
特に木材においては年輪的な木目や細胞繊維の方向が爪楊枝の長手方向に対し斜めに切り出されると、強度の低下が生じる。これは断面が円である爪楊枝の断面係数は周方向の方向性がないのに対し、扁平形状の断面係数は、厚みの二乗×幅÷6であり、木質による強度が低い方向が厚み方向になるとその弱さの影響が二乗として強く表れてしまうためである。
【0009】
第2は、本発明者の検討によれば、例えば先端部の厚みを0.1mm程度に仕上げるには、精密な切断または切削加工の精度が必要になる。例えば、厚みの狙いが0.1mmで、加工精度が0.1mmの場合、先端部の厚みはゼロのものもできてしまうため薄すぎて強度的に弱く、尖りすぎているため状況によっては歯ぐきを傷つけやすくなってしまう虞がある。それを防止するために精度の高い加工設備や加工条件を用いると加工費用が高くなる。
【0010】
本発明は、前記の課題解決のため、形状的な因子だけでなく材料の加工方法や条件により機能を確保しつつ、精度の向上や強度の向上を含め検討した結果なされたものである。
【0011】
一端に持ち手部を備え、他端に先端部を備えた、棒状体よりなる爪楊枝であって、前記先端部を含み前記持ち手部に連続する部分を先端領域とするとき、前記先端領域は、前記先端部から前記持ち手部の方向に、前記先端部を起点として幅が徐々に大きくなり、かつ厚みが徐々に大きくなる所定領域を備え、前記所定領域のいずれにおいても、前記厚みが前記幅よりも小さく、かつ、前記持ち手部よりも密度が高いことを特徴とする爪楊枝が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、前記先端領域は圧縮加工されており、圧縮加工されていない領域に対し実質的な圧縮率から計算される密度の増加が、10%以上50%以下であることを特徴とする爪楊枝が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、前記持ち手部は、前記先端領域の厚み方向と直交する扁平面か、または幅方向と直交する扁平面の少なくともいずれか一方または両方を1以上有することを特徴とする爪楊枝が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、棒状の持ち手部と、先端部を含み前記持ち手部に連続する先端領域とを有する爪楊枝の製造方法であって、前記先端領域が、前記先端部から前記持ち手部の方向に向け、前記先端部の位置から幅が徐々に大きくなり、かつ厚みが徐々に大きくなるように構成され、前記先端領域の長手方向の1以上の位置において、厚みが幅よりも小さくなるように前記先端領域の圧縮を行うことを特徴とする爪楊枝の製造方法が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、前記先端領域は予め扁平面となるよう加工した後に、さらに圧縮加工することを特徴とする請求項4に記載の爪楊枝の製造方法が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、前記先端領域の実質的な圧縮率は10%以上50%以下とすることを特徴とする、爪楊枝の製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、歯と歯のすき間に入りやすい爪楊枝を提供することができる。
また、本発明によれば、持ちやすい爪楊枝を提供することができる。
また、本発明によれば、折れにくい爪楊枝を提供することができる。
また、本発明によれば、精度の高い加工装置や方法を必要としない安価な爪楊枝を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る爪楊枝の一例の正面図である
図2】本発明に係る爪楊枝の一例の上面図である
図3】従来の爪楊枝の一例の正面図である(上面図は正面図と同じなので省略する)
図4】実施例1における設定圧縮率α0と実質的な圧縮率α1の関係を示す図である
図5】実施例2における実質的な圧縮率α1と吸水後の形状保持率α2の関係を示す図である
図6】実施の形態に係る爪楊枝の正面図である
図7】実施の形態に係る爪楊枝の上面図である
図8】実施の形態に係る爪楊枝の正面図である
図9】実施の形態に係る爪楊枝の上面図である
図10】爪楊枝1の長手方向の中心軸を含む断面と第一の点35と第二の点36を結ぶ直線を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に具体的な図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1図2は本発明に係る爪楊枝の一例を示す図で、図1は正面図、図2は上面図である。
【0020】
図1図2に示す爪楊枝1は棒状体であり、多孔質な材料である例えば白樺材のような木材や、発泡ポリエチレンなどの樹脂を公知の方法で製造したものからなり、円柱状の持ち手部2とそれに連続する先端領域3を備える。先端領域3は爪楊枝1の長手方向の中心軸を含む面に対して面対称に位置する2つの扁平面31と、この2つの扁平面31を繋ぐ2つの側面32、先端部33、持ち手部2に連続する持ち手部側の付け根部34により、構成される。
【0021】
爪楊枝1の長手方向の中心軸と直交する断面における2つの扁平面31が対面する距離を厚みとし、前記断面において前記扁平面31と直交する2つの側面32が対面する距離を幅としたとき、持ち手部2は、円柱形状であれば、歯間を清掃する際に折れにくい等の強度上の理由から、直径1.8mm以上が望ましく、材料費や梱包サイズの低減などの理由から2.8mm以下が好ましく、2.3mmがより好ましい。先端領域3の厚みはより薄い方が歯間に入りやすいという寸法的な理由から、先端部33で0.2mm以上0.6mm以下が好ましく、0.4mmがより好ましいが、持ち手部側の付け根部34に向かって徐々に厚くなり、持ち手部側の付け根部34での厚みは、折れにくい等の強度上の理由により、0.5mm以上から1.5mm以下が好ましく、1.0mmがより好ましい。なお、持ち手部2は、柱状であればいずれの形状でもよく、前記のように円柱状としたときの直径が、該柱状体の最大径となるようにするのがよい。
【0022】
また、先端領域3の幅は先端部33を起点として、持ち手部側の付け根部34に向けて徐々に大きくなる所定領域を備える。所定領域の最大の幅は、折れにくい等の強度上の理由から、好ましくは2.0mm以上3.0mm以下、より好ましくは2.5mmとし、所定領域から付け根部34までの間は、幅が徐々に小さくなり持ち手部側の付け根部34で持ち手部2とつながる。また、先端領域3において爪楊枝1の軸方向と直交する任意の断面の厚みが幅よりも小さいことにより、歯間の小さなすき間に容易に挿入することが可能である。
【0023】
また、前記の断面は矩形断面であるが、厚み÷幅の値は0.05より小さいと矩形断面の断面係数における「厚みの二乗」部分の計算値が小さくなりすぎて曲げ強度の低下が生じ望ましくないため、0.05以上が望ましく、より望ましくは0.1以上である。また、厚み÷幅の値は、厚みは幅よりも小さい必要があるため1より小さく、歯間に入りやすい偏平面としての厚み÷幅の値としては0.8以下でより望ましくは0.5以下である。
【0024】
以下に、本発明の爪楊枝1の先端領域3の形成方法について木材を用いる場合の製造方法について説明する。先端領域3は、図3に示すような例えば市販されている爪楊枝1を素材として切削加工と圧縮加工により部分的に密度を高めることで作製される。素材とした爪楊枝1の持ち手部2は例えば直径2.3mm程度の円柱状であり、持ち手部2側の付け根部34と連続する先端領域3は弾丸の先端部のように先端部33に近づくほど急激に直径が小さくなり、全体として回転体形状である。
先端領域3の先端部33は例えば直径0.5mm程度の平坦な円であり持ち手部側の付け根部34は持ち手部2との境界であり軸方向と直交する断面は例えば直径2.3mmの円であり、先端部33と持ち手部側の付け根部34の間隔が先端領域3の軸方向の長さであり、約10mmから20mmである。
【0025】
次に、図10に示すように、爪楊枝1の長手方向の中心軸を含む断面の外形線上において、前記中心軸に対し同一方向にあり、先端部33からの距離がXmmである第1の点35と、先端部33からの距離がYmmである第2の点36を含み、前記断面と直交する平面に沿って爪楊枝1の外形を切り取って扁平面を形成する。同様に前記中心軸と対称となる位置にも扁平面を形成する。その際のXは先端領域3の厚みを小さく加工するため、好ましくは0mm以上5mm以下、より好ましくは0mm以上3mm以下、Yは付け根部34の圧縮比を適正に保ち強度を確保するため、好ましくは10mm以上22mm以下、より好ましくは13mm以上20mm以下とする。
【0026】
これらの扁平面はグラインダーやカンナなどの公知の切削装置や工具で削る。
その際、第1の点35と第2の点36とが水平面上となるように爪楊枝1を斜めに保持し、削るべき部分だけが上部に露出するような土台を用いれば精度よく簡便に加工することができる。
【0027】
これら2つの面対称な扁平面の対称面が水平となるように保持し、先端部33から付け根部34の曲げ強度を確保するため、好ましくは先端部33から付け根部34に向かって10mm以上22mm以下、より好ましくは13mm以上20mm以下の範囲の上下に厚さ10mmの鉄板を置き、例えばハンドプレスにて鉛直方向から先端領域3を圧縮し密度を高める。なお、上下の鉄板の間には、先端部33を所望の厚みに仕上げるため、好ましくは厚さが0.1mm以上0.6mm以下、より好ましくは0.3mm以上0.5mm以下の鉄の薄板をストッパーとして置き、この薄板の厚みを設定圧縮高さT1とする。以上より先端部33から好ましくは10mm以上22mm以下、より好ましくは13mm以上20mm以下の位置が持ち手部側の付け根部34となる。
【0028】
ここで、厚みがT0の爪楊枝を設定圧縮高さT1まで圧縮加工し、圧縮荷重を除去し加工部がスプリングバックしたのちの加工部の厚みをT2とし、圧縮装置側の動きを表す設定圧縮率をα0とすると、α0=(T0-T1)÷T0×100である。また、爪楊枝の実寸の変化を表す実質的な圧縮率をα1とすると、α1=(T0-T2)÷T0×100である。
例えば、圧縮加工前の先端部33の厚さ0.61mm、持ち手部側の付け根部34の厚さが1.62mmの市販されている爪楊枝を、上記のように圧縮加工した後、先端部33の厚さ0.38mm、持ち手部側の付け根部34の厚さ0.92mmとなった場合の実質的な圧縮率α1は先端部33で37.7%、持ち手部側の付け根部34では43.2%となる。
【0029】
なお、厚さがT0からT2に変化したとき、ポアソン比を無視し体積は厚みに比例するとみなせば、密度は質量(W)÷体積(V)であり、体積(V)の変化率はT2/T0×100(%)であり、α1の式からT2/T0×100=100-α1であるが、密度の変化率はその逆数であるため、100/(T2/T0)=100×100/(100-α1)が密度の変化率(%)であり、圧縮加工による密度の変化は実質的な圧縮率で示すことができる。
【0030】
歯間のすき間である歯と歯の間隔は0から0.5mm程度であり、その高さは10mm程度、奥行きは数mm程度であるので、本発明の爪楊枝は先端領域3が扁平面でありその厚みが幅よりも小さいため歯間に入りやすく、しかも幅が大きいため歯間との接触面積が大きく取れるため効率よく歯間の清掃ができる。
【0031】
強度的には先端領域3の任意の箇所の断面の厚みと同径である円断面と比べると幅方向の寸法が大きいため断面係数が高く折れにくい。また、木目など強度的に弱い方向が爪楊枝の軸芯に対し斜めの角度であったとしても、単に切削したものと比較して、圧縮率の分だけ軸芯に対する木目の角度が小さくできるため、材料としての強度を高めることができる。
【0032】
また、実際の歯間は単純な平行板状ではなく非平行でかつ凹凸があることにより特に爪楊枝1の先端領域3は、線状あるいは点状など局部的に歯に当たる場合が多い。これに対し多孔質である木材を用いれば、そこで発生する高い面圧により接触部は局部的な大変形が可能であり、先端部33は歯間の形に倣って変形しながら歯間に挿入でき、手ごたえに応じて前後動や上下動をさせることができるため、より広範囲に、細部までの清掃が可能となる。
【0033】
また、上述した市販品の場合は、圧縮加工後の先端部33の厚みは約0.38mmと小さいが、圧縮加工前の厚みは0.61mmと圧縮加工後に対し60%ほど大きく、JISの加工中級公差である±0.1mm程度のバラツキが生じたとしても比率的に小さく、圧縮加工前に爪楊枝1の先端部33の外形をカンナ等で切削加工する際の厚みの管理がしやすい。
また、圧縮加工時に特に重要な管理項目は設定圧縮高さT1であるが、上述のような手加工の場合、被圧縮加工物と並列に置くスペーサや、直列に挟み込むスペーサなどは、ほぼ剛体とみなせる鉄板などを使用することで繰り返し作業してもほぼ剛体である鉄板の厚みは変わらないため、設定圧縮高さを容易に管理でき、成形機においても同様なスペーサまたは数値制御により容易に管理できる。
【0034】
次に図6図7に、先端領域3の厚み方向と直交する扁平面41を持ち手部2に形成する他の実施の形態を示す。扁平面41は扁平面31と同様に圧縮して加工される。この扁平面41を把持すると、把持した指が面する平面の方向と先端領域3の扁平面31の方向とが一致するため、爪楊枝1を歯間に接近させるときに先端領域3にある扁平面31の方向が手感としてわかり、目視確認を経なくとも安全に歯間へ挿入することができ便利で快適に使用することができる。
【0035】
また図8図9に、先端領域3の厚み方向と直交し先端領域3に近い扁平面41aと、先端領域3から遠い扁平面41bを持ち手部2に形成する他の実施の形態を示す。扁平面41aは先端領域3に近いため、精度よくきめ細かい清掃作業が可能なことと、作用点となる歯間との距離が短いためモーメントが小さく、先端部33を動かす際に力をかけやすいなどのメリットがある。
【0036】
また、この実施の形態では同時に、先端領域3の幅方向と直交する扁平面42を持ち手部2に形成している。このように、扁平面41aや41bと直角な位置にある扁平面42があることにより、持ち手部2を持つときの手首の角度の自由度が高まることでより安定して歯間の清掃が可能である
【実施例0037】
次に、本発明の実施例を、図を参照して、以下に説明する。
(実施例1)
【0038】
図3に示すように先端部33の断面が直径0.5mmの円であり、付け根部34の断面が直径2.3mmの円であり、先端領域3の軸方向の長さは15mmである市販されている爪楊枝1を、図10に示すように長手方向の中心軸を含む断面の外形線上において、先端部33からの距離Xが0mmである第一の点35と、先端部33からの距離Yが12mmである第2の点36を含み前記断面と直交する平面に沿って爪楊枝1の外形を切り取って扁平面31を形成した。同様に前記中心軸と対称となる位置にも扁平面31を形成した。
【0039】
これらの扁平面31はカンナで切削加工した。
その際、第1の点35と第2の点36とが水平面上となるように爪楊枝1を斜めに保持し、削るべき部分だけが上部に露出するような土台を用いたことにより、精度よく簡便に加工することができた。
【0040】
これら2つの面対称な扁平面31の中心に位置する対称面が水平となるように保持し、先端部33から15mmの範囲の上下に厚さ10mmの鉄板を置き、ハンドプレスにて鉛直方向から先端領域3を圧縮し密度を高めた。なお、上下の鉄板の間には厚さ0.31mmの鉄の薄板をストッパーとして置き、この厚みを設定圧縮高さT1とし、先端部33から15mmの位置が持ち手部側の付け根部34とした。
【0041】
先端領域3の厚みは先端部33で0.38mmであり、持ち手部側の付け根部34に向かって徐々に厚くなり、持ち手部側の付け根部34での厚みは0.92mmであった。
【0042】
また、先端領域3の幅は先端部33から持ち手部側の付け根部34に向けて徐々に大きくなり最大の幅は2.5mmとなり、その後は幅を徐々に小さくして持ち手部側の付け根部34で持ち手部2とつなげた。
【0043】
圧縮加工前の先端部33の厚さは0.61mmであり、持ち手部側の付け根部34の厚さは1.62mmであり、圧縮加工後の先端部33の厚さは0.38mmであり、持ち手部側の付け根部34の厚さは0.92mmであった。
本実施例での実質的な圧縮率α1は先端部33で37.7%、持ち手部側の付け根部34では43.2%であった。
【0044】
歯間のすき間は0.5mm程度、その高さは10mm程度、奥行きは数mm程度であったので、本実施例の爪楊枝1は先端領域3が扁平面であり歯間に入りやすく、しかも歯間との接触面積が大きく取れるため効率よく歯間の清掃ができた。
【0045】
強度的には先端領域3の任意の箇所の断面の厚みと同径である円断面と比べると幅方向が大きいため断面係数が高く折れにくかった。
【0046】
なお、実際の歯間は単純な平行板状ではなく非平行でかつ凹凸があり、爪楊枝1の先端領域3は、線状あるいは点状など局部的に歯に当たる場合が多いが、本実施例で用いた木材は、多孔質素材であることから、そこで発生する高い面圧により接触部は局部的に大きく変形し、先端部33は歯間の形に倣って変形しながら歯間に挿入でき、手ごたえに応じて前後動や上下動をさせることができ、より広範囲に、細部までの清掃が可能となった。
【0047】
また、圧縮加工後の先端部33の厚みは約0.38mmと小さいが、圧縮加工前の厚みは0.61mmと圧縮加工後に対し60%ほど大きく、±0.1mm程度のバラツキは許容できるため圧縮加工前に爪楊枝1の先端部33の外形をカンナで切削加工する際の高さの管理がしやすかった。
圧縮加工時に特に重要な管理項目は設定圧縮高さであるが、本実施例のような手加工の場合、被圧縮加工物と並列に置くスペーサはほぼ剛体である鉄板を使用することで繰り返し作業してもほぼ剛体である鉄板の厚みは変わらないため、設定圧縮高さを容易に管理することができた。
【0048】
(実施例2)
実施例2として、実施例1の爪楊枝の作製に際して、設定圧縮率α0を変えたときの実質的な圧縮率α1の変化を測定した結果を図4に示す。概ねα1÷α0=0.73であることがわかる。
【0049】
前述したα0とα1の定義式と、上記の関係式から、最終寸法であるT2は、T2=0.27×T0+0.73×T1が導かれる。これは最終寸法であるT2に対する初期寸法であるT0の影響は27%しかないことを示しており、言い換えると設定圧縮高さT1が同一の場合、初期寸法であるT0が0.1mm変化したときの最終寸法T2の変化は0.027mmしかないことを示している。つまりスペーサで決まる設定圧縮高さT1のバラツキは小さくできることを踏まえると、圧縮加工前の初期寸法T0のバラツキが大きくても、最終的な製品寸法T2のバラツキは小さくなることになり、工程能力を高めることができ管理が容易であることが実証された。
【0050】
(実施例3)
次に実施例3として、実施例1と同様に作製した爪楊枝を35℃の水に入れ60秒後に吸水膨張したのちの厚みT3を測定し、(T0-T3)÷(T0-T2)×100を吸水後の形状保持率α2とした。吸水後の形状保持率α2は吸水膨張が生じなければ100%であり、0%の場合は圧縮加工前の寸法に逆戻りしていることを示しており、大きい方が望ましい指標である。実質的な圧縮率α1に対する吸水後の形状保持率α2の測定結果を図5に示す。
【0051】
概ねα1が50%を超えると吸水後の形状保持率α2が0%となるものの頻度が高まるため、α1は50%以下とすることが望ましく、より望ましくは45%以下であるが、本発明はこれを満たしていることが確認された。
またα1が10%より小さいと、圧縮加工による強度アップや、最終的な製品寸法の工程能力を高める効果が小さくなるため、α1は10%以上が望ましく、より望ましくは15%以上であるが、本発明はこれを満たしていることが確認された。
【0052】
なお、本実施例の方法で作製した爪楊枝を、より高温の水により長時間浸漬し続けると最終的には吸水後の形状保持率α2はゼロとなり、つまりは圧縮加工前の形状に戻る。これにより、実質的な圧縮加工率α1と圧縮加工前の形状は加工の後からでも推定することが可能である。
【0053】
以上に説明したように、本発明によれば、歯間に入りやすく持ちやすく折れにくく安価な爪楊枝とその製造方法を提供することができる。なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含み、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 爪楊枝
2 持ち手部
3 先端領域
33 先端部
34 付け根部
31 扁平面
32 側面
41 持ち手部にあり先端領域の厚み方向と直交する扁平面
41a 持ち手部にあり先端領域の厚み方向と直交する扁平面で先端部に近いもの
41b 持ち手部にあり先端領域の厚み方向と直交する扁平面で先端部から遠いもの
42 持ち手部にあり先端領域の幅方向と直交する扁平面


























図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10